特許第6384955号(P6384955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384955
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】無人飛行体による配送方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 61/00 20060101AFI20180827BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20180827BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20180827BHJP
   B64D 1/22 20060101ALI20180827BHJP
   B64D 1/12 20060101ALI20180827BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B65G61/00 550
   B64D47/08
   B64C39/02
   B64D1/22
   B64D1/12
   B64C27/04
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-223987(P2014-223987)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-88675(P2016-88675A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】514247311
【氏名又は名称】ドーンコーラス合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154210
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健一
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−263112(JP,A)
【文献】 特開2005−263399(JP,A)
【文献】 特開2010−235269(JP,A)
【文献】 特表2010−501401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0332008(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 61/00
B64C 27/04
B64C 39/02
B64D 1/12
B64D 1/22
B64D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地に向けて自律移動する無人飛行体を用いて配送元から配送先に荷物を運搬する無人飛行体による配送方法であって、
荷受人から配送先の指定を受信する設定処理と、
前記荷物をロープに結び、前記無人飛行体の備えるリールに該ロープを巻き取らせる荷造処理と、
前記無人飛行体を前記配送先に移動させる飛行処理と、
前記無人飛行体を前記配送先においてホバリングさせ、前記無人飛行体の備えるカメラによって前記配送先の映像を撮影する撮影処理と、
前記映像に基づいて前記配送先における荷物引渡の適否を判断し、(1)前記適否が「適」であった場合には、前記荷受人を認証し、正しく認証された場合には前記リールを回転して前記荷物を下降させた後に前記ロープを前記リールから分離して荷物引渡を行い、前記荷物引渡を行う処理を前記カメラによって撮影し、(2)前記適否が「否」であった場合には、「否」である旨を前記荷受人に通知し、該通知を受けた荷受人からの対応指示を受信する、適否判断・荷物引渡処理と
を含み、
前記対応指示として代替配送先の指定を含み、該代替配送先の指定を受信した場合には前記無人飛行体を該代替配送先に移動させて前記撮影処理及び前記適否判断・荷物引渡処理を行う
ことを特徴とする、無人飛行体による配送方法。
【請求項2】
前記認証は、前記荷受人の所持する携帯端末装置からの暗証コード入力によって行われる
ことを特徴とする、請求項1に記載の無人飛行体による配送方法。
【請求項3】
前記リールを回転して前記荷物を下降させた後に、前記荷受人が前記ロープを引く操作を行った場合にのみ、前記ロープを前記リールから分離して荷物引渡を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の無人飛行体による配送方法。
【請求項4】
前記代替配送先の指定は、前記荷受人の所持する携帯端末装置に地図が表示され、前記荷受人が地図上の場所を指示することによって行われる
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無人飛行体による配送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を配送先に配送する無人飛行体による配送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を顧客等の配送先に配送することは、宅配業者を介して自動車により配送されることが多い。しかし、自動車による配送には、交通渋滞等によって配送時刻が遅くなってしまう、運転手を必要として人件費がかかってしまう等の問題があった。
【0003】
この問題に対応するものとして、特許文献1には、無人飛行体によって運搬する方法が開示されている。また、特許文献1に開示された方法では、無人飛行体を着陸させずに荷物を降下させて引渡すことができ、着陸場所のない(狭い)箇所への配送も可能である。
【0004】
不特定の者への配送、特に顧客が注文した荷物の配送、を無人飛行体によって行うことには、以下の問題があった。(1)宅配業者は顧客に荷物を手渡す際に受領印を得る。配送の証とするものである。無人飛行体による配送では、かかる証を入手することが困難である。(2)宅配業者は、顧客の住居の表札、受領印の印影等によって、顧客を確認する。正しい配送先以外に配送されないようにするためである。無人飛行体による配送では、正しい配送先以外の者、特に悪意の者が顧客になりすまして荷物を受領してしまうことの防止が困難である。(3)顧客が不特定の者であるため、配送先の場所も顧客毎に相違する。配送先の場所は顧客が指定すると考えられるが、顧客は必ずしも無人飛行体による配送に詳しいものではなく、配送には不適切な場所が指定されてしまう場合もある。かかる場合には配送をすることが困難となってしまう。
【0005】
上記の問題(1)及び(2)について、特許文献1には、ダイヤルキーの番号を合わせて開閉するケースに荷物を収容し、顧客がダイヤルキーを操作する方法が開示されている。ダイヤルキーの番号を知っていたことで正しい配送先であることが推認され、また、ダイヤルキーが正しい番号に操作されたことをもって配送の証と考えることもできる。
【0006】
しかし、特許文献1の方法は、以下の新たな問題を発生してしまう。(4)金属製等の堅固なケースが必要となる。無人飛行体によって搬送する重量が増加してしまい、コストが大きくなる。(5)ダイヤルキーの操作の前にケースを降下させるため、悪意の者は、ダイヤルキーを操作せずにケースを吊下げるロープを切断してケースを入手し、後にケースを破壊することで、荷物を詐取することができる。(ロープに替えて金属製の鎖等を用いればこの問題が発生しないが、その場合には搬送する重量がさらに増加してしまう。)
【0007】
上記の問題(3)については、特許文献1、その他の文献にもその対策が開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−263112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、顧客に向けて確実に荷物を配送し、配送の証を得ることのできる無人飛行体による配送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無人飛行体による配送方法は、
目的地に向けて自律移動する無人飛行体を用いて配送元から配送先に荷物を運搬する無人飛行体による配送方法であって、
荷受人から配送先の指定を受信する設定処理と、
前記荷物をロープに結び、前記無人飛行体の備えるリールに該ロープを巻き取らせる荷造処理と、
前記無人飛行体を前記配送先に移動させる飛行処理と、
前記無人飛行体を前記配送先においてホバリングさせ、前記無人飛行体の備えるカメラによって前記配送先の映像を撮影する撮影処理と、
前記映像に基づいて前記配送先における荷物引渡の適否を判断し、(1)前記適否が「適」であった場合には、前記荷受人を認証し、正しく認証された場合には前記リールを回転して前記荷物を下降させた後に前記ロープを前記リールから分離して荷物引渡を行い、前記荷物引渡を行う処理を前記カメラによって撮影し、(2)前記適否が「否」であった場合には、「否」である旨を前記荷受人に通知し、該通知を受けた荷受人からの対応指示を受信する、適否判断・荷物引渡処理と
を含み、
前記対応指示として代替配送先の指定を含み、該代替配送先の指定を受信した場合には前記無人飛行体を該代替配送先に移動させて前記撮影処理及び前記適否判断・荷物引渡処理を行う
ことを特徴とする。
【0011】
配送先の映像を撮影し、撮影された映像に基づいてその配送先における荷物引渡の適否を判断することによって、上記の問題(3)を解決する。
【0012】
上記の問題(1)及び(2)については、荷受人を認証することで特許文献1と同様に解決する。ここで、認証ができた場合にのみ荷物を下降させるので、認証された荷受人のみに荷物が到達する。悪意の者への対策として荷物をケースに収納することや、ロープの切断を防止することが不要となる。上記の問題(4)及び(5)が発生しない。
【0013】
荷受人が荷物を受け取った証が、カメラの画像として記録される。
【0014】
本発明の無人飛行体による配送方法は、
前記認証は、前記荷受人の所持する携帯端末装置からの暗証コード入力によって行われることを特徴とする。
【0015】
携帯端末装置としては、スマートホン、タブレットコンピュータ、その他の軽量で無線通信可能な装置が考えられる。携帯端末装置を持参した荷受人は、荷物、無人飛行体又はその部品に接触せずに暗証コードの入力を行うことができる。これにより、荷物を下降させる前に認証を行うことが容易になる。
【0016】
本発明の無人飛行体による配送方法は、
前記リールを回転して前記荷物を下降させた後に、前記荷受人が前記ロープを引く操作を行った場合にのみ、前記ロープを前記リールから分離して荷物引渡を行うことを特徴とする。
【0017】
認証の後に荷物を下降させるので、荷物が地面に到達した時には、何らかの理由で荷受人がいない可能性がある。ロープをリールから分離する前に荷受人の存在を確認することが好ましい。ロープを引く力については、リールを介して検知することができ、人手を介さずに荷受人の存在を確認することが可能である。
【0018】
本発明の無人飛行体による配送方法は、
前記代替配送先の指定は、前記荷受人の所持する携帯端末装置に地図が表示され、前記荷受人が地図上の場所を指示することによって行われることを特徴とする。
【0019】
地図上の1点をタップ又はマウスクリックすることで代替配送先が指定でき、荷受人の操作が容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の無人飛行体による配送方法によれば、顧客に向けて確実に荷物を配送し、配送の証を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、無人飛行体による配送を実行する構成を示す図である。
図2図2は、無人飛行体による配送の概要を示す図である。
図3図3は、設定処理を示すフローチャートである。
図4図4は、引渡場所変更処理を示すフローチャートである。
図5図5は、荷物引渡処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の1実施例について説明する。
【0023】
図1は、無人飛行体による配送を実行する構成を示す図である。無人飛行体2に荷物3を係留して、顧客(荷受人)4に配送する。顧客4は携帯端末装置5を所持して配送先にいる。
【0024】
コンピュータシステムである配送サービス提供者システム1が、無人飛行体2及び携帯端末装置5に無線接続されている。配送サービス提供者システム1は、携帯端末装置5との通信を行う配送管理手段12及び無人飛行体2との通信を行う無人飛行体制御手段11 を備えている。無人飛行体2は、アンテナ22を介して配送サービス提供者システム1との通信を行う。携帯端末装置5は、スマートホン、タブレットコンピュータ等のインターネットアクセスを有する端末装置であり、無線によるインターネット接続を介して配送サービス提供者システム1との通信を行う。ただし、無人飛行体による配送に係る処理に依存して顧客が有線のインターネット接続環境を有している場合には、有線のインターネット接続を介してもよく、その場合にはデスクトップコンピュータを用いることも可能である。
【0025】
無人飛行体2は、プロペラ21、加速度センサ(非図示)、アンテナ22、制御部23、スピーカ24、カメラ25、リール26、ロープ27及び切断具28を備えている。
【0026】
制御部23は、アンテナ22よりGPS情報を、加速度センサから加速度を入手し、プロペラ21を制御して無人飛行体2を配送先に移動させる。この制御は既存の技術によるものでよい。
【0027】
スピーカ24は、無人飛行体2の下方にいる顧客4にメッセージを伝える。カメラ25、は無人飛行体2の下方の画像を撮影する。録画(撮影された画像を記録すること)をすることもできる。撮影された画像は、アンテナ22から配送サービス提供者システム1に向けて発信される
【0028】
リール26、ロープ27及び切断具28は、荷物3の昇降及び引渡を行うものである。リール26にはロープ27が巻き付けられ、ロープ27に荷物3が結ばれる。リール26は、制御部23の制御によって、一方向及び逆方向に回転し、ロープ27を巻き出して荷物3を下降させ、又はロープ27を巻き取って荷物3を上昇させる。ロープ27は、荷物3の荷重を支えることができればよく、凧糸、釣糸のように細いものであってもよい。切断具28は、制御部23の制御によって、ロープ27(の荷物の側)をリール26から分離するものである。ロープ27が細いものであれば電気動作をする鋏であってもよく、また、鉄製のリール26に磁着するようロープ27に設けられた磁石があってリール26内のソレノイドに通電して磁石と同極の磁界を発生して磁着を分離させるものであってもよい。
【0029】
図2は、無人飛行体による配送の概要を示す図である。以下、図2に基づいて無人飛行体による配送の手順の概略を説明する。
【0030】
まず、商品を受注して配送の準備をする「設定処理」が行われる。商品の受注は、電話や対面で行うこともできるが、顧客4が顧客端末5から配送サービス提供者システム1にアクセスすることが、後述のように利便性が高く、好ましい。例えば、配送サービス提供者システム1の配送管理手段12がインターネットのホームページであれば、アクセスが容易である。この際、顧客端末5は、インターネットのホームページへのアクセスができればよく、携帯端末装置でなくデスクトップコンピュータ等であってもよい。設定処理において、配送すべき商品及び配送先が決定される。
【0031】
次に「荷造処理」が行われ、配送物が無人飛行体2に荷物3として係留される。この係留は、電気通信のみによっては行えず、無人飛行体2が駐機している施設における人手又は機械による作業となる。図中、商品受注処理と荷物係留とを結ぶ一点鎖線は非電気的な繋がりであることを示す。(図は、人手による作業であるとして描いてある。機械による作業であれば一点鎖線でなく実線となる)配送物が容器に収容され、その容器が荷物3としてロープ27に結ばれる。可能であれば、容器を使用せずに配送物を直接にロープ27に結んで荷物3としてもよい。ここで、容器は、段ボール箱等の軽量のものでよい。
【0032】
次に、無人飛行体2を配送先に飛行させる「飛行処理」が行われる。配送サービス提供者システム1は、飛行指示を行う。商品名及び配送先(例えば緯度と経度の値)が送信され、アンテナ22を介して無人飛行体2によって受信され、記憶装置(非図示)に保管され、制御部23による参照が可能となる。
【0033】
商品名は無人飛行体に、又は無人飛行体が駐機している施設に設けられた機器に表示される。表示された商品を荷造りする。具体的には、商品を容器に入れ、容器をロープ27の一端に結び、ロープ27の他端をリール26に巻き取らせる。リール26はスイッチの操作によって巻き取り動作(回転)を行うものとし、そのスイッチを操作すればよい。
【0034】
制御部23は、飛行指示の受信と荷造りの両方が完了すると、プロペラ21を駆動して飛行を開始する。ここで、飛行指示を受ける前に荷造りをすることもあり得る。例えば、売れ行きの良い商品について予め荷造りをして待機している場合である。この場合には、飛行指示から即座に飛行を開始することができる。
【0035】
制御部23は、プロペラ21を制御して無人飛行体2を配送先に移動させるが、この制御はGPSを用いる等の既存の技術によるものでよい。
【0036】
配送先に到着すると、「撮影処理」を行う。制御部23は、プロペラ21を制御して無人飛行体2を3m程度の高度でホバリングさせ、カメラ25によって下方を撮影し、画像を配送サービス提供者システム1に送信する。
【0037】
最後に、「適否判断・荷物引渡処理」を行う。送信された画像に基づいて配送先において安全に荷物引渡が可能であるか否かを判断するものである。この判断は、配送サービス提供者システム1のオペレータが画像を視認して行うことが好ましい。障害物等の有無を的確に判断することができる。後述のように、他の方法も可能である。
【0038】
安全でないと判断された場合には、「配送先変更処理」を行う。「配送先変更処理」は、「適否判断・荷物引渡処理」の中で行われるサブの処理である。安全でないと判断された場合の処理としては、各種のものが考え得るが、本実施例では、配送先を変更するものとする。
【0039】
安全でないことを顧客に通知し、通知を受けた顧客が対応を指示する。指示される対応は代替配送先の指定であるとする。代替配送先の指定を受けた配送サービス提供者システム1は、改めて飛行指示を送信し、無人飛行体2を代替配送先に移動させる。
【0040】
無人飛行体2が代替配送先に移動した後に、撮影処理を再び行う。
【0041】
安全であると判断された場合には、「荷物引渡処理」を行う。「荷物引渡処理」は、「適否判断・荷物引渡処理」の中で行われるサブの処理である。配送サービス提供者システム1は、顧客の認証を行い、認証が「適」である場合にのみ無人飛行体2に荷物引渡指示をする。なお、認証のために入力されるキーは、「設定処理」において顧客に伝達する、会員制の配送サービスとして会員毎に事前登録する、その他の方法で定めることができる。
【0042】
無人飛行体2は、荷物引渡指示を受けた後にのみ、荷物3を下降させて引渡す。すなわち、認証が「適」でない限り、荷物3もロープ27も下降せず、悪意の者による詐取がない。
【0043】
以上、無人飛行体による配送の手順の概略を説明した。以下、本発明に特徴的な処理について、詳細に説明する。
【0044】
図3は、設定処理を示すフローチャートである。顧客は、例えば配送管理手段12のホームページにアクセスして商品の発注を行う。配送サービス提供者システム1(配送管理手段12)は、配送先の指定を要求する。例えば、発注された商品の在庫を確認して配送可能な場合に、配送先指定用のサブホームページへのナビゲートを行う。
【0045】
配送先の指定は、住所等によることも可能であるが、本実施例では地図を表示して、地図上の1点を指示(マウスクリック、ペンタッチ等)させるものとする。地図であれば、指示された1点を緯度・経度に変換することが容易である。また、顧客端末(携帯端末装置)5の所在位置をGPS等によって知ることができれば、その位置周辺の地図を表示することができ、顧客の使い勝手が良い。配送先は、住所では定まらない詳細な位置(例えばある住所の邸宅のうち庭の箇所)である場合も多く、地図によることが好ましい。
【0046】
配送先の情報は、配送サービス提供者システム1に送信される。配送サービス提供者システム1は、受信した配送先が適切か否かを確認し、適切でない場合には顧客に他の配送先の指定を要求する。ここで、配送先が適切か否かの確認は、不適切な配送先のデータを照合して計算機によって行うこと、オペレータが地図情報(航空機写真を含んでもよい)を見て十分な広さを有するか否かを判定すること、その他各種の方法によって行い得る。実際の配送において撮影処理を用いて最終確認がなされるので、設定処理においては、明らかに不適切なものを除外すれば十分である。
【0047】
配送先が適切である場合には、配送サービス提供者システム1は、予想到着時刻を顧客端末5に送信する。顧客4は、その時刻に配送先に行き、荷物を受け取ることができる。無人飛行体の飛行にかかる所要時間は正確に予測できるので、利用可能な無人飛行体の有無、荷造処理の所要時間等に基づいた高精度の予想が可能である。
【0048】
以上で設定処理が完了し、配送サービス提供者システム1は飛行処理に進む。
【0049】
荷造処理及び飛行処理によって、無人飛行体2は、荷物3と共に配送先に到着する。この後の処理が、顧客に向けて確実に荷物を配送し、配送の証を得るために重要である。
【0050】
図4は、引渡場所変更処理を示すフローチャートである。撮影処理によって撮影された画像に基づいて、配送先が安全であることを確実にするものである。
【0051】
配送サービス提供者システム1は、撮影された配送先の画像を受信し、安全であるか否かを確認する。送信された画像に基づいて配送先において安全に荷物引渡が可能であるか否かを判断するものである。この判断は、配送サービス提供者システム1のオペレータが画像を視認して行うことが好ましい。障害物等の有無を的確に判断することができる。
【0052】
一方、画像認識によって障害物等の有無を判断してもよい。例えば、安全に荷物引渡を行った履歴のある配送先について、安全に荷物引渡を行った時に撮影された画像と送信された画像を比較して2つの画像が近似していれば安全であると判断することができる。また、画像認識による判断を試みて、判断が困難な場合にはオペレータに判断させる運用も可能である。
【0053】
安全でない場合には、顧客端末5に配送先に問題がある旨を送信する。この処理は顧客に送信された予想到着時刻の頃に行われるので、顧客は配送先にいるものと考えられる。配送先において情報を送受信するため、顧客端末5は携帯端末装置であることが好ましい。なお、顧客4が設定処理の際に用いた端末と別の端末を用いる可能性もあるが、パスワード管理されたインターネットホームページへのアクセス、顧客毎の端末同定情報(例えばIPアドレス)の保持、その他の方法によって対応可能である。
【0054】
配送先問題情報を受信した顧客4は、その対応を指示する。具体的な処理としては、配送先にいる顧客が障害物を除去して荷物引渡を行う、荷物引渡をせずに無人飛行体2を帰還させる、その他の処理が考え得る。本実施例では、配送先を変更するものとする。ここで、所定の時間に亘って顧客からの支持が得られない場合には、燃料(燃料、バッテリー容量、その他の飛行に使用する動力源全般を言う)が不足する前に無人飛行体2は帰還する。燃料不足を防止するために帰還することは処理の各段階においても行い得るものであり、以後、特に説明をしない。
【0055】
顧客4は、代替配送先を指定する。代替配送先の指定を受けた配送サービス提供者システム1は、改めて飛行指示を送信し、無人飛行体2を代替配送先に移動させる。移動の後、撮影処理を行う。
【0056】
以上に述べた、配送先の指定、無人飛行体2の配送先への飛行、撮影、安全確認の手順が、安全な配送先が見つかるまで(または燃料不足で無人飛行体2が帰還するまで)繰り返される。これにより、配送先の安全性を確保することができる。
【0057】
安全な配送先において、荷物引渡処理を行う。図5は、荷物引渡処理を示すフローチャートである。
【0058】
配送サービス提供者システム1は、無人飛行体2に荷物を下降させる指示を出す前に、顧客端末5に認証を要求し、認証が「適」である場合にのみ無人飛行体2に荷物引渡指示をする。なお、認証のために入力されるキーは、「設定処理」において顧客に伝達する、会員制の配送サービスとして会員毎に事前登録する、その他の方法で定めることができる。
【0059】
荷物を下降させる前に認証を行うことで、悪意の者による詐取を防止する。
【0060】
認証が「適」であったとしても、顧客4が配送先以外の場所で認証を行った可能性が残る。そこで、配送サービス提供者システム1は、カメラ25により撮影された画像に顧客が見えるか否かを判定する。この判定はオペレータによって行われる。
【0061】
認証が「適」であり、かつ、撮影された画像に顧客が見える場合に、配送サービス提供者システム1は、無人飛行体2に荷物引渡指示を行う。
【0062】
以下、荷物引渡の処理を説明する。確実に引渡し、証を残すものである。
【0063】
無人飛行体2は、録画を開始する。撮影された画像を記録して証とするものである。
【0064】
無人飛行体2は、荷物の下降に先立ち、スピーカ24から荷物を下降させる旨を顧客4に伝える。ここで、スピーカ24から発せられる音声は、予め録音してあるもの、音声合成による音声、配送サービス提供者システム1のオペレータの肉声等のいずれでもよい。
【0065】
その後、無人飛行体2は、リール26を回転して荷物3を下降させる。どれだけ下降させるかは、無人飛行体2に備えられた高度計等によって定めればよい。
【0066】
顧客4は、荷物3と共に下降されたロープ27の端を引く。このことが、顧客(荷受人)の存在、及び荷物受取意志の表示となる。ロープ27が引かれた(力が加わった)ことは、リール26の回転速度計等によって検知することができる。人手を介さずに荷受人の存在及び意志を確認することが可能である。
【0067】
所定時間内にロープが引かれない場合は、荷受人の不存在、又は荷物受取意志の不表示であり、無人飛行体2は、荷物を上昇させて、帰還する。
【0068】
所定時間内にロープが引かれた場合は、無人飛行体2は、ロープ27をリール26から分離する。これにより、荷物3及びロープ27が顧客4に引渡される。無人飛行体2は、スピーカ24から、顧客4に、荷物3を持ち去るべきことをガイドする。
【0069】
顧客4は、荷物3を持ち去れることが明白に理解でき、荷物を持ち去る。無人飛行体2は、ここまでを録画する。例えば、スピーカ24から、顧客4に、荷物3を持ち去るべきことをガイドした後、30秒の間の録画を行う。
【0070】
以上で、無人飛行体2による荷物3の配送が完了し、録画された画像は荷物が正しく配送されたことの証となる。
【0071】
以上の処理全体の中で、オペレータは限定された場面においてのみ作業をする。すなわち、1人のオペレータによって多数(例えば10機)の無人飛行機2を制御することができる。各々の配送に1人の運転手を必要とする陸上輸送に比して、配送コストが低減される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
顧客に向けて確実に荷物を配送し、配送の証を得ることのできる無人飛行体による配送方法であり、多くの配送業者による利用が考えられる。
【符号の説明】
【0073】
1 配送サービス提供者システム
11 配送管理手段
12 無人飛行体制御手段
2 無人飛行体
21 プロペラ
22 アンテナ
23 制御部
24 スピーカ
25 カメラ
26 リール
27 ロープ
28 切断具
3 荷物
4 顧客(荷受人)
5 携帯端末装置
図1
図2
図3
図4
図5