(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第1の絶縁ゲート型電界効果トランジスタとの間に、ソースが下段のドレインに接続され、ゲートが前記第1の絶縁ゲート型電界効果トランジスタのゲートおよびドレインに接続された2つ以上の前記第3の絶縁ゲート型電界効果トランジスタを備え、
最も上段の前記第3の絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインは、前記第2の絶縁ゲート型電界効果トランジスタのゲートおよびソースと接続され、
最も下段の前記第3の絶縁ゲート型電界効果トランジスタのゲートおよびソースは、前記第1の絶縁ゲート型電界効果トランジスタのゲートおよびドレインに接続されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体回路装置。
ゲートおよびソースが前記第2の絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第1端子に接続されたデプレッション型の第5の絶縁ゲート型電界効果トランジスタをさらに備え、
前記第2の絶縁ゲート型電界効果トランジスタまたは前記第5の絶縁ゲート型電界効果トランジスタのソース電位を出力電圧とすることを特徴とする請求項5に記載の半導体回路装置。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の基準電圧を出力する基準電圧回路装置として、2つのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)を直列に接続した装置が公知である。
図16は、従来の基準電圧回路装置の構成を示す回路図である。従来の基準電圧回路装置として、
図16に示すように、エンハンスメント型MOSFET101とデプレッション型MOSFET102とを直列に接続し、これらのしきい値電圧V
thの差分を基準電圧V
refとした装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
図16に示す従来の基準電圧回路装置では、出力電圧V
out(基準電圧V
ref)が放射線の悪影響により低下するという問題がある。以下に、従来の基準電圧回路装置における、放射線が照射される前(以下、放射線照射前とする)の出力電圧V
out1と放射線が照射された後(以下、放射線照射後とする)の出力電圧V
out2との変動量(以下、放射線照射前後の変動量とする)ΔV
outについて説明する。従来の基準電圧回路装置の出力電圧V
outは、下記(1)式であらわされる。
【0004】
【数1】
【0005】
V
thE1はエンハンスメント型MOSFET101のしきい値電圧の初期値(すなわちエンハンスメント型MOSFET101の放射線照射前のしきい値電圧)である。V
thD1はデプレッション型MOSFET102のしきい値電圧の初期値(すなわちデプレッション型MOSFET102の放射線照射前のしきい値電圧)である。βeはエンハンスメント型MOSFET101のチャネル幅Weに対するチャネル長Leの比率(=Le/We)である。βdはデプレッション型MOSFET102のチャネル幅Wdに対するチャネル長Ldの比率(=Ld/Wd)である。MOSFETのチャネル長Lおよびチャネル幅Wについて
図17に示す。
【0006】
図17は、MOSFETのチャネル長およびチャネル幅を示す説明図である。
図17に示すように、チャネル長Lとは、p型ウェル領域112の、n
+型ドレイン領域113とn
+型ソース領域114とに挟まれた部分であるチャネル領域の、ドレイン・ソース電流の流れる方向の幅である。チャネル幅Wとは、チャネル領域の、チャネル長Lに直交する方向の幅である。
図17にはデプレッション型MOSFET102を例に示している。符号115は、p型ウェル領域112の表面層に、n
+型ドレイン領域113およびn
+型ソース領域114と接するように設けられたn型デプレッション領域である。符号111はp型半導体基板である。
【0007】
放射線照射前の出力電圧V
out1は、上記(1)式に基づいて下記(3)式であらわされる。なお、下記(3)式においては、上記(1)式において右辺第2項の所定の係数を下記(2)式に示す係数Kで置き換えている。同様に、放射線照射後の出力電圧V
out2は、上記(1)式および下記(2)式に基づいて下記(4)式であらわされる。V
thE2はエンハンスメント型MOSFET101の放射線照射後のしきい値電圧である。V
thD2はデプレッション型MOSFET102の放射線照射後のしきい値電圧である。
【0008】
【数2】
【0009】
【数3】
【0010】
【数4】
【0011】
出力電圧V
outの放射線照射前後の変動量ΔV
outは、放射線照射前の出力電圧V
out1と放射線照射後の出力電圧V
out2との差分(=V
out1−V
out2)であるため、上記(3)式および(4)式に基づいて下記(5)式であらわされる。ΔV
thEはエンハンスメント型MOSFET101のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量(=V
thE1−V
thE2)である。ΔV
thDはデプレッション型MOSFET102のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量(=V
thD1−V
thD2)である。
【0012】
【数5】
【0013】
上記(5)式において例えばK=1とした場合、出力電圧V
outの放射線照射前後の変動量ΔV
outは、エンハンスメント型MOSFET101のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thEと、デプレッション型MOSFET102のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thDとの差分として下記(6)式であらわされる。下記(6)式において、エンハンスメント型MOSFET101のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thEと、デプレッション型MOSFET102のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thDとが同じである場合には、放射線照射前後で出力電圧V
outが変動しないことがわかる。
【0014】
【数6】
【0015】
また、MOSFETのしきい値電圧の放射線照射前後の変動量は、ゲート絶縁膜の厚さに依存する。具体的には、放射線の吸収線量が1kGy(1×10
5RAD)の場合、nチャネル型MOSFETのしきい値電圧の放射線照射前後の変動量は、例えば、ゲート絶縁膜の厚さが20nm程度である場合に−百数十mV程度であり、ゲート絶縁膜の厚さが15nm程度である場合に−数十mV程度であることが報告されている(例えば、下記特許文献2(第52,53図)参照。)。下記特許文献2から、ゲート絶縁膜の厚さを10nm以下の厚さに薄くすることで、エンハンスメント型MOSFET101のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thEと、デプレッション型MOSFET102のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thDとがそれぞれ小さくなり、出力電圧V
outの放射線照射前後の変動量ΔV
outが最適化されることがわかる。
【0016】
また、出力電圧V
outのばらつきを低減した別の基準電圧回路装置として、デプレッション型NMOSトランジスタおよびエンハンスメント型NMOSトランジスタの一方または両方がパンチスルーストッパー層を有しない構成とした装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体回路装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体回路装置の構成について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体回路装置の構成を示す回路図である。
図1に示すように、実施の形態1にかかる半導体回路装置は、接地電位の接地端子Gndと電源電圧が印加される電源端子Vsとの間に、エンハンスメント型MOSFET(第1の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)1、抵抗3およびデプレッション型MOSFET(第2の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)2を直列に接続した構成の基準電圧回路装置である。
【0032】
エンハンスメント型MOSFET1は、ゲートおよびドレインがともに抵抗3に接続され、ソースが接地端子Gndに接続されている。図示省略するが、エンハンスメント型MOSFET1は、例えばp型半導体基板上に設けられたp型ウェル領域の内部にn
+型ドレイン領域およびn
+型ソース領域を選択的に設けたnチャネル型MOSFETである。エンハンスメント型MOSFET1を構成するp型半導体基板は、接地端子Gndに接続されている。
【0033】
デプレッション型MOSFET2は、ゲートおよびソースがともに抵抗3に接続され、ドレインが電源端子Vsに接続されている。図示省略するが、デプレッション型MOSFET2は、例えばp型半導体基板上に設けられたp型ウェル領域の内部にn
+型ドレイン領域およびn
+型ソース領域を選択的に設けたnチャネル型MOSFETである。デプレッション型MOSFET2を構成するp型半導体基板は、接地端子Gndに接続されている。デプレッション型MOSFET2は、飽和領域で動作し、定電流源として機能する。
【0034】
デプレッション型MOSFET2は、エンハンスメント型MOSFET1とp型半導体基板やp型ウェル領域の不純物濃度が等しい。例えば、デプレッション型MOSFET2は、エンハンスメント型MOSFET1と同一基板上に作製されていてもよい。また、デプレッション型MOSFET2は、p型ウェル領域の表面層にn
+型ドレイン領域およびn
+型ソース領域と接するn型デプレッション領域を設けることにより、エンハンスメント型MOSFET1よりもしきい値電圧を低減する調整がなされている。
【0035】
そして、デプレッション型MOSFET2のゲートおよびソースと抵抗3との接続点aでの電位(すなわち第1デプレッション型MOSFET2のソース電位)を出力電圧(基準電圧V
ref)とする。すなわち、エンハンスメント型MOSFET1のドレイン電圧に抵抗3による電圧降下分の電圧を加算し、出力電圧V
outの放射線照射前後の変動量ΔV
out(低下分)を補償した電圧が基準電圧V
refとなる。抵抗3の抵抗値は、電流経路(電源端子Vsから接地端子Gndへ至る電流経路)を流れる電流の放射線照射による変動量(増加分)に基づいて、エンハンスメント型MOSFET1のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thEと、デプレッション型MOSFET2のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thDとの差分を補償するように設定される。
【0036】
具体的には、基準電圧V
refとして取り出す出力電圧V
outの放射線照射前後の変動量ΔV
outは、上記(5)式および(6)式において、放射線照射前の出力電圧V
out1と放射線照射後の出力電圧V
out2との差分(=V
out1−V
out2)に所定の係数V
constを加算した下記(7)式であらわされる。出力電圧V
outの放射線照射前後の変動量ΔV
out(下記(7)式の左辺)がゼロになるように、抵抗3の抵抗値を調整して係数V
constの値を調整することにより、基準電圧V
refとして取り出す出力電圧V
outの放射線照射前後の変動量を低減することができる。
【0038】
抵抗3には、例えば半導体からなる抵抗体を用いてもよい。具体的には、例えばエンハンスメント型MOSFET1やデプレッション型MOSFET2を作製するときに半導体チップ上に形成したポリシリコン膜で抵抗3を構成してもよい。また、例えば不純物を添加したポリシリコン(ドープトポリシリコン)からなる抵抗3とした場合には、抵抗3の温度係数を低減することができるため、温度特性のばらつきを改善させることができる。
【0039】
次に、実施の形態1にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性を示す特性図である。。上述した実施の形態1にかかる半導体回路装置を、電源端子Vsに印加する電源電圧を5Vとし、−55℃〜125℃の温度環境下で動作させたときの基準電圧V
refについて検証した結果を
図2に示す。
図2には、抵抗3の抵抗値を200kΩおよび300kΩとしたときの基準電圧V
refをそれぞれ示す。また、参考として、抵抗3の抵抗値を0Ωとしたとき、すなわち抵抗3を設けない従来の半導体回路装置(以下、従来例とする)の基準電圧V
refを示す。
【0040】
図2に示す各試料は、抵抗3の抵抗値以外は同じ構成を有する。具体的には、各試料において、エンハンスメント型MOSFET1およびデプレッション型MOSFET2はともにnチャネル型MOSFETとした。エンハンスメント型MOSFET1のチャネル幅Weを12μmとし、チャネル長Leを160μmとした。デプレッション型MOSFET2のチャネル幅Wdを10μmとし、チャネル長Ldを140μmとした。また、
図2には、試料ごとに、放射線照射前の基準電圧V
ref(すなわち初期値)を破線で示し、コバルト60(
60Co)を用いたガンマ線を放射線源として吸収線量1kGyでの放射線照射後の基準電圧V
refを実線で示す(
図3においても同様)。
【0041】
まず、抵抗3を設けない従来例(抵抗3の抵抗値=0Ω)について説明する。従来例では、放射線照射前の基準電圧V
refは、50℃の温度環境下で最大値911mVを示し、−55℃の温度環境下で最小値899mVを示した。放射線照射前の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は12mV(=911mV−899mV)である。これにより、放射線照射前の基準電圧V
refは、−55℃〜125℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して1.3%(≒12mV/911mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された。
【0042】
また、放射線照射後の基準電圧V
refは、25℃の温度環境下(室温環境下)で最大値887mVを示し、125℃の温度環境下で最小値869mVを示した。放射線照射後の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は18mV(=887mV−869mV)である。これにより、放射線照射後の基準電圧V
refは、−55℃〜125℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して2.0%(≒18mV/887mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された。すなわち、温度特性のばらつきは、放射線照射前の1.3%から放射線照射後の2.0%へと大きくなった。
【0043】
また、室温環境下において、放射線照射前の基準電圧V
refは911mVであり、基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量は−24mV(=887mV−911mV)である。これにより、放射線照射前の基準電圧V
refに対する基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量の比率(以下、TID特性のばらつきとする)は2.6%(≒24mV/911mV×100)であることが確認された。また、基準電圧V
refの変動率は、温度特性のばらつきとTID特性のばらつき(すなわち放射線照射による変動)とを合わせて最大4.6%(=2.0%+2.6%)であることが確認された。
【0044】
また、室温環境下において、エンハンスメント型MOSFET1とデプレッション型MOSFET2とではしきい値電圧の放射線照射前後の変動量が異なっていたが、エンハンスメント型MOSFET1およびデプレッション型MOSFET2ともに放射線照射後に電流駆動能力が増加することが確認された。しきい値電圧とは、ドレイン電圧を5Vとしたときにドレイン電流が1μAとなるときのゲート電圧である。放射線照射後に電流駆動能力が増加する理由は、次の通りである。ゲート電極に正電圧をかけることによってゲート電極の正孔がゲート絶縁膜を突き抜けて移動し、ゲート絶縁膜と半導体基板との界面に蓄積され、しきい値電圧が低下する。このしきい値電圧の低下により、電流量が増加するからである。
【0045】
具体的には、エンハンスメント型MOSFET1のしきい値電圧は放射線照射後に52mV低下し、デプレッション型MOSFET2のしきい値電圧は放射線照射後に62mV低下した。また、電源端子Vsに印加する電源電圧を5Vとしたとき、電源電圧印加時、放射線照射前(初期)の電流値は0.3μAであったのに対し、放射線照射後の電流値は0.37μAであった。したがって、放射線照射後の電流量の増加分に基づいて、しきい値電圧の放射線照射前後の変動量(すなわち基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量)を相殺する(エンハンスメント型MOSFET1とデプレッション型MOSFET2とのしきい値電圧の差分の、放射線照射による低下分を補償する)ことができるような手段を導入することで、一定の基準電圧V
refを出力することが可能になることがわかる。
【0046】
放射線照射後の電流量の増加分に基づいてしきい値電圧の放射線照射前後の変動量を相殺する手段とは、例えば、エンハンスメント型MOSFET1とデプレッション型MOSFET2との間に直列に接続した抵抗3である。基準電圧回路装置では、エンハンスメント型MOSFET1の内部抵抗(オン抵抗)の低下はデプレッション型MOSFET2の内部抵抗の低下よりも大きいため、出力電圧V
out(基準電圧V
ref)が低下する。この放射線照射後の出力電圧V
outの低下分を、放射線照射後の電流量の増加分によって補正することができるように、抵抗3の抵抗値を調整すればよい。
【0047】
次に、抵抗3の抵抗値が200Ωである場合について説明する。抵抗3の抵抗値が200Ωである場合、放射線照射前の基準電圧V
refは、75℃の温度環境下で最大値974mVを示し、−55℃の温度環境下で最小値941mVを示した。放射線照射前の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は33mV(=974mV−941mV)である。これにより、放射線照射前の基準電圧V
refは、−55℃〜125℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して3.4%(≒33mV/974mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された(温度特性のばらつき)。
【0048】
また、−55℃〜125℃の温度環境下の範囲内において、放射線照射後の基準電圧V
refが分布する範囲は放射線照射前とほぼ同じであった。すなわち、温度特性のばらつきは、放射線照射前後で変化しないことが確認された。また、室温(25℃)環境下において、放射線照射前の基準電圧V
refは969mVを示し、放射線照射後の基準電圧V
refは963mVを示した。基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量は−6mV(=963mV−969mV)である。これにより、TID特性のばらつきは0.6%(≒6mV/969mV×100)であることが確認された。また、基準電圧V
refの変動率は、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとを合わせて最大4.0%(=3.4%+0.6%)であることが確認された。
【0049】
次に、抵抗3の抵抗値が300Ωである場合について説明する。抵抗3の抵抗値が300Ωである場合、放射線照射前の基準電圧V
refは、90℃の温度環境下で最大値1004mVを示し、−55℃の温度環境下で最小値962mVを示した。放射線照射前の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は42mV(=1004mV−962mV)である。これにより、放射線照射前の基準電圧V
refは、−55℃〜125℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して4.2%(≒42mV/1004mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された(温度特性のばらつき)。
【0050】
また、放射線照射後の基準電圧V
refは、50℃の温度環境下で最大値999mVを示し、−55℃の温度環境下で最小値968mVを示した。放射線照射後の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は31mV(=999mV−968mV)である。これにより、放射線照射後の基準電圧V
refは、−55℃〜125℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して3.1%(≒31mV/999mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された。すなわち、抵抗3の抵抗値が300Ωである場合、温度特性のばらつきが放射線照射後に小さくなることが確認された。
【0051】
また、室温(25℃)環境下において、放射線照射後の基準電圧V
refは999mVを示し、基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量は−2.4mVであった。したがって、TID特性のばらつきは0.24%(≒2.4mV/1004mV×100)であることが確認された。また、基準電圧V
refの変動率は、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとを合わせて最大4.44%(=4.2%+0.24%)であることが確認された。これにより、抵抗3の抵抗値が300Ωである場合、抵抗3の抵抗値が200Ωである場合に比べて放射線照射前後で温度特性が変化したが、TID特性のばらつきを低減することができ、基準電圧V
refの変動率を抵抗3の抵抗値が200Ωである場合と同程度に低減することができることが確認された。
【0052】
以上の結果から、本発明(抵抗3の抵抗値=200Ω,300Ω)においては、ガンマ線を放射線源として吸収線量1kGyで放射線照射した場合のTID特性のばらつきを、従来例(抵抗3の抵抗値=0Ω)の2.6%から0.24%に低減することができることが確認された。また、抵抗3の抵抗値を適宜調整して、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとをともに改善させるように最適化することにより、基準電圧V
refの変動率を低減することができることが確認された。例えば宇宙用途である場合、基準電圧V
refの変動率は、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとを合わせて5.0%以内程度であるのが好ましい。
【0053】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、デプレッション型MOSFETとエンハンスメント型MOSFETとの間に抵抗を直列に接続することによって、放射線照射による電流量の増加分を電圧に変換して、放射線照射による出力電圧(基準電圧)の低下分を補償することができる。これにより、放射線照射前後で出力電圧が変化することを抑制することができ、放射線照射による基準電圧の変動率を低減することができる。したがって、放射線照射による基準電圧のばらつきを低減することができる。
【0054】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体回路装置の構成について説明する。実施の形態2にかかる半導体回路装置が実施の形態1にかかる半導体回路装置と異なる点は、エンハンスメント型MOSFET1とデプレッション型MOSFET2との間に直列に接続した抵抗3を金属膜からなる抵抗体とする点である。実施の形態2においては、金属膜からなる抵抗体を用いて抵抗3を構成することで、抵抗3の温度係数をゼロに近づける(50ppm以下)ことができ、半導体回路装置の温度特性をさらに改善させることができる。
【0055】
次に、実施の形態2にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性について説明する。
図3は、実施の形態2にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性を示す特性図である。上述した実施の形態2にかかる半導体回路装置を、電源端子Vsに印加する電源電圧を5Vとし、−55℃〜125℃の温度環境下で動作させたときの基準電圧V
refについて検証した結果を
図3に示す。
図3に示す試料においては、エンハンスメント型MOSFET1のチャネル幅Weを12μmとし、チャネル長Leを160μmとした。デプレッション型MOSFET2のチャネル幅Wdを10μmとし、チャネル長Ldを170μmとした。抵抗3として、温度係数がほぼゼロの外付けの金属膜抵抗を用いた。抵抗3の抵抗値は400kΩである。
【0056】
放射線照射前の基準電圧V
refは、25℃の温度環境下(室温環境下)で最大値978mVを示し、125℃の温度環境下で最小値952mVを示した。放射線照射前の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は26mV(=978mV−952mV)である。これにより、放射線照射前の基準電圧V
refは、−55℃〜125℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して2.7%(≒26mV/978mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された(温度特性のばらつき)。
【0057】
また、放射線照射後の基準電圧V
refは、60℃の温度環境下で最大値979mVを示し、−55℃の温度環境下で最小値953mVを示した。放射線照射後の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は26mV(=979mV−953mV)である。これにより、放射線照射後の基準電圧V
refは、−55℃〜125℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して2.7%(≒26mV/979mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された。すなわち、温度特性のばらつきは、放射線照射前後で変化しないことが確認された。
【0058】
また、室温(25℃)環境下において、放射線照射後の基準電圧V
refは977mVであり、基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量は−1mV(=977mV−978mV)である。これにより、室温環境下において、TID特性のばらつきは0.1%(≒1mV/978mV×100)であることが確認された。また、基準電圧V
refの変動率は、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとを合わせて最大2.8%(=2.7%+0.1%)であることが確認された。
【0059】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2によれば、エンハンスメント型MOSFETとデプレッション型MOSFETとの間に直列に接続する抵抗を温度係数の小さい材料からなる抵抗体とすることにより、放射線照射前後で温度特性が変化することを抑制することができる。これによって、放射線照射による基準電圧の変動率をさらに低減することができる。
【0060】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体回路装置の構成について説明する。
図4は、実施の形態3にかかる半導体回路装置の構成を示す回路図である。実施の形態3にかかる半導体回路装置が実施の形態1にかかる半導体回路装置と異なる点は、エンハンスメント型MOSFET1とデプレッション型MOSFET(以下、第1デプレッション型MOSFETとする)2との間に、放射線照射による基準電圧の低下分を増加させるための基準電圧補正用の抵抗として機能する第2デプレッション型MOSFET(第3の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)13を直列に接続した点である。すなわち、デプレッション型MOSFETを2段直列に接続し、電源端子Vsと接地端子Gndとの間にMOSFETを3段直列に接続した構成となっている。
【0061】
具体的には、第1デプレッション型MOSFET2は、ゲートおよびソースがともに下段(接地端子Gnd側)の第2デプレッション型MOSFET13のドレインに接続され、ドレインが電源端子Vsに接続されている。第2デプレッション型MOSFET13は、ゲートおよびソースがともに下段のエンハンスメント型MOSFET1のゲートおよびドレインに接続されている。第2デプレッション型MOSFET13は、線形領域で動作し、抵抗として機能する。図示省略するが、第2デプレッション型MOSFET13は、例えば第1デプレッション型MOSFET2と同様の断面構成となっている。第2デプレッション型MOSFET13は、エンハンスメント型MOSFET1および第1デプレッション型MOSFET2とp型半導体基板やp型ウェル領域の不純物濃度が等しい。例えば、これら3つのMOSFETは同一基板上に作製されていてもよい。
【0062】
実施の形態3においては、第1デプレッション型MOSFET2のゲートおよびソースと第2デプレッション型MOSFET13のドレインとの接続点b2での電位(すなわち第1デプレッション型MOSFET2のソース電位)を出力電力(基準電圧V
ref)とする。すなわち、エンハンスメント型MOSFET1のドレイン電圧に第2デプレッション型MOSFET13による電圧降下分の電圧を加算し、出力電圧V
outの放射線照射前後の変動量ΔV
outを補償した電圧が基準電圧V
refとなる。第2デプレッション型MOSFET13の諸条件は、電流経路を流れる電流の放射線照射による変動量に基づいて、エンハンスメント型MOSFET1のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thEと、第1デプレッション型MOSFET2のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thDとの差分を補償するように設定される。具体的には、実施の形態1と同様に、上記(7)式の左辺がゼロになるように、第2デプレッション型MOSFET13の諸条件を調整して係数V
constの値を調整する。
【0063】
次に、実施の形態3にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性について説明する。
図5は、実施の形態3にかかる半導体回路装置の温度特性を示す特性図である。
図6は、実施の形態3にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性のばらつきを示す特性図である。上述した実施の形態3にかかる半導体回路装置を、電源端子Vsに印加する電源電圧を5Vとし、−55℃〜150℃の温度環境下で動作させたときの接続点b2での基準電圧V
refおよび接続点b1での電圧について検証した結果を
図5,6に示す。また、
図6には、コバルト60(
60Co)を用いたガンマ線を放射線源として吸収線量1kGyでの放射線照射後における温度特性のばらつきおよびTID特性のばらつきを示す。
【0064】
接続点b1は、エンハンスメント型MOSFET1のゲートおよびドレインと第2デプレッション型MOSFET13のゲートおよびソースとの接続点である。接続点b2は、第1デプレッション型MOSFET2のゲートおよびソースと第2デプレッション型MOSFET13のドレインとの接続点である(
図4参照)。この基準電圧V
refについて、温度特性のばらつきおよびTID特性のばらつきの和が最小になるように、エンハンスメント型MOSFET1および第1,2デプレッション型MOSFET2,13の各寸法を最適化している。
【0065】
図5に示す結果より、放射線照射前の基準電圧V
refは、80℃の温度環境下で最大値994mVを示し、−55℃の温度環境下で最小値982mVを示した。放射線照射前の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は12mV(=994mV−982mV)である。これにより、放射線照射前の基準電圧V
refは、−55℃〜150℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して1.2%(≒12mV/994mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された(温度特性のばらつき)。また、図示省略するが、温度特性は、放射線照射前後で変化しないことが確認された。
【0066】
また、室温(25℃)環境下において、放射線照射前の基準電圧V
refは990mVを示し、放射線照射後の基準電圧V
refは972mVを示した。基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量は−18mV(=972mV−990mV)である。これにより、TID特性のばらつきは1.8%(≒18mV/990mV×100)であることが確認された。また、これらの結果より、
図6に示すように、基準電圧V
refの変動率は、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとを合わせて最大3.0%(=1.2%+1.8%)であることが確認された。
【0067】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態3によれば、デプレッション型MOSFETとエンハンスメント型MOSFETとの間に第3デプレッション型MOSFETを直列に接続することにより、放射線照射による電流量の増加を抑制することができ、放射線照射による基準電圧の変動率をさらに低減することができる。
【0068】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる半導体回路装置の構成について説明する。
図7は、実施の形態4にかかる半導体回路装置の構成を示す回路図である。実施の形態4にかかる半導体回路装置が実施の形態3にかかる半導体回路装置と異なる点は、第1デプレッション型MOSFET2とエンハンスメント型MOSFET1との間に、基準電圧補正用の抵抗として機能する2つ以上のデプレッション型MOSFET(第3の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)を直列に接続した点である。第1デプレッション型MOSFETとエンハンスメント型MOSFET1の間に配置した各デプレッション型MOSFETのゲートは、それぞれエンハンスメント型MOSFET1のゲートおよびドレインに接続される。
【0069】
図7には、第1デプレッション型MOSFET2とエンハンスメント型MOSFET1の間に、2つのデプレッション型MOSFET(第2,3デプレッション型MOSFET13,23)を配置した構成を示す。すなわち、デプレッション型MOSFETを3段直列に接続し、電源端子Vsと接地端子Gndとの間にMOSFETを4段直列に接続した構成となっている。第3デプレッション型MOSFET23のゲートと第2デプレッション型MOSFET13のゲートとが同電位であるため、実施の形態4にかかる半導体回路装置は、実施の形態3にかかる半導体回路装置よりも第2デプレッション型MOSFET13のチャネル長Ldを長くした状態に相当する。
【0070】
具体的には、第1デプレッション型MOSFET2は、ゲートおよびソースがともに下段の第3デプレッション型MOSFET23のドレインに接続され、ドレインが電源端子Vsに接続されている。第3デプレッション型MOSFET23のゲートは、下段の第2デプレッション型MOSFET13のゲートおよびソースと、エンハンスメント型MOSFET1のゲートおよびドレインとに接続されている。第3デプレッション型MOSFET23のソースは、下段の第2デプレッション型MOSFET13のドレインに接続されている。第2デプレッション型MOSFET13のゲートおよびソースは、エンハンスメント型MOSFET1のゲートおよびドレインに接続されている。
【0071】
実施の形態4においては、第2,3デプレッション型MOSFET13,23は、線形領域で動作し、抵抗として機能する。図示省略するが、第3デプレッション型MOSFET23は、例えば第1デプレッション型MOSFET2と同様の断面構成となっている。また、第3デプレッション型MOSFET23は、エンハンスメント型MOSFET1および第1,2デプレッション型MOSFET2,13とp型半導体基板やp型ウェル領域の不純物濃度が等しい。例えば、これら4つのMOSFETは同一基板上に作製されていてもよい。
【0072】
また、第1デプレッション型MOSFET2のゲートおよびソースと第3デプレッション型MOSFET23のドレインとの接続点c3での電位(すなわち第1デプレッション型MOSFET2のソース電位)を出力電圧(基準電圧V
ref)とする。すなわち、エンハンスメント型MOSFET1のドレイン電圧に、第2,3デプレッション型MOSFET13,23による電圧降下分の電圧を加算し、出力電圧V
outの放射線照射前後の変動量ΔV
outを補償した電圧が基準電圧V
refとなる。
【0073】
第2,3デプレッション型MOSFET13,23の諸条件は、電流経路を流れる電流の放射線照射による変動量に基づいて、エンハンスメント型MOSFET1のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thEと、第1デプレッション型MOSFET2のしきい値電圧の放射線照射前後の変動量ΔV
thDとの差分を補償するように設定される。具体的には、実施の形態1と同様に、上記(7)式の左辺がゼロになるように、第2,3デプレッション型MOSFET13,23の諸条件を調整して係数V
constの値を調整する。
【0074】
次に、実施の形態4にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性について説明する。
図8は、実施の形態4にかかる半導体回路装置の温度特性を示す特性図である。
図9は、実施の形態4にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性のばらつきを示す特性図である。上述した実施の形態4にかかる半導体回路装置を、電源端子Vsに印加する電源電圧を5Vとし、−55℃〜150℃の温度環境下で動作させたときの接続点c3での基準電圧V
refおよび接続点c1,c2での電圧について検証した結果を
図8,9に示す。また、
図9には、コバルト60(
60Co)を用いたガンマ線を放射線源として吸収線量1kGyでの放射線照射後における温度特性のばらつきおよびTID特性のばらつきを示す。
【0075】
接続点c1は、第2デプレッション型MOSFET13のゲートおよびソースとエンハンスメント型MOSFET1のドレインとの接続点である。接続点c2は、第3デプレッション型MOSFET23のソースと第2デプレッション型MOSFET13のドレインとの接続点である。接続点c3は、第1デプレッション型MOSFET2のゲートおよびソースと第3デプレッション型MOSFET23のドレインとの接続点である(
図7参照)。この基準電圧V
refについて、温度特性のばらつきおよびTID特性のばらつきの和が最小になるように、エンハンスメント型MOSFET1および第1〜3デプレッション型MOSFET2,13,23の各寸法を最適化している。
【0076】
具体的には、エンハンスメント型MOSFET1および第1〜3デプレッション型MOSFET2,13,23はともにnチャネル型MOSFETとした。エンハンスメント型MOSFET1のチャネル幅Weを12μmとし、チャネル長Leを50μmとした。第1デプレッション型MOSFET2のチャネル幅Wdを10μmとし、チャネル長Ldを125μmとした。第2デプレッション型MOSFET13のチャネル幅Wdを10μmとし、チャネル長Ldを40μmとした。第3デプレッション型MOSFET23のチャネル幅Wdを10μmとし、チャネル長Ldを60μmとした。
【0077】
図8に示す結果より、放射線照射前の基準電圧V
refは、−55℃の温度環境下で最大値1105mVを示し、150℃の温度環境下で最小値1057mVを示した。放射線照射前の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は48mV(=1105mV−1057mV)である。これにより、放射線照射前の基準電圧V
refは、−55℃〜150℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して4.3%(≒48mV/1105mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された(温度特性のばらつき)。また、図示省略するが、温度特性は、放射線照射前後で変化しないことが確認された。
【0078】
また、室温(25℃)環境下において、放射線照射前の基準電圧V
refは1071mVを示し、放射線照射後の基準電圧V
refは1053mVを示した。基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量は−18mV(=1053mV−1071mV)である。これにより、TID特性のばらつきは1.7%(≒18mV/1071mV×100)であることが確認された。また、これらの結果より、
図9に示すように、基準電圧V
refの変動率は、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとを合わせて最大6.0%(=4.3%+1.7%)であることが確認された。また、
図6,9に示す結果より、直列に接続するデプレッション型MOSFETの段数を増やすことにより、TID特性のばらつきを低減することができることが確認された。
【0079】
以上、説明したように、実施の形態4によれば、実施の形態1,3と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態4によれば、第1デプレッション型MOSFETとエンハンスメント型MOSFETとの間にデプレッション型MOSFETを多段に直列接続することにより、TID特性のばらつきを低減することができる。これにより、放射線照射による基準電圧の変動率をさらに低減することができる。
【0080】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5にかかる半導体回路装置の構成について説明する。
図10は、実施の形態5にかかる半導体回路装置の構成を示す回路図である。実施の形態5にかかる半導体回路装置が実施の形態4にかかる半導体回路装置と異なる点は、第3デプレッション型MOSFET(第3の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)23のゲートおよびソースが下段の第2デプレッション型MOSFET(第4の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)13のドレインのみに接続されている点である。すなわち、第3デプレッション型MOSFET23のゲートおよびソースが下段の第2デプレッション型MOSFET13のゲートに接続されていない。実施の形態5においては、第1デプレッション型MOSFET2は、飽和領域で動作し、定電流源として機能する。第2〜3デプレッション型MOSFET13,23は、線形領域で動作し、抵抗として機能する。また、第2,3デプレッション型MOSFET13、23は、放射線照射による電流量の増加を抑制する機能を有する。
【0081】
次に、実施の形態5にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性について説明する。
図11は、実施の形態5にかかる半導体回路装置の温度特性を示す特性図である。
図12は、実施の形態5にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性のばらつきを示す特性図である。上述した実施の形態5にかかる半導体回路装置を、電源端子Vsに印加する電源電圧を5Vとし、−55℃〜150℃の温度環境下で動作させたときの接続点c3での基準電圧V
refおよび接続点c1,c4での電圧について検証した結果を
図11,12に示す。また、
図12には、コバルト60(
60Co)を用いたガンマ線を放射線源として吸収線量1kGyでの放射線照射後における温度特性のばらつきおよびTID特性のばらつきを示す。
【0082】
接続点c1は、第2デプレッション型MOSFET13のゲートおよびソースとエンハンスメント型MOSFET1のドレインとの接続点である。接続点c3は、第1デプレッション型MOSFET2のゲートおよびソースと第3デプレッション型MOSFET23のドレインとの接続点である。接続点c4は、第3デプレッション型MOSFET23のゲートおよびソースと第2デプレッション型MOSFET13のドレインとの接続点である(
図10参照)。エンハンスメント型MOSFET1および第1〜3デプレッション型MOSFET2,13,23の各寸法は、実施の形態4において温度特性およびTID特性の検証に用いた試料と同様である。
【0083】
図11に示す結果より、放射線照射前の基準電圧V
refは、120℃の温度環境下で最大値1054mVを示し、−55℃の温度環境下で最小値1047mVを示した。放射線照射前の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は7mV(=1054mV−1047mV)である。これにより、放射線照射前の基準電圧V
refは、−55℃〜150℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して0.7%(≒7mV/1054mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された(温度特性のばらつき)。また、図示省略するが、温度特性は、放射線照射前後で変化しないことが確認された。
【0084】
また、室温(25℃)環境下において、放射線照射前の基準電圧V
refは1047mVを示し、放射線照射後の基準電圧V
refは1030mVを示した。基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量は−17mV(=1030mV−1047mV)である。これにより、TID特性のばらつきは1.6%(≒17mV/1047mV×100)であることが確認された。また、これらの結果より、
図12に示すように、基準電圧V
refの変動率は、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとを合わせて最大2.3%(=0.7%+1.6%)であることが確認された。また、
図9,12に示す結果より、第3デプレッション型MOSFET23のゲートを第2デプレッション型MOSFET13のゲートと同電位にしないことにより、温度特性のばらつきを低減することができることが確認された。
【0085】
以上、説明したように、実施の形態5によれば、実施の形態1,3,4と同様の効果を得ることができる。実施の形態5によれば、第3デプレッション型MOSFETのゲートを第2デプレッション型MOSFETのゲートと同電位にしないことにより、放射線照射による電流量の増加を抑制することができ、温度特性のばらつきを低減することができる。これにより、放射線照射による基準電圧の変動率をさらに低減することができる。
【0086】
(実施の形態6)
次に、実施の形態6にかかる半導体回路装置の構成について説明する。
図13は、実施の形態6にかかる半導体回路装置の構成を示す回路図である。実施の形態6にかかる半導体回路装置が実施の形態5にかかる半導体回路装置と異なる点は、電源端子Vsと第1デプレッション型MOSFET2との間に、さらに第4デプレッション型MOSFET(第5の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)33を直列に接続した点である。すなわち、実施の形態6においては、電源端子Vsと接地端子Gndとの間にMOSFETを5段(デプレッション型MOSFETは4段)直列に接続した構成となっている。また、実施の形態5よりもさらにデプレッション型MOSFETを多段化し、放射線照射によって電流量が増加することを抑制する機能を高めている。
【0087】
具体的には、第4デプレッション型MOSFET33は、ドレインが電源端子Vsに接続され、ゲートおよびソースが下段の第1デプレッション型MOSFET2のドレインに接続されている。図示省略するが、第4デプレッション型MOSFET33は、例えば第1デプレッション型MOSFET2と同様の断面構成となっている。第4デプレッション型MOSFET33は、エンハンスメント型MOSFET1および第1〜3デプレッション型MOSFET2,13,23とp型半導体基板やp型ウェル領域の不純物濃度が等しい。例えば、これら5つのMOSFETは同一基板上に作製されていてもよい。
【0088】
第1デプレッション型MOSFET2のゲートおよびソースと第3デプレッション型MOSFET23のドレインとの接続点c3での電位(すなわち第1デプレッション型MOSFET2のソース電位)を出力電圧(基準電圧V
ref)とする。または、第4デプレッション型MOSFET33のゲートおよびソースと第1デプレッション型MOSFET2のドレインとの接続点c5(第4デプレッション型MOSFET33のソース電位)での電位を出力電圧(基準電圧V
ref)としてもよい。
【0089】
次に、実施の形態6にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性について説明する。
図14は、実施の形態6にかかる半導体回路装置の温度特性を示す特性図である。
図15は、実施の形態6にかかる半導体回路装置の温度特性およびTID特性のばらつきを示す特性図である。上述した実施の形態6にかかる半導体回路装置を、電源端子Vsに印加する電源電圧を5Vとし、−55℃〜150℃の温度環境下で動作させたときの接続点c3での基準電圧V
refおよび接続点c1,c4,c5での電圧について検証した結果を
図14,15に示す。
図14,15では、接続点c3の出力電圧を基準電圧V
refとしている。また、
図15には、コバルト60(
60Co)を用いたガンマ線を放射線源として吸収線量1kGyでの放射線照射後における温度特性のばらつきおよびTID特性のばらつきを示す。
【0090】
接続点c1は、第2デプレッション型MOSFET13のゲートおよびソースとエンハンスメント型MOSFET1のドレインとの接続点である。接続点c3は、第1デプレッション型MOSFET2のゲートおよびソースと第3デプレッション型MOSFET23のドレインとの接続点である。接続点c4は、第3デプレッション型MOSFET23のゲートおよびソースと第2デプレッション型MOSFET13のドレインとの接続点である。接続点c5は、第4デプレッション型MOSFET33のゲートおよびソースと第1デプレッション型MOSFET2のドレインとの接続点である(
図13参照)。この基準電圧V
refについて、温度特性のばらつきおよびTID特性のばらつきの和が最小になるように、エンハンスメント型MOSFET1および第1〜4デプレッション型MOSFET2,13,23,33の各寸法を最適化している。
【0091】
具体的には、エンハンスメント型MOSFET1および第1〜4デプレッション型MOSFET2,13,23,33はともにnチャネル型MOSFETとした。エンハンスメント型MOSFET1のチャネル幅Weを12μmとし、チャネル長Leを50μmとした。第1デプレッション型MOSFET2のチャネル幅Wdを10μmとし、チャネル長Ldを100μmとした。第2デプレッション型MOSFET13のチャネル幅Wdを10μmとし、チャネル長Ldを40μmとした。第3デプレッション型MOSFET23のチャネル幅Wdを10μmとし、チャネル長Ldを40μmとした。第4デプレッション型MOSFET33のチャネル幅Wdを10μmとし、チャネル長Ldを60μmとした。
【0092】
図14に示す結果より、放射線照射前の基準電圧V
refは、115℃の温度環境下で最大値1046mVを示し、−55℃の温度環境下で最小値1038mVを示した。放射線照射前の基準電圧V
refの最大値と最小値との差は8mV(=1046mV−1038mV)である。これにより、放射線照射前の基準電圧V
refは、−55℃〜150℃の温度環境下の範囲内において、最大値から最大値に対して0.8%(≒8mV/1046mV×100)程度低い範囲に分布していることが確認された(温度特性のばらつき)。また、図示省略するが、温度特性は放射線照射前後で変化しないことが確認された。
【0093】
また、室温(25℃)環境下において、放射線照射前の基準電圧V
refは1040mVを示し、放射線照射後の基準電圧V
refは1022mVを示した。基準電圧V
refの放射線照射前後の変動量は−18mV(=1022mV−1040mV)である。これにより、TID特性のばらつきは1.7%(≒18mV/1040mV×100)であることが確認された。また、これらの結果より、
図15に示すように、基準電圧V
refの変動率は、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとを合わせて最大2.5%(=0.8%+1.7%)であることが確認された。
【0094】
また、
図12,15に示す結果より、直列に接続するデプレッション型MOSFETの段数を増やすことにより、温度特性のばらつきを低減することができることが確認された。MOSFETを多段に直列接続した場合、上段(電源端子Vs側)のMOSFETほど内部抵抗が高くなる。実施の形態6においては、温度特性の改善を優先しているため、エンハンスメント型MOSFET1の内部抵抗の低下が、第4デプレッション型MOSFET33による基準電圧V
refの補正のための内部抵抗の低下よりも大きくなる。これにより、実施の形態5よりもTID特性のばらつきが大きくなるが、温度特性のばらつきとTID特性のばらつきとの合計である基準電圧V
refの変動率は実施の形態5と同程度となる。
【0095】
以上、説明したように、実施の形態6によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態6によれば、デプレッション型MOSFETの段数を増やすことにより、温度特性のばらつきを低減することができる。また、実施の形態6によれば、温度特性のばらつきがデプレッション型MOSFETの段数の少ない場合と同程度と仮定した場合、デプレッション型MOSFETの段数を増やすことにより、TID特性のばらつきを低減することができる。このため、温度特性のばらつきまたはTID特性のばらつきが低減されることにより、放射線照射による基準電圧の変動率をさらに低減することができる。
【0096】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、たとえばMOSFETの寸法や抵抗値等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、各実施の形態は、半導体基板または半導体領域の導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。