(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動対象に接続される出力軸と、定速回転させられる定速入力軸と、可変速回転させられる可変速入力軸と、を有し、前記可変速入力軸の回転数及び前記定速入力軸の回転数に応じて前記出力軸の回転数が定まる変速装置と、
前記定速入力軸を回転駆動させる定速電動機と、前記可変速入力軸を回転駆動させる可変速電動機と、を有する電動装置と、
前記可変速電動機に供給する電力の周波数を変える周波数変換装置と、
前記定速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第一スイッチと、
前記可変速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第二スイッチと、
前記周波数変換装置に対して、前記可変速電動機に供給する電力の周波数を指示すると共に、前記第一スイッチ及び前記第二スイッチに対してオン、オフを指示する制御器と、 を備え、
前記変速装置は、
軸線を中心として自転する太陽歯車と、
前記太陽歯車に固定され、前記軸線を中心として、軸方向に延びる太陽歯車軸と、
前記太陽歯車と係合し、前記軸線を中心として公転すると共に自身の中心線を中心として自転する遊星歯車と、
前記軸線を中心として環状に複数の歯は並び、前記遊星歯車と係合する内歯車と、
前記軸線を中心として軸方向に延びる遊星歯車キャリア軸を有し、前記遊星歯車を、前記軸線を中心として公転可能に且つ前記遊星歯車自身の中心線を中心として自転可能に支持する遊星歯車キャリアと、
前記軸線を中心として軸方向に延びる内歯車キャリア軸を有し、前記内歯車を、前記軸線を中心として自転可能に支持する内歯車キャリアと、
を有し、
前記太陽歯車軸が前記出力軸を成し、前記遊星歯車キャリア軸が前記定速入力軸を成し、前記内歯車キャリア軸が前記可変速入力軸を成し、
前記制御器は、起動の指示を受け付けると、前記第一スイッチに対してオンを指示して、前記定速電動機を前記電力供給状態にして、前記定速電動機が所定の回転数で駆動し始めた後に、前記第二スイッチに対してオンを指示して、前記可変速電動機を前記電力供給状態にすると共に、前記周波数変換装置に対して、予め定められた最少周波数を指示する、
可変電動機システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の可変電動機システムは、変速装置の軸線から径方向に離れた位置に二つの電動機が配置されることになるため、全体として大型化するという問題点がある。さらに、この可変電動機システムは、変速装置の軸線から径方向に離れた位置に二つの電動機を配置する関係上、二つの電動機毎に、ベルトやプーリー等を有する伝達機構を設ける必要があり、装置が複雑になり製造コストがかさむという問題点もある。
【0008】
そこで、本発明は、小型化及び製造コストの低減を図ることができる可変電動機システ
ムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するための発明に係る一態様としての可変電動機システムは、
回転駆動力を発生する電動装置と、前記電動装置で発生した回転駆動力を変速させる変速装置と、前記電動装置の回転駆動力によって駆動される駆動対象と、を備え、前記変速装置は、軸線を中心として自転する太陽歯車と、前記太陽歯車に固定され、前記軸線を中心として、軸方向に延びる太陽歯車軸と、前記太陽歯車と係合し、前記軸線を中心として公転すると共に自身の中心線を中心として自転する遊星歯車と、前記軸線を中心として環状に複数の歯は並び、前記遊星歯車と係合する内歯車と、前記軸線を中心として軸方向に延びる遊星歯車キャリア軸を有し、前記遊星歯車を、前記軸線を中心として公転可能に且つ前記遊星歯車自身の中心線を中心として自転可能に支持する遊星歯車キャリアと、前記軸線を中心として軸方向に延びる内歯車キャリア軸を有し、前記内歯車を、前記軸線を中心として自転可能に支持する内歯車キャリアと、を有し、前記太陽歯車軸と前記遊星歯車キャリア軸と前記内歯車キャリア軸とのうち、いずれか一つの軸が前記駆動対象のロータに接続される出力軸を成し、他の一つの軸が定速入力軸を成し、残りの一つの軸が可変速入力軸を成し、前記電動装置は、前記軸線を中心として自転し、前記変速装置の前記定速入力軸に直接又は間接的に接続されている定速ロータを有する定速電動機と、前記軸線を中心として自転し、前記変速装置の前記可変速入力軸に直接又は間接的に接続されている可変速ロータを有する可変速電動機と、を有し、前記可変速ロータと前記定速ロータとのうち、第一ロータには、前記軸線を中心として円筒状を成し、軸方向に貫通した軸挿通孔が形成され、第二ロータは、前記第一ロータの前記軸挿通孔に挿通され、前記駆動対象のロータは、前記軸線上に配置されて
おり、前記可変速電動機に供給する電力の周波数を変える周波数変換装置と、前記定速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第一スイッチと、前記可変速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第二スイッチと、前記周波数変換装置に対して、前記可変速電動機に供給する電力の周波数を指示すると共に、前記第一スイッチ及び前記第二スイッチに対してオン、オフを指示する制御器と、をさらに備えており、前記太陽歯車軸が前記出力軸を成し、前記遊星歯車キャリア軸が前記可変速入力軸を成し、前記内歯車キャリア軸が前記定速入力軸を成し、前記制御器は、起動の指示を受け付けると、前記第二スイッチに対してオンを指示して、前記可変速電動機を前記電力供給状態にすると共に、前記周波数変換装置に対して、予め定められた最少周波数を指示し、前記可変速電動機が最少回転数で駆動し始めた後に、前記第一スイッチに対してオンを指示して、前記定速電動機を前記電力供給状態にする。
【0010】
当該可変電動機システムでは、変速装置の軸線上に定速電動機の定速ロータ及び可変速電動機の可変速ロータを配置しているので、変速装置の軸線から径方向に離れた位置に定速ロータ及び可変速ロータを配置する場合よりも、全体として小型化を図ることができる。さらに、当該可変電動機システムでは、変速装置の軸線から径方向に離れた位置に定速ロータ及び可変速ロータを配置する場合のように、ベルトやプーリー等の伝達機構を設ける必要がないため、この観点からの装置の小型化、さらに部品点数の減少による製造コストの低減を図ることができる。また、当該可変電動機システムでは、前述のように、ベルトやプーリー等の伝達機構を設ける必要がないため、変速装置の軸線上に位置する軸に対してベルト等から曲げ荷重がかからず、振動の低減も図ることができる。
また、当該可変電動機システムでは、定速電動機及び可変速電動機の駆動及び停止を制御できると共に、可変速電動機の回転数も制御できる。
また、当該可変電動機システムでは、可変速電動機のみを最低回転数の回転させたときの出力軸の回転数は、定速電動機及び可変速電動機が共に回転しているいときの出力軸の回転数範囲に比べて小さな回転数になる。そこで、当該可変電動機システムでは、起動時に、可変速電動機のみを最低回転数で回転させることで出力軸を回転させ、電動装置の起動負荷トルクを小さくしている。
上記問題点を解決するための発明に係る一態様としての可変電動機システムは、回転駆動力を発生する電動装置と、前記電動装置で発生した回転駆動力を変速させる変速装置と、前記電動装置の回転駆動力によって駆動される駆動対象と、を備え、前記変速装置は、軸線を中心として自転する太陽歯車と、前記太陽歯車に固定され、前記軸線を中心として、軸方向に延びる太陽歯車軸と、前記太陽歯車と係合し、前記軸線を中心として公転すると共に自身の中心線を中心として自転する遊星歯車と、前記軸線を中心として環状に複数の歯は並び、前記遊星歯車と係合する内歯車と、前記軸線を中心として軸方向に延びる遊星歯車キャリア軸を有し、前記遊星歯車を、前記軸線を中心として公転可能に且つ前記遊星歯車自身の中心線を中心として自転可能に支持する遊星歯車キャリアと、前記軸線を中心として軸方向に延びる内歯車キャリア軸を有し、前記内歯車を、前記軸線を中心として自転可能に支持する内歯車キャリアと、を有し、前記太陽歯車軸と前記遊星歯車キャリア軸と前記内歯車キャリア軸とのうち、いずれか一つの軸が前記駆動対象のロータに接続される出力軸を成し、他の一つの軸が定速入力軸を成し、残りの一つの軸が可変速入力軸を成し、前記電動装置は、前記軸線を中心として自転し、前記変速装置の前記定速入力軸に直接又は間接的に接続されている定速ロータを有する定速電動機と、前記軸線を中心として自転し、前記変速装置の前記可変速入力軸に直接又は間接的に接続されている可変速ロータを有する可変速電動機と、を有し、前記可変速ロータと前記定速ロータとのうち、第一ロータには、前記軸線を中心として円筒状を成し、軸方向に貫通した軸挿通孔が形成され、第二ロータは、前記第一ロータの前記軸挿通孔に挿通され、前記駆動対象のロータは、前記軸線上に配置されており、前記可変速電動機に供給する電力の周波数を変える周波数変換装置と、前記定速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第一スイッチと、前記可変速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第二スイッチと、前記周波数変換装置に対して、前記可変速電動機に供給する電力の周波数を指示すると共に、前記第一スイッチ及び前記第二スイッチに対してオン、オフを指示する制御器と、をさらに備えており、前記太陽歯車軸が前記出力軸を成し、前記遊星歯車キャリア軸が前記可変速入力軸を成し、前記内歯車キャリア軸が前記定速入力軸を成し、前記制御器は、起動の指示を受け付けると、前記第一スイッチに対してオンを指示して、前記定速電動機を前記電力供給状態にして、前記定速電動機が所定の回転数で駆動し始めた後に、前記第二スイッチに対してオンを指示して、前記可変速電動機を前記電力供給状態にすると共に、前記周波数変換装置に対して、予め定められた最少周波数を指示する。
上記問題点を解決するための発明に係る一態様としての可変電動機システムは、回転駆動力を発生する電動装置と、前記電動装置で発生した回転駆動力を変速させる変速装置と、前記電動装置の回転駆動力によって駆動される駆動対象と、を備え、前記変速装置は、軸線を中心として自転する太陽歯車と、前記太陽歯車に固定され、前記軸線を中心として、軸方向に延びる太陽歯車軸と、前記太陽歯車と係合し、前記軸線を中心として公転すると共に自身の中心線を中心として自転する遊星歯車と、前記軸線を中心として環状に複数の歯は並び、前記遊星歯車と係合する内歯車と、前記軸線を中心として軸方向に延びる遊星歯車キャリア軸を有し、前記遊星歯車を、前記軸線を中心として公転可能に且つ前記遊星歯車自身の中心線を中心として自転可能に支持する遊星歯車キャリアと、前記軸線を中心として軸方向に延びる内歯車キャリア軸を有し、前記内歯車を、前記軸線を中心として自転可能に支持する内歯車キャリアと、を有し、前記太陽歯車軸と前記遊星歯車キャリア軸と前記内歯車キャリア軸とのうち、いずれか一つの軸が前記駆動対象のロータに接続される出力軸を成し、他の一つの軸が定速入力軸を成し、残りの一つの軸が可変速入力軸を成し、前記電動装置は、前記軸線を中心として自転し、前記変速装置の前記定速入力軸に直接又は間接的に接続されている定速ロータを有する定速電動機と、前記軸線を中心として自転し、前記変速装置の前記可変速入力軸に直接又は間接的に接続されている可変速ロータを有する可変速電動機と、を有し、前記可変速ロータと前記定速ロータとのうち、第一ロータには、前記軸線を中心として円筒状を成し、軸方向に貫通した軸挿通孔が形成され、第二ロータは、前記第一ロータの前記軸挿通孔に挿通され、前記駆動対象のロータは、前記軸線上に配置されており、前記可変速電動機に供給する電力の周波数を変える周波数変換装置と、前記定速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第一スイッチと、前記可変速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第二スイッチと、前記周波数変換装置に対して、前記可変速電動機に供給する電力の周波数を指示すると共に、前記第一スイッチ及び前記第二スイッチに対してオン、オフを指示する制御器と、をさらに備えており、前記周波数変換装置は、前記可変速電動機に供給する電流の向きを変えることができる可逆周波数変換装置であり、前記制御器は、前記出力軸の回転数変更を受け付けると、前記出力軸の回転数変更後の回転数を実現するためには、前記可変速電動機に供給する電流の向きを変える必要があるか否かを判断する判断工程と、前記可変速電動機に供給する電流の向きを変える必要があると判断すると、前記第二スイッチに対してオフを指示して、前記可変速電動機を前記電力断状態にするスイッチオフ指示工程と、前記可変速電動機が前記電力断状態になった後、前記第二スイッチに対してオンを指示して、前記可変速電動機を前記電力供給状態にすると共に、前記周波数変換装置に対して、前記可変速電動機に供給する電流の向きの変更を指示するスイッチオン・電流向き変更指示工程と、前記可変速電動機に供給する電流の向きが変更になったことにより前記可変速電動機が逆回転駆動し始めた後に、前記可変速電動機に供給する電力の周波数として、前記出力軸の回転数変更後の回転数を実現するために必要な周波数を指示する目標周波数指示工程と、を実行する。
当該可変電動機システムでは、可変速電動機に供給する電流の向きを変えて、可変速電動機の回転の向きを変える場合、可変速電動機に供給する電力を一旦断ち、可変速電動機からの回転駆動力の発生を断つ。当該可変電動機システムでは、その後、可変速電動機に供給する電流の向きを変えて、可変速電動機に電力を供給し、可変速電動機を回転駆動させる。このため、当該可変電動機システムでは、可変速電動機に供給する電流の向きを変える場合、可変速電動機にかかる急激な負荷を低減することができる。
【0011】
ここで、前記可変電動機システムにおいて、前記可変速ロータが第一ロータであり、前記定速ロータは、定速ロータ本体軸と前記軸挿入孔に挿通される前記定速ロータ延長軸とに分割され、前記定速ロータ本体軸と前記定速ロータ延長軸とを接続する定速用フレキシブルカップリング、を備えていてもよい。
【0012】
また、前記可変速電動機は、前記可変速ロータの外周側に配置されている可変速ステータと、前記可変速ステータが内周側に固定されている可変速電動機ケーシングと、を有し、前記変速装置は、前記太陽歯車、前記太陽歯車軸、前記遊星歯車、前記内歯車、遊星歯車キャリア軸、前記遊星歯車キャリア、及び前記内歯車キャリアと、これらを覆う変速ケーシングと、を有し、前記可変速電動機ケーシングに対して前記変速ケーシングが固定されていてもよい。
【0013】
また、前記可変電動機システムにおいて、前記定速電動機は、前記定速ロータの外周側に配置されている定速ステータと、前記定速ステータが内周側に固定されている定速電動機ケーシングと、有し、前記定速電動機ケーシングを支持する電動装置支持部を有してもよい。
【0014】
また、前記可変電動機システムにおいて、前記可変速電動機ケーシングを支持する
可変速電動機支持部を有してもよい。
【0015】
当該可変電動機システムでは、支持部により、重量物である定速電動機及び可変速電動機の確実な固定が可能となる。
【0016】
また、前記可変電動機システムにおいて、前記変速ケーシングは前記可変速電動機ケーシングへ固定されていてよい。
【0017】
ここで、前記可変電動機システムにおいて、前記定速ロータと前記定速入力軸とを接続する定速用フレキシブルカップリングと、前記可変速ロータと前記可変速入力軸とを接続する可変速用フレキシブルカップリングと、を備えていてもよい。
【0018】
当該可変電動機システムでは、電動装置の定速ロータと変速装置の定速入力軸との間の偏芯、偏角及び振れを定速用フレキシブルカップリングにより許容することができる。さらに、当該可変電動機システムでは、電動装置の可変速ロータと変速装置の可変速入力軸との間の偏芯、偏角及び振れを可変速用フレキシブルカップリングにより許容することができる。このため、当該可変電動機システムでは、電動装置に対する変速装置の芯出し作業の手間を最小限に抑えることができると共に、電動装置から変速装置への軸振れの伝達、変速装置から電動装置への軸振れの伝達を抑制することができる。
【0019】
また、前記定速用フレキシブルカップリング及び前記可変速用フレキシブルカップリングを備えている前記可変電動機システムにおいて、前記定速用フレキシブルカップリングと前記可変速用フレキシブルカップリングとのうち、前記第一ロータと接続されるフレキシブルカップリングが第一フレキシブルカップリングを成し、前記定速入力軸と前記可変速入力軸とのうち、前記第一ロータの回転で回転させられる入力軸が第一入力軸を成し、前記第一ロータの前記変速装置側の端部には、前記軸線を中心として環状を成し、前記第一フレキシブルカップリングと接続されるロータ側接続部が形成され、前記第一入力軸の前記電動装置側の端部には、前記軸線を中心として環状を成し、前記ロータ側接続部と軸方向で対向して、前記第一フレキシブルカップリングと接続される変速装置側接続部が形成されていてもよい。
【0020】
当該可変電動機システムでは、第二ロータの外周側に配置される第一ロータのロータ側接続部と、第一ロータに第一フレキシブルカップリングを介して接続される第一入力軸の変速装置側接続部とが軸方向で対向する。このため、第一フレキシブルカップリングには、一般的な、言い換えると汎用のフレキシブルカップリングを採用することができる。
【0021】
また、前記定速用フレキシブルカップリング及び前記可変速用フレキシブルカップリングを備えている、以上のいずれかの前記可変電動機システムにおいて、前記定速用フレキシブルカップリングと前記可変速用フレキシブルカップリングとのうち、前記第一ロータと接続されるフレキシブルカップリングが第一フレキシブルカップリングを成し、前記第二ロータと接続されるフレキシブルカップリングが第二フレキシブルカップリングを成し、前記第一フレキシブルカップリングは、前記軸線を基準にして、前記第二フレキシブルカップリングの外周側に配置され、前記第二フレキシブルカップリングの軸方向の長さ寸法は、前記第一フレキシブルカップリングの軸方向の長さ寸法以下であってもよい。
【0022】
当該可変電動機システムでは、第二フレキシブルカップリングが第一フレキシブルカップリングの内周側に配置されているものの、第二フレキシブルカップリンの軸方向の長さ寸法が第一フレキシブルカップリングの軸方向の長さ寸法以下であるため、各フレキシブルカップリングの取り付け作業を容易に行うことができる。
【0023】
また、以上のいずれかの可変電動機システムにおいて、前記定速電動機は、前記定速ロータの外周側に配置されている定速ステータと、前記定速ステータが内周側に固定されている定速電動機ケーシングと、を有し、前記可変速電動機は、前記可変速ロータの外周側に配置されている可変速ステータと、前記可変速ステータが内周側に固定されている可変速電動機ケーシングと、を有し、前記定速電動機ケーシングに対して前記可変速電動機ケーシングが固定されていてもよい。
【0024】
当該可変電動機システムでは、定速電動機ケーシングに対して可変速電動機ケーシングが固定されている。このため、当該可変電動機システムでは、可変電動機システムの製造工場からの出荷前に、定速ロータに対して、可変速ロータを正確に位置決め(芯出し)を行うことができる。よって、当該可変電動機システムでは、設置現場において、定速ロータに対する可変速ロータの位置決め作業を省くことができる。
【0025】
また、前記可変電動機システムにおいて、前記定速電動機ケーシングを支持する電動装置支持部を有してもよい。
【0026】
また、前記可変電動機システムにおいて、前記可変速電動機ケーシングを支持する可変速電動機支持部を有してもよい。
【0027】
また、前記可変電動機システムにおいて、前記変速ケーシングを支持する変速装置支持部を有してもよい。
【0028】
前記定速電動機ケーシングに対して前記可変速電動機ケーシングが固定されている前記可変電動機システムにおいて、前記第二ロータの前記変速装置と反対側の端部に取り付けられている冷却ファンを有し、前記定速電動機ケーシング内及び前記可変速電動機ケーシング内で前記冷却ファンの回転によりガス流れが発生するよう、前記定速電動機ケーシングと前記可変速電動機ケーシングとが互いに連通していてもよい。
【0029】
当該可変電動機システムでは、第二ロータが回転すると、この第二ロータの端に設けられている冷却ファンも回転する。この冷却ファンの回転により、外部の空気が定速電動機ケーシングと可変速電動機ケーシングとのうちの一方のケーシング内に流入して、一方のケーシング内のロータやステータ等を冷却する。さらに、当該可変電動機システムでは、定速電動機ケーシングと可変速電動機ケーシングとが連通しているため、一方のケーシング内に流入した空気が他方のケーシング内にも流入して、他方のケーシング内のロータやステータ等を冷却する。よって、当該可変電動機システムでは、一つの冷却ファンで、二つの電動機を冷却することができ、この観点から、装置の小型化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
また、他の発明に係る一態様としての可変電動機システムは、
駆動対象に接続される出力軸と、定速回転させられる定速入力軸と、可変速回転させられる可変速入力軸と、を有し、前記可変速入力軸の回転数及び前記定速入力軸の回転数に応じて前記出力軸の回転数が定まる変速装置と、前記定速入力軸を回転駆動させる定速電動機と、前記可変速入力軸を回転駆動させる可変速電動機と、を有する電動装置と、前記可変速電動機に供給する電力の周波数を変える周波数変換装置と、前記定速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第一スイッチと、前記可変速電動機を電力供給状態と電力断状態とにする第二スイッチと、前記周波数変換装置に対して、前記可変速電動機に供給する電力の周波数を指示すると共に、前記第一スイッチ及び前記第二スイッチに対してオン、オフを指示する制御器と、を備え、前記変速装置は、軸線を中心として自転する太陽歯車と、前記太陽歯車に固定され、前記軸線を中心として、軸方向に延びる太陽歯車軸と、前記太陽歯車と係合し、前記軸線を中心として公転すると共に自身の中心線を中心として自転する遊星歯車と、前記軸線を中心として環状に複数の歯は並び、前記遊星歯車と係合する内歯車と、前記軸線を中心として軸方向に延びる遊星歯車キャリア軸を有し、前記遊星歯車を、前記軸線を中心として公転可能に且つ前記遊星歯車自身の中心線を中心として自転可能に支持する遊星歯車キャリアと、前記軸線を中心として軸方向に延びる内歯車キャリア軸を有し、前記内歯車を、前記軸線を中心として自転可能に支持する内歯車キャリアと、を有し、前記太陽歯車軸が前記出力軸を成し、前記遊星歯車キャリア軸が前記定速入力軸を成し、前記内歯車キャリア軸が前記可変速入力軸を成し、前記制御器は、起動の指示を受け付けると、前記第一スイッチに対してオンを支持して、前記定速電動機を前記電力供給状態にして、前記定速電動機が所定の回転数で駆動し始めた後に、前記第二スイッチに対してオンを指示して、前記可変速電動機を前記電力供給状態にすると共に、前記周波数変換装置に対して、予め定められた最少周波数を指示する。
【0038】
当該可変電動機システムでは、より出力の大きな定速電動機を可変速電動機よりも先に起動することによって、可変速電動機を先に起動する場合と比較して、可変速電動機に与えられる負荷を軽減することができる。
【0041】
また、前記周波数変換装置が可逆周波数変換装置である前記可変電動機システムにおいて、前記変速装置は、前記可変速入力軸を回転不能に拘束するブレーキを有し、前記制御器は、前記スイッチオフ指示工程の実行で前記可変速電動機が前記電力断状態になった後、前記ブレーキに対して前記可変速入力軸の拘束を指示した後、前記可変速電動機を逆回転駆動させる前に、前記ブレーキに対して前記可変速入力軸の拘束解除を指示するブレーキ動作指示工程を実行してもよい。
【0042】
当該可変電動機システムでは、可変速電動機に供給する電流の向きを変えて、可変速電動機の回転の向きを変える場合、可変速電動機に供給する電力を一旦断ち、可変速電動機からの回転駆動力の発生を断つ。当該可変電動機システムでは、その後、ブレーキにより可変速入力軸を回転不能に拘束し、可変速電動機を停止させる。当該可変電動機システムでは、その後、可変速電動機に供給する電流の向きを変えて、可変速電動機に電力を供給し、可変速電動機を回転駆動させる。このため、当該可変電動機システムでは、可変速電動機に供給する電流の向きを変える場合、可変速電動機にかかる急激な負荷をより低減することができる。
【0043】
また、前記周波数変換装置が可逆周波数変換装置である、以上のいずれかの前記可変電動機システムにおいて、前記制御器は、前記判断工程で、前記可変速電動機に供給する電流の向きを変える必要があると判断すると、前記スイッチオフ指示工程の実行前に、前記周波数変換装置に対して、前記可変速電動
機に供給する電力の周波数として予め定めた最少周波数を指示する第一最少周波数指示工程と、前記スイッチオフ指示工程の実行で、前記可変速電動機を前記電力断状態にした後であって、前記目標周波数指示工程を実行する前に、前記可変速電動機に供給する電力の周波数として前記最少周波数を指示する第二最少周波指示工程と、を実行してもよい。
【0044】
当該可変電動機システムでは、可変速電動機に供給する電流の向きを変えて、可変速電動機の回転の向きを変える場合、可変速電動機を最少回転数にしてから、可変速電動機に供給する電力を一旦断ち、可変速電動機からの回転駆動力の発生を断つ。当該可変電動機システムでは、その後、可変速電動機に供給する電流の向きを変えて、可変速電動機に最少周波数の電力を供給して、可変速電動機を最少回転数で回転駆動させる。このため、当該可変電動機システムでは、可変速電動機に供給する電流の向きを変える場合、可変速電動機にかかる急激な負荷をより低減することができる。
【0047】
以上のいずれかの前記可変電動機システムにおいて、前記可変速電動機の極数は、前記定速電動機の極数よりも多くてもよい。
【0048】
また、前記可変電動機システムにおいて、前記太陽歯車軸と前記第二ロータとは水平な前記軸線方向に並んで配置されてよい。
【0049】
また、前記可変電動機システムにおいて、前記定速電動機、前記可変速電動機、前記変速装置、前記駆動対象の順に、直線状に配置されてよい。
【0050】
また、前記可変電動機システムにおいて、前記駆動対象は圧縮機であってよい。
【発明の効果】
【0056】
本発明の一態様では、装置の小型化及び製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明に係る可変電動機システムの各種実施形態、及び各種変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0059】
「第一実施形態」
本発明に係る可変電動機システムの第一実施形態について、
図1〜
図5を用いて説明する。
【0060】
本実施形態の可変電動機システムは、
図1に示すように、回転駆動力を発生する電動装置50と、電動装置50で発生した回転駆動力を変速させて駆動対象に伝える変速装置10と、を備えている。電動装置50は、電動装置支持部50Sによって架台90(所定の構造物)に支持されている。変速装置10は、変速装置支持部10Sによって架台90に支持されている。これら支持部により、重量物である電動装置50及び変速装置10の確実な固定が可能となる。
なお、架台90は、電動装置50用、変速装置10用、及び圧縮機C用に分割されていてもよいし、又はいずれかの組み合わせで一体化されていてもよい。
【0061】
変速装置10は、遊星歯車変速装置である。この変速装置10は、
図2に示すように、水平方向に延在する軸線Arを中心として自転する太陽歯車11と、太陽歯車11に固定されている太陽歯車軸12と、太陽歯車11と係合し、軸線Arを中心として公転すると共に自身の中心線Apを中心として自転する複数の遊星歯車15と、軸線Arを中心として環状に複数の歯は並び、複数の遊星歯車15と係合する内歯車17と、複数の遊星歯車15を、軸線Arを中心として公転可能に且つ遊星歯車15自身の中心線Apを中心として自転可能に支持する遊星歯車キャリア21と、内歯車17を、軸線Arを中心として自転可能に支持する内歯車キャリア31と、これらを覆う変速ケーシング41と、を有する。
【0062】
ここで、軸線Arが延びている方向を軸方向とし、この軸方向の一方側を出力側、この出力側の反対側を入力側とする。また、以下では、この軸線Arを中心とする径方向を単に径方向という。
【0063】
太陽歯車軸12は、軸線Arを中心として円柱状を成し、太陽歯車11から軸方向の出力側に延びている。この太陽歯車軸12の出力側端部には、フランジ13が形成されている。このフランジ13には、例えば、駆動対象としての圧縮機Cのロータが接続される。太陽歯車軸12は、太陽歯車11の出力側に配置されている太陽歯車軸受42により、軸線Arを中心として自転可能に支持されている。太陽歯車軸受42は、変速ケーシング41に取り付けられている。
【0064】
遊星歯車キャリア21は、複数の遊星歯車15毎に設けられている遊星歯車軸22と、複数の遊星歯車軸22相互の位置を固定するキャリア本体23と、キャリア本体23に固定され軸線Arを中心として軸方向に延びる遊星歯車キャリア軸27と、を有する。
【0065】
遊星歯車軸22は、遊星歯車15の中心線Apを軸方向に貫通し、遊星歯車15をその中心線を中心として自転可能に支持する。キャリア本体23は、複数の遊星歯車軸22から径方向外側に延びる出力側アーム部24と、軸線Arを中心として円筒状を成し出力側アーム部24の径方向外側端から入力側に延びる円筒部25と、円筒部25の
入力側端から径方向内側に延びる入力側アーム部26と、を有する。
【0066】
遊星歯車キャリア軸27としては、出力側アーム部24から出力側に延びる出力側遊星歯車キャリア軸27oと、入力側アーム部26から入力側に延びる入力側遊星歯車キャリア軸27iと、がある。各遊星歯車キャリア軸27o,27iは、いずれも、軸線Arを中心として円筒状を成す。出力側遊星歯車キャリア軸27oは、出力側アーム部24よりも出力側に配置されている遊星歯車キャリア軸受43により、軸線Arを中心として自転可能に支持されている。この遊星歯車キャリア軸受43は、変速ケーシング41に取り付けられている。出力側遊星歯車キャリア軸27oの内周側には、太陽歯車軸12が挿通されている。入力側遊星歯車キャリア軸27iは、入力側アーム部26よりも入力側に配置されている遊星歯車キャリア軸受44により、軸線Arを中心として自転可能に支持されている。この遊星歯車キャリア軸受44は、変速ケーシング41に取り付けられている。入力側遊星歯車キャリア軸27iの入力側端には、径方向外側に向かって広がる環状のフランジ28が形成されている。
【0067】
内歯車キャリア31は、内歯車17が固定されているキャリア本体33と、キャリア本体33に固定され軸線Arを中心として軸方向に延びる内歯車キャリア軸37と、を有する。
【0068】
キャリア本体33は、軸線Arを中心として円筒状を成し、内周側に内歯車17が固定されている円筒部35と、円筒部35の入力側端から径方向内側に延びる入力側アーム部36と、を有する。
【0069】
内歯車キャリア軸37は、軸線Arを中心として円柱状を成し、同じく軸線Arを中心として円柱状を成す太陽歯車軸12の入力側に配置されている。キャリア本体33の入力側アーム部36には、この内歯車キャリア軸37に固定されている。内歯車キャリア軸37の入力側端には、径方向外側に向かって広がる環状又は円板状のフランジ38が形成されている。この内歯車キャリア軸37の入力側の部分は、円筒状の入力側遊星歯車キャリア軸27iの内周側に挿通されている。内歯車キャリア軸37のフランジ38と、入力側遊星歯車キャリア軸27iのフランジ28とは、軸方向における位置がほぼ一致している。
【0070】
電動装置50は、
図3に示すように、定速入力軸Acとしての内歯車キャリア軸37を回転駆動させる定速電動機51と、可変速入力軸Avとしての入力側遊星歯車キャリア軸27iを回転駆動させる可変速電動機71と、これらを冷却するための冷却ファン91と、この冷却ファン91を覆うファンカバー92と、を有する。
【0071】
本実施形態において、定速電動機51は、例えば、4極の誘導電動機である。また、可変速電動機71は、極数が定速電動機51よりも多い12極の誘導電動機である。
【0072】
定速電動機51は、軸線Arを中心として自転し、定速入力軸Acである内歯車キャリア軸37に接続される定速ロータ52と、定速ロータ52の外周側に配置されている定速ステータ66と、定速ステータ66が内周側に固定されている定速電動機ケーシング61と、を有している。
【0073】
定速ロータ52は、定速ロータ軸53と、定速ロータ軸53の外周に固定されている導体56と、を有する。また、定速ロータ軸53は、軸線Arを中心として円柱状を成し、その外周に導体56が固定されている定速ロータ本体軸54と、軸線Arを中心として円柱状を成し、定速ロータ本体軸54の出力側に固定されている定速ロータ延長軸55と、を有する。定速ロータ延長軸55の軸方向の両端には、それぞれ、径方向外側に向かって広がる環状又は円板状のフランジ55i,55oが形成されている。定速ロータ本体軸54の出力側端には、径方向外側に向かって広がる環状又は円板状のフランジ54oが形成されている。定速ロータ延長軸55と定速ロータ本体軸54とは、それぞれのフランジ55i
,54oが互いにボルト等で接続されていることで、一体化している。定速ロータ本体軸54の入力側端には、前述の冷却ファン91が固定されている。
【0074】
定速ステータ66は、定速ロータ52の導体56の径方向外側に配置されている。この定速ステータ66は、複数のコイルで形成されている。
【0075】
定速電動機ケーシング61は、軸線Arを中心として円筒状を成し、内周側に定速ステータ66が固定されているケーシング本体62と、円筒状のケーシング本体62の軸方向の両端を塞ぐ蓋63i,63oとを有している。各蓋63i,63oには、定速ロータ本体軸54を、軸線Arを中心として自転可能に支持する定速ロータ軸受65i,65oが取り付けられている。また、各蓋63i,63oには、定速ロータ軸受65i,65oよりも径方向外側の位置で、軸方向に貫通する複数の開口64が形成されている。
【0076】
定速ロータ本体軸54の入力側端は、定速電動機ケーシング61の入力側の蓋63iから、入力側に突出している。この定速ロータ本体軸54の入力側端に、前述の冷却ファン91が固定されている。このため、定速ロータ52が回転すると、冷却ファン91も定速ロータ52と一体的に回転する。ファンカバー92は、冷却ファン91の外周側に配置されている円筒状のカバー本体93と、カバー本体93の入口側の開口に取り付けられ、複数の空気孔が形成されている空気流通板94と、を有する。このファンカバー92は、定速電動機ケーシング61の入力側の蓋63iに固定されている。
【0077】
可変速電動機71は、軸線Arを中心として自転し、可変速入力軸Avである入力側遊星歯車キャリア軸27iに接続される可変速ロータ72と、可変速ロータ72の外周側に配置されている可変速ステータ86と、可変速ステータ86が内周側に固定されている可変速電動機ケーシング81と、を有している。
【0078】
可変速ロータ72は、可変速ロータ軸73と、
可変速ロータ軸73の外周に固定されている導体76と、を有する。可変速ロータ軸73は、軸線Arを中心として円筒状を成し、軸方向に貫通した軸挿通孔74が形成されている。可変速ロータ軸73の軸挿通孔74には、定速ロータ延長軸55が挿通されている。可変速ロータ軸73の出力側端には、径方向外側に向かって広がる環状のフランジ73oが形成されている。可変速ロータ軸73のフランジ73oと、定速ロータ延長軸55の出力側端に形成されているフランジ55oとは、軸方向における位置がほぼ一致している。
【0079】
本実施形態では、軸挿通孔74が形成されている可変速ロータ72が第一ロータを成し、この軸挿通孔74に挿通される定速ロータ52が第二ロータを成す。
【0080】
可変速ステータ86は、可変速ロータ72の導
体76の径方向外側に配置されている。この可変速ステータ86は、複数のコイルで形成されている。
【0081】
可変速電動機ケーシング81は、軸線Arを中心として円筒状を成し、内周側に可変速ステータ86が固定されているケーシング本体82と、円筒状のケーシング本体82の出力側端を塞ぐ出力側蓋83oと、可変速ステータ86よりも入力側に配置され円筒状のケーシング本体82の内周側に固定されている入口側蓋83iと、を有している。各蓋83i,83oには、可変速ロータ軸73を、軸線Arを中心として自転可能に支持する可変速ロータ軸受85i,85oが取り付けられている。また、各蓋83i,83oには、可変速ロータ軸受85i,85oよりも径方向外側の位置で、軸方向に貫通する複数の開口84が形成されている。
【0082】
以上のように、可変速電動機ケーシング81の各蓋83i,83oに形成されている複数の開口84、及び、定速電動機ケーシング61の各蓋63i,63oに形成されている複数の開口64により、可変速電動機ケーシング81内の空間と定速電動機ケーシング61内の空間とが連通している。
【0083】
また、本実施形態の可変電動機システムにおいて、定速ロータ52と、可変速ロータ72と、太陽歯車軸12とは同一の軸線上に配置されている。
【0084】
本実施形態の可変電動機システムは、さらに、可変速入力軸Avである入力側遊星歯車キャリア軸27iと可変速ロータ72との間に配置され、両者を接続する可変速用フレキシブルカップリング95と、定速入力軸Acである内歯車キャリア軸37と定速ロータ52との間に配置され、両者を接続する定速用フレキシブルカップリング97と、を備えている。
【0085】
可変速用フレキシブルカップリング95は、円筒状を成し、円筒の中心軸線Arに対して少なくとも垂直な各方向に可撓性を有する円筒部96と、円筒部96の両側に設けられている環状のフランジ95i,95oと、を有する。
【0086】
定速用フレキシブルカップリング97は、円筒状又は円柱状を成し、円筒又は円柱の中心軸線Arに対して少なくとも垂直な各方向に可撓性を有する円筒部98と、円筒部98の両側に設けられている環状又は円板状のフランジ97i,97oと、を有する。
【0087】
可変速用フレキシブルカップリング95は、定速用フレキシブルカップリング97の外周側の配置されている。定速用フレキシブルカップリング97の軸方向の長さ寸法と、可変速用フレキシブルカップリング95の軸方向の長さ寸法とは、同じである。
【0088】
可変速用フレキシブルカップリング95の各フランジ95i,95oの外径寸法と、遊星歯車キャリア21のフランジ28の外径寸法と、可変速ロータ72のフランジ73oの外径寸法とは、同じである。このため、以上の各フランジ28,73o,95i,95oは、軸方向で互いに対向している。よって、遊星歯車キャリア21のフランジ28と可変速ロータ72のフランジ73oとを一般的なフレキシブルカップリングで接続することができる。
【0089】
可変速用フレキシブルカップリング95の出力側フランジ95oと、遊星歯車キャリア21のフランジ28とは、ボルト等で互いに接続されている。また、可変速用フレキシブルカップリング95の入力側フランジ95iと、可変速ロータ72のフランジ73oとは、ボルト等で互いに接続されている。
【0090】
また、定速用フレキシブルカップリング97の各フランジ97i,97oの外径寸法と、内歯車キャリア31のフランジ38の外径寸法と、定速ロータ延長軸55の出力側フランジ55oの外径寸法とは、同じである。このため、以上の各フランジ38,55o,97i,97oも、軸方向で互いに対向している。よって、内歯車キャリア31のフランジ38と定速ロータ延長軸55の出力側フランジ55oとを一般的なフレキシブルカップリングで接続することができる。
【0091】
定速用フレキシブルカップリング97の出力側フランジ97oと、内歯車キャリア31のフランジ38とは、ボルト等で互いに接続されている。また、定速用フレキシブルカップリング97の入力側フランジ97iと、定速ロータ延長軸55の出力側フランジ55oとは、ボルト等で互いに接続されている。
【0092】
なお、以上では、可変速用フレキシブルカップリング95の円筒部96及び定速用フレキシブルカップリング97の円筒部98は、いずれも、円筒又は円柱の中心軸線Arに対して少なくとも垂直な各方向に可撓性を有するものである。しかしながら、これらのカップリング95,97の円筒部96,98は、円筒又は円柱の中心軸線Arに対して少なくとも垂直な各方向に、入力側に対して出力側が相対移動可能であれば、可撓性を有するものでなくてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、第一ロータである可変速ロータ72に接続される可変速用フレキシブルカップリング95が第一フレキシブルカップリングを成し、第二ロータである定速ロータ52に接続される定速用フレキシブルカップリング97が第二フレキシブルカップリングを成す。
【0094】
さらに、本実施形態では、第一ロータである可変速ロータ72に、第一フレキシブルカップリングである可変速用フレキシブルカップリング95を介して接続される可変速入力軸Avが第一入力軸を成す。また、本実施形態では、第二ロータである定速ロータ52に、第二フレキシブルカップリングである定速用フレキシブルカップリング97を介して接続される定速入力軸Acが第二入力軸を成す。よって、第一ロータである可変速ロータ72のフランジ73oがロータ側接続部を成し、第一入力軸である可変速入力軸Avのフランジ28が変速装置側接続部を成す。
また、本実施形態では、定速ロータ軸53(定速ロータ延長軸55)を可変速ロータ軸73の軸挿通孔74に貫通させており、
図1の左側より定速電動機51、可変速電動機71、変速装置、圧縮機Cの順に直線状に配置している。
【0095】
本実施形態の可変電動機システムは、さらに、
図1に示すように、可変速電動機71に供給する電力の周波数を変える周波数変換装置100と、定速電動機51を電力供給状態と電力断状態とにする第一スイッチ111と、可変速電動機71を電力供給状態と電力断状態とにする第二スイッチ112と、周波数変換装置100、第一スイッチ111及び第二スイッチ112の動作を制御する制御器120と、を備えている。
【0096】
第一スイッチ111は、電源線110と定速電動機51とに電気的に接続されている。第二スイッチ112は、電源線110と周波数変換装置100とに電気的に接続されている。この周波数変換装置100は、可変速電動機71と電気的に接続されている。
【0097】
制御器120は、コンピュータで構成されている。この制御器120は、オペレータからの指示を直接受け付ける又は上位制御装置からの指示を受け付ける受付部121と、第一スイッチ111、第二スイッチ112及び周波数変換装置100に指示を与えるインタフェース122と、受付部121で受け付けた指示等に応じて、第一スイッチ111、第二スイッチ112及び周波数変換装置100に対する指示を作成する演算部123と、を有する。
【0098】
第一スイッチ111は、制御器120からのオン指示でオンになり、制御器120からのオフ指示でオフになる。第一スイッチ111がオンになると、電源線110からの電力が定速電動機51に供給され、定速電動機51は電力供給状態になる。第一スイッチ111がオフになると、電源線110から定速電動機51への電力供給が断たれ、定速電動機51は電力断状態になる。
【0099】
第二スイッチ112は、制御器120からのオン指示でオンになり、制御器120からのオフ指示でオフになる。第二スイッチ112がオンになると、電源線110からの電力が周波数変換装置100を介して可変速電動機71に供給され、可変速電動機71は電力供給状態になる。第二スイッチ112がオフになると、電源線110から周波数変換装置100及び可変速電動機71への電力供給が断たれ、可変速電動機71は電力断状態になる。
【0100】
周波数変換装置100は、制御器120から指示された周波数の電力を可変速電動機71に供給する。可変速電動機71の可変速ロータ72は、この周波数に応じた回転数で回転する。このように、可変速ロータ72の回転数が変化するため、可変速ロータ72に接続されている変速装置10の遊星歯車キャリア21の回転数も変化する。この結果、変速装置10の出力軸Aoである太陽歯車軸12の回転数も変化する。
【0101】
ここで、変速装置10の各歯車の歯数と、変速装置10の各軸の回転数との関係について、
図4を用いて説明する。
【0102】
出力軸Aoとしての太陽歯車軸12の回転数
をωs、定速入力軸Acとしての内歯
車キャリア軸37の回転数
をωi、可変速入力軸Avとしての入力側遊星歯車キャリア軸27iの回転数をωhとする。また、太陽歯車11の歯数
をZs、内歯車17の歯数
をZiとする。
【0103】
この場合、各歯車の歯数と、変速装置10の各軸の回転数との関係は、以下の式(1)で表すことができる。
ωs/ωi = ωh/ωi −(1−ωh/ωi )×Zi/Zs ・・・・・(1)
【0104】
仮に、定速電動機51が前述したように4極の誘導電動機で、電源周波数が50Hzの場合、定速ロータ52の回転数、定速入力軸Acの回転数ωiは1500rpmとなる。また、可変速電動機71が前述したように12極の誘導電動機で、電源周波数が50Hzの場合、可変速ロータ72の最高回転数、可変速入力軸Avの最高回転数ωhは500rpmとなる。また、仮に、太陽歯車11の歯数Zsと内歯車17の歯数Ziと比Zi/Zsを8とする。
【0105】
この場合、定速ロータ52の回転の向きを正回転とし、可変速ロータ72の回転の向きが定速ロータ52の回転と逆向きの最高回転数(−500rpm)であると、出力軸Aoの回転数は、−16500rpmとなる。
【0106】
また、定速ロータ52の回転の向きを正回転とし、可変速ロータ72の回転の向きが定速ロータ52の回転と同じ向きの最高回転数(+500rpm)であると、出力軸Aoの回転数は、−7500rpmとなる。
【0107】
定速ロータ52の回転の向きを正回転とし、可変速ロータ72の回転数が0rpmであると、出力軸Aoの回転数は、−12000rpmとなる。
【0108】
定速ロータ52の回転の向きを正回転とし、可変速ロータ72の回転の向きが定速ロータ52の回転と逆向きの最少回転数(−50rpm)であると、出力軸Aoの回転数は、−12450rpmとなる。
【0109】
定速ロータ52の回転の向きを正回転とし、可変速ロータ72の回転の向きが定速ロータ52の回転と同じ向きの最少回転数(+50rpm)であると、出力軸Aoの回転数は、−11550rpmとなる。
【0110】
このため、仮に、定速ロータ52の回転数が+1500rpmで、周波数変換装置100による周波数制御で、可変速ロータ72の回転数を−50〜−500rpmの範囲で制御できる場合、言い換えると、可変速電動機71に供給する電力の周波数を5〜50Hzの範囲で制御できる場合、出力軸Aoの回転数を−12450〜−16500rpmの範囲に制御することができる。
【0111】
次に、本実施形態の可変電動機システムの起動から停止までの動作について、
図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0112】
制御器120は、外部から可変電動機システムの起動指示を受け付けると(S10)、第二スイッチ112に対してオン指示を出力すると共に(S11)、周波数変換装置100へ最少周波数を指示する(S12)。ここで、最少周波数とは、周波数変換装置100が設定可能な最少の周波数、又はオペレータ等が予め設定した最少の周波数である。ここでは、例えば、電源周波数(50Hz)の1/10を最少周波数(5Hz)とする。
【0113】
第二スイッチ112は、制御器120からオン指示を受けると、この第二スイッチ112はオンになり、電源線110からの電力が周波数変換装置100に供給される。また、周波数変換装置100は、制御器120から周波数の指示値として最少周波数を受け付けると、電源線110からの電力の周波数を最少周波数に変換して可変速電動機71に供給する。この結果、可変速電動機71は、最少周波数の電力が供給されている電力供給状態になる。本実施形態の可変速電動機71は、電源周波数と同じ周波数(最高周波数:50Hz)の電力を受け付けた場合、前述したように、その回転数が最高回転数の500rpmとなる。このため、電源周波数の1/10を最少周波数(5Hz)の電力を受け付けた場合、可変速電動機71の回転数は、前述したように、最少回転数の50rpmとなる。なお、ここでの可変速電動機71の回転の向きは、定速電動機51の回転の向きとは逆向きであるとする。このため、可変速電動機71の回転数は、定速電動機51の回転の向きを正回転とすると、−50rpmとなる。
【0114】
仮に、定速電動機51が回転せず、定速電動機51及びこれに接続されている定速入力軸Acの回転数が0rpmの場合、変速装置10の各歯車の歯数と、変速装置10の各軸の回転数との関係は、以下の式(2)で表すことができる。
ωs/ωh=Zi/Zs+1 ・・・・・(2)
【0115】
前述の場合と同様、太陽歯車11の歯数Zsと内歯車17の歯数Ziと比Zi/Zsを8とすると、可変速電動機71及びこれに接続されている可変速入力軸Avの回転数ωhが最少回転数の−50rpmの場合、出力軸Aoの回転数ωsは、−450rpmとなる。
【0116】
このように、定速電動機51が回転していないときに、可変速電動機71のみを最低回転数の回転させたときの出力軸Aoの回転数ωsは、定速電動機51及び可変速電動機71が共に回転してい
るときの出力軸Ao
の回転数ωs
の範囲(−12450〜−16500rpm)に比べて遥に小さな回転数になる。
【0117】
このため、本実施形態では、出力軸Aoに接続されている駆動対象が仮に圧縮機Cであり、そのGD
2が大きい場合でも、電動装置50の起動負荷トルクを小さくすることができる。
【0118】
制御器120は、可変速電動機71の可変速ロータ72が回転し始め、出力軸Aoが回転し始めると、第一スイッチ111に対してオン指示を出力する(S13)。
【0119】
第一スイッチ111は、制御器120からオン指示を受けると、この第一スイッチ111はオンになり、電源線110からの電力が定速電動機51に供給され、定速電動機51は、電力供給状態になる。本実施形態の定速電動機51は、電源線110からの電力を受け付けた場合、前述したように、その回転数が例えば1500rpmとなる。
【0120】
定速電動機51及びこれに接続されている定速入力軸Acの回転数が1500rpmで、可変速電動機71及びこれに接続されている可変速入力軸Avの回転数が最少の50rpm(但し、定速入力軸Acの回転の向きとは逆向き)の場合、出力軸Aoの回転数は、前述したように、例えば、制御可能な最少回転数である12450rpm(但し、定速入力軸Acの回転の向きとは逆向き)になる。
【0121】
制御器120は、その後、出力軸Aoの目標回転数の指示の受け付け(S14)、又は停止指示の受け付け付け(S16)を待ち、目標回転数の指示を受け付けると、受け付けた目標回転数に応じた周波数を周波数変換装置100に指示する(S15)。
【0122】
周波数変換装置100は、この指示を受け付けると、可変速電動機71に、受け付けた目標回転数に応じた周波数の電力を供給する。可変速電動機71及びこれに接続されている可変速入力軸Avの回転数は、出力軸Aoの目標回転数に応じた回転数(−50〜−500rpm)になり、結果として、出力軸Aoの回転数は目標回転数(−12450〜−16500rpm)になる。
【0123】
制御器120は、受け付けた目標回転数に応じた周波数を周波数変換装置100に指示した後(S15)、再び、出力軸Aoの目標回転数の指示の受け付け(S14)、又は停止指示の受け付け付け(S16)を待ち状態になる。制御器120は、この状態で、停止指示を受け付けると、第一スイッチ111及び第二スイッチ112に対してオフ指示を出力する(S17)。
【0124】
第一スイッチ111及び第二スイッチ112は、制御器120からオフ指示を受けると、いずれもオフになる。このため、電源線110からの電力が定速電動機51及び可変速電動機71に供給されなくなり、定速電動機51及び可変速電動機71は、それぞれ電力断状態になる。この結果、出力軸Aoは、停止する。
【0125】
以上のように、本実施形態では、電動装置50の起動負荷トルクを小さくすることができる。
【0126】
また、本実施形態では、変速装置10の軸線Ar上に定速電動機51の定速ロータ52及び可変速電動機71の可変速ロータ72を配置しているので、変速装置10の軸線Arから径方向に離れた位置に定速ロータ52及び可変速ロータ72を配置する場合よりも、全体として小型化を図ることができる。さらに、本実施形態では、変速装置10の軸線Arから径方向に離れた位置に定速ロータ52及び可変速ロータ72を配置する場合のように、ベルトやプーリー等の伝達機構を設ける必要がないため、この観点からの装置の小型化、さらに部品点数の減少による製造コストの低減を図ることができる。また、本実施形態では、変速装置10の軸線Arから径方向に離れた位置に定速ロータ52及び可変速ロータ72を配置する場合のように、ベルトやプーリー等の伝達機構を設ける必要がないため、変速装置10の軸線Ar上に位置する軸に対してベルト等から曲げ荷重がかからず、振動の低減も図ることができる。
【0127】
本実施形態では、電動装置50の定速ロータ52と変速装置10の定速入力軸Acとを定速用フレキシブルカップリング97で接続しているので、定速ロータ52と定速入力軸Acとの間の偏芯・偏角・振れを許容することができる。さらに、本実施形態では、電動装置50の可変速ロータ72と変速装置10の可変速入力軸Avとを可変速用フレキシブルカップリング95で接続しているので、可変速ロータ72と可変速入力軸Avとの間の偏芯・偏角・振れを許容することができる。このため、本実施形態では、電動装置50に対する変速装置10の芯出し作業の手間を最小限に抑えることができると共に、電動装置50から変速装置10への軸振れの伝達、変速装置10から電動装置50への軸振れの伝達を抑制することができる。
【0128】
また、本実施形態では、定速用フレキシブルカップリング(第二フレキシブルカップリング)97が可変速用フレキシブルカップリング(第一フレキシブルカップリング)95の内周側に配置されているものの、定速用フレキシブルカップリング(第二フレキシブルカップリング)97の軸方向の長さ寸法が可変速用フレキシブルカップリング(第一フレキシブルカップリング)95の軸方向の長さ寸法以下であるため、各フレキシブルカップリング97,95の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0129】
本実施形態では、定速電動機ケーシング61に対して可変速電動機ケーシング81が固定されている。このため、本実施形態では、可変電動機システムの製造工場からの出荷前に、定速ロータ52に対して、可変速ロータ72を正確に位置決め(芯出し)を行うことができる。よって、本実施形態では、設置現場において、定速ロータ52に対する可変速ロータ72の位置決め作業を省くことができる。
【0130】
本実施形態では、定速ロータ52が回転すると、この定速ロータ52の端に設けられている冷却ファン91も回転する。この冷却ファン91の回転により、外部の空気が定速電動機ケーシング61内に流入して、定速ロータ52や定速ステータ66等を冷却する。さらに、本実施形態では、定速電動機ケーシング61と可変速電動機ケーシング81とが連通しているため、定速電動機ケーシング61内に流入した空気が可変速電動機ケーシング81内にも流入して、可変速ロータ72や可変速ステータ86等を冷却する。よって、本実施形態では、一つの冷却ファン91で、二つの電動機を冷却することができ、この観点から、装置の小型化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0131】
また、本実施形態では、定速ロータ52と、可変速ロータ72と、太陽歯車軸12とが同一の軸線上に配置されていることによって、可変電動機システムの据え付けスペース(設置空間)を少なくすることができる。また、回転を伝達するための部品(かさ歯車など)が不要となり、部品点数の増加を抑制、製造コストの低減を図ることができる。
また、本実施形態では、軸挿通孔74が形成された円筒状の軸である可変速ロータ軸73に棒状の軸である定速ロータ軸53(定速ロータ延長軸55)が挿通されている。即ち、出力の大きな定速電動機51の定速ロータ軸53が定速電動機51よりも出力の小さい可変速電動機71の可変速ロータ軸73に挿通されている。これにより、定速電動機51としてより大きな出力(馬力)のあるものを採用することができる。
また、本実施形態では、定速電動機51、可変速電動機71、変速装置、圧縮機Cの順に直線状に配置していることにより、装置全体をよりコンパクトにすることができる。
【0132】
「第二実施形態」
本発明に係る可変電動機システムの第二実施形態について、
図6及び
図7を用いて説明する。
【0133】
本実施形態の可変電動機システムは、
図6に示すように、第一実施形態の
可変電動機システムと同様、電動装置50、変速装置10a、周波数変換装置100a、第一スイッチ111、第二スイッチ112、及び制御器120aと、を備えている。これらのうち、電動装置50、第一スイッチ111、及び第二スイッチ112は、第一実施形態のものと同一である。
【0134】
本実施形態の変速装置10aは、軸線Arを中心とした遊星歯車キャリア21の自転を拘束するブレーキ39を備えている。遊星歯車キャリア21は、キャリア本体23から外周側に広がり環状を成すブレーキディスク29を有する。ブレーキ39は、変速ケーシング41に取り付けられ、遊星歯車キャリア21のブレーキディスク29を挟み込んで、遊星歯車キャリア21を回転不能に拘束する。
【0135】
本実施形態の周波数変換装置100aは、可変速電動機71に供給する電力の周波数を変えることができると共に、可変速電動機71に供給する電流の向きを変えることができる。即ち、可変速電動機71を用いて発電することができる。よって、本実施形態の周波数変換装置100aは、可逆周波数変換装置であり、可変速電動機71の可変速ロータ72の回転の向きを変えることができる。
【0136】
本実施形態の制御器120aは、第一実施形態の制御器120と同様に、周波数変換装置100a、第一スイッチ111及び第二スイッチ112の動作を制御する。さらに、本実施形態の制御器120aは、周波数変換装置100aに対して、可変速電動機71に供給する電流の向きの変更を指示する。また、本実施形態の制御器120aは、変速装置10aのブレーキ39による遊星歯車キャリア21の回転拘束を指示すると共に、この拘束の解除を指示する。
【0137】
第一実施形態では、定速ロータ52の回転数が+1500rpmで、周波数変換装置100による周波数制御で、可変速ロータ72の回転数を−50〜−500rpmの範囲で制御して、出力軸Aoの回転数を−12450〜−16500rpmの範囲に制御する。仮に、可変速電動機71に供給する電流の向きを変えることができれば、可変速ロータ72の回転数を+50〜+500rpmにすることが可能になり、前述したように、出力軸Aoの回転数を−11550〜−7500rpmにすることができる。
【0138】
このため、本実施形態では、周波数変換装置100aとして、可変速電動機71に供給する電流の向きを変えることができる可逆周波数変換装置を採用し、出力軸Aoの回転数の可変領域を広げている。
【0139】
本実施形態の可変電動機システムの起動及び停止動作は、第一実施形態の可変電動機システムの動作と同じである。本実施形態の可変電動機システムは、変速装置10aの出力軸Aoが回転し始めた後、出力軸Aoの回転数を所望の回転数に変更する際の動作が第一実施形態の可変電動機システムの動作と異なる。
【0140】
そこで、以下では、出力軸Aoの回転数を所望の回転数に変更する際の可変電動機システムの動作について、
図7にフローチャートに従って説明する。
【0141】
制御器120aは、第一実施形態と同様に、第一スイッチ111に対してオン指示を出力し(S13)、定速電動機51が例えば1500rpmで回転し始めてから、出力軸Aoの目標回転数の指示の受け付けると(S14)、この目標回転数の実現のために可変速電動機71に供給する電流の向きを変える必要があるか否かを判断する(S20:判断工程)。
【0142】
制御器120aは、可変速電動機71に供給する電流の向きを変える必要があると判断すると、周波数変換装置100aに対して最少周波数を指示する(S21:第一最少周波数指示工程)。
【0143】
周波数変換装置100aは、制御器120aから周波数の指示値として最少周波数を受け付けると、電源線110からの電力の周波数を最少周波数に変換して可変速電動機71に供給する。この結果、可変速電動機71は、最少周波数の電力が供給されている電力供給状態になる。このため、可変速電動機71は、定速電動機51の回転の向きと逆向きで回転している場合には最少回転数の−50rpmになり、定速電動機51の回転の向きと同じ向きで回転している場合には最少回転数の+50rpmとなる。この結果、変速装置10aの出力軸Aoの回転数は、可変速電動機71が定速電動機51の回転の向きと逆向きで回転している場合には−12450rpmになり、可変速電動機71が定速電動機51の回転の向きと同じ向きで回転している場合には−11550rpmとなる。
【0144】
可変速電動機71の回転数が最少回転数になると(−50rpm or +50rpm)、制御器120aは、第二スイッチ112に対してオフ指示を出力すると共に(S22:スイッチオフ指示工程)、ブレーキ39に対して遊星歯車キャリア21(又は可変速入力軸Av)の回転拘束を指示する(S23)。このため、可変速電動機71は、電力断状態になると共に、この可変速電動機71に接続されている遊星歯車キャリア21(又は可変速入力軸Av)の軸線Arを中心とした回転が停止する。
【0145】
遊星歯車キャリア21(又は可変速入力軸Av)の回転が停止すると、制御器120aは、ブレーキ39に対して遊星歯車キャリア21(又は可変速入力軸Av)の回転拘束の解除を指示すると共に(S24)、第二スイッチ112に対してオン指示を出力する(S25)。さらに、制御器120aは、周波数変換装置100aに対して、可変速電動機71に供給する電流の向きの変更を指示すると共に(S26)、最少周波数を指示する(S27:第二最少周波数指示工程)。このため、可変速電動機71は、供給される電流の向きが逆向きになった電力供給状態になり、その回転数が最少回転数になり、その回転の向きが逆向きになる。よって、可変速電動機71は、先に定速電動機51の回転の向きと逆向きで回転していた場合には、その回転の向きが定速電動機51の回転の向きと同じになり、その回転数は最少回転数の+50rpmになる。この結果、変速装置10aの出力軸Aoの回転数は、−11550rpmになる。また、可変速電動機71は、先に定速電動機51の回転の向きと同じ向きで回転していた場合には、その回転の向きが定速電動機51の回転の向きと逆向きになり、その回転数は最少回転数の−50rpmになる。この結果、変速装置10aの出力軸Aoの回転数は、−12450rpmになる。なお、本実施形態において、前述のS25及びS26での処理工程がスイッチオン・電流向き変更指示工程を成す。また、本実施形態において、前述のS23及びS24での処理工程がブレーキ動作指示工程を成す。
【0146】
可変速電動機71の回転数が最少回転数になると、制御器120aは、第一実施形態と同様に、ステップ14(S14)で受け付けた出力軸Aoの目標回転数に応じた周波数を周波数変換装置100aに指示する(S15:目標周波数指示工程)。
【0147】
また、制御器120aは、ステップ20(S20)で電流の向きの変更が不要であると判断した場合も、ステップ14(S14)で受け付けた出力軸Aoの目標回転数に応じた周波数を周波数変換装置100aに指示する(S15:目標周波数指示工程)。
【0148】
周波数変換装置100aは、この指示を受け付けると、可変速電動機71に、受け付けた目標回転数に応じた周波数の電力を供給する。可変速電動機71及びこれに接続されている可変速入力軸Avの回転数は、出力軸Aoの目標回転数に応じた回転数(+50〜+500rpm or −50〜−500rpm)になり、結果として、出力軸Aoの回転数は目標回転数(−7500〜−11550rpm or−12450〜−16500rpm)になる。
【0149】
以上のように、本実施形態では、前述したように、周波数変換装置100aとして、可変速電動機71に供給する電流の向きを変えることができる可逆周波数変換装置を採用しているので、出力軸Aoの回転数の可変領域を広げることができる。
【0150】
また、本実施形態では、可変速電動機71に供給する電流の向きを変えて、可変速電動機71の回転の向きを変える場合、回転数を現状の回転の向きでの最小回転数にした後、この可変速電動機71及びこれに接続されている可変速入力軸Avの回転を拘束する。そして、本実施形態では、可変速入力軸Avの回転の拘束を解除した後、可変速電動機71の回転の向きを先の回転の向きとは逆向きにし、その回転数を最少回転数にしてから、その回転数を出力軸Aoの目標回転数に応じた回転数にする。このため、本実施形態では、可変速電動機71に供給する電流の向きを変える場合、出力軸Aoの回転数、可変速電動機71の回転数の急激な変化を抑えることができ、この場合の可変速電動機71にかかる負荷を低減することができる。
【0151】
なお、以上の実施形態では、変速装置10aにブレーキ39を設け、可変速電動機71に供給する電流の向きを変える際に、このブレーキ39で可変速電動機71に接続されている可変速入力軸Avの回転を一時的に拘束している。しかしながら、変速装置10aにブレーキ39を設けず、可変速電動機71に供給する電流の向きを変える際に、可変速電動機71に接続されている可変速入力軸Avの回転を拘束しなくてもよい。但し、この場合、本実施形態の場合よりも、可変速電動機71に供給する電流の向きを変える際に可変速電動機71にかかる負荷が増加することになる。
【0152】
「第三実施形態」
本発明に係る可変電動機システムの第三実施形態について、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0153】
本実施形態の可変電動機システムは、
図8に示すように、電動装置50を構成する定速電動機51の定速電動機ケーシング61と可変速電動機71の可変速電動機ケーシング81とが分離され、可変速電動機ケーシング81と変速装置10の変速ケーシング41とが一体とされている。
電動装置50は、電動装置支持部50Sによって架台90に固定されている。可変速電動機71は、
可変速電動機支持部71Sによって架台90に固定されている。変速装置10は、変速装置支持部10Sによって架台90に固定されている。また、駆動対象としての圧縮機Cも図示しない支持部によって架台90に固定されている。なお、本実施形態の可変速電動機ケーシング81と変速ケーシング41とは一体とされているため、支持部は、
可変速電動機支持部71Sと変速装置支持部10Sの少なくとも一方が設けられていればよい。
なお、架台90は、電動装置50用、可変速電動機71と変速装置10用、及び圧縮機C用に分割されていてもよいし、又はいずれかの組み合わせで一体化されていてもよい。
【0154】
可変速電動機ケーシング81と、変速ケーシング41とは、強固に接続されている。即ち、可変速電動機ケーシング81の出力側蓋83oと、変速ケーシング41とは、例えば、ボルト又は溶接によって強固に接合されている。
定速ロータ軸53を構成する定速ロータ本体軸54と、可変速ロータ軸73の軸挿通孔74に挿通されている定速ロータ延長軸55とは、定速用フレキシブルカップリング97によって接続されている。即ち、本実施形態の定速ロータ軸53は、定速ロータ本体軸54と、定速ロータ延長軸55と、定速用フレキシブルカップリング97と、を有する。
【0155】
定速ロータ延長軸55と内歯車キャリア軸37とは、定速ロータ延長軸55のフランジ55oと内歯車キャリア軸37のフランジ38を介して固定されている。即ち、本実施形態の定速ロータ延長軸55と内歯車キャリア軸37とはフレキシブルカップリングによって接続されていない。また、可変速ロータ72の可変速ロータ軸73と、遊星歯車キャリア軸27の入力側遊星歯車キャリア軸27iとは、フレキシブルカップリングによって接続されてなく、ボルト等による直接接続またはギヤカップリング等を介して接続されている。なお、フランジ55o、フランジ38を設けることなく、定速ロータ延長軸55と内歯車キャリア軸37とを一体化させてもよい。
【0156】
次に、本実施形態の可変電動機システムの起動から停止までの動作について、
図9に示すフローチャートに従って説明する。
【0157】
制御器120は、外部から可変電動機システムの起動指示を受け付けると(S10)、第一スイッチ111に対してオン指示を出力する(S11a)。
ここで、制御器120は、ブレーキ39に対して遊星歯車キャリア21(又は可変速入力軸Av)の回転拘束を指示する(S28)。
制御器120は、定速電動機51の回転数が所定の回転数(例えば、1500rpm)に達した段階で、第二スイッチ112に対してオン指示を出力し(S12a)、周波数変換装置100へ最少周波数を指示する(S13a)。次いで、ブレーキ39による遊星歯車キャリア21(又は可変速入力軸Av)の回転拘束を解除する指示を出力する(S29)。
【0158】
本実施形態では、定速電動機51と可変速電動機71とを分離させたことによって、標準的な(市販の)定速電動機を使用することが可能となる。これにより、更なる製造コストの低減を図ることができる。
また、可変速用フレキシブルカップリング95を省略することができる。これにより、更なる製造コストの低減を図ることができる。
【0159】
また、本実施形態では、より出力の大きな定速電動機51を可変速電動機71よりも先に起動することによって、可変速電動機71を先に起動する場合と比較して、可変速電動機71に与えられる負荷を軽減することができる。即ち、可変速電動機71を先に起動する場合、定速電動機51を起動した際の急激なトルク変動に可変速電動機71が対応できず、想定された回転数より高回転になったり、低回転になったりする現象を回避することができる。
なお、定速電動機51を可変速電動機71よりも先に起動する方法は、第一実施形態の可変電動機システム、第二実施形態の可変電動機システムにも適用可能である。
【0160】
「変形例」
以上で説明した可変電動機システムの各実施形態の変形例について説明する。
【0161】
以上の各実施形態の可変電動機システムは、いずれも、駆動対象を圧縮機Cとし、この圧縮機Cを7500rpm以上の高速回転させるものである。以上の各実施形態の可変電動機システムは、このように駆動対象を高速回転させるため、変速装置10,10aにより、定速電動機51の回転数を増速させている。このため、以上の各実施形態の変速装置10,10aでは、太陽歯車軸12を出力軸Aoとし、内歯車キャリア軸37を定速入力軸Acとし、入力側遊星歯車キャリア軸27iを可変速入力軸Avとしている。
【0162】
しかしながら、本発明における
可変速電動機システムの変速装置は、例えば、定速電動機51の回転数を減速するためのものであってもよい。この場合、太陽歯車軸12を定速入力軸Acとし、遊星歯車キャリア軸27を可変速入力軸Avとし、内歯車キャリア軸37を出力軸Aoとしてもよい。また、例えば、太陽歯車軸12を以上の実施形態と同様に出力軸Aoとし、内歯車キャリア軸37を可変速入力軸Avとし、遊星歯車キャリア軸27を定速入力軸Acとしてもよい。以上のように、太陽歯車軸12、遊星歯車キャリア軸27、内歯車キャリア軸37のうち、いずれか一の軸を出力軸Aoとし、他の軸を定速入力軸Acとし、残りの軸を可変速入力軸Avとするかは、入力に対して出力を増速させるか否か、出力の増減速の変化範囲等により、適宜設定される。
【0163】
以上のように、太陽歯車軸12、遊星歯車キャリア軸27、内歯車キャリア軸37のうち、いずれか一の軸を出力軸Aoとし、他の軸を定速入力軸Acとし、残りの軸を可変速入力軸Avにした場合でも、以上の実施形態と同様、定速入力軸Acに接続される定速ロータ52と、可変速入力軸Avに接続される可変速ロータ72とを同軸上に配置することにより、装置の小型化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0164】
また、以上の各実施形態では、圧縮機Cを高速回転させるために好適な定速電動機51として、4極の誘導電動機を例示し、圧縮機Cの回転数を一定の範囲内で可変速させるために好適な可変速電動機71として、12極の誘導電動機を例示している。しかしながら、駆動対象を高速回転させる必要がない場合には、定速電動機51や可変速電動機71として他のタイプの電動機を用いてもよい。
【0165】
また、以上の実施形態では、軸挿通孔74が形成されている可変速ロータ72が第一ロータを成し、この軸挿通孔74に挿通される定速ロータ52が第二ロータを成している。しかしながら、定速ロータに軸挿通孔が形成され、この軸挿通孔に可変速ロータが挿通される場合には、定速ロータが第一ロータを成し、可変速ロータが第二ロータを成すことになる。
【0166】
また、以上の各実施形態では、可変速ロータ72と可変速入力軸Avとを接続する可変速用フレキシブルカップリング95が第一フレキシブルカップリングを成し、定速ロータ52と定速入力軸Acとを接続する定速用フレキシブルカップリング97が第二フレキシブルカップリングを成している。しかしながら、定速用フレキシブルカップリングが可変速用フレキシブルカップリングの外周側に配置される場合、定速用フレキシブルカップリングが第一フレキシブルカップリングを成し、可変速用フレキシブルカップリングが第二フレキシブルカップリングを成すことになる。