【実施例】
【0017】
図1に示すように、本実施例に係る枚葉印刷機は、多色刷りに用いられるものであり、被印刷物としてのシート5を供給するシート供給部1と、シート5に印刷を行う印刷部2と、印刷されたシート5を排出するシート排出部3と、その他の付属装置とで構成されている。
【0018】
シート供給部1には、多数のシート5を積載する上下二段の積載台6a,6bが設けられており、上段の積載台6a上のシート5を、図示しないサッカ装置で一枚ずつ吸引してフィーダボード7上へ送り出し、スウィング装置8により給紙胴(渡胴)9を介して印刷部2の一色目(最上流側オフセット印刷部)の印刷ユニット2aの圧胴10とゴム胴16との間に供給するようになっている。
【0019】
前記印刷部2は、圧胴10とゴム胴16との間に供給されたシート5の下面に所定の色の絵柄を印刷する四つの印刷ユニット2a〜2dを備えている。印刷ユニット2a〜2dはそれぞれゴム胴16と、該ゴム胴16に対接してゴム胴16の二倍の直径を有する圧胴10と、インキツボ装置13および多数のローラからなるローラ群14を有してゴム胴16と対接する版胴11へインキを供給するインキユニット12とを備えている。なお、圧胴10はシート5の搬送方向先端側を保持して、圧胴10の周面の下側でシート5を搬送する。
【0020】
そして、隣接する印刷ユニット2a〜2dの圧胴10間にはそれぞれ1本の渡胴20が介装されており、渡胴20は以下のような構成となっている。
すなわち、
図2及び
図3に示すように、本実施例において渡胴20はスケルトン式の胴であって、二つの爪装置20aが軸心を挟んで対向配置されており、爪装置20a以外の胴周空間部は覆われることなく胴外へ解放されている(すなわち、シリンダー状のシート搬送面を持っていない)。渡胴20の爪装置20aは、圧胴10で搬送されているシート5を受け取り、シート5の搬送方向先端側を保持して渡胴20の周面の上側でシート5を搬送する。
【0021】
そしてこの渡胴20には、胴中エアー吐出装置21、渡胴上部エアー吸引装置22、渡胴上部エアー吐出装置23及び渡胴下部エアー吐出装置24が設けられている。なお、
図2中一点鎖線で示す符号25は、渡胴20の回転に伴う軌跡(シリンダー状のシート搬送面に対応する面。以下、渡胴回転軌跡という)である。
【0022】
胴中エアー吐出装置21は、渡胴20の胴心部、具体的には、爪装置20aを保持する爪保持部材20bの外側であり、二つの爪装置20aの間にそれぞれ設けられて、回転軸に対し径方向外側に向かってエアーを吐出する。なお、爪保持部材20bは二つの爪装置20aを結ぶ略長方形の断面を持ち、二つの爪装置20aの部分以外は渡胴回転軌跡25の内側に設けられている。さらに、胴中エアー吐出装置21も渡胴回転軌跡25の内側に設けられている。
【0023】
渡胴上部エアー吸引装置22は、ガイドプレート(以下、渡胴上部吸着ガイドという)22aと、複数(
図2では三つ)の吸引ファン22bとから構成されている。渡胴上部吸着ガイド22aは、渡胴20の上方に、渡胴回転軌跡25に沿って該渡胴回転軌跡25とは所定の間隙を有するように設けられた中空の板状の部材であり、その渡胴20側の面には孔が全面にわたって多数形成されている。吸引ファン22bは、渡胴上部吸着ガイド22aの渡胴20とは反対側の面に周方向に沿って配設され、その配設部分に設けられた渡胴上部吸着ガイド22aの孔を介して渡胴20側から径方向外側へ向かってエアーを吸引する。
【0024】
渡胴上部エアー吐出装置23は、DCブロワ23aと該DCブロワ23aに配管23cを介して接続された二つの渡胴上部エアー吐出部材23bとから構成されている。渡胴上部エアー吐出部材23bは、圧胴10から渡胴20へのシート受け渡し位置(圧胴10の渡胴回転軌跡25との対接点)よりも上方かつ軸方向両端側に配設されてそれぞれ渡胴20を支持するフレーム4に固定されており、渡胴20の上部で搬送されているシート5が渡胴上部吸着ガイド22aに沿って搬送されるように、渡胴20の軸方向中心側かつ上方に向かってエアーを吐出する。つまり、シート5を渡胴上部吸着ガイド22a側へ吹き上げる。
【0025】
渡胴下部エアー吐出装置24は、DCブロワ24aと該DCブロワ24aに配管24cを介して接続された渡胴下部エアー吐出部材24bとから構成されている。渡胴下部エアー吐出部材24bは、フレーム4に固定され、渡胴20の下方に渡胴回転軌跡25の周方向に沿って二列設けられるとともに渡胴20の回転軸方向に沿って複数(
図3では五つ)配設されており、渡胴20により搬送されているシート5が該渡胴20と接触しないように、それぞれ上方かつ渡胴20の周面にほぼ平行な方向に向かって、つまり、渡胴20とシート5との間に、エアーを吐出する。
【0026】
また、本実施例において圧胴10には、圧胴下部エアー吐出装置15が設けられている。圧胴下部エアー吐出装置15は、ガイドプレート(以下、圧胴下部エアーガイドという)15aと、複数(
図2では二つ)の吐出ファン15bとから構成されている。圧胴下部エアーガイド15aは、上記シート受け渡し位置の近傍であって該受け渡し位置の上流側、換言すると、圧胴10の胴周面下側かつ前記受け渡し位置側に、圧胴10の周面に沿って該圧胴の胴周面とは所定の間隙を有するように設けられた中空の板状の部材であり、その圧胴10側の面には孔が全面にわたって多数形成されている。吸引ファン15bは、圧胴下部エアーガイド15aの圧胴10とは反対側の面に周方向に沿って配設され、その配設部分に設けられた圧胴下部エアーガイド15bの孔を介し圧胴10側へ向かってエアーを吐出する。
【0027】
上述した印刷部2によりオフセット印刷されたシート5は、4色目の印刷ユニット2dの圧胴10から排紙胴(渡胴)30に受け渡され、排紙チェーン31により順次搬送されて、前後二段のパイル32a,32b上へ選択的に排出されるようになっている。
【0028】
なお、本実施例において、印刷ユニット2a〜2dにより印刷手段を構成し、胴中エアー吐出装置21により胴中エアー吐出手段を構成し、渡胴上部エアー吸引装置22により渡胴上部エアー吸引手段を構成し、渡胴上部エアー吐出装置23により渡胴上部エアー吐出手段を構成し、渡胴下部エアー吐出装置24により渡胴下部エアー吐出手段を構成し、圧胴下部エアー吐出装置15により圧胴下部エアー吐出手段を構成している。
【0029】
このように構成される本実施例に係る枚葉印刷機によれば、隣接する印刷ユニット2a〜2dの間を搬送されるシート5が、シート搬送方向上流側にある圧胴10から渡胴20へ受け渡される際、シート5は、まず圧胴10と圧胴下部エアー吐出装置15の圧胴下部エアーガイド15bとの間を通って渡胴20へ受け渡される。このとき、シート5は圧胴下部エアー吐出装置15から圧胴10の胴周面に向かってエアーを吹き付けられてばたつきが押さえられた状態で圧胴10の周面上を移動することとなる。
【0030】
そして、該シート5が圧胴10から渡胴20へ受け渡されると、該シート5には胴中エアー吐出装置21から渡胴20の回転軸に対し径方向外側に向かってエアーが吹き付けられるとともに渡胴上部エアー吸引装置22の吸引ファン22bにより渡胴上部吸着ガイド22aの孔を介してエアーが吸引され、シート5は圧胴10の周面上から渡胴上部吸着ガイド22aの内周面上に沿ってばたつきが押さえられた状態で移動することとなる。
【0031】
このとき、シート5に対しては、さらに渡胴下部エアー吐出装置24から上方かつ渡胴20の周面にほぼ平行な方向に向かってエアーが吹き付けられるとともに、渡胴上部エアー吐出装置23から渡胴20の軸方向中心側かつ上方に向かってエアーが吹き付けられ、これによってシート5の挙動がより安定したものとなる。
【0032】
このように、本実施例によれば、圧胴10の下方にインキユニット12を備えて圧胴10の下側を搬送されているシート5の下面に印刷を施す印刷機において、シート5のばたつきを押さえて該シート5を安定した挙動で搬送することが可能となり、シート5の印刷面に傷、擦れ等が生じることを抑制することができる。
【0033】
〔他の実施例〕
上述した実施例ではシート5の片面に印刷を施す枚葉印刷機に、胴中エアー吐出装置21、渡胴上部エアー吸引装置22、渡胴上部エアー吐出装置23、渡胴下部エアー吐出装置24、及び圧胴下部エアー吐出装置15を設ける例を示したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、シートの両面に印刷を施す枚葉印刷機に適用してもよい。
【0034】
シートの両面に印刷を施す枚葉印刷機としては、例えば
図1の印刷ユニット2a,2bでシートの一方の面に印刷を施し、印刷ユニット2c,2dでシートの他方の面に印刷を施すことが考えられる。この場合、印刷ユニット2c,2dでは
図1に示す渡胴20の位置に圧胴が配設され、該印刷ユニット2c,2dの圧胴間に渡胴が配設される。さらに、これら印刷ユニット2c,2dではインキユニット、版胴及びゴム胴は圧胴の上方に配設される。
【0035】
そして、シートは印刷ユニット2bの圧胴から印刷ユニット2cの圧胴に受け渡され、印刷ユニット2cで圧胴の上方に設けられたインキユニット、版胴、ゴム胴によって他方の面に印刷が施された後、渡胴を介して印刷ユニット2dの圧胴に受け渡され、印刷ユニット2dで圧胴の上方に設けられたインキユニット、版胴、ゴム胴によって他方の面にさらに印刷が施された後、排紙胴30に受け渡され排出される。
【0036】
このように構成される枚葉印刷機においては、とくに印刷ユニット2aの圧胴に圧胴下部エアー吐出装置15を設け、印刷ユニット2a,2b間に設けられる渡胴に胴中エアー吐出装置21、渡胴上部エアー吸引装置22、渡胴上部エアー吐出装置23、及び渡胴下部エアー吐出装置24を設けることにより、上述した実施例と同様の作用効果を得ることができ、好適である。