特許第6385000号(P6385000)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385000
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】移動式電源システム、発電ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20180827BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20180827BHJP
   B62D 53/06 20060101ALI20180827BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B60P3/00 U
   H02P9/04 J
   B62D53/06 A
   F02M37/00 321Z
   F02M37/00 301Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-225564(P2014-225564)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-88315(P2016-88315A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】平井 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公彦
(72)【発明者】
【氏名】川島 将
(72)【発明者】
【氏名】二宮 元行
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 守
(72)【発明者】
【氏名】畠山 丈正
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇二
(72)【発明者】
【氏名】山科 均
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−059054(JP,A)
【文献】 特開2009−227126(JP,A)
【文献】 特開2001−020818(JP,A)
【文献】 特開平06−293233(JP,A)
【文献】 特開平08−207648(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0104578(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/103060(WO,A1)
【文献】 特開2007−116788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00
B62D 53/06
H02P 9/04
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される発電機と、がそれぞれコンテナ内に収容された発電ユニットと、
前記エンジンおよび前記発電機を制御する制御盤と、
前記エンジンに接続される燃料タンクと、
前記制御盤と前記発電ユニットとを接続する配線、および前記燃料タンクと前記発電ユニットとを接続する配管と、を備え、
前記発電ユニットは、
前記コンテナの底壁部を介して前記配線および配管が接続される状態と、前記コンテナの底壁部よりも上方の壁部を介して前記配線および配管が接続される状態と、を切り替え可能とされている移動式電源システム。
【請求項2】
前記発電ユニットは、走行移動可能な移動体上に着脱可能に設けられる請求項1に記載の移動式電源システム。
【請求項3】
前記移動体は、トラクターにより牽引されるトレーラであり、
前記制御盤と前記発電ユニットとを接続する配線、および前記燃料タンクと前記発電ユニットとを接続する配管が、前記トレーラに固定されるとともに、前記制御盤および前記発電ユニットに対し、下方から着脱可能とされる請求項2に記載の移動式電源システム。
【請求項4】
前記制御盤と前記発電ユニットとを前記トレーラから降ろした状態で、前記制御盤と前記発電ユニットとを接続する他の配線および他の配管を備える請求項3に記載の移動式電源システム。
【請求項5】
前記発電機は、前記発電ユニット内において、前記制御盤に近接する側に配置されている請求項3又は4に記載の移動式電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動式電源システム、発電ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電源の確保ができない場所における電源供給のため、自走可能な車両のシャシー上に、エンジン発電機を備えた移動用電源車が用いられている(例えば特許文献1参照。)。
この特許文献1に開示された構成においては、シャシー上に設けられたサブプレートに、発電機と、発電機を覆う防音カバーとが着脱自在に設けられている。発電機をメンテナンスする際には、防音カバーをつり上げてサブプレートから取り外し、発電機の保守点検を行う。また、発電機自体をオーバーホールする際には、発電機をサブプレートから取り外してオーバーホール作業行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−207648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまでの移動用電源車は、エンジン発電機を搭載した車両を点検したりメンテナンスしたりする場合、発電機自体を使用できなくなる場合がある。例えば、発電機を車両から降ろして使用することも考えられるが、エンジン発電機と、このエンジン発電機を制御する制御装置との間の配線および配管の接続が設置場所の制約により困難になる可能性がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、設置場所の制約による影響を抑制して、迅速に運用を開始することが可能な移動式電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の第一態様によれば、移動式電源システムは、エンジンと、前記エンジンにより駆動される発電機と、がそれぞれコンテナ内に収容された発電ユニットと、前記エンジンおよび前記発電機を制御する制御盤と、前記エンジンに接続される燃料タンクと、前記制御盤と前記発電ユニットとを接続する配線、および前記燃料タンクと前記発電ユニットとを接続する配管と、を備え、前記発電ユニットは、前記コンテナの底壁部を介して前記配線および配管が接続される状態と、前記コンテナの底壁部よりも上方の壁部で前記配線および配管が接続される状態と、を切り替え可能とされている。
このように構成することで、移動式電源システムの設置場所において、例えば、制御盤と発電ユニットとを接続する配線、および燃料タンクと発電ユニットとを接続する配管が発電ユニットの底壁部よりも下方のピット等に配索されている場合には、底壁を介してこれら配線および配管を発電ユニットに接続できる。さらに、底壁部よりも下方にピット等が形成されていない場合には、底壁よりも上方の壁部を介して配線および配管を接続することができる。その結果、設置場所の状況に応じて配線および配管のルートを切り替えて、迅速に運用を開始することができる。
【0006】
この発明の第二態様によれば、移動式電源システムは、第一態様における発電ユニットが、走行移動可能な移動体上に着脱可能に設けられるようにしてもよい。
このように構成することで、移動体上で発電可能な状態から、例えば移動体から発電ユニットを降ろして陸置きする際に、発電可能になるまでの時間を短縮できる。また、移動体が無くても、発電ユニットや制御盤を陸置きして発電を行うことができるため、移動体のメンテナンス時であっても発電を行うことができる。
【0007】
この発明の第三態様によれば、移動式電源システムは、第二態様における移動体が、トラクターにより牽引されるトレーラであり、前記制御盤と前記発電ユニットとを接続する配線、および前記燃料タンクと前記発電ユニットとを接続する配管が、前記トレーラに固定されるとともに、前記制御盤および前記発電ユニットに対し、下方から着脱可能とされてもよい。
このように構成することで、トレーラに搭載した状態においては、配線や配管をトレーラに確実に固定しておくことができる。また、制御盤と発電ユニットとをトレーラから降ろすときには、配線や配管を取り外す必要が無いので、作業を効率よく行うことができる。
【0008】
この発明の第三態様によれば、移動式電源システムは、第二態様において、前記制御盤と前記発電ユニットとを前記トレーラから降ろした状態で、前記制御盤と前記発電ユニットとを接続する他の配線および他の配管を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、制御盤と発電ユニットとを陸置きした状態においても、他の配線および他の配管によって制御盤と発電ユニットを容易に接続することができる。
【0009】
この発明の第四態様によれば、移動式電源システムは、第一から第四態様の何れか一つの態様において、前記発電機は、前記発電ユニット内において、前記制御盤に近接する側に配置されてようにしてもよい。
このように構成することで、制御盤と発電機とを接続する配線を、発電機に対して制御盤側から容易に接続することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記移動式電源システムによれば、設置場所の制約による影響を抑制して、迅速に運用を開始することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の一実施形態における移動式電源システムの構成を示す側面図である。
図2】上記移動式電源システムの構成を示す平面図である。
図3】上記移動式電源システムを構成する発電ユニットを後方から見た図である。
図4】上記発電ユニットの内部構成を示す左側断面図である。
図5】上記発電ユニットの内部構成を示す右側断面図である。
図6】上記発電ユニットの内部構成を示す平断面図である。
図7】上記発電ユニットにおいて、配線および配管が、コンテナの底壁部を介して接続される状態と、コンテナの底壁部よりも上方の壁部を介して接続される状態と、を切り替え可能とする構成の一例を示す図である。
図8】上記移動式電源システムを陸置きした状態を示す側面図である。
図9】上記移動式電源システムを、ピットが形成された場所に陸置きした状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一実施形態に係る移動式電源システムを図面に基づき説明する。
図1は、この発明の一実施形態における移動式電源システムの構成を示す側面図である。図2は、上記移動式電源システムの構成を示す平面図である。図3は、上記移動式電源システムを構成する発電ユニットを後方から見た図である。
図1図2に示すように、この実施形態の移動式電源システム10は、発電ユニット20と、制御盤30と、燃料タンク40と、潤滑油タンク50と、マフラー60と、を備える。
【0013】
この移動式電源システム10は、これら発電ユニット20、制御盤30、燃料タンク40、潤滑油タンク50、およびマフラー60を搭載するトレーラ(移動体)11をさらに備えている。このトレーラ11は、トラクター(トレーラヘッド)12によって牽引される。
【0014】
トラクター12は、フレーム12fと、キャブ(運転室)12cと、車輪12rと、エンジン(図示無し)と、を備える。
【0015】
フレーム12fは、トラクター12の前後方向に延びている。キャブ12cは、フレーム12fの前部に設けられている。車輪12rは、フレーム12fの前部と後部にそれぞれ設けられている。エンジン(図示無し)は、キャブ12cの下方において、フレーム12fに支持されている。エンジン(図示無し)は、車輪12rを回転駆動させる。つまり、トラクター12は、エンジン(図示無し)によって車輪12rを回転駆動させることで、自走可能となっている。また、トラクター12において、フレーム12fの後部上面には、トレーラ11を連結するカプラ12kが設けられている。
【0016】
トレーラ11は、シャシー13と、車輪部14と、連結ピン15と、ランディングギヤ16と、を備える。
シャシー13は、高床部(接続部)13aと、低床部(床部)13bを備える。高床部13aは、シャシー13の前部に形成されている。高床部13aは、トラクター12のフレーム12f上に支持される。高床部13aの後端部には、下方に向かって延びる垂下部13cが一体に形成されている。
【0017】
低床部13bは、シャシー13の後部に形成されている。低床部13bは、垂下部13cの下端から、後方に向かって連続して形成されている。これにより、低床部13bは、その上面が高床部13aよりも低い位置に形成されている。
【0018】
車輪部14は、低床部13bに設けられている。図3に示すように、車輪部14は、低床部13bに回転自在に支持された車軸14sの両端に、それぞれ1つ又は複数設けられている。
図1に示すように、この実施形態における車輪部14の車軸14sは、シャシー13の後部に、前後方向に間隔をあけて3組設けられている。ここで、車輪部14の車軸14sの数は、1以上であればよく、その数を限定するものではない。
【0019】
連結ピン15は、高床部13aの下面から下方に向けて突出するよう設けられている。連結ピン15は、トラクター12に設けられたカプラ12kに挿入されることで、トラクター12とトレーラ11とを連結する。
【0020】
ランディングギヤ16は、高床部13aの下面において、連結ピン15よりも後方に設けられている。このランディングギヤ16は、油圧等により下方に向けて伸縮可能で、その下端部が地面に接地することで、トレーラ11の前部すなわち高床部13aを下方から支持する。
【0021】
図4は、発電ユニットの内部構成を示す左側断面図である。図5は、発電ユニットの内部構成を示す右側断面図である。図6は、発電ユニットの内部構成を示す平断面図である。
図4図6に示すように、発電ユニット20は、コンテナ21と、エンジン70と、発電機80と、を備える。
【0022】
コンテナ21は、少なくともエンジン70と発電機80とを収容する。
図1に示すように、コンテナ21は、トレーラ11の低床部13b上に搭載される。コンテナ21は、その一部が、シャシー13の後部に設けられた複数の車軸14s,14s,14sの鉛直上方に配置されている。
このコンテナ21は、低床部13bに対し、ツイストロック等の締結部材によって、着脱可能に固定される。
【0023】
図4図6に示すように、コンテナ21は、トレーラ11に搭載した状態で前方を向く前部21fと、後方を向く後部21rとが、それぞれ全面で開口する筒状をなしている。コンテナ21の前部21fには、前方扉24が開閉自在に設けられ、後部21rには、後方扉25が開閉自在に設けられている。コンテナ21は、前方扉24を閉じることで、前部21fの開口を閉塞できるとともに、後方扉25を閉じることで、後部21rの開口を閉塞できるようになっている。
【0024】
前方扉24は、コンテナ21の前部21fにおいて、前後方向に直交する幅方向に沿って二枚一対で設けられている。これら前方扉24,24は、コンテナ21の幅方向両側21a,21bに回動自在に連結されている。これにより、前方扉24,24は、いわゆる観音開きとなっている。これら前方扉24には、それぞれ複数のルーバー24rが設けられており、前方扉24,24を閉じた状態でも、コンテナ21の内外の通気を図ることができる。
【0025】
後方扉25は、コンテナ21の後部21rの幅方向一方の側21cに回動自在に連結されている。後方扉25は、幅方向一方の側21cを中心として回動し、全開状態となったときに、コンテナ21の後部21rの開口の全面を開放する。図3に示すように、後方扉25には、複数のルーバー25rが設けられており、後方扉25を閉じた状態でも、コンテナ21の内外の通気を図ることができる。
【0026】
図1に示すように、コンテナ21の側面21sには、開閉可能な複数の側部扉26が設けられている。これらの側部扉26を必要に応じて開くことで、コンテナ21内への立ち入りや、コンテナ21内に設置する各種機器類の操作やメンテナンス、コンテナ21内への外気の導入などを行うことができるようになっている。また、図2図4図6に示すように、コンテナ21の上面21uには、排気ファン27と、吸気口28と、排気口29とが、それぞれコンテナ21の内外を連通するよう形成されている。
【0027】
排気ファン27は、コンテナ21の上面21uに形成された開口27aの内方に、ファン27fを備えている。排気ファン27は、ファン27fを作動させることで、コンテナ21内の空気をコンテナ21外に排出することができる。
【0028】
吸気口28は、コンテナ21の上面21uに開口している。吸気口28は、エンジン70で発生する負圧により、コンテナ21外の空気をコンテナ21内に導入する。コンテナ21内には、吸気口28とエンジン70の吸気部(図示無し)とを接続する吸気ダクト74(図5参照)が設けられている。
【0029】
排気口29は、コンテナ21の上面21uに開口している。コンテナ21内には、排気口29とエンジン70の排気部(図示無し)とを接続する排気ダクト71が設けられている。
【0030】
エンジン70は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン70は、燃料タンク40から供給される燃料と、吸気口28から吸気ダクト74を通してエンジン70内に取り込まれた空気とを混合して燃焼させることで作動し、出力軸(図示無し)を回転駆動させる。エンジン70で燃料と空気との混合気を燃焼させることで発生する排気は、排気ダクト71(図4図5参照)を通して排気口29からコンテナ21外に排出される。
【0031】
図1図3に示すように、マフラー60は、エンジン70からの排気音を消音する。マフラー60は、発電ユニット20のコンテナ21の上面21u上に設置される。マフラー60は、マフラーチャンバ61と、排気取込部62と、排気ノズル63と、を備える。
【0032】
マフラーチャンバ61は円筒状で、その内部に、消音材、排気浄化装置等が内蔵されている。マフラーチャンバ61は、下方に向けて延びる脚部61aを備えている。マフラーチャンバ61は、脚部61aをコンテナ21の上面21uに接地させ、コンテナ21に対してボルト等によって着脱可能に固定される。この実施形態において、マフラーチャンバ61は、直列に2個備えられている。双方のマフラーチャンバ61は、接続部64によって互いに連通している。
【0033】
排気取込部62は、一方のマフラーチャンバ61から下方に向けて延びるよう設けられている。排気取込部62は、コンテナ21の上面21uに設けられた排気口29に、ボルト等によって着脱可能に接続される。
排気ノズル63は、他方のマフラーチャンバ61から上方に向けての延びるよう設けられている。
【0034】
このようなマフラー60においては、エンジン70から排気ダクト71を通して排出される排気ガスが、排気口29を介して排気取込部62に送り込まれる。送り込まれた排気ガスは、マフラーチャンバ61,61内で消音、および排気浄化がなされ、排気ノズル63から大気中に排出される。
【0035】
マフラー60は、エンジン70を作動させるとき、すなわち移動式電源システム10を稼働させるときに、コンテナ21の上面21u上に設置される。マフラー60は、移動式電源システム10を搭載したトレーラ11がトラクター12によって牽引されて移動する際には、コンテナ21の上面21uから取り外される。これは、移動式電源システム10を搭載したトレーラ11が、道路交通法に規定された、車両の全高の範囲内に収まるようにするためである。取り外したマフラー60は、トレーラ11に設けられた空所S1、又は他の車両等に搭載して、移動式電源システム10とともに移動させることができる。
【0036】
図4から図6に示すように、エンジン70を冷却するため、コンテナ21内には、ラジエタ72が収容されている。ラジエタ72は、エンジン70と冷却液配管(図示無し)を介して連結されている。エンジン70に形成された冷却液流路(図示無し)と、ラジエタ72との間で、ウォータポンプ(図示無し)によって、冷却液配管(図示無し)を介して例えば水等の冷却液が循環される。冷却液は、ラジエタ72において、外気と熱交換することで冷却される。ラジエタ72で冷却された冷却液をエンジン70に送り込むことで、エンジン70の冷却がなされる。
【0037】
ラジエタ72は、コンテナ21の後部21rに、後方扉25と対向して設けられている。このラジエタ72は、コンテナ21の後部21rの開口を塞ぐように設けられている。
ラジエタ72は、コンテナ21の上面21uに設けられた排気ファン27を作動させると、コンテナ21内で、コンテナ21の後部21rの開口から排気ファン27に向かう流れが生じる。この空気の流れがラジエタ72を通過することで、ラジエタ72内を通る冷却液との熱交換がなされ、冷却液が冷却される。
【0038】
ここで、コンテナ21内には、ラジエタ72および排気ファン27が設けられたコンテナ21の後部領域と、エンジン70および発電機80が設けられた前部領域とを仕切る仕切り部材75が設けられている。これにより、ラジエタ72を通過して熱せられた空気による影響がエンジン70および発電機80に及ぶことを抑制している。
【0039】
発電機80は、コンテナ21内の前方に収容されている。発電機80は、エンジン70の出力軸(図示無し)によって駆動され、エンジン70より出力される回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0040】
図1に示すように、制御盤30は、トレーラ11の高床部13a上に設置されている。制御盤30の箱状の筐体33内には、エンジン70や発電機80の作動を制御するためのコントローラ(図示無し)等が収められている。制御盤30は、コンテナ21と同様、トレーラ11の高床部13aに対し、ツイストロック等の締結部材によって着脱可能に締結される。
制御盤30は、トレーラ11をトラクター12に連結した状態で、トラクター12のフレーム12fの後部に設けられた車輪12rの上方に配置されている。制御盤30は、配線31を介し、コンテナ21内のエンジン70や発電機80に接続されている。
【0041】
燃料タンク40は、トレーラ11の低床部13bの最前部、すなわち垂下部13cに近接した位置に設けられている。燃料タンク40は、燃料配管41を介し、エンジン70に燃料を供給する。
潤滑油タンク50は、トレーラ11の低床部13bの最前部、すなわち垂下部13cに近接した位置に、燃料タンク40に隣接して設けられている。潤滑油タンク50は、潤滑油供給配管51を介し、エンジン70の下部に設けられたオイルパン(図示無し)に潤滑油を供給する。
【0042】
これら燃料タンク40および潤滑油タンク50は、発電ユニット20に対して、前後方向に間隔をあけて配置されている。これにより、トレーラ11の低床部13b上には、燃料タンク40および潤滑油タンク50と、発電ユニット20との間に、空所S1が形成されている。
【0043】
前記配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51は、制御盤30、燃料タンク40、および、潤滑油タンク50から下方に導出されている。これら、前記配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51は、トレーラ11のシャシー13に沿って発電ユニット20の下方に至るように配索されている。配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51は、発電ユニット20の下方で、上方に向けて延び、コンテナ21内のエンジン70、発電機80に接続される。これら配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51は、それぞれシャシー13に対して固定されている。
【0044】
ここで、制御盤30の筐体33は、その底壁部33zに、配線31が下方から接続される第一接続部33jを備えている。コンテナ21は、その底壁部21zに、配線31、燃料配管41、潤滑油供給配管51がそれぞれ下方から接続される第一接続部21jを備えている。
【0045】
第一接続部33j,21jは、シャシー13上に、制御盤30、コンテナ21を搭載する際に、シャシー13に対して固定された配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51がワンタッチで接続できるように構成してもよい。もちろん、第一接続部33j,21jは、シャシー13上に、制御盤30、コンテナ21を搭載した後に、シャシー13に対して固定された配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51を手作業でつなぎ込むようにしてもよい。
【0046】
また、第一接続部33j,21jは、制御盤30、コンテナ21内に設けても良い。この場合、制御盤30、コンテナ21の底壁部33z、21zに開口部(図示無し)を形成しておく。このような構成においては、シャシー13上に、制御盤30、コンテナ21を搭載した後に、シャシー13に対して固定された配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51のそれぞれの先端部を、開口部を通して、制御盤30、コンテナ21内に引き込み、制御盤30、コンテナ21内で第一接続部33j,21jに接続する。また、このような構成においては、不使用時に開口部(図示無し)を閉塞可能な蓋体(図示無し)を備えても良い。
【0047】
また、制御盤30の筐体33の底壁部33zよりも上方の壁部33xには、配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51が着脱可能に接続される第二接続部33kが形成されている。同様に、コンテナ21の底壁部21zよりも上方の壁部21xには、配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51が着脱可能に接続される第二接続部21kが形成されている。
第二接続部33k,21kは、配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51を手作業でつなぎ込むようにしてもよい。
また、第二接続部33k,21kは、制御盤30、コンテナ21内に設けても良い。この場合、制御盤30、コンテナ21の壁部33x、21xに開口部(図示無し)を形成しておく。このような構成においては、配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51のそれぞれの先端部を、開口部を通して、制御盤30、コンテナ21内に引き込み、制御盤30、コンテナ21内で第二接続部33k,21kに接続する。また、このような構成においては、不使用時に開口部(図示無し)を閉塞可能な蓋体(図示無し)を備えても良い。
【0048】
また、制御盤30は、第一接続部33jと、第二接続部33kとを選択的に切り換えるスイッチ等の切換機構(図示無し)を備える。
【0049】
図7は、上記発電ユニットにおいて、配線および配管が、コンテナの底壁部を介して接続される状態と、コンテナの底壁部よりも上方の壁部を介して接続される状態と、を切り換え可能とする構成の一例を示す図である。
この図7に示すように、発電ユニット20は、第一接続部21jと、第二接続部21kとを選択的に切り換えるスイッチ21m、三方弁21n等の切換機構(図示無し)を備える。これにより、発電ユニット20は、コンテナ21の底壁部21zにおいて第一接続部21jを介して配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51が接続される状態と、コンテナ21の底壁部21zよりも上方の壁部21xにおいて第二接続部21kで配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51が接続される状態と、を切り替え可能とされている。
【0050】
上記したような移動式電源システム10は、トレーラ11をトラクター12で牽引して任意の位置に移動させることができる。また、トラクター12を停止させ、トレーラ11上の移動式電源システム10を稼働させることで、エンジン70により発電機80を駆動して発電させて、この発電した電力を外部へ供給することができる。
【0051】
図8は、移動式電源システムを陸置きした状態を示す側面図である。
この図8に示すように、トレーラ11から、移動式電源システム10を構成する制御盤30、燃料タンク40、潤滑油タンク50、発電ユニット20を降ろし、任意の場所に設置(陸置き)することもできる。
この場合、トレーラ11のシャシー13に固定された配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51は、制御盤30、燃料タンク40、潤滑油タンク50、および、コンテナ21から取り外す。
次いで、任意の場所に設置した制御盤30の第二接続部33k、燃料タンク40、潤滑油タンク50、および、発電ユニット20の第二接続部21kに、別途用意した配線(他の配線)31B、燃料配管(他の配管)41B、潤滑油供給配管(他の配管)51Bを接続する。
【0052】
図9は、移動式電源システムを、ピットが形成された場所に陸置きした状態を示す側面図である。
この図9に示すように、接地面に、ピットP等が形成されている場合には、別途用意した配線31B、燃料配管41B、および、潤滑油供給配管51BをピットP内に通し、制御盤30、燃料タンク40、潤滑油タンク50、および、発電ユニット20に対して、下方から接続することもできる。
【0053】
したがって、上述した実施形態の移動式電源システム10によれば、重量物である発電ユニット20と制御盤30とを、トレーラ11の後部と前部とに配置することで、移動式電源システム10(トレーラ11)の重量バランスを良好なものとすることができる。これにより、大きな出力を有した発電機80を備えるとともに、安定性に優れた移動式電源システム10を実現することができる。
【0054】
また、発電ユニット20が、少なくともその一部が車軸14sの鉛直上方に位置するよう配置され、制御盤30が、高床部13a上に配置されていることで、発電ユニット20を、トレーラ11の後部に設けられた車軸14sおよび車輪部14により安定して支持することができる。また、制御盤30は、高床部13aを介し、その下方に接続されるトラクター12により、安定して支持することができる。
【0055】
また、エンジン70と制御盤30との間に空所S1を形成することで、トレーラ11上で、この空所S1から発電ユニット20や制御盤30のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0056】
また、発電ユニット20が搭載される低床部13bの上面が高床部13aよりも低く形成されていることで、トレーラ11上に搭載した発電ユニット20の高さを抑えることが可能となる。これにより、道路交通のための法規の範囲内で、最大限に大きな発電ユニット20を搭載することが可能となる。
【0057】
さらに、低床部13b上において、燃料タンク40は、高床部13aに近接して配置されていることで、トレーラ11の前部に、制御盤30と燃料タンク40とを配置できる。これにより、トレーラ11の前部に配置された制御盤30および燃料タンク40と、トレーラ11の後部に配置された発電ユニット20とで、トレーラ11の前後のバランスを良好なものとすることができる。
【0058】
加えて、発電ユニット20に対してマフラー60が着脱可能とされていることで、発電ユニット20の稼働時にマフラー60を装着して、エンジン70からの排気音を消音することができる。また、トレーラ11をトラクター12で牽引して移動するときには、マフラー60を取り外すことで、道路交通のための法規の範囲内で、最大限に大きな発電ユニット20を搭載することが可能となる。
【0059】
また、コンテナ21の後端部にラジエタ72が配置されていることで、ラジエタ72の周囲が制御盤30等によって遮られるのを抑え、ラジエタ72における冷却効率を容易に確保することができる。
【0060】
さらに、発電機80が、コンテナ21内でエンジン70よりも前方に配置されていることで、発電機80と制御盤30とを配線31Bにより接続する際に、空所S1側から作業を容易に行うことができる。
【0061】
また、コンテナ21の前部と後部とに、それぞれルーバー24r,25rが設けられていることで、発電ユニット20の稼働時に、発電ユニット20内に外気を導入することができる。これにより、エンジン70への空気供給効率、およびエンジン70、発電機80、ならびにラジエタ72における冷却効率を高めることができる。また、開閉自在な前方扉24,後方扉25が設けられ、前方扉24は、発電ユニット20と制御盤30との間に空所S1が形成されているので、容易に開くことができる。これにより、開いた前方扉24からコンテナ21内に容易にアクセスすることができる。
【0062】
また、発電ユニット20と制御盤30とが、トレーラ11上に着脱可能に設けられているので、トレーラ11に対し、例えば車両検査(いわゆる車検)やメンテナンス等を行うときには、発電ユニット20と制御盤30とをトレーラ11から取り外すことができる。その結果、トレーラ11が無くても、発電ユニット20や制御盤30を陸置きして、発電を行うことが可能となるため、移動式電源システム10の稼働率を高めることが可能となる。
【0063】
加えて、制御盤30と発電ユニット20とを接続する配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51が、トレーラ11に固定されるとともに、制御盤30および発電ユニット20に対し、下方から着脱可能に接続されていることで、トレーラ11に搭載した状態においては、配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51をトレーラ11に確実に固定しておくことができる。また、制御盤30と発電ユニット20とをトレーラ11から降ろすときには、配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51を取り外す必要が無いので、作業を効率よく行うことができる。
【0064】
また、制御盤30と発電ユニット20とを陸置きする状態では、他の配線31B、他の燃料配管41B,潤滑油供給配管51Bによって制御盤30と発電ユニット20を容易に接続することができる。
【0065】
発電ユニット20は、コンテナ21の底壁部21zを介して配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51が接続される状態と、コンテナ21の底壁部21zよりも上方の壁部21xで配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51が接続される状態と、を切り替え可能とされている。このように構成することで、移動式電源システム10の設置場所において、配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51が発電ユニットの底壁部20zよりも下方のトレーラ11のシャシー13やピットP等に配索されている場合には、底壁部21zを介してこれら配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51を発電ユニット20に接続できる。さらに、底壁部21zよりも下方にシャシー13やピットPが設けられていない場合には、底壁部21zよりも上方の壁部21xを介して配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51を接続することができる。その結果、設置場所の状況に応じて配線31、燃料配管41、および、潤滑油供給配管51のルートを切り替えて、迅速に運用を開始することができる。
【0066】
(その他の変形例)
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、トレーラ11は、高床部13aと低床部13bとを備えるようにしたが、トレーラ11のシャシー13上面が、段違いではなく、同一の高さを有しているようにしてもよい。
さらには、移動式電源システム10および発電ユニット20は、トラクター12で牽引するトレーラ11に限らず、いわゆるトラックの荷台上に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 移動式電源システム
11 トレーラ(移動体)
12 トラクター
12c キャブ
12f フレーム
12k カプラ
12r 車輪
13 シャシー
13a 高床部(接続部)
13b 低床部(床部)
13c 垂下部
14 車輪部
14s 車軸
15 連結ピン
16 ランディングギヤ
20 発電ユニット
21 コンテナ
21f 前部
21m スイッチ
21n 三方弁
21r 後部
21s 側面
21u 上面
21x 壁部
21z 底壁部
23 支柱
24 前方扉
25 後方扉
24r,25r ルーバー
26 側部扉
27 排気ファン
28 吸気口
29 排気口
30 制御盤
31 配線
31B 配線(他の配線)
33 筐体
33k 第二接続部
33x 壁部
33z 底壁部
40 燃料タンク
41 燃料配管
41B 燃料配管(他の配管)
50 潤滑油タンク
51 潤滑油供給配管
51B 潤滑油供給配管(他の配管)
60 マフラー
61 マフラーチャンバ
61a 脚部
62 排気取込部
63 排気ノズル
64 接続部
70 エンジン
71 排気ダクト
72 ラジエタ
80 発電機
P ピット
S1 空所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9