(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
見掛け比容が1.2〜2.0mL/gの粒状体または球形のハイドロタルサイトを原料とする、直径10mm以下、厚さ6mm以下の小型錠剤であって、錠剤の総重量に対してハイドロタルサイト重量が88〜100重量%を含んでなる口腔内速崩壊性小型錠剤。
上記原料のハイドロタルサイトが、積算10%粒径を1として、積算50%粒径が1.2〜2.0、積算90%粒径が2.0〜8.0にあり、平均粒子径が10〜100μmからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
上記原料のハイドロタルサイトが、積算10%粒径が10〜70μm、積算50%粒径が20〜100μm、積算90%粒度が90〜200μmにあることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
上記原料のハイドロタルサイトが、積算10%粒径を1として、積算50%の粒径が1.5〜1.7を示していることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
【背景技術】
【0002】
近年、疾病の治療において、患者の生活の質を改善することを目的として製剤学的工夫を凝らした製剤開発が盛んに行われている。例えば、薬効を低下させずに小型化して服用し易くした製剤を提供することが行われている。これは剤形や製剤の大きさなどの飲みやすさは、患者が薬剤規定どおりに服薬することを確保するためには重要な要素となることによる。また、薬剤が規定通りに福与されないと、治療効果の低減および耐性菌出現リスクを高めることにつながる恐れがあり、錠剤の小型化による服用性の向上は治療、耐性菌出現抑制の両観点からも有効な手段と思われる。
さらに、口腔内で迅速に崩壊・溶解する固形錠剤の開発が進められている。口腔内崩壊錠剤は、口腔内の少量の唾液でも瞬時に崩壊することから服用が容易であり、通常の錠剤では薬剤の嚥下が困難な患者、高齢者あるいは小児のために最適な製剤である。また水なしで服用できるため、服用の場所や時間が制限されない利点も有する。
こうした中で、錠剤の小型化と崩壊性の改善を単独で、あるいは同時に実施することができる技術の開発がなされている。
【0003】
このような製剤学的な工夫の一例として次のものを挙げることができる。
錠剤の崩壊性の改善に関する例としては、 口腔内の唾液(少量の水)で速やかに崩壊する錠剤の組成物において崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、賦形剤として結晶セルロース、滑沢剤を混合した物からなり、低置換度プロピルセルロースと結晶セルロースの配合比が1:2.3から1:9であることを特徴とする速崩壊性錠剤であって、小型シャーレによる崩壊試験で崩壊時間が70秒以下で、口腔内で唾液(少量の水)により数十秒程度で速やかに崩壊する錠剤を提供することを可能とする錠剤(特許文献1)が挙げられる。
【0004】
錠剤の小型化に関する例としては、小型化により服用を容易にした塩酸サルポグレラート経口投与製剤を提供することを目的として、製剤あたりの塩酸サルポグレラートの含有率を40%以上とし、崩壊を促す添加物として、セルロース誘導体、化学的に修飾されたデンプンまたは化学的に修飾されたセルロース誘導体、またはクロスポビドンを添加することにより、打錠障害などを抑えた良好な製造性を示し、消化管内での製剤からの塩酸サルポグレラートの溶出速度が速く、良好な保存安定性を示す小型化塩酸サルポグレラート経口投与製剤(特許文献2)が挙げられる。
【0005】
錠剤の小型化および崩壊性の改善を同時に達成する例としては、一般的な生産設備にて生産性良く製造でき、硬度が高く、崩壊時間の短い、小型化されたL−カルボシステイン含有口腔内崩壊錠の提供することを目的として、(A)、(B)及び(C)を含有し、(A)の含有量が錠剤中70質量%以上であり、(C)の含有量が錠剤中5質量%以上30質量%以下である、口腔内崩壊錠が挙げられる。
(A)L−カルボシステイン又はその塩、(B)2質量%水溶液の25℃における粘度が10mPa・s以下である水溶性結合剤、(C)崩壊剤(特許文献3)や、小型化されたL−カルボシステイン含有口腔内崩壊錠を一般的な生産設備にて生産性良く製造することを目的とし、カルボシステイン、イソマルトおよび崩壊剤を含有し、カルボシステインの含有量が錠剤中75質量%以上である口腔内崩壊錠(特許文献4)が挙げられる。
【0006】
上記のように錠剤の小型化や口腔内での崩壊性の改善が図られているなかでハイドロタルサイトに係る錠剤に関しても同様の改善が試みられている。
ハイドロタルサイト粒子は、胃酸に対する強い中和力、pH3〜5の持統性、抗ペプシン作用などの優れた特性を利用して、一般的な鎮痛剤や制酸剤に配合されている。しかし、ハイドロタルサイト単味の錠剤はサイズが大きく、さらに硬度も高いので、小児や高齢者で嚥下困難な患者にとっては服用しにくい錠剤であった。そこで、服用後速やかに口腔内で崩項する経口製剤である口腔内速崩壊小型錠剤を提供する試みがなされている。
例えば、崩壊性球状粒子組成物全体に対して、無機粒子10〜90重量%及び崩壊剤1〜50重量%を含有し、真球度が0.8〜1、粒子強度が100〜2000g/mm2、平均粒子径が10〜500μm、静的比容積が1.5〜5.0mL/g、比表面積が0.15〜500m
2/g、水に接したときの崩壊時間が10分以下であることを特徴とし、無機粒子としてハイドロタルサイトを使用した崩壊性球状粒子組成物(特許文献5)や、カサが低く、打錠したときに小さい錠剤が得られるハイドロタルサイト粒子を主成分とする錠剤を提供することを目的とした、顕微鏡観察下における形状が球状であり、かつ下記式(1)で表される合成ハイドロタルサイト粒子を主成分とする錠剤である。
Mg
xAl
2(OH)
2(x‐y+3)(CO
3)
y・mH
2O (1)
(式中x、yおよびmは5.2≦x≦6.3,1≦y≦2.0,3≦m≦8を満足する値とする。)が提案されている(特許文献6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし固形製剤の強度、および口腔内における崩壊性についての検討は十分ではない。本発明は、口腔内で速やかに崩壊し、製造工程が容易で、かつ製造時および保存時の強度を兼ね備えたハイドロタルサイトの口腔内速崩壊性小型錠剤を提供することを目的とする。
錠剤を小型化することは添加物を減らすことを意味する。特に、小型化しつつ有効成分が高含量の錠剤を開発するには、錠剤を成型する上で重要な添加物の使用量、種類に制限がかかるため、圧縮成型時の打錠障害の発生、得られた錠剤の崩壊性や溶出性などの製剤機能の低下といった問題が生じやすく、製剤化が困難となることが多い。本発明はこうした問題点を解決するものであり、ハイドロタルサイト粒子単独あるいは賦形剤との組成物からなる小型錠剤を提供することを発明の目的とする。
すなわち、本発明は、ハイドロタルサイト単味を有効成分とする、錠剤サイズが小さく、崩壊性に優れ、服用性が良好な新規小型錠剤を提供することを目的とする。小児や高齢者で嚥下困難な患者にとっては服用し易い錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の(1)ないし(10)の口腔内速崩壊性小型錠剤を要旨とする。
(1)見掛け比容が1.2〜2.0mL/gの粒状体または球形のハイドロタルサイトを原料とする、直径10mm以下、厚さ6mm以下の小型錠剤であって、錠剤の総重量に対してハイドロタルサイト重量が88〜100重量%を含んでなる口腔内速崩壊性小型錠剤。
(2)上記原料のハイドロタルサイトが、積算50%粒径20〜100μmであることを特徴とする、上記(1)に記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
(3)上記原料のハイドロタルサイトが、積算10%粒径を1として、積算50%粒径が1.2〜2.0、積算90%粒径が2.0〜8.0にあり、平均粒子径が10〜100μmからなることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
(4)上記原料のハイドロタルサイトが、積算10%粒径が10〜70μm、積算50%粒径が20〜100μm、積算90%粒度が90〜200μmにあることを特徴とする、上記(1)から(3)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
(5)上記原料のハイドロタルサイトが、積算10%粒径を1として、積算50%の粒径が1.5〜1.7を示していることを特徴とする、上記(1)から(4)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
(6)口腔内での崩壊時間が30秒以下である、上記(1)から(5)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
(7)上記
錠剤が、錠剤の製造に適した1種またはそれ以上の医薬上許容される賦形剤を含んでなることを特徴とする、上記(1)から(6)のいずれかに記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
(8)上記の賦形剤が、崩壊剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤および、流動促進剤から選ばれる1種以上を含んでなる、上記(7)に記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
(9)上記の崩壊剤が、結晶セルロースおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種以上を含んでなる、上記(7)に記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
(10)上記の滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムを含んでなることを特徴とする、上記(
8)に記載の口腔内速崩壊性小型錠剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、口腔内で速やかに崩壊し、製造工程が容易で、かつ製造時および保存時の強度を兼ね備えたハイドロタルサイトの口腔内速崩壊性小型錠剤を提供することができる。錠剤のサイズが小さく、崩壊性に優れ、服用性が良好なハイドロタルサイト粒子単味を有効成分とする製剤を見出した。すなわち、錠剤の直径が10mm以下、厚さ6mm以下で崩壊時間が30秒以以内の小型錠剤である。従来のハイドロタルサイト粒子は嵩密度が大きく充填性に難あり、さらに塑性変形性が大きく錠剤化すると超セメント状に硬くなるため親水性の賦形剤の配合比率を高める必要があった。そのため必然的に大きい錠剤にしか成形できなかった。
ハイドロタルサイト原料の、積算90%粒径よりも積算50%粒径が小さいことが重要あり、こうした条件により空隙率の低いすなわち見掛け比容が低い粒状体をすることができる。そうすると、成形性の改善が達成され、型内に多量の粉体を収納することができるため密な小型錠剤を低い打錠圧で形成することができる。本発明で使用される好ましいハイドロタルサイトは、粒径分布や粒度が特定の範囲にあり、粒径は球形すなわち短径/長径の比が0.7〜1.0であることにより、見掛け比容が1.2〜2.0mL/gと充填性が良好な粉粒体となる。見掛け比容においては、実施例の値がかなり小さい値を示していることから、密に詰まった粒体を形成することがわかる。また、粒度分布をみると、積算10%粒径を1として、積算50%粒径が1.2〜2.0、実施例では1.5〜1.7と低い値を示していることが特徴的である。実施例のハイドロタルサイトは長径/短径が1に近く球状態であることが読み取れる。このようなハイドロタルサイトを原料として使用することよってさらなる改善が達成される。成形された錠剤は厚みが薄く密度は大きいにも関わらず錠剤硬度は低く崩壊性が良好である。
【0011】
特殊な製剤技術を必要とすることなく、一般的な設備で工業的な生産が可能な口腔内崩壊錠について検討を行った結果、活性成分であるハイドロタルサイト単味での錠剤化が可能であるが、賦形剤として、結合剤、崩壊剤、滑沢剤および、流動促進剤、あるいは他の薬効成分などから選ばれた1種以上を用いてもよい。崩壊剤などを組み合わせることにより、低い乾式の圧縮圧でも実用上問題ない硬度を有し、かつ速やかな崩壊性と製造性に問題のない口腔内崩壊錠が得られることがわかった。球状ハイドロタルサイト粒子は重質で、かつ圧縮成型時のコンパクションが適度で適正な硬度が維持できるので。賦形剤の比率を少なくでき、その結果錠剤の小型化がスムーズに達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、直径10mm以下、厚さ6mm以下である、 錠剤の総重量に対して活性部分重量が88〜100重量%となる薬理学的有効量のハイドロタルサイトを含んでなる小型錠剤に関し、錠剤の小型化と口腔内での崩壊性の良さを改善した小型錠剤に関する。また、本発明は、錠剤の原料であるハイドロタルサイト粒状体の粒度などを特定することにより錠剤の小型化および崩壊性を更に改善することができたものである。
以下に本発明の小型錠剤について詳細に説明する。
【0014】
[錠剤の大きさ]
本発明の小型錠剤は、直径10mm以下、厚さ6mm以下であり、その形状は特に限定されないがタブレット状であることが好ましい。本小型錠剤は好ましくは錠剤硬度が40〜250Nの範囲にあり、口腔内で30秒以内に崩壊することにより薬剤の嚥下が容易となる。
【0015】
[ハイドロタルサイト]
ハイドロタルサイトは、構造式[M
2+1−xM
3+x(OH)
2][A
n−x/n・mH
2O]で表される様々な化合物のうちのひとつであり、胃酸による胃粘膜破壊を防ぐための制酸剤として優れた性能を持っている。例えば、胃液を約pH4で長時間調整しておく緩衝作用に優れ、十二指腸潰瘍の患者にMg−Al−CO
3系ハイドロタルサイト化合物を処方したケースでは7割近くの患者に回復がみられ、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムの場合にみられる副作用はみられなかったとの報告されているように優れた制酸剤である。そのX線解析パターンによりハイドロタルサイトであることが確認される。
【0016】
本発明で使用される好ましいハイドロタルサイトは、粒径分布や粒度が特定の範囲にあり、粒径は球形すなわち短径/長径の比が0.7〜1.0であることにより、見掛け比容が1.2〜2.0mL/gと充填性が良好な粉粒体となる。
【0017】
本発明で原薬(原料)として使用の球状ハイドロタルサイト粒子は、MgO/A1
20
3のモル比が6.0土1.0、好ましくは、5.8±0.5で
ある。また、平均二次粒子径は、10〜100μm、好ましくは15〜70μm、で、さらに好ましくは20〜50μmで
ある。さらに制酸力が240mL以上、好ましくは260mL以上を示すものである。
【0018】
[ハイドロタルサイト粒状体の粒度および形状]
本発明小型錠剤を製造するにあたり原料として使用されるハイドロタルサイト粒体は、積算10%粒径を1として、積算50%粒径が1.2〜2.0、好ましくは1.4〜1.8、積算90%粒径が2.0〜8.0、好ましくは2.2〜8.0であることが好ましい。
ハイドロタルサイト粒体の粒度分布は小型で崩壊性の良好な錠剤を作成するには重要な条件である。ことに、積算10%粒径、積算90%粒径よりも積算50%粒径が低いことが重要あり、こうした条件により空隙率の低いすなわち見掛け比容が低い粒状体をすることができる。そうすると、型内に多量の粉体を収納することができるため密な小型錠剤を低い打錠圧で形成することができる。成形された錠剤は厚みが薄く密度は大きいにも関わらず錠剤硬度は低く崩壊性が良好であることは表1に示されている。
【0019】
また、ハイドロタルサイト粒体の平均粒径は10〜100μmであることが好ましい。
さらに、ハイドロタルサイト粒体の各区分での粒径範囲は、積算10%粒径が10〜70μm、積算50%粒径が20〜100μm、積算90%粒度が90〜200μmのハイドロタルサイト粒状体を原料とすることが好ましい。
ハイドロタルサイト粒体を構成する各粒子の形状は、球形であることが好ましい。球形であることにより、大小の粒径の粒子をさらに密に充填することが可能となり見掛け比容は低くなる。各粒子の形状は長径と短径の比が0.8よりも1に近似した球体であることが好ましい。
【0020】
[賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤および、流動促進剤]
また、本発明の小型錠剤を成形するには賦形剤として、結合剤、崩壊剤、滑沢剤および、流動促進剤、あるいは他の薬効成分など粗選ばれた1種以上を用いてもよいが、ハイドロタルサイト単味での錠剤化が可能である。
【0021】
本発明の錠剤は、崩壊剤を含むことができる。崩壊剤は、水を含んで膨れる成分、又は水を含んで崩れる成分である。崩壊剤としては、乳糖水和物、無水乳糖、白糖、精製白糖、果糖、ブドウ糖、ブドウ糖水和物、トレハロース等の糖類、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、イソマルト等の糖アルコール類、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。造粒物を口腔内で素早く崩壊させ得る点で、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、マンニトールなどが好ましい。
崩壊剤の含有量は、錠剤の全量に対して、約0.01重量%以上が好ましく、約0.1重量%以上がより好ましく、約1重量%以上がさらにより好ましい。崩壊剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。また、錠剤の全量に対して、約30重量%以下が好ましく、約20重量%以下がより好ましく、約10重量%以下がさらに好ましい。上記範囲であれば、実用上十分な成型性及び崩壊性を得ることができる。
【0022】
また、本発明の錠剤は、結合剤を含むことができる。結合剤は、圧縮時に造粒物を相互に結合させる作用を有するものである。結合剤としては、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。中でも、結晶セルロースおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
結合剤の含有量は、錠剤の全量に対して、約0.01重量%以上が好ましく、約0.1重量%以上がより好ましく、約1重量%以上がさらにより好ましい。また、錠剤の全量に対して、約30重量%以下が好ましく、約20重量%以下がより好ましく、約10重量%以下がさらに好ましい。上記範囲であれば、実用上十分な成形性及び崩壊性を得ることができる。
結合剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
また、本発明の錠剤は、滑沢剤を含むことができる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム等が使用されるが、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0024】
また、本発明の錠剤は、流動促進剤を含むことができる。流動促進剤としては、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素(たとえば、シロイド(Syloid)(登録商標)、エーロジル(Aerosil)(登録商標))が好ましい。
【0025】
また、本発明の錠剤は、着色剤、矯味剤、甘味剤、香料、防腐剤等の医薬品に一般的に使用される添加剤を適量含むことができる。添加剤は、それぞれ、1種を単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。着色剤としては、酸化鉄のような食品・医薬品・化粧品用着色料(FD&Colours)が挙げられる。
矯味剤としては、クエン酸水和物、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
甘味剤としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
香料としては、ウイキョウ油、オレンジ油、カミツレ油、スペアミント油、ケイヒ油、チョウジ油、ハッカ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、ローズ油、ローマカミツレ油、メントール等が挙げられる。
防腐剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸プロピルナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸メチルナトリウム等が挙げられる。
添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。
【0026】
[ハイドロタルサイトの製造]
本発明に使用の球状ハイドロタルサイト粒子の製造方法は、球状炭酸マグネシウムを苛性アルカリ下で水酸化アルミニウムゲルと反応させ。洗浄、脱水、乾燥、篩過を行い、球状のハイドロタルサイト粒子を得た。この球状ハイドロタルサイトを原薬として錠剤を作成される。
【0027】
[錠剤の作成]
小型錠剤の作成には、例えば、球状ハイドロタルサイト粒子原薬88〜100重量%、に対して崩壊剤0〜20重量%、滑沢剤0〜1重量%となるように添加、混合したものを打錠用試料とした。この試料を株式会社前川試験機製作所製TYPE−M型圧縮機を用いて打錠した。打錠圧は0.26〜1.5tf/cm
2が好ましく、0.5〜1.0tf/cm
2がさらに好ましい。
【0028】
[小型錠剤およびハイドロタルサイト粒体の特性の測定方法]
実施例において製造あるいは使用したハイドロタルサイト粒子は下記測定方法で種々の物性を測定した。
(a)ハイドロタルサイト粒子のMgO/Al
2O
3モル比
日本薬局方外医薬品規格2002:「合成ヒドロタルサイト」の定量法に準じて測定し、モル比を算出した。
(b)ハイドロタルサイト粒子の平均2次粒子径
MICROTRAC粒度分布計SPAタイプ(LEEDS&NORTHRUP INSTRUMENTS社製)を用いて測定決定する。
試料粉末700mgを70mlの水に加えて、超音波(NISSEI社製、MODEL US−300、電流300μA)で3分間分散処理した後、その分散液の2−4mlを採って、250m1の脱気水を収容した上記粒度分布計の試料室に加え、分析計を作動させて8分間その懸濁液を循環した後、粒度分布を測定する。合計2回の測定を行い、それぞれの測定について得られた50%累積2次粒子径の算術平均値を算出して、試料の平均2次粒子径とする。
(c)ハイドロタルサイト粒子のBET法比表面積
液体窒素の吸着法により測定した。
(d)液性
試料粉末2.0gを100mL容ビーカーに量り、水50mLを加え、3分間かき混ぜpHメーターで測定した。
(e)見掛け比容
試料を20mLメスカップに静かに流し込み、ガラス棒を用いて表面を平らにした。容量を0.5mLの単位まで読み取った後、内容物の試料重量を0.01gの単位まで量り、mL/gで表示した。
【0029】
(d〉錠剤の硬度
フロイント産業株式会社製Table Tester 8Mにて測定した。
(e)錠剤の厚さ
MITSUTOYO製ノギス65にて測定した。
(f)制酸力
試料0.2gを精密に量り、容最200mLの三角フラスコに入れ、0.1N−HClを正確に100mL加え、密栓して37±2℃で1時間振り混ぜた後、ろ過する。ろ液50mLを正確に量り、過量の塩酸を0.1N水酸化ナトリウム液でpH3.5になるまで、よくかき混ぜながら滴定した。
(g)崩壊性試験
100mL容ビーカーに水50mLを入れ、錠剤を1錠投入して経時的変化を観察した。
(h)安定性試験
40℃、75%RH(加速試験)でガラス瓶に密栓保管したものと開放保管としたものを準備し、種々の加速条件下と保管期間後の錠剤硬度と崩壊時問を測定、さらに錠剤重量と錠剤厚みの変化を調べた。結果を表1に示す。
【実施例1】
【0030】
[ハイドロタルサイト1の製造]
(1)粉砕した硫酸マグネシウム591.6g(2.4mol)と炭酸ナトリウム267.1g(2.52mol)を袋混合する(Na
2CO
3/MgO=1.05)。
(2)10L容ステンレス反応容器に水道水5Lを投入し、70℃に加温後、撹絆しながら(1) で得られた混合物を120秒かけて投入した。
(容器は10L容ステンレス槽、加熱機は(株)東芝製の電気コンロ、撹絆機は東京理化器械(株)製B−100、半径6cmの3枚羽根スクリューを120rpmで回転。)
(3)投入後、30秒問撹絆し、その後は撹絆を停止させた。
(4)撹絆を停止させた状態で、70℃で4時間維持した後に冷却した。
(冷却後の反応液のpH:8.4)
(5)ブフナーロート(ろ紙 直径21cm)を使って吸引ろ過し、脱イオン水3.0Lで洗浄後、脱水した。
(6)脱水物を送風定温乾燥機で100℃×16時間乾燥し、約201gの乾燥品(球状塩基性タン酸マグネシウム)を得た。
(7)3L容ビーカーに脱イオン水1200mLを入れ、撹拌下に上記で得られた球状炭酸マグネシウム150g(1,582mol)を投入した。(撹拌機は東京理化器械(株)製B−100、半径4.5cmの3枚羽根スクリューを120rpmで回転した。)
(8)続けて乾燥水酸化アルミニウムゲル(協和化学工業(株)製銘柄名S−100)を50.52g(0.264mol投入し、十分に混合した(MgO/Al
2O
3=5.99)。
(懸濁液のpH:8.87)
(9)3.3mol/Lの水酸化ナトリウム溶液720mLをメスシリンダーに計量後投入した
(NaOH/Al
2O
3=9.0)。
(10)反応液を90℃まで昇温(昇温速度:1℃/分、加熱機は東芝のクッキングヒーター)し、3時間撹拌(回転数:196rpm)を維持した後に冷却。反応液のpH:12.72)
(11)ブフナーロート(直径12.5cm)を使って吸引ろ過し、脱イオン水4.0Lで洗浄後、脱水した。
(12)脱水物を送風定温乾燥機で100℃×14時間乾燥し、約158gの乾燥品(球状ハイドロタルサイト粒子)を得た。X線による回折結果はハイドロタルサイトを示した。本球状ハイドロタルサイトの物性を
図1に示す。
【実施例2】
【0031】
[ハイドロタルサイト2の製造]
硫酸マグネシウム591.6g(2.4mol)を6Lの水に溶解させ、60℃に昇温後、撹拌下に炭酸ナトリウム267.1g(2.52mol)を60秒かけて投入した以外はすべて実施例1の方法で球状ハイドロタルサイト粒子を得た。X線による解析結果はハイドロタルサイトを示した。本球状ハイドロタルサイトの物性を
図1に示す。
【実施例3】
【0032】
[ハイドロタルサイト3の製造]
炭酸ナトリウム267.1g(2.52mol)を6Lの水に溶解させ、60℃に昇温後,撹拌下に硫酸マグネシウム591.6g(2.4mol)を60秒かけて投入した以外はすべて実施例1と同様の方法で球状ハイドロタルサイト粒子を得た。X綜による解析結果はハイドロタルサイトを示した。本球状ハイドロタルサイトの物性を
図1に示す。
【実施例4】
【0033】
[ハイドロタルサイト4の製造]
(1)濃度1.0mol/lの炭酸ナトリウム水溶液500mLおよび濃度1.0mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液500mLを60℃に温調した。
(2)2L容バッフル付反応槽に上記炭酸ナトリウム水溶液を入れ,撹絆下で上記硫酸マグネシウム水溶液を1000mL/分の速度で添加した。この時の添加速度S(L/min)と反応容積V(L)の比S/Vは1である。また,この時の反応モル比(Na
2CO
3/MgO)は1.0である。(容器は2Lバッフル付反応槽、直径7cmのタービン型スクリューを720rpmで回転した温調のため恒温槽を用いた)。
(3)投入後、30秒間撹絆し、その後は撹絆を停止させた。
(4)撹拌を停止した状態で、60℃で2時間維持した後に冷却した(冷却後の反応液のpH:8.3)。
(5)ブフナーロート(ろ紙直径11cm)を使用して吸引ろ過し、脱イオン水0,7Lで洗浄した。
(6)(1)から(5)の操作を7回繰り返し、約173gの固形分(球状塩基性炭酸マグネシウム)を得た。
(7)この後は、実施例1に同じ。
X線による解析結果はハイドロタルサイトを示した。本球状ハイドロタルサイトの物性を
図1に示す。
【0034】
上記実施例1〜4および比較例1のハイドロタルサイトの、MgO/Al
2O
3モル比、液性(pH)、制酸力、BET比表面積、見掛け比容、粒度分布、X線回折図、および流体の光学顕微鏡写真を
図1に示す。本発明のハイドロタルサイト粒子は、MgO/Al
2O
3モル比、液性(pH)、制酸力、BET比表面積の測定値に関しては実施例と比較例とはほぼ同じ範囲にあり、特に生産力は同等の値を示している。
しかしながら、見掛け比容においては、実施例の値がかなり小さい値を示していることから、密に詰まった粒体を形成することがわかる。また、粒度分布をみると、積算50%の粒径と積算10%の粒径が実施例では1.5〜1.7低い値を示していることが特徴的である。
X線回折からは、実施例、比較例共にハイドロタルサイトであることが読み取れるが、光学顕微鏡写真からは、実施例のハイドロタルサイトは長径/短径が1に近く球状態であることが読み取れる、一方、比較例の粒子はいびつな形状をなしている。
【実施例5】
【0035】
[ハイドロタルサイト錠剤の製造]
実施例2及び4で得られた球状ハイドロタルサイトを原薬とし錠剤を作成した。比較例として協和化学工業株式会社製ハイドロタルサイト(銘柄名:アルカマック)を使用した。それぞれのハイドロタルサイト500mgを原薬とし、これに対し崩壊剤として信越化学工業鮒製日本薬局方、L-HPC“NBD−02 1”または、旭化成ケミカルズ(株)製、日本薬局方、結品セルロース″セオラース101”、又はフロイント産業株製D−マンニトール“SmartEx QD−100“、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを0.5〜1wt%配合し、ポリエチレン袋中で左右から交互に30回振り、混合する。この混合物を打錠用試料とし、(株)前川試験機製作所製TYPE−M型静的圧縮機にて圧縮成型した。また、上記の崩壊剤、滑沢剤を含まないハイドロタルサイトのみからなる錠剤を圧縮成形した。圧縮成型用試料は500〜600mgを直径10mmの臼に充填し、圧縮圧0.25、0.5、1.0tf/cm
2で成型し、錠剤とした。錠剤の評価は表1に示す。
【実施例6】
【0036】
実施例2で得られた球状ハイドロタルサイトを原薬とし、下記配合で錠剤を作成し、安定性試験を行った。比較例として協和化学工業株式会社製ハイドロタルサイト(銘柄名:アルカマックSH)を原薬として使用した。結果は本発明の球状ハイドロタルサイトを原薬とした錠剤の安定性は優れていることを示した。結果を表2に示す。
(1錠中)
ハイドロタルサイト500mg
崩壊剤・結合剤 75mg
甘味料 10mg
着香料 5mg
滑沢剤 0.5〜1mg
【0037】
協和化学工業株式会社製ハイドロタルサイト(銘柄名:アルカマックSH)を使用して実施例と同様の条件で錠剤を作成その特性を測定して表1に示した。