特許第6385044号(P6385044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385044
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】吸収式冷凍システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 15/00 20060101AFI20180827BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20180827BHJP
   F25B 29/00 20060101ALI20180827BHJP
   F25B 30/04 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F25B15/00 306Z
   F25B27/00 L
   F25B29/00 421
   F25B30/04 510C
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-219906(P2013-219906)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81730(P2015-81730A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】小粥 正登
(72)【発明者】
【氏名】市野 義裕
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 元巳
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−127574(JP,A)
【文献】 特開平08−100959(JP,A)
【文献】 特開2012−242074(JP,A)
【文献】 特開平11−304260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00
F25B 27/00
F25B 29/00
F25B 30/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器からの排熱又はエネルギー源として永続的に利用可能な再生可能エネルギーにより熱媒を加熱する集熱器と、
前記集熱器にて加熱された熱媒を導入して再生器における希溶液を加熱し、当該再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器の循環サイクルによって冷却液を得る吸収式冷凍機と、
前記吸収式冷凍機にて得られた冷却液を前記吸収式冷凍機の前記蒸発器と外部機器との間で循環させる循環流路と、
前記循環流路から分岐した分岐流路と、
前記循環流路を流れる冷却液の流れ方向を切り替えて前記分岐流路に流入させる切替弁と、
前記分岐流路上に設けられ、前記吸収式冷凍機にて得られた冷却液を導入して蓄冷すると共に蓄えた冷熱を前記外部機器に供給する蓄冷槽と、
所定条件が満たされた場合に、前記吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号を送信し、前記所定条件が満たされない場合に蓄冷運転信号の送信を禁止するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記蓄冷運転信号を送信した場合、前記切替弁を制御して前記吸収式冷凍機からの冷却液を前記分岐流路に流入させ、
前記吸収式冷凍機は、前記コントローラから前記蓄冷運転信号を受信して冷却液を前記分岐流路を介して蓄冷槽に供給する場合、前記コントローラから前記蓄冷運転信号を受信しておらず冷却液を前記分岐流路を介することなく前記外部機器に供給する場合よりも冷却液の目標温度を低下させる
ことを特徴とする吸収式冷凍システム。
【請求項2】
前記蓄冷槽の蓄冷温度を検出する蓄冷槽温度センサをさらに備え、
前記吸収式冷凍機は、前記蓄冷運転信号を受信している場合において、前記蓄冷槽温度センサにより検出された蓄冷温度が第1所定値以上となるときに、前記蓄冷槽に冷却液を導入して蓄冷する蓄冷運転を開始し、前記蓄冷槽温度センサにより検出された蓄冷温度が第1所定値よりも低い第2所定値以下となるときに、前記蓄冷運転を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷凍システム。
【請求項3】
機器からの排熱又はエネルギー源として永続的に利用可能な再生可能エネルギーにより熱媒を加熱する集熱器と、
前記集熱器にて加熱された熱媒を導入して再生器における希溶液を加熱し、当該再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器の循環サイクルによって冷却液を得る吸収式冷凍機と、
前記吸収式冷凍機にて得られた冷却液を前記吸収式冷凍機の前記蒸発器と外部機器との間で循環させる循環流路と、
前記循環流路から分岐した分岐流路と、
前記循環流路を流れる冷却液の流れ方向を切り替えて前記分岐流路に流入させる切替弁と、
前記分岐流路上に設けられ、前記吸収式冷凍機にて得られた冷却液を導入して蓄冷すると共に蓄えた冷熱を前記外部機器に供給する蓄冷槽と、
前記吸収式冷凍機に対する蓄冷運転信号の送信、及び当該送信の禁止を行うコントローラと、
を備えた吸収式冷凍システムの制御方法であって、
所定条件が満たされた場合に、前記コントローラから前記吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号を送信する第1工程と、
前記所定条件が満たされない場合に蓄冷運転信号の送信を禁止する第2工程と、
前記第1工程にて蓄冷運転信号を送信した場合、前記切替弁を制御して前記吸収式冷凍機からの冷却液を前記分岐流路に流入させる第3工程と、
前記第1工程にて前記コントローラから前記吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号が送信され冷却液を前記分岐流路を介して蓄冷槽に供給する場合、前記第2工程にて前記コントローラから前記吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号が送信されておらず冷却液を前記分岐流路を介することなく前記外部機器に供給する場合よりも冷却液の目標温度を低下させる第4工程と、
を備えることを特徴とする吸収式冷凍システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷凍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光の受光によって熱媒を加熱する太陽熱集熱器と、太陽熱集熱器にて加熱された熱媒を導入して蓄熱する蓄熱槽と、を備えた太陽熱利用システムが提案されている。また、このような太陽熱利用システムには、蓄熱槽と吸収式冷凍機との間を配管接続し、これらの間で熱媒を循環させることにより、吸収式冷凍機の再生器において希溶液の加熱に利用する吸収式冷凍システムについても提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この吸収式冷凍システムによれば、太陽熱という再生可能エネルギーを利用して希溶液を加熱することができ、希溶液の加熱に要する燃料費を削減することができる。さらに、太陽熱集熱器と吸収式冷凍機との間には蓄熱槽が介在することとなり、これがバッファの役目をするため、日射量に左右されることなく、蓄熱槽から比較的高温の熱媒を吸収式冷凍機に供給することができる。すなわち、日射量が小さい場合に、太陽熱集熱器から吸収式冷凍機に直接熱媒を供給すると、温度が低い熱媒が吸収式冷凍機に供給されることとなり、効率の良い運転を行うことができなくなってしまうが、蓄熱槽を備えることにより安定的な温度の熱媒を吸収式冷凍機に供給できるため、効率の良い運転を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−127574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような吸収式冷凍システムでは、吸収式冷凍機が室内機と配管接続されており、室内機に冷却液が供給されるようになっている。ここで、吸収式冷凍機から室内機に向かう配管上に蓄冷を行う蓄冷槽を備え、例えば日射環境が良いときに吸収式冷凍機において蓄冷運転を行って蓄冷槽により蓄冷を行い、日射環境が悪いときなどに蓄冷槽にて蓄冷された冷熱を用いて冷房を行おうとした場合、以下の問題が発生する。
【0006】
まず、蓄冷槽の冷熱を用いて冷房を行う場合、蓄冷されてから冷熱が使用されるまでの間に蓄冷槽にて放熱してしまうことを考慮すると、蓄冷を行う際には通常の冷房時における冷却液の温度よりも低い温度にて蓄冷を行う必要がある。このため、吸収式冷凍機から室内機(蓄冷槽)に向かう配管における冷却液の目標温度を下げることとなる。しかし、冷却液の目標温度を下げてしまうと、通常の冷房時においては、必要以上に冷却液の温度が低くなってしまい、効率の良い運転を行っているとはいえない。
【0007】
さらに、必要以上に冷却液の温度が低くなってしまうと、室内機側において結露が発生することもある。
【0008】
なお、上記問題は、太陽熱により熱媒を加熱する方式に限らず、排熱を利用して熱媒を加熱して蓄熱するシステムや、地熱やバイオマスなどの再生可能エネルギーを利用して熱媒を加熱して蓄熱するシステムを有する吸収式冷凍システムにおいても共通する問題である。
【0009】
さらに、上記問題は、室内機に接続される吸収式冷凍機を含む吸収式冷凍システムに限らず、工業用冷却装置等の他の外部機器と接続される吸収式冷凍機を含む吸収式冷凍システムにおいても共通する問題である。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より効率の良い運転を可能とすると共に結露が発生する可能性を低減することが可能な吸収式冷凍システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の吸収式冷凍システムは、機器からの排熱又はエネルギー源として永続的に利用可能な再生可能エネルギーにより熱媒を加熱する集熱器と、前記集熱器にて加熱された熱媒を導入して再生器における希溶液を加熱し、当該再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器の循環サイクルによって冷却液を得る吸収式冷凍機と、前記吸収式冷凍機にて得られた冷却液を前記吸収式冷凍機の前記蒸発器と外部機器との間で循環させる循環流路と、前記循環流路から分岐した分岐流路と、前記循環流路を流れる冷却液の流れ方向を切り替えて前記分岐流路に流入させる切替弁と、前記分岐流路上に設けられ、前記吸収式冷凍機にて得られた冷却液を導入して蓄冷すると共に蓄えた冷熱を前記外部機器に供給する蓄冷槽と、所定条件が満たされた場合に、前記吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号を送信し、前記所定条件が満たされない場合に蓄冷運転信号の送信を禁止するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記蓄冷運転信号を送信した場合、前記切替弁を制御して前記吸収式冷凍機からの冷却液を前記分岐流路に流入させ、前記吸収式冷凍機は、前記コントローラから前記蓄冷運転信号を受信して冷却液を前記分岐流路を介して蓄冷槽に供給する場合、前記コントローラから前記蓄冷運転信号を受信しておらず冷却液を前記分岐流路を介することなく前記外部機器に供給する場合よりも冷却液の目標温度を低下させることを特徴とする。
【0012】
本発明の吸収式冷凍システムによれば、所定条件が満たされた場合に、吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号を送信し、所定条件が満たされない場合に蓄冷運転信号の送信を禁止し、コントローラから蓄冷運転信号を受信している場合、コントローラから蓄冷運転信号を受信していない場合よりも、吸収式冷凍機から外部機器に向かう流路における冷却液の目標温度を低下させる。このため、蓄冷運転を行う場合には、冷却液の目標温度を下げることができ、通常の冷房運転時において必要以上に冷却液の温度が低くなってしまい運転効率が悪化してしまうことを防止することができる。さらに、蓄冷運転を行う場合には冷却液の目標温度が下がることから、通常冷房時に必要以上に温度の低い冷却液が外部機器に供給されることなく、外部機器において結露が発生してしまう可能性を低減することとなる。従って、より効率の良い運転を可能とすると共に結露が発生する可能性を低減することが可能な吸収式冷凍システムを提供することができる。
【0013】
また、本発明の吸収式冷凍システムにおいて、前記蓄冷槽の蓄冷温度を検出する蓄冷槽温度センサをさらに備え、前記吸収式冷凍機は、前記蓄冷運転信号を受信している場合において、前記蓄冷槽温度センサにより検出された蓄冷温度が第1所定値以上となるときに、前記蓄冷槽に冷却液を導入して蓄冷する蓄冷運転を開始し、前記蓄冷槽温度センサにより検出された蓄冷温度が第1所定値よりも低い第2所定値以下となるときに、前記蓄冷運転を停止することが好ましい。
【0014】
この吸収式冷凍システムによれば、吸収式冷凍機は、蓄冷運転信号を受信している場合において、蓄冷槽温度センサにより検出された蓄冷温度が第1所定値以上となるときに、蓄冷槽に冷却液を導入して蓄冷する蓄冷運転を開始する。また、蓄冷槽温度センサにより検出された蓄冷温度が第1所定値よりも低い第2所定値以下となるときに、蓄冷運転を停止する。このため、蓄冷槽において充分に冷熱を確保できていない状態において蓄冷運転が行われ、蓄冷槽において充分に冷熱を確保できている場合には蓄冷運転が停止することとなり、無駄な蓄冷運転を防止することができる。
【0015】
また、本発明の吸収式冷凍システムの制御方法は、機器からの排熱又はエネルギー源として永続的に利用可能な再生可能エネルギーにより熱媒を加熱する集熱器と、前記集熱器にて加熱された熱媒を導入して再生器における希溶液を加熱し、当該再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器の循環サイクルによって冷却液を得る吸収式冷凍機と、前記吸収式冷凍機にて得られた冷却液を前記吸収式冷凍機の前記蒸発器と外部機器との間で循環させる循環流路と、前記循環流路から分岐した分岐流路と、前記循環流路を流れる冷却液の流れ方向を切り替えて前記分岐流路に流入させる切替弁と、前記分岐流路上に設けられ、前記吸収式冷凍機にて得られた冷却液を導入して蓄冷すると共に蓄えた冷熱を前記外部機器に供給する蓄冷槽と、前記吸収式冷凍機に対する蓄冷運転信号の送信、及び当該送信の禁止を行うコントローラと、を備えた吸収式冷凍システムの制御方法であって、所定条件が満たされた場合に、前記コントローラから前記吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号を送信する第1工程と、前記所定条件が満たされない場合に蓄冷運転信号の送信を禁止する第2工程と、前記第1工程にて蓄冷運転信号を送信した場合、前記切替弁を制御して前記吸収式冷凍機からの冷却液を前記分岐流路に流入させる第3工程と、前記第1工程にて前記コントローラから前記吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号が送信され冷却液を前記分岐流路を介して蓄冷槽に供給する場合、前記第2工程にて前記コントローラから前記吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号が送信されておらず冷却液を前記分岐流路を介することなく前記外部機器に供給する場合よりも冷却液の目標温度を低下させる第4工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この吸収式冷凍システムの制御方法によれば、所定条件が満たされた場合に、吸収式冷凍機に対して蓄冷運転信号を送信し、所定条件が満たされない場合に蓄冷運転信号の送信を禁止し、コントローラから蓄冷運転信号を受信している場合、コントローラから蓄冷運転信号を受信していない場合よりも、吸収式冷凍機から外部機器に向かう流路における冷却液の目標温度を低下させる。このため、蓄冷運転を行う場合には、冷却液の目標温度を下げることができ、通常の冷房運転時において必要以上に冷却液の温度が低くなってしまい運転効率が悪化してしまうことを防止することができる。さらに、蓄冷運転を行う場合には冷却液の目標温度が下がることから、通常冷房時に必要以上に温度の低い冷却液が外部機器に供給されることなく、外部機器において結露が発生してしまう可能性を低減することとなる。従って、より効率の良い運転を可能とすると共に結露が発生する可能性を低減することが可能な吸収式冷凍システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より効率の良い運転を可能とすると共に結露が発生する可能性を低減することが可能な吸収式冷凍システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る吸収式冷凍システムの概略構成図である。
図2】吸収式冷凍機の一例を示す概略構成図である。
図3】本実施形態に係る集熱ポンプの制御を示す図である。
図4】通常冷房運転時における吸収式冷凍機の動作を説明する図である。
図5】蓄冷運転時における吸収式冷凍システムの動作を説明する図であり、(a)は吸収式冷凍機の動作を示し、(b)はシステム全体の動作を示している。
図6】本実施形態に係る吸収式冷凍システムのシステムコントローラにおける処理を示すフローチャートであって、蓄冷運転信号の送信及び禁止の処理を示している。
図7】本実施形態に係る吸収式冷凍システムのシステムコントローラにおける処理を示すフローチャートであって、切替弁の処理を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る吸収式冷凍システムの概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る吸収式冷凍システム1は、太陽熱を利用して吸収式冷凍機21の希溶液を加熱するものであって、第1システム10と、第2システム20と、第3システム30とを備えている。
【0020】
第1システム10は、太陽熱を利用して熱媒を加熱するものであって、太陽熱集熱器(集熱器)11と、蓄熱槽12と、集熱流路13と、集熱ポンプ14とを備えている。なお、本実施形態において第1システム10は、太陽熱を利用して熱媒を加熱するものであるが、これに限らず、排熱を利用して熱媒を加熱するものであってもよいし、地熱、バイオマス等の再生可能エネルギー(エネルギー源として永続的に利用可能なもの)を利用して熱媒を加熱するものであってもよい。
【0021】
太陽熱集熱器11は、太陽光を受光することで熱媒を加熱するものであって、例えば屋根の上などの太陽光を受光し易い位置に設置されるものである。なお、熱媒は、水、不凍液、及びプロピレングリコール水溶液などが用いられる。
【0022】
蓄熱槽12は、太陽熱集熱器11にて加熱された熱媒を導入して蓄熱するものである。この蓄熱槽12は、熱媒を内部に貯めるタンクであってもよいし、導入した熱媒の熱を蓄熱材により蓄熱するものであってもよい。
【0023】
なお、蓄熱槽12が蓄熱材により蓄熱するものである場合、蓄熱材料は、例えば水酸化マグネシウムが用いられるが特にこれに限られるものではない。さらに、熱媒が水であり、蓄熱槽12が水を内部に貯めるタンクである場合、蓄熱槽12はいわゆる貯湯槽として機能し、家庭等に湯水が供給されるようになっていてもよい。加えて、蓄熱槽12は熱交換機を備えるタイプのものであってもよい。
【0024】
集熱流路13は、蓄熱槽12から太陽熱集熱器11を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる配管である。このうち、蓄熱槽12から太陽熱集熱器11に向かう流路を第1集熱流路13aと称し、太陽熱集熱器11から蓄熱槽12に向かう流路を第2集熱流路13bと称する。
【0025】
集熱ポンプ14は、集熱流路13のうち第1集熱流路13aに設けられており、蓄熱槽12から太陽熱集熱器11を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる動力源となるものである。
【0026】
このような第1システム10では、集熱ポンプ14が動作することにより、集熱流路13を熱媒が循環する。熱媒は太陽熱集熱器11によって加熱され、第2集熱流路13bを通じて蓄熱槽12に至り、蓄熱槽12において蓄熱されることとなる。
【0027】
第2システム20は、蓄熱槽12に貯められている熱媒や蓄熱材を介して昇温した熱媒を吸収式冷凍機21に供給するものであって、吸収式冷凍機21と、熱媒流路22と、熱媒ポンプ23とを備えている。
【0028】
吸収式冷凍機21は、再生器における希溶液を加熱し、当該再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器の循環サイクルによって冷却液を得るものである。
【0029】
図2は、吸収式冷凍機21の一例を示す概略構成図である。具体的に、再生器101は、例えば冷媒となる水(以下、冷媒が蒸気化したものを冷媒蒸気と称し、冷媒が液化したものを液冷媒と称する)と、吸収液となる臭化リチウム(LiBr)とが混合された希溶液(吸収液の濃度が低い溶液)を加熱するものである。この再生器101には熱媒流路22が配置されており、熱媒流路22上に希溶液が散布され加熱される。再生器101は、この加熱により希溶液から蒸気を放出させることにより、冷媒蒸気と濃溶液(吸収液の濃度が高い溶液)とを生成する。
【0030】
凝縮器102は、再生器101から供給された冷媒蒸気を液化させるものである。この凝縮器102内には、第1冷水伝熱管102aが挿通されている。第1冷水伝熱管102aには冷却塔などから冷却水が供給されており、蒸発した冷媒蒸気は第1冷水伝熱管102a内の冷却水によって液化する。さらに、凝縮器102にて液化した液冷媒は蒸発器103に供給される。
【0031】
蒸発器103は、液冷媒を蒸発させるものである。この蒸発器103内には、室内機(外部機器の一例)に接続される第2冷水伝熱管(循環流路)31が設けられている。この第2冷水伝熱管31は、例えば室内機と接続されており、室内機による冷却によって暖められた水が流れている。また、蒸発器103内は、真空状態となっている。このため、冷媒である水の蒸発温度は約5℃となる。よって、第2冷水伝熱管31上に散布された液冷媒は第2冷水伝熱管31の温度によって蒸発することとなる。また、第2冷水伝熱管31内の水は、液冷媒の蒸発によって温度が奪われる。これにより、第2冷水伝熱管31の水は冷水(冷却液の一例)として室内機に供給され、室内機は冷水を利用して冷風を室内に供給することとなる。
【0032】
吸収器104は、蒸発器103において蒸発した冷媒を吸収するものである。この吸収器104内には再生器101から濃溶液が供給され、蒸発した冷媒は濃溶液によって吸収され、希溶液が生成される。また、吸収器104には、第3冷水伝熱管104aが挿通されている。第3冷水伝熱管104aには冷却水が流れており、濃溶液の冷媒の吸収により生じる吸収熱は、第3冷水伝熱管104aの冷却水により除去される。なお、この第3冷水伝熱管104aは、第1冷水伝熱管102aと接続されている。また、吸収器104は、冷媒の吸収により濃度が低下した希溶液をポンプ104bによって再生器101に供給する。
【0033】
なお、上記において第2冷水伝熱管31は室内機に接続されているが、これ限らず、工業用の冷却装置等と接続されていてもよい。以下の説明では室内機を外部機器の一例として説明するものとする。
【0034】
さらに、吸収式冷凍機21は、制御部105を備えている。この制御部105はCPU(Central Processing Unit)を備え、吸収式冷凍機21の全体を制御するものである。また、この制御部105は、後述のシステムコントローラ44からの信号に基づいて制御内容を変更する構成となっている。
【0035】
再度図1を参照する。熱媒流路22は、蓄熱槽12から吸収式冷凍機21の再生器101を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる配管である。このうち、蓄熱槽12から吸収式冷凍機21の再生器101に向かう流路を第1熱媒流路22aと称し、吸収式冷凍機21の再生器101から蓄熱槽12に向かう流路を第2熱媒流路22bと称する。
【0036】
熱媒ポンプ23は、熱媒流路22のうち第1熱媒流路22aに設けられており、蓄熱槽12から吸収式冷凍機21の再生器101を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる動力源となるものである。
【0037】
第3システム30は、吸収式冷凍機21にて得られた冷却液を室内機に送出したり、冷却液による蓄冷を行ったりする部位であって、上記した第2冷水伝熱管31(以下循環流路31という)に加えて、蓄冷槽32、第1及び第2切替弁33a,33b、第1〜第4分岐流路34a〜34d、及び、循環ポンプ35を備えている。
【0038】
上記した循環流路31は、吸収式冷凍機21にて得られた冷水を吸収式冷凍機21の蒸発器103と室内機との間で循環させる流路である。この循環流路31のうち、吸収式冷凍機21から室内機に向かう流路を第1循環流路31aと称し、室内機から吸収式冷凍機21に向かう流路を第2循環流路31bと称する。
【0039】
蓄冷槽32は、循環流路31のうち第1循環流路31aから分岐した流路(第1及び第2分岐流路34a,34b)上に設けられ、吸収式冷凍機21にて得られた冷水を導入して蓄冷するものである。
【0040】
この蓄冷槽32は、冷水を内部に貯めるタンクであってもよいし、導入した冷水の冷熱を蓄冷材により蓄冷するものであってもよい。なお、蓄冷槽32が蓄冷材により蓄冷するものである場合、蓄冷材料は、例えば水とゲル剤(天然高分子)との混合物が用いられるが特にこれに限られるものではない。加えて、蓄冷槽32は熱交換機を備えるタイプのものであってもよい。
【0041】
第1切替弁33aは、第1循環流路31a上に設けられた三方弁であり、第1及び第2ポートA,Bが第1循環流路31a上に位置するものである。第1分岐流路34aは、一端が第1切替弁33aの第3ポートCに接続され、他端が蓄冷槽32の入口に接続されている。このため、第1切替弁33aは、吸収式冷凍機21からの冷水を室内機に供給するルート(A−B)と蓄冷槽32に供給するルート(A−C)とを切り替えることとなる。
【0042】
第2切替弁33bは、蓄冷槽32の出口側に設けられた三方弁である。第2分岐流路34bは、一端が蓄冷槽32の出口に接続され、他端が第2切替弁33bの第1ポートDに接続されている。第3分岐流路34cは、一端が第2切替弁33bの第2ポートEに接続され、他端が第2循環流路31bに接続されている。第4分岐配管34dは、一端が第2切替弁33bの第3ポートFに接続され、他端が第1循環流路31aの第1切替弁33aの下流側に接続されている。このため、第2切替弁33bは、蓄冷槽32からの冷水を第2循環流路31bに戻すルート(D−E)と室内機に供給するルート(D−F)とを切り替えることとなる。
【0043】
循環ポンプ35は、第2循環流路31bのうち、第2循環流路31bと第3分岐流路34cとの接続点よりも下流側の位置に設けられ、吸収式冷凍機21の蒸発器103から室内機を経て再度吸収式冷凍機21の蒸発器103に冷水を循環させる動力源となるものである。また、この循環ポンプ35は、第1及び第2切替弁33a,33bが制御されて、A−Cルート及びD−Eルートが選択された場合、冷水を室内機に供給することなく、吸収式冷凍機21と蓄冷槽32とを介して冷水を循環させる動力源となる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る吸収式冷凍システム1は、集熱器温度センサ41と、蓄熱槽温度センサ42と、蓄冷槽温度センサ43と、システムコントローラ(コントローラ)44とを備えている。
【0045】
集熱器温度センサ41は、太陽熱集熱器11からの熱媒の温度を検出するものであって、熱媒温度に応じた信号をシステムコントローラ44に送信するものである。蓄熱槽温度センサ42は、蓄熱槽12内の熱媒の温度(蓄熱温度)を検出するものであって、熱媒温度に応じた信号をシステムコントローラ44に送信するものである。蓄冷槽温度センサ43は、蓄冷槽32の冷水の温度(蓄冷温度)を検出するものであって、冷水温度に応じた信号をシステムコントローラ44に送信するものである。
【0046】
システムコントローラ44は、CPUを備え、吸収式冷凍システム1の全体を制御するものである。特に、本実施形態に係るシステムコントローラ44は、蓄冷運転信号を吸収式冷凍機21の制御部105に対して送信し、又は送信を禁止する機能を有しており、吸収式冷凍機21は、蓄冷運転信号を受信した場合、蓄冷運転信号を受信していない場合よりも、吸収式冷凍機21から室内機に向かう流路(すなわち第1循環流路31a)における冷却液の目標温度(以下出口目標温度)を低下させる。
【0047】
次に、本実施形態に係る吸収式冷凍システム1の制御方法を説明する。図3は、本実施形態に係る集熱ポンプ14の制御を示す図である。
【0048】
まず、集熱ポンプ14が停止しているものとする。この状態においてシステムコントローラ44は、集熱器温度センサ41からの信号を入力すると共に、蓄熱槽温度センサ42からの信号を入力する。次いで、システムコントーラ44は、これら信号に基づいて、差温を算出する。この差温は、集熱器温度センサ41の検出温度から蓄熱槽温度センサ42の検出温度を減算したものである。次いで、システムコントーラ44は、差温が図3に示すT1℃以上であるか判断し、T1℃以上であると判断した場合、集熱ポンプ14を動作させ(ON)、T1℃以上でないと判断した場合、集熱ポンプ14を停止状態のままとする(OFF)。
【0049】
集熱ポンプ14の動作後、システムコントローラ44は、集熱器温度センサ41及び蓄熱槽温度センサ42からの信号を入力し、差温を算出する。そして、システムコントーラ44は、差温が図3に示すT2℃以下であるかを判断する。システムコントローラ44は、T2℃以下であると判断した場合、集熱ポンプ14を停止させ(OFF)、T2℃以下でないと判断した場合、集熱ポンプ14を動作状態のままとする(ON)。
【0050】
なお、上記差温については、移動平均等の値を採用してもよい。
【0051】
また、吸収式冷凍機21は、通常冷房運転と、蓄冷運転とを行うようになっている。通常冷房運転と蓄冷運転とが行われている場合、すなわち、吸収式冷凍機21が停止していない場合に、システムコントローラ44は、熱媒ポンプ23を動作させ、蓄熱槽12からの熱媒を吸収式冷凍機21の再生器101に供給する。これにより、蓄熱槽12からの熱媒が再生器101における希溶液の加熱に用いられることとなる。
【0052】
また、通常冷房運転時において吸収式冷凍システム1は以下のように動作する。図4は、通常冷房運転時における吸収式冷凍機21の動作を説明する図である。図4に示すように、吸収式冷凍機21の制御部105には、通常冷房運転時における温調停止温度T3℃と温調開始温度T4℃とが記憶されている。また、第3システム30は、吸収式冷凍機21から室内機に向かう流路における冷却液の温度(以下出口温度という)を検出する温度センサ(不図示)を備えており、制御部105は、この温度センサからの信号に基づいて吸収式冷凍機21を制御する。
【0053】
すなわち、制御部105は、吸収式冷凍機21の通常冷房運転中において温度センサにより検出される出口温度が温調停止温度T3℃以下になると、その運転を一時停止させる。また、制御部105は、一時停止中において出口温度が温調開始温度T4℃以上となると、その運転を再開する。なお、一時停止中において循環ポンプ35は動作しており、冷水は循環させられている。
【0054】
また、蓄冷運転時において吸収式冷凍システム1は以下のように動作する。図5は、蓄冷運転時における吸収式冷凍システム1の動作を説明する図であり、(a)は吸収式冷凍機21の動作を示し、(b)はシステム1全体の動作を示している。図5(a)に示すように、吸収式冷凍機21の制御部105には、蓄冷運転時における温調停止温度T5℃と温調開始温度T6℃とが記憶されている。ここで、蓄冷運転時における温調停止温度T5℃は、通常冷房運転時における温調停止温度T3℃よりも低く、蓄冷運転時における温調開始温度T6℃は、通常冷房運転時における温調開始温度T4℃よりも低い。
【0055】
制御部105は、吸収式冷凍機21の蓄冷運転中において温度センサにより検出される出口温度が温調停止温度T5℃以下になると、その運転を一時停止させる。また、制御部105は、一時停止中において出口温度が温調開始温度T6℃以上となると、その運転を再開する。なお、一時停止中において循環ポンプ35は動作しており、冷水は循環させられている。
【0056】
さらに、システムコントローラ44は、図5(b)に示す蓄冷運転終了温度T7℃(第2所定値)と蓄冷運転開始温度T8℃(第1所定値)とを記憶している。ここで、蓄冷運転終了温度T7℃は、蓄冷運転時における温調停止温度T5℃よりも高い。また、蓄冷運転開始温度T8℃は、蓄冷運転時における温調開始温度T6℃と同じであり、通常冷房運転時における温調開始温度T4℃よりも低い。
【0057】
システムコントローラ44は、蓄冷運転中において蓄冷槽温度センサ43により検出される蓄冷温度が蓄冷運転終了温度T7℃以下になると、システム1の全体(集熱ポンプ14の動作を除く)を停止させる。すなわち、熱媒ポンプ23及び循環ポンプ35は動作を停止し、吸収式冷凍機21においては循環サイクルによる冷水の生成が停止することとなる。
【0058】
また、システムコントローラ44は、システム全体の停止中において蓄冷槽温度センサ43により検出される蓄冷温度が蓄冷運転開始温度T8℃以上となると、システム全体の運転を開始させる。すなわち、熱媒ポンプ23及び循環ポンプ35は動作を開始し、吸収式冷凍機21においては循環サイクルにより冷水が得られることとなる。
【0059】
さらに、システムコントローラ44は、蓄冷運転を行うかを判断し、行うと判断した場合、蓄冷運転信号を吸収式冷凍機21の制御部105に出力する。吸収式冷凍機21の制御部105は、蓄冷運転信号を受信すると、制御内容を図4に示すものから図5(a)に示すものに移行させることとなる。すなわち、制御部105は、蓄冷運転信号を受信した場合、蓄冷運転信号を受信していない場合よりも、出口目標温度を低下させることとなる。
【0060】
なお、蓄冷運転信号の送信の可否は、システムコントローラ44内のタイマが参照され、蓄冷運転日や蓄冷運転時間帯(所定条件の一例)であれば蓄冷運転信号が送信され、通常空調日や通常空調時間帯であれば蓄冷運転信号の送信が禁止される。
【0061】
加えて、システムコントローラ44は、第1及び第2切替弁33a,33bの制御も実行する。すなわち、システムコントローラ44は、通常冷房運転時において第1切替弁33aを制御してA−Bルートを選択すると共に、第2切替弁33bを制御してD−Eルートを選択する。また、システムコントローラ44は、蓄冷運転時において第1切替弁33aを制御してA−Cルートを選択すると共に、第2切替弁33bを制御してD−Eルートを選択する。
【0062】
さらに、室内機は蓄冷槽32から供給される冷水によっても冷房運転可能である。このため、蓄冷槽32内の冷水を使用して冷房運転を行う場合、システムコントローラ44は、第1切替弁33aを制御してA−Cルートを選択すると共に、第2切替弁33bを制御してD−Fルートを選択する。
【0063】
図6は、本実施形態に係る吸収式冷凍システム1のシステムコントローラ44における処理を示すフローチャートであって、蓄冷運転信号の送信及び禁止の処理を示している。なお、図6に示す処理はシステム1全体が停止するまで実行される。
【0064】
まず、システムコントローラ44は、タイマ判断を行う(S1)。タイマ判断の結果、現在が蓄冷運転日又は蓄冷運転時間帯(所定条件の一例)である場合(S1:蓄冷運転日又は蓄冷運転時間帯)、システムコントローラ44は、蓄冷運転信号を吸収式冷凍機21に送信し(S2)、その後図6に示す処理はステップS1に移行する。
【0065】
一方、タイマ判断の結果、現在が通常空調日又は通常空調時間帯である場合(S1:通常空調日又は通常空調時間帯)、システムコントローラ44は、現在空調負荷があるか、すなわちユーザより冷房運転の指令があったかを判断する(S3)。現在空調負荷がない場合(S3:NO)、システムコントローラ44は、蓄冷運転信号を吸収式冷凍機21に送信し(S2)、その後図6に示す処理はステップS1に移行する。
【0066】
現在空調負荷がある場合(S3:YES)、システムコントローラ44は、蓄冷運転信号の送信を禁止し(S4)、その後図6に示す処理はステップS1に移行する。
【0067】
図7は、本実施形態に係る吸収式冷凍システム1のシステムコントローラ44における処理を示すフローチャートであって、切替弁33a,33bの処理を示している。なお、図7に示す処理はシステム1全体が停止するまで実行される。
【0068】
まず、システムコントローラ44は、蓄冷運転時であるかを判断する(S11)。蓄冷運転時であるか否かは、図6のステップS2において蓄冷運転信号を送信したか否かに基づいて判断してもよいし、図6のステップS1のようにタイマ判断と同様に判断してもよい。
【0069】
蓄冷運転時であると判断した場合(S11:YES)、システムコントローラ44は、第1切替弁33aを制御してA−Cルートを選択すると共に、第2切替弁33bを制御してD−Eルートを選択する(S12)。すなわち、上記ルートを選択することにより、システムコントローラ44は、冷水を室内機に供給することなく、吸収式冷凍機21と蓄冷槽32との間で循環させることとなる。そして、図7に示す処理はステップS11に移行する。
【0070】
なお、この場合において吸収式冷凍機21の制御部105は、図4及び図5(a)に示すように、出口目標温度を低下させる。
【0071】
一方、蓄冷運転時でないと判断した場合(S11:NO)、システムコントローラ44は、通常冷房運転時であるかを判断する(S13)。この場合、システムコントローラ44は、例えば蓄冷槽温度センサ43からの信号に基づき、蓄冷槽32の蓄冷温度が所定温度を超える場合に、通常冷房運転時であると判断し(S13:YES)、そうでない場合に通常冷房運転時でないと判断する(S13:NO)。
【0072】
そして、通常冷房運転時であると判断した場合(S13:YES)、システムコントローラ44は、第1切替弁33aを制御してA−Bルートを選択すると共に、第2切替弁33bを制御してD−Eルートを選択する(S14)。すなわち、上記ルートを選択することにより、システムコントローラ44は、冷水を蓄冷槽32に供給することなく、吸収式冷凍機21と室内機との間で循環させることとなる。そして、図7に示す処理はステップS11に移行する。
【0073】
通常冷房運転時でないと判断した場合(S13:NO)、システムコントローラ44は、蓄冷槽32内の冷水を使用して冷房運転を行うかを判断する(S15)。この場合、システムコントローラ44は、例えば蓄冷槽温度センサ43からの信号に基づき、蓄冷槽32の蓄冷温度が所定温度以下である場合に、蓄冷槽32内の冷水を使用した冷房を行うと判断し(S15:YES)、そうでない場合に蓄冷槽32内の冷水を使用した冷房を行わないと判断する(S15:NO)。
【0074】
そして、蓄冷槽32内の冷水を使用した冷房を行うと判断した場合(S15:YES)、システムコントローラ44は、第1切替弁33aを制御してA−Cルートを選択すると共に、第2切替弁33bを制御してD−Fルートを選択する(S16)。すなわち、上記ルートを選択することにより、システムコントローラ44は、蓄冷槽32を介したうえで、吸収式冷凍機21と室内機との間で冷水を循環させることとなる。そして、図7に示す処理は終了する。
【0075】
一方、蓄冷槽32内の冷水を使用した冷房を行わないと判断した場合(S15:NO)、処理はステップS11に移行することとなる。
【0076】
このようにして、本実施形態に係る吸収式冷凍システム1によれば、所定条件が満たされた場合に、吸収式冷凍機21に対して蓄冷運転信号を送信し、所定条件が満たされない場合に蓄冷運転信号の送信を禁止し、システムコントローラ44から蓄冷運転信号を受信している場合、システムコントローラ44から蓄冷運転信号を受信していない場合よりも、吸収式冷凍機21から室内機に向かう第1循環流路31aにおける冷却液の目標温度を低下させる。このため、蓄冷運転を行う場合には、冷却液の目標温度を下げることができ、通常の冷房運転時において必要以上に冷却液の温度が低くなってしまい運転効率が悪化してしまうことを防止することができる。さらに、蓄冷運転を行う場合には冷却液の目標温度が下がることから、通常冷房時に必要以上に温度の低い冷却液が室内機に供給されることなく、室内機において結露が発生してしまう可能性を低減することとなる。従って、より効率の良い運転を可能とすると共に結露が発生する可能性を低減することが可能な吸収式冷凍システム1を提供することができる。
【0077】
また、吸収式冷凍機21は、蓄冷運転信号を受信している場合において、蓄冷槽温度センサ43により検出された蓄冷温度が蓄冷運転開始温度T8℃以上となるときに、蓄冷槽21に冷却液を導入して蓄冷する蓄冷運転を開始する。また、蓄冷槽温度センサ43により検出された蓄冷温度が蓄冷運転開始温度T8℃よりも低い蓄冷運転停止温度T7℃以下となるときに、蓄冷運転を停止する。このため、蓄冷槽32において充分に冷熱を確保できていない状態において蓄冷運転が行われ、蓄冷槽32において充分に冷熱を確保できている場合には蓄冷運転が停止することとなり、無駄な蓄冷運転を防止することができる。
【0078】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0079】
例えば上記した温度T1〜T8℃については適宜変更可能であり、各温度T1〜T8℃間の高低についても適宜変更可能である。また、外部機器が室内機でなく、工業用の冷却装置である場合には、通常冷房運転とは通常冷却運転等に読み替えられることは言うまでもない。さらに、外部機器が室内機及び工業用冷却装置を除く他の機器である場合においても、上記した各種文言は適宜読み替えられる。
【0080】
さらに、上記実施形態では、現在が蓄冷運転日又は蓄冷運転時間帯である場合に所定条件が満たされたとし蓄冷運転信号を送信しているが、所定条件は上記に限らず、適宜変更可能である。例えばシステムコントローラ44の蓄冷運転ボタンが押下されるなどして、蓄冷運転の指示があったことを所定条件としてもよいし、他の条件を所定条件としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…吸収式冷凍システム
10…第1システム
11…太陽熱集熱器(集熱器)
12…蓄熱槽
13…集熱流路
14…集熱ポンプ
20…第2システム
21…吸収式冷凍機
22…熱媒流路
23…熱媒ポンプ
30…第3システム
31…循環流路
32…蓄冷槽
33a,33b…切替弁
34a〜34d…分岐流路
35…循環ポンプ
41…集熱器温度センサ
42…蓄熱槽温度センサ
43…蓄冷槽温度センサ
44…システムコントローラ(コントローラ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7