(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における電力変換装置の一例を示す回路図である。
【0024】
この電力変換装置は、単相3レベルフルブリッジインバータからなるインバータ回路部2と、PWM制御部3とで構成されている。インバータ回路部2は、外部の電源回路(直流電源回路)1によって充電される2個のコンデンサCp,Cnが直列接続されてなる直流部21と、電力変換回路部22とで構成されている。
【0025】
電力変換回路部22は、それぞれ逆並列接続されたダイオードを備えた第1〜第4の4個のスイッチング素子Q1〜Q4からなる第1の回路22aと、それぞれ逆並列接続されたダイオードを備えた第5〜第8の4個のスイッチング素子Q5〜Q8からなる第2の回路22bと、第1〜第4のダイオードd1〜d4とを備えている。
【0026】
第1の回路22aでは、直流部21の正側端子21pと負側端子21nとの間に、第1、第2、第3、第4のスイッチング素子Q1〜Q4が正側端子21p側からこの順番に直列に接続されている。
【0027】
また、第2の回路22bでは、直流部21の正側端子21pと負側端子21nとの間に、第5、第6、第7、第8のスイッチング素子Q5〜Q8が正側端子21p側からこの順番に直列に接続されている。
【0028】
また、第1のダイオードd1は、2個のコンデンサCp,Cn同士の接続点と第1と第2のスイッチング素子Q1,Q2の接続点との間に、2個のコンデンサCp,Cn同士の接続点から第1と第2のスイッチング素子Q1,Q2の接続点へ向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0029】
第2のダイオードd2は、2個のコンデンサCp,Cn同士の接続点と第3と第4のスイッチング素子Q3,Q4の接続点との間に、第3と第4のスイッチング素子Q3,Q4の接続点から2個のコンデンサ同士Cp,Cnの接続点へ向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0030】
第3のダイオードd3は、2個のコンデンサCp,Cn同士の接続点と第5と第6のスイッチング素子Q5,Q6の接続点との間に、2個のコンデンサCp,Cn同士の接続点から第5と第6のスイッチング素子Q5,Q6の接続点へ向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0031】
第4のダイオードd4は、2個のコンデンサCp,Cn同士の接続点と第7と第8のスイッチング素子Q7,Q8の接続点との間に、第7と第8のスイッチング素子Q7,Q8の接続点から2個のコンデンサCp,Cn同士の接続点へ向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0032】
そして、第2と第3のスイッチング素子Q2,Q3の接続点に第1出力端子2pが接続され、第6と第7のスイッチング素子Q6,Q7の接続点に第2出力端子2nが接続され、第1出力端子2pと第2出力端子2nとの間の電圧が、インバータ回路部2の出力電圧Voとなる。
【0033】
以下では、第1〜第8のスイッチング素子Q1〜Q8を、単にスイッチング素子Q1〜Q8として表記することもある。
【0034】
図2(a)、
図2(b)は、それぞれ、PWM制御部3の内部構成の一例を示す図である。なお、PWM制御部3は、例えば、FPGA(field programmable gate array)、PLC(programmable logic controller)、マイクロコントローラ等の演算装置で構成され、
図2(a)、
図2(b)では、上記演算装置においてそれに内蔵されているプログラムが実行されることにより実現される機能ブロックが示されている。
【0035】
まず、
図2(a)の場合について説明する。このPWM制御部3は、変調波(基本波)refを生成する変調波生成部31と、PD方式による同位相の4個の三角波TR1〜TR4を生成するPD方式三角波生成部32と、三角波入替判定部33と、スイッチ部S1〜S4と、比較器D1〜D4と、論理反転器E1〜E4とを備えている。
【0036】
各比較器D1〜D4では、変調波refの値と、スイッチ部S1〜S4から入力される三角波の電圧とを比較し、変調波refの値の方が高い(低い)ときには、スイッチング素子をオン状態(オフ状態)にするための信号を、スイッチング素子(Q2,Q7,Q8,Q1)の制御信号として出力する。また、各論理反転器E1〜E4は、各比較器D1〜D4の出力信号を反転させて出力し、スイッチング素子(Q4,Q5,Q6,Q3)の制御信号として出力する。
【0037】
ここで、スイッチング素子Q2とQ4、スイッチング素子Q7とQ5、スイッチング素子Q8とQ6、スイッチング素子Q1とQ3が、それぞれペアとなり、一方がオン(導通)状態のときには、必ず他方がオフ(非導通)状態となるように制御される。
【0038】
三角波入替判定部33では、変調波refと三角波TR1〜TR4とを入力し、所定の入替え方法(詳細は後述)に基づいて、スイッチ部S1〜S4を切り替える。ここで、2個のスイッチ部S1,S2、及び、2個のスイッチ部S3,S4は、それぞれペアとなり、各ペアのスイッチ部は必ず同時に切り替えられる。また、各ペアのスイッチ部に対応して、三角波TR1とTR2とがペアとなり、三角波TR3とTR4とがペアとなる。
【0039】
本実施形態では、スイッチ部S1〜S4の切替えによってスイッチング素子Q1〜Q8のオンオフ状態が変更されることがないタイミングで、スイッチ部S1〜S4を切り替えるようにしている。これについて説明する。
【0040】
図3は、
図1に示すインバータ回路部2を比較例のPD方式によってPWM制御する場合の三角波TR1〜TR4の波形、変調波refの波形及び出力電流iの波形、スイッチング素子Q1〜Q8のオン(ON)オフ(OFF)状態、出力電圧Vo、及び直流部21の電流ip,inの時間的変化を示す図である(横軸は時間軸)。なお、変調波refは、正弦波であるが、前述のように演算装置によって生成されるので、
図3ではデジタル的(階段状)に示されている。このことは、
図4、
図5、
図9(a)等においても同様である。
【0041】
また、
図4は、
図1に示すインバータ回路部2をPD方式によってPWM制御する場合において、
図3の場合とは、三角波TR1〜TR4とスイッチング素子Q1〜Q8との関係を変更した場合の、三角波TR1〜TR4の波形、変調波refの波形及び出力電流iの波形、スイッチング素子Q1〜Q8のオン(ON)オフ(OFF)状態、出力電圧Vo、及び直流部21の電流ip,inの時間的変化を示す図である(横軸は時間軸)。
【0042】
簡単に言えば、
図3の場合は、PWM制御部3が、
図2(a)において、スイッチ部S1〜S4が図示された状態で固定されている場合に対応しており、
図4の場合は、PWM制御部3が、
図2(a)において、スイッチ部S1〜S4が図示された状態とは逆に切り替えられた状態で固定されている場合に対応している。
【0043】
すなわち、
図3の場合、スイッチング素子Q2,Q4は、三角波TR1と変調波refとの大小関係によってオンオフ動作し、スイッチング素子Q7,Q5は、三角波TR2と変調波refとの大小関係によってオンオフ動作し、スイッチング素子Q8,Q6は、三角波TR3と変調波refとの大小関係によってオンオフ動作し、スイッチング素子Q1,Q3は、三角波TR4と変調波refとの大小関係によってオンオフ動作する。
【0044】
一方、
図4の場合、スイッチング素子Q2,Q4は、三角波TR2と変調波refとの大小関係によってオンオフ動作し、スイッチング素子Q7,Q5は、三角波TR1と変調波refとの大小関係によってオンオフ動作し、スイッチング素子Q8,Q6は、三角波TR4と変調波refとの大小関係によってオンオフ動作し、スイッチング素子Q1,Q3は、三角波TR3と変調波refとの大小関係によってオンオフ動作する。
【0045】
なお、三角波TR1〜TR4には、所定範囲(−100%〜100%)を均等に4分割し、この4分割された各範囲が割当て範囲として割り当てられる。各三角波TR1〜TR4は、そのピークピーク(peak to peak)の範囲が割当て範囲となるように生成される。そして、変調波refは、その最小値が三角波TR1の割当て範囲(−100%〜−50%)内の値となり、最大値が三角波TR4の割当て範囲(50%〜100%)内の値となるように生成される。以下、上記の所定範囲(−100%〜100%)を所定範囲αと記載する。
【0046】
図3と
図4において、同じ区間Aに着目すると、いずれの場合もスイッチング素子Q1〜Q8のオンオフ状態は同じであり、出力電圧Voは2Eである。ここで、Eは、直流部21の各コンデンサCp,Cnの電圧である。
【0047】
前述のように、
図3の場合と
図4の場合とでは、本実施形態におけるスイッチ部S1〜S4の接続が逆になっている場合に相当するので、上記のような区間Aにおいて、スイッチ部S1〜S4の接続を切り替えてもスイッチング素子Q1〜Q8のオンオフ状態に変更はない。このような状態のときに、本実施形態では、スイッチ部(S1〜S4)の接続を切り替えることにより、スイッチング素子の各ペアの制御信号を生成するために用いる三角波を入れ替えるようにしている。
【0048】
すなわち、本実施形態では、所定範囲αのうちの0%以上の範囲に割り当てられた三角波TR4とTR3とを、第1、第3のスイッチング素子Q1,Q3のペアと、第8、第6のスイッチング素子Q8,Q6のペアとに対して、それらに含まれるスイッチング素子のオンオフ状態を制御するのに用いている。
【0049】
また、所定範囲αのうちの0%未満の範囲に割り当てられた三角波TR1とTR2とを、第2,第4のスイッチング素子Q2,Q4のペアと、第7,第5のスイッチング素子Q7,Q5のペアとに対して、それらに含まれるスイッチング素子のオンオフ状態を制御するのに用いている。
【0050】
そして、三角波入替判定部33は、次の入替え方法(1)、(2)に基づいて、スイッチ部S1〜S4の接続を切り替える。
【0051】
入替え方法(1)は、変調波refの値が、下から数えて奇数番目の三角波TRx(x=1,3)に割り当てられた割当て範囲内にあるときには、その三角波TRxがトップの時点(例えばT点)のタイミング(すなわち三角波TRxが最大値となるタイミング)で、三角波TRxと、その三角波TRxとペアになっている三角波とが入れ替わるように、スイッチ部(S1,S2/S3,S4)の接続を切り替える。
【0052】
入替え方法(2)は、変調波refの値が、下から数えて偶数番目の三角波TRy(y=2,4)に割り当てられた割当て範囲内にあるときには、その三角波TRyのボトムの時点(例えばB点)のタイミング(すなわち三角波TRyが最小値となるタイミング)で、三角波TRyと、その三角波TRyとペアになっている三角波とが入れ替わるように、スイッチ部(S1,S2/S3,S4)の接続を切り替える。
【0053】
図5は、
図1に示すインバータ回路部2を本実施形態による方式によってPWM制御する場合の三角波TR1〜TR4の波形、変調波refの波形、出力電流iの波形、スイッチング素子Q1〜Q8のオン(ON)オフ(OFF)状態、出力電圧Vo、及び直流部21の電流ip,inの時間的変化を示す図である(横軸は時間軸)。ここでも、PWM制御部3は、
図2(a)に示す構成であるものとして説明する。
【0054】
図5において、破線L1は、比較器D1に入力される三角波(TR1,TR2)を示し、一点鎖線L2は、比較器D2に入力される三角波(TR2,TR1)を示し、破線L3は、比較器D3に入力される三角波(TR3,TR4)を示し、二点鎖線L4は、比較器D4に入力される三角波(TR4,TR3)を示している。
【0055】
例えば、時刻t1では、変調波refが奇数番目の三角波TR3に割り当てられた割当て範囲内にあるので、その三角波TR3が最大値となる時点のタイミングで、スイッチ部S3,S4が切り替えられ、比較器D3と比較器D4に入力される三角波(TR3,TR4)が入れ替えられている。
【0056】
また、時刻t2では、変調波refが偶数番目の三角波TR4に割り当てられた割当て範囲内にあるので、その三角波TR4が最小値となる時点のタイミングで、スイッチ部S3,S4が切り替えられ、比較器D3と比較器D4に入力される三角波(TR3,TR4)が入れ替えられている。
【0057】
また、時刻t3では、変調波refが奇数番目の三角波TR1に割り当てられた割当て範囲内にあるので、その三角波TR1が最大値となる時点のタイミングで、スイッチ部S1,S2が切り替えられ、比較器D1と比較器D2に入力される三角波(TR1,TR2)が入れ替えられている。
【0058】
また、時刻t4では、変調波refが偶数番目の三角波TR2に割り当てられた割当て範囲内にあるので、その三角波TR2が最小値となる時点のタイミングで、スイッチ部S1,S2が切り替えられ、比較器D1と比較器D2に入力される三角波(TR1,TR2)が入れ替えられている。
【0059】
なお、スイッチ部S3,S4の切替動作によって、比較器D3と比較器D4に入力される三角波(TR3,TR4)が入れ替えられることは、スイッチング素子Q8,Q6の制御信号を生成するために用いる三角波TR3(TR4)と、スイッチング素子Q1,Q3の制御信号を生成するために用いる三角波TR4(TR3)とが入れ替えられることである。また、スイッチ部S1,S2の切替動作によって、比較器D1と比較器D2に入力される三角波(TR1,TR2)が入れ替えられることは、スイッチング素子Q2,Q4の制御信号を生成するために用いる三角波TR1(TR2)と、スイッチング素子Q7,Q5の制御信号を生成するために用いる三角波TR2(TR1)とが入れ替えられることである。そして、前述したタイミングで三角波が入れ替えられることにより、その入れ替え時点においてスイッチング素子Q1〜Q8のオンオフ状態が変更されることはない。
【0060】
図17は、上記インバータ回路部2を比較例のPD方式によってPWM制御する場合の三角波TR1〜TR4の波形、変調波refの波形及び出力電流iの波形、スイッチング素子Q1〜Q8のオン(ON)オフ(OFF)状態、出力電圧Vo、及び直流部21の電流ip,inの時間的変化を示す図である。また、
図18は、上記インバータ回路部2を比較例のPS方式によってPWM制御する場合の三角波TR1〜TR4の波形、変調波refの波形及び出力電流iの波形、スイッチング素子Q1〜Q8のオン(ON)オフ(OFF)状態、出力電圧Vo、及び直流部21の電流ip,inの時間的変化を示す図である。
【0061】
ここでは、比較例のPD,PSいずれの方式による場合も、三角波TR1と変調波refとによって決まるパルス幅の制御信号がスイッチング素子Q2の制御ゲートに入力され、その制御信号の反転信号がスイッチング素子Q4の制御ゲートに入力される。また、三角波TR2と変調波refとによって決まるパルス幅の制御信号がスイッチング素子Q7の制御ゲートに入力され、その制御信号の反転信号がスイッチング素子Q5の制御ゲートに入力される。また、三角波TR3と変調波refとによって決まるパルス幅の制御信号がスイッチング素子Q7の制御ゲートに入力され、その制御信号の反転信号がスイッチング素子Q5の制御ゲートに入力される。また、三角波TR4と変調波refとによって決まるパルス幅の制御信号がスイッチング素子Q1の制御ゲートに入力され、その制御信号の反転信号がスイッチング素子Q3の制御ゲートに入力される。
【0062】
上記比較例のPD方式による場合、
図17に示すように、変調波refの一周期の間に、約半周期弱の期間に、スイッチング素子Q7、Q8が連続して導通し、期間T1においてコンデンサCnが連続して放電状態となる。その後、約半周期弱の期間に、スイッチングQ5、Q6が連続して導通し、期間T2においてコンデンサCpが連続して充電状態となる。このようにコンデンサCpとCnのうちいずれか一方が長時間連続して放電あるいは充電を続けると、そのコンデンサの発熱が大きくなり、2個のコンデンサCpとCnの発熱量がアンバランスとなる。
【0063】
また、上記比較例のPS方式による場合、
図18に示すように、あるタイミングt31、t32において、出力電圧Voが大きく変動することがあり、不要なスイッチングをすることとなり、出力電流波形にひずみが生じる場合がある。
【0064】
本実施形態では、
図5の直流部21の電流ip,inで示されるように、2個のコンデンサCpとCnのいずれか一方が長時間連続して充電状態あるいは放電状態となるのをなくすことができる。そのため、コンデンサCpとCnの発熱量のアンバランスを抑えることができ、コンデンサCpとCnの小型化を図ることができるとともに、直流部21のコンデンサCpとCnの電圧Vp,Vnがアンバランスとなるのを抑制し、コンデンサCp,Cn同士の接続点の電位(中性点電位Vm)の変動を抑制することができ、出力電圧のひずみを抑え、制御特性の向上を図ることができる。また、
図17に示す比較例の場合には、長時間連続して導通するスイッチング素子が6個(Q2,Q3,Q5〜Q8)あるのに対し、本実施形態では、4個(Q2,Q3,Q6,Q7)に少なくすることができ、それぞれのスイッチング素子Q1〜Q8の発熱量のアンバランスを抑えることができる。コンデンサCp、Cnの発熱量のアンバランスが抑えられること、またスイッチング素子Q1〜Q8の発熱量のアンバランスが抑えられることによって、ヒートシンクの小型化を図ることができる。また、本実施形態では、
図18に示す比較例の場合のように、出力電圧Voに不要な大きな変動が生じることがない。
【0065】
図6は、インバータ回路部2の2つの出力端子2p、2nの電位及び出力電圧Voの状態の遷移を示す図である。この
図6では、直流部21において、コンデンサCp,Cnの各電圧Vp,VnをEとして、中性点電位Vmを基準(0)とし、直流部21の正側端子21pの電位をE、負側端子21nの電位を−Eとしている。そして、各状態ST1〜ST7では、(第1出力端子2pの電位,第2出力端子2nの電位)=出力電圧Vo、として表記している。例えば、状態ST1における、(E,−E)=2Eは、第1出力端子2pの電位がE、第2出力端子2nの電位が−Eであり、出力電圧Voが2Eであることを示している。
【0066】
図3の場合には、実線で示された5つの状態ST1〜ST5の間で遷移が行われるのに対し、
図4の場合には、破線で示された5つの状態ST1,ST3,ST5,ST6,ST7の間で遷移が行われる。一方、本実施形態(
図5)の場合には、7つ全ての状態ST1〜ST7の間で遷移が行われる。いずれの場合も、−2E,−E,0,E,2Eの5通りの出力電圧Voが得られる。
【0067】
以上では、PWM制御部3が、
図2(a)に示された構成であるものとして説明したが、
図2(b)に示された構成でもよい。
図2(a)の場合には、スイッチ部S1〜S4を比較器D1〜D4の前段に設けているが、
図2(b)の場合には、比較器D1〜D4の後段にスイッチ部S1〜S4を設けるようにしている。この
図2(b)の場合にも、スイッチング素子Q1〜Q8に対して、
図2(a)の場合と同じスイッチング動作を行わせる。すなわち、
図2(a)と
図2(b)のいずれの場合も、スイッチ部S3,S4の切替動作によって、スイッチング素子Q8,Q6の制御信号を生成するために用いる三角波TR3(TR4)と、スイッチング素子Q1,Q3の制御信号を生成するために用いる三角波TR4(TR3)とが入れ替えられることに変わりはない。また、スイッチ部S1,S2の切替動作によって、スイッチング素子Q2,Q4の制御信号を生成するために用いる三角波TR1(TR2)と、スイッチング素子Q7,Q5の制御信号を生成するために用いる三角波TR2(TR1)とが入れ替えられることに変わりはない。
【0068】
次に、
図7(a)、(b)は、それぞれ、PWM制御部3の内部構成の他の例を示す図である。
図7(a)の場合は、
図2(a)における三角波入替判定部33とは異なる三角波入替判定部33aが設けられ、
図7(b)の場合は、
図2(b)における三角波入替判定部33とは異なる三角波入替判定部33aが設けられている。
【0069】
図7(a)、(b)のそれぞれの場合、直流部21のコンデンサCpの電圧Vpを測定する電圧センサ及びコンデンサCnの電圧Vnを測定する電圧センサからなる電圧測定器41と、出力電流iを測定する電流センサからなる電流測定器42とが設けられている。
【0070】
三角波入替判定部33aは、変調波ref及び三角波TR1〜TR4に加えて、電圧測定器41で測定される2個のコンデンサ電圧Vp,Vnと、電流測定器42で測定される出力電流iとを入力する。この三角波入替判定部33aの詳細については、次の第2実施形態における三角波入替判定部とともに説明する。
【0071】
(第2実施形態)
本実施形態では、複数のインバータ回路部がカスケードに接続されている場合について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態における電力変換装置の一例を示す回路図である。
【0072】
この電力変換装置は、2個のインバータ回路部2−1、2−2と、PWM制御部3Aとで構成される。各々のインバータ回路部2−1、2−2は、
図1のインバータ回路部2と同様の構成であり、各々の直流部21には各々の電源回路1が接続されている。
【0073】
2個のインバータ回路部2−1、2−2はカスケードに接続されている。すなわち、一方のインバータ回路部2−1の第2出力端子2anと他方のインバータ回路部2−2の第1出力端子2bpとが接続され、一方のインバータ回路部2−1の第1出力端子2apがこの電力変換装置の第1出力端子2apとなり、他方のインバータ回路部2−2の第2出力端子2bnがこの電力変換装置の第2出力端子2nとなっている。
【0074】
PWM制御部3Aは、
図1のPWM制御部3と同様、変調波refとPD方式による三角波とを用いて、2個のインバータ回路部2−1、2−2のスイッチング素子Q1-1〜Q1-8,Q2-1〜Q2-8を制御する制御信号(PWM信号)を生成し出力する。ここでは、2個のインバータ回路部2−1、2−2の合計16個のスイッチング素子(Q1-1〜Q1-8,Q2-1〜Q2-8)を制御するので、同位相の8個の三角波(TR1〜TR8)が用いられる。
【0075】
図9(a)は、本実施形態で用いるPD方式による8個の三角波TR1〜TR8及び変調波refの波形の一部の時間的変化を示す図である(横軸は時間軸)。三角波TR1〜TR8は、所定範囲α(−100%〜100%)を均等に8分割し、この8分割された各範囲が割当て範囲として割り当てられる。各三角波TR1〜TR8は、そのピークピーク(peak to peak)の範囲が割当て範囲となるように生成される。そして、変調波refは、その最小値が三角波TR1の割当て範囲(−100%〜−75%)内の値となり、最大値が三角波TR8の割当て範囲(75%〜100%)内の値となるように生成される。
【0076】
図9(b)は、本実施形態における三角波TR1〜TR8とスイッチング素子の組み合わせを示す表(組み合わせ表)である。この組み合わせ表では、ケースA,B,Cの3通りが示されているが、いずれを用いてもよい。
【0077】
ケースA,B,Cのいずれの場合も、2個のインバータ回路部2−1、2−2の各電力変換回路部22の第1、第3スイッチング素子のペア(Q1-1とQ1-3のペア、Q2-1とQ2-3のペア)の制御信号の生成に用いられる三角波と、第8、第6スイッチング素子のペア(Q1-8とQ1-6のペア、Q2-8とQ2-6のペア)の制御信号の生成に用いられる三角波には、所定範囲αのうちの0%〜100%の範囲内の三角波TR5〜TR8が用いられる。また、各電力変換回路部22の第2、第4スイッチング素子のペア(Q1-2とQ1-4のペア、Q2-2とQ2-4のペア)の制御信号の生成に用いられる三角波と、第7、第5スイッチング素子のペア(Q1-7とQ1-5のペア、Q2-7とQ2-5のペア)の制御信号の生成に用いられる三角波には、所定範囲αのうちの−100%〜0%の範囲内の三角波TR1〜TR4が用いられる。
【0078】
図10は、ケースAの場合のPWM制御部3Aの内部構成の一例を示す図である。なお、PWM制御部3Aは、前述のPWM制御部3同様、演算装置で構成され、
図10では、上記演算装置においてそれに内蔵されているプログラムが実行されることにより実現される機能ブロックが示されている。
【0079】
このPWM制御部3Aは、変調波(基本波)refを生成する変調波生成部31と、PD方式による三角波TR1〜TR8を生成するPD方式三角波生成部32Aと、三角波入替判定部33Aと、スイッチ部S1〜S8と、比較器D1〜D8と、論理反転器E1〜E8とを備えている。
【0080】
各比較器D1〜D8では、変調波refの値と、スイッチ部S1〜S8から入力される三角波の電圧とを比較し、変調波refの値の方が高い(低い)ときには、スイッチング素子(Q1-2, Q2-2, Q2-7, Q1-7, Q1-8, Q2-8, Q2-1, Q1-1)をオン状態(オフ状態)にするための信号を、同スイッチング素子の制御信号として出力する。また、各論理反転器E1〜E8は各比較器D1〜D8の出力信号を反転させて出力し、スイッチング素子(Q1-4, Q2-4, Q2-5, Q1-5, Q1-6, Q2-6, Q2-3, Q1-3)の制御信号として出力する。
【0081】
三角波入替判定部33Aでは、変調波refと三角波TR1〜TR8とを入力し、後述の入替え方法(A)〜(D)に基づいて、スイッチ部S1〜S8を切り替える。ここで、2個のスイッチ部S1,S4、2個のスイッチ部S2,S3、2個のスイッチ部S5,S8、及び、2個のスイッチ部S6,S7は、それぞれペアとなり、各ペアのスイッチ部は必ず同時に切り替えられる。また、各ペアのスイッチ部に対応して、三角波TR1とTR4、三角波TR2とTR3、三角波TR5とTR8、三角波TR6とTR7が、それぞれペアとなる。
【0082】
すなわち、本実施形態では、所定範囲αのうちの0%以上の範囲に割り当てられた三角波TR8とTR5とを、インバータ回路部2−1の第1、第3のスイッチング素子Q1-1,Q1-3のペアと、第8、第6のスイッチング素子Q1-8,Q1-6のペアとに対して、それらに含まれるスイッチング素子のオンオフ状態を制御するのに用いている。また、所定範囲αのうちの0%以上の範囲に割り当てられた三角波TR7とTR6とを、インバータ回路部2−2の第1、第3のスイッチング素子Q2-1,Q2-3のペアと、第8、第6のスイッチング素子Q2-8,Q2-6のペアとに対して、それらに含まれるスイッチング素子のオンオフ状態を制御するのに用いている。
【0083】
また、所定範囲αのうちの0%未満の範囲に割り当てられた三角波TR1とTR4とを、インバータ回路部2−1の第2,第4のスイッチング素子Q1-2,Q1-4のペアと、第7,第5のスイッチング素子Q1-7,Q1-5のペアとに対して、それらに含まれるスイッチング素子のオンオフ状態を制御するのに用いている。また、所定範囲αのうちの0%未満の範囲に割り当てられた三角波TR2とTR3とを、インバータ回路部2−2の第2,第4のスイッチング素子Q2-2,Q2-4のペアと、第7,第5のスイッチング素子Q2-7,Q2-5のペアとに対して、それらに含まれるスイッチング素子のオンオフ状態を制御するのに用いている。
【0084】
そして、三角波入替判定部33Aは、後述する入替え方法(A)〜(D)に基づいて、スイッチ部S1〜S8の接続を切り替える。
【0085】
なお、
図8では、2個のインバータ回路部がカスケードに接続されている場合を例示しているが、入替え方法(A)〜(D)については、2個の場合を含めて、N個(Nは複数)のインバータ回路部がカスケードに接続されている場合について説明する。1個のインバータ回路部に対して4個の三角波が必要となるので、N個のインバータ回路部には4N個(4×N個)の三角波が必要となる。
【0086】
図11は、カスケードに接続されたN個のインバータ回路部を備えている場合の三角波及び変調波の一例を示す図である(横軸は時間軸)。4N個の三角波TR1〜TR4Nの各々には、所定範囲(−100%〜100%)を均等に4N個に分割し、この分割された各範囲が割当て範囲として割り当てられる。各三角波TR1〜TR4Nは、そのピークピーク(peak to peak)の範囲が割当て範囲と一致するように生成される。そして、変調波refは、その最小値が三角波TR1の割当て範囲内の値となり、最大値が三角波TR4Nの割当て範囲内の値となるように生成される。
【0087】
ここで、N個のインバータ回路部をインバータ回路部2−1、2−2、・・・、2−Nとし、
図8の場合と同様、この順番に接続されているものとする。nを1〜Nまでの任意の整数として、N個のインバータ回路部の任意のインバータ回路部2−nに用いられる4個の三角波について考える。この4個の三角波において、その値の小さい(割当て範囲のレベルが低い)ものから順に第1の三角波TRn(1)、第2の三角波TRn(2)、第3の三角波TRn(3)、第4の三角波TRn(4)とし、各々の割当て範囲をZONE(n_1)、ZONE(n_2)、ZONE(n_3)、ZONE(n_4)とする。ここで、第1及び第2の三角波TRn(1)、TRn(2)の割当て範囲ZONE(n_1)、ZONE(n_2)は、所定範囲αのうちの0%未満の範囲に決められ、第3及び第4の三角波TRn(3)、TRn(4)の割当て範囲ZONE(n_3)、ZONE(n_4)は、所定範囲αのうちの0%以上の範囲に決められる。
【0088】
そして、任意のインバータ回路部2−nの第1〜第8のスイッチング素子をQn-1〜Qn-8とすると、第1及び第2の三角波TRn(1)、TRn(2)がペアとなり、インバータ回路部2−nの第2,第4のスイッチング素子Qn-2,Qn-4のペアと、第7,第5のスイッチング素子Qn-7,Qn-5のペアとに対して、それらに含まれるスイッチング素子のオンオフ状態を制御するために用いられる。
【0089】
また、第3及び第4の三角波TRn(3)、TRn(4)がペアとなり、第8,第6のスイッチング素子Qn-8,Qn-6のペアと、第1,第3のスイッチング素子Qn-1,Qn-3のペアとに対して、それらに含まれるスイッチング素子のオンオフ状態を制御するために用いられる。
【0090】
ここで、入替え方法(A)〜(D)について説明する。以下では、例えば、第1の三角波TRn(1)が、第2,第4のスイッチング素子Qn-2,Qn-4のオンオフ状態を制御するために(制御信号を生成するために)用いられている場合には、第1の三角波TRn(1)がスイッチング素子のペア(Qn-2,Qn-4)に割り当てられている、と記載する。
【0091】
入替え方法(A)は、変調波refの値が、第1の三角波TRn(1)の割当て範囲内にあるときには、その第1の三角波TRn(1)が最大値となるタイミングで、第1の三角波TRn(1)と、それとペアになっている第2の三角波TRn(2)との各々のスイッチング素子のペア((Qn-2,Qn-4)、(Qn-7,Qn-5))に対する割り当てを入れ替える。例えば、入れ替える前に、第1の三角波TRn(1)がスイッチング素子のペア(Qn-2,Qn-4)に割り当てられ、第2の三角波TRn(2)がスイッチング素子のペア(Qn-7,Qn-5)に割り当てられていた場合には、その割当てを入れ替える。
【0092】
入替え方法(B)は、変調波refの値が、第3の三角波TRn(3)の割当て範囲内にあるときには、その第3の三角波TRn(3)が最大値となるタイミングで、第3の三角波TRn(3)と、それとペアになっている第4の三角波TRn(4)の各々のスイッチング素子のペア((Qn-8,Qn-6)、(Qn-1,Qn-3))に対する割り当てを入れ替える。
【0093】
入替え方法(C)は、変調波refの値が、第2の三角波TRn(2)の割当て範囲内にあるときには、その第2の三角波TRn(2)が最小値となるタイミングで、第2の三角波TRn(2)と、それとペアになっている第1の三角波TRn(1)との各々のスイッチング素子のペア((Qn-2,Qn-4)、(Qn-7,Qn-5))に対する割り当てを入れ替える。
【0094】
入替え方法(D)は、変調波refの値が、第4の三角波TRn(4)の割当て範囲内にあるときには、その第4の三角波TRn(4)が最小値となるタイミングで、第4の三角波TRn(4)と、それとペアになっている第3の三角波TRn(3)の各々のスイッチング素子のペア((Qn-8,Qn-6)、(Qn-1,Qn-3))に対する割り当てを入れ替える。
【0095】
例えば、
図11において、実線L(Qn-1,Qn-3)は、第1,第3のスイッチング素子Qn-1,Qn-3の制御信号を生成するために用いる三角波を示し、破線L(Qn-8,Qn-6)は、第8,第6のスイッチング素子Qn-8,Qn-6の制御信号を生成するために用いる三角波を示す。
【0096】
ここで、変調波refが第4の三角波TRn(4)の割当て範囲ZONE(n_4)に存在しているので、第4の三角波TRn(4)が最小値となるタイミング(時点t23、t24、t25)で、第1,第3のスイッチング素子Qn-1,Qn-3の制御信号を生成するために用いる三角波L(Qn-1,Qn-3)と、第8,第6のスイッチング素子Qn-8,Qn-6の制御信号を生成するために用いる三角波L(Qn-8,Qn-6)とが、第4の三角波TRn(4)とそれとペアになっている第3の三角波TRn(3)との間で入れ替えられている。
【0097】
また、前述の
図9(b)のケースAの場合において、
図9(a)に示すように、変調波refが三角波TR3の割当て範囲内に存在するときには、三角波TR3は、インバータ回路部2−2において、下から2番目の第2の三角波であるので、三角波TR3が最小値となる時点t21、t22において、三角波TR3と、それとペアになっている三角波TR2とが入れ替わるようにスイッチ部S2,S3の切替えを行う。
【0098】
以上では、
図9(b)のケースAの場合について、PWM制御部3Aの一例を
図10に示して説明したが、他のケースB,Cの場合においても、
図9(b)の表中の矢印を考慮し同様にしてPWM制御部を構成することができる。例えば、
図9(b)のケースAにおいて、スイッチング素子ペア(Q2-8,Q2-6)とスイッチング素子ペア(Q2-1,Q2-3)との間の矢印は、これら2つのスイッチング素子ペアの制御信号の生成に用いられる三角波TR6と三角波TR7とがペアとなり、このペアの三角波TR6、TR7が入れ替え条件に基づいて、スイッチ部(S6,S7)の切替えによって入れ替えられることを示している。
【0099】
なお、
図10では、スイッチ部S1〜S8を比較器D1〜D8の前段に設けているが、
図2(a)に対する
図2(b)のように、スイッチ部S1〜S8を比較器D1〜D8の後段に設けるようにしてもよい。
【0100】
前述の入替え方法(A)〜(D)は、N=n=1とすれば、インバータ回路部が1個の場合の入替え方法(1)、(2)と同じである。すなわち、本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
次に、第1実施形態の
図7(a)、(b)に示したように、三角波入替判定回路33aに、直流部21のコンデンサCp、Cnの電圧Vp、Vn(測定値)及び出力電流i(測定値)を入力する場合について説明する。なお、第2実施形態のように複数のインバータ回路部をカスケードに接続した場合も同様であるので、ここでは、前述のようにN個のインバータ回路部を備えている場合について説明する。この場合の三角波入替判定回路を、三角波入替判定回路33xとする。
【0102】
N個の各々のインバータ回路部2−nに対して、2個のコンデンサCp、Cnの電圧Vp、Vnを常時測定する電圧測定器41(
図7参照)と、出力電流iを常時測定する電流測定器42(
図7参照)とが設けられ、各々の電圧測定器41の測定値及び各々の電流測定器42の測定値が三角波入替判定回路33xへ常時入力される。
【0103】
そして、三角波入替判定回路33xでは、N個の各々のインバータ回路部2−nについて、測定された出力電流iから、その出力電流iの向き(i<0、i>0)を判断し、2個のコンデンサCp、Cnの測定電圧Vp、Vnから、その大小関係(Vp<Vn、Vp>Vn)を判断するとともに、変調波refの値から変調波refが現時点において存在している範囲を判断し、前述の入替え方法(A)〜(D)を用い、かつ、入替え推奨条件テーブルTAに示された入替え推奨条件を満足する場合に三角波が入れ替えられる。
【0104】
図12は、入替え推奨条件テーブルTAの内容の一例を示す図である。入替え推奨条件テーブルTAは、例えば三角波入替判定回路33xに予め備えられている(すなわち、PWM制御部に記憶されている)。
【0105】
図12の入替え推奨条件テーブルTAにおいて、「変調波の存在する範囲」に記載されている、ZONE(n_1)〜ZONE(n_4)の各々は、
図11でも示したように、任意のインバータ回路部2−nに用いられる第1〜第4の三角波TRn(1)〜TRn(4)の各々の割当て範囲であり、「ZONE外かつ変調波>0%」及び「ZONE外かつ変調波<0%」の「ZONE外」とは、第1〜第4の三角波TRn(1)〜TRn(4)の割当て範囲ZONE(n_1)〜ZONE(n_4)以外の範囲のことである。また、「直流部電圧のバランス」は、前述のコンデンサCp、Cnの電圧Vp、Vnの大小関係のことである。
【0106】
この入替え推奨条件テーブルTAには、入替え推奨条件として、例えば、変調波refが第4の三角波TRn(4)の割当て範囲ZONE(n_4)に存在し、Vp>Vn、かつ、i>0である場合には、第4の三角波TRn(4)を第8、第6のスイッチング素子ペア(Qn-8,Qn-6)に割り当てること(TRn(4)→(Qn-8,Qn-6))、及び、第3の三角波TRn(3)を第1、第3のスイッチング素子ペア(Qn-1,Qn-3)に割り当てること(TRn(3)→(Qn-1,Qn-3))が示されている。
【0107】
図13は、例えば
図8のようにカスケードに接続された2個のインバータ回路部2−1,2−2を備えている場合の三角波及び変調波の一例を示す図である(横軸は時間軸)。
【0108】
図13では、変調波refが第4の三角波TR1(4)の割当て範囲ZONE(1_4)に存在しているので、入替え推奨条件テーブルTAを用いなければ、第4の三角波TR1(4)が最小値となる時点t26、t27、t28で、第1,第3のスイッチング素子Q1-1,Q1-3の制御信号を生成するために用いる三角波L(Q1-1,Q1-3)と、第8,第6のスイッチング素子Q1-8,Q1-6の制御信号を生成するために用いる三角波L(Q1-8,Q1-6)とが、第4の三角波TR1(4)とそれとペアになっている第3の三角波TR1(3)との間で入れ替えられることになる(例えば
図11参照)。
【0109】
ここで、入替え推奨条件テーブルTAを用い、かつ、
図13に示された時点t26、t27、t28において、インバータ回路部2−1の2個のコンデンサ電圧Vp、Vn及び出力電流iが、Vp>Vn、かつ、i>0であるとする。この場合の入替え推奨条件は、第4の三角波TR1(4)を第8、第6のスイッチング素子ペア(Q1-8,Q1-6)に割り当てること、及び、第3の三角波TR1(3)を第1、第3のスイッチング素子ペア(Q1-1,Q1-3)に割り当てることであるので、
図13に示されるように、三角波入替判定回路33xは、時点t26では、スイッチング素子ペアに割り当てる三角波の入替えを行うが、時点t27、t28では、入替えを行わない。
【0110】
これについて、
図14を用いて説明する。
図14(a)、(b)、(c)は、それぞれインバータ回路部2−1に流れる電流経路51〜53の一例を示す図である。
【0111】
ここで、前述のように、変調波refが第4の三角波TR1(4)の割当て範囲ZONE(1_4)に存在し、2個のコンデンサ電圧Vp、Vn及び出力電流iが、Vp>Vn、かつ、i>0であるとする。この場合に、
図14(a)に示すように、出力電流iが電流経路51を流れているとする。
【0112】
ここで、入替え推奨条件を無視して三角波を入れ替えて、第1、第3のスイッチング素子ペア(Qn-1,Qn-3)に第4の三角波TR1(4)を割り当て、第8、第6のスイッチング素子ペア(Qn-8,Qn-6)に割り当てると、
図14(b)に示す電流経路52となり、コンデンサCnの放電が続いて、さらに、コンデンサCnの電圧Vnが小さくなり、2個のコンデンサCp,Cnの電圧がよりアンバランスとなる。
【0113】
一方、入替え推奨条件を満足するようにして、三角波を入れ替えない場合には、
図14(c)に示す電流経路53となり、コンデンサCpの放電が続いて、コンデンサCpの電圧Vpが小さくなり、2個のコンデンサCp,Cnの電圧のアンバランスを小さくすることができる。
【0114】
すなわち、入替え推奨条件は、2個のコンデンサCp、Cnの電圧Vp、Vnの差を小さくするための条件あるいは上記差を大きくしないための条件であると言える。
【0115】
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態における電力変換装置の一例を示す回路図である。
【0116】
この電力変換装置は、3つのインバータ回路部2a、2b、2cと、PWM制御部3Bとで構成される。各々のインバータ回路部2a、2b、2cは、
図1のインバータ回路部2と同様の構成であり、各々の直流部21には各々の電源回路1が接続されている。各々の電源回路1は、3相交流電源11と6個のダイオードからなる全波整流回路12とで構成されている。
【0117】
3つのインバータ回路部2a、2b、2cはY結線により3相交流電動機5に接続されている。すなわち、インバータ回路部2a、2b、2cの第1出力端子2ap、2bp、2cpが3相交流電動機5に接続され、インバータ回路部2a、2b、2cの第2出力端子2an、2bn、2cnが互いに接続されている。
【0118】
PWM制御部3Bは、
図1のPWM制御部3と同様、変調波refとPD方式による三角波とを用いて、3つのインバータ回路部2a、2b、2cの各スイッチング素子を制御する制御信号(PWM信号)を生成し出力する。ここでは、3つのインバータ回路部2a、2b、2cは、それぞれの出力電圧及び出力電流の位相が2π/3ずつずれるように制御されるが、各々のインバータ回路部2a、2b、2cの制御は、第1実施形態のインバータ回路部2と同様である。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、ここでは、PWM制御部3Bに、
図2(a)または
図2(b)に示す三角波入替回路33を用いているが、
図7(a)または
図7(b)に示す三角波入替回路33aを用いてもよい。
【0119】
この
図15の構成において、各々の3相交流電源11の電源電圧が450[Vrms]で、電源周波数が60[Hz]とし、3相交流電動機5として定格電気角周波数が8[Hz]で定格出力が3[MW]の低速大トルク電動機を用いているものとし、インバータ回路部2a、2b、2cの出力周波数が8[Hz]で、出力電力が3[MW]であるとして、第3実施形態における制御方法を用いた場合のシミュレーションを行うとともに、比較例の制御方法を用いた場合のシミュレーションを行った。このシミュレーションによる直流部の中性点電位Vmの経時変化を
図16に示す。ここでの比較例は、各インバータ回路部2a、2b、2cの制御を、
図3に示す方法で行ったものである。
【0120】
図16に示すように、比較例の場合には中性点電位Vmが出力周波数で大きく変動するのに対し、第3実施形態の場合には中性点電位Vmの変動が抑えられている。