特許第6385060号(P6385060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385060治療的に活性な抗体のインビボにおける選択
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385060
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】治療的に活性な抗体のインビボにおける選択
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/00 20060101AFI20180827BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61K49/00
   C12Q1/02
【請求項の数】15
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-557069(P2013-557069)
(86)(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公表番号】特表2014-510076(P2014-510076A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012053801
(87)【国際公開番号】WO2012120004
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年3月3日
【審判番号】不服2017-7702(P2017-7702/J1)
【審判請求日】2017年5月30日
(31)【優先権主張番号】11001859.5
(32)【優先日】2011年3月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ドボス, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ショイアー, ヴェルナー
【合議体】
【審判長】 阪野 誠司
【審判官】 冨永 みどり
【審判官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/077021(WO,A1)
【文献】 特表2010−529060(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/003996(WO,A1)
【文献】 Clin Cancer Res,,2007年,Vol.13,No.22,p.6639−6648
【文献】 European Journal of Radiology,2009年,Vol.70,p.286−293
【文献】 Science & Technology Trends,2009年10月号,13−25ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K49/00
A61B10/00
A61K39/395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が蛍光標識され、同じ所望の標的に結合し、被験体において潜在的に疾患又は障害を処置することができる、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、抗体に基づいた治療において治療的に最も効果的な抗体の候補である、被験体の哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択する非侵襲的方法であって、
(a)前記パネルの蛍光標識された潜在的に治療上有効な抗体の各々を、被験者におけるその標的に結合させた後で、近赤外蛍光イメージング(NIRF)によって検出し、
(b)各抗体の蛍光シグナルをお互いに比較し、
(c)その標的に結合した後に、最高の蛍光シグナルを示す抗体を選択する
ことを含む非侵襲的方法。
【請求項2】
同じ所望の標的に結合する抗体の前記パネルが、一種類の蛍光標識だけで蛍光標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞が悪性細胞である、請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
潜在的に治療上有効な抗体の前記パネルが、前記被験体の治療に使用されることを意図した抗体を含む、請求項1から3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記抗体を検出する前に、被験体は蛍光標識された潜在的な治療抗体を投与される、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
被験体が哺乳動物である、請求項1から5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記被験体が、前記所望の標的を細胞表面に有する、悪性/癌細胞を含む腫瘍を含む、請求項1から6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍が異種移植片、好ましくはヒトの異種移植片である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
標的が細胞外部分を有するタンパク質である、請求項1から8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
近赤外蛍光イメージングが、蛍光反射率イメージング(FRI)又は蛍光媒介トモグラフィー(FMT)を含む、請求項1から9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
治療に最適である抗体をインビボで選択するための、請求項1から10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
被験体において潜在的に疾患又は障害を処置することができる、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、抗体に基づいた治療において治療的に最も有効な抗体の候補である哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択するための、請求項1から11の何れかに記載の方法の使用。
【請求項13】
各々が蛍光標識され、同じ所望の標的に結合し、被験体において潜在的に疾患又は障害を処置することができる、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、抗体に基づいた治療において治療的に最も効果的な抗体の候補である、哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択する方法において、
(a)前記パネルの蛍光標識された潜在的に治療上有効な抗体の各々を、被験者におけるその標的に結合させた後で、近赤外蛍光イメージング(NIRF)によって検出し、
(b)各抗体の蛍光シグナルをお互いに比較し、
(c)その標的に結合した後に、最高の蛍光シグナルを示す抗体を選択する
ことを含む方法における、近赤外蛍光イメージング(NIRF)の使用。
【請求項14】
同じ所望の標的に結合する抗体の前記パネルが、一種類の蛍光標識だけで蛍光標識される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
潜在的に治療上有効な蛍光標識された抗体のパネル、及び被験体において前記抗体を検出するための近赤外蛍光イメージングの手段を含む、請求項1から14に記載される方法の何れかにおける使用のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、近赤外蛍光イメージング(NIRF)により、被検体の哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択する非侵襲的方法、並びにその方法におけるNIRFの使用に関する。更に、潜在的に治療に有効な蛍光標識化抗体のパネルを含むこれらの方法、及びNIRFイメージングの手段が提供される。
【0002】
抗体は、市販のヒト生物学的治療薬の増加する部分を占めている。抗体は、自己免疫、癌、炎症及び感染症など、あらゆる種類の疾患分野において使用される。癌(その後自己免疫が続く)は、抗体の使用に適した大きな疾患領域である。抗体産業界は、継続的に、新しい堅牢な発見のプラットフォーム及び新規抗体フォーマットを開発しており、治療薬として抗体の多様性を指し示している。その結果、抗体の最適選択、設計、及び操作は、過去20年に拡大しただけでなく、今や競争的要因として関わるようになった。実は、治療抗体の設計は、最適な有効性のための、産生、エピトープ選択、及び操作を含む。1980年代に、抗体が、治療薬として最初に脚光をあびるようになったとき、産生、エピトープ選択、及び操作はかなり限られていた。しかし、その頃から、より多くの抗体が開発され市販されてきたため、この分野の進歩が成されてきた。
【0003】
しかし、抗体は、適切に設計されているが、候補の生物学的治療薬であるように選択され得る前の道半ばである。確かに、抗体は、治療的に有効でなければならない。従って、抗体の治療的有効性は試験されなければならない。同様に、治療的用途のための抗体は、診断上効果的でなければならず、試験されなければならない。
【0004】
具体的には、所与の抗体による治療的介入が開始する前に、関連抗原の発現が確認されなければならない。これは一般に、外植された腫瘍組織のホルマリン固定及びパラフィン包埋の手順後に、従来の免疫組織化学(IHC)により、又はインサイツハイブリダイゼーションアッセイにより達成される。関連する腫瘍関連標的抗原の発現が確認された場合に、治療抗体による処置が正当化されるのみである。
【0005】
多くの場合、標的発現の検証は、治療抗体では実施されず、IHC用に適した抗体で実施される。つまり、IHC用に適した抗体で得られた結果から、IHCで得られた結果が有望であることを条件として、IHC用に適した抗体と同じ標的を指向する抗体は、候補となる治療抗体である可能性があると合理的に仮定することができると仮定される。しかし、このアプローチは、標的コンフォーメーションの誤まった解釈へ導き得る限界を有している。IHC試験に適用可能な抗体は、IHCで要求される特異的基準(例えば、パラフィン浸透性)を満たすように最適化され、従って、治療抗体とは異なる結合特性を持つ場合がある。更に、従来のホルマリン固定は欠点を有している(Chu, Modern Pathol 2005; 18: 850-863)。固定化は、IHCモノクローナル抗体の結合が低下(又は強化)するように、表面抗原を修飾する場合があり、それは臨床的状況を反映しない、加えて、ホルマリン固定パラフィン包埋組織スライドは、IHC抗体による最適な染色を得るために特別の方式で処理されなければならない。
【0006】
治療的に活性な抗体を選択するための別の技法は、動力学的解析による選択である(Esaki, Biacore Journal 2002; 2: 7-8)。IHCように、またこの方法は人工的な条件の下でインビトロで行われる。しかし、これまでに代替は無く、この方法は治療的に活性な抗体の選択用に使用されている。
【0007】
治療的に有効な又は一層潜在的に最高な治療抗体の選択のための従来技術は、インビボでのパラメータが考慮されず、欠乏している。例えば、腫瘍関連表面抗原は、腫瘍の増殖および転移拡張の最中に、調節(過剰発現、内在化又は脱離)することができ、従って、インビトロで治療的に有望な抗体は、インビボで同じ有効性を示さない場合がある。
【0008】
理論上は、従って、抗体の精製されたプールの患者に対する直接の注入を考えても良い。その論理的根拠は、抗体のプールの中に適切な候補が存在するであろうことであろう。しかし、この理論的な考えは現実に具体化することはできない。実際、それは可能でもなく、所望されもしない。これは、少なくとも2つの理由において、長期治療の場合に特に当てはまる。一つは、患者の健康に対する他の潜在的なリスクはおろか、抗体の大規模な用量の反復注射の結果として、抗イディオタイプ免疫応答を誘導する可能性である。他方は、抗体の高コスト、及び抗体のプールのどの抗体が治療上最も効果的なものであるかは決して分からないという事実である。
【0009】
従って、抗体は、ワクチンに次いで二番目に大きな医薬分類であり、抗体に基づいた治療法は高価で、従って治療的有効性の観点から患者に対して最適化されるべきであるため、治療が開始される時点で、インビボで同時に、標的発現の確認及び治療抗体の結合の実証を可能にする技術は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルの中で、潜在的に治療上最も活性である候補の抗体を選択するために、非常に望まれるであろう。更に、そうした技術がインビボでの状態を反映するであろう場合、非常に所望されるであろう。
【0010】
従って、本発明の技術的課題は、上述のニーズに適合している。
【0011】
本発明はこれらのニーズに応え、従って、技術的課題に対する解として、手段に関する実施態様、例えば、道具及びキット、並びに方法を与え、これらの手段を、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療上最も有効な抗体の候補である、哺乳動物の細胞(好ましくは、悪性細胞)の表面上の所望の標的に対する抗体のインビボでの選択のために適用することを用いる。これらの実施態様が本明細書において特徴付けられ記述され、実施例に示され、特許請求の範囲に反映される。
【0012】
本発明の態様は、以下の態様/項目に要約することができる。
(1)各々が蛍光標識された潜在的に治療上有効な抗体(同じ所望の標的に結合する)のパネルのうち、治療的に最も効果的な抗体の候補である、被験体の哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択する非侵襲的方法であって、
(a)前記パネルの蛍光標識された潜在的に治療上有効な抗体の各々を、被験者におけるその標的に結合させた後で、近赤外蛍光イメージング(NIRF)によって検出し、
(b)その標的に結合した後に、最高の蛍光シグナルを示す抗体を選択する
ことを含む。
【0013】
(2)同じ所望の標的に結合する抗体の前記パネルが、一種類の蛍光標識だけで蛍光標識される、態様1に記載の方法。
【0014】
(3)前記哺乳動物細胞が悪性細胞である、先行する態様の何れかに記載の方法。
【0015】
(4)潜在的に治療上有効な抗体の前記パネルが、前記被験体の治療に使用されることを意図した抗体を含む、先行する態様の何れかに記載の方法。
【0016】
(5)前記抗体を検出する前に、被験体は蛍光標識された潜在的な治療抗体を投与される、先行する態様の何れかに記載の方法。
【0017】
(6)被験体が哺乳動物である、先行する態様の何れかに記載の方法。
【0018】
(7)前記被験体が、前記所望の標的を細胞表面に有する、悪性/癌細胞を含む腫瘍を含む、先行する態様の何れかに記載の方法。
【0019】
(8)前記腫瘍が異種移植片、好ましくはヒトの異種移植片である、態様6に記載の方法。
【0020】
(9)標的が細胞外部分を有するタンパク質である、先行する態様の何れかに記載の方法。
【0021】
(10)近赤外蛍光イメージングが、蛍光反射率イメージング(FRI)又は蛍光媒介トモグラフィー(FMT)を含む、先行する態様の何れかに記載の方法。
【0022】
(11)治療に最適である抗体をインビボで選択するための、先行する態様の何れかに記載の方法。
【0023】
(12)潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療的に最も有効な抗体の候補である哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択するための、先行する態様の何れかに記載の方法の使用。
【0024】
(13)各々が蛍光標識された潜在的に治療上有効な抗体(同じ所望の標的に結合する)のパネルのうち、治療的に最も効果的な抗体の候補である、哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択する方法において、
(a)前記パネルの蛍光標識された潜在的に治療上有効な抗体の各々を、被験者におけるその標的に結合させた後で、近赤外蛍光イメージング(NIRF)によって検出し、
(b)その標的に結合した後に、最高の蛍光シグナルを示す抗体を選択する
ことを含む方法における、近赤外蛍光イメージング(NIRF)の使用。
【0025】
(14)同じ所望の標的に結合する抗体の前記パネルが、一種類の蛍光標識だけで蛍光標識される、態様13の使用。
【0026】
(15)癌の処置において使用のために、先行する態様の何れかに記載の方法により選択される抗体。
【0027】
(16)癌の処置において使用のために、先行する態様の何れかに記載の方法により選択される抗体の使用。
【0028】
(17)潜在的に治療上有効な蛍光標識された抗体のパネル、及び被験体において前記抗体を検出するための近赤外蛍光イメージングの手段を含む、先行する態様に記載される方法の何れかの使用のためのキット。
【0029】
本明細書で使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の言及を含む。従って、例えば、「a reagent」への言及は一又は複数のこのような異なる試薬を含み、「the method」への言及は、変更又はここに記載される方法との置換が可能である当業者に公知である均等な工程及び方法も含む。
【0030】
本開示において引用される全ての刊行物及び特許を、出典明示によりその全内容をここに援用する。引用により援用される材料が、本願明細書と相反する又は矛盾する場合は、本願明細書はそれらのいかなる材料にも優先する。
【0031】
特に明記しない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」なる用語は、該一連のなかの全要素に言及していると理解されなければならない。当業者は、常套的な実験のみを使用して、本願明細書に記載される本発明の特定の実施態様の多くの均等物を認識又は確認するであろう。このような均等物は、本発明により包含されるものとする。
【0032】
本願明細書及び続く請求項を通して、文脈が特に限定しない限り、語「含む(comprise)」、及び「含む(comprises)」及び「含んでなる(comprising)」等の変形は、明記された整数値又は工程、又は整数値もしくは工程の群の包含を意味し、何れかの他の整数値又は工程、又は整数値もしくは工程の群を除外するのではないことが理解される。本明細書で使用される用語「含んでなる(comprising)」は、用語「含有する(containing)」と置換することができ、あるいはときに本明細書で使用する場合、用語「有する(having)」と置換することができる。
【0033】
本明細書で使用する「からなる(consisting of)」は、請求項の要素に特定されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。本明細書で使用するとき、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えない材料又は工程を除外しない。
【0034】
本明細書の各事例において、用語「含んでなる(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」は、他の2つの用語の何れかと置換され得る。
【0035】
本明細書で使用される、複数の列挙された要素間における接続用語「及び/又は(and/or)」は、個々の選択肢及び組み合わせの選択肢の両方を網羅していると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」により結合される場合、第1の選択肢は、第2番目の無い第1の要素の適用性を言及する。第2の選択肢は、第1の無い第2の要素の適用性を言及する。第3の選択肢は、第1第及び第2の要素を一緒にした適用性を言及する。これらの選択肢の何れか一は、本明細書で使用される用語「及び/又は」の意味の範囲内にあり、従ってその要求条件を満たすと理解される。複数の選択肢の同時適用もまた、本明細書で使用される用語「及び/又は」の意味の範囲内にあり、従ってその要求条件を満たすと理解される。
【0036】
本明細書に記述される「好適な実施態様」は、「本明細書の好適な実施態様」を意味する。同様に、本明細書に記述される「様々な実施態様」及び「別の実施態様」は、「本発明の様々な実施態様」及び「本発明の別の実施態様」をそれぞれ意味する。
【0037】
幾つかの文書が本明細書の文章を通じて引用される。本明細書に引用される文書の各は(全ての特許、特許出願、科学文献、製造業者の説明書を含み)、上掲又は下記であろうと、その全体が参照により本明細書に援用される。本明細書のいかなるものも、先行発明によるその開示に先行する権利を与えられていないことを認めるとして解釈されるべきではない。
【0038】
潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち治療的に最も有効な抗体を選択する目的を持つ本出願の発明者は、本治療が開始されるであろう時点で、インビボで同時に標的発現の確認及び治療抗体の結合の実証を可能にする、明細書に記述される本発明の方法を開発した。
【0039】
発明者は、治療抗体を有機フルオロフォアで標識し、ヒトの異種移植片を有するマウスにそれを静脈注射した。それらは、標的発現及び腫瘍組織への結合を確認するための近赤外蛍光(NIRE)の有用性を実証した。Cy5標識トラスツズマブ抗体(商品名:ハーセプチン)またはペルツズマブ抗体(商品名:Omnitarg)の50マイクログラムのマウスへの単回静脈注射の後(トラスツズマブとペルツズマブにより認識されるHer2陽性腫瘍を運搬する)、24から48時間後に腫瘍領域で強い蛍光シグナルが検出可能である。外植された腫瘍組織の続く解析では、Her2特異的抗体は、腫瘍細胞にのみ結合するが、マウスの組織には結合しないことを明らかにした。対照的に、ヒトGgEを指向する対照抗体ゾレアでは蛍光シグナルは生成されない(図1)。このアプローチは、古典的なIHCによる標的抗原の従来の検出よりも優れており、その理由は、i)関連する標的がその「自然環境」にある、ii)原発性腫瘍の増殖や転移拡散時にターゲット発現の調節を検出することができる、iii)抗体が関連する標的に結合した後に腫瘍組織の外植と固定が行われる、iv)治療抗体とIHC抗体の結合特性の違いは恐らく陳腐化するようになり、又は確認のためだけに行われ得るからである。
【0040】
それらの研究において、本発明者らは、IHCなどのインビボの試験において良好な性能を示した抗体が、必ずしも十分な治療活性を持っていなかったことを観察した。同様に、近赤外イメージングにおいて優れた性能を示した抗体は、驚くべきことに、十分な治療活性を有していた。これらの観察から、本発明者らは、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち治療上最も有効な抗体を選択するためにこれまで適用された技術は、偽陽性または偽陰性のどちらかの結果を生む場合があり、従って、例えば癌治療における抗体に基づいた治療のため、有望な候補抗体を確実に選択するための要求を満たしていないと結論づけた。しかしながら、本発明の方法は、哺乳動物細胞の表面上の所望の標的の発現レベル、標的の内在化、及び/又は標的の潜在的な脱落を考慮している。
【0041】
具体的には、発明者は、Cyr61に対して潜在的に治療上有効な抗体を有機フルオロフォアCy5で標識し、それらをヒト異種移植片を有するマウスに(各個々に)静脈内注射した。この目的のために、本発明者は、腫瘍抗原Cyr61に対する4つの異なる治療抗体(MOR06395,MOR06396,MOR06434,MOR06420)を、有機フルオロフォアCy5で標識した。標識抗体の各々は、腫瘍を有する3匹のSCID−ベージュマウスに皮下注射した(ヒト膵臓異種移植)。標識された抗Cyr61モノクローナル抗体の50マイクログラムの1回の静脈注射後、24から48時間後に、蛍光シグナルが腫瘍領域でイメージ化された(図2)。全ての生体内画像内のシグナルが、正規化され、疑似色に変換され、腫瘍領域内の強度を分析した。4つの異なる抗体のシグナル強度を互いに比較すると、モノクローナル抗体MOR06420が、腫瘍領域で最も高いシグナル強度を示す。
【0042】
インビボのイメージングからの結果は、組織学的エキソビボ解析によって確認した。このために、腫瘍は外植され、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋した。スライス及びDAPI染色された腫瘍組織において、抗体MOR06420はまた、最も明るいシグナル強度を示している(図3)。インビボの結果及びエキソビボの結果から、モノクローナル抗体MOR06420は最良の結合効力を有する抗体として、優先順位を付けることができる。
【0043】
従って、抗体MOR06420は最良の治療的有効性を示すと仮定された。この仮説を確認するために、Cyr61に対する4つの異なる治療抗体が前臨床試験で試験された。皮下にPanc−1を有するSCID−ベージュマウスを、10匹ずつ5つのグループに分けた。未処置のビヒクル(vehicle)群には、ヒスチジン緩衝液を週に2回腹腔内注射した。4つの治療群の各々は、20mg/kgの濃度の抗Cyr61抗体が週に2回腹腔内注射された。全ての動物の腫瘍体積をキャリパーにより経時的に測定した(図4)。実際、抗Cyr61モノクローナル抗体MOR06420は、68%の腫瘍増殖の阻害を伴い、PANC−1異種移植片の中で最も強力な抗腫瘍活性を有すると思われる。
【0044】
従って、本発明の第一の態様は、各々が蛍光標識された潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療的に最も効果的な抗体の候補である、被験体の哺乳動物の細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択する非侵襲的方法に関し、
(a)前記パネルの蛍光標識された潜在的に治療上有効な抗体の各々を、被験者におけるその標的に結合させた後で、近赤外蛍光イメージング(NIRF)によって検出し、
(b)その標的に結合した後に、最高の蛍光シグナルを示す抗体を選択する
ことを含む。
【0045】
従って、本質的には、本発明の方法は、治療に最適である抗体をインビボで選択するためである。同様に、治療上有効な抗体を最適化するためである。また、それは、潜在的な治療抗体のパネルのうち、被験体(即ち、個体)の治療に最も効果的な抗体が選択されるという点で、抗体に基づいた治療を個別化するために適用することができる。従って、本発明は本発明の方法を実行することによって、治療上最も有効な抗体が個別に選択されるという点で、抗体に基づく治療の調整を可能にする。
【0046】
更に、本発明の方法は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の抗体を含んでなる潜在的な治療抗体のパネルが、被験体にとって適しているかどうかを試験することを可能にする。具体的には、本明細書に記述される方法は、被験体においてインビボで所望の標的に対する2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の抗体を同意に試験することを可能にし、それによって、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の抗体が、互いに有害に干渉するかどうか(例えば、抗体が同一のエピトープを競合し得るか、又は立体障害に起因してお互いを結合から締め出すか)について決定することを可能にしている。これは、抗体に基づいた治療の有効性を増大するために、同じ所望の標的に対する2以上の抗体を被験体に対して投与することが望まれ得るので、重要な態様である。
【0047】
同様に、本発明の方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の抗体に対する抗体が、多重抗体に基づく治療において互いに干渉するかどうかについて試験することを可能とする。本発明のこれらの態様は、患者に対して可能性のある有害作用の評価に役立つ。
【0048】
また、本発明の方法は、所望の標的に対するその結合、及び非所望の標的に対するその結合(即ち、非特異的結合)をインビボでモニタリングすることが可能であるため、インビボで、抗体の特異性の決定を可能にする。
【0049】
本明細書に記述される方法と用途は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療上最も有効な抗体の候補である、哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体のリアルタイムのインビボ選択を可能にすし、即ち、そうした抗体の選択においてインビトロの工程を必要とせず、及び/又は、例えば写真を現像する等のデータの生成及び収集に遅延を生じることが無い。従って、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療上最も有効な抗体の候補を選択するときの、抗体の性能の任意の変化は、直接的に(オンラインで)視覚化され得る。
【0050】
依って、本発明の方法の利点は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療上最も有効な抗体を選択することを可能にするように、リアルタイムで、インビボで潜在的な治療抗体の性能の画像化を可能にすることである。従って、本発明の方法は、治療が開始された時点で、インビボで同時に、標的発現の検証と治療抗体の結合の実証を可能とする。
【0051】
実際、発明者は、治療上有効な抗体を選択するための標準であるIHCなどのインビトロでの試験で良好な結果を示した抗体は、インビボでは有望な治療的有効性を示さないことを見いだした。特に、発明者は、これらの有望な抗体のインビボでの性能を監視するためにNIRFを適用し、これらの抗体が効果的に標的に結合できないことを見いだした。
【0052】
同様に、発明者は、驚くべきことに、インビトロ試験に失敗した抗体が、NIRFを適用してこれらの「失敗した」抗体の性能をモニタリングした際に、治療的に有効な抗体の有望な候補であることを見いだした。
【0053】
従って、本発明者らは、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療上最も有効な抗体の候補を選択するための一般的に適用されるインビトロ技術は信頼性が無いが、そのような候補の抗体は、インビボで、リアルタイムの条件下での抗体の性能を監視する方法を適用することによって、即ち、本発明の方法を適用することにより、一層確実に同定することができると結論づけた。
【0054】
本発明の方法はまた、各が蛍光標識された潜在的に診断に有効な抗体のパネルのうち、診断上最も有効な抗体の候補を選択するために適用可能である。従って、診断の態様が関する限り、本明細書に記述された全実施態様において、用語「治療上(therapeutically)」又は「治療的(therapeutic)」又はその任意の他の文法的形態は、「診断上(diagnostically)」又は「診断的(diagnostic)」及びその任意の文法的形態を意味すると理解されるべきである。
【0055】
本発明の方法は、非侵襲性である。「非侵襲性」とは、本発明の方法及び用途を実行するために、被験体の皮膚のひび割れ、例えば切開は作られず、粘膜との接触、または皮膚のひび割れ、又は天然もしくは人工の身体開口部を以外の内部体腔が無いことを意味する。
【0056】
用語「インビボ」は、リアルタイムの条件下で、潜在的に診断に有効な抗体のパネルのうち、診断上最も有効な抗体の候補を選択することを包含する。従って、生きている被験体で画像化又はスキャニング技術を用いて、潜在的に治療上有効な抗体を局在化及び/又は検出することを言う。
【0057】
従って、抗体の性能は生きている生命体で監視することができる。従って、本発明の方法は、部分的又は死んだ生物体においては実施されない。このように、生きている被験体における抗体のインビボでの選択は、生きている生命体に起きる/存在する筋書きを反映し;それによって被験体で自然に生じる状態を考慮に入れている。
【0058】
例えば、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、薬物相互作用及び症状の重篤度は、抗体の治療活性に影響を与える場合がある。
【0059】
本発明の選択方法は、「インビボで」行われる。従って、インビボでの画像化を適用する本発明の方法及び用途は、部分的又は死んだ生物体においては実施されない。
【0060】
従って、被験体らは同じ疾患に罹患し得るにも関わらず、インビボの状態は異なり、従って、一の被験体において治療上最も有効である抗体が、別の被験体においては必ずしも有効では無い場合があり、その逆もまた同様であるため、本発明の方法は、個々の被験体に対して最も有効である候補抗体を選択することを可能にし、即ち、該方法は、被験体に対する個別化/個別化(personalized/individualized)された治療を可能にする。例えば、標的抗原は、被験体においてその発現レベルの観点から発現が異なる場合があり、埋もれる場合があり、異常にグリコシル化される場合があり、それによって被験体間での相違を作り出している、しかしながら、本発明の方法は、これらの潜在的な問題を克服し、それによって抗体に基づいた治療方法の個別化を利用可能にしている。
【0061】
潜在的に治療上有効である抗体の「パネル」は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、140、150、160、180、200、220、240、250、260、280、300、400、500、600、700、800、900又は1000の抗体を含み得る。潜在的に治療上有効な抗体のパネルに含まれる抗体は、蛍光標識され、即ち、前記パネルからなる抗体の各々は蛍光標識される。
【0062】
理論に束縛されるものではないが、パネルに含まれる抗体は、同じ所望の標的に結合するものの、互いに異なっていることが予想される。例えば、それらは、前記標的の異なるエピトープに結合することができ、又は前記標的にを異なる親和性で結合することができる。
【0063】
好適な実施態様において、潜在的に治療上有効な抗体のパネルは、被験体の治療に用いられることを意図した抗体を含む。
【0064】
本明細書で使用される被験体は、哺乳動物及び非哺乳動物の被験体を含み、哺乳動物の被験体が好適である。本発明の目的のための「哺乳類」は、哺乳類として分類される任意の動物を言及し、ヒト、家畜(domestic animals)及び家畜(farm animals)、非ヒト霊長類、及び乳房組織がある他のいかなる動物も含む。哺乳類は、ヒト、齧歯動物、例えばマウス、ネズミ又はウサギ、イヌ、ネコ、チンパンジーその他を含み、ヒトが好ましい。被験体も、ヒト及び獣医の患者を含む。
【0065】
被験体は、好ましくは、本明細書に記述される所望の標的を有する悪性細胞を、該悪性細胞の表面上に含む腫瘍を含む。
【0066】
非哺乳類被験体は、例えば、鶏、カモ又はゼブラフィッシュである。また、本発明の被験体は、腫瘍を含むことが想定される。
【0067】
被験体はまた、非ヒト被験体も含む。非ヒト被験体は、特定の疾患又は障害のモデルを表す場合がある。本発明の非ヒト被験体は、異種移植片、好ましくはヒト異種移植片、より好ましくはヒト腫瘍を含むことが想定される。
【0068】
この態様は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療的に最も有効な抗体の候補である哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択するための、前臨床モデルを考慮する。
【0069】
幾つかの実施態様において、被験体は、固形腫瘍を有する。固形腫瘍は、良性(非癌)か、悪性(癌)である可能性がある。
【0070】
幾つかの実施態様において、被写体は既に本明細書に記載の抗体の1つ以上を含む。換言すれば、一つ以上の抗体は、本発明の方法及び用途を実行する前に被験体に投与される。従って、被験体は、いわば、一つ以上の抗体で前処置されている。しかしながら、抗体は、非治療的な量で投与されるため、好ましくはまだ治療的に有効ではない。
【0071】
本発明の方法の好適な態様において、被験体の固形腫瘍は、異種移植片、好ましくはヒト異種移植片、より好ましくはヒト腫瘍である。典型的には、当業者は、抗体のパネルを所望の目標に対して治療上最も有効な抗体を試験する必要がある場合、全ての抗体について同じ異種移植片を使用するであろう(例えば、一事例では、CYR61抗体のパネルの全ての抗体の比較を行うためにPanc−1異種移植片、別の事例では、HER3抗体のパネルの全ての抗体の比較を行うためにCALU−3異種移植片)。
【0072】
用語「固形腫瘍」は、本願明細書において用いられる場合、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵嚢癌、肝癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓又は腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門の癌、陰茎癌、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、並びに頭頚部癌の群から選択される腫瘍を意味し、好ましくは乳癌である。
【0073】
本発明の目的のために、固形腫瘍は少なくとも1mm、好ましくは2mmの大きさを有する。この大きさで、固形腫瘍は、増殖し生き残るためには、増殖因子の十分な供給、毒性分子の除去並びに十分な酸素供給に依存する。固形腫瘍において、例えば酸素は、毛細血管から放射状に約150から200μm拡散することができ、従って、腫瘍は血管による酸素の供給に依存し、従って、血管新生が開始する。
【0074】
例えば、固形腫瘍は、本願明細書において用いられる場合、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵嚢癌、肝癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓又は腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門の癌、陰茎癌、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、並びに頭頚部癌の群から選択される腫瘍を言及する。
【0075】
本明細書で使用されるとき、用語「癌」は、腫瘍の増殖によって特徴付けられる医学的状態を指す。従って、典型的に無秩序な細胞増殖によって特徴付けられる被験体における生理学的状態である。
【0076】
哺乳動物細胞は、本明細書に記載の哺乳動物の細胞である。これは、全ての型の細胞、例えば、臓器の細胞、筋肉細胞、神経細胞、免疫系の細胞(PBMC、B細胞、T細胞、NK細胞を含むリンパ球、マクロファージ)、好酸球、好中球、好塩基球を含む。好適な実施態様において、前記哺乳動物の細胞は悪性細胞である。
【0077】
「悪性」は、進行性で悪化する疾患の一因となる細胞、特に本明細書に記載される腫瘍の増殖又は疾患の一因となる細胞を記述する。この用語は、腫瘍の増殖を含む癌の記述として最もよく知られている。悪性細胞は、それらの増殖は自己限定されず、隣接する組織に侵入することが可能であり、遠隔組織に拡散することが可能であり得る(転移性)。悪性とは、本明細書で使用される場合は、癌と同義である。
【0078】
本明細書で使用される場合、「検出」とは近赤外蛍光イメージングと関連した任意の技術又は方法を言い、蛍光標識から、例えば、本明細書に記載される抗体の蛍光標識から放出されたシグナルを検出するために使用される、蛍光イメージング及び/又はスキャニング技術を含む。それは、蛍光シグナルが局在化可能と期待される場合、被験体の体(又はその部分)の領域の画像を作成することを含む。例えば、蛍光標識された抗体が、哺乳動物の肝臓の細胞の表面に結合することが予想される場合、画像は、肝臓が位置する身体の領域から作成される。
【0079】
本発明の方法で適用される蛍光標識を検出する場合に好適である近赤外蛍光イメージングは、電磁波スペクトルの近赤外領域を使用する分光法である。好適な実施態様において、近赤外蛍光イメージングは、蛍光反射イメージング(FRI)又は蛍光媒介性断層撮影(FMT)を含む。
【0080】
「領域」は、被験体の身体の任意の一部、被写体の任意の臓器、及び皮膚を含む、被験体の身体の表面、筋肉及び骨を含む。「臓器」は、消化系(唾液腺、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、腸、直腸及び肛門を含む);内分泌系(視床下部、下垂体又は脳下垂体、松果体又は松果腺、甲状腺、副甲状腺の及び副腎、すなわち副腎等の内分泌腺を含む);外皮系(皮膚、髪及び爪を含む);リンパ系(リンパ系、リンパ節、扁桃、アデノイド、胸腺及び脾臓を含む);筋肉系;神経系(脳、脊髄、末梢神経及び神経を含む);生殖器系(卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、輸精管、精嚢、前立腺及び陰茎を含む);呼吸器系(咽頭、喉頭、気管、気管支、肺及び隔膜を含む);骨格系(骨、軟骨、靭帯及び腱を含む);及び尿路系(尿の体液平衡、電解質均衡及び排出に関係する腎臓、尿管、膀胱及び尿道を含む)から選択される一以上の器官を含む。
【0081】
同様に、画像が本発明に記載される領域から、及び/又は被験体の更なる領域から作成されることが想定される。具体的には、蛍光標識抗体を局在化するために被験体の全身からの画像を作成することは興味深い場合がある。例えば、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち治療上最も有効な抗体の候補を選択することを支援するために、血中の抗体の結合及び/又は存在を監視して、例えば抗体の結合特異性及び/又はその分布、半減期などを決定することは興味深い場合がある。
【0082】
「被験体の更なる領域から」とは、被験体の更なる明確な又は別々の部分、又は領域を意味し、任意の種の測定において興味深い可能性がある。例えば、蛍光標識抗体の臓器分布及び/又は蓄積及び/又は分泌(分泌経路の決定)及び/又は代謝(例えば薬物の代謝物の生成)が決定され及び/又は評価されるべきであることが予想され、それは例えば、潜在的に治療上有効な抗体のパネルの治療上有効な抗体の候補の決定に役に立つであろう。従って、「更なる領域」とは、例えば、被写体の臓器の一部、臓器、血管ネットワークまたは神経細胞系を含む。
【0083】
作成された画像は次いで定性的及び/又は定量的に解析することができる。本発明の方法との関連において、作成された画像は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち治療上最も有効な抗体の候補が選択される、蛍光標識された抗体の各々からの蛍光シグナルを決定するために解析される。具体的には、標的に結合後に最高の蛍光シグナルを示す抗体は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち治療上最も有効な抗体の候補である。より具体的には、各抗体の蛍光シグナルの高さ(即ち定量的な量)が決定されお互いに比較される、即ち、全試験抗体のシグナルの高さが決定され、互いに比較され、それによって最も高いシグナルを決定することができる。場合によっては、最高シグナルが決定される前に、バックグランド値(即ち、蛍光標識抗体が体内の他の場所に、しかし所望される標的場所では無く配置されている場合、蛍光標識抗体から発せられた蛍光シグナルの高さ)が各抗体の蛍光シグナルの高さから差し引かれる場合がある(即ち、各蛍光シグナルは正規化される)。
【0084】
本発明の方法は、治療上最も有効な抗体の候補を選択するためであり、それに従ってそのような候補を最高蛍光シグナルに基づいて選択することができるため、作成された画像の定量的解析もまた想定されるが、あまり好ましくない。実は、発明者らは、標的に結合した後で、最高の蛍光シグナルを示す抗体が、そのような候補の抗体であることを観察した。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「結合する」は、その文法上の形式の全てにおいて、本発明に従って選択されるべき抗体と所望の標的の間の相互作用に関連して使用される場合、抗体のエピトープ結合ドメイン(即ち、可変軽鎖と重鎖のCDR(ドメイン抗体の場合、軽鎖又は重鎖の何れかのCDRのみ)、場合によってはフレームワーク領域からの一以上のアミノ酸と組み合わせて)が、一般的なタンパク質との会合と比べて(即ち非特異的結合)、統計的に有意なほどに、標的と会合し(例えば相互作用し又は複合体形成し)抗体−抗原複合体を形成することを意味する。また、用語「エピトープ結合ドメイン」は、標的との統計的に有意な会合又は結合を有するドメインを指すと理解される。
【0086】
好ましくは、本発明の方法は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療的に最も有効な抗体の候補である哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択することに役に立つ。用語「支援する(aiding)」は、本発明に係る方法(他の方法及び/又は変数と一緒に、例えば、治療的に有効な抗体又は臨床パラメータを選択するための方法)が、当業者が、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち治療上最も有効な抗体の候補である、悪性/癌細胞の表面の所望の標的に対する抗体を選択することを支援するであろうことを意味するために使用される。言い換えれば、前記の他の方法は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち治療上最も有効な抗体の候補の選択を確認するのに役立つであろう。前記の他の方法の例は、免疫化学、免疫組織化学、組織学的手法、例えば、組織染色、又はmRNA/PCRの適用である。
【0087】
具体的には、組織染色において、被験体、好ましくはマウス、ラット、又は猿などの試験動物の腫瘍が、外植され、切片が調製され、固定化され、パラフィンに包埋され、そして、例えば、ヘマトキシリン−エオシン(HE)で染色された。そのように染色された腫瘍切片はエキソビボで、例えば、Nuance(登録商標)システムにより画像化することができる。
【0088】
腫瘍の説明の例として、試験動物が屠殺され、腫瘍がコミットガイドラインに従って外植される(GVSolas, Felasa, TierschG)。動物を屠殺した後に、例えば、メスを使用して、腫瘍が外植され、包埋カセットに移され、又は免疫組織化学の適用のためにイソペンタンを含み、及びmRNA/PCRの適用のためにイソペンタンを含まないで、液体窒素中で急速冷凍される。
【0089】
固定化の例として、外植された腫瘍は包埋カセット中で密封され、ホルマリン中で連続攪拌しながら、好ましくは約24時間インキュベートする。その後、ホルマリンは廃棄され、腫瘍は蒸留水で洗われ、続いて腫瘍の脱水及びパラフィンの浸透となる。全てのインキュベーション工程は、Tissue Tek(登録商標)VIP Vacuum Infiltration Processorを使用して実行される。
【0090】
パラフィン浸透の後、腫瘍は、Tissue Tek(登録商標)パラフィン包埋ステーションを用いて、流動パラフィンに包埋され、最終的な組織学的ブロックとなる。厚さ2−8μmの範囲のパラフィン切片が、ミクロトームを使用してこれらのブロックから得られる。それらは、切断され、ガラススライド上に取り込まれ、37の°Cで一晩空気乾燥され、続いて、脱パラフィン及びHE染色される。スライドは、Nuanceシステムで検査される。
【0091】
免疫組織化学に関しては、非標識抗抗体が、非経口に注入、好ましくは静注され、好ましくは抗体の注入後24時間頃に、腫瘍は外植され、例えば液体窒素及びイソペンタン内で、瞬間冷凍され、そして薄片にされる。非標識抗抗体は、非標識抗体のIgサブタイプに対する二次抗体、例えばヤギ抗マウスIgG、を用いて識別される。
【0092】
免疫組織化学応用のために、腫瘍は、切除の直後に、イソペンタン及び液体窒素において瞬間冷凍され、切片化まで−20°Cで保持される。例えば、10のμmの腫瘍凍結切片は、クライオスタット(2800Frigocut)を用いて、最適の切断温度−18°Cで切断され、1分間アセトンによって固定され、空気乾燥され、そして免疫組織化学応用のために使われる。
【0093】
mRNA技術に関して、腫瘍は、外植されて、例えば液体窒素(イソペンタン無し)で瞬間冷凍される。腫瘍は、当分野において一般的に公知である方法に従って、溶解され、ホモジナイズされRNAが調製された。その後、cDNAが調製され、そして例えば、哺乳動物の細胞の表面上の標的であって、それに対して抗体が本発明の教授に従って選択される標的をコードする、目的の遺伝子の発現に関して、定性的及び/又は定量的に解析される。定量的発現分析のローディング・コントロールとして、β−アクチン又はGAPDHのような典型的なハウスキーピング遺伝子を用いることができる。
【0094】
更なる「他の方法」は、ビアコアを使用する動力学解析による選択である。具体的には、標的に対して最高の親和性を持つ抗体がビアコアにより選択され、それによってその抗体が治療上最も有効となり得ると仮定する。
【0095】
これらの他の方法は、当業者によって考慮される要素の一つであり、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療的に最も有効な抗体の候補である、悪性/癌性細胞の表面上の所望の標的に対する抗体を彼らが選択することを助ける、即ち役に立つものであろう。
【0096】
用語「治療上有効」又は「治療的有効性」又はその任意の他の文法的形式は、被験体の疾患又は障害を「処置する(treat)」ための抗体の性能を指す。癌の場合、抗体の治療的有効量は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを減少させ;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害し(即ち、ある程度遅延させ好ましくは停止させ);腫瘍の転移を阻害し(即ち、ある程度遅延させ好ましくは停止させ);ある程度腫瘍の増殖を阻害し;及び/又は癌に関連した一以上の症状をある程度和らげる場合がある。
【0097】
抗体が持つであろう治療効果は、治療効果を示すであろう全ての確立された方法とアプローチによって検出することができる。例えば、治療効果は罹患組織/臓器の外科的切除又は生検を介して検出され、これらは続いて免疫組織化学(IHC)又は同等の免疫学的手法を介して分析されることが想定される。あるいはそれはまた、治療的アプローチが既に効果があるかどうかを診断するために、患者の血清中の腫瘍マーカー(存在する場合)が検出されることが想定される。加えて或いは代わりに、各患者の一般的な様子(適応度、健康、腫瘍媒介性の病気の減少など)を評価することも可能であり、それはまた治療効果が既にあるかどうかを評価するために当業者を支援するであろう。当業者は、彼又は彼女が、治療効果を観察することを可能にするであろう多数の他の方法を知っている。癌治療については、治療効果は、例えば、病気の進行までの時間(TTP)を評価することによって、及び/又は応答速度(RR)を決定することによって計測することができる。
【0098】
「潜在的に治療上有効な」抗体は、治療上有効である可能性又は確率を有する抗体である。従って、本発明の方法に従って選択される抗体に関連して使用されるときの用語「潜在力(potential)」は、−そのような抗体は、治療効果を有すると考えられるが−前記抗体は必ずしも治療的に有効である必要はないことを意味する。しかしながら、本発明の方法は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち治療上最も有効な抗体の候補の選択に役立つ。
【0099】
「治療上最も有効な抗体の候補」は、抗体に基づいた治療に有用であろう有望な抗体である抗体である。そのような候補は、他の潜在的に治療上有効な抗体と比較して、好ましくはインビボで改善された特性を示す。好ましくは、前記候補は、インビボで哺乳動物の細胞の表面上の標的に結合後に、最高の蛍光シグナルを示すということに基づいて、潜在的に治療上有効な抗体のパネルから選択される本発明の方法に合致している。
【0100】
本発明の実施に有用な撮像システムは、典型的には3つの基本要素を含む。(1)励起光、(2)励起光と放出光とを分離又は区別するための手段(好ましくは、励起光及び/又は検出システムに適合される、ソフトウェア及び/又はハードウェアのフィルター)及び(3)少なくとも一つの蛍光標識から、及び/又は蛍光実体から、及び/又は本発明の蛍光分析物から放出された光を受信するための検出システム(光検出器)。光源(励起手段)は、場合によっては(i)予め定めされたフィルター又は調節可能なフィルターを含むことがあると想定される。光源は適切にフィルター処理された白色光(すなわち広帯域光源の帯域通過光)でありえる。例えば、150ワットのハロゲンランプからの光は、適切なバンドパスフィルターに通されることができる。幾つかの実施態様では、光源はレーザーである。例えば、Boas等, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:4887-4891; Ntziachristos等, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:2767-2772; Alexander, 1991, J. Clin. Laser Med. Surg. 9:416-418を参照。イメージングのための近赤外線レーザに関する情報は、http://www.imds.com及び様々な他の周知の供給源で見つけることができる。ハイパス又はバンドパスフィルター(例えば700nm)を、光学的発光(放出光)を励起光から分離するために用いることができる。何れの適切な光検出/画像記録要素(光検出器)、例えば、電荷結合素子(CCD)システム、フォトダイオード、光導電セル、相補型金属酸化物半導体(CMOS)又は光電増倍管が、本発明で用いられることができる。前記要素は、下で本願明細書において更に詳細に説明される。光検出/画像記録の選択は、使用される集光/画像形成要素のタイプを含む要因に依存する。適切な要素を選択し、本発明のイメージングシステムにそれらを組み合わせ、システムを作動することは、当技術分野において通常の技術の範囲内である。
【0101】
本発明において適用されるインビボ画像処理技術は、小動物において、非侵襲性の、全身の、深部組織画像処理を提供し、蛍光光源の3D再構成を生成し、及び/又は本明細書に記載されるように、蛍光標識抗体の所望の標的に対する結合に起因した、蛍光標識構造の蛍光濃度の測定を可能にする、レーザーベース3次元画像処理システムである、FMT技術(蛍光分子トモグラフィー)を含む。本システムは平面で蛍光標識抗体の実際の分布を決定することを可能にし、FMTによる2次元画像処理モード及び/又は3D画像処理研究は、被験体の身体の抗体分布の評価の改善を可能とする。従って、蛍光シグナル強度の定量化は、より現実的なアプローチで分析されることが出来る。
【0102】
近赤外線蛍光画像処理システムの実施例は、添付の実施例に記載されているMAESTROシステムである。従って、MAESTROシステムは、本発明のキット、方法及び用途において適用されることが出来る好ましいシステムである。
【0103】
MAESTROシステムは、非侵襲性のインビボ蛍光測定を可能にする、平面蛍光反射画像処理システムである。このマルチスペクトル分析では、一連の画像が、特定の波長で捕えられる。捕えられる波長の範囲は、標本に存在する標識の、予想されるスペクトルの放出範囲を包含しなければならない。結果は、「イメージキューブ(image cube)」と呼ばれる一連の画像であり、自己蛍光及び特定標識双方の個々のスペクトルを決定するために用いられるのが、この一連の画像内のデータである。生物学的に興味がある多くの標識は、非常に類似した発光スペクトルを有し、高価な狭帯域フィルターを使用した分離が難しい又は不可能である。単一ロングパス吸収フィルター(emission filter)が、多数の吸収フィルターに取って代わる。皮膚、毛皮、皮脂腺の天然の自己蛍光に加えて、共生生物(菌類、ダニ、その他)及び摂取食物(葉緑素)からの異なった自己蛍光がある。マルチスペクトル分析は、所望のシグナル及び自己蛍光のシグナルの発光スペクトルが分かっている限りは、放出された蛍光光の線形信号混成の数学的な解きほぐし(非混合)によって、検体に適用された特定のラベルから、これらのシグナル全てを分けることが出来る。
【0104】
MAESTROシステムを用いた測定は、以下の通りに動作する:照明モジュールは白色光を励起するキセノン灯(Cermax)を備えている。下流に連結された励起フィルター(実験者によって選ばれる)を通して、光は実験のために所望の波長範囲に区切られ、そして、画像処理モジュールに光ファイバを経て伝導される。ここでは、制限された光は、麻酔された試験動物を照らす、4つの光ファイバに分配される。MAESTROシステムは、自動的に最適露光時間を選択するので、露光過度の危険がない。活性化された蛍光プローブの放出された蛍光光は、吸収フィルター(表1を参照)によって選択され、液晶(LC)を通って高感度冷却CCDカメラに伝導される。液晶は、カメラを、特定波長の選択的な画像の記録を可能にする。波長測定範囲は、選択されたフィルターセット(青、緑、黄色、赤、深い赤、NIR)に依存し、画像は10nmごとに記録される。各一つの画像のスペクトル情報は、「イメージキューブ」と呼ばれる一つの「画像パッケージ」に組み込まれる。
【0105】
MAESTROシステムを用いる分析は、以下の通りに機能する:
各記録は、4096の異なるグレースケールにおいて図示されることが出来る、12ビットの白黒の画像から成り、従って、発光強度における最小差間を区別することが出来る。対照的に、ヒトの目は、30−35の間グレイスケールを区別することが可能である。発光強度に対するこれらの値(グレイスケール)が、波長範囲に対して示され、そして、その結果、各プローブ及び組織自己蛍光の発光スペクトルを得る。ソフトウェアは、3つの基本的な色(赤い、緑の、青い)をイメージキューブのために使用される波長範囲に細分割し、それによって、白黒画像がカラー画像(RGB画像、図6Bを参照)に変わる。これらの得られたマルチスペクトル情報から、システムは、注入されたプローブ及び何れの由来からの自己蛍光を区別することが可能である。プログラムはスペクトルライブラリを使用し、ここでは各純プローブからの単スペクトル及び何れの注入無しの実験動物(Balbc/ヌード又はScidベージュマウス)を画像処理することにより得られるスペクトル(マウス自己蛍光)である。純画像及び自己蛍光の正確なスペクトルを知ることによって、システムは、全画像を所望のスペクトルに対して選別し、色をそれらの各々に割り当てることが可能である。生成された画像(分離合成画像(unmixed composite image))は、存在スペクトルを異なる色で示す。プローブシグナルの強度分布を可視化するために、シグナルを疑似色で図示することが可能であるが、低強度は青、そして、高強度の領域は赤である。それの他に、プローブのシグナル強度の検出限度を決めることができ、巡回プローブのシグナル及び非特異的な結合を低減することを可能にする。
【0106】
MAESTROシステムを用いた比較及び定量化は、以下の通りに機能する:画像の蛍光色素分子領域を比較するMAESTROの能力は、治療の間、腫瘍蛍光シグナル強度を比較することを容易にする。プログラムは、腫瘍領域における異なる信号強度の比較(比較画像)のためのツールを提供する。全ての画像は最適露光時間で撮られるので、それらはシグナルの強度に依存して異なる。信頼性が高い比較のためには、画像は1つの露光時間に標準化され、シグナル強度における差異を示すこととなる。測定領域を手動で描き変更することにより、シグナル強度は強度値において定量化されることが出来る。一旦測定領域が腫瘍周辺で選ばれると、複製され、比較される次の画像へ移されることが出来る。各領域は、現在の設定(ステージ高さ及びビニング)に基づいて、ピクセル及びmm2において算出される。結果として、それは、作られた測定領域内で、平均シグナル、全シグナル、最大シグナル、及び平均シグナル/露光時間(1/ms)に関する情報を伝える。
【0107】
本発明と連結して適用され得る別の画像処理技術は、小動物モデルにおける非侵襲性で、全身の、深部組織画像処理を提供し、蛍光供給源の3D再構成を生成し、及び/又は蛍光標識分析物の蛍光の測定を可能とする、レーザーベース3次元画像処理システムである、FMT技術(蛍光分子トモグラフィー)である。FMT技術は、例えば、米国特許第6,615,063号に記述される。
【0108】
本発明の方法と用途を実施する場合、蛍光標識された潜在的な治療抗体は、抗体の検出前、即ち蛍光標識抗体からのシグナルの検出の前に、被験体に投与される。好ましくは、抗体は、被験体に非経口的に、好ましくは静脈内注射で投与される。
【0109】
用語「投与する」は、その文法的形態の全てにおいて、潜在的に治療上有効な抗体のパネルの(好ましくは薬学的組成物の形態での)投与を意味する。前記パネルの抗体は、個別に投与されるか又はパネルとして、即ち一緒に投与されるかのどちらかであり、個別投与が望まれる。
【0110】
一緒に投与される場合、各抗体は、抗体のそれぞれを識別するために、好ましくは本明細書に記載される異なる蛍光標識を含む。
【0111】
用語「抗体」は、標的に結合するモノクローナル又はポリクローナル抗体(Harlow and Lane, 「Antibodies, A Laboratory Manual", CSH Press, Cold Spring Harbor, USA, 1988を参照)、又はその結合特異性を保持する又は本質的に保持する前記抗体の誘導体を意味する。このような抗体の好ましい誘導体は、例えば、マウス又はネズミの可変領域及びヒトの定常領域を含んでなるキメラ抗体である。抗体は、単離された形態であってもよい。用語「機能的断片」は、ここで使用される場合、抗体の結合特異性を保持する又は本質的に保持する、ここに記載される抗体の断片を意味し、例えば分離された軽鎖及び重鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab’、F(ab’)2である。用語「抗体」は、単鎖Fvs(scFv)又は抗体−融合タンパク等の、二官能性(二重特異性)抗体及び抗体構築物も含む。用語「scFv断片」(単鎖Fv断片)は、当技術分野において理解され、その小さいサイズ及び組換え的にこのような断片を生成する可能性により好ましい。前記抗体又は抗体結合部分は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。用語「ヒト化抗体」は、本発明によれば、非ヒト起源の抗体であり、可変領域における少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3等、好ましくは全6のCDRが所望の特異性を有するヒト起源の抗体のCDRと置換されている。場合によっては、抗体の非ヒト定常領域は、ヒト抗体の一又は複数の定常領域と置換されている。ヒト化抗体の生産方法は、例えばEP−A1 0 239 400及び国際公開第90/07861号に記載されている。用語抗体又はその機能的断片は、国際公開第94/04678号、国際公開第96/34103号及び国際公開第97/49805号、国際公開第04/062551号、国際公開第04/041863号、国際公開第04/041865号、国際公開第04/041862号及び国際公開第04/041867号に記載される重鎖抗体及びその可変ドメイン;並びに一般的な4鎖抗体分子の重鎖可変ドメイン(VH)又は軽鎖可変ドメイン(VL)に基づく又は由来するドメイン抗体又は「dAb’s」を含む。
【0112】
「単離された抗体」は、その天然の環境の成分から同定されそして分離されおよび/または回収された抗体である。その天然の環境の汚染成分は、抗体の診断的又は治療的使用を妨害する物質であり、そして酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性溶質もしくは非タンパク質性溶質を含むことがある。好ましくは抗体は、(1)ローリー法により判定して95重量%超の抗体、および最も好ましくは99重量%超まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いる還元もしくは非還元条件下でSDS−PAGEにより均一になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも一の成分が存在していないために、組換え細胞内でインサイツの抗体を含む。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
【0113】
5つのクラスの免疫グロブリンがある:IgA、IgD、IgE、IgG,及びIgM、それぞれa、8、s、yと指定された重鎖を有する。y及びaクラスはさらにCH配列及び機能の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分割され、例えばヒトでは、次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。
【0114】
「可変」なる用語は、可変ドメインの所定のセグメントが抗体間で配列の点で広範囲に相違していることを意味する。Vドメインは抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を定める。しかしながら、可変性は可変ドメインの1〜10アミノ酸のスパンにわたって均一に分布しているのではない。その代わりに、V領域は、それぞれ9−12アミノ酸長である「高頻度可変領域」と呼ばれる極度の可変性のより短い領域により分離した15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる相対的に不変の伸長部からなる。
【0115】
天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、主としてP−シート立体構造をとり、3つの高頻度可変領域によって連結され、P−シート構造を連結し、場合によってはその一部を形成することもある4つのFRを含む。各鎖の高頻度可変領域はFRによって極く近傍に一緒に保持され、他の鎖からの高頻度可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照)。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係しないが、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)における抗体の関与のような様々なエフェクター機能を示す。
【0116】
用語「高頻度可変領域」は、本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。高頻度可変領域は、一般に、「相補性決定領域」又は「CDR」(例えば、VL中のおよその残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)と、VH中のおよその残基31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabatら, Sequences of Polypeptides of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991))からのアミノ酸残基、及び/又は「高頻度可変ループ」(例えば、VL中の残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)と、VH中の26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及び Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917(1987))からの残基を含む。
【0117】
本明細書中で用いる用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわちこの集団を含む個々の抗体は、微量で存在するかも知れない可能な天然に生じる突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であって、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが、他の抗体によって汚染されないで合成され得る点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、抗体が何か特定の方法による生産を必要とするとして理解されるべきではない。
【0118】
本発明のモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の種に由来する又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同であるが、その(それらの)鎖の残部は別の種に由来する又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びにそのような抗体の断片(但し、それらが所望の生物学的活性を示すことを条件とする)であり得る(米国特許第4816567号;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。本明細書における対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿など)及びヒト定常領域配列に由来する可変ドメイン抗原結合配列を含む霊長類化抗体が含まれる。
【0119】
「インタクトな」抗体は、抗原結合部位並びにCL及び少なくとも重鎖定常ドメインCHI、CH2及びCH3を含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であり得る。好ましくは、インタクトな抗体は、一又は複数のエフェクター機能を有する。
【0120】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;直鎖抗体(例えば米国特許第5,641、870号、実施例2; Zapata et al., Protein Eng. 8 (10):1057-1062[1995] );単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一な抗原結合断片、及び残りの「Fc」断片(名称は容易に結晶化する能力を反映している)を生成する。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(V)と一緒のL鎖の全体、及び一方の重鎖の第一の定常ドメイン(C1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、即ち単一の抗原結合部位を持っている。抗体のペプシン処理は、二価の抗原結合活性を有し、かつ抗原に尚も架橋可能である、2つのジスルフィド結合型Fab断片に大まかに相当する単一の大きなF(ab’)2断片を生じる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一以上のシステインを含むC1ドメインのカルボキシル末端で付加的な2〜3の残基を有する点がFab断片とは異なる。Fab’−SHは、本明細書において、Fab’の名称であり、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を持つ。F(ab’)2抗体断片は、もともと、ヒンジのシステインをその間に有する8つのFab’断片の対合として産生された。抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0121】
Fc断片は、ジスルフィドにより一緒に保持される、両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定され、その領域はまた、特定の種類の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部分である。
【0122】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この断片は1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域ドメインが、堅固な非共有結合をなした二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
【0123】
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。
【0124】
好ましくは、sFvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの総説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 13, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269315 (1994);Borrebaeck 1995、以下を参照。
【0125】
用語「ダイアボディ(diabodies)」は、鎖間ではなく鎖内でVドメインを対形成させ、結果として二価の断片、すなわち2つの抗原−結合部位を有する断片が得られるように、VとVドメインとの間に、短いリンカー(約5−10残基)を持つsFv断片(前の段落を参照)を構築することにより調製される小型の抗体断片を意味する。二重特異性抗体は、2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチドに存在する2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロダイマーである。
【0126】
ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により完全に記載されている。
【0127】
非ヒト(例えば齧歯類)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト抗体から生じる最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性、及び性能を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などのヒト以外の種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非−ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体において見いだされない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改良するために作成される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意で、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそれを含むであろう。更なる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323-329(1988)及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)を参照。
【0128】
本方法及び本発明の用途で適用される抗体は、蛍光標識、好ましくは近赤外蛍光イメージングにより検出可能である蛍光標識で標識される。従って、本発明に関連して使用されるとき、用語「蛍光」は、当技術分野で一般に知られているか又は本明細書に記載される蛍光標識を含み、また好ましくは近赤外蛍光標識を含み、後者が本発明に関連して好まれる。
【0129】
「蛍光標識」は、本明細書で使用される場合、フルオロフォアを含有する分子を特徴とする。フルオロフォア(時々蛍光色素とも呼ばれる)は、特定の波長のエネルギーを吸収し異なる波長でエネルギーを再放出する分子の官能基である。前記異なる波長は、前記特定の(予め定められた)波長と比較と比較される場合、特定の(予め定められた)波長と識別可能である波長で再放出され、例えばより長い波長で又はより短い波長で再放出され、後者の場合は減少した強度で放出される。放出されたエネルギーの量及び波長は、フルオロフォア及びフルオロフォアの化学的環境に依存する。
【0130】
標識抗体は、一以上の蛍光又は近赤外蛍光標識、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10を含むことが想定される。同様に、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の異なる蛍光又は近赤外蛍光標識抗体が、本発明の方法で適用される。
【0131】
従って、本発明との関連で使用される場合、蛍光実体は蛍光標識の少なくとも2、3、4、5又はそれ以上の異なる種類の蛍光標識を含むことが想定される。「ちょうど1種類」とは、蛍光標識が全く同一のフルオロフォアを含むことを意味し、異なる種類とは、異なる蛍光標識が異なるフルオロフォアを含有し、従って異なる吸収及び/又は放射特性を示すことを意味する。典型的には、当業者は、同じ所望の標的に結合する抗体のパネルを標識するときには同一種類の蛍光標識を使用するであろう。
【0132】
ちょうど1種類の蛍光標識が使用されるときには、典型的にはまた上記方法で使用される全抗体に対して、同じ標識比率が利用される。本明細書で使用される標識比率は、抗体分子あたりの標識分子の数を意味する。一実施態様において、抗体あたりの蛍光標識の比率は1,8−2,4:1である。例えば、Cy5標識に対する抗HER3抗体の比率は、2つのCy5分子あたり一抗体分子であった(即ち、標識比率は1:2)。
【0133】
本明細書で報告された方法における全抗体は、同一濃度で、即ち、体重あたりの注入抗体が同一量で使用される。濃度は、抗原を有する腫瘍を十分に覆うように選択され、それによって、抗体が選択されるようにする(例えば、一事例では、注入抗体の量は、パネルの全抗体に対して体重1kgあたり10mgであり、別の事例ではパネルの全抗体に対して体重1kgあたり20mgである)。
【0134】
これらの「異なる」特徴は、それ以降、例えばソフトウエアに支援された評価を経由して、混合され得ない。一以上の異なるフルオロフォアの発光を非混合にする手段及び方法は、熟練した技術者にとって周知である。
【0135】
蛍光標識は、蛍光分析物のスペーサ又は第二の実体に共有結合的に及び/又は非共有結合的に連結されることが可能であり、何れかの適切な蛍光標識上の反応基及びスペーサ又は第二の実体上の適合性の官能基を用いて成される。
【0136】
本発明の関係することにおいて、前記蛍光標識は、量子ドット剤、蛍光タンパク質、蛍光色素、pH感受性蛍光色素、電位感受性蛍光色素、及び/又は蛍光標識マイクロスフィアからなる群から好ましくは選択される。
【0137】
蛍光標識の例は、ナノクリスタルとしても知られる量子ドット剤又は「量子ドット」であり、半導体として知られる材料の特別な種類であり、II〜VI、III〜V又はIV〜VI族の物質から成る結晶である。
【0138】
別の例は「蛍光タンパク質」であり、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、CFP、YFP、BFP(増強有無)を含む。更なる蛍光タンパク質は、Zhang, Nat Rev Mol Cell Biol.2002, 12, pages 906-18 or in Giepmans, Science.2006, 312, 217-24頁に記載されている。
【0139】
「蛍光色素」は、全ての種類の蛍光標識を含み、限定するものではないが、例えばFITC等の全ての誘導体を含むフルオレセイン;例えば、テトラメチルローダミン(TAMRA)とそのイソチオシアネート誘導体(TRITC)、スルホローダミン101(及びそのスルホニルクロリド型テキサスレッド(Texas Red))、ローダミンレッド(Rhodamine Red)、及び例えばAlexa 546、Alexa 555、Alexa 633、DyLight 549及びDyLight 633等の新規なフルオロフォアを含むローダミンの他の誘導体など全ての誘導体を含むローダミン;アレクサ フルオル(Alexa Fluors)(蛍光色素のアレクサ フルオル(Alexa Fluors)ファミリーは分子プローブ(Molecular Probes)によって生成される);DyLight Fluor、Dyomics、ATTO Dyesにより生成され、ジーゲンのATTO-TEC GmbHにより製造される一連の蛍光標識及び色素を代表する、国際公開第2007/067978号 日本;LaJolla Blue(Diatron、Miami、Fla.);インドシアニングリーン(ICG)及びその類似体(Licha等, 1996, SPIE 2927:192-198; Ito等,米国特許第5,968,479号);インドトリカルボシアニン(ITC;国際公開第98/47538号)、及びキレート化ランタニド化合物を含む。蛍光ランタニド金属は、ユウロピウム及びテルビウムを含む。
【0140】
抗体は、好ましくはNIRFにより検出可能な蛍光標識で標識され、即ち、好ましくは近赤外(NIR)蛍光標識で標識される。近赤外線スペクトルにおける励起及びの放出波長を有するNIR蛍光標識、すなわち640−1300nm、好ましくは640−1200nm、及びより好ましくは640−900nmが使用される。電磁スペクトルのこの領域の使用は、組織透過を最大にし、例えばヘモグロビン(<650nm)及び水(>1200nm)等の生理学的に豊富な吸収体による吸収を最小化にする。
【0141】
インビボでの使用のための理想的な近赤外線の蛍光色素は:
(1)狭いスペクトル特性、
(2)高感受性(量子収率)、
(3)生体適合性、
(4)分離された吸収及び励起スペクトル、及び
(5)光安定性
を呈する。
【0142】
様々な近赤外線(NIR)蛍光標識が、市販され、この発明による蛍光実体を調製するために用いることが可能である。例示的なNIRF標識には、以下が含まれる:Cy5.5、Cy5、及びCy7(Amersham, Arlington Hts., IL;IRD41及びIRD700(LI-COR, Lincoln, NE);NIR−I(Dejindo、Kumamoto、Japan);LaJoIIa Blue(Diatron, Miami, FL);インドシアニングリーン(ICG)及びその類似体(Licha, K.,等, SPIE-The International Society for Optical Engineering 1996; Vol. 2927: 192-198;米国特許第5,968,479号);及びキレート化ランタニド化合物及びSF64、5−29、5−36及び5−41(国際公開第2006/072580号から)。蛍光ランタニド金属は、ユウロピウム及びテルビウムを含む。ランタニドの蛍光特性はLackowicz, J. R., Principles of Fluorescence Spectroscopy, 第2版, Kluwer Academic, New York, (1999)に記載されている。
【0143】
「蛍光ミクロスフェア」は、国際公開第2007/067978号に詳細に記載され、出典明示によりその全内容をここに援用する。
【0144】
本発明の更なる実施態様では、蛍光実体の少なくとも一つの蛍光標識が活性化可能である。また、蛍光実体が活性化可能であることが想定される。
【0145】
前述したように、蛍光色素によって放出されるエネルギーの量及び波長が、フルオロフォア及びフルオロフォアの化学的環境双方に依存することが知られている。その結果として、蛍光色素はpH感受性に又は電位感受性に反応し得、すなわち、それらは化学的環境のこの種の変化によって活性化可能である。更なる活性化可能な蛍光標識が、例えば米国特許出願公開第2006/0147378 A1号、米国特許第6592847号、米国特許第6,083,486号、国際公開第2002/056670号又は米国特許出願公開第2003/0044353 A1号に詳細に記載され、出典明示によりその全内容をここに援用する。
【0146】
蛍光標識/実体の「活性化」によりとは、標識/実体の例えば光学的性質の検出可能な特性を変える、標識/実体への何れかの変化を意味する。これは、例えば光学的性質、例えば蛍光シグナル振幅における変化(例えば非クエンチング及びクエンチング)、波長、蛍光寿命、スペクトル特性又は極性における変化等の特性における検出可能な差異となる、標識/実体の修飾、変更、又は結合(共有結合又は非共有結合)の何れかを含むが、これに限定されない。光学的性質は、例えば、電磁スペクトルの、可視、紫外線、近赤外線、赤外線領域における波長を含む。活性化は、限定するものではないが、酵素的切断、酵素的変換、リン酸化又は脱リン酸化、結合によるコンフォメーション変化、酵素媒介スプライシング、フルオロフォアの酵素媒介トランスファー、相補DNA又はRNAのハイブリダイゼーション、Na+、K+、Ca2+、Cl−又は他の分析物等の分析物との会合等の分析物の結合、プローブ環境の疎水性の変化、及びフルオロフォアの化学修飾により成されうる。光学的性質の活性化は、(限定するものではないが)例えば磁気緩和及びバイオルミネセンス等の、他の検出可能な特性における変更を伴い得るか又は伴わない場合がある。
【0147】
蛍光標識は、フルオロフォアの化学的に反応性の誘導体を用いて達成される。一般的な反応基は、アミン反応性イソチオシアン酸塩誘導体、例えばFITC及びTRITC(フルオレセイン及びローダミンの誘導体)、アミン反応性サクシニミジルエステル、例えばNHS−フルオレセイン、及びスルフヒドリル反応性マレイミド活性化フルオル(fluors)、例えばフルオレセイン−5−マレイミを含む。これらの反応性色素の何れかと、別の分子との反応は、蛍光色素分子及び標識分子間に形成される安定化した共有結合となる。このように、本発明の抗体は、上述した蛍光標識によって標識されることが出来る。本発明によって想定される他の適切な蛍光標識は、アレクサ フルオル(Alexa Fluors)、ダイライトフルオル(Dylight fluors)、ATTO色素(ATTO Dyes)である。同様に、GFP、YFP又はCFPのような蛍光タンパク質が、用いられ得る。また、pH変化又は電圧、温度によって活性化される、活性化可能な蛍光色素が使用されると想定される。標識抗体は、一以上の蛍光又は近赤外蛍光標識、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10を含むことが想定される。同様に、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の異なる蛍光又は近赤外線蛍光標識抗体が、本発明のキット、方法及び用途に適用されることが想定される。
【0148】
別法では、本発明の方法において適用される抗体は、間接的に標識されることが出来る。例えば、非標識抗体は、蛍光標識を含む第二抗体により(非標識抗体の定常領域への結合により)標識され、ここで該第二抗体は非標識抗体に指向される。
【0149】
別法では、第二抗体の蛍光標識は、ひとたび該第二抗体のエピトープ結合ドメインがその標的に結合すると、活性化される。
【0150】
「活性化される」とは、本明細書で前述された活性化可能な蛍光標識の活性化を含む。「活性化される」とは「FRETに基づく」効果も含む。フォースター共鳴エネルギー転送(FRETと省略される)は、蛍光共鳴エネルギー転送、共鳴エネルギー転送(RET)又は電子エネルギー転移(EET)としても知られ、2つのフルオロフォア間のエネルギー転送を説明するメカニズムである。FRETは、ドナー及びアクセプターフルオロフォア間の近接の指標を提供する。ドナーが規定の周波数の入射放射線で励起される時、ドナーが蛍光として通常放出するエネルギーの幾らかが、アクセプターに移動され、アクセプターがドナーに十分近接している(典型的には、ほとんどのドナーフルオロフォアに対して約50オングストローム内)。アクセプターに移動したエネルギーの少なくとも一部が、アクセプターの蛍光周波数で放射として放出される。FRETは、様々な情報源において更に記述され、例えば「FRETイメージング」(Jares-Erijman, E.A, and Jovin, T.M, Nature Biotechnology, 21(11), (2003), 頁1387-1395)に記述され、全ての目的に対して出典明示によりその全内容をここに援用する。かかるFRET効果に基づくスクリーニングは周知であり、例えば国際公開第2006107864号に記載され、その全内容をここに援用する。
【0151】
NIR蛍光標識を含む蛍光標識を結合する方法は、当技術分野でよく知られている。抗体に対するこれらの標識のコンジュゲーション技術は、この数年の間著しく成長し、Aslam, M., and Dent, A., Bioconjugation (1998) 216-363, London, and in the chapter "Macromolecule conjugation" in Tijssen, P., "Practice and theory of enzyme immunoassays" (1990), Elsevier, Amsterdamに詳細な説明が記載される。
【0152】
適切なカップリング化学は上記文献(Aslam、上掲)から知られる。蛍光標識は、どの結合部分(coupling moiety)が存在するかに依存し、水溶性又は有機媒体において抗体と直接反応することができる。結合部分は、抗体に蛍光色素標識を化学的に結合するために使用される反応基又は活性化基である。蛍光色素標識は、抗体に直接結合、又はスペーサーを介して抗体に結合し、抗体及びNIR蛍光標識を含んでなるNIR蛍光標識コンジュゲートを形成することが可能である。使用されるスペーサーは、適切に長いインビボ持続性(半減期)を本質的に有するよう選択又は設計されうる。
【0153】
哺乳動物の表面上の所望の標的とは、複数のエピトープを含むことができる前記細胞表面上の標的抗原を言う。用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができる哺乳動物の細胞の細胞表面上の標的抗原のタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面のグルーピングからなり、通常エピトープは特異的な3次元構造の特徴並びに特異的な電荷特性を有する。立体構造的エピトープ及び非立体構造的エピトープは、後者でなく前者に対する結合は、変性溶媒の存在下で失われるという点で区別される。典型的には、エピトープは、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸を含む。細胞の「表面」は、細胞膜(形質膜とも呼ばれる)を含む。細胞内部(好ましくは哺乳動物細胞)を外の環境から分離するのは生体膜である。細胞膜は全ての細胞を包囲し、それは、半透過性であり、細胞の内と物質の移動を制御する。それは様々な生物学的分子、主に脂質やタンパク質を含む。これらのタンパク質は、本発明の意味において好ましい標的である膜貫通タンパク質、脂質アンカー蛋白質および末梢タンパク質を含む。
【0154】
「膜貫通タンパク質」は膜を貫通し、内部分子と相互作用する親水性の細胞質ドメイン、細胞膜内に固定させる疎水性膜貫通ドメイン、及び外部分子と相互作用する親水性の細胞外ドメインを有する。
【0155】
「脂質固定化タンパク質」は、単一又は複数の脂質分子に共有結合性に結合し;細胞膜中に疎水性に挿入され、タンパク質を固定する。
【0156】
「周辺タンパク質」は、内在性膜タンパク質に結合し、又は脂質二重層の周辺領域に結合している。
【0157】
本発明の教示に従って、細胞の外部に広がるタンパク質、例えば受容体分子が、抗体により標的化され得る抗原として典型的には利用可能である。これらのタンパク質が好ましい。
【0158】
用語「受容体分子」は、リガンドに結合し典型的にはシグナルを伝達する、細胞膜上又は細胞質又は細胞核内のタンパク質に関し、例えば代謝型受容体、Gタンパク質共役型受容体、グアニリルシクラーゼ受容体、受容体チロシンキナーゼ、ムスカリン性アセチルコリン受容体、アデノシン受容体、アドレナリン受容体、GABA受容体、アンギオテンシン受容体、カンナビノイド受容体、コレシストキニン受容体、ドーパミン受容体、グルカゴン受容体、代謝調節型グルタミン酸受容体、ヒスタミン受容体、嗅覚受容体、オピオイド受容体、サイトカイン受容体を含むケモカイン受容体、カルシウム感知受容体、ソマトスタチン受容体、セロトニン受容体、セクレチン受容体、イオンチャネル型受容体、又はFc受容体を含む。
【0159】
更に好ましい標的は、CA 15−3、CA 19−9、CA 72−4、CFA、MUC−1、MAGE、p53、ETA、CA−125、CEA、AFP、PSA、PSMA、CA IX及び/又はOE8である。
【0160】
更なる態様において、本発明は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療的に最も有効な抗体の候補である哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択するための、本発明の方法の使用に関する。
【0161】
更なる態様において、本発明は、潜在的に治療上有効な抗体のパネルのうち、治療的に最も有効な抗体の候補である哺乳動物細胞の表面上の所望の標的に対する抗体をインビボで選択するための方法における近赤外蛍光イメージング(NIRF)の使用に関し、
(a)前記パネルの蛍光標識された潜在的に治療上有効な抗体の各々を、被験者におけるその標的に結合させた後で、近赤外蛍光イメージング(NIRF)によって検出し、
(b)その標的に結合した後に、最高の蛍光シグナルを示す抗体を選択する。
ことを含む。
【0162】
本発明の方法に関連して記述される実施態様は、変更すべきところは変更して、この用途に関連して適用可能である。
【0163】
また、本発明により熟考されるのは、本発明の方法によって選択される抗体である。前記抗体は、好ましくは癌の処置における使用のためである。
【0164】
同様に、本発明は、癌の処置のための薬学的組成物の調製のために、本発明の方法により選択される抗体の使用を熟考する。前記薬学的組成物は場合によっては担体を含み得る。
【0165】
本発明で使用される「担体」は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤であって、それらは、用いられる用量及び濃度で、それらに曝露される細胞又は哺乳動物に無毒である。しばしば、生理学的に許容される担体は、水性のpH緩衝液である。
【0166】
生理学的に許容される担体の例は、生理食塩水、又はリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などのバッファ;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(およそ10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例として、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;単糖、二糖および他の炭水化物、例としてグルコース、マンノース又はデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMが含まれる
【0167】
本発明に従って使用される抗体の薬学的製剤は、所望の程度の純度を有する抗体と任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.: Williams and Wilkins PA, USA (1980))とを、凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で混合することによって調製される。
【0168】
薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに毒性でなく、そしてこれには、限定しないが、酢酸塩、トリス、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;マンノサッカライド、ジサッカライド、およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;等張剤、例えば、トレハロース及び塩化ナトリウムなど;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;界面活性剤、例えばポリソルベート;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。抗体は、好ましくは、抗体を、5〜200mg/mlの間、好ましくは10〜100mg/mlの間で含んでなる。
【0169】
また、活性成分は、例としてコアセルベーション技術または界面重合法により調製したマイクロカプセル、例として、それぞれ、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミン微小球体、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)において又はマクロエマルジョンにおいて、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリラート)マイクロカプセルに包含してよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示される。
【0170】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜を通して濾過することにより、容易に達成することができる。
【0171】
本発明の別の態様は、潜在的に治療上有効な蛍光標識された抗体のパネル、及び被験体において前記抗体を検出するための近赤外蛍光イメージングの手段を含む、本発明の方法の何れかにおいて使用のためのキットである。
【0172】
キットはパッケージ挿入物を含み得る。用語「パッケージ挿入物」は、効能、用法、用量、投与、禁忌についての情報、及び/又はそのような治療用製品の使用に関する警告を含む、治療用製品の商用パッケージに慣習的に含まれている説明書を指すために使用される。
【0173】
キットは、容器、及び本発明の方法に従って選択される抗体を含み、その中に含有される組成物を含んでなる。キットは、容器上又は容器に付随するラベルないしはパッケージ挿入物を具備する。適切な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ等を含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な物質から形成されうる。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が本明細書に記載される癌の治療のために、より具体的には乳癌の治療のために使用されることを示している。ラベル又はパッケージ挿入物は更に、抗体組成物を癌患者に投与するための説明書を含む。加えて、キットは更に、本発明の抗体を検出する物質、例えば、本発明の抗体に結合する第二抗体を含む第二の容器を含んでいてもよい。その物質は、本明細書に開示されるものなど検出可能な標識で標識することができる。第二の容器は、薬学的に許容される緩衝液、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液を含んでもよい。キットは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的及び使用者の立場から望まれる他の物質を更に含んでもよい。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物の説明並びにインビボでの使用又は診断上の使用について意図した説明書を提供してよい。
【図面の簡単な説明】
【0174】
図は以下を示す:
図1】トラスツズマブ−Cy5(a)、ペルツズマブ−Cy5(b)及びゾレア−Cy5(c)を用いた、インビボでのNIRFシグナル強度(1a、1b、1c)とホルマリン固定/パラフィン包埋ヘマトキシリン組織スライド(2a、2b、2c)と及び外植腫瘍組織のマルチスペクトル撮影(3a、3b、3c)との相関。
図2】Cyr61に対して指向された潜在的治療抗体(MOR6395_MM046,MOR6396_MM056、MOR6420_MM048、MOR6434_MM047、MOR6971_MM044)のインビボイメージング。
図3】Cyr61に対して指向された潜在的治療抗体(MOR6395_MM046,MOR6396_MM056、MOR6420_MM048、MOR6434_MM047、MOR6971_MM044)のエキソビボイメージング。
図4】Cyr61に対して指向された潜在的治療抗体(MOR6395_MM046,MOR6396_MM056、MOR6420_MM048、MOR6434_MM047、MOR6971_MM044)のインビボでの有効性。
図5】HER3に対して指向された潜在的治療抗体クローン1〜クローン5のインビボイメージングの蛍光強度の図。
図6】CALU−3異種移植片におけるHER3に対して指向された潜在的治療抗体クローン1〜クローン5のインビボでの有効性。
【実施例】
【0175】
以下の実施例は本発明を説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。実施例は、例示の目的のために含まれ、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
実施例1
この例では、標的の発現及び腫瘍組織に対する抗体の結合を確認するための、近赤外蛍光イメージングの有用性が実証されている。
【0176】
治療抗体のトラスツズマブ、ペルツズマブ及びゾレアは、有機フルオロフォア(Cy5)で標識され、ヒト肺異種移植片に静脈内注射される。腫瘍を有するマウスにおけるトラスツズマブ−Cy5及びペルツズマブ−Cy5の50マイクログラムの単回静脈内注射後に、強い蛍光シグナルが、24〜48時間後にHer2を過剰発現する腫瘍領域で検出可能である。外植された腫瘍組織の続く解析では、Her2特異的抗体は、腫瘍細胞にのみ結合するが、マウスの組織には結合しないことを明らかにした。対照的に、ヒトGgEを指向するCy5で標識された対照抗体ゾレアでは蛍光シグナルは生成されない(図1)。
【0177】
実施例2
この例では、一つの腫瘍に関連した抗原に対する異なる抗体の結合効力を確認するための、近赤外蛍光イメージングの有用性が実証されている。インビボ及びエキソビボでのイメージングの結果は前臨床試験によって確認されている。
【0178】
腫瘍抗原Cyr61に対する4つの異なる治療抗体(MOR06395、MOR06396、MOR06434、MOR06420)が有機フルオロフォアCy5で標識される。標識抗体の各々は、腫瘍を有する3匹のSCID-ベージュマウスに皮下注射される(ヒト膵臓異種移植)。標識された抗Cyr61モノクローナル抗体の50マイクログラムの1回の静脈注射後、24から48時間後に、蛍光シグナルが腫瘍領域でイメージ化された(図2)。全ての生体内画像内のシグナルが、正規化され、疑似色に変換され、腫瘍領域内の強度を分析される。4つの異なる抗体のシグナル強度を互いに比較すると、モノクローナル抗体MOR06420が、腫瘍領域で最も高いシグナル強度を示す。
【0179】
インビボのイメージングからの結果は、組織学的エキソビボ解析によって確認される。このために、腫瘍は外植され、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋される。スライス及びDAPI染色された腫瘍組織において、抗体MOR06420はまた、最も明るいシグナル強度を示している(図3)。
【0180】
インビボの結果及びエキソビボの結果から、モノクローナル抗体MOR06420に、最良の結合効力を有する抗体として優先順位を付けることができる。従って、抗体MOR06420は最良の治療的有効性を示すはずである。
【0181】
この仮説を確認するために、Cyr61に対する4つの異なる治療抗体が前臨床試験で試験される。皮下にPanc−1を有するSCID-ベージュマウスが、10匹ずつ5つのグループに分けられる。未処置のビヒクル(vehicle)群には、ヒスチジン緩衝液を週に2回腹腔内注射される。4つの治療群の各々は、20mg/kgの濃度の抗Cyr61抗体が週に2回腹腔内注射される。全ての動物の腫瘍体積をキャリパーにより経時的に測定する(図4)。
【0182】
実際、抗Cyr61モノクローナル抗体MOR06420は、68%の腫瘍増殖の阻害を伴い、PANC−1異種移植片の中で最も強力な抗腫瘍活性を有すると思われた。
【0183】
実施例3
この例では、一つの腫瘍に関連した抗原に対する異なる抗体の結合効力を確認するための、近赤外蛍光イメージングの有用性が実証されている。インビボでのイメージングの結果は前臨床試験によって確認されている。
【0184】
腫瘍抗原HER3に対する5つの異なる治療抗体(クローン1からクローン5)が有機フルオロフォアCy5で標識される。標識抗体の各々は、皮下腫瘍を有する3匹のSCID無毛近交系マウスに皮下注射される(CALU−3異種移植)。標識された抗HER3モノクローナル抗体の50マイクログラムの1回の静脈注射後、24から48時間後に、蛍光シグナルが腫瘍領域でイメージ化される。全ての生体内画像内のシグナルが、正規化され、疑似色に変換され、腫瘍領域内の強度を分析される。5つの異なる抗体(クローン1からクローン5)のシグナル強度を互いに比較すると、抗HER3モノクローナル抗体クローン5が、腫瘍領域で最も高いシグナル強度を示す(図5)。
【0185】
インビボの結果から、抗HER3モノクローナル抗体クローン5に、最良の結合効力を有する抗体として優先順位を付けることができる。従って、抗HER3モノクローナル抗体クローン5は最良の治療的有効性を示すはずである。
【0186】
この仮説を確認するために、HER3に対する5つの異なる治療抗体が前臨床試験で試験される。皮下にCALU−3を有するSCID無毛近交系マウスが、8匹ずつ7つのグループに分けられる。未処置のビヒクル(vehicle)群には、ヒスチジン緩衝液を週に1回腹腔内注射される。4つの治療群の各々は、10mg/kgの濃度の抗HER3抗体が週に1回腹腔内注射される。
【0187】
2つの更なる処置群において、ハーセプチン又はヒスチジン緩衝液が、それぞれ陽性又は陰性コントロールとして週に1回腹腔内注射される。全ての動物の腫瘍体積をキャリパーにより経時的に測定する(図6)。
【0188】
抗HER3モノクローナル抗体クローン5は、CALU−3異種移植片の中で最も強力な抗腫瘍活性を有するように見えた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6