特許第6385079号(P6385079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社根本杏林堂の特許一覧

特許6385079医用システムおよびコンピュータプログラム
<>
  • 特許6385079-医用システムおよびコンピュータプログラム 図000002
  • 特許6385079-医用システムおよびコンピュータプログラム 図000003
  • 特許6385079-医用システムおよびコンピュータプログラム 図000004
  • 特許6385079-医用システムおよびコンピュータプログラム 図000005
  • 特許6385079-医用システムおよびコンピュータプログラム 図000006
  • 特許6385079-医用システムおよびコンピュータプログラム 図000007
  • 特許6385079-医用システムおよびコンピュータプログラム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385079
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】医用システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20180827BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20180827BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61B6/03 360N
   A61B6/12
   A61B6/00 331E
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-43322(P2014-43322)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-167649(P2015-167649A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼岡 勝美
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−511355(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0130159(US,A1)
【文献】 特開2002−191593(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/153801(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0218024(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0177185(US,A1)
【文献】 特開2009−061280(JP,A)
【文献】 特開2008−253468(JP,A)
【文献】 特開2008−194374(JP,A)
【文献】 特開2003−116847(JP,A)
【文献】 特開平10−258047(JP,A)
【文献】 特開2002−058658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を撮像し透視撮像データを取得する撮像装置と、
その透視撮像データに基づき患者の断層画像を生成する画像処理モジュールと、
前記画像処理モジュールによって生成された前記断層画像を投影するプロジェクション装置と、
を備え、
前記プロジェクション装置が、前記患者の断層画像をリアルタイムで(a)当該患者の体の表面に投影するように構成され、かつ、(b)実際の穿刺位置と画像内の穿刺位置とが一致するように前記断層画像を投影するように構成されていることを特徴とする、医用システム。
【請求項2】
前記プロジェクション装置が、
前記撮像装置のガントリ内の領域に前記断層画像を投影するように構成されている、請求項1に記載の医用システム。
【請求項3】
さらに、
前記プロジェクション装置の向きを調整できる態様で該プロジェクション装置を保持する保持手段を備える、
請求項1または2に記載の医用システム。
【請求項4】
前記保持手段が、天井懸垂式の保持アームである、請求項3に記載の医用システム。
【請求項5】
さらに、
前記プロジェクション装置によって投影される画像を、前記患者のアキシャル画像、サジル画像、およびコロナル画像のうち少なくとも2つの間で切り替えさせる画像切替処理モジュールを備える、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の医用システム。
【請求項6】
前記撮像装置がX線CT装置である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医用システム。
【請求項7】
さらに、
患者に少なくとも造影剤を注入する薬液注入装置を備える、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の医用システム。
【請求項8】
前記薬液注入装置と前記プロジェクション装置とが共通の天井懸垂式の保持アームに保持されている、請求項4に従属する7に記載の医用システム。
【請求項9】
前記プロジェクション装置は、さらに、
投影対象物に予めグリッドを投影し、それを解析して実際の断層画像投影時の歪みを補正するグリッド補正機能を有している、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の医用システム。
【請求項10】
患者を撮像し透視撮像データを取得する撮像装置と、
その透視撮像データに基づき患者の断層画像を生成する画像処理モジュールと、
前記画像処理モジュールによって生成された前記断層画像を投影するプロジェクション装置と、
を備え、
前記プロジェクション装置が、前記患者の断層画像をリアルタイムで(a)当該患者の体の表面に投影するように構成され、かつ、(c)穿刺すべき位置が患者の体軸方向のどの位置であるかを示すマーカ画像も投影するように構成されていることを特徴とする、医用システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生検等行うための医用システムおよびコンピュータプログラムに関し、特には、穿刺針像を見ながら穿刺を行う場合であっても医師の視線移動が少なくて済む医用システムおよびコンピュータブログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療用の画像診断装置として、CT(Computed Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、超音波診断装置、血管造影(アンギオグラフィ)撮像装置等が知られている。
【0003】
近年では、撮像装置(例えばCTスキャナ)で患者の体をスキャンしながら、穿刺針像をモニタ(表示部)上で確認し生検を行うことも行われている。「生検」とは、人体から組織の小切片を切りとって病理学的に調べることをいい、例えば特許文献1には、穿刺針の挿入状態を確認できるように、表示部にアキシャル画像とサジタル画像とを表示するようにしたシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−191593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、表示部に表示される断層画像で現在の針先位置を確認しながら穿刺を行うことができることは有益である。しかしながら、生検等の施術においては医師が患者近傍で作業をする必要があり、断層画像が表示される表示部が患者から離れて設置してあるような場合には、医師は、穿刺を行っている手元付近と、断層画像が表示される表示部付近との間で視線移動を繰り返す必要があり、施術が行い難いものとなる。
【0006】
本発明は、こうした問題点に着目してなされたものであって、その目的は、穿刺針像を見ながら穿刺を行う場合であっても医師の視線移動が少なくて済む医用システムおよびコンピュータブログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一形態の医用システムは下記の通りである:
患者を撮像し透視撮像データを取得する撮像装置と、
その透視撮像データに基づき患者の断層画像を生成する画像処理モジュールと、
前記画像処理モジュールによって生成された前記断層画像を投影するプロジェクション装置と、
を備え、
前記プロジェクション装置が、前記患者の断層画像をリアルタイムで(a)当該患者の体の表面または(b)患者付近に配置された被投影体に投影するように構成されている、医用システム。
【0008】
(用語の説明)
「リアルタイム」とは、コンピュータによるリアルタイム処理に関連するものであり、必ずしも同時である必要はなく、コンピュータの処理等に起因する若干の遅れを含むものであってもよい。
「モジュール」とは、有形な要素だけでなく、例えば所定の機能を果たすコンピュータプログラムの要素のことをも意味する。
「画像」に関し、プロジェクション装置から画像を投影すると言った場合には、静止画像に限らず、動画像を投影することをも含む。
「コンピュータ」とは、一般的にコンピュータと呼ばれている集積回路のみに限らず、プロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブル論理コントローラ、特定応用向け集積回路、及び他のプログラム可能な回路を広範に指すものとする。
「端末」とは、ネットワークに接続されまたはスダンドアロンで使用される、データの処理を行うワークステーションまたはパーソナルコンピュータ等の情報処理装置をいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、穿刺針像を見ながら穿刺を行う場合であっても医師の視線移動が少なくて済む医用システムおよびコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の医用システムの構成を模式的に示す図である。
図2】プロジェクション装置の構成を模式的に示す図である。
図3】ベッド上の患者およびその体表上に表示される断層画像の例を示す図である。
図4】患者の一部を覆う被覆部材に投影領域が設定された例を示す図である。
図5】被覆部材の一例を模式的に示す斜視図である。
図6】CT下生検の手順の一例を示すフローチャートである。
図7】患者の体表上に表示されるマーカ画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面を参照して以下に説明する。
【0012】
本実施形態の医用システムは、図1に示すように、患者を撮像して透視撮像データを取得する撮像装置300と、患者に対して画像を投影することができるプロジェクション装置600と、投影される画像データを処理するプロジェクション画像処理部501とを備えている。
【0013】
なお、本発明においては当然ながら、これらの構成要素以外にも例えば、患者に造影剤等の薬液を注入するための薬液注入装置、病院情報システムであるHIS(Hospital Information System)、放射線科情報システムであるRIS(Radiology Information System)、画像保存通信システムであるPACS(Picture Archiving and Communication Systems)等が備えられていてもよい。薬液注入装置の詳細については後述する。
【0014】
(撮像装置)
撮像装置300としては、例えばX線CTスキャナや血管造影撮像装置であってもよい。この例では、撮像装置300は、図1に模式的に示すように、ガントリ301と、患者を載せるベッド304と、それらの動作を制御する動作制御部322と、透視撮像データを収集処理するデータ収集部321と、全体の動作を制御するメインコントローラ323等を有している。撮像装置300自体は、従来公知のものを利用可能であるので以下、主要な構成要素のみ説明する。また、以下ではCTスキャナを例として説明する。
【0015】
ガントリ301は、患者が通過可能な中央開口部301aを有しており、この内部を、ベッド304上に横臥した患者が横方向に移動できるようになっている。CT下生検を行う場合、医師は、ガントリ301の中央開口部301a付近に立ちこの開口部301a内に手を伸ばして患者に対して施術を行うこととなる。
【0016】
ガントリ301の内部には、X線管やコリメータ等を有しX線を患者に向けて照射するX線照射部331と、患者を透過したX線の検出を行う検出部332等が配置されている。X線照射部331および検出部332は、それらの位置関係を保ったまま患者の体軸の周りを回転しながらスキャンを行い、データ収集部321によって透視撮像データ(投影データ)の収集が行われる。
【0017】
ベッド304は、例えば不図示のモータを駆動源として水平方向に移動可能に構成され、その移動動作は動作制御部322によって制御される。なお、「水平」という方向は本願を何ら限定するものではなく、所定の角度傾斜した状態でベッドが移動するような撮像装置であってもよい。
【0018】
なお、CTスキャナとしては、患者に対して所定方向からX線を照射して透過像を得ることができるものであればどのようなタイプであっても構わない。一例で、例えば、患者の3方向の断面画像を得ることができるマルチスライスCTスキャナであってもよい。
【0019】
(画像処理端末)
本実施形態では、一例で、プロジェクション画像処理部501(詳細下記)は、画像処理端末500内に設けられている。画像処理端末500は、例えば、一般的なコンピュータと同様の構成であってもよく、具体的には以下のような構成要素の一部または全部を備えるものであってもよい:
−端末の全体的な制御を行うメインコントローラ510と、
−プロジェクション画像処理部501と、
−画像切替処理部502と、
−情報を表示するモニタ511と、
−操作者からの種々の入力を可能とする入力手段512と、
−コンピュータ可読媒体からデータを読み込むスロット515と、
−外部機器との通信行う幾つかのインターフェースI/F521a、521b、
−不図示の記憶装置、等
を有している。
【0020】
メインコントローラ510は、一例で、CPUやメモリ、コンピュータプログラム等を有するプロセッサユニットであってもよく、図面では1つのものとして描かれているが、複数のコントローラによって構成されるものであってもよい。
【0021】
プロジェクション画像処理部501および画像切替処理部502は、一例で、コンピュータプログラムに従ってCPUが行う各種の機能に相当し、例えばソフトウェアの機能として提供されるものであってもよい。
【0022】
モニタ511としては、情報を表示できるものであればどのようなものであっても構わないが、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等であってもよい。モニタ511の数は特に限定されるものではなく、1つまたは複数であってもよい。1つまたは複数のモニタ511が、端末とは別個に、システム内の任意に配置されてもよい。この場合、画像処理端末500とそれらモニタ511との間の接続は、例えば有線接続であってもよいし無線接続であってもよい。
【0023】
入力手段512は、キーボード、マウス、トラックボール、音声入力等から選ばれる1つまたは2つ以上であってもよい。入力手段512を通じて医師等からの指令が入力される。
【0024】
スロット515は、別の言い方をすれば媒体読取部ということもできる。すなわち、コンピュータ可能媒体から接触式または非接触式でデータを読み取ることができるユニットであってもよい。
【0025】
(プロジェクション画像処理部等について)
プロジェクション画像処理部501は、以下の機能の一部または全部を有する:
−撮像装置300のデータ収集部321からの透視撮像データに基づき即時(リアルタイム)に断層画像を生成する機能、
−断層画像として、「アキシャル画像」、「サジタル画像」、「コロナル画像」等を生成する機能、
−プロジェクタ装置600(詳細下記)で画像を投影する場合に、投影画像の歪みを補正し、補正された投影画像を生成する機能、
−穿刺位置P1に対応する位置をあらわすインジケータ(マーカ)画像、または、それを含んだ画像を生成する機能、等。
【0026】
画像切替処理部502は、断層画像として「アキシャル画像」、「サジタル画像」、「コロナル画像」等が生成されている場合に、それらのうち2つまたは全部の中から投影される画像を切り替える機能である。例えば、医師から指示が入力手段512を介して入力信号として受信された際に、画像切替処理部502が画像の切り替えを行う。
【0027】
メインコントローラ510は、例えば入力手段512を通じた入力信号、または、外部からの他の入力信号があったときに、プロジェクション画像処理部501および/または画像切替処理部502の機能を働かせ、例えば、投影に関連する次のような動作を行わせる:
−患者の断層画像をプロジェクション装置600を出力する、
−歪み補正が行われた画像をプロジェクション装置600に出力する、
−インジケータ(マーカ)画像を含んだ画像プロジェクション装置600に出力する、
−切り替えられた投影画像(「アキシャル画像」、「サジタル画像」、「コロナル画像」等)をプロジェクション装置600に出力する、等。
【0028】
(プロジェクション装置)
プロジェクション装置600は、図2に模式的に示すように、画像を投影するためのユニットである、不図示のレンズや光源等を含む投影部601と、その動作を制御する動作制御部602と、装置全体の制御等を行うメインコントローラ603と、外部からのデータを入力するためのインターフェース604等を有している。
【0029】
メインコントローラ603は、例えば、CPUやメモリ、コンピュータプログラムなどを含むマイクロコンピュータであってもよい。動作制御部602は、コンピュータプログラムによって実現されるものであってもよいし電気回路として構成されたものであってもよい。インターフェース604は、外部からデータを受けることができるものであればその方式は特に限定されるものではなく、例えば、無線方式でデータを受信するインターフェースであってもよいし、または、有線方式でデータを受信するインターフェースであってもよい。
【0030】
プロジェクション装置600は、投影部601、動作制御部602、メインコントローラ603、およびインターフェース604を収容する筐体(ハウジング)を有していてもよい。筐体の一部には、電源のオン/オフを切り替えるための物理ボタン、装置の作動状態等を示すためのインジケータ、所定の情報を表示する情報表示部等の1つまたは複数が設けられていてもよい。
【0031】
プロジェクション装置600は、ガントリ301内に設定された画像投影領域P2に向けて画像を投影できるように構成されている。投影領域P2は、一例として図3に示すように、生検において穿刺針が穿刺される穿刺位置P1の近傍の患者の体表上の位置であってもよい。
【0032】
別の態様では、穿刺位置P1に患者の断層画像Imがオーバーラップするように投影を行ってもよい。より具体的には、穿刺位置Saの位置と実際の穿刺位置P1とが重なる(合致する)ように投影を行ってもよい。
【0033】
ここで、図3に示されている断層画像Imについて説明すると、この断層画像Imは患者の体軸に略垂直な方向にスライスしたアキシャル画像であって、画像中、穿刺針Ndの先端が患者体内の所定の対象Trgに向かって挿入されている状態が示されている。図中の符号Saは、患者の体表のうち穿刺針Ndが挿入される位置を示している。本実施形態のシステムではCT下生検中のこうした断層画像がプロジェクション画像処理部501でタイムラグ無くプロジェクション装置600によって投影される。
【0034】
なお、穿刺針Ndは必ずしもアキシャル画像のスライス方向に平行に挿入されるとは限らず、体軸方向に斜めに(例えば、頭部側から腹部側に向かって斜めに)挿入されることもある。この場合に、例えば従来公知の画像処理方法を利用して、針先の部位ごとに色が変わるような態様で穿刺針を着色して表示してもよい。
【0035】
再び、画像を投影する領域の説明に戻り、画像投影領域P2は、患者体表上ではなく、例えば、図4図5のような患者の一部を覆う被覆部材381上に投影してもよい。この被覆部材381としては、例えば、患者の体の一部(体軸方向の所定範囲)を覆うようなものであってもよい。この例では、断面が略逆向きU字型で上面側に例えば医師が医療器具等を載せることも可能な平坦または実質的に平坦な面381aを有する被覆部材381が描かれている。プロジェクション装置600からの画像をこの面381a上に、直接的または間接的(例えばドレープが載せられその上に)投影してもよい。被覆部材381は、ベッド304上に配置できるものであることも好ましい。面381aは、水平面であってもよいし、所定の角度で傾斜した面であってもよい。ここでは、図5のような具体的な被覆部材381を例示したが、ベッド304上に配置されるものではなく、他の何らかの支持部材に支持され、画像を投影するための面を提供する他の形態の部材を利用してもよい。
【0036】
再び図1の説明に戻り、プロジェクション装置600は、プロジェクション装置600の向きが一軸方向、二軸方向、またはそれ以上の方向に調整できるような態様で、支持部材に取り付けられるものであってもよい。具体的には、図1に模式的に示すような天井懸垂式の保持アーム630に保持されるようになっていてもよい。保持アーム630としては、天井に固定される固定ベース部632と、そこから下方に伸び出した1本または複数本の多関節のアーム631とを有するものであってもよい。
【0037】
このような天井懸垂式の保持アーム630を用いる場合、アーム631に、プロジェクション装置600の他に薬液注入を行うための薬液注入器(注入ヘッド)を保持させるようにしてもよい。アーム631が複数本ある場合には、別々のアームにプロジェクション装置600と注入ヘッドとを保持させるようにしてもよい。機器は、アームの631の先端、その近傍、または先端から一定距離離れた位置に取り付けられていてもよい。
【0038】
注入ヘッドとしては、造影剤を注入するものであってもよい。このような注入ヘッドとしては、どのようなものであってもよいが、例えば、1本のシリンジのみを搭載するタイプのもの、2本のシリンジを搭載するタイプ(デュアルタイプ)のもの、あるいはそれ以上のシリンジを保持するタイプのものであってもよい。
【0039】
シリンジとしては予め薬液が充填されたプレフィルドタイプであってもよいし、空のシリンジに薬液を充填して使用するタイプのいずれであってもよい。シリンジに、シリンジや薬液のデータ等を記憶したICタグが付されていてもよい。この場合、注入ヘッド側にその読み取りデバイス(ICタグリーダ)が設けられていてもよい。
【0040】
注入ヘッドは、有線接続または無線接続により、外部のコンソールに通信可能に接続され、例えば、コンソール側から薬液注入条件が設定されたり、動作の開始や停止の信号が送られたりするものであってもよい。注入ヘッドとコンソールとを含む装置の単位を薬液注入装置と称することもある。
【0041】
注入条件に関するデータ、注入中の状況に関するデータ(例えば薬液圧力や薬液残量等)および/または、注入結果に関するデータの1つまたは2つ以上を必要に応じて表示するための1つまたは2つ以上の表示デバイスがシステム内の任意の位置に設けられていてもよい。
【0042】
なお、プロジェクション装置600は、三脚や可動式のスタンドに保持するようにしてもよい。可動式のスタンドとしては、例えば、複数のキャスター(車輪)を有する脚部またはベース部と、そこから上方に向かって延びる棒状の支持部材とを有し、その支持部材の上部またはその付近でプロジェクション装置600を保持するものであってもよい。この場合であっても、プロジェクション装置600の向きが一軸方向、二軸方向、またはそれ以上の方向に調整できるように、支持部材が角度調整可能な取付構造を有していることが好ましい。
【0043】
上述のように構成された本実施形態のシステムの動作の例について、図6のフローチャートを参照しつつ以下に説明する。
【0044】
まず、患者が撮像装置300のベッド304上に横臥した状態で、メインコントローラ323および動作制御部322の機能により不図示の駆動源が駆動されベッド304がガントリ301内へと移動させられる。図1の例では、患者の胸部付近(図中P1は穿刺位置)がガントリ内の撮像領域に位置した状態となっている。
【0045】
次いで、CT下生検を実施するため、医師は患者体表の所定の位置(穿刺位置P1)に穿刺針を穿刺し、対象Trgに向けて穿刺針に挿入する。このときの穿刺位置P1位置決めは、例えば、医師が対象Trgの位置推測して行ってもよいし、あるいは、何らかの所定のガイドデバイス(例えば患者の体表を格子状に区分けすることで位置決めをガイドするもの)等を用いて行ってもよい。
【0046】
穿刺している間、撮像装置300により透視撮像が行われ(ステップS1)、このデータに基づきプロジェクション画像処理部501によって患者の断層画像(現在の針位置が示されている)が生成され、プロジェクション装置600へと出力される。これにより、プロジェクション装置600から、リアルタイムで、現在の針先位置を示す断層画像が穿刺位置P1の近傍に表示される(図3参照、ステップS2、S3)。
【0047】
医師は、このようにして投影された断層画像Imを見ながら、穿刺針の挿入状況、すなわち、現在の針先が対象Trgまであとどれくらいかを確認しながら穿刺針の更なる挿入、対象からの細胞の切除を行うことができる(ステップS4)。
【0048】
以上説明したような本実施形態の構成によれば、次のような作用効果が得られる:すなわち、CT下生検を行う場合、透視画像が表示される表示部が患者から離れて設置してあるような場合には、医師は、穿刺を行っている手元付近と、透視画像が表示される表示部付近との間で視線移動を繰り返す必要がある。しかしながら、本実施形態の構成によれば、リアルタイムの断層画像Imが穿刺位置P1の近傍に表示されるので、医師は少ない視線の移動で施術を行うことができる。
【0049】
また、例えば小型のモニタ等をガントリ付近に配置してそのモニタに断層画像を表示させるような構成では、施術領域の近傍にモニタやケーブルが存在することとなるので、施術領域を広く確保しにくくなったり、ケーブル等が施術の妨げになったりするおそれもある。これに対して、本実施形態では、プロジェクションによって画像を投影するものであり、プロジェクション装置600は施術領域から離れた位置(上方の位置)に配置できるので、施術領域を広く確保するのに有利である。
【0050】
また、アキシャル画像、サジタル画像、およびコロナル画像が切り替え可能に構成されている場合、医師等の必要に応じて投影する画像を変更することができ、例えば、一時的にコロナル画像を表示させて所定の臓器の平面視位置を確認したりすることも可能となる。
【0051】
以上、本発明の一形態について説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0052】
(マーカ表示)
例えば、図7に示すように、穿刺位置P1をガイドするためのマーカ画像Sbが表示されるように構成されていてもよい。マーカ画像Sbは、穿刺すべき位置が患者の体軸方向のどこにあるかを示すものであり、この例ではライン状の画像である。このようなマーカ画像Sbを表示する場合、断層画像の患者の臓器位置と、患者の実際の臓器位置とが大きくずれないように予め位置合わせしておく必要がある。このようなマーカ画像Sbは、医師の正確な位置への穿刺針の穿刺に役立ちうる。
【0053】
マーカ画像Sbに代えて、または、マーカ画像Sbとともに、患者を撮像して得られた同患者のコロナル画像等を患者体表上に投影するようにしてもよい。
【0054】
(ゆがみ補正)
患者体表に画像を投影する場合には、例えば、いわゆる「プロジェクション・マッピング」を行うためのコンピュータプログラムなどを利用してもよい。プロジェクション・マッピングでは、投影対象の三次元に沿って像を変形し補正することで例えば平面上に投影した場合と同じような投影画像を得られるようにする機能をいう。この場合、一例で、対象の患者に対してグリッド(方眼)を投影し、それを解析してデータを取得し、そのデータを利用しつつ、想定される画像歪みを補正するように画像処理を行い、それにより患者の体の立体形状に影響されずに正像が得られることとなる。
【0055】
上記実施形態において説明したコンピュータの機能として実現可能な要素(例えば「部」であらわされるもの)については、医用システムにおけるいずれの機器に備わっていてもよいものである。また、必ずしも1つの機器内に備わっている必要はなく、相当する機能が2つ以上の機器に分散して備えられているものであってもよい。
【0056】
なお、上記実施形態では装置やデバイスの制御を特定の端末(コンソール、制御装置)で行うことを説明したが、そのような端末の機能自体は、汎用の情報処理装置で実現可能であるので、ソフトウェアを所定の情報処理装置にインストールし、それでもって実現することも可能である。例えば、前述した実施形態の機能を実現するプログラムを撮像装置側のコンピュータで読み取ってそれらの機能を実現するようにしてもよい。
【0057】
(付記)
本明細書は以下の発明を開示する:
1・患者を撮像し透視撮像データを取得する撮像装置(300)と、
その透視撮像データに基づき患者の断層画像を生成する画像処理モジュール(501)と、
前記画像処理モジュールによって生成された前記断層画像を投影するプロジェクション装置(600)と、
を備え、
前記プロジェクション装置が、前記患者の断層画像をリアルタイムで(a)当該患者の体の表面または(b)患者付近に配置された被投影体(381)に投影するように構成されている、医用システム。
【0058】
2.前記プロジェクション装置(600)が、
前記撮像装置のガントリ内の領域に前記断層画像を投影するように構成されている、上記記載の医用システム。
【0059】
3.さらに、
前記プロジェクション装置(600)向きを調整できる態様で該プロジェクション装置を保持する保持手段(630)を備える、
上記記載の医用システム。
【0060】
4.前記保持手段(630)が、天井懸垂式の保持アームである、上記記載の医用システム。
【0061】
5.さらに、
前記プロジェクション装置によって投影される画像を、前記患者のアキシャル画像、サジカル画像、およびコロナル画像のうち少なくとも2つの間で切り替えさせる画像切替処理モジュール(502)を備える、
上記記載の医用システム。
【0062】
6.前記撮像装置がX線CT装置である、上記記載の医用システム。
【0063】
7.さらに、
患者に少なくとも造影剤を注入する薬液注入装置を備える、
上記記載の医用システム。
【0064】
8.前記薬液注入装置と前記プロジェクション装置とが共通の天井懸垂式の保持アームに保持されている、上記記載の医用システム。
【0065】
9.1つまたは複数のコンピュータに、
A1:患者を撮像して得られた透視撮像データに基づき該患者の断層画像を生成するステップと、
A2:(a)当該患者の体の表面または(b)患者付近に配置された被投影体の方向に向けられたプロジェクション装置に、前記断層画像をリアルタイムに投影させるステップと、
を行わせる、コンピュータプログラム。
【0066】
10。さらに、
A3:1つまたは複数のコンピュータに、投影される画像を、所定の入力信号に応じて、前記患者のアキシャル画像、サジカル画像、およびコロナル画像のうち少なくとも2つの間で切り替えさせるステップを、
を行わせる、上記記載のコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0067】
300 撮像装置
301 ガントリ
331 X線照射部
332 検出部
381 被覆部材(被投影体)
500 画像処理端末
600 プロジェクション装置
601 投影部
630 保持アーム
631 アーム
632 ベース部
Im 断層画像
P1 穿刺位置
P2 投影領域
Sa 穿刺位置
Sb マーカ画像
Trg 対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7