(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385095
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20180827BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
A61M1/16 111
G01N21/59 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-64478(P2014-64478)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-186507(P2015-186507A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000138037
【氏名又は名称】株式会社メテク
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】五反田 裕也
【審査官】
石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0012774(US,A1)
【文献】
特開昭64−000450(JP,A)
【文献】
特開2006−314458(JP,A)
【文献】
特表2013−500800(JP,A)
【文献】
特開2008−048804(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101762561(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00 − 1/38
G01N 21/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から所定成分を分離する血液浄化器と、
前記血液浄化器で分離された所定成分の液が流れる分離回路と、
前記分離回路の透過光量を検出するセンサと、
前記センサが検出する透過光量に基づいて、前記分離回路の液中における所定の血漿成分の有無を検出する血漿成分検出部と、を備え、
前記血液浄化装置は、前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれる血液浄化処理を行うものであり、
前記血液浄化処理時に前記血漿成分検出部により前記血漿成分が検出されない場合に、警報を出す、血液浄化装置。
【請求項2】
血液から所定成分を分離する血液浄化器と、
前記血液浄化器で分離された所定成分の液が流れる分離回路と、
前記分離回路の透過光量を検出するセンサと、
前記センサが検出する透過光量に基づいて、前記分離回路の液中における所定の血漿成分の有無を検出する血漿成分検出部と、を備え、
前記血液浄化装置は、前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれない血液浄化処理を行うものであり、
前記血液浄化処理時に前記血漿検出部により前記血漿成分が検出された場合に、警報を出す、血液浄化装置。
【請求項3】
血液から所定成分を分離する血液浄化器と、
前記血液浄化器で分離された所定成分の液が流れる分離回路と、
前記分離回路の透過光量を検出するセンサと、
前記センサが検出する透過光量に基づいて、前記分離回路の液中における所定の血漿成分の有無を検出する血漿成分検出部と、を備え、
前記血液浄化装置は、複数の血液浄化療法に応じた複数の血液浄化処理を行うものであり、
前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれる血液浄化処理を行っている場合には、前記血漿成分検出部により前記血漿成分が検出されない時に警報を出し、
前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれない血液浄化処理を行っている場合には、前記血漿成分検出部により前記血漿成分が検出された時に警報を出す、血液浄化装置。
【請求項4】
前記センサは、波長が200nm〜550nmの透過光を検出するセンサである、請求項1〜3のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれない血液浄化処理は、限外濾過療法、血液濾過療法、血液透析療法、血液濾過透析療法、持続的血液透析療法、持続的血液濾過療法および持続的血液濾過透析療法のいずれかである、請求項2又は3に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれる血液浄化処理は、単純血漿交換療法、二重膜濾過血漿交換療法および血漿吸着療法のいずれかである、請求項1又は3に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者から血液を取り出し、当該血液から病因物質を分離し、血液を浄化して体内に戻す治療を総称して血液浄化療法という。血液浄化療法は、血液浄化装置を用いて行われ、血液浄化装置は、中空糸膜などの分離膜を用いて患者の血液から所定成分を分離する血液浄化器と、血液を当該血液浄化器に供給し血液浄化器から患者に戻す血液回路と、血液浄化器で分離された成分を流す分離回路等を備えている。分離膜を有する血液浄化器には、治療の目的に応じて、血液から主に余分な水分や老廃物を分離する血液濾過器、血液から主に血漿を分離する血漿分離器、血漿中の血漿成分のアルブミン区画とグロブリン区画とを分離する血漿成分分離器等がある。血液濾過療法、血液透析療法、血液濾過透析療法、持続的血液透析療法、持続的血液濾過療法および持続的血液濾過透析療法などの血液中の主に水分を分離する療法には、血液濾過器が用いられ、単純血漿交換療法、二重膜濾過血漿交換療法および血漿吸着療法などの血液中の血漿を交換する療法には、血漿分離器や血漿成分分離器が用いられる。このように血液浄化器は治療毎に異なるものが用いられるが、一般的にこれらの血液浄化器と血液回路の接続仕様は、統一されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−022021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように血液浄化器は多種存在するが、血液回路に対する接続仕様は統一されているため、血液浄化器の付け間違いが生じる可能性がある。血液浄化器の付け間違いが起きると、治療効果が得られなくなる。
【0005】
例えば血液濾過療法等の主に水分を分離する療法時に、血液濾過器ではなく、誤って血漿分離器や血漿成分分離器を接続した場合、患者の血液中の水分だけではなく、他の血漿成分も分離してしまうため、血液中の成分バランスが崩れてしまう。また、血漿交換療法時に、血漿分離器ではなく、誤って血液濾過器を接続した場合、患者の血液から血漿が十分に抜けないため、治療効果が得られず、また血液中に新鮮凍結血漿を補液するので、血液成分バランスも崩してしまう。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、血液浄化器の付け間違いを検出可能な血液浄化装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、分離回路を流れる液中の所定の血漿成分の有無を検出することで、上記課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は下記(1)〜(7)を提供する。
【0008】
(1)血液から所定成分を分離する血液浄化器と、前記血液浄化器で分離された所定成分の液が流れる分離回路と、前記分離回路の透過光量を検出するセンサと、前記センサが検出する透過光量に基づいて、前記分離回路の液中における所定の血漿成分の有無を検出する血漿成分検出部と、を備え
、前記血液浄化装置は、前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれる血液浄化処理を行うものであり、前記血液浄化処理時に前記血漿成分検出部により前記血漿成分が検出されない場合に、警報を出す、血液浄化装置。
(2)血液から所定成分を分離する血液浄化器と、前記血液浄化器で分離された所定成分の液が流れる分離回路と、前記分離回路の透過光量を検出するセンサと、前記センサが検出する透過光量に基づいて、前記分離回路の液中における所定の血漿成分の有無を検出する血漿成分検出部と、を備え
、前記血液浄化装置は、前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれない血液浄化処理を行うものであり、前記血液浄化処理時に前記血漿検出部により前記血漿成分が検出された場合に、警報を出す、血液浄化装置。
(3)血液から所定成分を分離する血液浄化器と、前記血液浄化器で分離された所定成分の液が流れる分離回路と、前記分離回路の透過光量を検出するセンサと、前記センサが検出する透過光量に基づいて、前記分離回路の液中における所定の血漿成分の有無を検出する血漿成分検出部と、を備え
、前記血液浄化装置は、複数の血液浄化療法に応じた複数の血液浄化処理を行うものであり、前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれる血液浄化処理を行っている場合には、前記血漿成分検出部により前記血漿成分が検出されない時に警報を出し、前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれない血液浄化処理を行っている場合には、前記血漿成分検出部により前記血漿成分が検出された時に警報を出す、血液浄化装置。
(4)前記センサは、波長が200nm〜550nmの透過光を検出するセンサである、
(1)〜(3)のいずれかに記載の血液浄化装置。
(5)前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれない血液浄化処理は、限外濾過療法、血液濾過療法、血液透析療法、血液濾過透析療法、持続的血液透析療法、持続的血液濾過療法および持続的血液濾過透析療法のいずれかである、
(2)又は(3)に記載の血液浄化装置。
(6)前記分離回路の液に前記血漿成分が含まれる血液浄化処理は、単純血漿交換療法、二重膜濾過血漿交換療法および血漿吸着療法のいずれかである、
(1)又は(3)に記載の血液浄化装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、血液浄化装置における血液浄化器の付け間違いを検出できるので、目的に合った治療を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】限外濾過療法を行う血液浄化装置の概略を示す説明図である。
【
図2】血漿センサの構成の概略を示す説明図である。
【
図3】血液濾過療法を行う血液浄化装置の概略を示す説明図である。
【
図4】血液透析療法を行う血液浄化装置の概略を示す説明図である。
【
図5】血液濾過透析療法を行う血液浄化装置の概略を示す説明図である。
【
図6】単純血漿交換療法を行う血液浄化装置の概略を示す説明図である。
【
図7】二重濾過血漿浄化療法を行う血液浄化装置の概略を示す説明図である。
【
図8】血漿吸着療法を行う血液浄化装置の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る、限外濾過療法を行う血液浄化装置1の構成の概略を示す説明図である。
【0012】
血液浄化装置1は、例えば血液濾過器10と、患者から取り出された血液を血液濾過器10に送る脱血回路11と、血液濾過10から患者に血液を戻す返血回路12と、血液濾過器10により血液から分離された所定成分を排液する分離回路13を有している。
【0013】
血液濾過器10は、例えば血液中の主に水分を分離する分離膜としての中空糸膜20を有している。血液濾過器10は、脱血回路11から流入した血液を、中空糸膜20の一次側に流し返血回路12へ流出させ、その際に血液中の主に水分が中空糸膜20の二次側に流出して分離される。
【0014】
脱血回路11及び返血回路12は、例えば軟質のチューブにより構成されている。脱血回路11には、例えば流路のチューブを外側から扱いて液送する血液ポンプ30と、気泡を排出するためのドリップチャンバ31と、流路を流れる血液中に抗凝固薬を注入するためのシリンジポンプ32等が設けられている。ドリップチャンバ31には、例えば血液濾過器10の入口圧を測定する入口圧センサ33が設けられている。
【0015】
返血回路12には、例えばドリップチャンバ40と、気泡検知器41と、クランプバルブ42と、静脈圧センサ43等が設けられている。
【0016】
分離回路13は、例えば軟質チューブにより構成されている。分離回路13は、血液濾過器10の中空糸膜20の二次側に接続されている。分離回路13には、濾過圧センサ50と、光センサ51と,ポンプ52と、廃液容器53等が設けられている。
【0017】
光センサ51は、分離回路13の透過光量を検出する。光センサ51は、例えば
図2に示すように発光部60と、受光部61と、それらを支持する支持部材62と、センサ制御部63を有している。発光部60と受光部61の間には、分離回路13のチューブを装着できる。
【0018】
発光部60は、所定の血漿成分、例えば蛋白質、糖質、脂質、その他の無機イオンなど(以下、単に「血漿成分」という。)の吸収スペクトルのピークを含む所定の波長の光を出力できる。受光部61は、発光部60から出力され分離回路13を通過した、血漿成分の吸収スペクトルのピークを含む例えば200nm〜550nmの波長の透過光を受光できる。センサ制御部63は、発光部60と受光部61の動作を制御し、発光部60に所定の波長の光を発光させ、受光部61によりその透過光量を検出できる。なお、血漿は、例えば水91%、蛋白質7%、糖質0.1%、脂質1%、その他無機イオン0.9%の組成を有する。
【0019】
光センサ51により検出された分離回路13の透過光量の情報は、血漿成分検出部としての制御装置70に出力できる。分離回路13に血漿成分が流れていなければ、分離回路13を透過する光は減衰せず、分離回路13に血漿成分が流れていれば、分離回路13を通過する光は血漿成分に吸収され減衰する。よって、制御装置70は、光センサ51が検出する透過光量に基づいて、分離回路13の液中の血漿成分の有無を検出できる。
【0020】
また、限外濾過療法の場合、正しく血液濾過器10を取り付けている場合には、分離回路13に血漿成分は流れず、誤って血漿分離器や血漿成分分離器を取り付けてしまった場合には、分離回路13に血漿成分が流れる。よって、制御装置70は、正しい血液濾過器10が取り付けられているか否かを判定できる。また、制御装置70は、分離回路13に血漿成分が流れている場合、つまり正しい血液濾過器10が取り付けられていない場合に、警報を発することができる。かかる警報は、例えば音、光、画面表示等により使用者に異常を知らせるものであってもよい。また、このとき、制御装置70は、自動的に各ポンプ30、52等を停止し、クランプバルブ42を閉塞するなどして、血液浄化装置1を安全な状態に制御してもよい。制御装置70は、血液浄化器の取り付けの適否を判定する判定部71と、警報を発する警報出力部72を有している。
【0021】
制御装置70は、その他、血液ポンプ30、気泡検知器41、ポンプ52、光センサ51等の各装置の動作を制御して血液浄化処理を実行している。制御装置70は、汎用コンピュータと同様にCPU、メモリ等を有し、予めメモリに記録されたプログラムを実行して、血液浄化療法を実行できる。
【0022】
以上に記載の血液浄化装置1で行われる限外濾過療法では、患者の血液が血液分離器10に供給され、主に水分が分離されて患者に戻される。分離回路13には、分離された主に水分が流れ廃液容器53に排液される。このとき、光センサ51により分離回路13の透過光量がモニタリングされ、その情報が制御装置70に出力され、制御装置70は、その透過光量の情報に基づいて、分離回路13の液中の血漿成分の有無を検出する。限外濾過療法において分離回路13で検知されないはずの血漿成分が検出された場合には、制御装置70は、誤った種類の血液浄化器が取り付けられていると判定し、その警報を発する。
【0023】
本実施の形態によれば、光センサ51及び制御装置70により、分離回路13の液中の血漿成分を検知できるので、血液浄化器の付け間違いを検出できる。よって、目的に合った治療を適正に行うことができる。
【0024】
上記実施形態は、血液浄化装置1が限外濾過療法を行うものであったが、同様に血液中の血漿成分以外の主に水分や老廃物を分離する血液濾過器を用いる血液濾過療法、持続的血液濾過療法、血液透析療法、持続的血液透析療法、血液濾過透析療法および持続的血液濾過透析療法等を行う血液浄化装置にも本発明は適用できる。
【0025】
例えば血液濾過療法を行う血液浄化装置1は、例えば
図3に示すように補液回路80がドリップチャンバ40に接続され、補液回路80には、補液ポンプ81、補液貯留部82が設けられている。その他の構成は、上述の限外濾過療法を行う血液浄化装置1と同様であり、同じ構成については同じ符号を用いて説明を省略する。血液濾過療法では、血液処理の際に補液貯留部82から補液回路80を通じて補液が血液に補充される。かかる血液浄化装置1においても、正しく血液濾過器10が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に血漿成分が含まれず、誤って血漿分離器等が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に血漿成分が含まれるので、光センサ51及び制御装置70により、分離回路13の液中の血漿成分の有無を検出することにより、血液浄化器の付け間違いを検出できる。
【0026】
なお、持続的血液濾過療法を行う血液浄化装置1は、血液濾過療法を行う血液浄化装置1と比べるとポンプ流量が低い等の違いはあるものの、基本的な構成は同じである。
【0027】
血液透析療法を行う血液浄化装置1は、例えば
図4に示すように透析液回路90が血液濾過器10の中空糸膜20の二次側に接続され、透析液回路90には、透析液ポンプ91、透析液貯留部92が設けられている。血液透析療法では、血液処理の際に透析液貯留部92から透析液回路90を通じて、中空糸膜20の二次側に透析液が供給される。中空糸膜20の二次側に供給された透析液は、血液濾過器10で分離された主に水や老廃物と共に分離回路13を通じて排液される。かかる血液浄化装置1においても、正しく血液濾過器10が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に血漿成分が含まれず、誤って血漿分離器等が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に血漿成分が含まるので、光センサ51及び制御装置70により、分離回路13の液中の血漿成分の有無を検出することにより、血液浄化器の付け間違いを検出できる。
【0028】
なお、持続的血液透析療法を行う血液浄化装置1は、血液透析療法を行う血液浄化装置1と比べるとポンプ流量が低い等の違いはあるものの、基本的な構成は同じである。
【0029】
血液濾過透析療法を行う血液浄化装置1は、例えば
図5に示すように透析液回路90が血液濾過器10の中空糸膜20の二次側に接続され、補液回路80がドリップチャンバ40に接続されている。その他は、血液濾過療法を行う血液浄化装置1及び血液透析治療を行う血液浄化装置1と同様の構成を有している。血液濾過透析療法では、血液処理の際に透析液貯留部92から透析液回路90を通じて、中空糸膜20の二次側に透析液が供給される。中空糸膜20の二次側に供給された透析液は、血液濾過器10で分離された主に水や老廃物と共に分離回路13を通じて排液される。また、血液処理の際に補液貯留部82から補液回路80を通じて補液が血液に補充される。かかる血液浄化装置1においても、正しく血液濾過器10が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に血漿成分が含まれず、誤って血漿分離器等が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に血漿成分が含まれるので、光センサ51及び制御装置70により、分離回路13の液中の血漿成分の有無を検出することにより、血液浄化器の付け間違いを検出できる。
【0030】
持続的血液濾過透析療法を行う血液浄化装置1は、血液濾過透析療法を行う血液浄化装置1と比べるとポンプ流量が低い等の違いはあるものの、基本的な構成は同じである。
【0031】
以上の実施形態は、血液浄化装置1が、血液中の血漿成分以外の主に水分や老廃物を分離する血液濾過器を用いる療法を行うものであったが、本発明は、単純血漿交換療法、二重膜濾過血漿交換療法および血漿吸着療法などの血液中の血漿を交換する療法を行う血液浄化装置1にも適用できる。以下、かかる療法を行う血液浄化装置について説明する。
【0032】
図6に示す血液浄化装置1は、単純血漿交換療法を行うものである。かかる血液浄化装置1は、上述の
図3に示した血液濾過療法を行うものとほぼ同じ構成を有しているが、血液濾過器10の代わりに血液中の血漿を分離する血漿分離器100を有し、補液貯留部82の代わりに新鮮凍結血漿貯留部101を有している。血漿分離器100は、血液中の血漿を分離する分離膜として例えば中空糸膜20を有している。
【0033】
単純血漿交換療法では、患者の血液中の血漿が血漿分離器100により分離され、分離回路13を通じて廃液される。一方、新鮮凍結血漿貯留部101から補液回路80を通じて、血液中に新鮮凍結血漿が注入される。このとき、光センサ51により分離回路13の透過光量がモニタリングされ、その情報が制御装置70に出力され、制御装置70は、その透過光量の情報に基づいて、分離回路13の液中の血漿成分の有無を検出する。単純血漿交換療法において分離回路13で必ず検知されるはずの血漿成分が検出されなかった場合には、制御装置70は、誤った種類の血液浄化器が取り付けられていると判断し、その警報を発する。
【0034】
本実施の形態によれば、光センサ51及び制御装置70により、分離回路13の液中の血漿成分の有無を検出できるので、血液浄化器の付け間違いを検出できる。よって、目的に合った治療を適正に行うことができる。
【0035】
二重濾過血漿浄化療法を行う血液浄化装置1は、例えば
図7に示すように血漿分離器100の二次側と血漿成分分離器110の一次側が分離回路13によって接続されている。血漿成分分離器110は、血漿成分を分離する分離膜としての中空糸膜20を有している。血漿成分分離器110の一次側は、ドレイン回路111により廃液容器53に接続されている。ドレイン回路111には、ポンプ112が設けられ、分離回路13には、新たにドリップチャンバ113及び圧力センサ114が設けられている。血漿成分分離器110の二次側は、補液回路80に接続されている。二重濾過血漿浄化療法では、血液処理の際に患者の血液中の血漿が血漿分離器100により分離され、その血漿が血漿成分分離器110により、更に高分子成分と低分子成分に分離される。高分子成分は、ドレイン回路111を通じて廃液され、低分子成分は、補液回路80を通じて血液に戻される。また補液回路80の補液貯留部82から、低分子成分と共に補液が血液に供給される。かかる血液浄化装置1においても、正しく血漿分離器100が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に必ず血漿成分が含まれ、誤って血液濾過器が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に血漿成分が含まれないので、光センサ51及び制御装置70により、分離回路13の液中の血漿成分の有無を検出することにより、血液浄化器の付け間違いを検出できる。
【0036】
血漿吸着療法を行う血液浄化装置1は、例えば
図8に示すように分離回路13が血漿成分吸着器120に接続され、さらに血漿成分吸着器120が血漿返還回路121によりドリップチャンバ40に接続されている。この血漿吸着療法では、血液処理の際に患者の血液中の血漿が血漿分離器100により分離され、その血漿の所定成分が血漿成分吸着器120により吸着され、残りの血漿が血液に戻される。かかる血液浄化装置1においても、正しく血漿分離器100が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に必ず血漿成分が含まれ、誤って血液濾過器が取り付けられている場合には、分離回路13の液中に血漿成分が含まれないので、光センサ51及び制御装置70により、分離回路13の液中の血漿成分の有無を検出することにより、血液浄化器の付け間違いを検出できる。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得る事は明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0038】
例えば血液浄化装置1は、複数の血液浄化療法に応じた複数の血液浄化処理を行うものであってもよい。かかる場合、分離回路13の液に血漿成分が含まれる単純血漿交換療法、二重膜濾過血漿交換療法および血漿吸着療法などの血液浄化処理を行っている場合には、制御装置70は、分離回路13の液に血漿成分が検出されない時に警報を出力する。また、分離回路13の液に血漿成分が含まれない限外濾過療法、血液濾過療法、持続的血液濾過療法、血液透析療法、持続的血液透析療法、血液濾過透析療法および持続的血液濾過透析療法などの血液浄化処理を行っている場合には、制御装置70は、分離回路13の液に血漿成分が検出された時に警報を出力する。
【0039】
以上の実施の形態に記載した血液浄化装置1の構成はそれに限られない。血漿成分検出部が有無を検出する所定の血漿成分は、血漿を構成するものであれば特に限定されない。例えば所定の血漿成分は、蛋白質、糖質、脂質、その他無機イオン等であってもよい。
です。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、血液浄化器の付け間違いを検出可能な血液浄化装置を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 血液浄化装置
10 血液濾過器
11 脱血回路
12 返血回路
13 分離回路
20 中空糸膜
31 ドリップチャンバ
32 シリンジポンプ
33 入口圧センサ
40 ドリップチャンバ
41 気泡検知器
42 クランプバルブ
43 静脈圧センサ
50 濾過圧センサ
51 光センサ
52 ポンプ
53 廃液容器
60 発光部
61 受光部
62 支持部材
63 センサ制御部
70 制御装置
71 判定部
72 警報出力部
80 補液回路
81 補液ポンプ
82 補液貯留容器
90 透析液回路
91 透析液ポンプ
92 透析液貯留容器
100 血漿分離器
101 新鮮凍結血漿貯留部
110 血漿成分分離器
111 ドレイン回路
112 ポンプ
113 ドリップチャンバ
114 圧力センサ
120 血漿成分吸着器
121 血漿返還回路