(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導線を巻線してコイルを形成し、ステータコアの内歯に対応して円環状に配列された複数本のガイド棒を有するコイル保持具の前記ガイド棒の所定間隙にコイルを順次落とし込み、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が前記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にコイルをセットするコイル巻線・セット方法において、
導線を回転する巻枠に巻き付けてコイルを形成する巻線工程と、
前記コイル保持具を回転位置決めすると共に、前記巻枠に巻き付けられたコイルの両側が前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合するように前記巻枠を移動させる移動工程と、
コイルの両側を押し下げて前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に落とし込む落とし込み工程とを含み、
前記巻枠を、U相用、V相用、W相用の3組設け、各巻枠に導線を所定回数ずつ巻付けると共に、巻方向をコイル毎に交互に反転させて、各巻枠の下方から上方に向けて複数のコイルを形成し、各巻枠に巻き付けられたコイルの両側を、前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合させるように、各巻枠を交代でコイル保持具に移動させて、各相のコイルを1つずつ順次落とし込むようにし、
前記落とし込み工程の際、隣接するコイルの下になるコイルの一側を、前記と反対側に隣接するコイルの上に重なるコイルの他側に対して、より大きく下方に押し下げることにより、コイルを斜めにすることを特徴とするコイル巻線・セット方法。
前記巻枠を、前記コイル保持具のガイド棒の内径側に入る前方巻枠と、外径側に入る後方巻枠とで構成し、前記落とし込み工程の際、前記前方巻枠又は前記後方巻枠の一方を、他方に対して近接させて前記巻枠を縮径すると共に、コイルを押し下げるまでは、コイルの落下を防止するように、押さえ板を前記巻枠に押し付けてコイルを押さえるようにする請求項1記載のコイル巻線・セット方法。
導線を巻線してコイルを形成し、ステータコアの内歯に対応して円環状に配列された複数本のガイド棒を有するコイル保持具の前記ガイド棒の所定間隙にコイルを順次落とし込み、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が前記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にコイルをセットするコイル巻線・セット装置において、
前記コイル保持具と、
導線を供給する導線供給装置と、
それ自身が回転することによって導線供給装置から繰り出された導線を外周に巻き付けてコイルを形成する巻枠と、
該巻枠に巻き付けられたコイルの両側が、前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合するように前記巻枠を移動させる巻枠移動装置と、
前記巻枠に巻き付けられたコイルの両側を押し下げて、コイルを前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に落とし込む押下装置とを備え、
前記巻枠は、U相用、V相用、W相用の3組設けられ、各巻枠には、軸方向の途中に出没可能な反転用突起が設けられており、前記導線供給装置は、前記巻枠が回転して導線が巻き付けられるに従って上昇し、導線が所定回数巻き付けられて1つのコイルが形成されると、前記導線を前記反転用突起に引き掛けて、前記巻枠の回転が反転して導線が巻き付けられて次のコイルが形成されるように構成されており、
前記巻枠移動装置は、各巻枠に巻き付けられたコイルの両側を、前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合させるように、各巻枠を交代でコイル保持具に移動させ、前記押下装置によって各相のコイルを1つずつ順次落とし込むように構成されており、
前記反転用突起は、前記押下装置によってコイルを落とし込む際、前記巻枠内に引き込んで前記コイルが引っ掛からないように構成されており、
前記押下装置は、コイルの一側を押し下げる第1押下部と、コイルの他側を押し下げる第2押下部とを有し、第1押下部は、第2押下部よりも、より大きく下方にコイルを押し下げるように構成されていることを特徴とするコイル巻線・セット装置。
前記巻枠は、前記コイル保持具のガイド棒の内径側に入る前方巻枠と、外径側に入る後方巻枠とで構成され、前記押下装置によってコイルを落とし込む際、前記前方巻枠又は前記後方巻枠の一方が他方に対して近接して前記巻枠が縮径するように構成されており、
前記前方巻枠又は前記後方巻枠の一方が他方に対して近接した際に、コイルを前記巻枠に押し付けて自重で落下するのを防止する押さえ板が設けられている請求項3記載のコイル巻線・セット装置。
【背景技術】
【0002】
ステータコアにコイルを装着する方法としては、ステータコアの内歯に直接コイルを巻付ける直巻方法と、巻線したコイルをコイル挿入治具に保持させておき、コイル挿入装置によってステータコアのスロットに挿入するコイル挿入方法とが採用されている。
【0003】
しかしながら、従来のコイル挿入方法では、各磁極に対して同心巻きされたコイルしか形成できないので、そのようなステータコアを用いたモータは、周方向の起磁力密度が不均一になるという現象によってトルクムラが発生する。このトルクムラはモータの振動や騒音を発生させる原因となり、効率低下も起こす。
【0004】
このような問題を解決するため、ステータコアの端面から見たときコイル同士が螺旋状に重なった形態をなすステータ(以下「螺旋巻きステータ」とする)が知られている。このステータは、コイルエンドが短く、その高さが比較的均一でコンパクトな形状となると共に、モータとしたときのトルクムラが小さく、モータの振動や騒音を低減させることができるという優れた特性を有している。
【0005】
そして、このような螺旋巻きステータを作るため、下記特許文献1には、コイル保持具に、全体として螺旋状に重なり合った状態にコイルをセットする方法が提案されている。この方法は、コイル保持具に、最初にセットする開始側ステータコイルを基準として所定の一方向となるコイルセット方向に順次重ね合わせながらコイルをセットし、開始側ステータコイルの一方の片側のセット位置に対して他方の片側を同一位置又は超える位置にセットする終了側ステータコイルについては、当該ステータコイルを前記開始側ステータコイルに潜り込ませるようにしてセットすることを特徴としている。
【0006】
また、下記特許文献2には、コイル挿入装置を使用してステータコアに複数個のコイルを螺旋状に重ね合わせて装着するため、円環状に配列された複数本のガイド棒を有するコイル保持具を用いて、前記ガイド棒の間隙の所定の位置から、U相、V相、W相の各コイルを順番に、所定間隔で落とし込み、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定の間隙に入り、コイルの他側が上記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定の間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にコイルをセットするコイルセット方法において、前記ガイド棒の間隙の所定の位置からコイルを落とし込み始める際、最初のコイル及びそれに続くいくつかのコイルの他側であって、最後のコイル及びその前のいくつかのコイルの一側を落とし込む際に干渉するもの、及び前のコイルの他側が正規でない間隙に落とし込まれていて、正規の間隙に落とし込むと前のコイルの他側が抜き出せなくなるものについては、それらに干渉しない正規でない間隙に落とし込んでおき、最後のコイルが落とし込まれた後、正規でない間隙に落とし込まれた、最初のコイル及びそれに続くいくつかのコイルの他側を抜き出して正規の間隙に落とし込むことを特徴とするコイルセット方法が開示されている。
【0007】
一方、特許文献1、2に記載された方法で、コイル保持具に、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定の間隙に入り、コイルの他側が上記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定の間隙に入るようにコイルを落とし込んでいくと、コイルが次第に積み上がってしまい、コイル保持具として非常に長いものが必要となるという問題が生じることがわかった。
【0008】
このため、下記特許文献3には、導線を巻線してコイルを形成し、ステータコアの内歯に対応して円環状に配列された複数本のガイド棒を有するコイル保持具の前記ガイド棒の所定間隙にコイルを順次落とし込み、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が上記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にコイルをセットするコイル巻線・セット方法において、導線供給装置から供給される導線を巻線保持具の外周に所定回数ずつ巻付けて、該巻線保持具の長手方向に沿って複数のコイルを形成する巻線工程と、前記巻線保持具の外周に巻付けられたコイルの両側を押さえ板で押さえつつ、前記巻線保持具を縮径させて、コイルの一側が他側に対して低い位置になるように斜め掛けにするコイル傾斜工程と、前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に、斜め掛けされたコイルの一側を整合させて、該コイルの一側を前記ガイド棒の所定間隙に落とし込み、次いで必要に応じて前記コイル保持具を回転させ、前記コイル保持具のガイド棒の別の所定間隙に、斜め掛けされたコイルの他側を整合させて、該コイルの他側を前記ガイド棒の別の所定間隙に落とし込むコイル落とし込み工程とを含むことを特徴とするコイル巻線・セット方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献3に記載された方法では、巻枠を2つのパーツに分けて該2つのパーツを上下から組み合わせた状態で巻線し、巻線終了後に1つのパーツを下方に抜き出し、巻枠の外周に巻付けられたコイルの両側を押さえ板で押さえつつ、巻枠を縮径させて、コイルの一側が他側に対して低い位置になるように斜め掛けにしてコイルを挿入するようにしているが、巻枠の構造が複雑となり、全高の高い装置となるという問題があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、コイル保持具に、全体として螺旋状に重なり合った状態にコイルをセットする際、コイルが積み上がってしまわないように、比較的簡単な装置構造によって、コイルを斜めにして挿入できるようにしたコイル巻線・セット方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の1つは、導線を巻線してコイルを形成し、ステータコアの内歯に対応して円環状に配列された複数本のガイド棒を有するコイル保持具の前記ガイド棒の所定間隙にコイルを順次落とし込み、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が前記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にコイルをセットするコイル巻線・セット方法において、
導線を回転する巻枠に巻き付けてコイルを形成する巻線工程と、
前記コイル保持具を回転位置決めすると共に、前記巻枠に巻き付けられたコイルの両側が前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合するように前記巻枠を移動させる移動工程と、
コイルの両側を押し下げて前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に落とし込む落とし込み工程とを含み、
前記落とし込み工程の際、隣接するコイルの下になるコイルの一側を、前記と反対側に隣接するコイルの上に重なるコイルの他側に対して、より大きく下方に押し下げることにより、コイルを斜めにすることを特徴とするコイル巻線・セット方法を提供するものである。
【0013】
上記発明によれば、巻枠に導線を巻付けてコイルを形成した後、コイル保持具を回転位置決めすると共に、巻枠に巻き付けられたコイルの両側がコイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合するように巻枠を移動させ、コイルの両側を押し下げてコイル保持具のガイド棒の所定間隙に落とし込む際、隣接するコイルの下になるコイルの一側を、前記と反対側に隣接するコイルの上に重なるコイルの他側に対して、より大きく下方に押し下げることにより、コイルを斜めにするようにしたので、巻枠を上下2つのパーツに分けて組合せる必要がなくなり、巻枠の構造が簡略化されると共に、装置の全高が増大してしまうのを抑制することができる。また、巻枠に巻付けられたコイルをそのままコイル保持具に落とし込むので、コイルの配列も乱れにくくなる。
【0014】
上記発明においては、前記巻枠を、U相用、V相用、W相用の3組設け、各巻枠に導線を所定回数ずつ巻付けると共に、巻方向をコイル毎に交互に反転させて、各巻枠の下方から上方に向けて複数のコイルを形成し、各巻枠に巻き付けられたコイルの両側を、前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合させるように、各巻枠を交代でコイル保持具に移動させて、各相のコイルを1つずつ順次落とし込むことが好ましい。
【0015】
上記態様によれば、U相用、V相用、W相用の各巻枠を交代でコイル保持具に移動させて、各相のコイルを1つずつ順次落とし込むようにしたので、同相のコイルの渡り線が、異相のコイルを挿入する際に干渉することを防止できる。
【0016】
また、上記発明においては、前記巻枠を、前記コイル保持具のガイド棒の内径側に入る前方巻枠と、外径側に入る後方巻枠とで構成し、前記落とし込み工程の際、前記前方巻枠又は前記後方巻枠の一方を、他方に対して近接させて前記巻枠を縮径すると共に、コイルを押し下げるまでは、コイルの落下を防止するように、押さえ板を前記巻枠に押し付けてコイルを押さえるようにすることが好ましい。
【0017】
上記態様によれば、落とし込み工程の際、前方巻枠又は後方巻枠の一方を、他方に対して近接させて前記巻枠を縮径することにより、コイルの落とし込みをスムーズに行えると共に、押え板によってコイルの落下を防止することにより、巻枠に巻付けられたコイルの両側がコイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合して落とし込み操作が開始するまでは、コイルが自重で落下しないようにすることができる。
【0018】
一方、本発明のもう1つは、導線を巻線してコイルを形成し、ステータコアの内歯に対応して円環状に配列された複数本のガイド棒を有するコイル保持具の前記ガイド棒の所定間隙にコイルを順次落とし込み、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が前記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にコイルをセットするコイル巻線・セット装置において、
前記コイル保持具と、
導線を供給する導線供給装置と、
それ自身が回転することによって導線供給装置から繰り出された導線を外周に巻き付けてコイルを形成する巻枠と、
該巻枠に巻き付けられたコイルの両側が、前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合するように前記巻枠を移動させる巻枠移動装置と、
前記巻枠に巻き付けられたコイルの両側を押し下げて、コイルを前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に落とし込む押下装置とを備え、
前記押下装置は、コイルの一側を押し下げる第1押下部と、コイルの他側を押し下げる第2押下部とを有し、第1押下部は、第2押下部よりも、より大きく下方にコイルを押し下げるように構成されていることを特徴とするコイル巻線・セット装置を提供するものである。
【0019】
上記発明によれば、押下装置により、コイルの両側を押し下げてコイル保持具のガイド棒の所定間隙に落とし込む際、第1押下部を、第2押下部よりも、より大きく下方にコイルを押し下げることにより、隣接するコイルの下になるコイルの一側を、前記と反対側に隣接するコイルの上に重なるコイルの他側に対して、より大きく下方に押し下げて、コイルを斜めにすることができる。また、巻枠を上下2つのパーツに分けて組合せる必要がなくなるので、巻枠の構造が簡略化されると共に、装置の全高が増大してしまうのを抑制することができる。更に、巻枠に巻付けられたコイルをそのままコイル保持具に落とし込むので、コイルの配列も乱れにくくなる。
【0020】
上記発明においては、前記巻枠は、U相用、V相用、W相用の3組設けられ、各巻枠には、軸方向の途中に出没可能な反転用突起が設けられており、前記導線供給装置は、前記巻枠が回転して導線が巻き付けられるに従って上昇し、導線が所定回数巻き付けられて1つのコイルが形成されると、前記導線を前記反転用突起に引き掛けて、前記巻枠の回転が反転して導線が巻き付けられて次のコイルが形成されるように構成されており、前記巻枠移動装置は、各巻枠に巻き付けられたコイルの両側を、前記コイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合させるように、各巻枠を交代でコイル保持具に移動させ、前記押下装置によって各相のコイルを1つずつ順次落とし込むように構成されており、前記反転用突起は、前記押下装置によってコイルを落とし込む際、前記巻枠内に引き込んで前記コイルが引っ掛からないように構成されていることが好ましい。
【0021】
上記態様によれば、U相用、V相用、W相用の各巻枠を交代でコイル保持具に移動させて、各相のコイルを1つずつ順次落とし込むようにしたので、同相のコイルの渡り線が、異相のコイルを挿入する際に干渉することを防止できる。
【0022】
また、前記巻枠は、前記コイル保持具のガイド棒の内径側に入る前方巻枠と、外径側に入る後方巻枠とで構成され、前記押下装置によってコイルを落とし込む際、前記前方巻枠又は前記後方巻枠の一方が他方に対して近接して前記巻枠が縮径するように構成されており、前記前方巻枠又は前記後方巻枠の一方が他方に対して近接した際に、コイルを前記巻枠に押し付けて自重で落下するのを防止する押さえ板が設けられていることが好ましい。
【0023】
上記態様によれば、落とし込み工程の際、前方巻枠又は後方巻枠の一方を、他方に対して近接させて前記巻枠を縮径することにより、コイルの落とし込みをスムーズに行えると共に、押え板によってコイルの落下を防止することにより、巻枠に巻付けられたコイルの両側がコイル保持具のガイド棒の所定間隙に整合して落とし込み操作が開始するまでは、コイルが自重で落下しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明によるコイル巻線・セット装置の一実施形態を示す、装置全体の概略正面図である。
【
図2】同コイル巻線・セット装置の装置全体の概略平面図である。
【
図3】同コイル巻線・セット装置の要部を示す斜視図である。
【
図4】同コイル巻線・セット装置の要部を示す、角度を変えて見た斜視図である。
【
図5】同コイル巻線・セット装置における、巻枠、巻枠移動装置、コイルの押下装置を示す斜視図である。
【
図6】同コイル巻線・セット装置における、巻枠を示す説明図であり、(a)は巻線時の状態を示す斜視図、(b)コイル落とし込み時の状態を示す斜視図、(c)コイル落とし込み時の状態を示す側面図である。
【
図7】同コイル巻線・セット装置における、巻枠に導線を巻付けてコイルを形成した状態を示す斜視図である。
【
図8】同コイル巻線・セット装置における、巻枠に巻付けられたコイルを押さえて縮径させる状態を示す説明図であり、(a)は巻枠に導線を巻付けてコイルを形成した状態、(b)はコイルを押さえ板で押さえた状態、(c)は巻枠を縮径させた状態を、それぞれ示す斜視図である。
【
図9】同コイル巻線・セット装置における、コイルの押下装置を示す斜視図である。
【
図10】同コイル巻線・セット装置における、コイルの押下装置の動作を示す説明図であり、(a)は巻枠がコイル保持具に移動する前の状態、(b)は巻枠がコイル保持具に移動して、第1押下部及び第2押下部が閉じた状態、(c)第1押下部及び第2押下部が下降した状態、(d)は、第1押下部が第2押下部よりも、更に大きく下降した状態を、それぞれ示す斜視図である。
【
図11】同コイル巻線・セット装置における、巻枠の移動並びにコイルの押下装置の動作を示す説明図である。
【
図12】同コイル巻線・セット装置における巻枠移動装置により、U相の巻枠をコイル保持具に移動させた状態を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【
図13】同コイル巻線・セット装置における巻枠移動装置により、W相の巻枠をコイル保持具に移動させた状態を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【
図14】同コイル巻線・セット装置の動作を示す説明図であり、(a)は巻枠をコイル保持具に移動させる前の状態、(b)は巻枠をコイル保持具に移動させた状態を、それぞれ示す斜視図である。
【
図15】同コイル巻線・セット装置の動作を示す説明図であり、(a)は巻枠に巻付けられたコイルの両側がコイル保持具のガイド棒の所定の間隙に整合した状態、(b)は押下装置の第1押下部及び第2押下部を閉じた状態、(c)は第1押下部及び第2押下部が下降してコイルの両側がコイル保持具のガイド棒の所定の間隙に挿入された状態、(d)は第1押下部が第2押下部よりも、更に大きく下降して、コイルの一側が他側に比べてより大きく下方に押し下げられ、コイルが斜めに挿入された状態を、それぞれ示す斜視図である。
【
図16】同コイル巻線・セット装置の動作を示す説明図であり、(a)は第1押下部及び第2押下部が下降してコイルの両側がコイル保持具のガイド棒の所定の間隙に挿入された状態、(b)は第1押下部が第2押下部よりも、更に大きく下降して、コイルの一側が他側に比べてより大きく下方に押し下げられ、コイルが斜めに挿入された状態を、それぞれ拡大して示す斜視図である。
【
図17】同コイル巻線・セット装置の動作を示す説明図であり、(a)はコイルの押下が終了した状態、(b)は第1押下部及び第2押下部は動かずに巻枠のみが上昇した状態、(c)は第1押下部及び第2押下部が開いた状態、(d)押下装置が上昇した状態を、それぞれ示す斜視図である。
【
図18】同コイル巻線・セット装置において、U相のコイルを挿入した後、V相用の巻枠が移動した状態を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図19】本発明の方法により、U相、V相、W相の各コイルを、コイル保持具に挿入した状態を示す斜視図である。
【
図20】同コイル巻線・セット装置における巻枠移動装置と押え板とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明によるコイル巻線・セット装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1、
図2には、同コイル巻線・セット装置の全体の概略構成が示されている。
【0027】
このコイル巻線・セット装置10は、基台11を有し、基台11上には、複数の支柱15を介して天板16が支持されている。なお、
図2は、天板16を省略して示した図である。基台11上には、回転台12を介して、コイル保持具13が設置されている。コイル保持具13は、所定間隔で環状に配列されて立設された複数本のガイド棒14を有する。このガイド棒14は、通常は、適用されるステーコアの内歯に対応する間隔で配置されている。
【0028】
コイル保持具13の上方には、天板16に支持された巻枠移動装置20を介して巻枠21が設置されている。また、それに隣接して、同じく天板16に支持された押下装置25が設置されている。押下装置25は、巻枠移動装置20に巻付けられたコイルC(図支柱15参照)を、コイル保持具13のガイド棒14の所定の間隙に落とし込むためのものである。
【0029】
また、巻枠21の側方には、天板16から垂下するように支持された昇降ガイド22を介して、導線供給装置23が昇降可能に設けられている。導線供給装置23には、図示しない導線リールから導線が供給され、導線はノズル24から導出するようになっている。
【0030】
図3に示すように、巻枠移動装置20は、天板16上に支持された支持板26を有している。
図4及び
図20に示すように、支持板26には、ガイドレール29を介して、スライドベース30が支持板26の長手方向に沿って、図示しない駆動機構によって、スライド可能に装着されている。スライドベース30には、昇降動作する昇降ベース31が取付けられており、この昇降ベース31を貫通して伸びる支軸33を介して、巻枠21が回転可能に取付けられている。巻枠21は、昇降ベース31の昇降動作に伴って昇降動作する。昇降ベース31の昇降は、昇降ベース31上に支持された昇降用エアシリンダ34によってなされ、巻枠21の回転は、昇降ベース31上に支持された巻枠回転用モータ32によってなされる。
【0031】
そして、この実施形態では、
図4に示すように、巻枠21として、U相用巻枠21U、V相用巻枠21V、W相用巻枠21Wが設けられており、それぞれ独立した巻枠移動装置20によって支持され、独立して移動可能かつ回転可能とされている。
【0032】
押下装置25は、天板16上に取付けられた支持板27を介して、コイル保持具13の上方に位置するように配置されている。
【0033】
図6に示すように、巻枠21は、前方巻枠35と後方巻枠36とによって構成されている。前方巻枠35と後方巻枠36の間の空間には、図示しないコイル保持具13のガイド棒14が入り込むようになっている。前方巻枠35は、支軸40を介して、後方巻枠36に対して傾動可能に取付けられており、図示しない駆動機構により、同図(c)に示すように内側に傾いて、巻枠21を縮径できるようにされている。前方巻枠35には、孔38を介して、反転用突起37が出没可能に取付けられている。孔38,反転用突起37は、前方巻枠35の長手方向に沿って、所定間隔で複数(この実施形態では2つ)配置されている。前方巻枠35が後方巻枠36に対して近接するように傾動し、巻枠21が縮径する際、反転用突起37は前方巻枠35の外表面から突出しないように、孔38内に没するようになっている。
【0034】
巻枠21への導線41の巻線は、
図1における導線供給装置23のノズル24から繰り出された導線41の端部を、巻枠21の下端部に固定し、その状態で、巻枠21を回転させることによってなされる。このとき、導線供給装置23を昇降ガイド22に沿って徐々に上昇させることにより、導線41を一列に巻付けてコイルCを形成することができる。
【0035】
そして、巻枠21を所定回数回転させて、1つのコイルCが形成されたら、
図7に示すように、導線41を反転用突起37に引き掛けて、巻枠21を逆方向に回転させて、次のコイルCを形成する。こうして、複数のコイルCを、交互に巻方向を変えて、巻枠21の上方に向かって順次形成することができる。
【0036】
図8に示すように、巻枠21は、支軸44を介して回転可能に支持されている。支軸44には、ガイド棒43を介して、巻枠21とほぼ平行に押さえ板39が取付けられている。押さえ板39のガイド棒43は、支軸44に装着されたガイドブロック45ガイドブロック45に挿通され、ガイド棒43に沿ってスライドし、巻枠21の後方巻枠36に対して当接離反可能とされている。そして、押え板39は、図示しない引張スプリングで、常にガイドブロック45側に引き寄せられるように付勢されている。
【0037】
図20に示すように、支持板26には、ストッパ49が取付けられており、スライドベース30がガイドレール29に沿って支持板26の基端側に移動した状態では、ガイド棒43がストッパ49に押圧され、上記引張スプリングに抗して押え板39が押し出され、押え板39が巻枠21から離れるようになっている。したがって、この状態で、巻枠21への巻線が可能とされている。
【0038】
また、スライドベース30がガイドレール29に沿って支持板26の先端側に移動した状態では、ガイド棒43がストッパ49から離れ、上記引張スプリングにより、押え板39がガイドブロック45側に引き寄せられ、押え板39が巻枠21に押し付けられて、巻枠21に巻線されたコイルCが落下しないようにされる。 そして、
図8(a)に示すように、巻枠21にコイルCが巻線され、コイルCをコイル保持具13のガイド棒14の所定の間隙に落とし込む際には、同図(b)に示すように、押さえ板39でコイルCを押え、その状態で、同図(c)に示すように、後方巻枠36に近づくように前方巻枠35を傾動させて、巻枠21を縮径させる。このとき、前述したように、反転用突起37は、前方巻枠35の外表面から突出しないように、その内部に没する。押さえ板39でコイルCを押さえることにより、後述する押下装置25によりコイルCを押し下げるまでは、コイルCが自重で落下することを防止できる。
【0039】
図9に示すように、押下装置25は、天板16(
図4参照)に支持された支持板27から垂下する複数本のガイド棒46を介して取付けられた昇降ベース47を有する。そして、昇降ベース47の下面中央部から支持棒48が垂下して延出されており、この支持棒48に開閉板50,51が回動可能に取付けられている。すなわち、開閉板50の基部50a、開閉板51の基部51aが上下に配置され、それらを貫通するように支持棒48が伸びており、開閉板50,51は、支持棒48を中心にして開閉可能とされている。開閉板50,51の開閉動作は、図示しない駆動機構によってなされる。開閉板50,51の内面側には、複数のピン52が立設されている。このピン52は、巻枠21の外周に巻付けられたコイルCを押し下げるためのものである。
【0040】
また、開閉板50の外面側には、先端部を下方に延出された第1押下部53が、図示しないエアシリンダ等の駆動機構によって上下方向にスライド可能に取付けられている。同様に、開閉板51の外面側には、先端部を下方に延出された第2押下部54が、図示しないエアシリンダ等の駆動機構によって上下方向にスライド可能に取付けられている。第1押下部53、第2押下部54が下方にスライドするとき、第1押下部53は、第2押下部54よりもより下方に延出されるようになっている。第1押下部53、第2押下部54の先端には、コイルCを押し下げるためのピン52が取付けられている。
【0041】
図10は、押下装置25の動作を示している。同図(a)に示すように、開閉板50,51は、開いた状態で、巻枠21が移動してくるのを待っている。同図(b)に示すように、巻枠21が移動して所定の位置に配置されると、開閉板50,51が閉じる。これによって、開閉板50,51の内面側に立設されたピン52が、巻枠21の両側面に近接し、巻枠21に巻付けられた個々のコイルC(
図7参照)の上部に係合する位置に配置される。その状態で、同図(c)に示すように、昇降ベース47が下降して、最上段のコイルCは2段目、2段目のコイルCは最下段、最下段のコイルCはコイル保持具13に移動する。すなわち、この状態で最下段のコイルCがコイル保持具13のガイド棒14の所定の間隙に挿入される。次いで、同図(d)に示すように、第1押下部53、第2押下部54が下方にスライドし、コイル保持具13に挿入されたコイルCを更に下方に押し込む。このとき、第1押下部53が第2押下部54よりも、より大きく下方にスライドすることにより、コイルCの一側が他側に比べてより大きく下方に移動し、コイルCが斜めに挿入されることになる。
【0042】
図11は、U相用巻枠21U、V相用巻枠21V、W相用巻枠21Wが、コイル保持具13のガイド棒14の所定の間隙に整合する位置に、順次移動する状態、並びにその状態で開閉板50,51が閉じる状態を示している。それぞれの巻枠21は、その両側面に上下方向に伸びる溝55を有しており、開閉板50,51が閉じるとき、それらの内側面に突設されたピン52が、対応する溝55に挿入されるようになっている。これにより、ピン52が対応するコイルCの上部に確実に係合するようにされている。U相用巻枠21U、V相用巻枠21V、W相用巻枠21Wは、コイル落とし込み位置に順次移動して、交代しながらコイルCを落とし込むようになっている。その際、コイル保持具13は、回転台12(
図3参照)により回動して、ガイド棒14の所定の間隙が巻枠21の両側面に整合するように位置決めされる。
【0043】
なお、例えば、前記特許文献2(特開2012−239323号公報)に記載されたコイルセット方法に適用する場合には、
図10の(c)の工程において、最下段のコイルCが巻枠21の最下端に位置するようにし、まず、第1押下部53だけを下方にスライドさせて、コイルCの一側をガイド棒14の所定の間隙に挿入し、その状態で、コイル保持具13を回動させて、コイルCの他側がガイド棒14の別の任意の間隙に整合するように位置決めし、次いで、第2押下部54を下方にスライドさせることにより、コイルCの他側を別の任意の間隙に挿入することができる。このように、コイルCの両側の挿入位置は、巻枠21の幅で定められる2つの間隙に限定されず、コイルCの一側だけを先に所定の間隙に挿入し、その状態でコイル保持具13を回動させて、コイルCの他側を挿入することにより、コイルCの両側の挿入位置を任意に設定することが可能である。
【0044】
図12は、U相用巻枠21Uをコイル保持具13のガイド棒14の所定の間隙に整合するように移動させた状態を示している。すなわち、支持板26に設けられたガイドレール29に沿ってスライドベース30をコイル保持具13方向に向けてスライドさせ、U相用巻枠21Uを上方に位置させる。その状態で、U相用巻枠21Uを回転させ、前記
図11に示した状態となるように、U相用巻枠21Uを配置させる。そして、U相用巻枠21Uに巻付けられた最下段のコイルCをコイル保持具13に挿入した後、後述する態様で、U相用巻枠21Uは、再び元の位置に戻る。
【0045】
図13は、W相用巻枠21Wをコイル保持具13のガイド棒14の所定の間隙に整合するように移動させた状態を示している。すなわち、支持板26に設けられたガイドレール29に沿ってスライドベース30をコイル保持具13方向に向けてスライドさせ、W相用巻枠21Wを上方に位置させる。その状態で、W相用巻枠21Wを回転させ、前記
図11に示した状態となるように、W相用巻枠21Wを配置させる。そして、W相用巻枠21Wに巻付けられた最下段のコイルCをコイル保持具13に挿入した後、後述する態様で、W相用巻枠21Wは、再び元の位置に戻る。
【0046】
なお、V相用巻枠21Vも上記と同様な態様で移動がなされる。U相用巻枠21U、V相用巻枠21V、W相用巻枠21Wは、順番にコイル保持具13の上方に移動し、それぞれのコイルCを順番にコイル保持具13に落とし込むようになっている。
【0047】
次に、このコイル巻線・セット装置10を用いた、本発明によるコイル巻線・セット方法の一実施形態を説明する。
【0048】
(巻線工程)
図1に示すように、図示しない導線リールから繰り出された導線41を、導線供給装置23に供給し、ノズル24から導出させて、巻枠21の下端部に固定する。その状態で、巻枠21を回転させつつ、導線供給装置23を昇降ガイド22に沿って徐々に上方に移動させて、導線41を巻枠21の外周に巻付けてコイルCを形成する。なお、導線供給装置23に供給され、ノズル24から導出される導線41は、1本の導線であってもよいが、複数本の導線を並列させたパラ線であってもよい。
【0049】
このとき、
図7に示すように、1つのコイルCが巻き終わったら、導線41を反転用突起37に引き掛け、巻枠21の回転方向を反対にして次のコイルCの巻線を行う。コイルCに引き掛けられた部分は、次のコイルCへの渡り線42となる。こうして、複数(この実施形態では3つ)のコイルCを、巻枠21の長手方向に沿って巻線する。
【0050】
上記巻線作業は、U相用巻枠21U、V相用巻枠21V、W相用巻枠21Wのそれぞれについて順次行ってもよく、導線供給装置23を複数設けて、それぞれの巻枠21に対して同時に行ってもよい。
【0051】
(移動工程)
こうして巻線がなされたら、コイル保持具13へのコイルCの落とし込みを行うべき巻枠21が、コイル保持具13の上方に移動する。すなわち、
図14に示すように、ガイドレール29に沿ってスライドベース30がスライドし、コイル保持具13の上方に巻枠21が移動する。そして、巻枠21が所定角度回動し、
図11に示したように、巻枠21に巻付けられたコイルCの両側が、コイル保持具13のガイド棒14の所定の間隙に整合するように位置決めされる。更に、昇降ベース31(
図14参照)が下降して、巻枠21の下端部に、コイル保持具13のガイド棒14の上端が挿入される位置まで移動する。
【0052】
(落とし込み工程)
図15(a)は、こうして巻枠21が移動した状態を示している。この状態で、同図(b)に示すように、開閉板50,51が閉じ、
図11で示したように、開閉板50,51の内面のピン52が溝55に挿入される。そして、それぞれのピン52は、
図7で示したコイルCの上方に位置する。
【0053】
この状態で、
図6(b)、(c)に示したように、前方巻枠35を後方巻枠36に近接するように傾動させて、巻枠21を縮径させ、反転用突起37を巻枠21の内部に引き込ませて、コイルCが引き掛からないようにする。また、
図8に示した押さえ板39を後方巻枠36に押し付けて、コイルCが自重で落下してしまわないようにする。
【0054】
次いで、
図15(c)に示すように、昇降ベース47が下降し、最上段のコイルCは2段目、2段目のコイルCは最下段、最下段のコイルCはコイル保持具13に移動する。すなわち、この状態で最下段のコイルCがコイル保持具13のガイド棒14の所定の間隙に挿入される。
図16(a)は、この状態を拡大して示している。
【0055】
次いで、
図15(d)に示すように、第1押下部53、第2押下部54が下方にスライドし、コイル保持具13に挿入されたコイルCを更に下方に押し込む。
図16(b)は、この状態を拡大して示している。このとき、第1押下部53が第2押下部54よりも、より大きく下方にスライドすることにより、コイルCの一側が他側に比べてより大きく下方に移動し、コイルCが斜めに挿入される。斜めに挿入されたコイルCの一側には、隣接するコイルCの他側が重なり、斜めに挿入されたコイルCの他側は、それとは反対側に隣接するコイルCの一側の上に重なることになる。その結果、コイルCを順次落とし込んで全体として螺旋状に重なり合わせても、コイルCが上方に積み上がってしまうことを防止できる。
【0056】
図17(a)は、こうしてコイルCの落とし込みが終了した状態を示している。この状態で、同図(b)に示すように、昇降ベース31(
図14参照)が上昇し、巻枠21だけが上昇して、その下端がコイル保持具13から離れる。このとき、押下装置25は動かないので、挿入されたコイルCが上方に引き上げられるのを防止できる。
【0057】
次いで、
図17(c)に示すように、開閉板50,51が開き、開閉板50,51のピン52が、巻枠21の溝55から抜き出され、コイルCに干渉しない状態となる。そして、同図(d)に示すように、昇降ベース47が上昇し、第1押下部53、第2押下部54が上方にスライドして、押下装置25は、待機状態に戻る。
【0058】
このような移動工程、落とし込み工程を、U相用巻枠21U、V相用巻枠21V、W相用巻枠21Wのそれぞれについて、順番に行い、U相のコイルC、V相のコイルC、W相のコイルCを、コイル保持具13のガイド棒14の対応する間隙に、順番に落とし込んでいく。
【0059】
図18は、U相のコイルCを落とし込んだ後、U相用巻枠21Uを元の位置に復帰させて、V相用巻枠21Vをコイル保持具13の上方に移動した状態を示している。このとき、U相用巻枠21Uにおいては、コイル保持具13に先に落とし込まれたコイルCと、U相用巻枠21Uに残るコイルCとの間で渡り線42が連結された状態となる。そして、この実施形態では、U相用巻枠21U、V相用巻枠21V、W相用巻枠21Wを交代でコイル保持具13上に移動させるので、
図18(b)に示すように、コイル保持具13に先に落とし込まれたコイルCと、U相用巻枠21Uに残るコイルCとを連結する渡り線42が、コイル保持具13の外径方向に延出される。このため、次に挿入するV相用巻枠21Vに巻付けられたコイルCをコイル保持具13に落とし込む際に干渉しないようにすることができる。
【0060】
こうして、U相のコイルC、V相のコイルC、W相のコイルCを、コイル保持具13のガイド棒14の対応する間隙に、順番に落とし込んだ状態が、
図19に示されている。図中、U−1はU相の1番目に落とし込まれたコイルC、U−2はU相の2番目に落とし込まれたコイルC、U−3はU相の3番目に落とし込まれたコイルCを表しており、V−1、V−2、V−3、W−1、W−2、W−3も同様である。
【0061】
このように、U相のコイルC、V相のコイルC、W相のコイルCが順番に落とし込まれて、コイルCの一側が隣接するコイルCの下になって所定間隙に入り、コイルCの他側が前記と反対側に隣接するコイルCの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態になる。そして、同相のコイルCを連結する導線41は、他相のコイルCと干渉しないように引き出された状態となっている。
【0062】
なお、
図19では、コイル保持具13のガイド棒14の一部にコイルCが落とし込まれた状態となっているが、実際には、コイル保持具13の全周にコイルCが落とし込まれることになる。落とし込み始めのコイルCに対して、落とし込み終わりのコイルCをそのまま落とし込むと、その部分だけ螺旋状に重ならなくなるが、その部分は、例えば、前記特許文献1(特開2007−336720号公報)や、特許文献2(特開2012−239323号公報)に記載された方法や、その他の方法によって、螺旋状に重なるようにすればよい。
【0063】
こうしてコイル保持具13のガイド棒14の所定の間隙に挿入されて、全体として螺旋状に重なり合った状態にセットされたコイルCは、図示しないコイル挿入装置により、ステータコアのスロットに挿入されることになる。この場合、コイル保持具13がコイル挿入治具をなす場合には、そのままコイル挿入装置に設置して挿入作業をすることができ、コイル保持具13がトランスファーツールである場合には、セットされたコイルCをコイル挿入治具に移し替えて、コイル挿入装置に設置して挿入作業をすればよい。このようなコイル挿入作業については、前述した特許文献2(特開2012−239323号公報)に記載されているので、その説明を省略することにする。
【0064】
そして、全体として螺旋状に重なり合った状態にセットされたコイルCを挿入して得られるステータは、コイルエンドが短く、その高さが比較的均一でコンパクトな形状となると共に、モータとしたときのトルクムラが小さく、モータの振動や騒音を低減させることができるという優れた特性が付与される。