(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、ボルト、ナット等の締結部材を所定のトルクで締め付けた際に、マーカにより締結部材をマーキングするマーカ付きトルクレンチが提供されている(特許文献1)。マーカ付きトルクレンチを使用して締結部材を締め付けることにより、締付後の締結部材には所定位置にマーキングが施されるので、締付忘れを防止することができる。
【0003】
特許文献1に開示のトルクレンチは、ソケット内に配置されたマーカがボルトの軸方向に沿って移動し、ボルトの頭部あるいはボルトの軸部の端面にマーカのペン先が当たってマーキングを施す。
【0004】
一方、油圧配管の継ぎ手等において、継ぎ手に設けた締付用ナットを締め付ける場合、締付用ナットに締め付け工具を装着する際に、継ぎ手等に接続される配管が障害とならないスパナを用いるのが一般的である。
【0005】
ところで、スパナ型ヘッドを備えたトルクレンチにおいて、締付トルクが設定トルクに達すると、締付忘れを防止するために印字するマーカを備えることが要望される。
【0006】
しかし、スパナによって締め付けられるナット等の締付部材には、締付部材の軸方向に沿って前述のように配管等の取り付け部材が存在する。このため、特許文献1のようにマーカがボルト等の締付部材の軸方向に沿って移動する構成では、マーキングすることができない。
【0007】
前記ソケットは、締結部材の外周面に係合すると共に、締結部材を覆う筒形状に形成される。これに対し、スパナは締結部材の外周面に係合し、締結部材の側面から係合する開口部を備える。このような、締結部材の外周面に係合するが締結部材を覆わない形状のレンチとしては、リング形状に形成されためがね型レンチ、フレア型レンチ(6面を持つめがねレンチから1面を取り去って5面でボルト・ナットを保持するレンチ)、ノッチ型レンチ(ラチェット型レンチ)等がある。このように非締結部材を覆う筒部のない構成のレンチも、スパナと同様に、特許文献1のようにマーカがボルト等の締付部材の軸方向に沿って移動する構成では、マーキングすることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、スパナ型ヘッド、めがね型ヘッド等のように、締結部材を覆う筒部のないヘッドにより締結部材を設定トルクに締め付けた際に、被マーキング位置にマーカを移動させてマーキングを行うことができるトルクレンチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第1の構成は、ハンドル部の先端に設けられ、開口部を通して締結部材に挿入されて係合し、または締結部材に環状の係合部が装入されて係合するヘッド部と、前記ヘッド部により
前記締結部材を締め付け
るトルク値が設定トルク値に達するのに同期して、マーカを退避位置からマーキング位置に向けて移動し、マーキング対象物に対して前記マーカによりマーキングを行わせるマーカ駆動部と、を有
する。前記マーカ駆動部は、押し出しロッドと、レバーと、伝達プレートと、昇降リンク部材と、押し出しリンク部材とを有する。押し出しロッドは、先端に前記マーカが取り付けられ、前記ヘッド部に形成されたガイドに沿って直進移動することにより、前記マーカを前記退避位置から前記マーキング位置に押し出す。レバーは、前記ヘッド部により前記締結部材を締め付けるトルク値が前記設定トルク値に達したときにトルク制限動作を実行するトルクリミッタの動作を受けて、前記ハンドル部の長手方向に延びる支軸を中心に回転する。伝達プレートは、前記ハンドル部の外面に回転可能に連結された基端部と、前記レバーの回転を受けて下方に移動する先端部とを含む。昇降リンク部材は、前記伝達プレートの前記先端部に支軸を介して回動可能に連結されている。押し出しリンク部材は、前記伝達プレートの前記先端部の移動に伴う前記昇降リンク部材の下降動作を、前記マーキング位置への前記押し出しロッドの移動に変換する。
【0012】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
2の構成は、上記した第
1の構成において、
前記マーカ駆動部は、前記押し出しロッドを前記マーキング位置に向けて付勢する押し出しバネと、前記押し出しロッドを前記退避位置に向けて付勢する戻しバネと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
3の構成は、上記した第
2の構成において、前記
押し出しロッドは、
この後端部
において、直列に配置した前記押し出しバネと前記戻しバネとの間に配置
されるバネ受けフランジ部
を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
4の構成は、上記した第
2の構成において、
前記押し出しロッドの後端部
は、直列に配置した前記押し出しバネと前記戻しバネとの間に配置
されるバネ受けフランジ部に
対して、取り外し可能な固定手段により固定されることを特徴とする。
【0015】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
5の構成は、上記した第
4の構成において、前記固定手段は、前記
押し出しロッドの後端部と前記バネ受けフランジ部とを磁力により取り外し可能に磁着することを特徴とする。
【0016】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
6の構成は、上記したいずれかの構成において、前記
押し出しロッドの後端部に、前記
押し出しロッドの移動方向に沿って長さ調節が可能な長さ調節部材を設けたことを特徴とする。
【0018】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
7の構成は、上記した
いずれかの構成において、
前記押し出しロッドの先端部に形成されたネジ孔と係合し、前記押し出しロッドの先端部に対する前記マー
カの取り付け位置を調節可能と
する取り付けネジを有することを特徴とする。
【0019】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
8の構成は、上記した第1から第
6のいずれかの構成において、
前記押し出しロッドは筒形状に形成
されており、
前記押し出しロッドの先端から前記押し出しロッドの内部に前記マー
カを抜き差し可能に装着したことを特徴とする。
【0020】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
9の構成は、上記した
いずれかの構成において、
前記マーカは、前記マーキング対象物に当接することによりマーキングを行うマーカ本体部と、前記マーカ本体部を保持するマーカホルダとを有しており、前記マーカホルダ
は、前記マーカ本体部を前記
押し出しロッドの移動方向の軸線に対し
て傾斜した位置に保持することを特徴とする。
【0021】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
10の構成は、上記した
第1から第
7の構成において、
前記マーカは、前記マーキング対象物に当接することによりマーキングを行うマーカ本体部と、前記マーカ本体部を保持するマーカホルダとを有しており、前記マーカホルダ
は、前記マーカ本体部を前記
押し出しロッドの移動方向の軸線に対して平行な位置に保持することを特徴とする。
【0022】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
11の構成は、上記した第
1から第
10のいずれかの構成において、前記ヘッド部は、
前記押し出しロッドの先端部が移動する溝部を備え、前記締結部材と係合
するヘッド本体部と、
前記押し出しロッドが挿通されるロッド孔を備え、前記ヘッド本体部が交換可能に取り付けられるヘッド取り付け部と
、を有することを特徴とする。
【0023】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
12の構成は、上記したいずれかの構成において、前記開口部を通して
前記締結部材に挿入されて係合する
前記ヘッド部は
、スパナ型ヘッド部またはフレア
ナットレンチ用ヘッド部であることを特徴とする。
【0024】
本発明の課題を解決するトルクレンチの第
13の構成は、上記した第1から第
11のいずれかに記載の構成において、前記締結部材に環状の係合部が装入されて係合する
前記ヘッド部は、めがね型ヘッド部または
ラチェット型ヘッド部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る発明によれば、スパナ型ヘッドやめがね型ヘッド等によりボルトやナット等の締結部材を所定トルクで締め付けると、締結部材の軸方向と直交する方向に沿ってマーカが移動し、例えば油圧配管の継ぎ手のナットを締め付ける場合、ナットの側面あるいは油圧配管の外周面等のマーキング対象をマーキングすることができる。
【0027】
請求項
2に係る発明によれば、マーキングが終了すると、迅速にマーカを退避位置に戻すことができる。マーカのペン先がマーキング対象に当接した後に直進移動体が前方に移動しても、押し出しバネが直進移動体の余分な前進移動を吸収し、マーカ駆動部やマーカが故障するのを未然に防止することができる。
【0028】
請求項
3に係る発明によれば、
押し出しロッドをシンプルに構成することができる。
【0029】
請求項
4、5に係る発明によれば、
押し出しロッドをスパナ型ヘッド等のヘッド部側から装着することができるので、マーカの交換作業等を容易に行うことができる。
【0030】
請求項
6に係る発明によれば、マーカの長さ調節を容易に行うことができる。
【0032】
請求項
7に係る発明によれば、マー
カを取り外すことなくマーカのペン先がマーキング対象に当接する位置を調節することができる。
【0033】
請求項
8に係る発明によれば、マー
カを押し出しロッドと同軸に配置することができるため、マーカのペン先が確実にマーキング対象に当接する。また、マーカのペン先は
押し出しロッドの先端から前方に突出するだけの構成とすることができ、締付作業中にマーカが誤ってマーキング対象以外の物に当接することを防ぐことができ、マーカのペン先を保護することができる。
【0034】
請求項
9に係る発明によれば、例えば油圧配管の継ぎ手のナットを締め付ける場合、ナットの端面と、ナットの端面から延びる油圧配管の外周面とを同時にマーキングすることができる。
【0035】
請求項
10に係る発明によれば、例えば油圧配管の継ぎ手のナットを締め付ける場合、ナットの端面から延びる油圧配管の外周面をマーキングすることができる。
【0036】
請求項
11に係る発明によれば、締結部材のサイズに応じてヘッド部を他のサイズの物に交換する場合、ヘッド本体部を交換すればよく、マーカ駆動部を取り外す作業を不要とする。
【0037】
請求項
12、13に係る発明によれば、スパナ型ヘッド部、フレア
ナットレンチ用ヘッド部、めがね型ヘッド部、
ラチェット型ヘッド部等に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
第1実施形態
図1から
図7は本発明によるトルクレンチの第1実施形態を示す。なお、締結部材に係合するヘッドとして、スパナ型ヘッドを例にして説明する。
【0040】
図1〜
図4において、トルクレンチ1は、ハンドル部3の先端部にスパナ型ヘッド5を取り付けると共に、スパナ型ヘッド5にマーカ7を配置した構成のスパナ型マーキングトルクレンチである。
【0041】
本実施形態において、互いに直交する3軸をX軸,Y軸,Z軸とすると、トルクレンチ1の長手方向をX軸方向、上下方向をZ軸方向、トルクレンチの幅方向をY軸方向として以下に説明する。
【0042】
本明細書中、スパナ型ヘッド5側を先端(前方)、ハンドル部3側を後端(後方)とする。また、トルクレンチ1により、
図7に示すように、例えば油圧配管用の継ぎ手Tに締結部材としてのナットNを締め付け、配管Pを継
ぎ手Tに取り付ける。ナットNにスパナ型ヘッド5を係合し、ナットNの軸周りにトルクレンチ1を回転してナットNの締付が行われる。さらに、本実施形態においてマーカ7のマーキング対象をナットNとして以下に説明する。
【0043】
図5−
図7に示すように、トルクレンチ1は、マーカ7を駆動するマーカ駆動部8を有する。本実施形態において、マーカ駆動部8は、トルクリミッタの動作に同期してマーカ駆動力を発生させるマーカ駆動力発生部81と、マーカ7をマーキング対象であるナットNの側面に当接させてマーキングを施すマーキング位置と、ナットNの側面に当接するマーキング位置から退避した退避位置との間でマーカ7を移動させるマーカ移動機構82とを有する。ナットNの軸方向(Z軸方向)に対して直交する方向であって、スパナ型ヘッド5の長手方向(X軸方向)をマーカ7の移動方向としてマーカ移動機構82は、マーカ7を直進移動させる。なお、マーカ駆動部8の説明は後述する。
【0044】
ハンドル部3は中空形状のチューブ部材を扁平に形成した前チューブ部31と円筒状に形成した後チューブ部32とにより構成し、扁平状の前チューブ部31にはトルクリミッタを構成するトグル機構が配置され、円筒状の後チューブ部32にはトルクリミッタを構成するトルク値設定用のバネ部材等が配置される。後チューブ部32にはグリップ部33が被着される。
【0045】
スパナ型ヘッド5は、平板状に形成されたスパナ型のヘッド本体部51と、ヘッド本体部51が交換可能に取り付けられるヘッド取り付け部52と、先端部側がヘッド取り付け部52の後端部に固定され、後端部側のトグルレバー53がハンドル部3の先端開口側から差し込まれていて、支軸54によりハンドル部3に揺動自在に支持されたヘッド保持レバー部55を有する。
【0046】
ヘッド本体部51は、ボルト、ナットN等の締結部材が係合する開口部511の後方に根元部512が形成される。根元部512の上面には、開口部511の奥端から後方の途中まで延びる断面凹形状の凹溝部513が長手方向に沿って形成される。根元部512の後方には、凹溝部513の後端から後方に沿って上方に向けて突出した凸条部514が後端まで形成される。
【0047】
凸条部514内は、後端から前方に向けて差し込み穴515が形成され、差し込み穴515の奥壁に凹溝部513に連通する連通孔516が形成される。
【0048】
ヘッド取り付け部52は、直方体状の取り付け本体部521の先端部から前方に向け差し込み凸部522が突出し、ヘッド本体部51の差し込み穴515にガタなく差し込み凸部522が差し込まれる。ヘッド本体部51の凸条部514には、第1ネジ挿通孔517aが上下方向に形成され、第1ネジ挿通孔517aに対向してヘッド本体部51の裏面側に第2ネジ挿通孔517bが形成される。また、差し込み凸部522には、第1ネジ挿通孔517aと第2ネジ挿通孔517bにそれぞれ正対して第1ネジ孔523a、第2ネジ孔523bが形成される。
【0049】
第1ネジ挿通孔517aおよび第2ネジ挿通孔517bを通して止めネジ518を第1ネジ孔523aおよび第2ネジ孔523bにねじ込むことにより、ヘッド本体部51がヘッド取り付け部52に固定される。
【0050】
ヘッド取り付け部52の取り付け本体部521には、長手方向に沿って延びる幅が狭いスリット溝524が幅方向の中央部に形成される。ヘッド本体部51の連通孔516と同一軸心上に、差し込み凸部522内を長手方向に貫通して後述する押し出しロッド821が挿通されるロッド孔525が形成される。
【0051】
ロッド孔525の後方には、ロッド孔525の内径よりも大径のバネ孔526が形成される。バネ孔526は取り付け本体部521を上下方向に貫通するスリット溝524を上下方向で二分するように形成される。取り付け本体部521の後部には、ヘッド保持レバー部55の先端部に形成された取り付け軸551が差し込まれる軸孔部527が形成される。
【0052】
ヘッド取り付け部52は、軸孔部527を取り付け軸551に差し込み、取り付け本体部521の4側面から止めネジ52aを取り付け軸551にねじ込むことにより、ヘッド保持レバー部55に固定される。軸孔部527は、バネ孔526に連通し、またバネ孔526よりも内径が大径に形成されている。
【0053】
本実施形態において、マーカ駆動部8のマーカ移動機構82は、押し出しロッド821の先端部にマーカ7を取り付け、押し出しロッド821をX軸方向に沿って移動させることにより、マーカ7を退避位置とマーキング位置との間を移動させるようにしている。
【0054】
マーカ移動機構82の押し出しロッド821は、軸方向の後端にバネ受けフランジ823が形成されている。バネ受けフランジ823の後方には押し付けバネ824を介して、円盤状のバネ受けプレート825が配置される。バネ受けプレート825は、直線移動を行う直線移動体をなす。
【0055】
バネ受けプレート825の後端面には、押し出しリンク部材826がピン826aを介して連結されている。押し出しロッド821は、バネ孔526内に挿通された状態で、バネ受けフランジ823の前面側とバネ孔526の前端壁との間に戻しバネ827が配置される。なお、押し付けバネ824のバネ定数は戻しバネ827のバネ定数よりも高い値に設定される。
【0056】
押し出しリンク部材826の後端部は、連結ピン828を介してスリット溝524内を上下方向に移動する昇降リンク部材829に連結される。なお、押し出しリンク部材826もスリット溝524内を上下方向に移動可能とする。また、昇降リンク部材829は、スリット溝524の後端側に上下方向に形成されたガイド溝524aに係合し、前後方向移動不能で、上下方向移動可能に保持される。また、昇降リンク部材829が上方位置(マーカ7の退避位置に対応)に位置する状態で、押し出しリンク部材826は
図3、
図5に示すように斜めに位置し、その際押し出しロッド821は退避位置に位置する。
【0057】
マーカ移動機構82は、
図5に示すように、マーカ7が退避位置に位置する状態において、昇降リンク部材829を下方に押し下げると、
図6に示すように、押し出しリンク部材826はバネ受けプレート
825を前方に向け押し出す。バネ受けプレート
825は、押し付けバネ824を介してバネ受けフランジ823を前方に向けて押す。そうすると、押し出しロッド821は、戻しバネ827を縮めながら前方に移動し、押し出しロッド821の先端が凸条部514内の連通孔516から凹溝部513に移動する。
【0058】
マーカ7は、マーカホルダ71にマーカ本体部72を取り外し可能に保持し、マーカホルダ71を押し出しロッド821の先端に取り付けネジ73を介して取り付ける。マーカホルダ71と押し出しロッド821によりマーカ移動体を構成する。
【0059】
マーカホルダ71は、ホルダ本体部711の下部に、凹溝部513に長手方向に沿ってスライド可能に嵌合する嵌合突起部712が形成され、嵌合突起部712に取り付けネジ73のネジ挿通孔714が形成される。取り付けネジ73は、嵌合突起部712に対し、不図示の止め輪を介して取り付けネジ73の軸方向に対して移動不能で、当該軸周りに移動自在に取り付けられている。
【0060】
一方、押し出しロッド821の先端部には、取り付けネジ73がねじ込まれるネジ孔821aが形成されている。したがって、取り付けネジ73の回転量を調節することにより、押し出しロッド821の先端に対するマーカ7のX軸方向位置を調節することができる。すなわち、
図7に示すように、マーキング位置において、マーカ本体部72のペン先721がマーキング対象となるナットNの表面に適切に当接するように、マーカ7のX軸方向位置を調節することができる。
【0061】
マーカ本体部72の構成は特に限定されるものではなく、例えばインクカートリッジを交換可能とする構成、あるいはインクタンクにインクを補充する構成等が提案される。
【0062】
マーカ駆動部8のマーカ駆動力発生部81を説明する前に、本実施形態のトグル式トルクリミッタについて説明する。このトルクリミッタは、ハンドル部3の後チューブ部32内に配置された不図示のトルク値設定用のバネの前端に不図示のバネシートを配置する。前記バネシートの先端とヘッド保持レバー部55のトグルレバー53の後端との間には前後方向に隙間が形成され、その間に不図示のトグルリンクが連結される。前記トグルリンクは、長手方向に対して傾斜した状態で、前記トルク値設定用のバネのバネ力をヘッド保持レバー部55に伝達する。
【0063】
ここで、ハンドル部3のグリップ部33を握ってハンドル部3を回すと、締付力はスパナ型ヘッド5に伝達され、締結部材Fを締め付ける。締付トルクがトルク値設定用のバネで設定されたトルク値に達すると、前記トグルリンクは、トルク値設定用のバネのバネ力に抗して前記バネシートを後方に移動させるため、前記トグルリンクが長手方向の軸線に対して平行となる方向に傾動する。その際、ハンドル部3がヘッド保持レバー部55に対し、支軸54を中心に急激に回動し、
図3に示す状態から
図4に示す状態に変化し設定トルク値に達したことを感知させる。
【0064】
マーカ駆動力発生部81は、トルクリミッタが動作する際に、ハンドル部3とヘッド保持レバー部55とのY軸方向に沿った相対移動を、支軸811を支点としてX軸周りに回転するL字型に形成されたL字レバー812の一端部812aに伝達し、L字レバー812の回転運動として取り出し、L字レバー812の他端部812bのZ軸方向の昇降動作として取り出す。なお、ハンドル部3の前チューブ
部31には、取り付けブラケット813が取り付けられ、支軸811が取り付けブラケット813に取り付けられている。
【0065】
また、L字レバー812の一端部812aには、前チューブ
部31をY軸方向に沿って貫通する作動軸814が取り付けられ、作動軸814の先端がトグルレバー53の側端面に当接する。
【0066】
前チューブ
部31には、伝達プレート815の後端が支軸815aを介して回動自在に連結され、伝達プレート815の先端部が昇降リンク部材829の上端部に支軸815bを介して連結される。また、伝達プレート815の上面は、支軸815aに近い位置でL
字レバー812の他端部812bの下部に当接する。
図1、
図3、
図5に示す状態で、伝達プレート815は傾斜配置され、L字レバー812の他端部812bの移動ストロークを増幅して昇降リンク部材829に伝達する。
【0067】
すなわち、締結部材Fが設定トルク値で締め付けられると、L字レバー812の他端部812bがZ軸方向に沿って下動され、伝達プレート815の先端部がZ軸方向に沿って下動される。このため、昇降リンク部材829がZ軸方向に下動されるので、押し出しリンク部材826が押し出しロッド821を前方に押し出し、マーカ7を退避位置からマーキング位置に移動させ、締結部材Fの所定位置にペン先721が当接してマーキングが完了する。
【0068】
そして、前記トルクリミッタの作動を解除すべくハンドル部3に加える力を弱めると、トグル機構がトルク値設定用のバネのバネ力で元の状態に復帰する。その際、戻しバネ827のバネ力で押し出しロッド821が元の位置に復帰し、この復帰動作により押し出しリンク部材826、昇降リンク部材829、伝達プレート815及びL字レバー812が元の位置に復帰する。
【0069】
伝達プレート815の先端部と昇降リンク部材829の上端部とを連結する支軸815bはZ軸方向に支出され、伝達プレート815が支軸815bの周りを揺動可能とする。すなわち、ハンドル部3とスパナ
型ヘッド5とは、支軸54を中心として相対的に揺動可能としているので、トルクリミッタの作動時に伝達プレート815の下動力が昇降リンク部材829に伝達可能としている。
【0070】
本実施形態において、マーカ駆動部8は、スパナ型ヘッド5のヘッド取り付け部52までに配置され、ヘッド本体部51には配置されていないので、ヘッド本体部51の交換が容易に行える。
【0071】
第2実施形態
図8は第2実施形態を示す。
【0072】
図8はマーカの第2実施形態を示し、
図7に示すマーカ7の変形例である。
【0073】
本第2実施形態のマーカ7´は、マーカ7´の移動方向であるX軸方向と平行にマーカ本体部72をマーカホルダ71に保持するようにし、例えば
配管Pの外周面にペン先721でマーキングを行うようにしている。
図7に示す押し出しロッド821に代えて、連通孔516を通してヘッド本体部51側から引き抜けるようにした押し出しロッド821´の先端に固定ネジ73´によりマーカ本体部72を一体的に固定している。押し出しロッド821´は、後端部にネジ軸部821bが後方に向けて支出され、ネジ軸部821bに
ナット部材821cが螺合する。ナット部材である
ナット部材821cの後端部に永久磁石Mを固定する。
【0074】
押し付けバネ824の先端と戻しバネ827の後端との間に、独立した構成のバネ受けフランジ821dを挟持する。バネ受けフランジ821dは、鉄等の磁性体で全体が形成されるか、あるいはナット部材821cの後端部に固定された永久磁石Mに面して鉄等の磁性体821eが固定されている。
【0075】
このため、ナット部材821cを螺着した押し出しロッド821´をヘッド本体部51側から連通孔516に通すと、
ナット部材821cの永久磁石Mが磁力により、バネ受けフランジ821dに磁着し、押し出しロッド821´がバネ受けフランジ821dと一体化する。また、押し出しロッド821´と一体に固定されるマーカホルダ71をヘッド本体部51側に強く引っ張ると、永久磁石Mがバネ受けフランジ821dから外れ、押し出しロッド821´がナット部材821cと共に引き抜かれる。ナット部材821cを回してナット部材821cの後端とペン先721との間の長さを調節することにより、マーキング対象に対して適切なマーキング位置にマーカ7´を移動させることができる。
【0076】
なお、磁石Mをバネ受けフランジ821d側に配置し、磁性体821eをナット部材821c側に配置しても良い。また、
図7に示すマーカ7にも
図8に示す磁石Mも用いた押し出しロッド821´を適用してもよい。
【0077】
第3実施形態
図9から
図11は本発明の第3実施形態を示す。
【0078】
図9から
図11において、
図1から
図7に示す部材と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0079】
第1実施形態及び第2実施形態のマーカ7、7´は、押し出しロッド821、821´にマーカホルダ71を介してマーカ本体部72を取り付けた構成としている。
【0080】
これに対し、本第3実施形態のマーカ9は、マーカ本体部と押し出しロッドを同一軸線上に配置した構成とし、押し出しロッドにマーカホルダの機能を兼用させてマーカ移動体を構成する。
【0081】
マーカ9は、
図11に示すように、マーカホルダと押し出しロッドの両機能を兼用する筒状のマーカホルダ筒90と、マーカホルダ筒90の先端側から差し込まれて保持される細長いマーカ本体部92とを有する。また、第2実施形態と同様に、マーカホルダ筒90は、筒本
体91の後端部にネジ軸部93が固定される。ネジ軸部93には、ナット部材94が螺合する。
【0082】
ナット部材94の後端には、押し付けバネ824の先端と戻しバネ827の後端との間に、独立した構成のバネ受けフランジ95を挟持する。バネ受けフランジ95は、鉄等の磁性体で全体が形成されるか、あるい
は位置調節部材
であるナット部材94の後端部に固定された永久磁石Mに面して鉄等の磁性体97が固定されている。
【0083】
マーカホルダ筒90をヘッド本体部51側から連通孔516に通すと
、ナット
部材94の永久磁石Mが磁力により、バネ受けフランジ95に磁着し、マーカホルダ筒90がバネ受けフランジ95と一体化する。また、マーカホルダ筒90の筒本体91をヘッド本体部51側に強く引っ張ると、永久磁石Mがバネ受けフランジ95から外れ、筒本体91がナット部材94と共に引き抜かれる。
【0084】
また、マーカ本体部92のインクの補充、あるいはマーカ本体部92をカートリッジ方式とした場合ではマーカ本体部92の交換は、マーカ本体部92をマーカホルダ筒90の筒本体91から引き抜くことで行える。
【0085】
マーカ9の全長を調節するには、マーカホルダ筒90の
ナット部材94を回して
ナット部材94の後端とペン先921との間の長さを調節することにより、マーキング対象に対して適切なマーキング位置にマーカ9を移動させることができる。
【0086】
本実施形態において、マーカ9の全長調節は、ネジ軸部93に対し
て位置調節
部材であるナット
部材94を回すことで行っているが、マーカ本体部92を筒本体91に対してねじ込み式により取り付ける構成とし、マーカ本体部92のねじ込み位置を調節することによっても行える。この場合は、ナット部材とネジ軸部を不要とすることができ、永久磁石を筒本体91の後端に取り付けることができる。
【0087】
また、第2の実施形態と同様に、永久磁石Mをバネ受けフランジ95側に配置しても良い。
【0088】
また、本第3実施形態のマーカ9に、第2実施形態のマーカ7´に対して互換性を持たせることができる。
【0089】
なお、マーカ駆動部は上記した各実施形態に示す構成に限定されるものではなく、トルクリミッタの動作に同期してマーカをマーキング位置と退避位置との間で移動できるように駆動できる構成であればよい。
【0090】
また、ヘッド取り付け部52はヘッド保持レバー部55と別体に構成しているが、一体的に構成したヘッド取り付け部としても良い。
【0091】
上記した各実施形態は、締結部材を覆う筒部のないヘッドスパナ型ヘッドを例にして説明したが、スパナ型ヘッドに限らず、めがね型ヘッドフレア型レンチ(6面を持つめがねレンチから1面を取り去って5面でボルト・ナットを保持するレンチ)、ノッチ型レンチ(ラチェット型レンチ)等であっても良い。
【0092】
また、永久磁石Mを利用してマーカ移動体をバネ受けフランジ部に対し
て永久磁石を用いた磁力により取り外し可能に磁着する固定手段により固定し、ヘッド部側からマーカ移動体を引き出すことができるようにしているが、取り外し可能な固定手段はこの磁力を用いた構成に限定されるものではない。要するに、取り外し可能な固定手段として、マーカ移動体をヘッド側から差し込むと、マーカ移動体の後端がバネ受けフランジに固定され、バネ受けフランジと共にマーカ移動体が前後方向に往復移動可能とし、マーカ移動体を前方に引っ張ると、マーカ移動体とバネ受けフランジの固定が解除されてマーカ移動体が引き出されることができる構成であれば良い。取り外し可能な固定手段としては、ネジ止め方式を例示でき、例えばバネ受けフランジにネジ孔を形成し、マーカ移動体側にバネ受けフランジのネジ孔に螺合するネジ軸を設ける。