特許第6385142号(P6385142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385142
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】枠連結金具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/98 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   E06B3/98 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-112359(P2014-112359)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227530(P2015-227530A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】松原 正幸
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−050797(JP,A)
【文献】 実開昭63−020514(JP,U)
【文献】 実開平03−046688(JP,U)
【文献】 特開平08−004439(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/043908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/96−3/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の枠部材の端面を他方の枠部材の内側面に当接させ、これら枠部材同士を直交状態に連結するために一方の枠部材の金具挿入穴に挿入されて該金具挿入穴の所定位置に配置され、該所定位置において他方の枠部材の外側面から通した取付ネジで固定されるように用いられるものであって、金具挿入穴に挿入可能な外形状および外寸法を有し、取付ネジを挿入するネジ挿入穴がその側面を貫通して形成されている主部と、この主部のネジ挿入穴に部分的に重なる位置に設けられ、ネジ挿入穴の開口部を除いて主部の側面を水平に周回するように突出形成された突部とを有し、主部の外径に突部の突出長を加えた寸法は金具挿入穴の内径より大きく形成され、突部が金具挿入穴の内壁に食い込んだ状態で金具挿入穴に嵌合されることを特徴とする枠連結金具。
【請求項2】
突部の最大突出部が突部の下端より上方に位置することを特徴とする、請求項1記載の枠連結金具。
【請求項3】
前記取付ネジを螺合する雌ネジが主部の側面を貫通して形成されることを特徴とする、請求項1または2記載の枠連結金具。
【請求項4】
主部の上面に、雌ネジの軸心方向と平行または直交に延長する溝が形成されることを特徴とする、請求項3記載の枠連結金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠部材同士(たとえば縦枠と横枠)を直交状態で連結するために用いる枠連結金具に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばドア枠などの開口枠を形成するためには枠部材同士を直交状態で連結する必要があるが、従来は、下記特許文献1,2に示すような枠連結金具を取付ネジと共に用いて枠部材同士の連結を行っていた。この枠連結金具は、軸方向に直交して延長する貫通穴を有する円柱状部材と、該円柱状部材の貫通穴に同心状に設けられるナット部材とからなる。連結すべき一方の枠部材(たとえば上枠)にあらかじめその端面から長手方向に延長するネジ挿入穴を形成すると共にその上面から金具挿入穴を形成してネジ挿入穴と直交させておくと共に、他方の枠部材(たとえば縦枠)の上枠端面との接合領域に第1穴と整列するようにネジ挿通穴を形成しておく。そして、現場で、板状ナット部材を円柱状部材に挿入した枠連結金具を、上枠の金具挿入穴から挿入してネジ挿入穴と交差する位置に配置すると共に、この位置で円柱状部材を適宜回転させて板状ナット部材の向きをネジ挿入穴に略整列させた状態にして、上枠に対して所定位置に置いた縦枠のネジ挿通穴に貫通させ、さらに上枠のネジ挿入穴に挿入して、金具挿入穴とネジ挿入穴の交点に所定の向きで収容されている板状ナット部材に螺合することにより、縦枠と上枠とを連結する。
【0003】
このような従来技術によると、上枠のネジ挿入穴と金具挿入穴の交点位置に挿入した枠連結金具の板状ナット部材の向き(軸心)が上枠のネジ挿入穴の軸心(したがってネジ挿入穴に挿入される取付ネジの軸心)とが厳密に一致せずに角度的に若干のずれがあったとしても、円柱状部材は金具挿入穴の内径と略同一またはそれより若干小さい外径を有するものとして形成されているので、取付ネジを螺合させていくときに、枠連結金具全体が金具挿入穴の中で自動的に回転してこれらの軸心を合わせる作用(自動調心作用)が働く。したがって、枠部材同士の連結作業において軸心合わせに細心の注意を払わなくても、枠部材同士を強固に連結することができるという利点が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−050797号公報
【特許文献2】特開2008−088648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においても、上枠のネジ挿入穴と金具挿入穴の交点位置に挿入した枠連結金具の板状ナット部材がネジ挿入穴とは全く異なる向きである場合には、自動調心作用は発揮されない。円柱状部材の上面には、板状ナット部材の軸心方向を示す長溝が形成されているので、作業者はこれを目安として枠連結金具を回転させて軸心を略同一に合わせることが可能であるが、一旦軸心が合っても、作業時の振動などによって枠連結金具が金具挿入穴の中で回転してしまうこともあり、現場作業で手間がかかるものとなっていた。
【0006】
あらかじめ工場で枠連結金具を枠部材の金具挿入穴に嵌め込んだ状態で出荷することも考えられるが、出荷後の振動などによって枠連結金具が金具挿入穴から抜け落ちたり、回転して軸心がずれることがあるため、根本的な解決にはならない。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、一方の枠部材の金具挿入穴に挿入した枠連結金具が不所望に抜け落ちたり回転してしまうことを防止することであり、より具体的には、挿入した穴から抜けにくく且つ回転しにくい構造の枠連結金具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】

この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、一方の枠部材の端面を他方の枠部材の内側面に当接させ、これら枠部材同士を直交状態に連結するために一方の枠部材の金具挿入穴に挿入されて該金具挿入穴の所定位置に配置され、該所定位置において他方の枠部材の外側面から通した取付ネジで固定されるように用いられるものであって、金具挿入穴に挿入可能な外形状および外寸法を有し、取付ネジを挿入するネジ挿入穴がその側面を貫通して形成されている主部と、この主部のネジ挿入穴に部分的に重なる位置に設けられ、ネジ挿入穴の開口部を除いて主部の側面を水平に周回するように突出形成された突部とを有し、主部の外径に突部の突出長を加えた寸法は金具挿入穴の内径より大きく形成され、突部が金具挿入穴の内壁に食い込んだ状態で金具挿入穴に嵌合されることを特徴とする枠連結金具である。
【0009】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の枠連結金具において、突部の最大突出部が突部の下端より上方に位置することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の枠連結金具において、前記取付ネジを螺合する雌ネジが主部の側面を貫通して形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の枠連結金具において、主部の上面に、雌ネジの軸心方向と平行または直交に延長する溝が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によれば、一方の枠部材の金具挿入穴の内壁に突部が食い込んだ状態で枠連結金具が金具挿入穴に嵌合されるので、金具挿入穴の所定位置に配置した枠連結金具は容易には抜け落ちない。また、たとえば略円筒形状の主部を有する枠連結金具が略同径の円筒形状の金具挿入穴に挿入収容される場合であっても、容易には金具挿入穴の内部で回転しない。したがって、あらかじめ工場で一方の枠部材の金具挿入穴にこの枠連結金具を所定の位置および所定の向きで収容させておけば、その後の運搬や作業中の振動によっても位置ずれを起こすことがなく、現場で枠連結金具を金具挿入穴に挿入し且つ軸心を合わせる作業を不要化するので、作業手間の省略および施工時間の短縮を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によれば、突部の最大突出部が突部の下端より上方に位置するので、枠連結金具を金具挿入穴に挿入しやすく、且つ、抜けにくいものとなる。
【0014】
請求項3に係る本発明によれば、金具挿入穴に挿入した枠連結金具を回転させて取付ネジの軸心と合わせる際に、主部の上面に形成した溝にマイナスドライバーなどを差し込んで作業を行うことができる。
【0015】
請求項4に係る本発明によれば、溝の延長方向を目視することにより雌ネジの軸心方向を確認することができるので、金具挿入穴に挿入した枠連結金具を取付ネジと軸心合わせする作業をより容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】枠連結構造の一例を示す平面図(a)および側面図(b)である。この図において、枠連結金具は単純化した形状で示されている。
図2】この枠連結構造を形成する一方の枠部材(上枠)を示す平面図(a)および側面図(b)である。この上枠には、図3に示す枠連結金具があらかじめ所定の位置および所定の向きで収容されている。
図3】この枠連結構造を得るために用いられる本発明の一実施形態による枠連結金具の平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)、側面図(d)およびA−A断面図(e)である。
図4図3の枠連結金具の嵌合状態(突部が金具挿入穴の内壁に食い込んだ状態)を示す平面図(a)および正面図(b)である。
図5】枠連結金具の突部についての他の形状例を示す横断面図(a)〜(d)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好適な一実施形態による枠連結金具について、図1図4を参照して以下に詳述する。この枠連結金具10は、上枠20と縦枠30とがいわゆる縦勝ちに連結された枠連結構造(図1)を得るために取付ネジ40と共に用いられるものである。上枠20および縦枠30はいずれもMDFである。
【0018】
図1と共に図2を参照して、上枠20には、端面21で開口してその長手方向(枠体幅方向X)に所要長さ延長する一対の上枠ネジ挿入穴22,23が枠体奥行方向Yに所定間隔をおいてあらかじめ形成されている。上枠ネジ挿入穴22,23は水平な軸心を有して平行に延長する。また、上枠ネジ挿入穴22,23の内径は取付ネジ40より若干大きく形成される。
【0019】
さらに、上枠表面24で開口する金具挿入穴25,26が、上枠ネジ挿入穴22,23が形成されている長さ範囲内においてそれらの直上位置に各々形成され、上枠ネジ挿入穴22,23より深くまで下方に延長している。これら金具挿入穴25,26は垂直な軸心を有する。したがって、上枠20の厚み内において、上枠ネジ挿入穴22は金具挿入穴25と直交状に交差し、上枠ネジ挿入穴23は金具挿入穴26と直交状に交差している。符号24は、上枠20の上面を示す。
【0020】
縦枠30には、その上端近くを厚み方向(枠体幅方向X)に貫通する縦枠ネジ挿通穴31,32が枠体奥行方向Yに所定間隔(上枠ネジ挿入穴22,23と同間隔)をおいてあらかじめ形成されている。縦枠ネジ挿通穴31,32の内径は取付ネジ40より若干大きく形成され、たとえば上枠ネジ挿入穴22,23と同径であって良い。縦枠ネジ挿通穴31,32の枠体奥行方向Yにおける位置は、上枠20と縦枠30とを縦勝ちに連結したときに、上枠ネジ挿入穴22,23と整列する位置関係となるように設計されている。縦枠ネジ挿通穴31,32の縦枠外面36側の開口部33,34は、取付ネジ40の頭部41を受容するため、頭部41の径に応じて拡径されている。符号35は、上枠20の端面21と接合される縦枠30の内面を示す。符号37は、縦枠30の上端面を示す。
【0021】
図1に示す枠連結構造を得るために取付ネジ40と共に用いられる枠連結金具10は、一例として、図3に示す形状を有する。図3の枠連結金具10は、概して円柱状に形成される主部11を有する。主部11の外径は、上枠20の金具挿入穴25,26の内径と略同一に形成される。主部11の下面周囲には面取り12が施され、金具挿入穴25,26への挿入を容易にしている。主部11には、その軸方向と直交する方向に延長して主部11の側面を貫通するネジ挿入穴13が形成される。ネジ挿入穴13の内径は取付ネジ40より若干大きく形成される。さらに、ネジ挿入穴13と軸心を同じにして板状ナット14が内設される。この実施形態では、板状ナット14が主部11に一体に固定されているが、従来技術として引用した特許文献1,2に示すように、主部11の下面にスリットを形成して、主部11とは別部材として形成した板状ナット14を該スリットから挿入してネジ挿入穴13と同心位置に配置しても良い。板状ナット14は、取付ネジ40を確実に螺合して緩みを防止する観点から、取付ネジ40と同質の材料で形成することが好ましく、たとえば金属製の取付ネジ40に対しては金属製の板状ナット40とすることが好ましい。
【0022】
主部11には、その側面から外方に突出する突部17が主部11と一体的に形成される。この実施形態では、2つの突部17,17が高さ方向に間隔おいて、ネジ挿入穴13の開口部を除いて主部11の側面を周回するように形成され、各突部17はその下端17aから上端17bに向かうにつれて徐々に外方に突出する直角三角形の断面形状を有するものとして示されている。突部上端17bの突出長さ(主部11の円柱側面から外方に突出する径方向の長さ)は、上枠20の金具挿入穴25,26の内径が10mmである場合、これより0.2〜1.0mm程度大きい寸法とすることが好ましい。この突出長さが0.2mm未満であると金具挿入穴25,26内での不慮の回転を起こしやすくなり、1.0mmを超えると金具挿入穴25,26に挿入しにくくなる。
【0023】
突部17を含めた主部11の材質は特に限定されないが、たとえば硬質PVC、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂で形成することができる。
【0024】
突部17を含めた主部11の軸方向長さは、枠連結金具10を上枠20の金具挿入穴25,26に挿入して板状ナット14の雌ネジ14aの軸心を上枠ネジ挿入穴22,23の軸心に合わせたときに、枠連結金具10が上枠20の表面24から突出せず、好ましくは主部11の上面11aを表面24と略面一とすることができるような寸法に形成される。特に、主部11の軸方向の全長を金具挿入穴25,26の深さと略同一とし、枠連結金具10を金具挿入穴25,26の奥底まで挿入したときに、その軸心が自動的に上枠ネジ挿入穴22,23の軸心と合うように、各部の寸法を設定することが好ましい。すなわち、雌ネジ14aの軸心は枠連結金具10の上面から距離h(図1(b))の位置にあり、上枠ネジ挿入穴22,23の軸心Cと一致している。
【0025】
主部上面11aには溝18が刻設されている。溝18の延長方向は、ネジ挿入穴13の軸心方向と同じである。したがって、この溝18にマイナスドライバー(溝18をプラス形状にした場合はマイナスまたはプラスのドライバー)を差し込んで枠連結金具10を回転させることができるので、この枠連結金具10を上枠20の金具挿入穴25,26と上枠ネジ挿入穴22,23との交点位置にセットする際の仮位置合わせにおいて、ネジ挿入穴13を金具挿入穴25,26の軸心に合わせる作業を容易に行うことができる。
【0026】
この枠連結金具10を取付ネジ40と共に用いて図1の枠連結構造を得るには、上枠20と縦枠30とを、上枠20の表面24が縦枠30の上端面37と面一になるように縦勝ちにした位置関係とし、この位置関係において水平方向に整列状態となっている縦枠ネジ挿通穴31,32と上枠ネジ挿入穴22,23に対して各々取付ネジ40を挿入する。
【0027】
枠連結金具10はあらかじめ上枠20の金具挿入穴25,26と上枠ネジ挿入穴22,23との交点位置にセットされていても良いし、枠連結構造を組み立てる現場で上記交点位置にセットしても良いが、いずれの場合も、上枠表面24に開口する金具挿入穴25,26の開口から目視しながら、主部上面11aの溝18にドライバーなどを差し込んでその向きが枠体幅方向Xと略平行になるように適宜回転させて仮位置合わせ(軸心合わせ)を行っておく。枠連結金具10は主部11の側面から外方に突出する突部17,17が形成されているので、金具挿入穴25,26に挿入していくときに突部17,17が金具挿入穴25,26の内壁に食い込んだ状態となる(図4)。したがって、このときに上記のようにして軸心合わせを行っておけば、その後の運搬時や作業時の振動などでその位置(上下方向および向き)が不慮に変わることはない。
【0028】
この状態で、取付ネジ40を上枠ネジ挿入穴22,23に挿入し、さらに頭部41に形成したプラスまたはマイナスの溝(図示せず)にドライバーの先端を差し込んで締め付け方向に回転させながら挿入していくと、取付ネジ40が、上記交点位置にセットされた枠連結金具10の雌ネジ14aに螺合される。
【0029】
上記仮位置合わせにおいては、溝18の延長方向を枠体幅方向Xと厳密に平行にする(言い換えれば、上記交点位置にセットした枠連結金具10の雌ネジ14aの軸心を、挿入される取付ネジ40の軸心と厳密に一致させる)必要はない。枠連結金具10の外径は上枠20の金具挿入穴25,26と略同一に形成されているので、それほど厳密に方向合わせを行わなくても、大雑把な方向合わせを行っておけば、取付ネジ40が雌ネジ14aに螺合する際に枠連結金具10を金具挿入穴25,26内で自動的に回転させてそれらの軸心を合致させる作用(自動調心作用)が働いて、取付ネジ40を雌ネジ14aに確実に螺合させることができる。突部17,17は金具挿入穴25,26の内壁に食い込んでいるが、大きな外力が加われば金具挿入穴25,26内で回転することができるので、この自動調心作用を何ら損なうものではない。
【0030】
主部11の側面から外方に突出する突部17の数や形状は、上述したように金具挿入穴25,26の内壁に食い込んで位置ずれを防止することができるものであれば特に限定されず、図5(d)に示すような長方形の断面形状を有するものであっても良いが、好ましくは、図3図5(a)〜(c)に示すように、その最大突出部17cが下端17aより上方に位置するものとすることが好ましい(図3の実施例では上端17bが最大突出部17c)。このような形状とすることにより、金具挿入穴25,26に仮位置合わせした状態で金具挿入穴25,26の内壁に最大突出部17aに確実に食い込ませて、その後の位置ずれを防止する効果が大きくなる。また、下端の突出長さが小さいので、金具挿入穴25,26に挿入しやすい。
【0031】
これら図示実施例以外にも、突部17は様々な形状や配置を有することができる。たとえば、図3の実施例のように主部11の側面を水平方向に実質的に周回するように突部17を設けることに代えて、主部11の側面を螺旋状に周回する突部としたり、主部11の側面の一または複数の地点から水平方向または垂直方向または傾斜方向に延長する任意形状の突部を形成したり、複数の任意形状の突部を主部11の側面全体または一部に形成しても良い。また、突部17の上端17bが主部上面11aにまでは達しないように突部17を形成することにより、主部上面11aを金具挿入穴25,26の開口(上枠上面24)と面一にして嵌合させたときに、突部17が金具挿入穴25,26の高さ方向中間で内壁に食い込み、突部上端17bから主部上面11aまでの部分17d(図4(b))は内壁に食い込まない状態となるので、突部17(特にその最大突出部17c)が引っ掛かって抜けを防止する効果が大きくなる。
【0032】
以上において幾つかの実施例を挙げて本発明の枠連結金具について詳述したが、本発明はこれら実施例の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に定義される発明の範囲内において様々に変形ないし変更して実施可能である。
【0033】
本発明の枠連結金具10は、工場であらかじめ枠部材(実施例では上枠20)の金具挿入穴25,26と上枠ネジ挿入穴22,23の交点位置に軸心合わせを済ませた状態で収容配置させておくことができる。該交点位置で一旦軸心合わせを完了させれば、その後の輸送時や施工時の通常作業で振動が生じても、突部17が金具挿入穴25,26の内壁に食い込んでいるので、不慮の抜け落ちや回転が生じない。このようにすることで現場での作業手間を省くことができる優位性を有するものであるが、既述したように、枠連結金具15を枠部材とは別に用意して、現場で該交点位置に収容させた後に軸心合わせを行うようにしても良いことは言うまでもない。
【0034】
また、既述した実施例では、縦勝ちで枠組みされる枠連結構造の上枠に本発明の枠連結金具10を用いるものとしているが、他の横枠(中横枠や、四方枠であれば下枠)に用いても良いし、横勝ちで枠組みされる枠連結構造の縦枠に用いても良い。枠連結構造の形状や枠部材の形状は特に限定されないが、枠部材の材質については、枠連結金具10を金具挿入穴25,26に挿入させるときに突部17がその内壁を圧縮しながら挿入させることができ、所定位置において金具挿入穴25,26の内壁に食い込むことができ、突部17が通過した後は圧縮されていた内壁部分が元の形状・寸法に復帰して主部11の側面に密接する(図4(b)参照。同図において点線は突部17が通過したときに圧縮されて拡径した状態の内壁を示す)ことができるものである必要があることから、既述実施例のようにMDFまたは他の木質材料で枠部材が形成されることが好ましい。
【0035】
本発明の枠連結金具10は、突部17が金具挿入穴25,26の内壁に食い込むことにより不慮の回転や位置ずれを防止するという作用効果を発揮すると共に、金具挿入穴25,26と上枠ネジ挿入穴22,23の交点位置に挿入して仮位置決めとしての軸心合わせを行うために溝18などを利用して回転させることを可能にし、また、取付ネジ40がネジ挿入穴13に挿入されるときには自動的に軸心合わせ(自動調心作用)が行われるように金具挿入穴25,26内で回転することを妨げないものである必要がある。言い換えれば、積極的な外力を作用させない限り、枠連結金具10は金具挿入穴25,26内で回転することなくその向き(軸心)を不変に維持するが、マイナスドライバーなどを用いて回転力を与えたり、雌ネジ14aに取付ネジ40が螺合することによる自動調心が行われるときには、金具挿入穴25,26内壁に圧接することによる回転規制力を上回る外力が作用するので、抵抗を受けながらも金具挿入穴25,26内で回転可能である。このような要求性能は、主として、枠連結金具10の外面と金具挿入穴25,26との間の摩擦抵抗に依存すると考えられるので、突部17の径方向突出長さやその形状による食い込みの程度などを適宜に設計することによって実現可能である。主部11の外面に凹凸を形成すれば回転規制力が増大する。また、主部11の外面に低摩擦係数材料や高摩擦係数材料をコーティングしても良い。当業者によれば、これらを勘案して、本発明の上記作用を実現するための回転規制力と回転許容力の適正バランスを取ることが可能である。
【0036】
既述実施例では、枠連結金具10が、金具挿入穴25,26の内径と略同一の外径を有する略円柱形状の主部11を有するものとして示されているが、主部11は、金具挿入穴25,26に挿入可能な外形状および外寸法を有するものであれば良く、これに限定されない。金具挿入穴25,26は円柱形状、円錐形状、円錐台形状、角柱形状などであっても良く、その横断面形状は円形、三角形、四角形などであっても良い。あるいは、たとえば下部が円柱形状で上部が円錐形状ないし円錐台形状や、下部が角柱形状で上部が角錐形状ないし角錐台形状などの特殊な形状を有するものであっても良い。枠連結金具10の主部11は、金具挿入穴25,26に挿入可能な形状であり、略同一形状とすることができるが、たとえば下部が円柱形状や角柱形状で上部が円錐/円錐台形状や角錐/角錐台形状の金具挿入穴25,26の場合は、その下部形状に対応する円柱形状や角柱形状の主部11を有するものとしても良い。
【0037】
既述実施例の枠連結金具10の主部11には、取付ネジ40と螺合するネジ挿入穴13が形成され、このネジ挿入穴13に雌ネジ14aを備える板状ナット14が固定されているが、既述したように、主部11の下面にネジ挿入穴13に通じるスリットを形成し、このスリットから板状ナット14を挿入して所定位置に配置するようにしても良いし、ネジ挿入穴13自体に雌ネジ14aを設けて取付ネジ40を螺着するようにしても良い。あるいは、ネジ挿入穴13や雌ネジ14aを有しない主部11としても良い。この場合は、取付ネジ40としては先端が尖った形状のネジ(木ネジなど)を用いて、縦枠ネジ挿通穴31,32に通した取付ネジ40を枠連結金具10の主部11にねじ込んで締結することになるので、既述した自動調心作用は働かない。
【0038】
既述実施例の枠連結金具10の溝18は、雌ネジ14aの軸心方向と略平行に延長するものとして形成され、この延長方向を上枠20の上面に開口する金具挿入穴25,26の開口から目視することにより雌ネジ14aの軸心方向を確認することができるので、金具挿入穴に挿入した枠連結金具の大まかな位置合わせ(取付ネジまたはその挿通穴との軸心合わせ)作業が容易になる作用効果を発揮するが、溝18を雌ネジ14aの軸心に対して略直交する方向に延長させても、同様の作用効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 枠連結金具
11 主部
11a 上面
12 面取り
13 ネジ挿入穴
14 板状ナット
14a 雌ネジ
17 突部
17a 下端
17b 上端
17c 最大突出部
17d 突部上端から主部上面までの部分
18 溝
20 上枠
21 上枠の端面
22,23 上枠ネジ挿入穴
24 上枠の表面
25,26 金具挿入穴
30 縦枠
31,32 縦枠ネジ挿通穴
33,34 拡径開口部
35 縦枠の内面
36 縦枠の外面
37 縦枠の上端面
図1
図2
図3
図4
図5