【0012】
1.混合機
本発明のセメント組成物の処理方法において用いる混合機は、ブレード状の撹拌羽根を有する混合機であり、例えば、プロシェアミキサ、アイリッヒミキサ、またはヘンシェルミキサ等が挙げられる。これらの混合機はいずれも、強力な分散力(せん断作用)を有するブレード状の高速攪拌羽根(チョッパーまたはローター)を備えており、その回転速度は概ね1000rpmから6000rpmの範囲で調整可能である。
そして、プロシェアミキサは、
図1に一例を示すように、主にショベル羽根1とチョッパー2とからなり、材料投入口3から投入された粉体材料はショベル羽根1の混合作用による浮遊拡散混合と、チョッパー2の分散作用による高速せん断分散により分散混合を行った後、材料排出口から粉体を排出するミキサである。プロシェアミキサを混合機として用いる場合、チョッパーの回転速度が、好ましくは2000rpm以上、より好ましくは3000rpm以上の攪拌能力を有するプロシェアミキサが望ましい。プロシェアミキサは、例えば、太平洋機工社製のプロシェアミキサがあり、その型式はWB−20(傾斜型)やWB−2400が挙げられる。
また、アイリッヒミキサは、例えば、日本アイリッヒ社製のアイリッヒミキサがあり、その型式はR02が挙げられる。また、ヘンシェルミキサは、例えば日本コークス工業社製のヘンシェルミキサがあり、その型式はFM20Cが挙げられる。
本発明においては、上記ブレード状の撹拌羽根を有する混合機を用いて撹拌することにより、セメント組成物中の凝集したシリカフュームまたは粒体シリカフュームが解砕されて、モルタルやコンクリートの混練時間が短縮されると推察する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例により説明するが本発明は該実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)セメント組成物A
中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント製)100質量部に対し、BET比表面積18.5m
2/gの凝集したシリカフューム(金属シリコン系、1μm以上の粒径の粒子の割合が30質量%、密度2.25g/cm
3(エムケム ジャパン社製))を13質量部含むセメント組成物
(2)セメント組成物B
中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント製)100質量部に対し、BET比表面積18.5m
2/gの凝集していないシリカフューム(金属シリコン系、1μm以上の粒径の粒子の割合が10質量%、密度2.25g/cm
3(エムケム ジャパン社製))を13質量部含むセメント組成物
(3)セメント組成物C
製造後12月経過したセメント組成物B(凝集したシリカフュームを含む)
(4)細骨材
山砂(静岡県掛川市産)
(5)高性能減水剤
マスターグレニウムSP8HU X
2[登録商標](BASFジャパン社製)
(6)空気量調整剤
マスターエア404[登録商標](BASFジャパン社製)
(7)水:水道水
【0017】
2.使用した混合機
(1)プロシェアミキサa
型式:WB−20(傾斜型)、チョッパーの回転速度:3600〜6000rpm、チョッパーの周速:18m/s以上、容積:20リットル、太平洋機工社製
(2)プロシェアミキサb
型式:WB−2400、チョッパーの回転速度:3600rpm、チョッパーの周速:
28m/s、容積:2.3m
3、太平洋機工社製
なお、前記セメント組成物のプロシェアミキサへの投入量は、プロシェアミキサaで8.4kg、プロシェアミキサbで800kgである。
【0018】
2.試験に用いたモルタル
モルタルのフローおよび流動化時間の測定に用いたモルタル配合は、水/セメント組成物の質量比が14%、細骨材/セメント組成物の質量比が33%、高性能減水剤の添加量がセメント組成物の質量×1.5%である。また、モルタルの空気量は空気量調整剤を用いて3%以下に調整した。
前記配合に従い、セメント組成物等のモルタルの原料を一括してホバートミキサーに投入し低速で混練して、流動化時間(秒)を測定した。本発明の処理対象であるセメント組成物を用いたモルタルの性状は、初めは粉状から徐々に大きな塊状に変化し、さらに混ぜると、流動化した状態に変化するという特異な変化を示す。そして、前記流動化時間とは、混練開始時からモルタルが流動化する状態に至るまでに要した時間をいう。なお、モルタルの混練時間は、前記流動化時間+180秒とした。
次に、前記混練したモルタルを用いてJIS R 5201「セメントの物理試験方法 11.フロー試験」に準拠してモルタルのフローを測定した。ただし、15回の落下運動は実施しなかった。
【0019】
3.プロシェアミキサaを用いたセメント組成物Aの処理
(1)撹拌時間の効果
前記プロシェアミキサaのショベル羽根の周速が4.2m/s、およびチョッパーの回転速度が6000rpmの条件で、前記セメント組成物Aを、15分、10分、5分、および3分撹拌した。撹拌した後のセメント組成物Aを用いて前記モルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は
図2の(1)に示す。
図2の(1)に示すように、撹拌時間が長くなるほどモルタルの流動化時間は短縮する。
【0020】
(2)チョッパーの回転速度の効果
前記プロシェアミキサaのショベル羽根の周速が4.2m/s、および撹拌時間が10分の条件で、前記セメント組成物Aを、チョッパーの回転速度が6000rpm、4800rpm、および3600rpmで撹拌した。撹拌した後のセメント組成物Aを用いてモルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は
図2の(2)に示す。
図2の(2)に示すように、チョッパーの回転速度が大きくなるほどモルタルの流動化時間は短縮する。
【0021】
(3)ショベル羽根の周速の効果
前記プロシェアミキサaのチョッパーの回転速度が3600rpm、および撹拌時間が10分の条件で、前記セメント組成物Aを、ショベル羽根の周速が4.2m/s、および3.5m/sで撹拌した。撹拌した後のセメント組成物Aを用いてモルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は
図2の(3)に示す。
図2の(3)に示すように、ショベル羽根の周速は大きい方がモルタルの流動化時間は短縮する傾向にある。
【0022】
3.プロシェアミキサaを用いたセメント組成物Cの処理
前記プロシェアミキサaのショベル羽根の周速が3.5m/s、およびチョッパーの回転速度が3600rpmの条件で、前記セメント組成物Cを、10分、および15分撹拌した。撹拌した後のセメント組成物Cを用いて前記モルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は
図3に示す。また、参考のため、セメント組成物Bを用いて作製した前記モルタルBのフローおよび流動化時間を
図3に併せて示す。
図3に示すように、撹拌する前のセメント組成物C(未処理)では流動化時間が長いことから、シリカフュームは凝集していると考える。
また、撹拌時間が長いほどモルタルのフロー値は大きくなり、流動化時間は短縮し、凝集していないシリカフュームを含むセメント組成物Bを用いたモルタルBのフロー値および流動化時間とほぼ同じ値になった。
【0023】
4.プロシェアミキサbを用いたセメント組成物Aの処理
前記プロシェアミキサb(工場向けの実機)のショベル羽根の周速が3.5m/s、およびチョッパーの回転速度が3600rpmの条件で、前記セメント組成物Aを、5分、10分、15分、20分、30分、45分、および60分撹拌した。撹拌する前(未処理)と撹拌した後のセメント組成物Aを用いて前記モルタルを作製し、該モルタルのフローおよび流動化時間を測定した。その結果は
図4に示す。
図4に示すように、撹拌時間が長くなるほどモルタルの流動化時間は短縮する。
以上の結果から、本発明のセメント組成物の処理方法は、凝集したシリカフュームを含むセメント組成物を用いたモルタルやコンクリートの混練時間を短縮でき、モルタルやコンクリートの製造効率が向上する。