(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態である乾燥機能を有さないドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、ドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0023】
ドラム式洗濯機1は、外観を構成する筐体10を備える。筐体10の前面10aは、中央部から上部にかけて傾斜し、傾斜した面に洗濯物の投入口11が形成される。投入口11は、開閉自在なドア12により覆われる。
【0024】
筐体10内には、外槽20が、複数のダンパー21により弾性的に支持される。外槽20内には、ドラム22が回転自在に配される。外槽20およびドラム22は、水平方向に対し、後面側が低くなるよう傾斜する。これにより、ドラム22は、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。外槽20およびドラム22の傾斜角度は、10〜20度程度とされ得る。外槽20の前面の開口部20aおよびドラム22の前面の開口部22aは、投入口11に対向し、投入口11ともにドア12により閉鎖される。ドラム22の内周面には、多数の脱水孔22bが形成される。さらに、ドラム22の内周面には、3つのバッフル23が周方向にほぼ等しい間隔で設けられる。
【0025】
ドラム22の後部には、撹拌体24が回転自在に配される。撹拌体24は、ほぼ円盤形状を有する。撹拌体24の表面には、中央部から放射状に延びる複数の羽根24aが形成される。撹拌体24は、ドラム22と同軸に回転する。撹拌体24は、本発明の回転体に相当し、羽根24aは、本発明の突状部に相当する。
【0026】
外槽20の後方には、ドラム22および撹拌体24を駆動するトルクを発生させる駆動ユニット30が配される。駆動ユニット30は、本発明の駆動部に相当する。駆動ユニット30は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム22および撹拌体24を同一方向に異なる回転速度で回転させる。具体的には、駆動ユニット30は、ドラム22を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転させ、撹拌体24を、ドラム22の回転速度よりも速い回転速度で回転させる。一方、駆動ユニット30は、脱水工程時には、ドラム22および撹拌体24を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転させる。駆動ユニット30の詳細な構成は、追って説明される。
【0027】
外槽20の底部には、排水口部20bが形成される。排水口部20bには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0028】
筐体10内の前方上部には、洗剤ボックス50が配される。洗剤ボックス50には、洗剤が収容される洗剤容器50aが前方から引き出し自在に収容される。洗剤ボックス50は、筐体10内の後方上部に配された給水バルブ51に、給水ホース52によって接続される。また、洗剤ボックス50は、外槽20の上部に、注水管53により接続される。給水バルブ51が開放されると、水道栓から水道水が、給水ホース52、洗剤ボックス50および注水管53を通じて外槽20内に供給される。この際、洗剤容器50aに収容された洗剤が、水に押し流れて外槽20内に供給される。給水バルブ51は、本発明の給水部に相当する。
【0029】
次に、駆動ユニット30の構成について詳細に説明する。
【0030】
図2および
図3は、駆動ユニット30の構成を示す断面図である。
図2は、駆動ユニット30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられた状態を示し、
図3は、駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられた状態を示す。
図4は、駆動モータ100のロータ110の構成を示す、ロータ110の正面図である。
図5は、スプライン514が形成された軸受ユニット500の後部の拡大斜視図である。
図6(a)ないし(c)は、クラッチ機構部600のクラッチ体610の構成を示す図であり、それぞれ、クラッチ体610の正面図、右側面図および背面図である。
【0031】
駆動ユニット30は、駆動モータ100と、翼軸200と、ドラム軸300と、遊星歯車機構400と、軸受ユニット500と、クラッチ機構部600とを含む。駆動モータ100は、撹拌体24およびドラム22を駆動するためのトルクを発生する。翼軸200は、駆動モータ100のトルクにより回転し、当該回転を撹拌体24に伝達する。遊星歯車機構400は、翼軸200の回転、即ち駆動モータ100のロータ110の回転を減速してドラム軸300に伝達する。ドラム軸300は、遊星歯車機構400により減速された回転速度で翼軸200と同軸に回転し、当該回転をドラム22に伝達する。軸受ユニット500は、翼軸200およびドラム軸300を回転自在に支持する。クラッチ機構部600は、撹拌体24、即ち翼軸200を、駆動モータ100の回転速度と等しい回転速度で回転させ、ドラム22、即ちドラム軸300を、遊星歯車機構400により減速された回転速度で回転させることが可能な二軸駆動形態と、撹拌体24およびドラム22、即ち、翼軸200、ドラム軸300および遊星歯車機構400を、駆動モータ100と等しい回転速度で一体的に回転させることが可能な一軸駆動形態との間で、駆動ユニット30の駆動形態を切り替える。
【0032】
駆動モータ100は、アウターロータ型のDCブラシレスモータであり、ロータ110とステータ120とを含む。ロータ110は、有底の円筒状に形成され、その内周面には、全周に亘って永久磁石111が配列される。
図4に示すように、ロータ110の中央部には、円形のボス部112が形成される。ボス部112には、翼軸200を固定するためのボス孔113が形成されるとともに、ボス孔113の外周に環状の被係合凹部114が形成される。被係合凹部114の外周部は、全周に亘って凹凸部114aを有する。
【0033】
ステータ120は、外周部に巻線121を有する。後述するモータ駆動部からステータ120の巻線121に駆動電流が供給されると、ロータ110が回転する。
【0034】
ドラム軸300は、中空形状を有し、翼軸200と遊星歯車機構400とを内包する。ドラム軸300は、中央部が外側に膨出し、この膨出した部位が、遊星歯車機構400の収容部となる。
【0035】
遊星歯車機構400は、太陽歯車410と、太陽歯車410を囲む環状の内歯車420と、太陽歯車410と内歯車420との間に介在する複数組の遊星歯車430と、これら遊星歯車430を回転自在に保持する遊星キャリア440とを含む。
【0036】
太陽歯車410が翼軸200に固定され、内歯車420がドラム軸300に固定される。一組の遊星歯車430は、互いに噛み合い、相反する方向に回転する第1歯車と第2歯車とを含む。遊星キャリア440は、後方へ延びるキャリア軸441を含む。キャリア軸441は、ドラム軸300と同軸であり、翼軸200が挿入されるために内部が中空に形成される。
【0037】
翼軸200の後端部は、キャリア軸441から後方に突出し、ロータ110のボス孔113に固定される。
【0038】
軸受ユニット500には、中央部に円筒状の軸受部510が設けられる。軸受部510の内部には、前部および後部に転がり軸受511、512が設けられ、前端部に、メカニカルシール513が設けられる。ドラム軸300は、外周面が転がり軸受511、512により受けられ、軸受部510内において円滑に回転する。また、メカニカルシール513により、軸受部510とドラム軸300との間への水の侵入が防止される。
図5に示すように、軸受部510の後端部には、内面に、全周に亘ってスプライン514が形成される。
【0039】
軸受ユニット500には、軸受部510の周囲に固定フランジ部520が形成される。固定フランジ部520の下端部に取付ボス521が形成される。
【0040】
軸受ユニット500は、固定フランジ部520において、ネジ止等の固定方法により、外槽20の後面に固定される。駆動ユニット30が外槽20に装着された状態において、翼軸200およびドラム軸300が外槽20の内部に臨む。ドラム22がドラム軸300に固定され、撹拌体24が翼軸200に固定される。
【0041】
クラッチ機構部600は、クラッチ体610と、クラッチスプリング620と、クラッチレバー630と、レバー支持部640と、クラッチ駆動装置650と、取付プレート660とを含む。
【0042】
図6(a)ないし(c)に示すように、クラッチ体610はほぼ円盤形状を有する。クラッチ体610の前端部には、外周面に、環状のスプライン611が形成される。スプライン611は、軸受ユニット500のスプライン514と係合するように形成される。また、クラッチ体610の外周面には、スプライン611の後方に、フランジ部612が形成される。さらに、クラッチ体610には後端部に、環状の係合フランジ部613が形成される。係合フランジ部613は、ロータ110の被係合凹部114と同じ形状を有し、外周部に全周に亘って凹凸部613aを有する。係合フランジ部613が、被係合凹部114に挿入されると、凹凸部613a、114a同士が係合する。
【0043】
クラッチ体610の軸孔614にキャリア軸441が挿入される。軸孔614の内周面に形成されたスプライン614aとキャリア軸441の外周面に形成されたスプライン441aとが係合する。これにより、クラッチ体610が、キャリア軸441に対して、前後方向への移動が許容され、且つ、周方向への回動が規制される状態となる。
【0044】
クラッチ体610には、軸孔614の外側に環状の収容溝615が形成され、この収容溝615に、クラッチスプリング620が収容される。クラッチスプリング620は、一端が軸受部510の後端部に接し、他端が収容溝615の底面に接する。
【0045】
クラッチレバー630の上端部には、クラッチ体610のフランジ部612の後面に接触し、フランジ部612を前方へ押す押圧部631が形成される。
【0046】
クラッチレバー630は、支軸632を有し、この支軸632がレバー支持部640に回動自在に支持される。クラッチレバー630とレバー支持部640の間に、スプリング641が介在する。スプリング641は、引張スプリングであり、クラッチレバー630は、スプリング641の弾性力により、その下端が前方に移動する方向に引かれる。
【0047】
クラッチ駆動装置650は、トルクモータ651と、トルクモータ651のトルクにより水平軸周りに回転する円盤状のカム652とを含む。カム652の上面が、クラッチレバー630の下端部に接触する。カム652の上面は、一端側に設けられる、高さの高い第1接触面652aと、他端側に設けられる、高さの低い第2接触面652bと、第1接触面652aと第2接触面652bとの間をつなぐ傾斜面652cとを含む。
【0048】
レバー支持部640およびクラッチ駆動装置650は、ネジ止等の固定方法により、取付プレート660に固定される。取付プレート660は、軸受ユニット500の取付ボス521にネジにより固定される。
【0049】
駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる場合、
図2に示すように、トルクモータ651により、第1接触面652aが上方に位置し、第2接触面652bが下方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転するに従い、クラッチレバー630の下端部が、傾斜面652cおよび第1接触面652aに順次押されて後方へ移動する。クラッチレバー630が支軸632を中心に前方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610を前方へ押す。クラッチスプリング620の弾性力に逆らって、クラッチ体610が前方へ移動し、クラッチ体610のスプライン611と軸受ユニット500のスプライン514とが係合する。
【0050】
スプライン611とスプライン514とが係合すると、クラッチ体610が、軸受ユニット500に対して周方向への回動が規制され、回動できない状態となるので、遊星歯車機構400のキャリア軸441、即ち遊星キャリア440が、回転できないよう固定された状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転し、翼軸200に連結されている撹拌体24もロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。翼軸200の回転に伴い、遊星歯車機構400では、太陽歯車410が回転する。上述の通り、遊星キャリア440は固定された状態にあるので、遊星歯車430の第1歯車および第2歯車が、それぞれ、太陽歯車410と同方向および逆方向に回転し、内歯車420が太陽歯車410と同方向に回転する。これにより、内歯車420に固定されたドラム軸300が翼軸200と同方向に、翼軸200よりも遅い回転速度で回転し、ドラム軸300に固定されたドラム22が、撹拌体24よりも遅い回転速度で撹拌体24と同方向に回転する。言い換えれば、撹拌体24がドラム22よりも速い回転速度でドラム22と同方向に回転する。
【0051】
一方、駆動ユニット30の形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる場合、
図3に示すように、トルクモータ651により、第2接触面652bが上方に位置し、第1接触面652aが下方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転するに従い、クラッチレバー630の下端部が、スプリング641の弾性力により、傾斜面652cおよび第2接触面652bに順次沿いながら前方へ移動する。クラッチレバー630が支軸632を中心に後方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610のフランジ部612から離れる。クラッチ体610が、クラッチスプリング620の弾性力によって後方へ移動し、クラッチ体610の係合フランジ部613とロータ110の被係合凹部114とが係合する。
【0052】
係合フランジ部613と被係合凹部114とが係合すると、ロータ110に対するクラッチ体610の周方向への回動が規制され、クラッチ体610は、ロータ110とともに回転可能な状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200およびクラッチ体610がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。このとき、遊星歯車機構400では、太陽歯車410と遊星キャリア440とがロータ110と等しい回転速度で回転する。これにより、内歯車420が、太陽歯車410および遊星キャリア440と等しい回転速度で回転し、内歯車420に固定されたドラム軸300がロータ110と等しい回転速度で回転する。即ち、駆動ユニット30では、翼軸200、遊星歯車機構400およびドラム軸300が一体となって回転する。これにより、ドラム22と撹拌体24が一体的に回転する。
【0053】
図7は、ドラム式洗濯機1の構成を示すブロック図である。
【0054】
ドラム式洗濯機1は、上述した構成に加え、制御部701、記憶部702、操作部703、水位センサ704、モータ駆動部705、給水駆動部706、排水駆動部707、クラッチ駆動部708およびドアロック装置709を備える。
【0055】
操作部703は、電源ボタン703a、スタートボタン703b、コース選択ボタン703cを含む。電源ボタン703aは、ドラム式洗濯機1の電源を投入および遮断するためのボタンである。スタートボタン703bは、運転をスタートさせるためのボタンである。コース選択ボタン703cは、洗濯運転に係る複数の運転コースの中から任意の運転コースを選択するためのボタンである。操作部703は、ユーザに操作されたボタンに応じた入力信号を制御部701に出力する。
【0056】
水位センサ704は、外槽20内の水位を検知し、検知した水位に応じた水位検知信号を制御部701に出力する。水位センサ704は、本発明の水位検知部に相当する。
【0057】
モータ駆動部705は、制御部701からの制御信号に従って、駆動モータ100に駆動電流を供給する。給水駆動部706は、制御部701からの制御信号に従って、給水バルブ51に駆動電流を供給する。排水駆動部707は、制御部701からの制御信号に従って、排水バルブ40に駆動電流を供給する。
【0058】
クラッチ駆動装置650は、第1検知センサ653および第2検知センサ654を含む。第1検知センサ653および第2検知センサ654は、本発明の形態検知部に相当する。第1検知センサ653は、駆動ユニット30の駆動形態が二軸駆動形態に切り替えられたことを検知して、検出信号を制御部701に出力する。第2検知センサ654は、駆動ユニット30の駆動形態が一軸駆動形態に切り替えられたことを検知して、検出信号を制御部701に出力する。クラッチ駆動部708は、第1検知センサ653および第2検知センサ654からの検出信号に基づいて制御部701から出力された制御信号に従い、トルクモータ651に駆動電流を供給する。
【0059】
ドアロック装置709は、制御部701からの制御信号に従ってドア12のロックおよびロック解除を行う。
【0060】
記憶部702は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部702には、各種洗濯運転コースの洗濯運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部702には、これらプログラムの実行に用いられる各種パラメータや各種制御フラグが記憶される。
【0061】
制御部701は、操作部703、水位センサ704等からの各信号に基づいて、記憶部702に記憶されたプログラムに従い、モータ駆動部705、給水駆動部706、排水駆動部707、クラッチ駆動部708、ドアロック装置709等を制御する。
【0062】
ドラム式洗濯機1は、コース選択ボタン703cによるユーザの選択操作に基づき、各種運転コースの洗濯運転を行う。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。なお、運転コースによっては、中間脱水工程とすすぎ工程とが2回以上行われる場合がある。
【0063】
図8は、洗濯運転における、クラッチ機構部600による駆動ユニット30の駆動形態の切替えタイミングと、駆動モータ100の駆動タイミングを示す図である。
【0064】
駆動ユニット30の駆動形態は、洗濯運転が開始される前は、前回の洗濯運転における最終脱水工程の前での駆動形態の切替えにより、一軸駆動形態に切り替えられている。洗濯運転が開始されると、駆動形態は、給水の工程が終了するまで、引き続き一軸駆動形態に維持される。給水の途中から、駆動モータ100の動作が開始され、ドラム22および撹拌体24が一体的に回転する。このときのドラム22および撹拌体24の回転速度は、ドラム22内の洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度とされる。駆動モータ100は、右回りおよび左回りに交互に回転し、ドラム22および撹拌体24が交互に右回転および左回転する。ドラム22内の洗濯物は、バッフル23で撹拌され、ドラム22内に溜められた水に触れる。洗濯物が濡れることにより、ドラム22内での洗濯物の嵩が低減するとともに、洗濯物の摩擦係数が低減する。
【0065】
給水の工程が終了すると、駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる。切替えに必要な時間だけ、駆動モータ100の動作が停止する。切替えが完了すると、洗いの工程が開始され、駆動モータ100が再び動作する。ドラム22および撹拌体24が別々に同じ方向に回転する。このとき、ドラム22は一軸駆動形態のときと同じ回転速度で、撹拌体24はドラム22より速い回転速度で左右交互に回転する。ドラム22内の洗濯物が、バッフル23で掻き上げられては落とされることにより、ドラム22の内周面に叩き付けられる。加えて、ドラム22の後部では、回転する撹拌体24の羽根24aに洗濯物が接触し、羽根24aに洗濯物が擦られたり、羽根24aによって洗濯物が撹拌されたりする。これにより、洗濯物が洗われる。バッフル23のみによる叩き洗いよりも、洗濯物に加わる機械力が増加し、また、洗濯物のドラム22内での動きが活発になるため、洗浄性能の向上が期待できる。
【0066】
二軸駆動形態でのドラム22および撹拌体24の回転が開始されたときには、洗濯物の嵩および摩擦係数が低減しているので、撹拌体24が洗濯物に接触したときに、撹拌体24には過度な負荷が掛からない。よって、駆動モータ100のロックが防止される。
【0067】
洗いの工程が終了すると、駆動モータ100の動作が停止される。駆動形態は引き続き二軸駆動形態に維持されたまま、排水の工程が行われる。排水の工程が終了すると、駆動形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる。切替えが完了すると中間脱水工程に移行する。なお、この二軸駆動形態から一軸駆動形態への切替えは、排水の工程の前に行われても良い。
【0068】
中間脱水工程において、駆動モータ100が動作すると、ドラム22および撹拌体24は、ドラム22内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム22の内周面に押しつけられ、脱水される。
【0069】
中間脱水工程が終了すると、続いてすすぎ工程が行われる。すすぎ工程における給水の工程の前に、駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる。脱水が終わって一旦停止した駆動モータ100は、切替えの完了後、給水の開始とともに再び動作する。ドラム22および撹拌体24は、給水の工程およびすすぎの工程において、洗いの工程のときと同様に、別々に右回りおよび左回りに回転する。
【0070】
洗い工程と同様、ドラム22内の洗濯物が、バッフル23による撹拌によりドラム22の内周面に叩き付けられるとともに、撹拌体24の羽根24aに擦られたり、羽根24aによって洗濯物が撹拌されたりする。これにより、洗濯物がすすがれる。
【0071】
洗濯物に加わる機械力が増加し、また、洗濯物のドラム22内での動きが活発化するため、すすぎ性能の向上が期待できる。特に、すすぎ工程では、中間脱水工程によって脱水されるものの、洗濯物は濡れた状態にあるため、駆動モータ100のロックは生じにくい。そこで、すすぎ工程では、事前に一軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転を行わせることなく、給水の工程から、二軸駆動形態でドラム22および撹拌体24を回転させている。このため、一層のすすぎ性能の向上が期待できる。
【0072】
すすぎの工程が終了すると、駆動モータ100の動作が停止される。駆動形態は引き続き二軸駆動形態に維持されたまま、排水の工程が行われる。排水の工程が終了すると、駆動形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる。切替えが完了すると最終脱水工程に移行する。なお、この二軸駆動形態から一軸駆動形態への切替えは、排水の工程の前に行われても良い。
【0073】
最終脱水工程では、中間脱水工程と同様、ドラム22および撹拌体24が一体となって高速回転し、洗濯物が脱水される。なお、最終脱水工程では、中間脱水工程よりも脱水時間が長くされ、ドラム22および撹拌体24の回転速度が速くされる。
【0074】
最終脱水工程が終了すると、洗濯運転が終了する。
【0075】
次に、洗い工程およびすすぎ工程における、制御部701による制御処理について、
図9および
図10を参照し、詳細に説明する。
【0076】
図9は、洗い工程における制御処理を示すフローチャートである。
【0077】
洗い工程が開始されると、制御部701は、第2検知センサ654の検出結果に基づいて、駆動ユニット30の駆動形態が一軸駆動形態であるか否かを判定する(S101)。通常は、前回の洗濯運転における最終脱水工程の際に、一軸駆動形態への切替えが行われるため、今回の洗濯運転の開始時には、一軸駆動形態が維持されている。よって、制御部701は、駆動形態が一軸駆動形態であると判定すると(S101:YES)、給水バルブ51を開放させる(S102)。これにより、外槽20内への給水が開始され、洗剤を含む水が外槽20内へ供給される。
【0078】
一方、何らかの不具合の発生により、駆動形態が一軸駆動形態に切り替わっていない場合(S101:NO)、制御部701は、クラッチ機構部600のトルクモータ651を動作させ、駆動形態を一軸駆動形態に切り替える(S103)。第2検知センサ654の検出結果に基づき、一軸駆動形態への切替りを確認すると、制御部701は、給水バルブ51を開放させる(S102)。
【0079】
次に、制御部701は、水位センサ704の検知結果に基づいて、外槽20内の水位が撹拌水位に到達したか否かを判定する(S104)。撹拌水位は、ドラム22および撹拌体24の回転を開始する水位として予め定められた水位であり、ドラム22の周面が水に浸るような水位であって、後述の洗い水位より低い水位とされる。
【0080】
外槽20内の水位が撹拌水位に到達すると(S104:YES)、制御部701は、駆動モータ100を動作させる(S105)。ドラム22および撹拌体24が一体となって低速で回転し、ドラム22内の洗濯物が、溜められた水に接触しつつ撹拌され、水で濡らされる。
【0081】
制御部701は、予め定められた給水時間が経過すると(S106:YES)、駆動モータ100を停止させるとともに給水バルブ51を閉鎖させる(S107)。制御部701は、水位センサ704の検知結果に基づいて、外槽20内の水位が予め定めた洗い水位に到達したか否かを判定する(S108)。洗濯物の容量が多く、多くの水が洗濯物に吸収される場合には、1回の給水時間で、洗い水位に到達することが難しい。外槽20内の水位が洗い水位に到達していなければ(S108:NO)、制御部701は、再び、給水バルブ51を開放させるとともに(S109)、駆動モータ100を動作させる(S105)。こうして、外槽20内の水位が洗い水位に到達するまで、ステップS105ないしS109の処理が繰り返される。外槽20内の水位が洗い水位に到達したとき、ドラム22内の洗濯物は、十分に万遍なく濡れている。
【0082】
外槽20内の水位が洗い水位に到達すると(S108:YES)、制御部701は、トルクモータ651を動作させ、駆動ユニット30の駆動形態を二軸駆動形態に切り替える(S110)。第1検知センサ653の検出結果に基づき、二軸駆動形態への切替りを確認すると、制御部701は、駆動モータ100を動作させる(S111)。ドラム22が低速で、撹拌体24がドラム22より高速で、それぞれ別々に回転し、ドラム22内の洗濯物が高い機械力と洗剤の力とにより洗われる。
【0083】
予め定められた洗い時間が経過すると(S112:YES)、制御部701は、駆動モータ100を停止させる(S113)。そして、制御部701は、排水バルブ40を開放させる(S114)。外槽20内の水が機外へ排出される。
【0084】
制御部701は、排水が完了したか否かを判定する(S115)。制御部701は、たとえば、外槽20内の水位が水位センサ704により測定可能な下限水位に到達した後、所定の時間が経過したときに、排水が完了したと判定する。制御部701は、排水が完了したと判定すると(S115:YES)、排水バルブ40を閉鎖させる(S116)。そして、制御部701は、トルクモータ651を動作させ、駆動ユニット30の駆動形態を一軸駆動形態に切り替える(S117)。こうして、洗い工程の制御処理が終了する。
【0085】
図10は、すすぎ工程における制御処理を示すフローチャートである。
【0086】
すすぎ工程が開始されると、制御部701は、トルクモータ651を動作させ、駆動ユニット30の駆動形態を二軸駆動形態に切り替える(S201)。第1検知センサ653の検出結果に基づき、二軸駆動形態への切替りを確認すると、制御部701は、給水バルブ51を開放させるとともに駆動モータ100を動作させる(S202)。外槽20内に給水されつつ、ドラム22が低速で、撹拌体24がドラム22より高速で、それぞれ別々に回転し、ドラム22内の洗濯物が高い機械力によりすすがれる。
【0087】
制御部701は、予め定められた給水時間が経過すると(S203:YES)、駆動モータ100を停止させるとともに給水バルブ51を閉鎖させる(S204)。制御部701は、水位センサ704の検知結果に基づいて、外槽20内の水位が予め定めたすすぎ水位に到達したか否かを判定する(S205)。外槽20内の水位が洗い水位に到達していなければ(S108:NO)、制御部701は、再び、給水バルブ51を開放させるとともに駆動モータ100を動作させ、る(S202)。こうして、外槽20内の水位がすすぎ水位に到達するまで、ステップS202ないしS205の処理が繰り返される。
【0088】
外槽20内の水位がすすぎ水位に到達すると(S205:YES)、制御部701は、駆動モータ100を動作させる(S206)。給水が止められた状態で、引き続き、洗濯物がすすがれる。
【0089】
予め定められた洗い時間が経過すると(S207:YES)、制御部701は、駆動モータ100を停止させる(S208)。そして、制御部701は、排水バルブ40を開放させる(S209)。外槽20内の水が機外へ排出される。
【0090】
排水が完了すると(S210:YES)、制御部701は、排水バルブ40を閉鎖させる(S211)。そして、制御部701は、トルクモータ651を動作させ、駆動ユニット30の駆動形態を一軸駆動形態に切り替える(S212)。こうして、すすぎ工程の制御処理が終了する。
【0091】
<実施の形態の効果>
以上、説明した通り、本実施の形態によれば、洗い工程およびすすぎ工程において、ドラム22と撹拌体24とが、撹拌体24の回転速度がドラム22の回転速度より速くなるように回転する。これにより、ドラム22内の洗濯物は、バッフル23による撹拌によりドラム22の内周面に叩き付けられるのみならず、回転する撹拌体24の羽根24aによって擦られる。よって、バッフル23によって洗濯物が撹拌されるだけの構成に比べて、洗浄性能およびすすぎ性能を向上させることができる。
【0092】
さらに、本実施の形態によれば、ドラム22内に水が溜められている状態において一軸駆動形態によりドラム22および撹拌体24を一体的に回転させ、洗濯物をドラム22内の水で濡らし、洗濯物の嵩および摩擦係数を低減させた後に、二軸駆動形態によりドラム22および撹拌体24を別々に回転させるようにしている。これにより、洗濯物による過度の負荷が撹拌体24に掛かることを防止でき、駆動モータ100のロックを防止できる。また、撹拌体24との強い擦れによる洗濯物の痛みが防止できる。
【0093】
さらに、本実施の形態によれば、水が溜められている状態での一軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転を行う前に、一軸駆動形態への切替えが完了しているか否かが検知され、切替えが完了していなければ一軸駆動形態への切替えが行われる。これにより、誤って、二軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転が行われてしまうことを防止でき、駆動モータ100のロックを一層防止できる。
【0094】
さらに、本実施の形態によれば、外槽20内の水位が洗い水位に到達するまで、一軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転を行わせるようにしているので、ドラム22内の洗濯物が十分に濡れた状態で、二軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転を行わせることができ、駆動モータ100のロックを一層防止できる。
【0095】
さらに、本実施の形態によれば、外槽20内の水位が撹拌水に到達し、ドラム22が水に浸った後に、一時駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転を行わせるようにしているので、洗濯物が外槽20内に溜められた水に接触できない状態でドラム22および撹拌体24の回転が行われることを防止でき、無駄な電力消費を防止できる。
【0096】
さらに、本実施の形態によれば、すでに洗濯物が濡れた状態にあるため駆動モータ100のロックが生じにくいすすぎ工程では、一軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転を行うことなく、給水の工程から二軸駆動形態によりドラム22および撹拌体24を回転させているため、すすぎ性能の一層の向上が期待できる。
【0097】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0098】
たとえば、上記実施の形態において、注水管53の注水口がドラム22内に直接臨み、ドラム22内の洗濯物に向けて、注水口からシャワー状に水が供給される構成が採られても良い。この場合、外槽20内の水にドラム22が浸っていなくとも、洗濯物を濡らすことができるので、
図11に示す制御処理おける、撹拌水位を検知するステップS104の処理が削除され、
図11に示す制御処理のように、給水バルブ51が開放されると、直ちに駆動モータ100が動作される。
【0099】
さらに、上記実施の形態では、外槽20内の水位が洗い水位に到達した後に、二軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転が開始される。しかしながら、これに限られず、1回目の給水時間が経過した後に、二軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転が開始される構成が採られても良い。
【0100】
さらに、上記実施の形態では、洗い時間およびすすぎ時間が経過したときに、駆動モータ100が停止される。しかしながら、排水の工程の後に、駆動モータ100が停止される構成が採られても良い。
【0101】
さらに、上記実施の形態では、すすぎ工程において、給水の工程の開始と同時に二軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転が開始される。しかしながら、給水の工程の途中から、あるいは、外槽20内の水位がすすぎ水位に到達してすすぎの工程に移行した後に、二軸駆動形態によるドラム22および撹拌体24の回転が開始される構成が採られても良い。
【0102】
さらに、上記実施の形態では、ドラム22が、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。しかしながら、ドラム式洗濯機1は、ドラム22が、水平軸を中心に回転するような構成とされても良い。
【0103】
さらに、上記実施の形態のドラム式洗濯機1は、乾燥機能を備えていないが、本発明は、乾燥機能を備えたドラム式洗濯機、即ち、ドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。
【0104】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。