(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開閉自在のハウジングと、前記ハウジング内に収容された防護シートと、作動時において前記ハウジングを開口させるための開口手段を有している防護シートの展開装置であって、
前記開閉自在のハウジングが、
開口部を有する箱型の第1ハウジングと開口部を有する箱型の第2ハウジングが、それぞれの開口部が閉塞されるように組み合わされることで、内部に細長い収容空間が形成されたものであり、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが、
作動前は閉塞され、作動時には開口できるように仮留め手段で仮留めされているものであり、
前記細長い収容空間内には、前記防護シートと、前記仮留め手段を解除してハウジングを開口させるための前記開口手段が収容されており、前記防護シートは、第1端部側が前記ハウジングに固定され、第2端部側が先端部となるものであり、
前記開口手段が、電気式点火器とピストンを有するアクチュエータであり、
前記アクチュエータが作動してピストンが突き出されて前記仮留め手段が解除され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが開口されることで、収容空間に収容されていた前記防護シートが第2端部側から落下して、鉛直方向に展開されるものであって、
前記防護シートが、放射線および炎の少なくとも一方を遮断するものである、防護シートの展開装置。
前記防護シートが、放射線防護シートと防炎シートの2枚が重ねられており、作動時において、防炎シートが外側になり、放射線防護シートが内側になって展開するように収容
されているものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の防護シートの展開装置。
前記防護シートが、折り畳まれた形態、および巻き込まれた形態のいずれかの形態で収容されているものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の防護シートの展開装置。
請求項1〜8のいずれか1項に記載の防護シートの展開装置を建物の外壁または庇に取り付けて使用する、作動時には展開された防護シートで建物を外側から覆う、防護シートの展開装置の使用方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<防護シートの展開装置>
図1〜
図5により説明する。
図1(a)、
図2に示す防護シートの展開装置1は、開閉自在のハウジング10と、ハウジング10内に収容された防護シート40と、作動時においてハウジング10を開口させるための開口手
段を有している。
【0009】
開閉自在のハウジング10は、第1ハウジング11と第2ハウジング21が組み合わされているものである。
第1ハウジング11は、一面のみが開口された(第1開口部12)、外形が直方体の箱状のものである。
第2ハウジング21は、一面のみが開口された(第2開口部22)、外形が直方体の箱状のものである。
第1ハウジング11と第2ハウジング21は、第1ハウジング11の第1開口部12と第2ハウジング21の第2開口部22で組み合わされて閉塞されており、内部に細長い閉塞された収容空間
50が形成されている。
第1ハウジング11と第2ハウジング12は、同形状であることが好ましいが、大きさは同一でもよいし、異なっていてもよい。
第1ハウジング11と第2ハウジング12は、
図1、
図2では外形は直方体形状であるが、第1ハウジング11と第2ハウジング12を組み合わせて、外形が円柱に類似する形状になるものであってもよい。
第1ハウジング11と第2ハウジング12は、金属、合成樹脂、それらの組み合わせなどからなるものを使用することができる。
【0010】
第1ハウジング11と第2ハウジング21は、第1ハウジング11の第1後面14と第2ハウジング21の第2後面24が、ヒンジ30により接続されている。
第1ハウジング11の第1前面15の外側には第1突起16が形成され、第2ハウジング21の第2前面25の外側には第2突起26が形成され、互いに当接されている。
互いに当接されている第1突起16と第2突起26の長さ方向の中間位置には、第1突起16と第2突起26の両方に跨って仮留め手段となるキャップ35が嵌め込まれている。
キャップ35が嵌め込まれた第1突起16と第2突起26の一部(キャップ35の長さ方向の中間部)には、作動時においてキャップ35が外れて第1ハウジング11と第2ハウジング21が開口されやすくするための手段19が形成されていることが好ましい。
前記開口されやすくするための手段19としては、例えば、ノッチ、点線状の切り込み、薄肉部のいずれかからなる脆弱部を形成することができるほか、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、第1ピストン体114がキャップ35を直接突くようにしてもよい。
【0011】
キャップ35は、
図3に示すように内側に長さ方向に連続した溝36を有しているものであり、弾力性のある合成樹脂製や金属製のものが好ましい。
溝36の幅W2は、当接された第1突起16と第2突起26の合計幅W1よりも僅かに小さくなるように調整されており(W1>W2)、前記寸法差により、キャップ35は第1突起16と第2突起26の両方に対して圧入されている。
このようにして第1突起16と第2突起26の両方に対して圧入されていることから、キャップ35は仮留め手段として機能することができる。
仮留め手段は、作動前には第1ハウジング11と第2ハウジング21が開口することを防止し、作動時には容易に外れて(または破壊されて)第1ハウジング11と第2ハウジング21が開口されるように機能するものである。
第1突起16と第2突起26、およびキャップ35の組み合わせは仮留め手段の一例であり、他の同様の機能を有する仮留め手段を使用することもできる。
【0012】
ハウジング10内の収容空間
50内には、防護シート40が収容されている。
防護シート40は、放射線や炎などから建物内にいる人を防護するためのものであり、幅、長さ、形状などは、建物の大きさや形状に応じて調整する。
放射線シート(放射線を遮断できるシート)としては、レンゴー株式会社から販売されている熱可塑性エラストマーと無機物を含むシート、特開2013−181793号公報に記載の放射線遮蔽材、日本タングステン株式会社から販売されているタングステンとエラストマーの複合材料からなるタングステンシート、特開2013−127021号公報に記載の高密度複合材料などを使用することができる。
防炎シートしては、菊池シート工業株式会社から販売されている「シリカクロス耐火シート」、トラスコ中山株式会社から販売されている各種防炎シート、萩原工業株式会社から販売されている「PE防炎シート」、特開平10−100295号公報に記載の防炎シートなどを使用することができる。
【0013】
防護シート40は、第1端部41側が第1ハウジング11の第1底面13に接着剤やボルトとナットの組み合わせなどにより固定されており、第2端部42側が先端部となるものである。
防護シート40の第2端部42側には、作動時の展開を補助するため、球状の錘43が取り付けられている。
防護シート40は、
図1に示すように折り畳まれた形態で収容されていてもよいし、
図4に示すように巻き込まれた形態で収容されていてもよい。
【0014】
防護シート40は、機能の異なる防護シートを2枚または3枚以上組み合わせて使用することができる。
図5は、放射線防護シート40aと防炎シート40bの2枚が重ねられており、作動時において、防炎シート40bが外側になり、放射線防護シート40aが内側(建物側)になって展開するように収容されている形態である。
放射線防護シート40aと防炎シート40bは、接着などの方法により1枚のシートにされていてもよいし、分離された2枚のシートであってもよい。
【0015】
ハウジング10内の収容空間
50内には、さらに開口手段50が収容されている。
開口手
段としては、電気式点火器とピストンを備えた公知のアクチュエータを使用することができる。
開口手
段は、図示していない電源やセンサーなどと接続されている。
【0016】
開口手
段として使用することができる公知のアクチュエータとしては、特許第4307946号公報の
図4、
図5に示された2本のピストンを有しているもの(二方向アクチュエータ)、特開2008−163971号公報の
図1〜
図5に示された1本のピストンを有しているもの、特開2008−64219号公報の
図1〜
図3に示された1本のピストンを有しているもの、特開2007−333044号公報の
図4に示された1本のピストンを有しているもの、特開2006−256396号公報の
図1〜
図3に示された1本のピストンを有しているもの(一方向アクチュエータ)などを使用することができる。
本発明の実施形態では、開口手
段として、
図6、
図7に示すように特許第4307946号公報の
図4、
図5に示された2本のピストンを有しているアクチュエータを使用している。但し、他の図面との番号の重複を避けるため、
図6、
図7では、特許第4307946号公報の
図4、
図5に示されている10、11、12……21、22、23などの二桁の番号を100、111、112……121、122、123などの100番台の番号に訂正して示している。
【0017】
次に、
図1、
図2において、開口手段として
図6、
図7に示すアクチュエータ100(特許第4307946号公報の
図4、
図5に示されたアクチュエータ10)を使用した実施形態の動作を説明する。
なお、
図1(a)、
図2のアクチュエータ100は、取り付け位置を示すためのものであり、実際の形状を示しているものではない。
図1(a)においてアクチュエータ100は、第1ピストン体114が仮留め手段35(第1突起16と第2突起26)と内側から正対し、第2ピストン体124が第2ハウジング21の第2底面23と正対するように第1底面13側に取り付けられている。
【0018】
作動時には、
図6に示す火工品カートリッジ(電気式点火器)131の電極に通電され、火工品の爆発的燃焼によって発生する高圧ガスが、第1シリンダー本体111の第1シリンダー穴112の第1ピストン体114より下方の密閉空間A内に充たされる。
そのことによって、連通孔閉塞部114cを第1シリンダー本体111に固定している固定ピンP
1 が破断されて、
図7に示すように、第1ピストン体114は急激に突き出されて、正対する第1前面15と第2前面25の境界部(第1突起16と第2突起26の境界部)を突き破って仮留め手段35を内側から突き外し(
図1(b))、ピストン部114bが環状ストッパー113に当接することによって第1ピストン体111は停止される。このとき、開口されやすくするための手段(脆弱部または貫通孔)19が形成されていると、前記動作がより円滑になされるので好ましい。
【0019】
また、上記動作と並行して、連通孔閉塞部114cが上昇して連通孔118が現れることにより、密閉空間Aから連通孔118を経由して高圧の燃焼ガスが第2シリンダー穴122へ流入し、
図7に示すように、筒体125およびロッド128を下方へ急激に押し出し、第2ハウジング21の第2底面23に激しく衝突させる。
このようにして、仮留め手段35が内側からの衝撃で外れ、第2底面23が押されることから、第1ハウジング11と第2ハウジング21は、第1前面15と第2前面25において開口される。このとき、第1後面14と第2後面24は、ヒンジ30で開閉自在に接続されているため分離しない。
【0020】
流入するガス圧力によって、筒体125を固定している固定ピンP
2 およびロッド128を固定している固定ピンP
3 が破断されることによって、筒体125は第2シリンダー本体121の内壁に沿って駆動され、後端側のフランジ部126が第2シリンダー本体121の先端側のフランジ部123に当接して停止される。
同時にロッド128は後端側のフランジ部129が筒体125の先端側のフランジ部127に当接して停止される。
第2シリンダー本体121の第2ピストン体124は、筒体125とロッド128との二段構成とされているので、単段構成の第1ピストン体114と比較してほぼ2倍の駆動ストロークを持っているため、確実に第2底面23に衝突させることができる。
【0021】
このようにして第1ハウジング11と第2ハウジング21が開口されると、
収容空間50に収容されている防護シート40は、第2端部42(錘43)側から自然落下して、鉛直方向に展開される。
【0022】
図6、7に示す二方向アクチュエータに代えて公知の一方向アクチュエータを使用して、内側から衝撃を与えて仮留め手段35を外して、第1ハウジング11と第2ハウジング21を開口させるようにすることができる。その他、公知の一方向アクチュエータを使用して、第2ハウジング21の第2底面23に内側から衝撃を与えることで仮留め手段35を外して、第1ハウジング11と第2ハウジング21を開口させるようにすることもできる。
【0023】
<防護シートの展開装置の使用方法>
(1)
図8、
図9に示す防護シートの展開装置1の使用方法
図8、
図9は、木造家屋などの壁の薄い建物に適した実施形態であり、壁201と窓202を一緒に覆う実施形態である。
図8は、建物200の庇203の内側面203aに防護シートの展開装置1が取り付けられている。
防護シートの展開装置1は、第1ハウジング11の第1底面13が庇203(内側面203a)に固定されており、壁201と窓202との間には間隔がある。
制御装置150が防護シートの展開装置1の近くの庇203(内側面203a)に取り付けられている。制御装置150は、熱センサーや放射線センサー、熱(炎)や放射線を検知した後、防護シートの展開装置1のアクチュエータ100(図示していない)を作動させるための制御手段、必要に応じて電源(蓄電池など)が収容されている。
なお、防護効果を高めるため、第1ハウジング11と第2ハウジング21の内側または外側にも防護シートを貼り付けることができる。
【0024】
熱センサーや放射線センサーが異常を検知すると、アクチュエータ100が作動して、第1ピストン体114が突き出され(
図6、
図7)、第1突起16と第2突起26を含む部分を突き破り、衝撃により仮留め手段35が外れる(
図1(b)参照)。
さらに第1ピストン体114と同時に第2ピストン体124が突き出され(
図6、
図7)、第2ハウジング21の第2底面23に激しく衝突して押し下げることで、第1ハウジング11が固定された状態で、ヒンジ30を基点として第2ハウジング21のみが壁201側に開くことで開口される。
その後、内部の防護シート40は、第2端部42(錘43)側から自然落下して、鉛直方向に展開され、壁201や窓202を外側から覆って防護する。
また、この実施形態では、第2ハウジング21が第1ハウジング11から脱落して、地面に落下することで開口されるようにしてもよい。
なお、作動の確実性を確保するため、防護シートの展開装置1は、建物200の内部からの操作で作動できるようにすることもできる。
【0025】
(2)
図10、
図11に示す防護シートの展開装置1の使用方法
図10、
図11は、壁の厚いコンクリート建築物に適した実施形態であり、主に窓202を覆う実施形態である。
図10は、建物200の壁201から突き出された支持板140に防護シートの展開装置1が取り付けられている。
支持板140は、
図8に示す庇203のない建物における庇203の代わりになるものである。
防護シートの展開装置1は、支持板140から延ばされた複数本の支持棒145にヒンジ30を含む部分が固定されており、壁201と窓202との間には間隔がある。
支持棒145は、複数本(例えば3〜10本)が等間隔で配置されてハウジングを支持しているものであり、防護効果を高めるため、複数の支持棒145間にも防護シートを張り渡すことが好ましい。
アクチュエータ100(図示していない)は、第1ハウジング11または第2ハウジング21に取り付けられている。
制御装置150は、支持板140の上に取り付けられている。制御装置150は、熱センサーや放射線センサー、熱(炎)や放射線を検知した後、防護シートの展開装置1のアクチュエータ100を作動させるための制御手段、必要に応じて電源(蓄電池など)が収容されている。
なお、防護効果を高めるため、第1ハウジング11と第2ハウジング21の内側または外側にも防護シートを貼り付けることができる。
【0026】
熱センサーや放射線センサーが異常を検知すると、アクチュエータ100が作動して、衝撃により仮留め手段35が外れ、さらに衝撃により第1ハウジング11の第1底面13が外側に押し拡げられることで、ヒンジ30を基点として第1ハウジング11と第2ハウジング21の両方が左右に拡がって開口される。
その後、内部の防護シート40は、第2端部42(錘43)側から自然落下して、鉛直方向に展開され、壁201や窓202を外側から覆って防護する。
図11では、防護シート40の第1端部41は第2ハウジング21の第2底面23に固定されているが、第1ハウジング11側に固定されていてもよい。
なお、作動の確実性を確保するため、防護シートの展開装置1は、建物200の内部からの操作で作動できるようにすることもできる。
【0027】
(3)
図12、
図13に示す防護シートの展開装置1の使用方法
図12、
図13は、
図10、
図11の防護シートの展開装置1の改変例である。
図10、
図11の実施形態とは、支持棒145を使用せず、支持板140に直接ヒンジ30が埋設されていることが異なっている。
また支持板140に埋設されたヒンジ30を使用しているため、作動時に開口できるようにするため、第1ハウジング11の第1後面14と第2ハウジング21の第2後面24が傾斜面となっている。
【0028】
(4)
図14、
図15に示す防護シートの展開装置1の使用方法
図14、
図15は、防護シートの展開装置1を壁に直接固定する実施形態であるため、建物の形状や構造に拘わらず適用することができる。
図14は、建物200の壁201に第1ハウジング11の第1後面14が固定されて防護シートの展開装置1が取り付けられている。
第2ハウジング21は、第1ハウジング11よりも小さくなっており、第2後面24は傾斜面となっている。
制御装置150も同様に壁201に取り付けられている。制御装置150は、熱センサーや放射線センサー、熱(炎)や放射線を検知した後、防護シートの展開装置1のアクチュエータ100(図示していない)を作動させるための制御手段、必要に応じて電源(蓄電池など)が収容されている。
なお、防護効果を高めるため、第1ハウジング11と第2ハウジング21の内側または外側にも防護シートを貼り付けることができる。
【0029】
熱センサーや放射線センサーが異常を検知すると、アクチュエータ100が作動して、衝撃により仮留め手段35が外れる。さらに衝撃により第2ハウジング21の第2底面23が押し下げられることで、第1ハウジング11が固定された状態で、ヒンジ30を基点として第2ハウジング21のみが壁201から離れるように開くことで開口される。
その後、
図15に示すように内部の防護シート40は、第2端部42(錘43)側から自然落下して、鉛直方向に展開され、壁201や窓202を外側から覆って防護する。
また、この実施形態では、第2ハウジング21が第1ハウジング11から脱落して、地面に落下することで開口されるようにしてもよい。
なお、作動の確実性を確保するため、防護シートの展開装置1は、建物200の内部からの操作で作動できるようにすることもできる。
【0030】
本発明の防護シートの展開装置とその使用方法は、建物全体を覆う実施形態、コンクリート建築物など建物の壁自体に放射線や炎に対する遮蔽効果がある場合には、窓や出入り口を覆う実施形態に適用することができ、特に緊急時の一次避難所などの建物全体、窓、出入り口を覆う実施形態として好適である。