(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385175
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】車両用信号灯
(51)【国際特許分類】
F21S 43/237 20180101AFI20180827BHJP
F21S 43/31 20180101ALI20180827BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20180827BHJP
F21Y 103/00 20160101ALN20180827BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20180827BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20180827BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20180827BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20180827BHJP
【FI】
F21S43/237
F21S43/31
F21S2/00 433
F21S2/00 437
F21S2/00 462
F21Y103:00
F21Y115:10
F21W103:00
F21W103:10
F21W103:20
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-145857(P2014-145857)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-24855(P2016-24855A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】松丸 卓矢
【審査官】
河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−097923(JP,A)
【文献】
特開2012−169231(JP,A)
【文献】
特開2012−230862(JP,A)
【文献】
特開2007−335410(JP,A)
【文献】
特開2008−097924(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0292101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/00
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の光源と、該光源の光軸に沿って配置された長尺の導光レンズと、該導光レンズから出射する光を反射又は拡散させるリフレクタを備えた車両用信号灯において、
前記導光レンズを、第1レンズと、該第1レンズの反光源側端部に第1および第2全反射面を有する連結部を介して連なる第2レンズとで構成し、
前記光源は、前記第1レンズの一方の端面に設けた入光面に対向して配設され、
前記第1レンズは、前記入光面から当該第1レンズに入射する光を前面側に出射させる複数のレンズカットを背面に長手方向に沿って形成し、
前記光源及び前記第1レンズが、前記リフレクタの前方に配置され、
前記第2レンズは、前記第1レンズと前記リフレクタの間に位置し、前記第1レンズの長手方向に沿って長尺に形成され、
前記第2レンズの上面には、当該第2レンズの長手方向に沿って複数のレンズカットを備え、
前記リフレクタは、前記第1レンズの背面側に配置された円弧曲面状の部材であって、その前面は反射面又は拡散面を構成するとともに、前記光源及び前記第1レンズを覆うように前方に向かって円弧状に延びており、
前記第1全反射面は、前記第1レンズの反光源側端部において当該第1レンズの前面と背面の間に位置し、前記入光面を通って当該第1レンズに入射した前記光源からの出射光を、前記連結部内を通って前記第2全反射面に向けて反射させる傾斜面として形成され、
前記第2全反射面は、垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて側面視横V字状を成す上反射面及び下反射面を備え、前記第1全反射面で反射して前記連結部内を通ってきた反射光を前記第2レンズに向けて反射させ、
前記第2レンズに形成された前記複数のレンズカットは、前記光源から前記第1レンズに入射した後に前記第1及び第2全反射面を経て前記第2レンズに入射する光を前記リフレクタに向けて出射させる複数の傾斜面を設けたレンズカットである
ことを特徴とする車両用信号灯。
【請求項2】
前記第1レンズの前記光源に対向する入光面に、前記光源から出射する光軸から所定角度範囲内の光を光軸に沿って第1レンズ内を導光させる配光制御部を形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用信号灯。
【請求項3】
前記第2全反射面を上下2枚の45°面で構成するとともに、両45°面を垂直面に対して傾斜させたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用信号灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の光源によって導光レンズとリフレクタを効率良く発光させるようにした車両用信号灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両後部の左右に配置されるテールランプ等の車両用信号灯には、従来、車幅方向に配置された複数の光源から出射される光をリフレクタによって照射方向に向けて反射させるようにしたものが使用されているが、斯かる構成を採用する車両用信号灯は、複数の光源を必要とするために部品点数が多くなってコストアップを招くという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1には、
図9及び
図10に示す車両用信号灯が提案されている。
【0004】
即ち、
図9は特許文献1において提案された車両用信号灯の平断面図、
図10は
図9のD−D線断面図であり、図示の車両用信号灯101においては、車幅方向(
図9の左右方向)に延びるように配置された導光体103に対して、その車幅方向の端面から入射した光源102からの光を、その後面部から後方側(
図10の右側)へ出射する構成が採用されている。又、導光体103の後方側には、車幅方向に延びるリフレクタ104が配置されており、このリフレクタ104には、導光体103の後方側に位置する第1反射部104Aと、その下方側に隣接する第2反射部104Bが設けられており、第1反射部104Aには、複数の第1反射素子104Asが車幅方向に沿って階段状に形成されている。
【0005】
而して、リフレクタ104の第1反射部104Aに形成された第1反射素子104Asによって、導光体103の後面部から後方側へ出射した光をリフレクタ104の第2反射部104Bへ向けて反射させ、第2反射部104Bは、各第1反射素子104Asからの反射光を前方へ向けて反射させるよう構成されているため、正面視において、導光体103の陰にならない位置に配置されたリフレクタ104の第2反射部104Bが略均一に光っているようにすることができる。そして、このような効果を、単一の光源102とリフレクタ104との間に単一の導光体103を配置するだけの簡単な構成によって得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−161729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案された
図9及び
図10に示す車両用信号灯101においては、光源102から出射する強度の強い光をリフレクタ104だけに向かわせるよう制御することができないため、リフレクタ104を効率良く発光させることができないという問題があった。因みに、導光体103からリフレクタ104に向かう光は、導光体103から前面側に向かって出射する光に比べて光路長が長くてロスが大きいため、リフレクタ104の面を拡散面とした場合にはリフレクタ104が暗くなってしまう。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、単一の光源で導光レンズとリフレクタを効率良く発光させることができる車両用信号灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、単一の光源と、該光源の光軸に沿って配置された
長尺の導光レンズと、該導光レンズから出射する光を反射又は拡散させるリフレクタを備えた車両用信号灯において、
前記導光レンズを、第1レンズと、該第1レンズの反光源側端部に第1および第2全反射面
を有する連結部を介して連なる第2レンズとで構成し、
前記光源は、前記第1レンズの一方の端面に設けた入光面に対向して配設され、
前記第1レンズ
は、前記入光面から当該第1レンズに入射する光を前面側に出射させる複数のレンズカットを背面に長手方向に沿って形成し、
前記光源及び前記第1レンズが、前記リフレクタの前方に配置され、
前記第2レンズ
は、前記第1レンズと前記リフレクタの間に位置し、前記第1レンズの長手方向に沿って長尺に形成され、
前記第2レンズの上面には、当該第2レンズの長手方向に沿って複数のレンズカットを備え、
前記リフレクタは、前記第1レンズの背面側に配置された円弧曲面状の部材であって、その前面は反射面又は拡散面を構成するとともに、前記光源及び前記第1レンズを覆うように前方に向かって円弧状に延びており、
前記第1全反射面は、前記第1レンズの反光源側端部において当該第1レンズの前面と背面の間に位置し、前記入光面を通って当該第1レンズに入射した前記光源からの出射光を、前記連結部内を通って前記第2全反射面に向けて反射させる傾斜面として形成され、
前記第2全反射面は、垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて側面視横V字状を成す上反射面及び下反射面を備え、前記第1全反射面で反射して前記連結部内を通ってきた反射光を前記第2レンズに向けて反射させ、
前記第2レンズに形成された前記複数のレンズカットは、前記光源から前記第1レンズに入射した後に前記第1及び第2全反射面を経て前記第2レンズに入射する光を前記リフレクタに向けて出射させる複数の傾斜面を設けたレンズカットであることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第1レンズの前記光源に対向する入光面に、前記光源から出射する光軸から所定角度範囲内の光を光軸に沿って第1レンズ内を導光させる配光制御部を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記第2全反射面を上下2枚の45°面で構成するとともに、両45°面を垂直面に対して傾斜させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光源から出射する強度の強い光は、導光レンズの第1レンズ内を光軸に沿ってロスなく直進し、第1及び第2全反射面で全反射して第2レンズに入射し、第2レンズ内を進む過程で該第2レンズの上面に形成された複数のレンズカットで屈折してリフレクタに向けて下方に出射し、リフレクタで反射又は拡散するため、リフレクタが効率良く発光する。
【0013】
又、光源から出射する強度が弱くてロスの少ない光は、導光レンズの第1レンズ内を全反射しながら進む過程で第1レンズの背面に形成された複数のレンズカットによって屈折して前面側へと出射するため、導光レンズ(第1レンズ)が効率良く発光する。
【0014】
従って、部品点数の増加やコストアップを招くことなく、単一の光源によって導光レンズとリフレクタを効率良く発光させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る車両用信号灯要部の斜視図である。
【
図5】本発明に係る車両用信号灯の右側面図である。
【
図8】本発明に係る車両用信号灯の導光レンズ端部の斜視図である。
【
図9】特許文献1において提案された車両用信号灯の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る車両用信号灯要部の斜視図、
図2は同車両用信号灯の正面図、
図3は
図2のA部拡大詳細図、
図4は本発明に係る車両用信号灯の平面図、
図5は同車両用信号灯の右側面図、
図6は
図2のB−B線断面図、
図7は
図2のC−C線断面図、
図8は本発明に係る車両用信号灯の導光レンズ端部の斜視図である。
【0018】
本発明に係る車両用信号灯1は、例えば車両後部の左右に配置されるテールランプとして使用されるものであって、不図示のハウジングとその前面開口部を覆う不図示の透明なアウタレンズによって画成される灯室内に、単一の光源であるLED2と、該LED2の光軸に沿って配置された配光制御用の導光レンズ3と、該導光レンズ3から出射する光を反射又は拡散させるリフレクタ4を収容して構成されている。
【0019】
上記LED2は、赤色LEDであって、正面視で左端部に配置されており、水平な光軸に沿って赤色光を出射する。尚、本実施の形態では、LED2として基板5に実装された面実装タイプのものが使用されているが、これに限らず砲弾タイプのもの等を使用することができる。
【0020】
LED2の光軸に沿って水平に配置された前記導光レンズ3は、丸棒状の第1レンズ3Aと、該第1レンズ3Aの背面側(
図4及び
図6の上側)に平行に配置された角棒状の第2レンズ3Bとで構成されており、この第2レンズ3Bは、第1全反射面6と第2全反射面7を介して第1レンズ3Aの右端部(LED2とは反対側の軸方向端部)に連結されている。より詳細には、第2レンズ3Bは、
図8に示すように、LED2の光軸と直交する連結部3Cによって第1レンズ3Aの右端部に連結されており、連結部3Cの両端角部に45°面を成す第1全反射面6と第2全反射面7がそれぞれ形成されている。ここで、第2全反射面7は、
図8に斜線にて示すように、上下2枚の45°面7a,7bで構成されており、これらの45°面7a,7bは、両者の稜線(境界線)を中心として垂直面に対して所定角度だけ傾斜して側面視横V字状を成すよう配置されている。
【0021】
又、
図3に詳細に示すように、第1レンズ3AのLED2に対向する端面は入光面8を構成しており、この入光面8の軸中心部には、LED2から出射する強度の強い光L2を光軸に沿って導光させる凸レンズ状の配光制御部8aが形成されている。
【0022】
更に、
図4、
図6及び
図8に示すように、導光レンズ3の第1レンズ3Aの背面には、鋸歯状の複数のレンズカット3aが長手方向に沿って形成されている。又、
図1、
図4及び
図8に示すように、導光レンズ3の第2レンズ3Bの上面には、鋸歯状の複数のレンズカット3bが長手方向に沿って形成されている。
【0023】
前記リフレクタ4は、導光レンズ3の背面側に配置された円弧曲面状の部材であって、その前面(内面)は反射面又は拡散面を構成している。ここで、前記LED2と導光レンズ3は、リフレクタ4の上部前方に配置されており、リフレクタ4の下半部は、LED2及び導光レンズ3を下方から覆うように前方に向かって円弧状に延びている(
図5及び
図7参照)。
【0024】
次に、以上のように構成された車両用信号灯1の作用について説明する。
【0025】
光源であるLED2に電流が供給されて該LED2が発光すると、該LED2から横方向に出射する光のうち、強度が比較的弱くてロスの少ない光(光軸から15°〜60°の角度範囲の光)L1は、第1レンズ3Aの入光面8の配光制御部8aの周囲から該第1レンズ3Aの内部へと入射する。そして、第1レンズ3A内に入射した強度の弱い光L1は、
図6に示すように第1レンズ3A内を全反射しながら右端側に向かって進み、その過程で第1レンズ3Aのレンズカット3aによって屈折し、
図6及び
図7に示すように第1レンズ3Aから前方に向かって出射するため、導光レンズ3(第1レンズ3A)の全体が均一に発光する。
【0026】
他方、LED2から出射する強度の強い光(光軸から15°以内の角度範囲の光り)L2は、
図3に示すように、第1レンズ3Aの入光面8に形成された配光制御部8aによって配光が制御され、第1レンズ3A内を光軸に沿ってロスなく直進する。この第1レンズ3A内を光軸に沿って直進する光L2は、連結部3Cに形成された第1全反射面6と第2全反射面7で全反射して第2レンズ3Bに入射し、第2レンズ3B内を進む過程で該第2レンズ3Bの上面に形成された複数のレンズカット3bで屈折して
図7に示すようにリフレクタ4に向かって下方に出射する。そして、第2レンズ3Bからリフレクタ4に向かって下方に出射する光L2は、リフレクタ4の内面で反射又は拡散して前方に向かって出射するため、リフレクタ4が効率良く発光する。尚、第2全反射面7には、光軸方向に揃えられた光L2が当たるため、通常の45°面で光L2を全反射させると、第2レンズ3Bに向けて光L2がうまく入射しない。このため、本実施の形態では、前述のように第2全反射面7を、
図8に斜線にて示すように、上下2枚の45°面7a,7bで構成するとともに、これらの45°面7a,7bを、両者の稜線(境界線)を中心として垂直面に対して所定角度だけ傾斜させて側面視横V字状を成すよう配置した。これにより、第1レンズ3A内を直進する光L2を光軸から若干角度をもたせて第2レンズ3Bへとうまく入射させることができる。
【0027】
以上の結果、本発明に係る車両用信号灯1によれば、部品点数の増加やコストアップを招くことなく、単一のLED2によって導光レンズ3とリフレクタ4を効率良く発光させることができるという効果が得られる。
【0028】
尚、以上は本発明に係る車両用信号灯1をテールランプとして使用する形態について説明したが、本発明は、ターンシグナルランプやポジションランプ等の他の任意の車両用信号灯に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用信号灯
2 LED(光源)
3 導光レンズ
3A 第1レンズ
3B 第2レンズ
3C 連結部
3a,3b レンズカット
4 リフレクタ
5 基板
6 第1全反射面
7 第2全反射面
7a,7b 第2全反射面の45°面
8 第1レンズの入光面
8a 入光面の配光制御部
L1 強度の弱い光
L2 強度の強い光