特許第6385195号(P6385195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385195
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】シームレスパイプ製造用ピアサープラグ
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20180827BHJP
   C22C 38/50 20060101ALI20180827BHJP
   C22C 38/54 20060101ALI20180827BHJP
   B21B 25/00 20060101ALI20180827BHJP
   B22D 25/06 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   C22C38/00 301H
   C22C38/50
   C22C38/54
   B21B25/00 A
   !B22D25/06
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-166591(P2014-166591)
(22)【出願日】2014年8月19日
(65)【公開番号】特開2016-41844(P2016-41844A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591274299
【氏名又は名称】新報国製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】横溝 勇太
(72)【発明者】
【氏名】小奈 浩太郎
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−179843(JP,A)
【文献】 特開平08−206709(JP,A)
【文献】 特開2002−047534(JP,A)
【文献】 特開平11−179407(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0264123(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0006946(US,A1)
【文献】 米国特許第05939018(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 − 38/60
B21B 17/00 − 25/06
B22D 1/00 − 5/04
B22D 21/00 − 23/06
B22D 25/00 − 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸化スケールを形成させたシームレスパイプ製造用ピアサープラグであって、
上記酸化スケールを除くプラグの成分組成が、質量%で、
C :0.10〜0.25%、
Si:0.05〜0.80%、
Mn:0.20〜1.00%、
Ni:2.5〜3.5%、
Cr:1.0〜2.0%、
Mo:2.5〜3.5%、
W :2.5〜3.5%、
Nb:0.07〜0.40%、及び
Ti:0.03〜0.40%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、
上記酸化スケールを除くプラグの組織構成が1〜10%の炭化物とマルテンサイトからなり、
上記マルテンサイト組織の平均結晶粒径が50μm以下であ
ことを特徴とするシームレスパイプ製造用ピアサープラグ。
【請求項2】
前記成分組成が、さらに、質量%で、
Mg:0.001〜0.100%、
REM:0.01〜0.50%、
Ca:0.0005〜0.0500%、
Al:0.005〜0.200%、及び
B :0.0001〜0.0050%
の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のシームレスパイプ製造用ピアサープラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンネスマン穿孔法によるシームレスパイプの製造において用いられるシームレスパイプ製造用ピアサープラグに関し、特に長寿命化されたピアサープラグに関する。
【背景技術】
【0002】
油井管は、主にマンネスマン穿孔法で製造されている。穿孔に用いられるピアサープラグは、工具の中では最も過酷な使用条件に晒される。近年、シームレスパイプに熱間での変形抵抗が高いステンレス鋼、高合金が用いられるようになっていることにより、ピアサープラグの寿命はますます低下し、甚だしい場合には、1パス穿孔が限度となっている。
【0003】
ピアサープラグの延命化に関して、PTA肉盛り、アーク溶射による表面改質による寿命改善が報告されている。
【0004】
特許文献1は、母材の表面にFeを主成分とする鉄線材をアーク溶射することによってFeやFeOなどの酸化物及びFe(メタル)で構成される被膜が形成された穿孔圧延用プラグを開示している。この被膜により、優れた遮熱性及び焼付き防止性を実現でき、長寿命のピアサープラグが得られる。
【0005】
特許文献2は主に特許文献1の素材の改良に関するものであり、鋳造後、脱水素処理された高硬度な素材が開示されている。
【0006】
これらの発明はピアサープラグの長寿命化に成功しているが、コスト高、品質ばらつきなどの課題がある。
【0007】
従来からのピアサープラグの延命化の方法として、表面に酸化スケールを付与する発明が報告されている。
【0008】
特許文献3は、表面に酸化スケールが生成した熱間加工用工具を開示している。酸化スケールは、外層からヘマタイト、マグネタイト、ウスタイトであり、マグネタイトが40体積%以上あると寿命が延長させる。
【0009】
特許文献4は、工具寿命の延長を可能とする熱間製管工具の製造方法を開示している。特許文献4は、金型鋳造の凝固組織は砂型に比較して微細となり、その結果、基体表面に生成する酸化スケールは基地組織の微細化によって緻密となり、耐剥離性及び耐焼付き性が向上することを開示している。
【0010】
特許文献5は、変形抵抗の高い材料を製管する場合でも高い使用寿命を有する熱間製管用工具を開示している。特許文献5では、Mo、Wの多量添加により高温変形性を確保し、Ni、Wによりスケールの耐剥離性、耐摩耗性を改善している。
【0011】
特許文献6は、安定して長い工具寿命を有する継目無鋼管穿孔圧延用工具を開示している。特許文献6では、基材側に形成されるスケール層を地鉄と複雑に絡み合うネット状スケール層とし、さらに、スケール層と基材との界面から基材側に深さ方向に500μmの範囲の組織を、面積率で50%以上のフェライト相を有する組織とすることにより、スケール層の剥離や摩滅を抑制し、穿孔圧延用工具の寿命を向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2009/057471号
【特許文献2】国際公開第2014/050975号
【特許文献3】特開平8−193241号公報
【特許文献4】特開平8−300014号公報
【特許文献5】特開平7−60314号公報
【特許文献6】特開2003−129184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ピアサープラグの長寿命化を目的として、これまで多くの発明がなされてきたが、依然としてステンレス鋼、高合金の穿孔寿命は満足なものが得られていない。
【0014】
ピアサープラグの損傷は、(1)頭部溶損及び焼付き、並びに(2)胴部のシワ及びエグレによるものである。いずれの損傷に対しても、高温強度及びスケール性状(密着性、厚さ)が影響する。さらに、その他の損傷として、(3)縦割れ(割損)がある。この損傷には延性、靱性、及び耐熱き裂性が影響する。
【0015】
これらの3つの課題を同時に解決しなければ、ピアサープラグの長寿命化は達成できない。本発明は、(1)高温強度の向上、(2)スケール性状(密着性、厚さ)の改善、(3)延性、靱性の向上、耐熱き裂性の改善により、長寿命化されたシームレスパイプ製造用ピアサープラグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、ピアサープラグを長寿命化する方法を鋭意検討した。その結果、適切な成分組成を選定し、焼入性を向上させ、プラグの組織を適切な量の炭化物とマルテンサイトとすることにより高温強度が大きく改善することを見出した。
【0017】
ピアサープラグの製造の最終工程では、潤滑性、断熱性を付与するためにスケール付け処理が施され、スケールを生成させた後に、スケールの剥離を防止するために冷却速度は20〜50℃/時間で炉冷される。本発明者らは、この冷却速度で炭化物を析出させるとともにマルテンサイト変態する適切な成分組成を選定することにより、高温強度を向上させることができることを見出した。
【0018】
また、本発明者らは、スケールの密着性がプラグの組織の結晶粒の粗さによることを見出した。
【0019】
ピアサープラグには、金型あるいは砂型鋳造された鋳鋼品が使われる。鋳造のままの結晶粒は、数百μm〜数十mmと粗大である。フェライト−パーライト変態したピアサープラグでは、スケール付けのための熱処理(オーステナイト変態)による粗大な結晶粒は微細となる。しかしながら、マルテンサイト変態したピアサープラグは、スケール付けのためにオーステナイト変態させても、いわゆる“メモリー効果”のために、結晶粒は粗大なままとなり、従来のピアサープラグと比較して、スケールの密着性が低下する。
【0020】
焼なまし(焼鈍)を繰り返すのみでは、本発明の成分組成を有する合金は、オーステナイト→マルテンサイト→オーステナイト→マルテンサイト変態を繰り返すだけで、結晶粒は鋳造の数百μm〜数十mmの粗大な粒のままである。
【0021】
スケール付の加熱、炉冷処理によってフェライト‐パーライト変態したピアサープラグと、マルテンサイト変態したピアサープラグとの結晶粒写真を、それぞれ図1図2に示す。フェライト‐パーライト組織のプラグの結晶粒は20μmと微細であるが、マルテンサイト変態したプラグの結晶粒は約500μmと粗大である。その結果、マルテンサイト組織プラグのスケール界面積は、図2に示すようにフェライト+パーライト組織プラグより明らかに小さく、それぞれのプラグを用いて13Crステンレス鋼穿孔試験の結果、プラグ寿命も6パスから3パスと半分に低下した。すなわち、単にピアサープラグの組織をマルテンサイトとするのみでは、高温強度は向上させることができるが、十分なスケール密着性は得られない。
【0022】
スケール付けにおいては、マトリックスとスケールの界面積が大きい方がスケールの密着性に優れる。スケールはマトリックスの粒内よりも粒界を選択的に酸化するので、プラグの結晶粒が微細なほうが、マトリックスとスケール界面積が増加し、その結果、スケールの密着性が向上する。
【0023】
そこで本発明者らは、スケール付け時にマルテンサイト変態させるプラグのスケール付けに当たって、結晶粒を微細化する方法を鋭意検討した。その結果、スケール付の前に、炭化物を粗大凝集させることにより、プラグの組織の平均結晶粒を微細にすることが可能であることを見出した。
【0024】
また、延性、靱性、耐熱き裂性について、一般的にマルテンサイト変態したピアサープラグでは、従来のフェライトーパーライト変態したピアサープラグよりも延性、靱性、耐熱き裂性は低下すると考えられていた。しかしながら、本発明者らは、C量と炭化物量を最適化することにより、これまでのピアサープラグよりも、むしろ延性、靱性、耐熱き裂性を向上させることができることを見出した。
【0025】
すなわち、本発明は、(1)炉冷でもマルテンサイト変態する非常に焼入性の高い成分組成の設計、(2)結晶粒を微細化、(3)焼入性と炭化物量に好ましいカーボン量の最適化により、長寿命化されたピアサープラグを提供するものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0026】
(1)表面に酸化スケールを形成させたシームレスパイプ製造用ピアサープラグであって、上記酸化スケールを除くプラグの成分組成が、質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.05〜0.80%、Mn:0.20〜1.00%、Ni:2.5〜3.5%、Cr:1.0〜2.0%、Mo:2.5〜3.5%、W:2.5〜3.5%、Nb:0.07〜0.40%、及びTi:0.03〜0.40%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、上記酸化スケールを除くプラグの組織構成が1〜10%の炭化物とマルテンサイト組織からなることを特徴とするシームレスパイプ製造用ピアサープラグ。
【0027】
(2)前記マルテンサイト組織の平均結晶粒径が50μm以下であることを特徴とする前記(1)のシームレスパイプ製造用ピアサープラグ。
【0028】
(3)前記ピアサープラグの成分組成が、さらに、質量%で、Mg:0.001〜0.100%、REM:0.01〜0.50%、Ca:0.0005〜0.0500%、Al:0.005〜0.200%、及びB:0.0001〜0.0050%の1種又は2種以上を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)のシームレスパイプ製造用ピアサープラグ。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高温強度とスケール性状(密着性、厚さ)を従来のピアサープラグよりも著しく向上させ、延性、靱性、耐熱き裂性を改善した、長寿命のシームレスパイプ製造用ピアサープラグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】フェライト+パーライト変態したピアサープラグの組織を示す図であり、(a)はピアサープラグ内部の組織、(b)はスケール界面の組織である。
図2】マルテンサイト変態したピアサープラグの組織を示す図であり、(a)はピアサープラグ内部の組織、(b)はスケール界面の組織である。
図3】(a)はスケール付したピアサープラグを走査型電顕(SEM)で観察した炭化物組織を示す図であり、(b)は炭化物を二階調化した図である。
図4】(a)は炭化物凝集処理後、スケール付したピアサープラグの組織を示す図であり、(b)炭化物凝集処理を施さずにスケール付したピアサープラグの組織を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について詳細に説明する。はじめに本発明のピアサープラグの成分組成について説明する。以下、成分組成に関する「%」の表記は、「質量%」を意味するものとする。
【0032】
Cは、焼入性に大きく影響する元素である。また、Mo、W、Nb、Crと炭化物を生成する。Cの含有量が0.10%未満では、焼入性が低下して、スケール付処理後の冷却でマルテンサイトが得られなくなる。Cの含有量が0.25%を超えると、炭化物量が多くなり、靱性及び耐熱き裂性が低下する。
【0033】
Siは脱酸元素である。Siの含有量が0.05%未満では、酸素量が高くなり、延性が低下する。Siの含有量が0.80%を超えると、耐酸化性が上がってきて、酸化スケールの膜厚が薄くなる。
【0034】
Mnは脱酸元素であり、焼入性の向上にC、Crとともに必須の元素である。脱酸元素としての効果を得るためには、Mnの含有量は0.20%以上必要である。Mnの含有量が、1.00%を超えると靱性が低下する。
【0035】
Niは、密着性の高い酸化スケールを生成させるに必須の元素である。Niの含有量が2.5%未満では、スケールとマトリックス界面の凹凸が減少する。Niの含有量が3.5%を超えると、炭化物凝集処理をしても結晶粒が微細とならない。
【0036】
Crは、C、Mnと同様に焼入性向上元素である。Crの含有量が1.0未満では、十分な焼入性が得られない。Crの含有量が2.0%を超えると、酸化スケールの生成が抑制されスケール厚さが不足する。
【0037】
Moは、マトリックスに固溶して高温強度を高める。また、複炭化物であるMC(Mは金属元素。以下同じ)を生成することによっても高温強度を高める。さらに、C、Cr、Mnと同様に焼入性向上元素である。Moの含有量が2.5%未満では、焼入性改善効果が十分得られず、高温強度も低下する。Moの含有量が3.5%を超えると、粒界炭化物が増加して延性、靱性が低下する。
【0038】
Wは、Moとともにマトリックスに固溶して高温強度を高める。また、MCタイプの炭化物を生成して高温強度を高める。また、Wは低融点スケールを生成する。Wの含有量が2.5%未満では、固溶強化が十分得られない。Moの含有量が3.5%を超えると、粒界炭化物が増加して延性、靱性が低下する。
【0039】
Nbは、炭化物をMCタイプの炭化物を生成するとともに、マトリックスに固溶して高温強度を高める。Nbの含有量が0.07%未満では強化が十分得られず、Nbの含有量が0.40%を超えると、粗大な炭化物が晶出して、靱性、延性が低下する。
【0040】
Tiは、TiNを生成するとともに、マトリックスに固溶して高温強度を高める。Tiの含有量が0.03%未満では強化が十分得られず、Tiの含有量が0.40%を超えると、粗大な窒化物が晶出して、靱性、延性が低下する。
【0041】
Mg、REM、及びCaは任意の添加元素であり、必須の元素ではないが、所定の範囲内で添加するとスケールの密着性の一層の改善が図れる。REMは希土類元素である。
【0042】
Mgは、含有量が0.001%未満ではスケール密着性改善効果が見られず、含有量が0.100%を超えると効果が飽和する。
【0043】
REMは、含有量が0.01%未満ではスケール密着性改善効果が見られず、含有量が0.50%を超えるとスケール厚さが薄くなってくる。
【0044】
Caは、含有量が0.0005%未満ではスケール密着性改善効果が見られず、含有量が0.0500%を超えると効果が飽和する。
【0045】
この他に、脱酸剤としてAlを、0.005〜0.200%の範囲で添加してもよい。添加量は0.005%〜0.200%である。
【0046】
また。焼入性向上のため、Bを0.0001〜0.0050%の範囲で添加してもよい。
【0047】
成分組成の残部は、Fe及び不可避的不純物である。不可避的不純物とは、原料にもともと含まれていた、又は製造の過程で混入したなどに起因して本発明に含まれる成分であり、意図的に入れたものではない成分を指す。
【0048】
延性、靭性、耐熱き裂性の観点から、不可避的不純物のうちP及びSは低い方が好ましく、0.02%以下とすることが好ましい。
【0049】
上記のような成分組成とすることにより、焼入性が著しく高くなり、鋳造のままでも、ほとんどがマルテンサイト変態する。
【0050】
次に、マトリックスの組織とスケールについて、説明する。
【0051】
プラグの組織構成は、1〜10%の炭化物とマトリックスがマルテンサイト組織である。炭化物とマルテンサイト組織は、高温強度を高めるとともに延性、靭性、耐熱き裂性も改善する。本発明の成分組成であれば、950〜1100℃でのスケール付け後、20〜50℃/時間の炉冷で、組織がマルテンサイト変態する。
【0052】
本発明のプラグの場合、マルテンサイト変態の前に炭化物が析出するために、光学顕微鏡あるいは硬さ測定でマルテンサイトと下部ベイナイトを識別することは困難であり、マルテンサイトと称する組織には下部ベイナイトを含むこともある。
【0053】
炭化物の量は、走査型電顕(SEM)を用いて、3000倍で5視野観察して、その面積率を求める。本合金の場合、NbCのような晶出炭化物と、MCのような冷却中に析出する炭化物がある。晶出炭化物は高温強度に寄与しないので、面積率の測定から除外して、析出炭化物の面積率を求める。一例を図3に示す。(a)はスケール付したピアサープラグを走査型電顕(SEM)で観察した炭化物組織を示す図であり、(b)は炭化物を二階調化した図である。
【0054】
炭化物量が1%未満では高温強度の改善が不十分であり、10%を超えると靱性、延性の低下が著しくなる。
【0055】
表面スケールの密着性は、スケールの組成とともにその凹凸に依存する。プラグの組織の結晶粒が微細であれば、密着性の高いスケールを生成させることができる。
【0056】
本発明においては、スケール付前に以下の処理を施し、炭化物を粗大凝集させることにより、プラグの結晶粒を、好ましくは50μm以下に微細化することが可能である。
【0057】
具体的には、マルテンサイト変態したプラグをAC変態点直下の700〜750℃で加熱して、MC、M23などの炭化物を凝集させて、マルテンサイトをフェライト+炭化物組織とした後、スケール付けを施す。これにより、マルテンサイトメモリー効果が消失し、微細なオーステナイト結晶粒を得ることができる。より具体的には、AC点−30〜AC点−150℃の温度範囲で、3〜20時間加熱すればよい。加熱温度が低いと炭化物が十分に凝集せず、加熱温度が高いと、実操業でAC変態点を超えるおそれがある。加熱時間が短いと、炭化物が十分に凝集せず、加熱時間が長いと効果が飽和する。
【0058】
図4に、炭化物凝集処理による結晶粒の一例として、750℃で5時間処理した後、スケール付け処理したプラグの写真を、無処理品と合わせて示す。無処理の場合の平均結晶粒径は87μmであったが、炭化物凝集処理により、平均結晶粒径は12μmと微細になった。
【0059】
この凝集炭化物はスケール付け処理の際に、一部は固溶するが、一部は残存する。残存炭化物とスケール付け冷却時の析出炭化物の分別はSEM観察では難しいので、すべて析出炭化物としてその面積を測定する。
【0060】
上記の処理に続いて、スケール処理を施す。スケール付処理は、炉内のCO濃度が1〜8%の燃焼ガス雰囲気で、950〜1100℃に3〜10時間加熱し、その後、20〜50℃/時間で炉冷することにより行う。CO濃度が低いと脱炭層が2mmよりも深くなり、高いとスケール厚さが薄くなる。処理温度が低いとスケール厚さが薄く、高いとポア(気孔)を多く含んだ密着性の低下したスケールとなる。処理時間が短いとスケールが薄く、長いと厚さが飽和する。本発明の成分組成であれば、この加熱、炉冷により、組織構成が1〜10%の炭化物と残部がマルテンサイトとなる。
【0061】
スケール付処理後に、マルテンサイトを500〜650℃焼戻し処理すると延性、靭性、耐熱き裂性をより改善することができる。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
表1に示す成分組成を有する外径185mmのピアサープラグを鋳造した後、電気炉で700〜750で5時間加熱する炭化物凝集処理を施した。一部の比較例では炭化物凝集処理は施さなかった。その後、炉内のCO濃度が1%の燃焼ガス雰囲気中で、1000℃で4時間保持した後、炉冷してスケール付処理を行った。
【0063】
得られた表面に酸化スケールが形成されたピアサープラグを用いて、13Crステンレス鋼を製管して、寿命を評価した。結果を表2に示す。比較例のピアサープラグの損傷は、頭部溶損、割損、胴部のシワで寿命も短いが、本発明ピアサープラグの損傷は頭部溶損のみで、寿命も大きく延長した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
図1
図2
図3
図4