特許第6385197号(P6385197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6385197-導電性樹脂組成物、及びそのフィルム 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385197
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物、及びそのフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20180827BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20180827BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20180827BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20180827BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20180827BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20180827BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C08L23/06
   C08L23/28
   C08K3/04
   C08K7/06
   C08F10/02
   H01M8/18
   H01M4/86 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-167131(P2014-167131)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-78344(P2015-78344A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2017年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-187524(P2013-187524)
(32)【優先日】2013年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】高橋朋寛
(72)【発明者】
【氏名】杉本英将
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−357419(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/010708(WO,A1)
【文献】 特開昭62−205144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/00
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂 100質量部;
(B)カーボンナノチューブ 1〜60質量部;及び
(C)アセチレンブラック 1〜60質量部;
を含み、上記(A)熱可塑性樹脂は、
(A3)下記特性(p)及び(q)を満たすポリエチレンであること
を特徴とする樹脂組成物。
(p)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点が、120℃以上であること。
(q)DSC融解曲線における全融解エンタルピーに対する温度110℃以下の融解エンタルピーの割合が50〜80%であること。
【請求項2】
(A)熱可塑性樹脂 100質量部;
(B)カーボンナノチューブ 1〜60質量部;及び
(C)アセチレンブラック 1〜60質量部;
を含み、上記(A)熱可塑性樹脂は、
(A1)塩素含有量20〜45質量%の塩素化ポリエチレン30〜80質量%と、
(A2)ポリエチレン70〜20質量%とからなり、
ここで(A1)と(A2)との和は100質量%であること
を特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
上記成分(A2)のDSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点が、110℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
上記成分(A1)が非結晶性であることを特徴とする請求項2又は3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む蓄電池。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルムを含む蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性樹脂組成物、及びそのフィルムに関する。更に詳しくは、蓄電池の電極又はその被覆保護に好適な導電性樹脂組成物、及びそのフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油等の化石燃料や原子力に替わる新たなエネルギー源として太陽光発電、風力発電及び波力発電などの所謂再生可能エネルギーが注目を集めている。しかし、これらの再生可能エネルギーは、天候等の影響を強く受けるため、出力が極めて不安定である。そのため、これらのエネルギーを大量に電力網につなげるためには、例えば、大容量の蓄電池を併設して出力変動の平準化等を行うことが必要である。
【0003】
大容量の蓄電池の一つにレドックスフロー電池がある。レドックスフロー電池は2種類のイオン溶液を陽イオン交換膜で隔て、両方の溶液中に設けた電極上で酸化反応と還元反応を同時に進めることにより充放電を行うものである。例えば、バナジウムの硫酸水溶液を両極に用いるレドックスフロー電池では、充電時に、プラス極において4価のバナジウムが5価に酸化され、マイナス極において3価のバナジウムが2価に還元される。放電時には、この逆の反応が起こる。レドックスフロー電池は、設備の大型化が容易であるという特長を有する。また室温で作動し、かつ燃焼性や爆発性を有する物質を使用せず、またそのような物質の発生もないため、ナトリウム・硫黄電池やリチウムイオン二次電池と比較して安全性に優れている。
【0004】
レドックスフロー電池の電極は、硫酸水溶液等の電解液中に浸漬され、かつ、そこで酸化還元反応が起こるため、高い導電性及び耐薬品性が必要であり、炭素繊維集合体や白金鍍金が電極として使用されている。しかし、炭素繊維集合体は通液性を有するため、炭素繊維集合体と銅線との接続部が、輸送された硫酸水溶液等に侵されるという問題があった。また白金鍍金は非常に良い導体であり、かつ耐薬品性にも優れているが、貴金属であり高価という難点がある。
【0005】
そこでケッチェンブラック等の導電性カーボンを練り込んだ導電性樹脂フィルムを電極として用いたり(例えば、特許文献1〜4)、炭素繊維集合体又は銅板等の電極を前記導電性樹脂フィルムにより被覆したりすることが行われている。しかし、これらの導電性樹脂フィルムは、十分に高い導電性を付与すべく多量の導電性カーボンを練り込むと、引張伸び、耐折曲性、及び柔軟性が全く不十分であり、物理的な力で容易に壊れるという問題がある。また導電性カーボンの配合量を少なくして引張伸び、耐折曲性、及び柔軟性を確保すると、体積抵抗率が10Ω・cmを超えるものになり、このような導電性フィルムを電極又はその被覆に使用したレドックスフロー電池は、内部抵抗が大きくなるという点で満足できるものではない。
【0006】
また近年、カーボンナノチューブが導電性カーボンとして注目されており、上記問題を解決できるのではないかと期待されている(例えば、特許文献5及び非特許文献1)。しかし、カーボンナノチューブは解繊し難く、従って樹脂への分散が非常に難しいという問題がある。そのため十分に高い導電性を得るためには、ケッチェンブラックと同様に、多量のカーボンナノチューブを配合しなければならず、結局、導電性樹脂フィルムの引張伸び、耐折曲性、及び柔軟性は実用的に不十分である。またカーボンナノチューブの解繊・分散状態を良くすべく、解繊・分散工程におけるせん断応力を高くすると、カーボンナノチューブが壊れてしまい、結局、十分に高い導電性を得るためには、多量に配合することが必要になる。
【0007】
またカーボンブラック又はカーボンナノチューブをプロピレン−オレフィンコポリマーワックスと混合してマスターバッチとし、これを有機ポリマーと混合して得られる組成物からなる導電性フィルムが提案されている(例えば特許文献6及び7)。上記マスターバッチは、カーボンブラック又はカーボンナノチューブの高充填を可能にするが、得られるフィルムの導電性は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−149370号公報
【特許文献2】特開平4−259754号公報
【特許文献3】特開平7−053813号公報
【特許文献4】特開2001−015144号公報
【特許文献5】特開2006−111870号公報
【特許文献6】特表2012−507586号公報
【特許文献7】特表2012−507587号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】高瀬博文著、「カーボンナノチューブの分散技術と評価」成形加工第18巻、第9号2006年、第646〜652頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い導電性を有し、かつ、引張伸び、耐折曲性、及び柔軟性に優れ、蓄電池の部材、特に電解液循環型二次電池、例えば、レドックスフロー電池、亜鉛・塩素電池、及び亜鉛・臭素電池等における電極又はその被覆保護に好適な導電性樹脂組成物、及びそのフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の熱可塑性樹脂と特定の導電性カーボンとを用いることにより、上記課題を達成できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の第一の発明は、
(A)熱可塑性樹脂 100質量部;
(B)カーボンナノチューブ 1〜60質量部;及び
(C)アセチレンブラック 1〜60質量部;
を含み、上記(A)熱可塑性樹脂は、
(A1)塩素含有量20〜45質量%の塩素化ポリエチレン30〜80質量%と、
(A2)ポリエチレン70〜20質量%とからなり、
ここで(A1)と(A2)との和は100質量%であること
を特徴とする樹脂組成物である。
【0013】
本発明の第二の発明は、
(A)熱可塑性樹脂 100質量部;
(B)カーボンナノチューブ 1〜60質量部;及び
(C)アセチレンブラック 1〜60質量部;
を含み、上記(A)熱可塑性樹脂は、
(A3)下記特性(p)及び(q)を満たすポリエチレンであること
を特徴とする樹脂組成物である。
(p)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点が、120℃以上であること。
(q)DSC融解曲線における全融解エンタルピーに対する温度110℃以下の融解エンタルピーの割合が50〜80%であること。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物はフィルム成形加工性に優れており、これを成形してなるフィルムは高い導電性を有し、かつ、引張伸び、耐折曲性、及び柔軟性に優れる。そのため蓄電池の部材、特に電解液循環型二次電池、例えば、レドックスフロー電池、亜鉛・塩素電池、及び亜鉛・臭素電池等における電極又はその被覆保護に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0016】
(A)熱可塑性樹脂:
上記成分(A)は、導電性の炭素フィラーである上記成分(B)、及び上記成分(C)を受容するとともに、フィルム成形加工性を担保し、得られるフィルムに、引張伸び、耐折曲性、及び柔軟性などの機械的物性を付与する働きをする。
【0017】
第一の発明において、上記成分(A)は、(A1)塩素含有量20〜45質量%の塩素化ポリエチレン30〜80質量%と、(A2)ポリエチレン70〜20質量%とからなる熱可塑性樹脂混合物である。ここで(A1)と(A2)との和は100質量%である。上記の熱可塑性樹脂混合物を成分(A)として用いることにより、耐電解液性、特に耐硫酸バナジウム水溶液性の極めて良好な樹脂組成物、及びそのフィルムを得ることができる。配合比率は、好ましくは、成分(A1)50〜65質量%と(A2)50〜35質量%である。
【0018】
(A1)塩素化ポリエチレン:
上記成分(A1)は塩素含有量25〜45質量%の塩素化ポリエチレンであり、得られるフィルムの耐硫酸バナジウム水溶液性の確保に重要な役割を担う。一方、塩素を含むため成形加工時に焼けなどのトラブルを起こさないように留意する必要がある。そのため塩素含有量は20〜45質量%であることが必要である。塩素含有量が45質量%以下であることにより、成形加工時の焼けなどのトラブルの発生を抑制することができる。一方、耐硫酸バナジウム水溶液性の確保という塩素化ポリエチレンの配合目的を確実に得る観点から、塩素含有量は20質量以上である。成分(A1)の塩素含有量は、好ましくは25〜40質量%である。
【0019】
上記成分(A1)としては、塩素含有量が所定の範囲内にあること以外は制限されず、任意の塩素化ポリエチレンを用いることができる。例えば、任意のポリエチレンを、水性懸濁法などの任意の塩素化方法を用いて塩素化したものをあげることができる。塩素化の対象である上記ポリエチレンとしては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン単独重合体、エチレンとα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の1つ又は2つ以上)とのコポリマー、及びこれらの任意の混合物をあげることができる。
【0020】
また上記成分(A1)は、成形加工時のせん断応力を低減して焼けなどのトラブルを防止する観点、及び上記成分(B)や上記成分(C)を良好に分散させて初期導電性を良好にする観点から、非結晶性であることが好ましい。
【0021】
なお本明細書において、非結晶性塩素化ポリエチレンとは、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、190℃で5分間保持し、10℃/分で−10℃まで冷却し、−10℃で5分間保持し、10℃/分で190℃まで昇温するプログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程で測定される融解曲線)において、明確な融解ピークが認められないもの、又は融解ピークは存在するが、その融解熱量(ΔH)が10J/g未満であるものと定義した。
【0022】
また上記成分(A1)は、成形加工時のせん断応力を低減して焼けなどのトラブルを防止する観点、及び上記成分(B)や上記成分(C)を良好に分散させて初期導電性を良好にする観点から、流動性の高いものが好ましい。JIS K 7210:1999に準拠し、180℃、211.8Nの条件で測定したメルトフローレート(以下、MFR−A1と略すことがある。)は10g/10分以上であるものが好ましく、50g/10分以上であるものがより好ましい。一方、成分(B)や成分(C)の受容性を十分なレベルに保つ観点から、MFR−A1は500g/10分以下であるものが好ましい。
【0023】
このような塩素化ポリエチレンの市販例としては、昭和電工株式会社の「エラスレン303A(商品名)」、「エラスレン302NA(商品名)」などをあげることができる。
【0024】
(A2)ポリエチレン:
上記成分(A2)は、ポリエチレンである。成分(A2)は、塩素化されていないという点で、上記成分(A1)とは明確に区別される。成分(A2)は成分(A1)と異なるポリエチレンであれば特に制限されない。成分(A2)としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン単独重合体、エチレンとα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の1つ又は2つ以上)とのコポリマーなどの1種を単独で、又は2種以上を任意に配合した混合物として用いることが出来る。混合物として用いる場合には、混合物全体が下記Tm−A2の範囲や下記MFR−A2の範囲を満たすようにすることが好ましい。
【0025】
上記成分(A2)は、フィルム成形加工性の確保に重要な働きをする。そのためフィラー包含性に優れたものが好ましく、成分(A2)のDSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(以下、Tm−A2と略すことがある。)は、110℃以下のものが好ましい。より好ましくは105℃以下である。一方、本発明の樹脂組成物が電解液により膨潤してしまうことを抑制する観点から、Tm−A2は、好ましくは60℃以上である。
【0026】
なお本明細書において、DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点とは、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用して、190℃で5分間保持し、10℃/分で−10℃まで冷却し、−10℃で5分間保持し、10℃/分で190℃まで昇温するプログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程で測定される融解曲線)において、最も高い温度側のピークトップ融点をいう。
【0027】
また上記成分(A2)は、成形加工時のせん断応力を低減して焼けなどのトラブルを防止するため、流動性の高いものが好ましい。JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、21.18Nの条件で測定したメルトフローレート(以下、MFR−A2と略すことがある。)は1g/10分以上であるものが好ましく、5g/10分以上であるものがより好ましい。一方、上記成分(B)や上記成分(C)の受容性を十分なレベルに保つ観点から、MFR−A2は100g/10分以下であるものが好ましい。
【0028】
(A3)特性(p)及び(q)を満たすポリエチレン:
第二の発明において、上記成分(A)は、(A3)下記特性(p)及び(q)を満たすポリエチレンである。
(p)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点が、120℃以上であること。
(q)DSC融解曲線における全融解エンタルピーに対する温度110℃以下の融解エンタルピーの割合が50〜80%であること。
【0029】
上記成分(A3)を上記成分(A)として用いて得た樹脂組成物は、フィルム成形加工性が特に優れており、これを成形してなるフィルムは、耐折曲性や耐熱性が特に優れている。
【0030】
特性(p)
上記特性(p)は、ポリエチレンの耐熱性の指標であり、上述した方法で測定される。上記成分(A3)のDSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(以下、Tm−A3と略すことがある。)が、120℃以上であると、即ち特性(p)を満たすと、耐折曲性や耐熱性に優れたものになる。Tm−A3は、高い方が好ましい。好ましくは125℃以上、より好ましくは130℃以上である。Tm−A3の上限は特にないが、ポリエチレンであるから、高くてもせいぜい135℃程度である。
【0031】
特性(q)
上記特性(q)は、ポリエチレンのフィラー包含性の指標であり、上記の方法で測定されるDSCのセカンド融解曲線における全融解エンタルピーに対する温度110℃以下の融解エンタルピーの割合である。概念図を図1に示す。上記成分(A3)のDSC融解曲線における全融解エンタルピーに対する温度110℃以下の融解エンタルピーの割合(以下、Xcと略すことがある。)が50%以上、好ましくは60%以上であると、成形加工性の優れたものになる。また耐電解液性も良くなる。一方、耐折曲性や耐熱性の観点から、Xcは80%以下、好ましくは70%以下である。
【0032】
上記成分(A3)は、上記特性(p)及び(q)を満たすポリエチレンであれば特に制限されない。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン単独重合体、エチレンとα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の1つ又は2つ以上)とのコポリマーなどをあげることができる。成分(A3)としては、これらの1種を単独で、又は2種以上を任意に配合した混合物として用いることが出来る。混合物として用いる場合には、混合物全体が上記特性(p)及び(q)を満たすようにすればよい。
【0033】
(B)カーボンナノチューブ:
上記成分(B)は、カーボンナノチューブである。カーボンナノチューブは炭素により作られる六員環のネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった直径1〜250nm程度、長さ0.1〜250μm程度の繊維状物質である。成分(B)は導電性フィラーとして樹脂組成物、及びそのフィルムに、高い導電性を付与する働きをする。そのため成分(B)は、格子欠陥が少なく、成分(B)自体の導電性の高いものが好ましい。また、嵩比重の小さいものが解繊し易いため好ましい。
【0034】
このようなカーボンナノチューブの市販例としては、ナノシルS.A.社の「ナノシルNC7000(商品名)」、昭和電工株式会社の「VGCF−X(商品名)」などをあげることができる。
【0035】
上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、導電性の観点から、1質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。また引張伸びや耐折曲性の観点から、60質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下である。
【0036】
(C)アセチレンブラック:
上記成分(C)は、アセチレンブラックである。アセチレンブラックは、アセチレンガスの熱分解により製造される炭素微粒子であり、一部にグラファイト化した構造を有する導電性カーボンブラックである。成分(C)は樹脂組成物の製造(溶融混練)工程及び製膜工程において加工性を保ち、上記成分(B)の解繊・高分散化を助け、その結果、フィルムの導電性を高め、引張伸びや耐折曲性等の機械的特性を良好にする。また成分(C)は、それ自体が導電性を有するので、成分(C)も樹脂組成物、及びそのフィルムの導電性を高める働きをする
【0037】
アセチレンブラックの市販例としては、電気化学工業株式会社の「デンカブラック(商品名)」などをあげることができる。
【0038】
上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、引張伸びや耐折曲性の観点から、1質量部以上、好ましくは6質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。また耐電解液性、引張伸び、及び耐折曲性の観点から、60質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
【0039】
導電性カーボンブラックとして、アセチレンブラックの他に、ケッチェンブラックが知られている。ケッチェンブラックは高い導電性を有するが、アセチレンブラックと異なり中空シェル状の構造を有しているため、これを主たる導電性フィラーとして、上記成分(A)と、又は成分(A)及び上記成分(B)と混練して得られる樹脂組成物は、製膜時に溶融延性を示さず、製膜することが困難である。
【0040】
本発明の樹脂組成物には、公知の添加剤、例えば滑剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤や紫外線吸収剤などの耐候性安定剤、熱安定剤、銅害防止剤、離型剤、及び界面活性剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない限度において、更に含有させることができる。上記添加剤の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して0.001〜5質量部程度である。
【0041】
また、上記成分(B)、及び上記成分(C)以外の無機充填剤を、本発明の目的に反しない限度において、更に含有させることができる。上記無機充填剤としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム及びタルクなどをあげることができる。上記無機充填剤の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して1〜20質量部程度である。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、上記成分(A)〜(C)及び所望に応じて用いるその他の任意成分を任意の溶融混練機を用いて溶融混練することにより得られる。溶融混練機としては、加圧ニーダー及びミキサー等のバッチ混練機;同方向回転二軸押出機、異方向回転二軸押出機などの押出混練機;及びカレンダーロール混練機などをあげることができる。これらを任意に組み合わせて使用してもよい。得られた樹脂組成物は、任意の方法でペレット化した後、例えばカレンダー加工機を用いて、又は押出機とTダイを用いて、製膜することができる。ペレット化は、ホットカット、ストランドカット及びアンダーウォーターカットなどの方法により行うことができる。あるいは、溶融混練された樹脂組成物をそのまま、カレンダー加工機又はTダイに送って製膜してもよい。カレンダー加工機は任意のものを使用することができ、例えば直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール及びZ型ロールなどをあげることができる。押出機は任意のものを使用することができ、例えば単軸押出機、同方向回転二軸押出機及び異方向回転二軸押出機などをあげることができる。Tダイは任意のものを使用することが出来、例えばマニホールドダイ、フィッシュテールダイ及びコートハンガーダイなどをあげることができる。
【0043】
こうして得られたフィルムの厚みは、特に制限されないが、例えば、バナジウムの硫酸水溶液を両極に用いるレドックスフロー電池の電極部材として用いる場合には、100〜1000μmであってよい。またフィルムは、その耐熱性や耐電解液性を高めるために、公知の方法、例えば電子線照射により、架橋・硬化してもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
測定方法
(イ)初期導電性(Ω1):
直径36mm、高さ10mmの円柱型の真鍮(JIS規格の材料番号C2600)製の電極4、電極5、及び電極4と電極5とを押圧するネジを有する治具(図2参照)を使用した。上記治具の電極4と電極5との間にフィルムを挟み、日置電機株式会社の抵抗率計「ACミリオームハイテスタ3560型(商品名)」を接続した。次にネジを締付トルク0.3N・mに達するまで更に締め込み、所定トルクに到達してから5分経過後の抵抗値を初期導電性(単位mΩ)として測定した。
【0046】
(ロ)耐電解液性:
常温(温度23±2℃)の硫酸バナジウム(バナジウムの酸化数は5)水溶液(濃度2.0モル/リットル)に、フィルムのマシン方向に40mm×フィルムの幅方向に40mmの大きさに裁断したフィルムを7日間浸漬し、水洗した後、フィルム表面の状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:フィルム表面に変化無し
○:フィルム表面に斑模様が見られる。
△:フィルム表面の一部に油膜のような虹斑が発生する。
×:フィルム表面全面に油膜のような虹斑が発生する。
【0047】
(ハ)体積抵抗率ρ:
JIS K 7194:1994に準拠し、4探針法(プローブ法)により測定した。温度23±2℃及び相対湿度50±5%の試験室において24時間以上状態調節を行ったフィルムを、フィルムのマシン方向に80mm×フィルムの幅方向に50mmの大きさに切り出して試験片とした。株式会社三菱化学アナリテックの抵抗率計「ロレスタGP MCP−T610型(商品名)」を使用し、一直線上に等間隔(探針間隔5mm)に配列したプローブを用いて、1枚の試験片について5つの測定位置において測定した。これを3枚の試験片について行い、合計15個の体積抵抗率の値の平均値を、このフィルムの体積抵抗率ρとした。フィルム厚みは、株式会社尾崎製作所のダイヤルシックネスゲージ「H−1A(商品名)」を用いて、JIS K 7194に規定する試験片の寸法測定に従い測定した。なお、電気抵抗率測定方法及びその理論については、株式会社三菱化学アナリテックのホームページ(http://www.mccat.co.jp/3seihin/genri/ghlup2.htm)などを参照することができる。
【0048】
(ニ)耐折曲性:
温度23±2℃および相対湿度50±5%の試験室において24時間以上状態調節を行ったフィルムから、フィルムのマシン方向が引張方向となるようにJIS K 7127の試験片タイプ1Bの試験片を打抜き、試験片の両端のチャック部の全体が重なるように180°折り曲げ、折り曲げ位置を指でしごいた後、起こした。次にこれを反対側へと、同様に180°折り曲げ、折り曲げ位置を指でしごいた後、起こした。このように同じ折り曲げ位置において、折り曲げて起こし、反対側へと折り曲げて起こす操作を1セットとする操作を繰返し、以下の基準で判断した。
◎:10セット終了後もフィルムは破断しなかった。
○:6セットの開始から10セット終了後までの間にフィルムが破断した。
△:2セットの開始から5セット終了後までの間にフィルムが破断した。
×:1セット終了後までにフィルムが破断した。
【0049】
(ホ)湿熱後の耐折曲性:
温度60℃±2℃、相対湿度98%の恒温恒室層内にて7日間暴露処理を行ったフィルムから、フィルムのマシン方向が引張方向となるようにJIS K 7127の試験片タイプ1Bの試験片を打抜き、試験片の両端のチャック部の全体が重なるように180°折り曲げ、折り曲げ位置を指でしごいた後、起こした。次にこれを反対側へと、同様に180°折り曲げ、折り曲げ位置を指でしごいた後、起こした。このように同じ折り曲げ位置において、折り曲げて起こし、反対側へと折り曲げて起こす操作を1セットとする操作を繰返し、以下の基準で判断した。
◎:10セット終了後もフィルムは破断しなかった。
○:6セットの開始から10セット終了後までの間にフィルムが破断した。
△:2セットの開始から5セット終了後までの間にフィルムが破断した。
×:1セット終了後までにフィルムが破断した。
【0050】
(へ)引張伸び:
JIS K 7127:1999に準拠して測定した。温度23±2℃および相対湿度50±5%の試験室において24時間以上状態調節を行ったフィルムについて、株式会社島津製作所の引張試験機「AUTOGRAPH AGS−1kNG(商品名)」を用いて、フィルムの幅方向を引張方向として、試験片タイプ1号ダンベル、チャック間の初期距離120mm、標線間距離50mm、引張速度5mm/分の条件で引張試験を行って破断時の伸びの値を求めた。この試験を5つの試験片について行い、これらの平均値をこのフィルムの引張伸びEとした。フィルム厚みは株式会社尾崎製作所のダイヤルシックネスゲージ「H−1A(商品名)」を用いて試験片の標線間について測定し(計10カ所)、それらの平均値を使用した。
【0051】
使用した原材料
成分(A1)
(A1−1)昭和電工株式会社の塩素化ポリエチレン「エラスレン303A(商品名)」、塩素含有量32質量%、メルトフローレート(180℃、211.8N)120g/10分、融解熱量2J/g
(A1−2)昭和電工株式会社の塩素化ポリエチレン「エラスレン303B(商品名)」、塩素含有量32質量%、メルトフローレート(180℃、211.8N)25g/10分、融解熱量50J/g
(A1−3):昭和電工株式会社の塩素化ポリエチレン「エラスレン404B」(商品名)、塩素含有量40質量%、メルトフローレート(180℃、211.8N)25g/10分、融解熱量29J/g
【0052】
成分(A2)
(A2−1)ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーのポリエチレン「エンゲージ8402(商品名)」、メルトフローレート(190℃、21.18N)30g/10分、密度877Kg/m、Tm−A2は99℃;
(A2−2)株式会社プライムポリマーのポリエチレン「ウルトゼックス20200J(商品名)」、メルトフローレート(190℃、21.18N)18.5g/10分、密度918Kg/m、Tm−A2は125℃;
【0053】
成分(A3)
(A3−1)株式会社プライムポリマーのポリエチレン「ウルトゼックス20200J(商品名)」、メルトフローレート(190℃、21.18N)18.5g/10分、密度918Kg/m、Tm−A3は125℃、Xc62%;
(A3−2)株式会社プライムポリマーのポリエチレン「ネオゼックス2024G(商品名)」、メルトフローレート(190℃、21.18N)25g/10分、密度915Kg/m、Tm−A3は120℃、Xc75%;
(A3−3)株式会社プライムポリマーのポリエチレン「エボリューSP4530(商品名)」、メルトフローレート(190℃、21.18N)2.8g/10分、密度942Kg/m、Tm−A3は132℃、Xc20%;と下記成分(A3’−2);との40/60(質量比)の混合物。Tm−A3は132℃、Xc68%;
【0054】
比較成分(A3’)
(A3’−1)ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーのポリエチレン「D9100.00(商品名)」、メルトフローレート(190℃、21.18N)1g/10分、密度877Kg/m、Tm−A3は118℃、Xc29%;
(A3’−2)ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーのポリエチレン「エンゲージ8402(商品名)」、メルトフローレート(190℃、21.18N)30g/10分、密度877Kg/m、Tm−A3は99℃、Xc100%;
(A3’−3)株式会社プライムポリマーのポリエチレン「エボリューSP4530」(商品名)、メルトフローレート(190℃、21.18N)2.8g/10分、密度942Kg/m3、Tm−A3:132℃、Xc20%;
(A3’−4)上記(A3’−1)と上記(A3’−2)との50/50(質量比)の混合物 Tm−A3:118℃、Xc65%;
【0055】
成分(B)
(B−1)ナノシルS.A.社の多層カーボンナノチューブ「ナノシルNC7000(商品名)」、平均直径9.5nm、平均長1.5μm、嵩比重0.043g/cm 、純度90質量%;
【0056】
成分(C)
(C−1)電気化学工業株式会社のアセチレンブラック「デンカブラック粒状(商品名)」、一次粒子の平均粒子径35nm(電子顕微鏡(TEM)観察により測定)、比表面積69m/g;
【0057】
比較成分(C’)
(C’−1)ライオン株式会社のケッチェンブラック「KJ300(商品名)」;
【0058】
成分(D):任意成分
(D−1)日東化成工業株式会社の塩素化ポリエチレン用安定剤「STANN JF−95B(商品名)」;
【0059】
実施例1〜11、比較例1〜11
日本ロール製造株式会社の5リットルインテンシブミキサーを使用し、表1〜3の何れか1に示す配合比の配合物を溶融混練した。このとき排出温度は190℃とした。続いて、日本ロール製造株式会社のロール直径200mm、ロール幅700mmの逆L型4本ロール圧延カレンダーを使用し、厚み300μmのフィルムを得た(ロール温度は第一ロール/第二ロール/第三ロール/第四ロールの順に205℃/205℃/185℃/175℃、引取速度5m/分)。得られたフィルムについて、上記試験(イ)〜(へ)を行った。結果を表1〜3の何れか1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、初期導電性、耐電解液性、体積抵抗率、耐折曲性、湿熱後の耐折曲性、及び引張伸びの諸特性が、高いレベルでバランス良く発現しており、蓄電池の部材、特に電解液循環型二次電池、例えば、レドックスフロー電池、亜鉛・塩素電池、及び亜鉛・臭素電池等における電極又はその被覆保護に好適に用いることができる。
【0064】
なお実施例4、及び実施例8は、塩素化ポリエチレンとして、上記(A1−1)よりもメルトフローレートが低く、かつ結晶性のもの(実施例4は上記(A1−2)、実施例8は上記(A1−3))を用いたため、上記(A1−1)を用いたものと比較すると、初期導電性は十分に良好ではない結果であるが、その他の評価項目の結果から十分に実用に足ると評価できる。
【0065】
一方、比較例1は成分(A2)の量が多く、湿熱後の耐折曲性が不十分である。比較例2は成分(A2)の量が少なく、耐電解液性に劣る。比較例3〜5は成分(C)を用いていない例である。成分(B)の少ないときは、初期導電性が実施例1や7に及ばず、成分(B)の多いときは、耐折曲性や湿熱後の耐折曲性が不十分であるか、劣るものになっている。比較例6は成分(B)を用いていないため、初期導電性が実施例1に及ばず、体積抵抗率が大きい。また耐折曲性や湿熱後の耐折曲性にも劣る。比較例7は成分(C)の替わりにケッチェンブラックを用いた例であるが、製膜することができなかった。そのため試験(イ)〜(へ)は省略した。比較例8はTm−A3が低く、Xcも低いため、耐電解液性に劣り、耐折曲性や湿熱後の耐折曲性が不十分である。比較例9はTm−A3が低く、Xcが高いため、耐折曲性や湿熱後の耐折曲性に劣る。比較例10は、Xcが低いため、耐電解液性、耐折曲性、及び湿熱後の耐折曲性に劣る。比較例11は、Tm−A3が低いため、耐電解液性、耐折曲性、及び湿熱後の耐折曲性が不十分である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】DSC融解曲線の概念図である。
図2】初期導電性を測定するための治具の概念図である。
【符号の説明】
【0067】
1:DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点
2:DSC融解曲線における温度110℃以下の融解エンタルピーを示す領域
3:温度110℃の位置を示す境界線
4:電極
5:電極
図1
図2