(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬化性絶縁層を、前記金属支持層の上に、開口部が形成されるように形成する工程が、前記感光性硬化性絶縁組成物を含有する溶液を前記金属支持層の上に塗布し、現像する工程であることを特徴とする、請求項1に記載の回路付サスペンション基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1において、紙面左側を先側(第1方向一方側)、紙面右側を後側(第1方向他方側)とし、紙面上側を左側(第2方向一方側)、紙面下側を右側(第2方向他方側)とし、紙面手前側を上側(第3方向一方側、厚み方向一方側)、紙面奥側を下側(第3方向他方側、厚み方向他方側)とする。
図1以外の図面についても、
図1の方向を基準とする。なお、
図1〜
図3において、カバー絶縁層6は、導体パターン5および信号配線接続部11の配置を明確に示すため、省略している。
【0025】
回路付サスペンション基板1は、
図1に示すように、長手方向に延びる平帯状に形成されており、
図5Iに示すように、金属支持層2と、金属支持層2の上に形成される絶縁層としてのベース絶縁層3と、ベース絶縁層3の上に形成される導体パターン5と、ベース絶縁層3の上に、導体パターン5を被覆するように形成されるカバー絶縁層6とを備えている。
【0026】
金属支持層2は、回路付サスペンション基板1の平面形状に対応する形状に形成されている。また、金属支持層2には、後述するヘッド側端子7を左右方向に挟むスリット21、および、後述する支持開口部23が、厚み方向を貫通するように形成されている。
【0027】
金属支持層2を形成する金属材料としては、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅などが挙げられる。好ましくは、ステンレスが挙げられる。
【0028】
金属支持層2の厚みは、例えば、8μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0029】
ベース絶縁層3は、金属支持層2の上面において、導体パターン5および信号配線接続部11(後述)に対応するパターンに形成されている。なお、信号配線接続部11におけるベース絶縁層3には、後述する開口部13が形成されている。
【0030】
ベース絶縁層3を形成する絶縁材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。好ましくは、ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0031】
ベース絶縁層3を形成する絶縁材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル(PMMA)など)などが挙げられる。好ましくは、ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0032】
ベース絶縁層3の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、35μm以下、好ましくは、33μm以下である。
【0033】
導体パターン5は、回路付サスペンション基板1の先端部に接続されるヘッド側端子7と、回路付サスペンション基板1の後端部に接続される外部側端子17と、ヘッド側端子7と外部側端子17とに接続される信号配線8とを備えている。
【0034】
ヘッド側端子7は、回路付サスペンション基板1の先端部において、左右方向に間隔を隔てて複数(4つ)配置され、各ヘッド側端子7は、先後方向に長い平面視略矩形状に形成されている。
【0035】
外部側端子17は、回路付サスペンション基板1の後端部において、左右方向に間隔を隔てて複数(4つ)配置され、各外部側端子17は、先後方向に長い平面視略矩形状に形成されている。
【0036】
信号配線8は、1対の書込配線8Wと、1対の読取配線8Rとを備えている。
【0037】
1対の書込配線8Wは、ヘッド側端子7と外部側端子17との間において、互いに平行するように、回路付サスペンション基板1の左側端部に沿って延びるように配置されている。
【0038】
各書込配線8Wは、第1配線19と第2配線20とを備えている。すなわち、1対の書込配線8Wは、1対の第1配線19と1対の第2配線20とを備えている。
【0039】
1対の第1配線19は、左右方向に互いに間隔を隔てて並列に配置されている。各第1配線19は、先端部においてヘッド側端子7に接続され、後端部において外部側端子17に接続されている。
【0040】
1対の第2配線20は、1対の第1配線19の左右方向内方であって、左右方向に互いに間隔を隔てて並列に配置されている。
【0041】
具体的には、左右方向外方の書込配線8Wの第1配線19Aに対応する第2配線20Aは、左右方向内方の書込配線8Wの第1配線19Bに隣接して配置されている。また、左右方向内方の書込配線8Wの第1配線19Bに対応する第2配線20Bは、左右方向外方の書込配線8Wの第1配線19Aに隣接して配置されている。
【0042】
これによって、左右方向において、左右方向内方(一方)の書込配線8Wの第1配線19B、左右方向外方(他方)の書込配線8Wの第1配線19Aに対応する第2配線20A、左右方向内方(一方)の書込配線8Wの第1配線19Bに対応する第2配線20B、および、左右方向外方(他方)の書込配線8Wの第1配線19Aが並列して配置している。つまり、左右方向において、一方の書込配線8Wの第1配線19B、他方の書込配線8Wの第2配線20A、一方の書込配線8Wの第2配線20B、他方の書込配線8Wの第1配線19Aが交互に配置されている。換言すると、一方の書込配線8Wの2つの配線と、他方の書込配線8Wの2つの配線とが交互に配置されている。
【0043】
そして、各第2配線20は、対応する第1配線19に対して、第1配線19の先側部分および後側部分のいずれか一方から分岐し、他方に後述する交差接続部9を介して接合(合流)している。
【0044】
具体的には、左右方向外方の書込配線8Wにおいては、第2配線20は、後側部分から分岐し、先側部分にて交差接続部9を介して接合する。また、左右方向内方の書込配線8Wにおいては、第2配線20は、先側部分から分岐し、後側部分にて交差接続部9を介して接合する。
【0045】
1対の読取配線8Rは、ヘッド側端子7と外部側端子17との間において、互いに平行するように、回路付サスペンション基板1の右側端部に沿って延びるように配置されている。1対の読取配線8Rは、1対の書込配線8Wと略同一構成(略左右対称)であり、その説明を省略する。
【0046】
導体パターン5(および後述する金属導通部12)を形成する導体材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだまたはこれらの合金などが挙げられる。好ましくは、銅が挙げられる。導体パターン5の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0047】
また、各ヘッド側端子7および各外部側端子17の幅は、例えば、20μm以上、好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、800μm以下である。
【0048】
各信号配線8の幅は、例えば、5μm以上、好ましくは、8μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0049】
カバー絶縁層6は、
図5Hで示すように、導体パターン5から露出するベース絶縁層3の上面と、信号配線8(および後述する金属導通部12)の上面および側面とに形成されている。また、カバー絶縁層6は、ヘッド側端子7および外部側端子17を露出するように形成されている。
【0050】
カバー絶縁層6を形成する絶縁材料としては、ベース絶縁層3を形成する絶縁材料と同様のものが挙げられる。また、カバー絶縁層6の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、4μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、15μm以下である。
【0051】
次に、交差接続部9について詳述する。
【0052】
交差接続部9は、
図1に示すように、書込配線8Wの第2配線20Aの先端部、書込配線8Wの第2配線20Bの後端部、読取配線8Rの第2配線20Aの後端部、および、読取配線8Rの第2配線20Bの先端部にそれぞれ対応するように設けられている。各交差接続部9は、略同一構成であるため、以下、書込配線8Wの第2配線20Aの先端部に対応する交差接続部9について詳述する。
【0053】
交差接続部9は、
図3に示すように、2つの信号配線接続部11と、それらの間に配置され、それらを電気的に接続する支持接続部18とを備えている。
【0054】
各信号配線接続部11は、ベース絶縁層3に形成される開口部13を備えている。
【0055】
開口部13は、平面視略円形状をなし、上側に向かって広がる(つまり、上側に向かって開口断面積が大きくなる)側断面視テーパ状(略円錐台形状)に形成されている。開口部13は、開口部13の周側部をなし、厚み方向に対して表面が傾斜するように形成される周側部24の傾斜面(周側面)と、開口部13の底部をなし、ベース絶縁層3から露出する金属支持層2の表面(金属露出面16)とから区画され形成されている。そして、周側部24の周縁のベース絶縁層3の上面と、金属露出面16とで段差部を形成している。平面視において、周側部24の外側周端縁の直径は、開口部13の外径W
1をなしている。一方、周側部24の内側周端縁は、金属露出面16との外縁と一致し、その直径は、開口部13の内径W
2をなしている。
【0056】
また、信号配線接続部11は、金属導通部12を備えている。金属導通部12は、開口部13に充填されている。
【0057】
金属導通部12は、平面視略円形状であり、開口部13と同心円となるように形成されている。金属導通部12は、金属露出面16および周側面(周側部24の傾斜面)の全面、ならびに、周側部24の周縁のベース絶縁層3の上面と接触し、それらを被覆している。
【0058】
金属導通部12は、内側部14と、内側部14の周端縁から外側に膨出する外側部15とを一体的に備えている。
【0059】
内側部14は、平面視略円形状をなし、側断面視において、表面が金属露出面16および周側面に沿うU字状に形成されている。内側部14は、金属露出面16および周側面を被覆する。内側部14の外周縁は、周側部24の外側周端縁と一致し、その直径は、開口部13の外径W
1と一致とする。
【0060】
外側部15は、平面視略円環状に形成されている。
【0061】
開口部13の外径W
1(開口部13の外側周端縁の直径、すなわち、金属導通部12の内側部14の直径)は、例えば、15μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、110μm以下、好ましくは、90μm以下である。
【0062】
開口部13の内径W
2(開口部13の内側周端縁の直径、すなわち、金属露出面16の直径)は、例えば、10μm以上、好ましくは、15μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、80μm以下である。開口部13の内径W
2は、開口部13の外径W
1に対して、例えば、50%以上、好ましくは、65%以上であり、また、例えば、95%以下、好ましくは、90%以下である。
【0063】
金属導通部12の直径W
3(すなわち、外側部15の外径)は、例えば、50μm以上、好ましくは、70μm以上であり、また、例えば、170μm以下、好ましくは、140μm以下である。
【0064】
そして、
図2A、
図2Bおよび
図3に示すように、2つの信号配線接続部11は、第2配線20Bを挟んで左右方向に間隔を隔てて配置され、一方(左側)の信号配線接続部11は、第1配線19Aの先端部分から分岐した配線に接続され、他方(右側)の信号配線接続部11は、第2配線20Aの先端部に接続されている。2つの信号配線接続部11は、支持接続部18によって電気的に接続されている。
【0065】
支持接続部18は、支持開口部23により仕切られる金属支持層2の部分として形成されている。
【0066】
支持開口部23は、
図2Bおよび
図3に示すように、厚み方向を貫通し、左右方向に長い底面視略矩形枠状をなし、2つの信号配線接続部11を囲むように形成されている。
【0067】
また、支持接続部18は、支持開口部23内において、左右方向に長い底面視略矩形状をなし、一方の書込配線8Wの第2配線20Bを左右方向に横切るように配置されている。また、支持接続部18は、支持開口部23の周囲の金属支持層2の内側に間隔を隔てて配置されている。このため、支持接続部18は、支持開口部23の周囲の金属支持層2と電気的に絶縁されている。
【0068】
そして、2つの信号配線接続部11の金属導通部12のそれぞれは、共通の支持接続部18に接続されている。つまり、支持接続部18は、厚み方向に投影したときに、2つの信号配線接続部11と、それらに挟まれる書込配線8Wの第2配線20Bとを含んでいる。
【0069】
これにより、2つの信号配線接続部11は、書込配線8Wの第2配線20Bを跨ぐ一方、支持接続部18を介して、電気的に接続される。つまり、第1配線19Aは、一方の金属導通部12、支持接続部18および他方の信号配線接続部11を介して、第2配線20Aに電気的に接続(導通)されている。
【0070】
そして、この回路付サスペンション基板1は、磁気ヘッド(図示せず)と外部基板(図示せず)とを実装して、ハードディスクドライブに搭載される。
【0071】
次に、回路付サスペンション基板1の製造方法について、
図4A〜
図4Eおよび
図5F〜
図5Iを参照して説明する。
【0072】
まず、
図4Aに示すように、この方法では、長手方向に延びる平板状の金属支持層2を用意する。
【0073】
次いで、感光性硬化性絶縁組成物を用いて、硬化性絶縁層3bを、金属支持層2の上に、開口部13が形成されるように形成する。具体的には、
図4Bに示すように、感光性硬化性絶縁組成物を用いて、感光性硬化性ベース皮膜3aを金属支持層2の表面に、形成した後、
図4Cに示すように、感光性硬化性ベース皮膜3aを露光し、その後、
図4Dに示すように、感光性硬化性ベース皮膜3aを現像する。
【0074】
感光性硬化性ベース皮膜3aを形成するには、例えば、金属支持層2の上に、感光性硬化性絶縁組成物の溶液(ワニス)を塗布して、乾燥する。
【0075】
感光性硬化性絶縁組成物としては、好ましくは、感光性熱硬化性絶縁組成物が挙げられる。感光性熱硬化性絶縁組成物は、光により潜像を形成することができ、その後の加熱によって硬化し、絶縁性樹脂を形成することのできる組成物である。
【0076】
感光性硬化性絶縁組成物は、上記した絶縁材料の前駆体が挙げられる。
【0077】
乾燥温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上であり、また、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。
【0078】
乾燥時間は、例えば、1分以上、好ましくは、3分以上であり、また、例えば、10分以下、好ましくは、8分以下である。
【0079】
形成される感光性硬化性ベース皮膜3aの厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、35μm以下、好ましくは、33μm以下である。
【0080】
そして、
図4Cの工程では、遮光部分31および光透過部分32を備えるフォトマスク30を感光性硬化性ベース皮膜3aの上側に配置する。具体的には、光透過部分32を、ベース絶縁層3を形成する部分に対向させ、遮光部分31を、金属露出面16を形成する部分に対向させる。
【0081】
その後、感光性硬化性ベース皮膜3aを、上側からフォトマスク30を介して露光する。これにより、光透過部分32に対応する部分が不溶となり、遮光部分31に対応する部分が可溶となる潜像が感光性硬化性ベース皮膜3aに形成される。
【0082】
露光における光源としては、公知の各種光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハイドライドランプなどの紫外線を有効に照射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプなどの可視光を有効に照射するものも用いられる。
【0083】
露光量としては、例えば、0.05〜10J/cm
2の範囲内に設定することができる。
【0084】
次いで、
図4Dに示すように、感光性硬化性ベース皮膜3aを現像して、硬化性絶縁層3bを形成する。現像は、アルカリ系溶液を現像液とするスプレー法や浸漬法が用いられる。このとき、遮光部分31に対向する部分つまり未露光部分が溶解し、金属支持層2の表面(金属露出面16)を露出する開口部13が形成される。
【0085】
このとき、遮光部分31と光透過部分32との境界周辺において、遮光部分31側に光透過部分32からの露光が僅かに漏れるため、遮光部分31の境界側端部は、遮光部分31の中心部よりも露光量が増大する。その結果、遮光部分31と光透過部分32との境界に、傾斜面(周側面)を備える周側部24が形成される。
【0086】
これにより、金属露出面16を露出する開口部13が形成された硬化性絶縁層3bを形成することができる。
【0087】
次いで、
図4Eに示すように、硬化性絶縁層3bを加熱硬化する。
【0088】
加熱温度は、例えば、250℃以上、好ましくは、300℃以上であり、また、例えば、400℃以下、好ましくは、380℃以下である。
【0089】
加熱時間は、例えば、45分以上、好ましくは、60分以上であり、また、例えば、10時間以下、好ましくは、8時間以下である。
【0090】
これにより、開口部13が形成されたベース絶縁層3が形成される。このとき、開口部13の金属露出面16には、異物22が付着している。
【0091】
異物22は、ベース絶縁層3に由来する成分であって、例えば、ベース絶縁層3を形成する絶縁材料またはこの前駆体が挙げられる。異物22は、
図4Cや
図4Dの工程において、金属露出面16に付着される。
【0092】
次いで、
図5Fに示すように、マイクロ波プラズマ処理を実施する。
【0093】
マイクロ波プラズマ処理に使用する装置としては、例えば、マイクロ波プラズマ発生装置「M110−RTR」(ニッシン社製)などが挙げられる。
【0094】
マイクロ波プラズマ処理における周波数は、例えば、1.0GHz以上、好ましくは、2.0GHz以上であり、10GHz以下、好ましくは、5.0GHz以下である。
【0095】
マイクロ波プラズマ処理に使用されるガスとしては、例えば、酸化性ガス、不活性ガス、還元性ガスなどが挙げられる。具体的には、空気、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0096】
これらの酸化性ガス、不活性ガス、還元性ガスは、単独で、または2種以上混合して、使用することができる。
【0097】
マイクロ波プラズマ処理に使用されるガスは、好ましくは、不活性ガスを含有する。
【0098】
このようなガスを用いることにより、金属露出面16に付着した異物22をより確実に除去することができ、金属導通部12と金属露出面16との界面での電気抵抗値をより確実に低減させることができる。
【0099】
マイクロ波プラズマを発生させるチャンバー内のガス圧は、例えば、1Pa以上、好ましくは、5Pa以上であり、また、例えば、200Pa以下、好ましくは、100Pa以下、より好ましくは、80Pa以下である。
【0100】
チャンバー内へのガス流量は、例えば、10sccm以上、好ましくは、50sccm以上であり、例えば、5000sccm以下、好ましくは、3000sccm以下である。
【0101】
マイクロ波プラズマが照射されるプラズマ照射口から、金属露出面16までの距離は、例えば、5cm以上、好ましくは、10cm以上であり、また、例えば、30cm以下、好ましくは、25cm以下である。
【0102】
電力は、例えば、0.5kW以上、好ましくは、2kW以上であり、また、例えば、15kW以下、好ましくは、7kW以下である。
【0103】
マイクロ波プラズマ処理の時間は、例えば、0.5秒以上、好ましくは、1秒以上であり、また、例えば、2分以下、好ましくは、1分以下である。
【0104】
これにより、金属露出面16に付着した異物22が除去される。
【0105】
次いで、
図5Gに示すように、開口部13内に金属導通部12を形成する。
【0106】
具体的には、ベース絶縁層3の上に導体パターン5を形成するとともに、開口部13に金属導通部12を形成する。すなわち、ヘッド側端子7、外部側端子17および信号配線8を上記したパターンで形成する。同時に、金属導通部12を、上記したパターンでかつ信号配線8と連続するように形成する。
【0107】
導体パターン5および金属導通部12を形成するには、例えば、アディティブ法などの公知のパターンニング法が用いられる。
【0108】
アディティブ法では、まず、ベース絶縁層3および金属露出面16の上面全面に、金属薄膜(種膜)5aを形成する。金属薄膜5aとしては、銅、クロム、ニッケルおよびそれらの合金などの金属材料が用いられる。種膜の厚みは、例えば、0.01μm〜0.2μmである。金属薄膜5aは、スパッタリング、めっきなどの薄膜形成方法により、形成する。好ましくは、スパッタリングにより金属薄膜5aを形成する。
【0109】
次いで、金属薄膜5aの表面に、ドライフィルムレジストを設けて、これを露光および現像し、導体パターン5および金属導通部12のパターンと逆パターンの図示しないめっきレジストを形成する。次いで、電解めっきにより、めっきレジストから露出する金属薄膜5aの表面に、導体パターン5および金属導通部12を形成し、次いで、めっきレジストおよびめっきレジストが形成されていた部分の金属薄膜5aをエッチングなどにより除去する。
【0110】
次いで、
図5Hに示すように、カバー絶縁層6を形成する。
【0111】
具体的には、カバー絶縁層6を、ベース絶縁層3の上に、導体パターン5および金属導通部12を被覆し、ヘッド側端子7および外部側端子17を露出するように形成する。例えば、ベース絶縁層3の形成と同様に、感光性硬化性絶縁組成物の溶液を、導体パターン5および金属導通部12を含むベース絶縁層3の上に塗布して、感光性絶縁性カバー皮膜を形成した後、それを露光および現像して、上記したパターンとし、次いで、必要に応じて、加熱硬化させる。
【0112】
その後、図示しないが、必要により、ヘッド側端子7および外部側端子17の上面に、金属めっき層を形成する。金属めっき層は、例えば、金および/またはニッケルからなり、厚みが、例えば、0.01〜1μmである。
【0113】
次いで、
図5Iに示すように、支持開口部23およびスリット21(
図1参照)を、金属支持層2に形成する。支持開口部23の形成により、支持接続部18が形成される。
【0114】
支持開口部23およびスリット21は、例えば、エッチング、ドリル穿孔、レーザ加工などによって形成する。
【0115】
これにより、回路付サスペンション基板1を得る。
【0116】
その後、ヘッド側端子7に磁気ヘッド(図示せず)を接続するとともに、外部側端子17に外部基板(図示せず)を接続する。
【0117】
そして、電気信号が、磁気ヘッドと外部基板との間において、ヘッド側端子7、信号配線8および外部側端子17に伝送される。このとき、一方の第2配線20を伝送する電気信号は、交差接続部9において、他方の第2配線20に短絡することなく、信号配線接続部11を介して一方の第1配線19に伝送される。
【0118】
このように、信号配線8(1対の書込配線8Wおよび1対の読取配線8R)は、差動信号配線として使用される。具体的には、1対の書込配線8Wでは、第1配線19A、19Bに、第1の電気信号が伝送され、第2配線20A、20Bには、第1の電気信号と逆位相の第2の電気信号が伝送される。また、具体的には、1対の読取配線8Rでは、第1配線19A、19Bに、第1の電気信号が伝送され、第2配線20A、20Bには、第1の電気信号と逆位相の第2の電気信号が伝送される。
【0119】
そして、金属導通部12は、差動信号を伝送するための差動信号配線を接続している。
【0120】
そして、この回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、硬化性絶縁層3bを硬化してベース絶縁層3を形成し、開口部13から露出する金属露出面16にマイクロ波プラズマ処理を実施した後に、金属露出面16に金属導通部12を形成する。
【0121】
そのため、開口部13の金属露出面16に付着した異物22(硬化性絶縁層由来成分)を効果的に除去することができる。その結果、金属導通部12と金属露出面16との界面での電気抵抗値を低減させることができる。
【0122】
特に、この製造方法によれば、マイクロ波プラズマ処理を実施するため、従来の洗浄液によるウエットエッチングと比べて精度よく処理することが可能であり、また、金属露出面16は小さくなるほど、金属導通部12と金属露出面16との界面での電気抵抗値が増加する割合が大きくなる。したがって、この製造方法は、開口部13が小型化されている回路付サスペンション基板1に対して特に有効である。
【0123】
また、この回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、金属導通部12が、差動信号配線を電気的に接続している。そのため、差動インピーダンスを低減して、電気信号のノイズを低減することができる。
【0124】
また、この回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、各信号配線接続部11において、開口部13および金属導通部12が、それぞれ複数(2つ)形成され、複数(2つ)の金属導通部12が、金属支持層2を介して、互いに電気的に接続されている。そのため、1対の第2配線20を接触させることなく互いに交差させることができる。その結果、配線の配置の自由度を向上させることができる。また、絶縁層の数を増加させる必要がないため、回路付サスペンション基板1の薄膜化および低コストを図ることができる。
【0125】
(変形例)
図1の実施形態では、
図4B〜
図4Dに示すように、感光性硬化性ベース皮膜3aを形成し、次いで、感光性硬化性ベース皮膜3aを露光および現像することにより、開口部13が形成された硬化性絶縁層3bを形成しているが、例えば、図示しないが、感光性硬化性絶縁組成物の溶液をスクリーン印刷することにより、開口部13が形成された硬化性絶縁層3bを形成することもできる。
【0126】
この場合、開口部13が形成された硬化性絶縁層3bは、感光性を有する硬化性絶縁層であってもよい。
【0127】
開口部13を精度よく小型に形成できる観点から、好ましくは、
図4B〜
図4Dに示すように、感光性硬化性ベース皮膜3aを形成し、露光および現像することにより、開口部13を形成する。
【0128】
また、
図1〜
図3の実施形態では、信号配線接続部11を差動信号配線の接続部として説明しているが、例えば、図示しないが、信号配線接続部11をグランド配線の接続部とすることもできる。
【0129】
信号配線接続部11がグランド配線の接続部である実施形態では、金属露出面16が形成されている金属支持層2は、接地(グランド接続)されている。また、金属支持層2には、支持開口部23が形成されていない。
【実施例】
【0130】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下に示す実施例の数値は、上記の実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
【0131】
実施例1
ステンレスからなる厚み18μmの金属支持層を用意した(
図4A参照)。次いで、ポリイミド前駆体からなる感光性硬化性絶縁組成物のワニスを金属支持層の上に塗布し、160℃で5分間乾燥させて、感光性硬化性ベース皮膜(厚み10μm)を形成した(
図4B参照)。
【0132】
次いで、フォトマスクを用いて、金属露出面に相当する部分を遮光しつつ、ベース絶縁層を形成する部分を露光量0.4J/cm
2で露光し(
図4C参照)、その後、現像した(
図4D参照)。これにより、金属露出面が露出された開口部を備える硬化性絶縁層を形成した。
【0133】
次いで、硬化性絶縁層を360℃、3時間の条件にて加熱硬化させて、ベース絶縁層(厚み10μm)を形成した(
図4E参照)。ベース絶縁層の開口部は、平面視略円形状であり、開口部の外径W
1が40μm、内径W
2(金属露出面の直径)が30μmであった。
【0134】
その後、マイクロ波プラズマ発生装置(商品名「M110−RTR」、ニッシン社製、周波数2.45GHz)に、プラズマ照射口から金属露出面までの距離が15cmとなるように、
図4Eの積層体を設置した。そして、表1に記載の条件にて、開口部の金属露出面に向かってマイクロ波プラズマ処理を実施した(
図5F参照)。
【0135】
次いで、ベース絶縁層および金属露出面の上面全面に、Cu薄膜(種膜、厚さ0.1μm)をスパッタリングにより形成した後、そのCu薄膜の表面に、導体パターンおよび金属導通部のパターンの逆パターンでドライフィルムレジストを形成した。そして、電解銅めっきにより、厚み10μmの導体パターンおよび金属導通部を、レジストから露出するCu薄膜の表面に形成した(
図5G参照)。
【0136】
金属導通部は、平面視円形状で、その内側部が開口部内に充填され、その外側部が信号配線に接続されるように、形成した。金属導通部の直径W
3は、70μmであった。
【0137】
次いで、レジストおよびレジストが形成されたCu薄膜を、エッチングによって除去し、ポリイミドからなる厚み5μmのカバー絶縁層を、ベース絶縁層の上に、導体パターンおよび金属導通部を被覆するように形成した(
図5H参照)。
【0138】
その後、支持開口部およびスリットを、エッチングによって形成すると同時に、金属支持層を外形加工した(
図5I参照)。
【0139】
これにより、回路付サスペンション基板を得た。
【0140】
実施例2〜3
マイクロ波プラズマ処理の条件を表1に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、回路付サスペンション基板を得た。
【0141】
比較例1
マイクロ波プラズマ処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、回路付サスペンション基板を得た。
【0142】
比較例2
マイクロ波プラズマ処理の代わりに、RFプラズマ発生装置(ヒラノ光音社製、周波数13.56MHz)を用いて表1に示す条件で、RFプラズマ処理を実施した以外は、実施例1と同様にして回路付サスペンション基板を得た。
【0143】
(電気抵抗値測定)
各実施例および各比較例の回路付サスペンション基板(カバー絶縁層が形成された後の回路付サスペンション基板)の金属導通部に、デジタルマルチメーター(2000型、KEITHLAY社製)を接続し、金属導通部と金属露出面との電気抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
【0144】
【表1】