(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された構成では、缶体の高さを目標とする高さに調整する場合には、1回の操作で缶体における不整縁を有する部分を切り取って缶体の高さ調整を行う。そのため、高さの調整幅が大きいと、1回の操作で切断するスクラップ片が大きくなってしまう場合がある。また、その大きなスクラップ片を軸線方向に切断して板状に切り開く場合には、その軸線方向の長さが増大するだけ、スクラップ片を切断するための荷重が増大したり、その切断の際に、缶処理装置および主駆動軸にかかる負荷が増大したりするなどの不都合がある。
【0005】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、缶体の高さを目標とする高さに調整する際に、装置にかかる負荷を抑制することができる缶体の高さ調整装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、円筒状の粗形材における一方の開口端部を切断することにより缶体の高さを目標とする高さに調整する缶体の高さ調整装置において、前記粗形材が上方から嵌合されて所定の旋回円上を自転しつつ公転する複数のマンドレルと、前記マンドレルが旋回する前記旋回円の半径方向で外側に前記旋回円の円周方向に互いに離隔して配置された複数の外刃と、前記マンドレルに設けられて前記外刃と協働して前記開口端部を切断する内刃と、前記外刃と前記内刃とによる切断位置に対する前記粗形材の高さ方向での前記粗形材の相対位置を前記旋回方向での上流側から下流側に向けて次第に変化させ
ることによって前記粗形材を前記外刃と前記内刃とによって複数回切断させる上下送り機構とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、複数の前記外刃は、前記旋回円の中心軸線方向で同一の高さに位置するように配列され、複数の前記マンドレルは、前記内刃が前記外刃と同じ高さに位置するように構成され、前記上下送り機構は、前記マンドレルに対する前記粗形材の嵌合深さを前記マンドレルの旋回方向
での上流側で浅くかつ下流側で深くするように構成されていることを特徴とする缶体の高さ調整装置である。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記上下送り機構は、前記マンドレルの旋回運動に応じて前記粗形材を上下運動させるカム機構を含むことを特徴とする缶体の高さ調整装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、マンドレルに設けられた内刃と協働して粗形材を切断する複数の外刃がマンドレルの旋回円の円周方向に互いに離隔して設けられている。また、マンドレルを旋回させた場合に、上下送り機構は、外刃と内刃との切断位置に対する粗形材の高さ方向での粗形材の相対位置を、マンドレルの旋回方向で上流側から下流側に向けて次第に変化させるように構成されている。そのため、粗形材を1回、旋回させた場合に、その粗形材を複数回、切断して目標とする高さの缶体を得ることができる。また、1回の切断で生じるスクラップ片を小さくできるため、装置にかかる負荷を低減できる。このように粗形材を切断して目標とする高さの缶体を形成するため、特に、生産数の少ない高さの缶体を製造するために適した装置とすることができる。なお、上記の切断位置に対して上下送り機構によって粗形材を送り込む量を変更すれば、缶体の高さを変更できる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果と同様の効果に加えて、複数の外刃は、前記旋回円の中心軸線方向で同一の高さに位置するように配列されており、マンドレルは、その内刃が、外刃と同じ高さを保つように構成されている。そのため、粗形材を切断する場合に装置にかかる荷重を、同一平面上に生じさせることができる。上下送り機構は、マンドレルに対する粗形材の嵌合深さを上記の旋回方向での上流側で浅く下流側で深くするように構成されている。そのため、マンドレルを旋回させると、上記の嵌合深さが次第に深くなり、また、粗形材における一方の開口端部が上記の内刃と外歯とによって複数回、切断される。こうすることにより、目標とする高さの缶体を得ることができる。
【0011】
さらに、請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明による効果と同様の効果に加えて、上下送り機構は、マンドレルの旋回運動に応じて粗形材を上下運動させるカム機構によって構成されている。そのため、マンドレルの旋回運動と粗形材の上下運動とを容易に同期させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、この発明に係る缶体の高さ調整装置の一例を示す断面図である。その高さ調整装置1は、内歯歯車であるインターナルギヤ2と、そのインターナルギヤ2に噛み合う複数のピニオンギヤ3とを備えている。上記のインターナルギヤ2は下部フレーム4に固定されている。各ピニオンギヤ3は、インターナルギヤ2の円周方向に一定の間隔をあけて配置され、マンドレル5のスピンドルシャフト6に連結されている。そのため、ピニオンギヤ3がインターナルギヤ2の円周方向に自転しつつ公転すると、それに伴ってマンドレル5もインターナルギヤ2の円周方向に自転しつつ公転する。上記の各マンドレル5は、その上方から円筒状の粗形材7が嵌合させられるように構成されている。またマンドレル5に対する粗形材7の嵌合深さを深くした場合に、マンドレル5の先端部に粗形材7の内周面が接触するようになっている。上記の粗形材7は一例として予め定めた高さに調整する前のエアゾール缶であり、その粗形材7における一方の開口端部7aは大径に形成されている。他方の開口端部には図示しないバルブを固着させるための小径の缶口が形成されている。
【0014】
上記の各スピンドルシャフト6は、軸受8を介してスピンドルターレット9に自転自在に取り付けられている。また、それらのスピンドルシャフト6に環状の内刃10が取り付けられている。各内刃10と協働して粗形材7を切断する扇状の外刃11が、上記の内刃10に対向する位置であってインターナルギヤ2の半径方向で内刃10の外側にそれぞれ配置されている。つまり、各外刃11はインターナルギヤ2の中心軸線方向で同一の位置に配列されている。それらの内刃10と外刃11とによって粗形材7における一方の開口端部7a側が環状に切り取られるようになっている。その切り取られた破片が後述するスクラップ片となる。
【0015】
上記のスピンドルシャフト6における内刃10を挟んでマンドレル5とは反対側であって、前記内刃10に隣接してナールギヤ12が設けられている。前記マンドレル5の旋回円の外側であって、そのナールギヤ12に対向する位置に扇状のギヤ部41が配置されている。そのギヤ部41は、後述するように、ナールギヤ12と協働して上記の環状のスクラップ片を切り開いて板状にし、その板状のスクラップ片を波状に加工する。なお、
図1に示す例では、上述したインターナルギヤ2の歯数は286枚に設定され、ピニオンギヤ3の歯数は22枚に設定され、ナールギヤ12の歯数は13枚に設定されている。すなわち、インターナルギヤ2の歯数をピニオンギヤ3の歯数によって除算した値が整数になるように構成されており、また、上記の値がナールギヤ12の歯数になるようにナールギヤ12が構成されている。
【0016】
上記のスピンドルターレット9の半径方向で内側に、全体として漏斗状のスクラップダクト13が設けられており、このスクラップダクト13に波状に加工されたスクラップ片が排出されるようになっている。このスクラップダクト13は、上側スクラップダクト13aと下側スクラップダクト13bとによって構成されており、その上側スクラップダクト13aにおけるシュート部分にスピンドルシャフト6が貫通している。また、上側スクラップダクト13aはナールギヤ12の下側でスピンドルターレット9に固定されている。下側スクラップダクト13bは下部フレーム4に固定されている。上記のスピンドルターレット9に、クロスローラーベアリング14の外輪が取り付けられており、そのクロスローラーベアリング14の内輪が下部フレーム4に一体の部材に取り付けられている。つまり、上側スクラップダクト13aはスピンドルターレット9と共に回転し、かつ、下側スクラップダクト13bに対して相対回転する。また、スピンドルターレット9に、外歯歯車であるメインギヤ15が取り付けられており、そのメインギヤ15は後述する駆動ギヤ18に噛み合っている。
【0017】
また、缶体の高さ調整装置1には、駆動力源としてモーター16が設けられており、このモーター16の出力側に減速機17が連結されている。その減速機17の出力側に駆動ギヤ18が連結されており、その駆動ギヤ18にメインギヤ15が噛み合っている。つまり、モーター16の出力トルクが減速機17および駆動ギヤ18を介してメインギヤ15に伝達される。こうすることにより、スピンドルターレット9が下側スクラップダクト13bに対して相対回転する。またピニオンギヤ3およびマンドレル5ならびにナールギヤ12がインターナルギヤ2の円周方向に自転しつつ公転する。
【0018】
上記のスピンドルターレット9の回転中心軸線と平行にフローティングジョイント19が配置されており、そのフローティングジョイント19における一方の端部に従動ギヤ20が連結されている。この従動ギヤ20に駆動ギヤ18が噛合している。また、フローティングジョイント19と平行に、かつ、スピンドルターレット9と同心状に主軸21が配置されている。その主軸21における一方の端部に、フローティングジョイント19における他方の端部が動力伝達可能に連結されている。この主軸21における一方の端部側は、軸受22を介してスリーブ23に取り付けられている。そのスリーブ23は、上部フレーム24に固定されている。主軸21における他方の端部は、スクラップダクト13側に延びている。
【0019】
図2は、
図1に示すこの発明に係る缶体の高さ調整装置の一例の上視図であり、
図3は、
図2に示す矢視Aの断面図であり、
図4は、
図2に示す矢視Bの断面図である。上記のスリーブ23の外周面に、
図2ないし
図4に示すように、この発明における上下送り機構に相当する円筒カム25が上下動可能に接触している。その円筒カム25は、円筒部26と、その円筒部26の外周面の全周に亘って滑らかな階段状に形成された環状凸部27と、その環状凸部27に沿って移動可能に取り付けられた可動部28とを備えている。上記の円筒部26の内周面とスリーブ23の外周面とは摺接している。上記の円筒部26は円筒状のブッシュ29によって上部フレーム24に周り止めされるとともに、ジャッキ30によって円筒部26の中心軸線方向に移動可能になっている。そのジャッキ30は、
図2に示すように、ギヤボックス31を介してハンドル32に連結されている。なお、ジャッキ30に他のモーターを動力伝達可能に連結し、その他のモーターの駆動を電気的に制御することにより、上記の円筒部26の上下動を電気的に制御するように構成してもよい。
【0020】
上述した環状凸部27は、前記円筒部26の中心軸線に対して直交する部分、すなわち平坦部を複数有している。それらの平坦部は、詳細は図示しないが、円筒部26の外周面に5つ形成されており、各平坦部は滑らかに連結されている。なお、以下の説明では、缶体保持部34やマンドレル5の旋回方向で上流側から順番に、第1平坦部、第2平坦部、第3平坦部、第4平坦部、第5平坦部と称する。マンドレル5の旋回円上であって第1平坦部もしくは第1平坦部よりも下流側の箇所に対応する位置において、後述するように、インフィードターレット39から缶体の高さ調整装置1に粗形材7が受け渡される。この位置が後述する供給位置とされている。また、マンドレル5の旋回円上であって第5平坦部に対応する位置において、缶体の高さ調整装置1からディスチャージターレット40に目標とする高さに調整された缶体が受け渡される。この位置が後述する排出位置とされている。さらに、第2平坦部および第3平坦部ならびに第4平坦部のそれぞれに対応する位置に、上述した各外刃11が配置されている。そして、円筒部26の中心軸線方向での各平坦部の配置は、上方から順番に、第1平坦部、第5平坦部、第2平坦部、第3平坦部、第4平坦部となっている。
【0021】
上記の可動部28にカムロッド33の一方の端部が連結されている。そのカムロッド33の他方の端部はスクラップダクト13側に延びており、その他方の端部に、
図1に示すように、缶体保持部34がカムロッド33に対して回転自在に取り付けられている。その缶体保持部34には、一例として、主軸21内を通る吸引管35が接続されている。その吸引管35には分配弁(図示せず)が設けられており、吸引管35は上記の分配弁を介してバキュームポンプ(図示せず)と、コンプレッサー(図示せず)とに連通されている。その分配弁について簡単に説明すると、分配弁は、吸引管35とバキュームポンプとを連通する第1ポートと、吸引管35とコンプレッサーとを連通する第2ポートとを有している。そして、缶体保持部34が回動されてディスチャージターレット40上に位置している場合にだけ、分配弁は、第2ポートを介して吸引管35とコンプレッサーとを連通する。そして、前記ディスチャージターレット40上に位置している缶体保持部34における吸引管35に加圧空気を供給する。また、缶体保持部34がディスチャージターレット40上に位置していない場合には、分配弁は、第1ポートを介して吸引管35とバキュームポンプとを連通する。このように構成することにより、上記の缶体保持部34は、上述した粗形材7における他方の端部の外周面を吸い付けて粗形材7を保持する。また、缶体保持部34は、上記のマンドレル5と同期して旋回するように構成されている。
【0022】
上述した主軸21に、
図1に示すように、メインターレット36が一体に設けられている。そのメインターレット36にボールスプライン37を介して各カムロッド33が上下動可能に取り付けられている。つまり、モーター16の出力トルクによって主軸21およびメインターレット36を回転させると、カムロッド33がメインターレット36の円周方向に旋回する。このようにカムロッド33が旋回すると、環状凸部27に沿って可動部28が移動し、カムロッド33およびこれに連結された缶体保持部34が円筒部26の中心軸線方向に上下動する。
【0023】
また、上記のメインターレット36に後述するインフィードターレット39から粗形材7を受け取るためのターレットポケット38が取り付けられている。粗形材7はそのターレットポケット38を介して缶体保持部34に保持される。
【0024】
図5は、この発明に係る缶体の高さ調整装置の一例における一部を抜粋して示す上視図である。インターナルギヤ2の半径方向で外周側にインフィードターレット39およびディスチャージターレット40が設けられている。それらのインターナルギヤ2および各ターレット39,40の各中心軸線は互いに平行に配置されている。上記のインフィードターレット39は、缶体の高さ調整装置1に粗形材7を供給するためのものである。そのため、インフィードターレット39の一部と、缶体保持部34の旋回円の一部とは上下にオーバーラップして配置されている。その重なった部分がインフィードターレット39から缶体保持部34に粗形材7を受け渡すための供給位置とされている。
【0025】
マンドレル5の旋回方向で上記の供給位置の下流側に、
図5に示すように、複数の前記外刃11が互いに離間して配置されている。ここに示す例では、3つの外刃11が、マンドレル5の旋回円の外側であってかつその旋回円の半周に亘って、つまり偏って配置されている。また、残りの半周に上述した各ターレット39,40が配置されている。マンドレル5の旋回方向で各外刃11の下流側に扇状のギヤ部41がそれぞれ配置されている。それらのギヤ部41には、上述した内刃10と外刃11とによって粗形材7を切断することにより形成される環状のスクラップ片をその軸線方向に切断して切り開くためのチョッパー42が取り付けられている。また
図5に示すように、1つの外刃11と1つのギヤ部41とが対をなしている。以下の説明では、それらの対をマンドレル5の旋回方向で上流側から順番に、第1トリム部43、第2トリム部44、第3トリム部45と称する。それらのトリム部43,44,45において、粗形材7における一方の開口端部7aが切り揃えられることにより、目標とする高さの缶体が形成される。また上述したように環状のスクラップ片がチョッパー42によって切り開かれる。そして、その切り開かれたスクラップ片がナールギヤ12と扇状のギヤ部41とによって波状に加工されてスクラップダクト13に排出される。
【0026】
上記のディスチャージターレット40は、目標とする高さに調整された缶体を、高さ調整装置1から受け取って次工程に搬送するためのものであり、マンドレル5の旋回方向で第3トリム部45の下流側に配置されている。また、上記のインフィードターレット39と同様に、そのディスチャージターレット40の一部と缶体保持部34の旋回円の一部とは上下にオーバーラップして配置されている。その重なった部分が高さ調整装置1からディスチャージターレット40に目標とする高さに調整された缶体を受け渡すための排出位置とされている。
【0027】
次に、この発明に係る缶体の高さ調整装置1の作用について説明する。
図6は、
図1に示す缶体保持部34への粗形材7の供給から切断を経て排出される過程を順に示す動作説明図である。メインターレット36が回転することによって可動部28が第1平坦部から第2平坦部に下降していく途中で、インフィードターレット39によって搬送された粗形材7がターレットポケット38に受け渡され、また、缶体保持部34に保持される。その缶体保持部34に保持された粗形材7は、
図6の(a)に示すように、マンドレル5の上方に配置されている。メインターレット36と共に缶体保持部34が上記の供給位置からディスチャージターレット40側すなわち下流側に旋回すると、可動部28は第1平坦部から第2平坦部に更に移動する。この場合、缶体保持部34は、
図6の(b)に示すように、カムストロークAだけマンドレル5側に下降する。缶体保持部34に保持された粗形材7は上記のカムストロークAに相当する深さだけマンドレル5に嵌合する。そのマンドレル5は、上述したように、ピニオンギヤ3と一体となって回転するため、上記の粗形材7はマンドレル5と共にインターナルギヤ2の円周方向に自転しつつ公転する。
【0028】
粗形材7における一方の開口端部7aが内刃10より下方に配置された状態でマンドレル5が第1トリム部43に到達すると、内刃10と外刃11とによって粗形材7における一方の開口端部7a側が環状に切断される。その環状のスクラップ片はギヤ部41に取り付けられたチョッパー42によって切り開かれて板状にされる。その板状のスクラップ片46は、
図6の(b)に示すように、ナールギヤ12とギヤ部41とによって波状に加工される。その波状に加工されたスクラップ片46は、
図5に示すように、スクラップダクト13に排出される。
【0029】
缶体保持部34およびマンドレル5が第1トリム部43より下流側に旋回することに伴って、可動部28は第2平坦部から第3平坦部に移動する。缶体保持部34は、
図6の(c)に示すように、カムストロークBだけマンドレル5側に下降する。粗形材7における一方の開口端部7aは内刃10よりカムストロークBだけ下方に配置される。すなわち、マンドレル5に対する粗形材7の嵌合深さは、第1トリム部43での嵌合深さより、カムストロークBだけ深くなる。この状態でマンドレル5が第2トリム部44に到達すると、内刃10と外刃11とによって粗形材7における一方の開口端部7a側が環状に切断される。その環状のスクラップ片は上記と同様に切り開かれ、また、波状に加工されてスクラップダクト13に排出される。
【0030】
缶体保持部34およびマンドレル5が第2トリム部44より下流側に旋回することに伴って、可動部28は第3平坦部から第4平坦部に移動する。缶体保持部34は、
図6の(d)に示すように、カムストロークCだけマンドレル5側に下降する。粗形材7における一方の開口端部7aは内刃10よりカムストロークCだけ下方に配置される。マンドレル5に対する粗形材7の嵌合深さは、第2トリム部44での嵌合深さより、カムストロークCだけ深くなる。なお、
図6の(d)に示す例では、粗形材7における他方の端部の内周面がマンドレル5の先端部に当接している。この状態でマンドレル5が第3トリム部45に到達すると、内刃10と外刃11とによって粗形材7における一方の開口端部7a側が環状に切断される。その環状のスクラップ片は上記と同様に切り開かれ、また波状に加工されてスクラップダクト13に排出される。このように粗形材7を3回に分けて切断することにより、目標とする高さの缶体47が形成される。
【0031】
その後、缶体保持部34およびマンドレル5が第3トリム部45より下流側に旋回すると、可動部28は第4平坦部から第5平坦部に移動する。缶体保持部34は、
図6の(e)に示すように、カムストロークDだけメインターレット36側に上昇する。これにより缶体47はマンドレル5から離間させられる。その後、分配弁によって吸引管35とバキュームポンプとの連通状態が遮断され、かつ、吸引管35に加圧空気が供給される。こうすることにより、缶体47は缶体保持部34からディスチャージターレット40に受け渡されて次工程に搬送される。
【0032】
図7は、背が低い缶体を形成する場合における上下送り機構による粗形材の昇降を連続的に示すタイムチャートである。背が低い缶体を形成する場合には、ジャッキ30によって円筒カム25をスクラップダクト13側に下降させる。こうすることにより、可動部28が第1平坦部に位置している場合における缶体保持部34と粗形材7の他方の端部との間の距離dを減少させる。つまり、第1トリム部43でのマンドレル5に対する粗形材7の嵌合深さを深くする。
図7に示す例では、上記
の距離dは4.3mmに設計されている。また、粗形材7の高さrhは180.7mmに設計されている。なお、以下の説明では、上述した缶体保持部34の旋回方向で第1平坦部における下流側の端部を、缶体保持部34の旋回の基点(0°)とする。
【0033】
缶体保持部34が基点から約10°旋回すると、上記の距離dが「0」になり、缶体保持部34に粗形材7が受け渡される。缶体保持部34が約60°旋回すると、可動部28は第2平坦部に到達する。缶体保持部34はカムストロークAだけ下降し、マンドレル5に粗形材7が嵌合する。粗形材7における一方の開口端部7aが内刃10より下方に配置され、その内刃10より下方に配置された部分が第1トリム部43で切断される。その切断された環状のスクラップ片は、上述したように、切り開かれかつ波状に加工されてスクラップダクト13に排出される。なお、
図7に示す例では、第1トリム部43でのスクラップ片46の幅sw1は18.7mmとなっている。
【0034】
缶体保持部34が約134°旋回すると、可動部28は第3平坦部に到達する。缶体保持部34はカムストロークBだけ更に下降する。そして、粗形材7における内刃10より下方に配置された部分が、第2トリム部44で切断される。ここでは、その第2トリム部44でのスクラップ片46の幅sw2は20mmとなっている。また、缶体保持部34が約210°旋回すると、可動部28は第4平坦部に到達する。缶体保持部34はカムストロークCだけ更に下降する。粗形材7における内刃10より下方に配置された部分が、第3トリム部45で切断される。ここでは、その第3トリム部45でのスクラップ片46の幅sw3は20mmとなっている。このようにして背が低い缶体47が形成される。ここに示す例では、その缶体47の高さhは122mmとなっている。その後、可動部28は第4平坦部から第5平坦部に移動する。つまり缶体保持部34は上昇させられ、缶体47はマンドレル5から離間させられる。缶体保持部34が約300°旋回した場合に、缶体47はディスチャージターレット40に受け渡される。その後、可動部28は第1平坦部に到達する。すなわち缶体保持部34は更に上昇させられ、上述した基点に戻される。
【0035】
図8は、背が高い缶体を形成する場合における上下送り機構による粗形材の昇降を連続的に示すタイムチャートである。背が高い缶体を形成する場合には、ジャッキ30によって円筒カム25を上部フレーム24側に上昇させることにより、可動部28が第1平坦部に位置している場合における缶体保持部34と粗形材7における他方の端部との間の距離dを増大させる。つまり、第1トリム部43でのマンドレル5に対する粗形材7の嵌合深さを浅くする。
図8に示す例では、上記の距離dは26.5mmに設計され、粗形材7の高さrhは180.7mmに設計されている。なお、以下の説明では、
図7に示す例と同様に、缶体保持部34の旋回方向で第1平坦部における下流側の端部を、缶体保持部34の旋回の基点(0°)とする。
【0036】
缶体保持部34が基点から約15°旋回すると、上記の距離dが「0」になり、缶体保持部34に粗形材7が受け渡される。上記のように距離dを拡大させるように円筒カム25を上昇させると、缶体保持部34に粗形材7が受け渡される位置は、缶体保持部34の旋回方向で
図7に示す例より下流側になる。缶体保持部34が約60°旋回すると、可動部28は第2平坦部に到達する。缶体保持部34はカムストロークAだけ下降し、マンドレル5に粗形材7が嵌合する。しかしながら、上述したように上部フレーム24側に円筒カム25は上昇させられているため、粗形材7における一方の開口端部7aは内刃10より上方に位置している。そのため、第1トリム部43では粗形材7における一方の開口端部7aは切断されない。缶体保持部34が約134°旋回すると、可動部28は第3平坦部に到達する。缶体保持部34はカムストロークBだけ更に下降する。粗形材7における一方の開口端部7aが内刃10より下方に配置され、その内刃10より下方に配置された部分が第2トリム部44で切断される。ここに示す例では、この第2トリム部44で切断されたスクラップ片46の幅sw2は16.5mmとなっている。以下、
図7に示す例と同様に、缶体保持部34が旋回させられ、粗形材7における一方の開口端部7aが第3トリム部45で切断される。その第3トリム部45でのスクラップ片46の幅sw3は20.0mmとなっている。こうすることにより、背が高い缶体47が形成される。ここに示す例では、その缶体47の高さhは144.2mmとなっている。
【0037】
したがって、上記構成の装置によれば、粗形材7をインターナルギヤ2の円周方向に1回転させる場合に、その粗形材7を複数回、切断して目標とする高さの缶体47を形成することができる。そのため、1回の切断で生じる環状のスクラップ片の幅を小さくできるとともに、その環状のスクラップ片を板状に切り開く際に、スピンドルシャフト6にかかる負荷を低減できる。また、上述した構成の装置1では、粗形材7を連続的に供給したり、排出したりすることができる。つまり装置1を止めることなく、缶体の高さ調整を行うことができるため、粗形材7の処理量を増大できると共に高速化できる。さらに、円筒カム25を昇降させれば、各トリム部43,44,45で切断されるスクラップ片の幅を変更でき、これにより粗形材7から目標とする高さの缶体47を容易に形成することができる。そのため、特に、生産数の少ない高さの缶体を製造するために適した装置とすることができる。