(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記増速機構は、前記増速機のケーシング外周に設けられた大歯車と、大歯車と噛合い、大歯車よりも歯数の少ない小歯車と、を有することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の支持機構。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る風力発電装置1の側面図である。風力発電装置1は、基礎6上に立設される支柱2と、支柱2の上端に設置されるナセル3と、ナセル3に対して回転自在に組付けられたロータヘッド4と、を備える。ロータヘッド4には、複数枚(例えば、3枚)の風車ブレード(風車翼とも称される)5が取り付けられている。ナセル3の内部には増速機および発電機(
図1ではいずれも不図示)が設けられている。風力発電装置1は、風車ブレード5が風を受けることにより生じるトルク(以下、風力トルクと称する)を増速機を用いて増速し、増速されたトルクを発電機で電力に変換する。
【0014】
図2は、ナセル3の内部を示す模式図である。増速機10は、風車ブレード5から発電機20へのトルクの伝達の経路上に設けられる。ロータヘッド4と増速機10とは入力シャフト12によって機械的に接続されており、入力トルクQin(=風力トルク)は入力シャフト12の回転の形で増速機10に入力される。
【0015】
増速機10と発電機20とは出力シャフト14によって機械的に接続されている。増速機10は出力シャフト14を、入力シャフト12を介して入力される入力トルクQinよりも低い出力トルクQoutおよび入力シャフト12の回転数よりも高い回転数で、回転させる。
発電機20は、出力シャフト14の回転を使用して発電する。
【0016】
入力トルクQinと出力トルクQoutとの差分(Qin−Qout)は、増速機10の本体を入力シャフト12の周りで回転させようとする本体トルクを発生させる。したがって、風力発電装置1は、増速機10をナセル3に対して機械的に支持する支持機構100を有し、この支持機構100は本体トルクに耐える、すなわちナセル3からの反力を増速機10に伝達する。
【0017】
図3(a)、(b)は、支持機構100を示す。
図3(a)は支持機構100の正面図であり、
図3(b)は支持機構100の側面図である。支持機構100は、ブラケット102と、軸受104と、回転阻止機構106と、減衰機構108と、増速機構110と、を含む。ブラケット102は、ブロック状の部材であり、ナセル3に固定される。ブラケット102には、入力シャフト12の回転軸Rに沿って貫通孔102aが設けられている。
【0018】
軸受104は、環状のころ軸受であり、回転軸Rを環囲するよう貫通孔102aに固定される。軸受104は特に、その外輪部材104aが、接着または圧入により、または接着と圧入を併用して、貫通孔102aに固定される。軸受104は、増速機10のケーシングをブラケット102に対して回転自在に支持する。具体的には、内輪部材104bの内周面に、接着または圧入により、または接着と圧入を併用して、増速機10のケーシングが固定される。これにより、増速機10と内輪部材104bは一体に動く。特に、増速機10と内輪部材104bは、外輪部材104aに対してひいてはブラケット102に対して回転する。なお、軸受104は、玉軸受、滑り軸受、その他の軸受であってもよい。以上のように、ナセル3に固定されたブラケット102と、増速機10のケーシングとの間に軸受104が配置される。
【0019】
回転阻止機構106は、回転軸R周りの増速機10のケーシングの回転を阻止する。回転阻止機構106は、本実施の形態では、支持機構100を入力シャフト12側から見たときに入力シャフト12の右側に設けられる。回転阻止機構106は、第1アーム112と、弾性部材としてのバネ114とを含む。第1アーム112は増速機10のケーシングに取り付けられる。バネ114は、一端が第1アーム112に固定され、他端はナセル3に固定された架台116に固定される。つまり、バネ114は、軸受104によって支持される部材と、軸受104に支持されていない部材とに接続される。増速機10のケーシングが時計回り(反時計回り)に傾くと第1アーム112を介してバネ114は縮み(伸び)、増速機10のケーシングは平衡位置に戻ろうとする力をバネ114から受ける。バネ114の剛性は、風力トルクの周波数スペクトルにおいて、増速機10のケーシングを含む系の固有振動数が、風車ブレード5の回転数に対応するピークから外れるように、決定される。
【0020】
増速機構110は増速機10のケーシングの回転を増速する。増速機構110は、本実施の形態では、カム機構によって構成され、入力シャフト12の左側に設けられる。具体的には、増速機構110は、増速機10のケーシングに取り付けられる接続部材120と、V字アーム122と、ナセル3に固定される支持台124と、を含む。V字アーム122の屈曲部側は、軸122aにおいて支持台124に回動自在に支持される。V字アーム122の一端側は、軸122bにおいて接続部材120に回動自在に固定される。V字アーム122の他端は、連結部122cにおいて、連結アーム126の一端に回動自在に固定される。連結アーム126の他端は減衰機構108に連結される。増速機構110では、回転軸Rを回転(揺動)中心とする軸122bの運動が、軸122aを回転(揺動)中心とする連結部122cの運動に変換される。回転軸Rと軸122bとの距離をr11、軸122aと連結部122cとの距離をr12とすると、増速機構110の増速比はr11/r12となる。増速機構110で増速された回転は、連結アーム126を介して減衰機構108に入力される。
【0021】
減衰機構108は、増速機10にかかるトルクの変動を軽減する。減衰機構108はダンパ118を含む。ダンパ118は、直動式のダンパであり、ナセル3に固定される。ダンパ118は、例えば油圧シリンダ、エアシリンダ、またはバネにより構成される。ダンパ118は、増速機構110によって増速されたトルク変動を減衰させる。
【0022】
以上のように構成された風力発電装置1の支持機構100の動作について説明する。
支持機構100のブラケット102は、軸受104を介して増速機10を回転自在に支持する。本体トルクを受けて増速機10が時計回り(反時計回り)に傾くと第1アーム112を介してバネ114は縮む(伸びる)。増速機10は、縮んだ(伸びた)バネ114から第1アーム112を介して反時計回り(時計回り)方向の力を受け、平衡位置に戻ろうとする。また、突風等による突発的なトルク変動によって本体トルクが変動すると、増速機構110によって増速されたトルク変動を減衰機構108が減衰させる。
【0023】
本実施の形態に係る支持機構100によると、増速機10のケーシングはナセル3に支持されるブラケット102により支持される。したがって、回転阻止機構106は増速機10にかかるトルクを受けさえすればよく、増速機10の重量を支持する必要がない。同様に、減衰機構108は、増速機10の重さを受けずに、増速機10に係るトルク変動を受けさえすればよい。つまり、支持機構100によると、増速機10の重さを受ける部分と増速機10にかかるトルクおよびトルク変動を受ける部分とを分離することができる。これにより、回転阻止機構106および減衰機構108に求められる強度が下がり、回転阻止機構106および減衰機構108を軽量化できる。つまり、軽量化を図りつつも増速機10の寿命を延ばすことができる。
【0024】
一般的に、回転阻止機構106や減衰機構108により増速機10を支持する場合、回転阻止機構106(特にバネ114)や減衰機構108が増速機10の回転軸に対して左右対称に配置されないと、増速機10の回転軸がずれる虞がある。これに対し、本実施の形態に係る風力発電装置1では、増速機10はブラケット102により支持される。したがって、回転阻止機構106が入力シャフト12の右側に配置され、減衰機構108が入力シャフト12の左側に配置されても、すなわち増速機10の回転軸に対して回転阻止機構106や減衰機構108が左右対称に配置されていなくても、増速機10の回転軸はずれない。これにより、回転阻止機構106や減衰機構108の配置に関しての設計自由度が向上する。
【0025】
また、本実施の形態に係る支持機構100では、増速機構110によって増速された回転が減衰機構108に入力される。したがって、減衰機構108に入力される回転のトルクは、増速比分だけ小さくなる。これにより、減衰機構108を比較的コンパクトなものにできる。
【0026】
また、本実施の形態に係る支持機構100では、バネ114の剛性は、風力トルクの周波数スペクトルにおいて、増速機10を含む系の固有振動数が、風車ブレード5の回転数に対応するピークから外れるように、決定される。したがって、風車ブレード5の回転と系との共振を抑えることができる。その結果、系にかかる機械的負荷を低減して系の寿命を延ばすことができる。
【0027】
また、本実施の形態に係る風力発電装置1では、増速機10は回転阻止機構106により元の平衡位置に戻ろうとする。したがって、減衰機構108のダンパ118の可動範囲(伸縮量)には限界があるという状況において、より効率的に突発的なトルクの変動を抑えることができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
図4(a)、(b)は、第2の実施の形態に係る風力発電装置の増速機10の支持機構200を示す。
図4(a)は支持機構200の正面図であり、
図4(b)は支持機構200の側面図である。支持機構200は、ブラケット102と、軸受104と、回転阻止機構206と、減衰機構208と、増速機構210と、を含む。
【0029】
増速機構210は外歯歯車220を含む。第2の実施の形態では、増速機10のケーシング外周にピッチ円半径がr21の歯車10aが形成されており、外歯歯車220はこの歯車10aと噛み合う。外歯歯車220は歯車10aよりも小さいピッチ円半径r22を有する。したがって、増速機構210の増速比はr21/r22である。外歯歯車220の回転軸には第2アーム222の一端が取り付けられている。第2アーム222の他端には、回転阻止機構206としてのバネ214の一端と、減衰機構108としてのダンパ218の一端と、が固定されている。バネ214の他端とダンパ218の他端はナセル3に固定される。
【0030】
バネ214は、増速機10にかかるトルクを増速機構210を介して受ける。具体的には、本体トルクを受けて増速機10が時計回り(反時計回り)に傾くと外歯歯車220は反時計回り(時計回り)に傾く。すると、外歯歯車220に取り付けられた第2アーム222を介してバネ214は伸びる(縮む)。増速機10は、伸びた(縮んだ)バネ214から、第2アーム222および外歯歯車220を介して反時計回り(時計回り)方向の力を受け、平衡位置に戻ろうとする。
減衰機構208は、増速機構210によって増速されたトルク変動を減衰させる。
【0031】
本実施の形態に係る支持機構200によると、第1の実施の形態に係る支持機構100によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本実施の形態に係る支持機構200によると、増速機構210によって増速されたトルクがバネ214に入力される。したがって、バネ214に入力されるトルクは、増速比分だけ小さくなる。これにより、バネ214に求められる剛性が下がり、バネ214に安価なバネを使用することができる。その結果、支持機構200の製造コストを低減できる。
【0032】
(第3の実施の形態)
図5(a)、(b)は、第3の実施の形態に係る風力発電装置の増速機10の支持機構300を示す。
図5(a)は支持機構300の正面図であり、
図5(b)は支持機構300の側面図である。支持機構300は、ブラケット102と、軸受104と、回転阻止機構306と、を含む。
【0033】
回転阻止機構306は、ねじりバネ314を含む。ねじりバネ314の一端はブラケット102に固定され、他端は増速機10のケーシングに固定される。本体トルクを受けて増速機10が時計回り(反時計回り)に傾くと、増速機10は、ねじりバネ314から反時計回り(時計回り)方向の力を受け、平衡位置に戻ろうとする。
【0034】
本実施の形態に係る支持機構300によると、第1の実施の形態に係る支持機構100によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本実施の形態に係る支持機構300によると、増速機10とねじりバネ314とを接続するアームを必要としないため、回転阻止機構306の構成が比較的簡単になる。これにより、支持機構300の製造コストを低減できる。
【0035】
(第4の実施の形態)
図6は、第4の実施の形態に係る風力発電装置のナセル3の内部を示す模式図である。
図6は
図2に対応する。制御部430は、風車ブレード5および支持機構400と接続される。
【0036】
図7(a)、(b)は、支持機構400を示す。
図7(a)は支持機構400の正面図であり、
図7(b)は支持機構400の側面図である。支持機構400は、ブラケット102と、軸受104と、回転阻止機構106と、減衰機構408と、増速機構410と、を含む。
【0037】
減衰機構408は、サーボモータ418を含む。サーボモータ418の回転軸には増速機構410としての外歯歯車420が取り付けられている。第4の実施の形態では、増速機10のケーシング外周に歯車10aが形成されており、外歯歯車420はこの歯車10aと噛み合う。外歯歯車420は、歯車10aよりも小さいピッチ円直径を有する。サーボモータ418は、制御部430の指示を受け、外歯歯車420を回転させる。
【0038】
図8は、制御部430の機能および構成を示すブロック図である。これら各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0039】
制御部430は、風速取得部432と、平均風速算出部434と、回転速度取得部438と、サーボモータ制御部440と、終了判定部442と、を含む。
風速取得部432は、風力発電装置の周囲に配置された風速計によって測定された風速を取得する。平均風速算出部434は、風速取得部432が取得した風速から平均風速(例えば10秒間の平均風速)を算出する。回転速度取得部438は、サーボモータ418からサーボモータ418の回転軸の回転角速度を取得する。サーボモータ制御部440は、サーボモータ418を制御する。終了判定部442は、終了指示の有無を判定する。
【0040】
図9は、制御部430による制御フローを示す。なお、風速取得部432は、所定の間隔で風速を取得しているものとする。
平均風速算出部434は、風速取得部432が取得した風速から平均風速(ここでは10秒間平均風速)を算出する(S10)。平均風速算出部434によって算出された平均風速が第1の風速(例えば7m/s)以上の場合(S12のY)、回転速度取得部438は、時刻tにおけるサーボモータの回転軸の回転角速度(θ’(t))を取得する(S14)。サーボモータ制御部440は、(t+Δt)秒後に、次式(1)のサーボモータトルクを発生させるようサーボモータ418に指示する(S16)。なお、Δtは例えば0.01秒以下とされる。
(式1)Q(t+Δt)=−cθ’(t)
ここで、cは任意の定数である。
つまり、サーボモータ制御部440は、増速機10にかかるトルクによって回転するサーボモータ418の回転軸に対して、その回転とは反対向きの回転を発生させるようサーボモータ418に指示する。
【0041】
平均風速算出部434によって算出された平均風速が第1の風速(例えば7m/s)未満の場合(S12のN)、風力トルクは小さいため、本体トルクやそのトルク変動も比較的小さい。この場合はサーボモータ418を作動させるまでもないため、S14およびS16をスキップし、処理を後述のS18に渡す。終了判定部442は、所定の終了指示の有無を判定する(S18)。終了指示が無い場合(S18のN)、処理はステップS10に戻る。終了指示が有る場合(S18のY)、処理を終了する。
【0042】
本実施の形態に係る支持機構400によると、第1の実施の形態に係る支持機構100によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本実施の形態に係る支持機構400によると、トルクに応じてサーボモータ418をアクティブに制御するため、トルク変動をより効果的に低減できる。
【0043】
以上、実施の形態に係る風力発電装置の構成および動作について説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0044】
(変形例1)
第1、2、4の実施の形態では、支持機構は、増速機10と回転阻止機構および減衰機構との間に1段の増速機構を含む場合について説明したが、これに限られない。支持機構は、増速機10と回転阻止機構および減衰機構との間に2段以上の増速機構を備えてもいてもよい。
【0045】
(変形例2)
第3の実施の形態では、支持機構300が減衰機構を有しない場合について説明したが、これに限られない。支持機構300は、例えばロータリダンパや直動式のダンパを設けてもよい。
【0046】
(変形例3)
第1〜4の実施の形態では、支持機構は、増速機10と回転阻止機構との間、および、増速機10と減衰機構との間、の少なくとも一方に増速機構を含む場合について説明したが、これに限られない。支持機構は、増速機10と回転阻止機構との間、および、増速機10と減衰機構との間のいずれにも増速機構を含まなくてもよい。