(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
化粧水などの化粧料や、シャンプーやリンスあるいは液体石鹸、また食品調味料などを収納する容器としては、容器の外殻を形成する外層体と、該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体とを備え、外層体に、内層体との相互間に通じる外気導入用の開口を設けて、内容物の吐出に伴って内層体のみを減容させるようにした二重容器(デラミ容器とも言う)が知られている。
【0003】
また、内容物の吐出方式としては、外層体の口部に装着したポンプによるものや、主に外層体の胴部をスクイズすることによるもの、更に、主に内容物の自重によるもの(例えば特許文献1参照)等がある。ポンプを利用する容器では、構造が複雑になる上、コストの増大が避けられず、また、外層体のスクイズを利用する容器では、構造が比較的簡素化されるものの、内層体のみを減容させる為には、外層体への押圧時には外気導入用の開口を閉じ、押圧を解除すると開く外気導入弁を設ける必要がある。一方、内容物の自重を利用する容器では、構造も簡単である上、外気導入弁も不要であることから、コスト削減にも優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二重容器の内層体は、全体が均等に減容するよう種々の工夫がなされているが、それ自身の厚みのばらつき等に起因して、優先的に潰れ易くなる部分が生じることがある。これにより、内容物の吐出が進んでいくと内層体の内面同士が部分的に接触して、内容物の通路が狭くなってしまうおそれがある。このような場合でも、ポンプによるものや外気導入弁を備えるものでは、内容物を最後まで吐出することができるものの、外気導入弁を持たずに内容物を自重で吐出する二重容器では、外層体をスクイズしても、外層体と内層体との相互間の空気が外気導入孔から漏れてしまい内層体を十分に減容させることができないため、内容物の吐出が難しくなるという不具合があった。このため、この点を改良した新たな二重容器が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、内容物をその自重で吐出させることができ、しかも内容物の残量が少なくなった際には外層体のスクイズによるスムーズな吐出を実現することができるとともに、コストの増大を招くことがない新規の二重容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の二重容器は、容器の外殻を形成する外層体と、該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体とを備える二重容器において、
前記外層体の底壁は、該底壁から下方に突出する直線状のリブと、該リブを両側から挟むように該底壁が膨出して該リブの両側の側面に連なる一対の膨出部とを有し、
該リブの延在方向における該一対の膨出部に挟まれた領域に、該リブの延在方向に沿って延在し、該リブ及び該底壁を貫通するスリットを形成したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の二重容器にあっては、前記リブは、ブロー成形の割り金型による食い切りによって形成されるピンチオフ部で構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内容物をその自重で吐出させることができ、しかも内容物の残量が少なくなった際には外層体のスクイズによるスムーズな吐出を実現することができるとともに、コストの増大を招くことがない新規の二重容器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る二重容器を示す正面図であり、
図2は側面図、
図3は底面図である。
【0012】
二重容器1は、容器の外殻を形成する外層体10と、外層体10の内側に収められる減容変形自在な内層体20とを備え、外層体10と内層体20の間には、これら外層体10及び内層体20を互いに接合する接着帯30が設けられている。
【0013】
ここで、本実施形態における二重容器1は、合成樹脂製の外層体10と、外層体10に対して相溶性が低い合成樹脂にて形成される内層体20と、外層体10及び内層体20に対して接着性を有する合成樹脂にて形成される帯状の接着層、すなわち、接着帯30とを積層させたものであり、これらの合成樹脂を積層して形成したパリソンを、ブロー成形することによって得られたものである。ここで、本実施形態の二重容器1においては、外層体10を外側の低密度ポリエチレン(LDPE)と内側のポリプロピレン樹脂(PP)の2層構造とし、内層体20を外側のエチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)と内側の変性ポリオレフィン樹脂(三井化学株式会社製「アドマー」(登録商標))の2層構造としている。また、接着帯30を変性ポリオレフィン樹脂(「アドマー」(登録商標))で構成している。なお、本実施形態では、スクイズ性を付与するため、外層体10の外側の層を低密度ポリエチレン(LDPE)で構成しているが、ポリプロピレン樹脂(PP)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、又は高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)とすることも可能である。また、本実施形態の外層体10を構成するポリプロピレン樹脂(PP)の層は、内層体20の剥離性を向上するために設けたものであり、必ずしも必要なものではない。さらに、上記の層構成は一例であり、外層体10に対して内層体20が剥離可能であれば、外層体10、内層体20、及び接着帯30の材料は特に限定されるものではなく、それぞれ単層構造としても良いし、多層構造としても良い。
【0014】
外層体10は、復元自在な可撓性を有するものであり、外層体10の底部を形成する底壁11と、底壁11の外縁に連結して外層体10の胴部を形成する側壁12と、側壁12の上部に連結するともに円筒状をなし外層体10の口部を形成する口部壁13とを備えている。内層体20は、その内側に内容物を充填可能とする充填空間Mを有するものであり、積層された外層体10から剥離させることで減容変形させることができる。
【0015】
なお、本実施形態において側壁12は、横断面が正12角形の筒状としているが、これに限定されず、例えば、横断面が他の多角形、円形、楕円形等となる形状とすることができる。また、口部壁13には、蓋体等を装着するためのねじ部や係合用の突起等を設けることができる。
【0016】
底壁11は、接地面となる円環状の外縁部11aと、外縁部11aの内側で口部壁13側に凹となる凹部11bとを有する。
図3に示すように、底壁11の凹部11bには、下方に突出する直線状のリブ14と、当該リブ14を両側から挟むように底壁11が膨出してリブ14の両側の側面14aに連なる一対の膨出部15が設けられている。これにより、リブ14の高さは、膨出部15を設けていない領域に比べて一対の膨出部15に挟まれた領域で低くなっている。すなわち、リブ14の側面14aと膨出部15の境界から、リブ14の先端の面14bまでの距離は、底壁11における凹部11bの底面から、リブ14の先端の面14bまでの距離よりも小さくなっている。
【0017】
なお、本実施形態における膨出部15は、台形状の平坦面である傾斜面15aと、傾斜面15aの両側の三角形状の平坦面である傾斜側面15bとを有する形状であるが、これに限定されるものではなく、例えば、傾斜面15aと傾斜側面15bが湾曲部を介して滑らかに連なる湾曲形状としても良い。また、本実施形態において一対の膨出部15の形状は、リブ14に対して完全な対照形状であるが、一対の膨出部15が必ずしも完全な対照形状である必要はなく、異なる部分を有する形状としても良い。また、一対の膨出部15は、リブ14の延在方向における中央域に設けられているが、これに限定されるものではなく、中央域からずれた位置に設けても良い。
【0018】
図3に示すように、リブ14には、当該リブ14及び底壁11を貫通する、すなわち外層体10を貫通する外気導入孔としてのスリット16が、一対の膨出部15に挟まれた領域に形成されている。本実施形態において、スリット16は、リブ14の延在方向に沿って直線状に延在し、当該リブ14の延在方向の中央域に形成されている。
【0019】
本実施形態において、リブ14は、ブロー成形の割り金型による食い切りによって形成されるピンチオフ部で構成されている。すなわち、リブ14は、割り金型にて外層体10と内層体20とを挟み込んで扁平に押し潰すことにより形成される。
【0020】
また、スリット16は、ピンチオフ部において、内層体20を外層体10から剥離させて外層体10を底割れさせることにより形成される。具体的には、ブロー成形後に、リブ14を口部壁13側に向けて押圧することで、外層体10を底割れさせてスリット16を形成することができる。この時、膨出部15を設けていない領域に比べて一対の膨出部15に挟まれた領域ではリブ14の高さが低く、底割れ状の亀裂が入り易くなっている。よって、膨出部15を設けてリブ14の高さを低くした領域に優先的にスリット16が形成される。つまり、本実施形態においてスリット16の位置及び長さは、膨出部15の位置及び幅(リブ14の延在方向に沿った長さ)に依存することとなる。
【0021】
なお、押圧時の応力によっては、一対の膨出部15に挟まれた領域を超えて、亀裂(スリット16)が進展することもあり得るが、この場合においても、リブ14の高さが高い領域では、形成された亀裂が開き難くなっているため、スクイズした際にこの部分から空気が漏れる虞はほとんどない。また、本実施形態では、リブ14の一方の端部に重なる1本の接着帯30が設けられていることにより、リブ14の接着性が強くなっているため、接着帯30を設けた側のリブ14の端部近傍では、さらに亀裂が生じ難く、また、割れた場合においてもスクイズ時に開き難くなっている。
【0022】
また、本実施形態において接着帯30は、リブ14の端部に重なる位置から容器の中心軸線Cに沿って延在し、口部壁13まで延びている。接着帯30は、リブ14の延長線に沿って、また、割り金型によって形成される側壁12のパーティングラインに沿って延在している。なお、本発明において接着帯30の本数、長さ、幅等は特に限定されるものではなく、また、直線状に延在することに限らず、屈曲部、又は湾曲部を有していても良い。なお、接着帯30は必須の構成ではないため、接着帯30を設けない構成とすることも可能である。
【0023】
ここで、
図4は、本実施形態の二重容器1に装着される注出キャップの一例を示したものである。注出キャップ40は、口部壁13に係合保持され、注出栓41と、注出栓41にヒンジ42を介して連結され、当該注出栓41の開閉を行う蓋体43とを備える。なお、ヒンジ42を設けずに、蓋体43を別体として形成し、注出栓41にねじ係合やアンダーカット係合させる構成としてもよい。
【0024】
注出栓41は、口部壁13の外周面に対してアンダーカット係合する装着筒44と、装着筒44の上部を覆う隔壁45と、隔壁45から上方に立設し、内側が充填空間Mに繋がる注出筒46とを備える。注出筒46の下方には、円筒壁47が連なっており、円筒壁47の内周面には、周方向に間隔をあけて設けられる複数の縦リブ48を設けている。縦リブ48の径方向内側には、球状体49が配置され、縦リブ48の上端に設けた膨出部によって抜け止め保持されている。円筒壁47の下部には、下方に向けて縮径する傾斜壁47aを設けている。ここで、球状体49は、縦リブ48に沿って自重にて移動するものであり、
図1、4に示すように二重容器1が起立姿勢にあるときは傾斜壁47aと全周にわたって当接して、内層体20の充填空間Mを封止している。
【0025】
蓋体43は、注出栓41の上方を覆う頂壁50の外縁部に周壁51を連結したものであり、周壁51はヒンジ42によって装着筒44に連結されている。また、頂壁50の下面には、注出筒46と液密に当接するシール筒52を設けている。また、シール筒52の径方向内側には、下方に向けて延びるピン53を設けている。ピン53は、球状体49が上方へ変位する際、上限に至る手前で球状体49に当接するように設けられている。これにより、輸送等によって球状体49が勢いよく上方に移動しても、縦リブ48の上端に設けた膨出部を越えて外れてしまうことがない。
【0026】
注出キャップ40を装着した二重容器1から内容物を吐出するに当たっては、蓋体43を開いて二重容器1を傾倒或いは倒立姿勢にすることで、球状体49は注出筒46側に変位し、充填空間M内の内容物は自重により傾斜壁47aの開口から縦リブ48の相互間を通り抜けて注出筒46より吐出される。この際、外層体10と内層体20との相互間にはスリット16を通して外気が導入されるので、外層体10はその形状を保ったまま、内層体20のみが減容することとなる。
【0027】
内容物の吐出が進んで残量が減ってくると、内容物全体の重量が少なくなることから、二重容器1を傾けるだけでは内容物が吐出され難くなる。そこで、側壁12を両側から挟むようにして外層体10を押圧(スクイズ)する。この時、スリット16は僅かに開くものの、一対の膨出部15によって、その開き量が制限されることに加え、膨出部15の両側の、リブ高さの高い領域によってもスリット16の開き量が制限されるため、外層体10と内層体20との相互間の空気がスリット16から漏れ出す量は少なくなり、内層体20は十分に押圧されることになるので、自重では吐出され難くなった内容物も最後まで吐出させることができる。なお、押圧を解除すれば、外層体10と内層体20との相互間には外気が十分に導入される。なお、本実施形態の二重容器1にあっては、用途に応じて、初めから外層体10をスクイズして内容物を吐出することも可能である。
【0028】
上述のように、スリット16は、外層体10と内層体20との相互間に外気を導入するものであるが、スリット16の長さが短すぎると、スリット16の開口長さが不足して外気を十分に導入することができず、一方、スリット16の長さが長すぎると、後述するようにスリット16が開き易く、外層体をスクイズしても空気が漏れて内層体を十分に減容させることができずに内容物の吐出が難しくなってしまう。このため、二律背反するこれらの機能をどちらも満足させるべく、スリット16の長さは、外層体10の剛性等に応じて、適切な長さに設定し、所期した通りの長さとなるよう形成することが重要である。
【0029】
本実施形態の二重容器1にあっては、一対の膨出部15を設けることにより、リブ14の延在方向における一部に、高さの低い領域を形成し、スリット16を形成し易くすることができる。よって、リブ14の延在方向に沿った膨出部15の幅を変更することによって、スリット16の長さを所望の長さに変更することができ、スクイズ時に内層体20を押圧する圧力を調整することができる。その結果として、スリット16の長さを適切な長さに形成することで、内容物をその自重で吐出させることができ、しかも内容物の残量が少なくなった際には外層体10のスクイズによるスムーズな吐出を実現することができる。また、外気導入弁も不要であるため、コストの増大を招くこともない。
【0030】
また、本実施形態の二重容器1にあっては、リブ14を、ブロー成形の割り金型による食い切りによって形成されるピンチオフ部で構成したことにより、ブロー成形後に内層体20を外層体10から剥離させることで、容易にスリット16を形成することができる。
【0031】
また、接着帯30は、本実施形態のように、リブ14の一方の端部側のみに1本設けることが好ましく、これによれば、接着帯30を設けた側では内層体20が外層体10に保持されるとともに、接着帯30を設けていない側では、内層体20が外層体10から剥離可能となる。そのため、接着帯30を設けた側で内層体20を保持することにより内層体20の底部が口部壁13側に移動することを防止するとともに、接着帯30を設けていない側において、スリット16を通して導入される外気の流路を確保することができる。これにより、充填空間Mの一部が閉塞して内容物が吐出できなくなる、いわゆるチョークオフ現象を防止することができる。また、内層体20が片持ち状態となるため、内容物が口部壁13側に移動し易くなり、内容物の残量を低減させることができる。
【0032】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、リブ14におけるスリット16を設けない位置に、一方の側面を他方の側面に向けて食い込ませることでピンチオフ部の底割れ強度を高める複数の食い込み部を設けてもよい。またスリット16は、外層体10に対し後加工にて設けるようにしてもよい。更にリブ14は、外層体10と内層体20とを扁平に押し潰したピンチオフ部によらずに外層体10のみで形成してもよい。