特許第6385267号(P6385267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385267
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】巻取機の動作方法、および巻取機
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/36 20060101AFI20180827BHJP
   D01H 13/24 20060101ALI20180827BHJP
   B65H 63/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   D01H1/36 D
   D01H13/24
   B65H63/00 B
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-253855(P2014-253855)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-117461(P2015-117461A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】10 2013 021 316.9
(32)【優先日】2013年12月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ブンクター
(72)【発明者】
【氏名】フランツ−ヨーゼフ フラム
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ヘニッヒ
(72)【発明者】
【氏名】マーク キュッペンベンダー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ−ミヒャエル ルー
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−231769(JP,A)
【文献】 特開昭62−218370(JP,A)
【文献】 特開2000−053326(JP,A)
【文献】 実開平04−130270(JP,U)
【文献】 特開平07−117927(JP,A)
【文献】 特開昭64−13376(JP,A)
【文献】 米国特許第5142159(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/00−17/02
B65H 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワインディングユニット(2)と、当該ワインディングユニット(2)へ管糸(9)を追跡可能に移送するためのコンベアシステム(3)とを有する巻取機(1)の動作方法であって、
画像生成センサ(42,42A)を用いて、糸長が既知である参照管糸(9A)のデジタル画像を作成するステップと、
前記参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータを求めるステップと、
前記参照管糸(9A)の糸長と、当該参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータとの比を求めるステップと、
画像生成センサ(42)を用いて、前記コンベアシステム(3)に供給された管糸(9)のデジタル画像を作成するステップと、
前記管糸(9)から巻取中に引き出された糸長を検出するステップと、
前記管糸(9)のデジタル画像の情報、当該管糸(9)から引き出された糸長、および、前記参照管糸(9A)の糸長と当該参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータとの求めた前記比の結合を行うステップと、
前記結合の結果に依存して前記巻取機(1)を制御するステップと
を有することを特徴とする動作方法。
【請求項2】
画像生成センサ(42,42A)を用いて管糸(9,9A)の参照管(34,34A)のデジタル画像を作成する、
請求項1記載の動作方法。
【請求項3】
前記参照管糸(9A)のデジタル画像の情報と、前記参照管(34,34A)のデジタル画像の情報とから、前記参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータを求める、
請求項2記載の動作方法。
【請求項4】
前記参照管糸(9A)の巻糸(48A)に、前記デジタル画像の画素を対応付け、前記巻糸(48A)の断面を表すパラメータとして当該画素の数を用いる、
請求項1から3までのいずれか1項記載の動作方法。
【請求項5】
前記コンベアシステム(3)へ供給された管糸(9)の巻糸(48)に、前記デジタル画像の画素を対応付ける、
請求項1から4までのいずれか1項記載の動作方法。
【請求項6】
前記管糸(9)のデジタル画像の情報、および、前記参照管糸(9A)の糸長と当該参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータとの前記求めた比から、前記コンベアシステム(3)へ供給された管糸(9)の糸長を求める、
請求項1から5までのいずれか1項記載の動作方法。
【請求項7】
前記管糸(9)のデジタル画像の情報から、当該管糸(9)の長手方向寸法に依存して、当該管糸(9)の直径を表すパラメータを求める、
請求項1から6までのいずれか1項記載の動作方法。
【請求項8】
前記管糸(9)のデジタル画像の情報、前記管糸から引き出された糸長、および、前記参照管糸(9A)の糸長と当該参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータとの前記求めた比から、前記管糸(9)の変化していく形状を求める、
請求項1から7までのいずれか1項記載の動作方法。
【請求項9】
前記管糸(9)の巻糸(48)に前記デジタル画像の画素を対応付け、
引出中に前記管糸(9)の巻取パターンに従い、前記巻糸(48)に対する前記画素の対応関係を順次除去していく、
請求項8記載の動作方法。
【請求項10】
前記ワインディングユニット(1)において引出加速装置(37)を、前記管糸(9)の変化していく形状に依存して制御する、
請求項8または9記載の動作方法。
【請求項11】
前記ワインディングユニット(2)において糸テンション装置(14)および/または巻取速度を、前記管糸の変化していく形状に依存して制御する、
請求項8から10までのいずれか1項記載の動作方法。
【請求項12】
前記管糸(9)のデジタル画像の情報、前記管糸(9)から引き出された糸長、および、前記参照管糸(9A)の糸長と当該参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータとの比から、前記管糸(9)の残糸長を求める、
請求項1から11までのいずれか1項記載の動作方法。
【請求項13】
1バッチの管糸(9)の目下の残糸長を検出する、
請求項12記載の動作方法。
【請求項14】
検出した前記残糸長に依存してバッチの終了を制御する、
請求項13記載の動作方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の動作方法を実施するための巻取機(1)であって、
複数のワインディングユニット(2)と、当該ワインディングユニット(2)へ管糸(9)を追跡可能に移送するためのコンベアシステム(3)とを有し、
前記コンベアシステム(3)の入口に、当該コンベアシステム(3)へ供給された管糸(9)のデジタル画像を作成するための画像生成センサ(42)が配置されており、
管糸(9)から巻取中に引き出された糸長を検出するための手段と、制御評価手段(40,47,50)とが設けられており、
前記制御評価手段(40,47,50)は、
参照管糸(9A)のデジタル画像を用いて、当該参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータを求め、
前記参照管糸(9A)の予め定められた糸長を用いて、当該参照管糸(9A)の糸長と、当該参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータとの比を求め、
管糸(9)のデジタル画像の情報、当該管糸(9)から引き出された糸長、および、前記参照管糸(9A)の糸長と当該参照管糸(9A)の巻糸(48A)の断面を表すパラメータとの前記求めた比の結合を行い、
前記結合の結果に依存して前記巻取機(1)を制御する
ように構成されていることを特徴とする、巻取機(1)。
【請求項16】
前記管糸(9)のデジタル画像を反射性の背景部(46)の前方で作成することができるように、当該反射性の背景部(46)が前記画像生成センサ(42)に対向するように配置されており、
前記管糸(9)のデジタル画像の作成時に、光源(44,45)と前記背景部(46)とがそれぞれ、前記管糸の反対側に位置するように、光源(44,45)が配置されている、
請求項15記載の巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取機を動作させる方法、および、当該方法を実施するための巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開DE3942304A1に、管糸の糸体積を求めるための測定装置が開示されている。この測定装置は個別センサの配列体を有し、各個別センサはそれぞれ、送光器と、これに対向する受光器とから成る。管糸をセンサの近傍において通過させる間、前記センサによって複数回の走査を行う。このようにして、個別センサが1次元構成であるにもかかわらず、管糸の少なくとも大まかな2次元像が生成される。この2次元像から管糸の糸体積を求める。この糸体積に基づき、規定の制御プロセスを導出しなければならない。誤差無く巻き取られた参照管糸の糸体積と比較することにより、管糸と所定のワインディングユニットおよび/または工程との対応関係を特定することができる。求めた上述のパラメータに基づき、たとえば、複数の各異なる管糸と、それぞれ異なる糸部位との対応関係を特定することができる。さらには、満管状態の管糸と、残糸を有する管糸とを区別することもできる。この巻取状態に応じて、各ワインディングユニットにおける巻取速度および糸張力を適切に調整しなければならない。しかしDE3942304A1には、巻取速度および引出プロセス中の糸張力をどのように適応調整するかについては、具体的な記載が無い。
【0003】
欧州特許出願公開EP1961687A2は、管糸を評価するためにデジタル写真カメラを用いることを対象としている。これにより、管に巻かれたヤーン量を求め、この情報に基づき、管糸を管糸準備ステーションへ輸送するか、または、当該管に残った巻取糸を除去するために管糸をクリーニングステーションへ送るかを決定する。巻糸を識別するためには、デジタル画像にエッジフィルタリングを行う。独国特許出願公開DE19836071A1にも同様に、CCDビデオカメラを用いて、管糸の管に残った糸を識別するためのデジタル画像を作成することが開示されている。つまり、いずれの刊行物においても、画像センサが用いられる。
【0004】
独国特許出願公開DE102007058857A1に、巻取機のワインディングユニットが開示されており、このワインディングユニットにおいて、比較的小さい体積の糸を含む管糸が巻き取られて、大きな体積の綾巻きパッケージを形成する。管糸からいわゆる糸バルーンを形成しながら頂部から糸を引き出す巻取過程中には、糸の引出速度を制限することにより巻取機の巻取速度も制限する糸張力が、糸にかかる。有効な対抗措置を取らないと、1管糸走行の間に、この糸張力は初期の糸張力の数倍にまで上昇することがある。この糸張力を制限するために、いわゆるバルーンリミッタまたは引出加速装置が公知である。この引出加速装置は、下辺領域が円錐状に形成された管状の部材を有し、巻取プロセス中にこの円錐が管糸のいわゆる巻糸コーンの領域内に常に位置決めされるように、管糸上方にてこの管状部材を下降させる。管状部材を最適に追従制御するのを保証するためには、当該管状部材の円錐状の端部に、管糸の巻糸コーンとの距離を測定する光センサが配置される。管状部材を巻糸コーン上方にて正確に下降させることは、引出加速装置が高信頼性で動作するために不可欠なことである。それゆえ、引出加速装置は各ワインディングユニットにおいて、管糸の巻糸コーンを検出するためのセンサを有する。
【0005】
独国特許出願公開DE4217059A1には、管糸をワインディングユニットへ追跡可能に移送するためのコンベアシステムが記載されている。管糸は、バーコードが付されたコンベア皿板上に配置される。これにより、各管糸を個別に識別することができる。これにより、コンピュータまたは制御ユニットによって各管糸に対して情報ないしは特性を割り当てることができる。この情報はたとえば、管糸の巻取度とすることができる。このようにして、糸量に依存して巻取速度を制御することができる。
【0006】
独国特許出願公開DE4319173A1に、管糸または管糸の管を備えたコンベア皿板を形状接続的に輸送するための連行部を備えたコンベアベルトが開示されている。この連行部はコンベア皿板の凹部に係合する。コンベアベルトまたはコンベアチェーンの固定位置にて管糸を移動させるこのコンベアシステムにより、機器内において管糸の追跡を行うことができる。つまり、特定の管糸が機器内のどこに在るかを追跡することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開DE3942304A1
【特許文献2】欧州特許出願公開EP1961687A2
【特許文献3】独国特許出願公開DE19836071A1
【特許文献4】独国特許出願公開DE102007058857A1
【特許文献5】独国特許出願公開DE4217059A1
【特許文献6】独国特許出願公開DE4319173A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、巻取機の制御を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は本発明では、請求項1に記載の方法の特徴と、請求項14に記載の装置構成とにより解決される。従属請求項に本発明の有利な実施形態が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の巻取機を示す図である。
図2】本発明の巻取機のワインディングユニットを示す図である。
図3】管糸のデジタル画像を作成するための、巻取機の装置を示す図である。
図4】参照管糸のデジタル画像を作成するための装置を示す図である。
図5】管糸の断面図である。
図6】部分的に繰り出された糸長を有する管糸の断面図である。
図7】エラーを有する管糸の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記課題を解決するため、多数のワインディングユニットと、紡績ボビンを当該巻取ステーションへ追跡可能に移送するためのコンベアシステムとを有する巻取機の動作方法を提供する。本発明の方法では、たとえばCCDセンサまたはCMOSセンサ等の画像生成センサを用いて、糸長が既知である参照管糸のデジタル画像を作成し、当該参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータを求める。この糸長は、その前にある紡績工程から把握することができ、または、本方法を実施するためにこの糸長を決定する。参照管糸に巻かれた糸長を求めるためには、参照管糸と当該参照管糸の管とを計量することができる。参照管糸の巻糸の重量と番手とから、糸長を求めることができる。場合によっては、所定長の糸片から番手を求めることができることがある。本発明ではさらに、参照管糸の糸長と、当該参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータとの比も求める。
【0012】
前記コンベアシステムへ供給された他の管糸から、画像生成センサを用いてデジタル画像を生成する。有利なのは、参照管糸のデジタル画像と前記他の管糸のデジタル画像とを生成するために、同一の画像生成センサを使用することである。しかし原則的には、異なるセンサを用いることも可能である。さらに、巻取中に管糸から引き出された糸長を検出する必要もある。本発明では、管糸のデジタル画像の情報、管糸から引き出された糸長、および、参照管糸の糸長と当該参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータとの求めた比の相互の結合を行い、当該結合の結果に依存して巻取機を制御する。
【0013】
本発明の方法により、管糸がコンベアシステムに入り込むときないしは巻取機へ供給されるときの状態が検出されるだけでなく、引出プロセス全体において管糸の状態を検出することができる。これらの状態が分かることにより、巻取機を最適に制御することができる。各ワインディングユニットに追加的なセンサを設ける必要は無くなる。このこととは関係なく、基本的には、引き出された糸長は各ワインディングユニットにおいて公知のように求められる。
【0014】
有利には、管糸の参照管のデジタル画像も、画像生成センサを用いて作成される。
【0015】
参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータは、参照管糸のデジタル画像の情報と参照管のデジタル画像の情報とから求めることができる。さらに参照管の画像を用いることにより、巻糸と管とを簡単に区別することができる。
【0016】
本発明の方法の有利な実施形態では、参照管糸の巻糸に前記デジタル画像の画素を対応付け、その画素数が、当該巻糸の断面を表すパラメータとして使用される。参照管糸のデジタル画像を高コントラストの背景の前方で作成すると、管糸の画素を輝度比較または濃淡値比較により求めることができる。同様にして、参照管の画像を求めることもできる。有利には、同一条件下で参照管の画像を作成する。つまり、同一距離かつ同一解像度等で作成する。この情報を用いて、参照管糸の巻糸の画素と管糸の画素とを簡単に区別することができる。もちろん、これに代えて択一的に、巻糸を計算するために公知のエッジフィルタアルゴリズムを用いることも可能であるが、この計算に必要な計算量は格段に多くなる。
【0017】
さらに処理を行うため、参照管糸に対応して、コンベアシステムに供給された管糸の巻糸にも各デジタル画像の画素を対応付けることができる。これらの画像も、有利には同一条件下で作成される。
【0018】
管糸のデジタル画像の情報、および、参照管糸の糸長と当該参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータとの求めた比から、コンベアシステムに供給された各管糸の正確な糸長を求めることができる。こうするためには、管糸の巻糸の画素数に、前記糸長と参照管糸の巻糸の画素数との比を乗算するだけでよい。
【0019】
管糸のデジタル画像の情報からは、有利には、管糸の長手方向寸法に依存して、管糸の直径を表すパラメータを求めることができる。このことにより、管糸の巻糸コーンの姿勢および形状を求めることができる。さらに、紡績時のエラーにより生じる、正常な管糸形状からの偏差を検出することもできる。
【0020】
本発明の方法の有利な一実施形態では、管糸のデジタル画像の情報、管糸から引き出された糸長、および、参照管糸の糸長と当該参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータとの求めた比から、引出中に変化する、管糸の形状を連続的に求める。
【0021】
こうするためには、管糸の巻糸にデジタル画像の画素を対応付け、引出中には、管糸の巻取パターンに応じて画素と巻糸との対応関係を順次除去していくことができる。紡績時には、巻取コーンに沿って管糸の糸層が形成され、引出時にはこれに応じて管糸が解体していく。つまり、巻取コーン形状に沿って解体していくので、画素と巻糸との対応関係は、この巻取コーン形状に沿って順次除去していく。
【0022】
本発明の方法では、このようにして常に、引出中に変化していく、巻取コーンの姿勢を求めることができる。それゆえ有利には、ワインディングユニットにおいて引出加速装置を、管糸の変化していく形状に依存して制御する。本発明ではこのことにより、従来技術では引出加速装置に設置しなければならなかったセンサを省略することができる。本発明による引出加速装置の制御は、紡績時のエラーにより管糸形状が正常時の管糸形状とは偏差していても、高信頼性で機能する。
【0023】
管糸の変化していく形状が分かることにより、ワインディングユニットにおいて糸テンション装置および/または巻取速度を制御することができる。従来技術との相違点として、引出中に変化する条件に容易に適応することが可能となる。
【0024】
他の1つの有利な実施形態では、引出中に、管糸のデジタル画像の情報、管糸から引き出された糸長、および、参照管糸の管糸と当該参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータとの求めた比から、当該管糸に残った残糸長を求める。このことにより、1バッチの管糸に現在残っている残糸長を検出することができる。
【0025】
有利にはこのようにして、検出した残糸長に依存してバッチ終了を制御する。つまり、1バッチの終了時に、綾巻きパッケージを満管状態に巻き取るためには、どのワインディングユニットにおいて、バッチの残りの管糸を処理するかを決定することができる。
【0026】
本発明はさらに、多数のワインディングユニットと、当該ワインディングユニットへ紡績管糸を追跡可能に輸送するためのコンベアシステムとを備えた、本発明の方法を実施するための巻取機にも関し、コンベアシステムの入り口には、当該コンベアシステムに供給された管糸のデジタル画像を作成するための画像生成センサが配置されており、巻取中に管糸から引き出された糸長を検出するための手段が設けられている。さらに制御評価手段も設けられており、この制御評価手段は、参照管糸のデジタル画像を用いて、当該参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータを求め、当該参照管糸の予め定められた糸長を用いて、当該参照管糸の糸長と、当該参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータとの比を求め、管糸のデジタル画像の情報、当該管糸から引き出された糸長、および、前記参照管糸の糸長と当該参照管糸の巻糸の断面を表すパラメータとの求めた比の結合を行い、当該結合の結果に依存して巻取機を制御するように構成されている。
【0027】
有利には、反射性の背景の前方にて管糸のデジタル画像を作成できるように、当該反射性の背景を前記画像生成センサに対向するように配置することができ、また、管糸のデジタル画像の作成時に光源と当該背景とが管糸の反対側にそれぞれ来るように配置された当該光源を設けることができる。管糸は、光源の光が背景に当たるのを遮蔽し、管糸領域外において背景に当たった光は反射される。画像上には、非反射性であるかまたは少なくとも低反射性の管糸が暗く映り、反射性の背景は明るく見える。このようにして高いコントラストが生成され、これにより、面倒なエッジフィルタ処理を用いることなく暗い画素を管糸に対応付けることができる。有利には、反射性の背景として、特に大量に反射する反射膜を用いる。
【実施例】
【0028】
以下、図面に示された実施例を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0029】
図1は、多数のワインディングユニット2を有する巻取機1を示しており、これらのワインディングユニット2は、巻取機1のエンドフレーム55,56間に配置されている。巻取機は中央制御ユニット50を備えており、この中央制御ユニット50は、バスシステム60を介してワインディングユニット制御部40に接続されている。中央制御ユニット50は、操作および表示のためにキーボード52およびディスプレイ51を有する。
【0030】
図2は、巻取プロセス中のワインディングユニット2の概略的な側面図である。このワインディングユニット2において、比較的少量の糸材料のみを有する原形パッケージを巻き取って、大きな体積の綾巻きパッケージ11を形成する。このことは公知のように行われるので、ここでは詳細に説明しない。前記原形パッケージは通常は、リング精紡機にて製造された紡績管糸9である。完成した綾巻きパッケージ11は次に、自動動作するメンテナンスユニット57を用いて、機械長の綾巻きパッケージコンベア装置21に引き渡され、機器端部側に配置されたパッケージ移替えステーション等へ輸送される。前記メンテナンスユニット57は、たとえば綾巻きパッケージ替え装置である。
【0031】
巻取機1にはさらに、パッケージ管コンベアシステム3の形態のロジスティック装置が備えつけられている。このパッケージ管コンベアシステム3では、コンベア皿板8に対して垂直の向きに立てられた紡績管糸9ないしは空の管34が循環している。図中にはこの管コンベアシステム3のうち、管糸供給区間4と、反転駆動可能な蓄積区間5と、ワインディングユニット2へ繋がっている横方向輸送区間6と、管戻し区間7とのみを示している。これらの区間は、前記コンベア皿板8用のホルダ装置を有するコンベアベルトを有する。このホルダ装置は、図中には示されていない。コンベアベルトの動きと、当該コンベアベルトにおけるホルダ装置の位置とが分かっているので、巻取機内における特定の管糸の位置を特定することが常に可能である。図から分かるように、供給された紡績管糸9はまず最初に、ワインディングユニット2にある横方向輸送区間6の領域にある引出位置10に位置決めされ、その後に巻き取られる。
【0032】
こうするために各ワインディングユニット2は、種々の糸監視装置や糸処理装置を有する。これは、紡績管糸9が巻き取られて大きな体積の綾巻きパッケージ11を形成するのを保証するだけでなく、巻取プロセス中に糸30に糸エラーが存在するか否かを監視し、糸エラーを検出した場合にはこれを解消することも保証するものである。このことは公知のように行われるので、簡単に図示されているだけである。各ワインディングユニット2はワインディングユニット制御部40を有し、これは、簡単にのみ図示された制御線路を介して前記糸監視装置や糸処理装置に接続されており、かつ、バスシステム60を介して中央制御ユニット50とメンテナンスユニット57の制御装置58とに接続されている。
【0033】
作業ユニット2はたとえば、巻取枠18を有する巻取装置24をそれぞれ有する。この巻取枠18は旋回軸19を中心として可動に支承されており、巻取枠18にはパッケージ駆動装置26と糸綾振り装置28とが備えつけられている。
【0034】
図中の実施例では、巻取プロセス中、綾巻きパッケージ11の表面は駆動ローラ26上に載置されており、摩擦係合により綾巻きパッケージ11は駆動ローラ26と連動する。その際には駆動ローラ26には、回転数制御可能かつ反転可能な駆動装置(図示されていない)を介して力が加えられる。綾巻きパッケージ11上に載るときの糸30の綾振りは糸綾振り装置28を用いて行われ、本実施例ではこの糸綾振り装置28はフィンガ形糸ガイド29を有する。
【0035】
ワインディングユニット2はさらに、糸結合装置と、下糸センサ22と、糸テンション装置14と、糸切断装置17を備えた糸クリーナ15と、ワキシング装置16とを有する。前記糸結合装置は有利には、切断装置43を備えた、空気圧式で動作する糸撚り継ぎ装置13である。図2に示されたワインディングユニット2はさらに、糸張力センサ20も有する。
【0036】
また、ワインディングユニット2にはさらに、吸引ノズル12とグリップ管25とが備えつけられており、これら双方には、規定通りに負圧が加わるように構成されている。この吸引ノズル12およびグリップ管25は、機械長の負圧トラバース部32が接続されており、この負圧トラバース部32は負圧源33に接続されている。
【0037】
図中に示した実施例ではさらに、ワキシング装置16の領域において、糸走行経路で見て若干後方にずれて配置された糸捕捉ノズル23が、巻取プロセス中に糸30を、当該糸捕捉ノズル23の合流部42より上流にて走行させるように位置決めされている。糸捕捉ノズル23もまた、空気分岐27を介して負圧トラバース部32に接続されている。空気分岐27はここでは、糸捕捉ノズル23に対する管継手35と、比較的大容積の逃がし管継手36と有し、その合流部は、正常な巻取動作中には、待機位置Pに配置された吸引ノズル12によって空気密に封止されている。吸引ノズル12が高位置に旋回することにより逃がし管継手36が開放されると、糸捕捉ノズル23にかかる負圧が消失する。
【0038】
さらにワインディングユニット2には、引出加速装置37も備えつけられている。これは巻取プロセス中に、紡績管糸9から糸が引き出されるときに生じる糸バルーンに好影響を及ぼすことにより糸張力を低下させるためのものである。この引出加速装置37は駆動装置38を介して、巻取プロセス中には紡績管糸9の引出走行の後に下方に移動するように、規定通りに垂直方向Rに位置移動するように構成されている。その際には、引出加速装置37の下辺部は常に、引出位置10に位置決めされた紡績管糸9の巻糸コーン39の高さとほぼ同じ高さに位置する。
【0039】
巻取機1はさらに、コンベアシステム3の入口に配置された画像検出装置41を有する。図3に、この画像検出装置41の詳細を示す。管糸9は、前記コンベアシステム3によって画像生成センサ42と背景部46との間に位置決めされる。さらに、管糸9に照明するための2つの赤外線ダイオード44,45も、前記背景部46より前方に設けられている。つまり、管糸9が赤外線ダイオード44および45と背景部46との間に来るように、赤外線ダイオード44および45も画像生成センサ42の領域に配置されている。画像生成センサ42に対して、画像処理ユニット47が設けられている。この画像処理ユニット47は、巻取機を制御するため、バスシステム60を介してワインディングユニット制御部40と中央制御ユニット50とに接続されている。背景部46には反射膜が設けられており、この反射膜は、赤外線ダイオード44および45から送出された光の反射を増幅させるためのものである。背景部46の、管糸9により遮蔽された部分のみが、暗いままになる。このようにして、デジタル画像上において管糸と背景部との強いコントラストが実現される。このことにより、管糸に属する画素を把握するのが容易になる。
【0040】
本発明の方法を実施するためには、参照管糸のデジタル画像が必要である。このデジタル画像は、巻取機の画像検出装置41を用いて作成することができる。しかし、参照管糸のデジタル画像を作成するために、たとえば図4に示されたような別個の画像検出装置41Aを用いることも可能である。上述の作成した画像をさらに処理するという面倒なことをせずに、管糸9のデジタル画像と参照管糸9Aのデジタル画像とを比較できるようにするため、画像検出装置41Aは巻取機の画像検出装置41と実質的に同一構成となっている。したがって画像検出装置41Aは、背景部46Aより前方のデジタル画像を作成するための画像生成センサ42Aを有する。これに応じて、照明のために赤外線ダイオード44Aおよび45Aが設けられている。画像処理ユニット47Aを用いて、参照管糸のデジタル画像を記憶することができる。参照管糸のデジタル画像は、巻取機の制御のために当該巻取機へ転送される。このことはたとえば、図中に示されていないバス接続またはメモリカードを用いて行うことができる。管糸9の巻糸48および参照管糸9Aの巻糸48Aの双方を、管34ないしは34Aとより良好に区別できるようにするため、有利には、参照管34Aのデジタル画像を作成する。別個の画像検出装置41Aが設けられている場合には、有利にはこの装置を用いて参照管のデジタル画像を作成する。もちろん、これに代えて択一的に、巻取機1の画像検出装置41を用いることも可能である。
【0041】
上述のデジタル画像を作成した後、参照管糸9Aの巻糸48Aと管糸9の巻糸48とに当該デジタル画像の画素を対応付けることができる。暗い画素はすべて、管糸9または9Aに属する。このようにして選択された画素は、巻糸48ないしは巻糸48Aの他に、各管34ないしは34Aの画素も含む。参照管34Aのデジタル画像と管糸9ないしは参照管糸9のデジタル画像とを比較することにより、管34ないしは34Aの画像中に対応する画素を特定することができる。このようにして残った暗い画素を、巻糸48,48Aに対応付けることができる。このようにして残った暗い画素を、巻糸48,48Aに対応付けることができる。巻糸48および管34の各横断面の分布は、図5から分かる。
【0042】
本発明の方法を実施するためには、さらに、参照ヘッドに巻かれている正確な糸長が既知であることも必要である。こうするためには、参照管糸9Aの計量を行い、かつ、この参照管糸9Aを引き出した後に当該参照管糸9Aの管34Aの計量を行うことができる。このようにして、番手を用いて糸長を計算することができる。必要な場合には、長さが予め定められた短い参照糸片から番手を求めることもできる。
【0043】
ワインディングユニット2において管糸9から引き出された糸長を求めるために特別な装置をワインディングユニット2に設ける必要はない。引き出された糸長はたとえば、巻取駆動装置26の回転数の積分により求めることができる。
【0044】
管糸9のデジタル画像から、当該管糸9の直径の、長手方向における推移を求めることができる。これにより、管糸9の巻糸コーン39の姿勢および形状と、管糸形成のエラーとの双方を識別することができる。
【0045】
上述の情報は有利には、複数の種々の制御プロセスの基礎として用いることができる。
【0046】
管糸9のデジタル画像は、引出加速装置37の制御に用いることができる。参照管糸9Aの巻糸48Aの画素数は、当該巻糸48Aの断面積を表す尺度となる。参照管糸9Aの既知の糸長から、糸長と断面積との比を求めることができる。この比により、管糸9から引き出された糸長を併用して、巻糸48の変化する断面積を求めることができ、ひいては、当該巻糸の形状を持続的に正確に求めることができる。所定長の糸を管糸9から引き出した後の図5の管糸9を、図6に示す。この引き出された糸長は、上述の比を用いると、面積49に相当する。このようにして、残糸巻糸48Bが残る。管糸9の巻取原理に基づき、断面積ないしは巻糸48は常に、巻糸コーン39に沿って解体していく。このことにより、もはや巻糸に対応付けられることがない面ないしは画素を簡単に特定することができる。
【0047】
図7は、巻糸48Cが絞られた形状になるというエラーを有する管糸9Cを示す。このような管糸9Cは、「コカコーラ」管糸とも称される。このような管糸でも、上述の方法によって、引出プロセス全体において常に、この管糸の具体的な形状を求めることができる。
【0048】
このようにして、引出加速装置37の下辺部が常に、引出位置10に位置決めされた紡績管糸9の巻糸コーン39の高さとほぼ等しい高さになるように、センサを追加することなく常に、当該引出加速装置37を制御ないしは下降させることができる。
【0049】
公知のように、引出加速装置37を適正に下降させても、管糸に巻かれた糸量が減少するにつれて糸張力ないしは糸テンションは上昇していく。それゆえ、糸張力を糸テンション装置14と、場合によっては巻取速度の変化とによって適応調整する。従来技術では、最適な調整を保証するために、各ワインディングユニットにおいて糸張力センサ20を用いて糸張力ないしは糸テンションを求めることが公知であった。本発明では、各ワインディングユニットに糸張力センサ20を配置することなく、管糸9の巻糸コーン39の位置に依存して、または、‐より一般化して言うと‐管糸9の変化する形状に依存して、糸テンション装置14および/または巻取速度を調整することができる。しかし、参照曲線を求めるために糸張力センサ20を各ワインディングユニット2に備えるのが有利である。
【0050】
巻取機1では、種々の糸を用いて、また部分的に複数の異なる管34を用いて、管糸9を処理する。この場合、複数の異なるバッチが存在することになる。複数の異なるバッチを同時に処理することも、または順次処理することもできる。というのも、綾巻きパッケージ11には管糸9よりも格段に多くの糸が巻き付けられるからである。よって、バッチ交換時またはバッチ終了時には、綾巻きパッケージ11を完全に巻き付けることができるように、管糸9を複数のワインディングユニット2に分ける問題が生じる。この問題を解決するためには、管糸9のデジタル画像と、参照管糸9Aのデジタル画像から求められた断面積‐糸長比とに基づいて、管糸9に巻かれた糸長を求める。引出中に、管糸9から引き出された糸長を検出し、これによって常に、管糸9に残った残糸長が求められる。これらの情報によって常に、1つのバッチの、システムに存在するすべての管糸9の全糸長を求めることができる。バッチ終了時には、綾巻きパッケージを満管状態にできるようにするため、満管状態の綾巻きパッケージの既知の糸長と、現在の綾巻きパッケージに既に巻かれている糸長とに基づいて、どのパッケージにおいてこの終了しようとしているバッチを処理するかを決定することができる。
【0051】
コンベアシステム3に供給された管糸9のデジタル画像を作成することによって、さらに、バッチを区別することもできる。つまり、複数の異なる管糸を異なるバッチに対応付けることができる。さらに画像によって、その前の紡績工程を監視し、その品質を判定することもできる。たとえば、エラーを有する管糸の頻発を記録することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 巻取機
2 ワインディングユニット
3 コンベアシステム
4 管糸供給区間
6 横方向輸送区間
7 管戻し区間
9 管糸
10 引出位置
11 綾巻きパッケージ
37 引出加速装置
40 ワインディングユニット制御部
41 画像検出装置
42,42A 画像生成センサ
47,47A 画像処理ユニット
46,46A 背景部
44,45,44A,45A 赤外線ダイオード
50 中央制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7