(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
pHを3以下の酸性になるように調整しながら被処理水に浸された陽極と陰極の間に電流を流して、陽極で塩化物イオンと水とを反応させて次亜塩素酸を生成し、陰極で三価鉄イオンを還元して二価鉄イオンを生成し、それらの次亜塩素酸と二価鉄イオンとを反応させて生成したOHラジカルによって被処理水に溶存している有機化合物を酸化して分解する促進酸化水処理方法であって、
前記陰極の表面にフロー制御器によって0.6m/sec以上で5m/sec以下の速度の被処理水の流れを生じさせることを特徴とする促進酸化水処理方法。
【背景技術】
【0002】
工業排水等の水中に溶存している有機化合物は、一般に、好気性・嫌気性微生物による生物処理がなされる。しかしながら,一部の難分解性の有機化合物は生分解性が低いため、生物処理の適用が困難な場合もある。このような難分解性の有機化合物を処理できる技術として促進酸化水処理方法がある。促進酸化水処理方法は、処理装置内でOHラジカル(・OH)を生成させ、OHラジカルの強い酸化力によって,難分解性の有機化合物を分解・無害化するものである。OHラジカルは非常に酸化力が強いため、多くの有機化合物を二酸化炭素や蟻酸、アルデヒドまで分解・低分子化することができ、生物処理と組み合わせることにより難分解性の有機化合物の処理法として有効である。従来の促進酸化水処理方法はオゾン(O
3)、過酸化水素(H
2O
2)、UV照射の組み合わせによるものが一般的である。これよりも簡便な促進酸化水処理方法として、二価鉄イオン(Fe
2+)と過酸化水素の反応を利用するフェントン法、及びフェントン法に電気分解を組み合わせた電解フェントン法も知られている。
【0003】
更には、フェントン法における過酸化水素の代わりに次亜塩素酸(HOCl)を用いるフェントン型処理法が知られている。そして、特許文献1には、フェントン型処理法に電気分解を組み合わせた電解フェントン型処理法が開示されている。この電解フェントン型処理法では、電気分解により二価鉄イオンと次亜塩素酸を生成し、これらの二価鉄イオンと次亜塩素酸を反応させてOHラジカルを生成している。
【0004】
電解フェントン型処理法は、鉄イオンが再利用可能であること、添加する塩化物イオン源が安価であること、塩化物イオン源が過酸化水素のような取り扱い上の危険性が高い薬剤でないこと、等の理由から設備コスト及び薬剤コストを含めた運転コストの低減が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、工業排水等の水処理は、処理効率を増大させることが常に望まれる。本願発明者は、特許文献1に記載の促進酸化水処理方法を基にして更に鋭意研究し、処理効率を増大させることができる促進酸化水処理方法を案出するに至った。
【0007】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気分解により二価鉄イオンと次亜塩素酸を生成し、これらの二価鉄イオンと次亜塩素酸を反応させてOHラジカルを生成する促進酸化水処理方法であって、処理効率を増大させることができる促進酸化水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の促進酸化水処理方法は、pHを3以下の酸性になるように調整しながら被処理水に浸された陽極と陰極の間に電流を流して、陽極で塩化物イオンと水とを反応させて次亜塩素酸を生成し、陰極で三価鉄イオンを還元して二価鉄イオンを生成し、それらの次亜塩素酸と二価鉄イオンとを反応させて生成したOHラジカルによって被処理水に溶存している有機化合物を酸化して分解する促進酸化水処理方法であって、前記陰極の表面にフロー制御器によって0.6m/sec以上
で5m/sec以下の速度の被処理水の流れを生じさせることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の促進酸化水処理方法は、請求項1に記載の促進酸化水処理方法において、前記陽極の表面の面積は、前記陰極の表面の面積よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の促進酸化水処理方法は、請求項
2に記載の促進酸化水処理方法において、前記陽極は、その表面に複数の孔が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の促進酸化水処理方法は、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の促進酸化水処理方法において、前記被処理水のORPを測定することによって前記次亜塩素酸の濃度を監視することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の促進酸化水処理方法は、請求項
4に記載の促進酸化水処理方法において、前記ORPが上昇した場合に前記陰極の表面の被処理水の速度を増加させ、前記ORPが減少した場合に前記陰極の表面の被処理水の速度を低下させて、前記ORPを制御することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の促進酸化水処理方法は、請求項
4に記載の促進酸化水処理方法において、前記陰極は、第1電解フローセルに設けられる第1陰極と第2電解フローセルに設けられる第2陰極とを有して構成され、前記陽極は、第1電解フローセルに設けられる第1陽極と第2電解フローセルに設けられる第2陽極とを有して構成され、
前記ORPが上昇した場合に前記第1陰極の表面の被処理水の速度を増加させ、前記ORPが減少した場合に前記第1陰極の表面の被処理水の速度を低下させて、前記ORPを制御することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の促進酸化水処理方法は、請求項
4に記載の促進酸化水処理方法において、前記陰極は、第1電解フローセルに設けられる第1陰極と第2電解フローセルに設けられる第2陰極とを有して構成され、前記陽極は、第1電解フローセルに設けられる第1陽極と第2電解フローセルに設けられる第2陽極とを有して構成され
、前記ORPが上限基準値よりも上昇した場合には前記ORPを下降させるために前記第2電解フローセルに印加する電圧をOFFにし、前記ORPが下限基準値よりも減少した場合には前記ORPを上昇させるために前記第2電解フローセルに印加する電圧をONにすることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の促進酸化水処理方法は、請求項
4〜7のいずれか1項に記載の促進酸化水処理方法において、前記ORPは、981mV以上で1166mV以下の範囲に有るように制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の促進酸化水処理方法によれば、処理効率を増大させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る促進酸化水処理方法を実現する促進酸化水処理装置1の模式図である。この促進酸化水処理装置1は、水槽2と電解フローセル3を有している。水槽2と電解フローセル3の間には、被処理水Sが循環できるような管路が設けられている。また、水槽2から電解フローセル3へ向かう管路には、フロー制御器4が設けられている。フロー制御器4としては、流量が制御できるポンプを用いることができる。電解フローセル3の外側には、後述する陽極30Xと陰極30Yの間に電圧を印加する電圧印加手段5が設けられている。また、pH制御器6が設けられている。
【0019】
電解フローセル3は、
図2に示すように、被処理水Sが流れる流路Pを挟んで、互いに対向する陽極(アノード)30Xと陰極(カソード)30Yが設けられている。陽極30Xは、ペルメレック電極株式会社製のDSA(ペルメレック電極株式会社の登録商標)の板状電極又は白金コートしたチタン製の板状電極などを用いることができる。陰極30Yは、チタン製の板状電極などを用いることができる。
【0020】
電解フローセル3において、陽極30Xと陰極30Y以外は以下の構成とすることができる。すなわち、陽極30Xと陰極30Yの間にスペーサ用シート(例えば、シリコンシート)31を設け、その中に流路Pを形成する。陽極30Xと陰極30Yの周囲には各々、漏水防止用シート(例えば、シリコンシート)32、32を設ける。陽極30Xと陰極30Y(及び漏水防止用シート32、32)の各々の外側には金属板(例えば、ステンレス鋼板)33、33を設け、それらに電圧印加手段5からの配線を接続する。金属板33、33の各々の外側には、漏水防止用シート(例えば、シリコンシート)34、34を設け、更にその外側には、保護板(例えば、アクリル製)35、35を設ける。片側の漏水防止用シート32、金属板33、漏水防止シート34、保護板35の各々には、スペーサ用シート31の中の流路Pに連通する2個の連通孔P’、P’’が、流路Pの両端部に対応する位置に形成されている。保護板35においては、一方の連通孔P’が、水槽2から電解フローセル3へ向かう管路に接続され、もう一方の連通孔P’’が、電解フローセル3から水槽2へ向かう管路に接続される。
【0021】
促進酸化水処理装置1を用いた促進酸化水処理方法は、先ず、水槽2の中の被処理水Sに、鉄イオン源(例えば、塩化鉄(FeCl
3))を添加し、必要に応じて塩化物イオン源(例えば、塩化ナトリウム(NaCl))を添加することで、被処理水Sに鉄イオンと塩化物イオンを存在せしめる。被処理水Sに大量の塩化物イオンが元々含まれている場合には外部から添加する塩化物イオン源は不要の場合がある。また、海岸の近傍に在る工場の排水が被処理水Sの場合は、海水を塩化物イオン源として被処理水Sに添加するような形態とすることが可能である。
【0022】
そして、pH制御器6によって被処理水SのpHを3以下の酸性になるように調整しながら、フロー制御器4によって、被処理水Sを水槽2と電解フローセル3の間を循環させ続ける。電解フローセル3の中では、流れる被処理水Sを挟む陽極30Xと陰極30Yの間に電圧を印加して電流を流す。
【0023】
陽極30Xと陰極30Yの間の電圧印加により、陽極30Xにおいて、以下の式に示すように、塩化物イオン(Cl
−)と水(H
2O)の反応により、次亜塩素酸(HOCl)とそれに付随して塩酸(HCl)が生成され、陽極30Xには電子が残る。
2Cl
− + H
2O → HOCl + HCl + 2e
−
【0024】
また、陰極30Yでは、以下の式に示すように、後述のフェントン型反応で生成されたものを含む被処理水Sの中の三価鉄イオン(Fe
3+)が陰極30Yから電子を受けて二価鉄イオン(Fe
2+)となる還元反応が生じる。
Fe
3+ + e
− → Fe
2+
【0025】
陽極30Xで生成された次亜塩素酸は、被処理水Sの中の二価鉄イオン、すなわち陰極30Yで生成された二価鉄イオンと、以下の式で示すような反応(フェントン型反応)を起こし、OHラジカルとそれに付随して塩化物イオンと三価鉄イオンが生成される。
Fe
2+ + HOCl → Fe
3+ + Cl
− + ・OH
被処理水Sに溶存している有機化合物は、このOHラジカルにより酸化されて分解される。ここで、陽極30Xにおいて次亜塩素酸が徐々に発生し、その次亜塩素酸からOHラジカルが生成され、そのOHラジカルの多くは有機化合物の分解に供される。従って、有機化合物を効率的に分解することができる。
【0026】
ここで、フロー制御器4は、陽極30Xと陰極30Yの間に被処理水Sを送り込み、陰極30Yの表面30Yaに沿って(表面30Yaに平行に)流れる被処理水Sの速度を制御している。その速度を0.6m/sec以上に増大させると、1.0kA/m
2以上の高い電流密度の状態で、陰極30Yの表面30Ya近傍での物質移動抵抗を減少させ、電極での還元反応を促進して、電流効率を高くすることができる(後述する実験1参照)。その結果、処理効率を増大させることができる。なお、電解フローセル3の中では、陽極30Xと陰極30Yの間に流路Pが設けられているので、陽極30Xの表面30Xaに沿って流れる被処理水Sの速度は、陰極30Yの表面30Yaに沿って流れる被処理水Sの速度にほぼ等しくなっている。また、陰極30Yの表面30Yaに沿って流れる被処理水Sの速度の上限は、装置の物理的な制約などから、例えば5m/secに決めることが可能である。また、電流効率は、流す電流のうち被処理水Sの促進酸化水処理に寄与するものの割合である。その詳細な説明は省略するが、特許文献1に詳細な説明が記載されている。
【0027】
この促進酸化水処理装置1では、水槽2とは別の電解フローセル3を用いているので、フロー制御器4で制御して、陰極30Yの表面30Yaに沿って所定の速度の被処理水Sの流れを生じさせるのが容易である。なお、場合によっては、電解フローセル3を設けず、水槽2の中に陽極30Xと陰極30Yを設置し、別の形態のフロー制御器4で陰極30Yの表面30Yaに沿って所定の速度の被処理水Sの流れを生じさせることも可能である。
【0028】
また、陽極30Xの表面30Xaの面積を陰極30Yの表面30Yaの面積よりも小さくすることによっても、処理効率を増大させることが可能である。これは、電流密度が比較的高い状態での陰極30Yの近傍においては、電流密度を高くするに従って水の電気分解に伴う水酸化物イオンが増加し、それにより水酸化鉄が生成され、二価鉄イオンの生成が抑制されることになる。よって、陰極30Yの近傍においては、電流密度を抑えた方が、電流効率が高くなる傾向になる。その一方、電流密度が比較的高い状態での陽極30Xの近傍においては、電流密度を高くするに従って次亜塩素酸が多く生成され、水の電気分解が無視できるようになる。よって、陽極30Xの近傍においては、電流密度を高くした方が、電流効率が高くなる傾向になる。従って、陽極30Xの表面30Xaの面積を陰極30Yの表面30Yaの面積よりも相対的に小さくすれば、すなわち、陽極30Xの電流密度を陰極30Yの電流密度よりも相対的に大きくすれば、電流効率を高くすることができる。その結果、処理効率を増大させることができる。
【0029】
また、陽極30Xの電極材料は、一般に、高価であるため、陽極30Xの表面30Xaの面積を小さくすることによって、設備コストの点からも有利である。陽極30Xの表面30Xaの面積は、陰極30Yの表面30Yaの面積よりも1/10以下とすることも可能である。
【0030】
陽極30Xの表面30Xaの面積を陰極30Yの表面30Yaの面積よりも小さくする具体的な形態としては、単純に陽極30Xの外形寸法を小さくすることも可能であるが、
図3に示すように、陽極30Xの表面30Xaに複数の孔30Xbが形成されるようにすることができる。こうすると、陽極30Xの外形寸法を対向する陰極30Yの外形寸法とほぼ同じにすることができ、陽極30Xの表面30Xa全体(及び陰極30Yの表面30Ya全体)にわたって電流密度を均一にし易くなる。
【0031】
なお、フロー制御器4によって、陰極30Yの表面30Yaに沿って0.6m/sec以上の速度の被処理水Sの流れを生じさせることと、陽極30Xの表面30Xaの面積を陰極30Yの表面30Yaの面積よりも小さくすることと、を併用すれば、処理効率を増大させる効果が大きくなるが、それぞれを単独使用しても構わない。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係る促進酸化水処理方法を実現する他の促進酸化水処理装置1’を説明する。促進酸化水処理装置1’は、上述した促進酸化水処理装置1における電解フローセル3を、
図4に示すように、第1電解フローセル3Aと第2電解フローセル3Bに分けたものである。陰極は、第1電解フローセル3Aに設けられる第1陰極30AYと第2電解フローセル3Bに設けられる第2陰極30BYとから構成される。陽極は、第1電解フローセル3Aに設けられる第1陽極30AXと第2電解フローセル3Bに設けられる第2陽極30BXとから構成される。二価鉄イオンの生成を第1電解フローセル3Aで制御し、次亜塩素酸の生成を第2電解フローセル3Bで制御している。
【0033】
より詳細には、第1電解フローセル3Aは、
図5(b)に示すように、被処理水Sが流れる流路Pを挟んで、互いに対向する第1陽極30AX と第1陰極30AYが設けられている。第1陰極30AYは、促進酸化水処理装置1における陰極30Yで述べたような板状電極などを用いることができる。第1陽極30AXは、促進酸化水処理装置1における陽極30Xで述べたような板状電極などを用いることができる。第2電解フローセル3Bは、
図5(a)に示すように、被処理水Sが流れる流路Pを挟んで、互いに対向する第2陽極30BXと第2陰極30BYが設けられている。第2陽極30BXは、促進酸化水処理装置1における陽極30Xで述べたような板状電極などを用いることができる。第2陰極30BYは、促進酸化水処理装置1における陰極30Yで述べたような板状電極などを用いることができる。第1電解フローセル3A及び第2電解フローセル3Bにおけるその他の構成は、促進酸化水処理装置1の電解フローセル3の場合のものと同様である。
【0034】
水槽2と第1電解フローセル3Aの間及び水槽2と第2電解フローセル3Bの間には、被処理水Sが循環できるような管路が設けられている。また、水槽2から第1電解フローセル3Aへ向かう管路には第1フロー制御器4Aが設けられ、水槽2から第2電解フローセル3Bへ向かう管路には第2フロー制御器4Bが設けられている。第1フロー制御器4A及び第2フロー制御器4Bは、促進酸化水処理装置1におけるフロー制御器4と同様のものを用いることができる。第1電解フローセル3Aから水槽2へ向かう管路と第2電解フローセル3Bから水槽2へ向かう管路は、連結容器7に連結されている。第1電解フローセル3Aからの被処理水Sと第2電解フローセル3Bからの被処理水Sは、連結容器7で合流して水槽2に向かって流れる。
【0035】
また、第1電解フローセル3Aの外側には、第1陽極30AXと第1陰極30AYの間に電圧を印加する第1電圧印加手段5Aが設けられている。第2電解フローセル3Bの外側には、第2陽極30BXと第2陰極30BYの間に電圧を印加する第2電圧印加手段5Bが設けられている。
【0036】
促進酸化水処理装置1’では、二価鉄イオンの生成を第1電解フローセル3Aで制御し、次亜塩素酸の生成を第2電解フローセル3Bで制御して、連結容器7でフェントン型反応を起こしてOHラジカルを生成することになる。よって、次亜塩素酸と二価鉄イオンをそれぞれ最適な条件で生成することが可能になる。また、二価鉄イオンの生成を第1電解フローセル3Aで制御するので、上記の電解フローセル3における陰極30Yの表面30Yaに沿った被処理水Sの流れの速度について述べたことは、少なくとも、第1電解フローセル3Aにおける第1陰極30AYの表面30AYaに沿った被処理水Sの流れに適用されることになる。また、次亜塩素酸の生成を第2電解フローセル3Bで制御するので、上記の電解フローセル3における陽極30Xの表面30Xaの面積について述べたことは、少なくとも、第2電解フローセル3Bにおける第2陽極30BXの表面30BXaに適用されることになる。
【0037】
次に、促進酸化水処理装置1及び促進酸化水処理装置1’において、
図6〜
図9に示すように、更にORP測定器8とORP制御器9を備えるようにした形態を説明する。
【0038】
ORP測定器8は、被処理水SのORP(酸化還元電位)を測定するものである。このORPを測定することにより、被処理水Sの平均の酸化力(又は還元力)を測り、もって、間接的に被処理水Sの中の次亜塩素酸の平均の濃度を測ることができる。それにより、被処理水Sの中の次亜塩素酸の濃度を監視することができる。その結果、促進酸化水処理の運転の適切性を容易に判断することができる。なお、次亜塩素酸の濃度が低すぎる場合は、上記のフェントン型反応が十分な量、起こらない。その一方、次亜塩素酸の濃度が高すぎる場合は、フェントン型反応によって生成されたOHラジカルと過剰な次亜塩素酸が反応して、OHラジカルが消費される。
【0039】
ORP制御器9は、ORP測定器8が測定するORPが適正な範囲内になるように制御し、もって、被処理水Sの中の次亜塩素酸の濃度を適正にするものである。このORPの適正な範囲は、後述する実験4及び実験5で示すように、981mV以上で1166mV以下の範囲とするのが好ましい。また、ORP制御器9の好ましい具体的な形態は、以下のものが挙げられる。
【0040】
ORP制御器9の第1の形態は、
図6及び
図7に示すように、ORP制御器9がフロー制御器4(又は第1フロー制御器4A)を制御し、陰極30Yの表面30Ya(又は第1陰極30AYの表面30AYa)の被処理水Sの速度を調整するものである。ORPが上限基準値よりも上昇した場合には、ORPを下降させるように陰極30Yの表面30Ya(又は第1陰極30AYの表面30AYa)の被処理水Sの速度を増加させ、ORPが下限基準値よりも減少した場合には、ORPを上昇させるように陰極30Yの表面30Ya(又は第1陰極30AYの表面30AYa)の被処理水Sの速度を低下させる。それにより、陰極30Yの表面30Ya近傍(又は第1陰極30AYの表面30AYa近傍)での物質移動抵抗を変えて電極の還元反応を調整し、二価鉄イオンの生成量を変え、もって、フェントン型反応で消費される次亜塩素酸の量を変え、次亜塩素酸が適正な濃度で残存するようにできる。
【0041】
なお、促進酸化水処理装置1’においては、
図8に示すように、連結容器7の中において、ORP測定器8が上方から被処理水Sに接触するようにできる。
【0042】
ORP制御器9の第2の形態は、
図9に示すように、促進酸化水処理装置1’において、ORP制御器9が第2電圧印加手段5B、すなわち第2電解フローセル3Bに印加する電圧をON/OFF制御するものである。ORPが上限基準値よりも上昇した場合には、ORPを下降させるように第2電圧印加手段5BをOFFにし、ORPが下限基準値よりも減少した場合には、ORPを上昇させるように第2電圧印加手段5BをONにする。それにより、第2電解フローセル3Bで発生する次亜塩素酸を二価鉄イオンとは独立に制御し、もって、次亜塩素酸が適正な濃度で残存するようにできる。なお、第2電圧印加手段5BのOFF状態は、電圧を0Vにする場合のみならず、電圧をON状態よりも低くする場合も含む。また、第2電解フローセル3Bを複数個に分けて、その中の幾つかに印加する電圧をON/OFF制御することも可能である。
【0043】
このようなORP測定器8及びORP制御器9により、水質の異なる様々な被処理水Sに対して常に最適条件で促進酸化水処理の運転をすることが可能となる。
【0044】
なお、促進酸化水処理が完了した被処理水Sは、中和することによって水酸化鉄の沈殿物を生成し、その沈殿物を残して被処理水を排出することができる。その後、沈殿物が存在する状態で、新しい被処理水Sを注入してpHを3以下の酸性に調整すると、水酸化鉄から鉄イオンが生成される。このようにして、水酸化鉄を鉄イオンとして再利用し、新しい被処理水Sについて同様にして促進酸化水処理を行うことができる。
【0045】
次に、本願発明者が行った促進酸化水処理方法のいくつかの実験を以下に具体的に説明する。これらの実験においては、被処理水Sの分解すべき有機化合物は、1,4−ジオキサン(1,4−dioxane)とした。初期状態の被処理水Sの中のCl
−と三価鉄イオンはそれぞれ、塩化ナトリウム(NaCl)と塩化鉄(FeCl
3)を溶解させることによって供給した。また、陽極30Xはペルメレック電極株式会社製のDSA(ペルメレック電極株式会社の登録商標)の板状電極、陰極30Yはステンレス鋼製の板状電極を用いた。pHは、硫酸を用いて1.5〜2に調整した。電流効率は、処理時間でのCOD
cr除去速度から求めた。
【0046】
実験1は、陰極30Yの表面30Yaでの被処理水Sの速度に対する電流効率の依存性を調べたものである。この実験では、初期状態の被処理水Sの1,4−ジオキサンが20mM、Cl
−が220mM、三価鉄イオンが40mMとなるようにした。実験装置は、
図10に示すように、円筒容器2’の中に陽極30Xと陰極30Yを設置し、円柱形のフロー制御器4をモータ4’で回転(自転)させて円筒容器2’の周方向に対流を作り、陰極30Yの表面30Yaに沿って被処理水Sの流れを生じさせるようにした。陽極30Xの表面30Xaの面積と陰極30Yの表面30Yaの面積をともに、20mm×200mmとした。そして、電流密度を1.43kA/m
2として、10分間の処理時間で電気分解を行った。結果は、表1に示す通りである。
【0048】
表1より、陰極30Yの表面30Yaでの速度が0.6m/sec以上で急激に電流効率が高くなって、電流効率が100%以上を示すことが分かる。
【0049】
実験2は、陽極30Xの表面30Xaの面積を陰極30Yの表面30Yaの面積よりも小さくした場合の電流効率を調べたものである。この実験では、初期状態の被処理水Sの1,4−ジオキサンが20mM、Cl
−が111mM、三価鉄イオンが20mMとなるようにした。上述した実験1と同様な実験装置において、陽極30Xの表面30Xaの面積を5cm
2とし、陰極30Yの表面30Yaの面積を20cm
2とすることで、陽極30Xの表面30Xaの面積を陰極30Yの表面30Yaの面積の1/4とした。そして、陽極30Xの電流密度を1.0kA/m
2、陰極30Yの電流密度を0.25kA/m
2とし、陰極30Yの表面30Yaに被処理水Sの流れを小さくして、450分間の処理時間で電気分解を行った。結果は、表2に示す通りである。
【0051】
表2より、陽極30Xの表面30Xaの面積を陰極30Yの表面30Yaの面積よりも小さくすると、電流効率が高くなって、電流効率が100%以上を示すことが分かる。
【0052】
実験3は、フロー制御器4によって陰極30Yの表面30Yaに流れる被処理水Sの速度を変化させたときのORPを調べたものである。この実験では、
図6で示した促進酸化水処理装置1を用い、促進酸化水処理の途中で被処理水Sの速度を変化させたときのORPを測定した。その結果を、表3に示す。
【0054】
表3より、陰極30Yの表面30Yaに流れる被処理水Sの速度を変化させることにより、ORPを調整できることが分かる。
【0055】
実験4は、ORPの変化に伴う電流効率の変化を調べたものである。この実験では、実験3と同様な装置(
図6で示した促進酸化水処理装置1)を用い、促進酸化水処理の途中でORPを変化させたときの電流効率を測定した。その結果を、表4に示す。
【0057】
図11中の○(白丸)は、表4のデータをプロットしたものである。直線近似を用いた計算により、ORPを1166mV以下に制御すると、45%を超える電流効率を示すことが分かる。なお、電流効率45%は、本願発明者が運転コスト等から算出した下限値である。
【0058】
実験5は、
図9で示した促進酸化水処理装置1’を用いて、ORPの変化に伴う電流効率の変化を調べたものである。この実験では、初期状態の被処理水Sの1,4−ジオキサンが20mM、Cl
−が280mM、三価鉄イオンが5mMとなるようにした。ORPは、650〜1000mVの範囲で制御した。その結果を、表5に示す。
【0060】
図11中の●(黒丸)は、表5のデータをプロットしたものである。直線近似を用いた計算により、ORPを981mV以上に制御すると、45%を超える電流効率を示すことがわかる。よって、この第5実験の結果と上記の第4実験の結果から、ORPは981mV以上で1166mV以下の範囲に有るように制御されるのが好ましいことが分かる。
【0061】
以上、本発明の実施形態に係る促進酸化水処理方法について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、陽極30X、第1陽極30AX、第2陽極30BXや陰極30Y、第1陰極30AY、第2陰極30BYなどの素材は限定されるものではなく、また、分解すべき有機化合物は実験に用いた1,4−ジオキサンに限られないことは勿論である。