(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、酸触媒としての硫酸および水封鎖剤(water sequestrant)の存在下でのフマル酸およびメタノールのエステル化による、高純度のジメチルフマラートの調製方法を提供する。本方法が、ジメチルスルファートをごく微量しか含有しない高純度のジメチルフマラートを生成することが見出された。
【0016】
本発明はまた、粒径が20〜250μmである高純度のジメチルフマラートの調製方法を提供する。本発明の方法は、少なくとも97%の粒子が250μm未満の粒径をもつジメチルフマラートを提供する。
【0017】
フマル酸は、クエン酸回路で、酵素であるフマラーゼにより水和されてマレイン酸になる中間体である。乾癬の治療のためのフマル酸の使用は、1959年に導入された。フマル酸はまた、マウスでのエールリッヒ固形腫瘍細胞の増殖を妨げることが示されている。Kuroda, K., et al., Cancer Res. 36:1900-1903 (1976)。
【0018】
従来公知のフマル酸塩およびフマル酸の誘導体は、脂肪親和性の器官境界層(boundarylayer)での短い滞留時間に比較的強い極性親水性を示すため、再吸収されないか、または十分には再吸収されなかった。本理由のため、高服用量が使用され、結果として、頭痛、おくび、目眩、吐き気、嘔吐、腹部痙攣および腸痙攣、下痢、ならびに顔面紅潮等の副作用をもたらした。高服用量のフマル酸、その塩、およびその誘導体(ジヒドロキシフマル酸、フマルアミド、およびフマロニトリル等)は、そのような容認できない副作用率、および高毒性をもち、その治療を控える必要があった。P. Holland, et al., Brit. J. Dermatol. 85:259-263 (1971)を参照のこと。
【0019】
1980年代には、フマル酸エステルのより標準的な経口用製剤が開発された。この経口用製剤は主要成分としてジメチルフマラートおよびモノエチルフマラートを含有する。経口摂取後、ジメチルフマラートは急速に加水分解しフマル酸水素メチルとなる。フマル酸水素メチルの生物学的半減期は、36時間であり、30%が血清タンパク質に結合される。Schilling, S., et al., Clin. Exp. Immunol. 145:101-107 (2006)。
【0020】
米国特許第4,851,439号には、プロドラッグ形状のフマル酸誘導体が開示されている。米国特許第4,959,389号には、乾癬および乾癬性関節炎の治療のための、フマル酸モノアルキルエステルの少なくとも1の塩を含む医薬組成物が開示されている。米国特許第5,424,332号には、フマル酸モノアルキルエステルのカルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、および鉄塩が開示されている。米国特許第5,451,667号には、原因不明の疾患の治療のための、式:
【化1】
(式中:
R
1は水素原子、C
1−8アルキル基、または金属カチオン(例えば、Na、Ca、またはZn等)であり、および
R
2は飽和または不飽和の脂肪族C
6−24アルキル基、ソラレン−9−イル、レチニル、α−トコフェリル、カルシフェリル(calciferyl)、コルチコステロイド−21−イル、またはモノサッカリド−ω−イルである)
のフマル酸の誘導体が開示されている。米国特許第6,277,882号には、乾癬、乾癬性関節炎、神経皮膚炎、および限局性腸炎であるクローン病の治療のための組成物を調製するために、フマル酸水素アルキルを使用することが開示されている。米国特許第6,355,676号には、乾癬性関節炎、神経皮膚炎、乾癬、および限局性腸炎であるクローン病の治療のために、フマル酸モノアルキルエステルの塩を、必要に応じてフマル酸ジアルキルと混合して、使用することが開示されている。米国特許第6,359,003号には、移植医術のためにフマル酸モノアルキルエステルを使用することが開示されている。米国特許第6,858,750号には、ミトコンドリア病の治療のためにフマル酸誘導体の医薬組成物を使用することが開示されている。米国特許第7,320,999号には、自己免疫疾患の療法のために、フマル酸ジアルキルを使用することが開示されている。
【0021】
医薬品の製造および規制において、遺伝毒性不純物の発生および分析に関して、関心が高い。米国特許出願第2009/0112016号には、副生成物形成を低減させるために、エステル化反応の際にスルホン化したレジン触媒を使用することが開示されている。発明者らは、触媒が有害な副反応に悩むいかなる触媒エステル化プロセスにも有用であり、フマル酸が発明のうち好ましい有機酸であることを開示している(6頁、段落[0073])。
【0022】
米国特許出願第2002/0002306号には、容易に分離可能でかつ腐食性がない不均一VIII族触媒の使用により触媒残渣を含有しないジメチルフマラートの生成方法が開示されている。発明者らは、酸(濃硫酸等)によるマレアートの異性化は、反応容器を腐食させる恐れがあり、残留する硫酸イオンが治療に悪影響を及ぼすと記述している(1頁、段落[0006])。
【0023】
したがって、ジメチルスルファートを微量しか含有しない高純度のジメチルフマラートを合成するための規模拡大可能(scalable)な工業プロセスを提供することが、当技術分野において必要とされる。
【0024】
さらに、ジメチルスルファートを微量しか含有しない高純度のジメチルフマラートの結晶形Iを合成するための規模拡大可能な工業プロセスを提供することが、当技術分野において必要とされる。
【0025】
本発明の方法は、様々な実施形態において、共溶媒と共にまたは関係なく、硫酸の存在下で、フマル酸またはその塩をメタノールと反応させることを含む。
スキーム1
【化2】
【0026】
ジメチルフマラートのエステル化をスキーム1に図示する。第一段階で、プロトン移動が非常に急速に起こるが、これはまた反応条件下で不可逆的である。第二段階で、メタノールによるエステル化が1当量の水の生成下で起こる。エステル化反応は可逆的であり、本反応は、定義された条件下で平衡に達する。平衡は、例えばメタノール濃度の上昇および/または反応混合物からの水の除去によって、生成物の方向にシフトされる。しかし反応中での水濃度が上昇すると、平衡が出発材料の方向に戻ってシフトし、部分的なエステル加水分解をもたらす。
【0027】
ジメチルフマラートを作り出すエステル化反応は、フマル酸水素メチルと生成物のジメチルフマラートとの間で平衡に達する。本反応はメタノール中のフマル酸の溶解度は限られているため、最初は不均一であるが、反応温度(60〜70℃で還流)にまで加熱すると、徐々に均一反応となる。
【0028】
フマル酸水素メチル(MHF)は、出発材料であるフマル酸から、やや急速に形成される。MHFおよび生成物のジメチルフマラートが平衡レベルに達するために必要な時間は、使用する硫酸(触媒)量に応じる。これらの結果を、各種量の硫酸触媒(0.01、0.05、および0.25mol.当量)を用いた反応について
図1に図示する。これらの反応により、類似した単離収率(78〜79%)で、フマル酸水素メチルが検知されないジメチルフマラートが得られた。本反応プロファイルにより、反応が十分に長時間にわたって行われた場合、生成物の平衡濃度が、使用した全レベルの硫酸触媒で達成されたことが示唆される。
【0029】
「約」という用語は、本明細書において、与えられた数字プラスマイナス1〜10%を意味するために使用される。
【0030】
過剰量のメタノールは、本反応で典型的に使用される。ある実施形態では、フマル酸およびメタノールは、フマル酸1kgあたり、メタノールを約2.0から約10.0、約2.0から約9.0、約2.0から約8.0、約2.0から約7.0、約2.0から約6.0、約3.0から約10.0、約3.0から約9.0、約3.0から約8.0、約4.0から約10.0、約4.0から約9.0、約4.0から約8.0、約5.0から約8.0、または約5.7から約8.6リットルの比率で一緒に添加され得る。別の実施形態では、メタノールのフマル酸に対する比率は、1kgあたり約6.0リットル、1kgあたり約6.5リットル、1kgあたり約7.0リットル、1kgあたり約7.5リットル、1kgあたり約8.0リットル、または1kgあたり約8.5リットルである。別の実施形態では、メタノールのフマル酸に対する比率は、1kgあたり約5.77リットルから1kgあたり約5.87リットルである。ある実施形態では、フマル酸およびメタノールを、フマル酸1kgあたり、メタノールを約500から約1000、約500から約900、約500から約800、約600から約1000、約600から約900、約600から約800、約700から約800、または約740から約742kgの比率で一緒に添加し得る。
【0031】
反応中での水濃度の上昇は、結果として平衡が出発材料の方向に戻るようにシフトし、部分的なエステル加水分解をもたらす。したがって、反応混合物に添加される水分量は低いままであることが望ましい。ある実施形態では、出発反応材料の水分量は、約0.5〜約6.0%、約0.5〜約5.5%、約1.0〜約6.0%、約1.0〜約5.0%、約1.0〜約4.0%、約2.0〜約5.0%、約2.0〜約4.0%、または約2.0〜約3.0%である。ある実施形態では、反応混合物に添加されるフマル酸の水分量は、0.5%未満である。ある実施形態では、メタノールは、無水である。ある実施形態では、反応混合物に添加されるメタノールの水分量は、約0〜約1%、約0〜約0.5%、または約0.5〜約1.0%である。別の実施形態では、反応混合物に添加されるメタノールの水分量は、0.5%未満である。ある実施形態では、反応混合物に添加されるメタノールの水分量は、約0〜約1%、約1〜約0.5%、または約0.1〜約0.5%である。別の実施形態では、反応混合物に添加されるメタノールの水分量は、0.1%未満である。
【0032】
酸触媒は、本反応を触媒するのに十分な量で用いられる。酸触媒はまた、脱水剤として、または本反応の副生成物として生成される水の乾燥剤としての役割を果たし得る。ある実施形態では、酸触媒は硫酸である。ある実施形態では、フマル酸および酸触媒は、フマル酸:酸触媒の比率を約1:0.01〜約1:0.50または約1:0.238〜約1:0.243モル当量の範囲で一緒に添加される。別の実施形態では、フマル酸:酸触媒の比率は約1:0.01、1:0.10、1:0.20、1:0.30、1:0.40、または1:0.50モル当量である。
【0033】
いくつかの実施形態では、反応混合物は、化学的に本反応を阻害しない、さらなる非反応性共溶媒を含むことができる。非反応性共溶媒の非限定的な例として、メチルアセタート、エチルアセタート、イソプロピルアセタート、n−ブチルアセタート、イソブチルアセタート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、メチルt−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、トルエン、キシレン、ヘプタン類、およびそれらの混合物が挙げられる。ある実施形態では、非反応性共溶媒として、メチルアセタート、エチルアセタート、イソプロピルアセタート、n−ブチルアセタート、イソブチルアセタート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルエーテル、アニソール、トルエン、ヘプタン類、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
メタノール中でのフマル酸の溶解度を改善するため、また本反応の速度を改善するために、より高い反応温度が好ましい。水は、エステル化反応中に副生成物として生成される。分析によって、水が反応開始時の2%から反応終了後の5%まで上昇したことが示されている。一貫した収率が、反応システムが平衡状態に達する時間(通常3時間以内)を十分に与えることにより達成され得る。ある実施形態では、反応条件としては、約55℃〜約75℃、約60℃〜約75℃、約65℃〜約75℃、約70℃〜約75℃、約60℃〜約75℃、または約60℃〜約70℃の温度で反応させることが挙げられる。別の実施形態では、エステル化のための反応温度は、約60℃である。別の実施形態では、エステル化の反応温度は約70℃である。
【0035】
本反応は、フマル酸のジメチルフマラートへの変換を達成するのに必要ないかなる時間でも進行し得る。ある実施形態では、本反応は、約1.5〜約48時間にわたって進行する。別の実施形態では、本反応は、約3.0〜約27時間にわたって進行する。別の実施形態では、本反応は、約1.5〜約27時間にわたって進行する。別の実施形態では、本反応は、約3.0〜約48時間にわたって進行する。
【0036】
エステル化プロセス後、ジメチルフマラートは、当業者に従来公知の方法により、反応混合物から結晶化され得る。ある実施形態では、ジメチルフマラートの加熱混合物は、濾過材により濾過される。ある実施形態では、ジメチルフマラートの加熱混合物は、約0℃〜約30℃、約10℃〜約30℃、約15℃〜約30℃、約20℃〜約30℃、約0℃〜約25℃、または約10℃〜約25℃の温度まで冷却される。別の実施形態では、ジメチルフマラートの加熱混合物は、25℃未満の温度まで冷却される。ある実施形態では、加熱生成物混合物は、約7〜約10時間、約8〜約10時間、約9〜約10時間、約7〜約9時間、または約8〜約9時間にわたって冷却される。生成物混合物の冷却により、ジメチルフマラートが溶液から結晶化することが可能となり、フマル酸水素メチルが溶液中に残存する。ある実施形態では、冷却生成物混合物は、約0.5〜約5時間、約1〜約5時間、約2〜約5時間、約3〜約5時間、約1〜約4時間、約1〜約3時間、または約1〜約2時間にわたって撹拌される。
【0037】
結晶化プロセス後、ジメチルフマラートは、当業者に従来公知の方法により、反応混合物から単離され得る。ある実施形態では、生成物が、遠心分離機を使用して単離される。単離後、生成物は、有機溶媒で洗浄され得る。ある実施形態では、生成物は、メタノールで洗浄される。ある実施形態では、生成物は、1kgの生成物あたり約0.1〜約6.0、約0.1〜約5.0、約0.1〜約4.0、約0.1〜約3.0、約0.1〜約1.5、約0.5〜約6.0、約0.5〜約5.0、約1.0〜約6.0、約1.0〜約5.0、約1.5〜約6.0、約1.5〜約5.5、約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.4〜約0.9、約0.4〜約0.8、約0.5〜約0.8、約0.6〜約0.8、または約0.66〜約6.49kgのメタノールで洗浄される。別の実施形態では、生成物は、1kgの生成物あたり約1.44〜約5.75kgのメタノールで洗浄される。
【0038】
単離プロセス後、ジメチルフマラートは、当該分野で従来公知の方法を使用して、乾燥され得る。ジメチルフマラートの乾燥程度は、時間、温度、およびある程度乾燥機の種類や性能に応じる。ジメチルフマラートは、低い測定可能な蒸気圧を有する。したがって、乾燥機中の減圧下に材料を配置すると、潜在的に昇華を、続いて、粒径変化を促進し得る。ある実施形態では、ジメチルフマラートを、約10〜約50℃、約20〜約50℃、約10〜約40℃、約20〜約40℃、または約10〜約50℃の温度で乾燥する。別の実施形態では、ジメチルフマラートを、約23〜約27℃の温度で乾燥する。ある実施形態では、ジメチルフマラートを約10〜約200mbar、約20〜約200mbar、約30〜約200mbar、約20〜約100mbar、約40〜約100mbar、または約30〜約100mbarの圧力で乾燥する。別の実施形態では、ジメチルフマラートを約80〜約100mbarの圧力で乾燥する。ある実施形態では、ジメチルフマラートを、約10〜約100時間、約20〜約90時間、約30〜約80時間、約40〜約80時間、約40〜約70時間、または約46〜約72時間にわたって乾燥する。別の実施形態では、ジメチルフマラートを、約46〜約48時間にわたって乾燥する。
【0039】
乾燥プロセスに続いて、ジメチルフマラートの処理をさらに進めて、当該分野で従来公知の方法を使用して、所望の粒径を得る。粒子はサイズが小さくされ、薬剤生産プロセスの一貫した取扱いに好適なサイズの粒子が生成される。ある実施形態では、ジメチルフマラートは、ジェット粉砕により処理される。ある実施形態では、ジメチルフマラートを、250μm未満の粒径に小さくする。別の実施形態では、ジメチルフマラートを、約20〜約1000μm、約40〜約1000μm、約100〜約1000μm、約200〜約1000μm、約20〜約750μm、約20〜約250μm、約40〜約750μm、約40〜約250μm、約40〜約100μm、約100〜約750μm、または約100〜約250μmの粒径に小さくする。別の実施形態では、ジメチルフマラートを、ある粒径まで小さくし、粒子のうち97%以上の粒径が250μm未満である。別の実施形態では、ジメチルフマラートを、ある粒径まで小さくし、粒子のうち90%、92%、95%、97%、98%、または99%の粒径が250μm未満である。
【0040】
本明細書で報告する粒径は、計測された分布に基づく。ある実施形態では、粒径は、光散乱を粒子体積と関連づけるレーザー回折技法を使用して計測され、本回折で「有効長または有効径」が計算される。分布は、数千粒子の計測に基づく。粒子試料は、乾燥形状またはスラリーであり得る。ある実施形態では、粒径/粒子分布を決定するために使用する装置は、Beckman Coulter LS230またはMalvern Mastersizerである。
【0041】
別の実施形態では、フマラートは、あるサイズに小さくされ、薬剤生産プロセスから一貫した取扱いに好適なサイズの粒子を生成し得る。フマラートは、例えば、投与後にインビボでフマル酸水素メチルに変換する化合物であり得る。ある実施形態では、医薬組成物中に存在するフマラートのいくつかのみが、インビボでフマル酸水素メチルに変換される。ある実施形態では、フマラートは、ジメチルフマラート、モノメチルフマラート、フマル酸、モノメチルフマラートの塩、フマル酸の塩、またはそれらの任意の組合せである。別の実施形態では、フマラートは、式(I):
【化3】
(式中、R
1およびR
2は独立してOH、O
−、C
1−C
6アルコキシである)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であり得る。C
1−C
6アルコキシは、例えば、C
1−C
5アルコキシ、C
1−C
4アルコキシ、C
1−C
3アルコキシ、C
1−C
2アルコキシ、C
2−C
3アルコキシ、C
2−C
4アルコキシ、C
2−C
5アルコキシ、またはC
2−C
6アルコキシから選択され得、また、直鎖または分岐鎖であってもよい。なお更に別の実施形態では、フマラートは、ジアルキルフマラートである。ある実施形態では、フマラートは、ジェット粉砕により処理される。ある実施形態では、フマラートは、250μm未満の粒径まで小さくされる。別の実施形態では、フマラートは、約20〜約1000μm、約40〜約1000μm、約100〜約1000μm、約200〜約1000μm、約20〜約750μm、約20〜約250μm、約40〜約750μm、約40〜約250μm、約40〜約100μm、約100〜約750μm、または約100〜約250μmの粒径まで小さくされる。別の実施形態では、フマラートは、ある粒径まで小さくされ、粒子のうち97%以上の粒径が250μm未満である。別の実施形態では、フマラートは、ある粒径まで小さくされ、その粒子のうち90%、92%、95%、97%、98%、または99%の粒径が250μm未満である。
【0042】
一態様では、本方法は、ジメチルフマラートの結晶形Iを含む組成物を生成する。組成物は、実質的に純粋な結晶形Iであり得る。ジメチルフマラートの単結晶構造は、Kooijman, H., et al., Acta Crystallographica E60:o917-o918 (2004)により開示されている。組成物は、粉末X線回折において、10.96°および22.01°の2θ度のピークを特徴とし得る。組成物は、粉末X線回折において、10.96°、22.01°、24.07°、24.11、24.17、および27.39の2θのピークを特徴とし得る。組成物にはさらに、薬学的に許容される担体が含まれ得る。
【0043】
結晶形Iのジメチルフマラートは、粗ジメチルフマラートを、好適な溶媒、例えばアセトン、アニソール、ベンジルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、クメン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチルアセタート(EtOAc)、エタノール、エチレングリコール、エチルホルマート、水、ヘプタン、イソブチルアセタート、イソプロピルエーテル、イソプロピルアセタート、イソオクタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、メタノール、メチルアセタート、メチルシクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、ニトロベンゼン、N−メチルピロリドン(NMP)、1−オクタノール、イソペンタノール、プロピルアセタート、1−プロパノール、2−プロパノール、ピリジン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチルアミン、トリフルオロトルエン、トルエン、p−キシレン、またはそれらの混合物等で、粗ジメチルフマラートの溶解に好適な温度で、再結晶化することにより調製され得る。あるいは、粗ジメチルフマラートは、溶媒(例えばTHF、DMF、DMA、またはNMP)と、貧溶媒(antisolvent)(水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、アセトン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタンまたはそれらの混合物等)の混合物中に、粗ジメチル溶媒の溶解に好適な温度で、溶解され得る。次いで貧溶媒を、結晶形Iの形成に好適な条件下で混合物に添加し得る。例えば粗ジメチルフマラートは、ヘプタンとエチルアセタートの混合物、ジクロロメタンとメタノールの混合物、水とテトラヒドロフランの混合物、アセトンと水の混合物、エタノールと水の混合物、またはメタノールと水の混合物中で再結晶化され得る。ある実施形態では、粗ジメチルフマラートは、ジクロロメタン:メタノールの1:1の混合物中で再結晶化される。別の実施形態では、ある実施形態では、粗ジメチルフマラートは、ジクロロメタン:メタノールの約1:1、約1:2、または約2:1の混合物中で再結晶化される。別の実施形態では、粗ジメチルフマラートは、水:テトラヒドロフランの約1:1、約1:2、または約2:1の混合物中で再結晶化される。別の実施形態では、粗ジメチルフマラートは、アセトン:水の約1:1、約1:2、約1:3、または約2:1混合物中で再結晶化される。別の実施形態では、粗ジメチルフマラートは、エタノール:水の約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、または約1:2の混合物中で再結晶化される。別の実施形態では、粗ジメチルフマラートは、メタノール:水の約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、または約1:2の混合物中で再結晶化される。
【0044】
高純度のジメチルフマラートは、低レベルのジメチルスルファートを有する。ある実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、約0〜約5ppm、約0〜約4ppm、約0〜約2ppm、約0.1〜約5ppm、約0.1〜約4.5ppm、約0.1〜約4ppm、約0.1〜約3ppm、約0.1〜約2ppm、約0.5〜約5ppm、約0.5〜約4ppm、約0.5〜約3ppm、または約0.5〜約2ppmである。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、5ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは4.5ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、4.0ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、3.5ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、3.0ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、2.5ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、2.0ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、1.5ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、1.0ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、0.5ppm未満である。別の実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、0.1ppm未満である。
【0045】
ジメチルスルファートのレベルは、当該分野で従来公知の方法を用いて、最終生成物において決定され得る。ある実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、ガスクロマトグラフィ質量分析法(GC−MS)により決定される。
【0046】
ガスクロマトグラフィ質量分析法は、硫酸、フマル酸、およびメタノールを含有する処理中の試料には適用できない。誘導体化剤であるトリエチルアミンを使用して、ジメチルスルファートに、直交分析法(orthogonal analytical method)を使用する試みが調査された。しかし、ジメチルフマラートがトリエチルアミンと反応し、ジメチルスルファートの誤陽性(false positive)の結果を生み出すことが見いだされた。
【0047】
メチルメタンスルホナートの形成についての反応速度(reaction kinetics)は、
1H NMR技法を使用して決定されてきた(Teasdale, A., et al., Org. Proc. Res. Dev. 14:999-1007 (2010))。同様の
1H NMR技法の適用により、反応プロセス中でのジメチルスルファートの形成に関する反応速度の決定に成功したことが証明された。ある実施形態では、ジメチルスルファートのレベルは、反応プロセス中に、
1H NMRを使用して計測される。
【0048】
1H NMRを使用して、メタノールおよび硫酸を使用したフマル酸のエステル化の、モノメチルスルファート(MMS)およびジメチルスルファート(DMS)の形成および運命を試験することが可能であった。ジメチルスルファートは、遺伝毒性物質であることが知られており、また、S
N2反応での求電子的(electrophile)メチル化剤としてのその反応性が、ヨウ化メチルの反応性に比べて高い(F.K. Thayer, J. Am. Chem. Soc. 46:1044-1046 (1924))。反対に、モノメチルスルファートは、反応性が低い(poor)アルキル化剤であり、遺伝毒性がない。本反応での不純物としてのDMS形成の可能性を調査した。
【0049】
DMSの商業的製造は、典型的には、Pdまたは他の遷移金属により触媒され、SO
3と無水メタノールとを用いて実施される(F.K. Thayer, J. Am. Chem. Soc. 46:1044-1046 (1924))。これらの強制条件は、エステル化プロセス中に行われるメタノール中のH
2SO
4の穏やかな還流とは全く異なる。
【0050】
スキーム2に示すモノメチルスルファートおよびジメチルスルファートの発生および消費について、多段階反応機構が提案された(Teasdale, A., et al., Org. Proc. Res. Dev. 14:999-1007 (2010))。
スキーム2
【化4】
【0051】
これまで試験されたアルキルスルホン酸類(メタンスルホン酸およびエタンスルホン酸等)とは対照的に、硫酸はメタノールと2段階の連続した反応を受け、異なる硫酸エステルを発生させ得る。モノメチルスルファートは、他のプロセス関連の混入物質と同様に、制御可能な比較的無害な非遺伝毒性不純物である(An, J., et al., J. Pharm. Biomed. Anal. 48: 1006-1010 (2008)、Zhenga, J., et al., J. Pharm. Biomed. Anal. 50:1054-1059 (2009)、Alzaga, R., et al., J. Pharm. Biomed. Anal. 45:472-479 (2007)を参照のこと)。対照的に、DMSは、公知の遺伝毒性不純物であり、非常に低レベル(1.5ug/日)まで制御されなければならない(D.I. Robinson, Org. Proc. Res. Dev. 14:946-959 (2010))。DMSによって示される潜在的なプロセスリスクを完全に理解するために、これら2種類の硫酸エステルの形成および運命を、実際のプロセス条件下で検証することが重要であった。
モノメチルスルファートの形成(k
1)
【0052】
MMSの形成を、スキーム3に表す。
スキーム3
【化5】
モノメチルスルファートの加水分解(k−
1)
【0053】
モノメチルスルファートは、加水分解して硫酸(k
−1)に戻るか、またはさらにメタノールと反応してDMS(k
2)を形成することができる。MMSの加水分解をスキーム4に示す。
スキーム4
【化6】
ジメチルスルファートのメタノリシスおよび加水分解
【0054】
ジメチルスルファートは、一連の複雑な相関する平衡で形成および消費される。DMS加溶媒分解(メタノリシスおよび加水分解)速度は、容易に計測され得、これらは、DMSを消費する経路である。しかし、メタノールとMMSとの間の正反応により形成されるDMS量は非常に少ない。したがって、実験計画を単純化するために、発明者らはまず、DMSのメタノリシス速度(スキーム5)および加水分解速度(スキーム6)を計測した。次いで、メタノリシス後に残存するジメチルスルファートの平衡レベルを使用して、DMS形成の正反応の速度を得た。
スキーム5
【化7】
スキーム6
【化8】
ジメチルスルファートの形成(k
2)
【0055】
MMSからのDMSの形成を、スキーム7に示す。
スキーム7
【化9】
【0056】
DMSの正反応速度(k
2)は、次のように定常状態条件(d[DMS]/dt=0)で計算され得る:
a.平衡時、DMSの形成速度と消失速度とはバランスを保っており、また:
d[DMS]/dt=0=k
2[MMS][CH
3OH]−k
−2[DMS][H
2O]−k
3[DMS][CH
3OH]
b.k
2について解く:
k
2=(k
−2[DMS][H
2O]+k
3[CH
3OH])/[MMS][CH
3OH]
c.平衡が乾燥条件下で達成される場合、本方程式はさらに単純化し得る:
k
2=k
3[DMS][CH
3OH]/[MMS][CH
3OH]=k
3[DMS]/[MMS]
【0057】
したがって、[DMS]を平衡時にいったん計測し得る場合、k
3、[MMS]、および[CH
3OH]が既知であるため、DMSの形成(k
2)に関する速度定数を計算し得る。
【0058】
化合物は、無機酸または有機酸および塩基から誘導される薬学的に許容される塩の形状で使用され得る。そのような酸性塩のなかには、次のようなものが上げられる:アセテート、アジペート、アルギナート、アスパルタート、ベンゾアート、ベンゼンスルホナート、ビスルファート(bisulfate)、ブチラート、シトラート、カンホラート(camphorate)、カンファースルホナート、シクロペンタンプロピオナート、ジグルコナート(digluconate)、ドデシルスルファート、エタンスルホナート(ethanesulfonate)、フマラート、グルコヘプタノアート(glucoheptanoate)、グリセロホスファート、ヘミスルファート、ヘプタノアート、ヘキサノアート、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、2−ヒドロキシエタンスルホナート、ラクタート、マレアート、メタンスルホナート、2−ナフタレンスルホナート、ニコチナート、オキサラート、パモアート、ペクチナート、ペルスルファート、3−フェニル−プロピオナート、ピクラート、ピバラート、プロピオナート、スクシナート、タートラート、チオシアナート、トシラートおよびウンデカノアート。塩基性塩として、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩やカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩やマグネシウム塩等)、ジシクロヘキシルアミン塩等の有機塩基による塩、N−メチル−D−グルカミン、およびアミノ酸(アルギニン、リジン等)の塩等が挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、ハロゲン化低級アルキル(例えばメチルクロリド、エチルクロリド、プロピルクロリド、およびブチルクロリド、メチルブロミド、エチルブロミド、プロピルブロミド、およびブチルブロミド、ならびにメチルヨージド、エチルヨージド、プロピルヨージド、およびブチルヨージド等)、硫酸ジアルキル(ジメチルスルファート、ジエチルスルファート、ジブチルスルファートおよびジアミルスルファート等)、長鎖ハロゲン化物(デシルクロリド、ラウリルクロリド、ミリスチルクロリドおよびステアリルクロリド、デシルブロミド、ラウリルブロミド、ミリスチルブロミドおよびステアリルブロミド、ならびにデシルヨージド、ラウリルヨージド、ミリスチルヨージドおよびステアリルヨージド等)、アラルキルハロゲン化物(ベンジルブロミドおよびフェネチルブロミドならびにその他)、等の物質と四級化し得る。これにより、水溶性もしくは油溶性または水分散性もしくは油分散性の生成物が得られる。
【0059】
化合物は、経口で、非経口で、吸入噴霧で、局所に、直腸に、経鼻的に、口腔に、経膣的に、または移植レザバー(implanted reservoir)を介して投与し得る医薬組成物に製剤され得る。本明細書で使用される「非経口の」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内(intrasternal)、髄腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内での注射または注入技法が含まれる。
【0060】
医薬組成物には、任意の薬学的に許容される担体と共にジメチルフマラート、またはその薬学的に許容される誘導体が含まれ得る。本明細書で使用される「担体」という用語には、許容される補助剤および賦形剤が含まれる。本発明の医薬組成物で使用され得る薬学的に許容される担体としては、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミン等)、緩衝物質(ホスファート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等)、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、もしくは電解質(プロタミンスルファート、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩等)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、および羊毛脂等が挙げられる。
【0061】
医薬組成物は、無菌注射用製剤、例えば無菌注射用の水性または油性の懸濁液の形状であり得る。本懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用して、当該分野で公知の手法により製剤化し得る。無菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口で許容される希釈剤または溶媒中の、例えば1,3−ブタンジオール溶液等としての無菌注射用の溶液または懸濁液であり得る。使用し得る許容される賦形剤および溶媒には、水、リンガー溶液、および等張塩化ナトリウム液が挙げられる。さらに、無菌の固定油は、溶媒または懸濁化媒体として通常用いられる。このために、合成モノグリセリドまたはジグリセリド等のいずれの無刺激性固定油も用い得る。脂肪酸(オレイン酸等)およびそのグリセリド誘導体が、注射用製剤に有用であり、天然の薬学的に許容される油(オリーブ油またはヒマシ油等)、特にポリオキシエチル化されたバージョンについても同様である。これらの油性溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有し得る。
【0062】
医薬組成物は、これらに限定されないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤または水溶液を含む経口に許容されるいずれの剤形でも経口投与され得る。
【0063】
経口用途用錠剤の場合、一般に使用される担体として、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。滑沢剤(マグネシウムステアラート等)もまた、典型的に添加される。カプセル形状での経口投与については、有用な希釈剤として、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。経口用途に水性懸濁液が必要な場合は、活性成分を乳化剤および懸濁化剤と組み合わせる。所望であれば、ある甘味剤、香味剤または着色剤もまた添加し得る。
【0064】
あるいは、医薬組成物は、直腸投与用に坐剤の形状で投与され得る。これらは、室温では固体であるが直腸温度では液体となり、したがって直腸で融解して薬物を放出する、好適な非刺激性賦形剤と薬物を混合することにより調製され得る。このような材料として、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0065】
医薬組成物はまた、特に治療の標的に、眼疾患、皮膚疾患、または下部腸管疾患等の局所適用により容易に到達できるエリアまたは器官を含む場合、局所に投与され得る。好適な局所製剤は、これらの各エリアまたは器官用に容易に調製される。
【0066】
下部腸管用の局所適用は、肛門坐剤製剤(上述を参照)または好適なかん腸製剤で効果を発揮し得る。局所経皮パッチもまた、使用され得る。
【0067】
局所適用について、医薬組成物は、1以上の担体に懸濁または溶解した活性成分を含有する好適な軟膏で、製剤化され得る。本発明の化合物の、局所投与用の担体として、これらに限定されないが、鉱物油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水が挙げられる。あるいは、医薬組成物は、1以上の薬学的に許容される担体に懸濁または溶解した活性成分を含有する好適なローションまたはクリームで、製剤化され得る。好適な担体として、これらに限定されないが、鉱物油、ソルビタンモノステアラート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
【0068】
眼科用途に関し、医薬組成物は、等張でpH調整された無菌食塩水中の微粉化懸濁液として、または好ましくは、塩化ベンジルアルコニウム(benzylalkonium chloride)等の防腐剤を含むもしくは含まない、等張でpH調整された無菌食塩水中の溶液として製剤化され得る。あるいは、眼科用途に、医薬組成物は、ワセリン等の軟膏で製剤化され得る。
【0069】
医薬組成物はまた、吸入器、ドライパウダー吸入器または計量式吸入器の使用により、鼻エアゾルまたは鼻吸入で投与され得る。そのような組成物は、医薬製剤の当技術分野に周知の技法にしたがって調製され、生理食塩水中に溶液として調製されることができ、また組成物はベンジルアルコールもしくは他の好適な防腐剤、バイオアベイラビリティを高める吸収促進剤、フッ化炭素、および/または他の従来の可溶化剤または分散剤を用い得る。
【0070】
単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせ得る活性成分量は、治療される宿主、および特有の投与方法に応じて変化する。しかし、いずれの特有の患者へのある特定の投薬量および治療レジメンは、用いられる特定の化合物の活性度、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、排泄率、薬剤の組合せ、ならびに治療医師の判断および治療中の特有の疾患の重症度等の様々な因子によることを理解しなければならない。活性成分量はまた、もしあるならば、本成分と共投与される治療薬または予防薬に応じることができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、ジメチルフマラート、ジメチルフマラートの結晶形I、またはそれらの組合せは、約1mg/kg〜約50mg/kg(例えば約2.5mg/kg〜約20mg/kgまたは約2.5mg/kg〜約15mg/kg)の範囲の量で投与され得る。投与されるジメチルフマラート、ジメチルフマラートの結晶形I、またはそれらの組合せの量はまた変化するものであり、当業者に認識されているとおり、投与経路、賦形剤の使用、および他の治療薬の使用等の他の治療的処置との共使用の可能性に依存する。
【0072】
例えば、ジメチルフマラート、ジメチルフマラートの結晶形I、またはそれらの組合せは、例えば経口で、1日あたり約0.1g〜約1gの量で、または例えば、1日あたり約100mg〜約800mgの量で、対象に投与され得る。ジメチルフマラート、ジメチルフマラートの結晶形I、またはそれらの組合せは、例えば、1日あたり約120mg〜1日あたり約240mg、1日あたり約120mg〜1日あたり約480mg、または1日あたり約120mg〜1日あたり約720mgの量で投与され得る。
【0073】
例えば、1日あたり720mgのジメチルフマラート、ジメチルフマラートの結晶形I、またはそれらの組合せを、2、3、4、5または6の均等な服用量(例えば3の均等な服用量)の別々の投与で投与してもよい。例えば、1日あたり480mgのジメチルフマラート、ジメチルフマラートの結晶形I、またはそれらの組合せを、480mgの1日1回の服用量、各240mgの1日2回の服用量として投与してもよい。480mgのジメチルフマラート、ジメチルフマラートの結晶形I、またはそれらの組合せが1日2回の服用量で投与される場合各服用量は、(1)総服用量が240mgとなる120mgを含有する2粒の錠剤、または(2)240mgを含有する1粒の錠剤からなり得る。
【実施例】
【0074】
本明細書には本発明の一般的な記載がなされており、本発明は、本明細書において例証のみを目的に提供され、特に記載がない限り、限定することを意図しない以下の実施例を引用することにより理解されるであろう。
【0075】
(実施例1)
方法A。ジメチルフマラートの調製。
還流凝縮器を備えた100mL撹拌ジャケット付き反応器に、フマル酸(17.3g、149mmol)、続いてメタノール(100mL)を添加した。スラリーを、周囲温度で撹拌し、硫酸(3.66g、37.3mmol)を添加した。次いで、反応混合物を65℃まで加熱し、同温度でおよそ3時間保持した。次いで、反応溶液を、3〜8時間で20℃より低温まで冷却し、その間に生成物を沈殿させた。生成物を濾過し、ケーキを20mLメタノールで2回洗浄した。湿潤ケーキを真空下で、20〜30℃で乾燥させ、乾燥ジメチルフマラート(16g)を得た。
【0076】
(実施例2)
方法B。ジメチルフマラートの調製。
還流凝縮器を備えた100mL撹拌ジャケット付き反応器に、7g(60.3mmol)のフマル酸、メタノール(50mL)、および2.25g(17.7mmol)オキサリルクロリドを添加した。混合物を65℃まで加熱し、2時間保持した。次いで、溶液を8時間で20℃まで冷却した。生成物を濾過し、メタノール(30mL)で洗浄した。湿潤ケーキを、真空下で、20〜30℃で乾燥させ、6.9gのジメチルフマラートを得た。
【0077】
(実施例3)
方法C。ジメチルフマラートの調製。
還流凝縮器を備えた100mL撹拌ジャケット付き反応器に、17.3g(149mmol)のフマル酸、2gのAmberlystレジン、およびメタノール(100mL)を添加した。混合物を65℃まで加熱し、24時間保持した後、レジンを除去するために高温濾過し、そしてさらなる40mLのメタノールでリンスした。スラリーを65℃まで再加熱し、20℃までゆっくり冷却した。生成物を濾過し、15mLメタノールで2回洗浄し、乾燥させて、9.1gのジメチルフマラートを得た。
【0078】
(実施例4)
フマル酸のエステル化。
フマル酸(161.5(1391mol)〜162.5kg(1400mol))を、1000Lガラス内張り反応器に添加し、続いて、740〜742kgのメタノールを添加した。スラリー混合物を、およそ100RPMで撹拌し、34.5〜35.0kgの硫酸を容器に添加して、反応を開始させた。
【0079】
混合物を、60〜70℃で少なくとも3時間にわたって還流まで加熱した。エステル化反応のこの時点で、10%未満のフマル酸水素メチルが反応混合物中に存在した。次いで、加熱混合物を不活性窒素下で晶析装置に移して、実施例5に記載のジメチルフマラートを結晶化させた。本プロセスで、粉砕前に、147kg(1019モル、73%の収率)の乾燥ジメチルフマラートが得られた。粉砕プロセスにより、143kg(991モル、97%の収率)の粉砕ジメチルフマラートをもたらした。フマル酸から粉砕薬剤物質までのプロセス全体での全収率は、71%であった。
【0080】
表1に正常動作範囲を示す。
【表1】
【0081】
ジメチルフマラートの形成を、
図1に示す各種硫酸量に基づき分析した。正常動作条件を使用した異なる量の硫酸触媒(0.01、0.05、および0.25mol当量)との反応により、同様の単離収量(78〜79%)で、フマル酸水素メチルが不検出量のジメチルフマラートを得た。(フーリエ変換赤外分光で構成し、かつ高速液体クロマトグラフィにより計測された最終の濃度へと正規化した)反応プロファイルにより、反応を十分に長い時間で行った場合、生成物の平衡濃度が、使用した硫酸触媒の全てのレベルで達成されたことが示唆される。
【0082】
(実施例5)
ジメチルフマラートの結晶化。
ジメチルフマラートを、実施例4の最終反応混合物を冷却することにより結晶化した。結晶化試験により、冷却速度は生成物の純度、粒径および収率に悪影響を及ぼさないことが示唆された。ジメチルフマラート結晶は、58〜60℃前後で核を形成し、また、大部分は40〜45℃で溶液から析出する。現行プロセスでは、混合物を反応温度65℃から終了温度20〜25℃まで約8時間で冷却し、1〜2時間撹拌し、濾過して生成物を単離した。
【0083】
表2は、製造装置機能の範囲内で選択された冷却速度での、実験室の結晶化実験から得られた結果に興味を集中させる。表2に示すように、冷却速度による、生成物の純度、平均粒径、および単離収率に対する影響はない。
【表2】
【0084】
実験した他のプロセスパラメータには、撹拌動力(速度)、最終終了温度、結晶化終了温度での撹拌時間が含まれる。これらのパラメータ変動は、生成物特性(純度、粒径、および収率が含まれる)にわずかな影響しか与えなかった。冷却速度、撹拌動力(速度)、保持時間、および終了温度について試験された範囲を、製造プロセスで使用された正常動作範囲とともに表3に示す。
【表3】
【0085】
(実施例6)
ジメチルフマラートの単離。
実施例5のジメチルフマラート生成物を、遠心分離機を使用して濾過した。湿潤ケーキには、約5%の母液(メタノール、フマル酸水素メチル、フマル酸、および硫酸を含有する)を含有していた。本母液を、ケーキ洗浄中に、周囲条件下で、メタノールで置換した。現行の製造プロセスで使用したメタノール洗浄物の総量は、368kg(約2.5kgのMeOH/kg生成物)であった。
【0086】
開発試験で実験されたパラメータは、ケーキ高/厚およびメタノール洗浄液量であった。製造中のケーキ高/厚の変動は、バッチを4つに分けて(split)遠心分離機容量に合わせたため、予想される。
【0087】
様々なメタノール洗浄液量を用いた実験室試験により、広範囲の洗浄液量が、生成物1kgあたり0.66kgという低いメチルアルコール比率を使用しても、生成物の許容される品質を兼ね備えたジメチルフマラートを生成することが示されてきた。メタノールのケーキ洗浄を伴う単離段階は頑健であると考えられ、また、通常の推奨される洗浄範囲で2〜9倍の動作性能マージンが得られる。
【0088】
ケーキ高/厚およびメタノール洗浄液量の正常動作範囲を、表4に示す。
【表4】
【0089】
(実施例7)
ジメチルフマラートの乾燥。
実施例6で単離されたジメチルフマラートの乾燥程度は、時間、温度、ならびにある程度の乾燥機の種類および容量に応じる。現行の162kgバッチスケールでは、表5に列挙する乾燥機を使用した乾燥時間は、72時間の長時間にわたって継続し得る。メタノールおよび水レベルを決定するためインプロセスチェック(IPC)を48時間実施し、十分なレベル、すなわちメタノールが0.15%未満、および水が0.10%未満に達したら乾燥をその後終了させた。今後、このIPCは省略し得、乾燥は使用する特定の乾燥機に基づいた所定時間で終了し得る。
【0090】
温度、圧力、および乾燥時間の粒径への影響もまた調査した。ジメチルフマラートは低い測定可能な蒸気圧を有し、したがって、材料を乾燥機での減圧下に配置することは、潜在的に昇華を促し得、次いで粒径変動を促し得る。開発試験は、製造プラントで用いられる乾燥条件下での昇華程度を実験した。実験室の乾燥機およびプラントの乾燥機で異なる乾燥時間から得られた粒径の比較を表5に示す。表5のうち最初の3エントリーは、7、24、および48時間の乾燥時間後に収集した実験室試料である。3つの実験室試料の結果から、乾燥は粒径に影響を与えないことが確認される。実験室試料の粒径をまた、48時間および72時間乾燥させた2つの代表的なプラント試料に対して比較した。乾燥中の粒径に変化はない。
【表5】
温度、圧力、および乾燥時間の正常動作範囲を表6に示す。
【表6】
【0091】
(実施例8)
ジメチルフマラートの粒径を小さくすること。
実施例7の乾燥させたジメチルフマラートを、さらに、ジェット粉砕機内で処理した。これらの粒子を粉砕して、薬剤性生物加工での一貫した取扱いおよび画一性に好適なサイズの粒子を生成した。粒径の目標仕様は、97%以上の粒子が250μm未満であることである。ジメチルフマラート薬剤物質を、一貫してこの仕様に合うようにジェット粉砕機を使用して粉砕した。立証済みの許容範囲および正常動作範囲を表7に列挙する。
【表7】
【0092】
実施例7の、乾燥機(約550〜650μm)から単離されたジメチルフマラートの平均粒径は、粉砕後、20〜40μm前後まで小さくなり、薬剤生成物プロセスでの使用に許容されるものとなった。粉砕操作が好適な品質の薬剤物質を生成可能であることは明らかである。
【0093】
(実施例9)
ジメチルフマラート再結晶化。
少量の材料を昇華(Staples, R.J. and Gingold, J.A., Z. Kristallogr. NCS 224:121-123 (2009))することにより、結晶を得た。寸法が0.24×0.16×0.11mmである無色のブロック結晶を、非常に少量のパラトン油(paratone oil)を使用してナイロンループに固定した。
【0094】
173Kで動作するOxford Cryostream低温装置を備えたBruker CCD(charge coupled device:電荷結合素子)搭載の回折計を用いて、データを収集した。データを、30秒間で1フレームあたりのオメガ走査およびファイ走査0.5°を使用して、計測した。画像の総数は、プログラムCOSMO(COSMO V1.56, Software for the CCD Detector Systems for Determining Data Collection Parameters. Bruker Analytical X-ray Systems, Madison, WI (2006))の結果に基づいたものであり、本プログラムで冗長性(redundancy)は4.0と予想され、また完全性は0.83Åで100%であった。セルパラメータを、APEXIIソフトウェア(APEX2 V 1.2-0 Software for the CCD Detector System; Bruker Analytical X-ray Systems, Madison, WI (2006))を使用して取り込み、また、全ての観測した反射数をSAINTを使用して精密化した。データ整理を、SAINTソフトウェア
(SAINT V 7.34 Software for the Integration of CCD Detector System Bruker Analytical X-ray Systems, Madison, WI (2001))(Lp(ローレンツ偏光因子:Lorentz−polarization factor)を補正する)を使用して実施した。スケール補正および吸収補正が、SADABS(SADABS V2.10 Program for absorption corrections using Bruker-AXS CCD based on the method of Robert Blessing; Blessing, R.H. Acta Cryst. A51, 1995, 33-38)マルチスキャン技術を使用して適用された。構造をSHELXS−97プログラムを使用した直接法(direct method)により解明し、また、F
2による最小二乗法、すなわちSHELXTL−PC V6.10(Sheldrick, G.M., Acta Cryst. A64:112-122 (2008))に組み込まれたSHELXL−97により精密化した。
【0095】
構造を空間群P
1で解明した。非水素原子のすべてを異方的に精密化した。水素を幾何学的方法で計算し、ライディングモデル(riding model)として精密化した。回折試験に使用された結晶では、データ収集中に、分解は見られなかった。描画のすべてを50%の楕円で行う。
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0096】
実施例10〜14
次の反応条件を実施例10〜14に適用する:
【0097】
全
1H NMRスペクトルを取得し、Varian 500MHz NMRを使用して2.5ppmでのDMSO−d
6と比較照合した。濃硫酸、フマル酸、およびジメチルフマラートを、Sigma−Aldrich Chemical Companyから入手した。MMS(Na塩)およびDMSの信頼できる標準試料(Authentic standard)をSigma−Aldrich社から入手した。スパイク特定目的で、MMSの信頼できる試料を、市販のナトリウム塩のメタノール溶液をAmberlite FPA22レジン(H型、10モル当量)に通し、フラッシュエバポレータで油状になるまで濃縮させて、調製した。
【0098】
試験で実施した全ての小規模反応を、マグネットスターラで撹拌しながら、65度±1℃で維持した絶縁油槽(insulated oil bath)を使用して行った。本試験で使用した0.01%以下の水を含有するメタノールを、一晩175℃で予備乾燥した3Åのゼオライト分子篩を使用してさらに乾燥させた。Sigma−Aldrich社から購入した濃硫酸は、99.9%を超える公称純度であり、これを規定どおりに使用した。
【0099】
反応の試料収集は、最低150〜400μLの反応溶液を取り出し、必要に応じてDMSO−d
6(ロック溶媒)に添加して各NMRチューブ中に650μLの溶液を作製することを含んでいた。試料を氷/水槽で冷却し、調製後5〜10分以内で分析した。反応プロファイルを、反応完了を時間に対して(反応物の測定地の積分で)プロットすることにより追跡した。
【0100】
DMSは、延長したメタノリシス後に平衡に達した直後に、ごく微量に存在していたが、DMSピークのS/N比は、10超:1であり、したがって、信頼性よく計測可能であった。しかし、基準が本領域でMeOH(溶媒)の広範囲なメチル共鳴から逸れているため、MMSおよびその左のサテライトピーク(DMS共鳴の化学シフト付近)は、電子的な積分が正確に行われない恐れがあった。結果として、スペクトルは拡張し、ピークは物理的に抽出され、モル比を得るために定量された。本計測手順に伴うエラーは、10%以下と予測され、実験的不確定性と計算不確定性の他のソースと比較可能であった。
【0101】
全実験データを当てはめて、速度定数データを作成し、総合的な速度論的モデルをDynoChem(version3.3)を使用して実施した。
【0102】
プロセス溶液のDMS分析についてのGC−MS抽出方法:Agilent 6890N GC;2ml/分の(一定流量)ヘリウムキャリアガスを備えたSupelco Equity−1701(30m×0.32mm、1.0m)カラム;FID Detector;50℃から280℃への21分にわたる温度勾配。10mLコニカルチューブ内に試料を約100mg計量し、10.0mLの0.1M NaClをその試料チューブに添加し、ボルテックスした。1.0mLのメチルt−ブチルエーテル(MBTE)を添加した。蓋を閉め、ボルテックスし、次いで、5分間撹拌(agitate)した。4000rpmで10分間遠心分離した。200μLのMTBEの最上層を取り出し、バイアル瓶に入れて、GCで分析した。
【0103】
DMSスパイク実験(spiking experiment)。スパイクされた大量のDMSの、APIのDMSレベルへの効果を把握するため、(APIに対して)0.55%(5500ppm)のDMSを、反応開始時に、反応混合物(100グラムバッチ)に添加した。以下の条件を、本スパイク実験に使用した:
1.100gのジカルボン酸出発材料を入れる。
2.580mLのMeOHを入れ、480rpmで撹拌を開始しる。
3.21.3gの硫酸を入れる。
4.反応物を67℃まで加熱する。
5.DMS(結果として得られるAPIに対し0.55%wt/wt(5500ppm))を入れる。
6.この温度で3時間維持する。3時間の反応時間中、分析のためにアリコートを取り出す。
7.8時間で22℃まで冷却し、2時間保持する。
8.濾過し、ケーキを70mLのMeOHで4回洗浄する。
9.ケーキを22℃で100mmHgにて乾燥させた。
10.DMS含量に関し、乾燥APIのサンプルを採取する。
【0104】
(実施例10)
モノメチルスルファートの形成
乾燥メタノール(0.01%未満の水分)を高濃度の乾燥硫酸と混合し、65℃まで加熱した。65℃に達するまでの1分間の待機後、個別の7試料について
1H NMR(16過渡現象(transient))を収集した。この試料の全セットについてのデータ収集は12分以内で終了した。平衡は1時間以内に達し、結果として硫酸からモノメチルスルファートへの本質的に定量的変換が行われた。加熱試料は、シールド管での数日間の保管後、変化しないままであった。NMRスペクトルでのMMS共鳴の同一性を、モノメチルスルファートの信頼できる試料を反応混合物にスパイクすることにより確認した。MMSピーク積分値(C
H3、3.45ppm)をMeOH溶媒(C
H3、3.18ppm)のメチルピーク共鳴に正規化し、DynoChem version3.3を使用して、ピーク積分値データから正反応の速度定数(k
1)を計算した。試験を、2つの得られた速度定数の良好な一致を伴って2度行った。65℃でのMMSの形成についての二次反応の正反応速度定数(k
1)を決定し、±7%RSDの信頼区間で6.4×10
−5L/mol・秒であった。
【0105】
(実施例11)
モノメチルスルファートの加水分解
この反応の速度定数を、MMS(1.5モル%)を含有する溶液に水をスパイクしてこの加熱密封容器を
1H NMRで45時間モニタリングすることにより計測した。水をマトリックス中に2種類の異なるレベル(6モル%および12モル%)でスパイクした。どちらの場合も、残存するMMSレベルは事実上変動せず、この反応系の平衡が右辺にかなり移動していることを確証した。より大きなモデルを開発するため、MMS平衡定数K=(k
1/k
−1)に正反応を支持する999:1の値を割り当て、したがって、控えめにk
−1を6.4x10
−8L/mol−秒と規定した。
【0106】
関連の研究では、WolfendenおよびYuan, P.N.A.S. 104:83-86 (2007)が、ある範囲の温度およびpHにわたるMMSの加水分解についての速度定数を計測し、外挿値(25℃で)が1.7×10
−8M
−1s
−1(1M HCl、T=40℃〜100℃)および2.2x10
−11M
−1s
−1(pH=3〜10、T=100℃〜190℃)であることを見いだした。さらに彼らはまた、ある範囲の温度(T=100℃〜150℃)および硫酸濃度(1〜4M)にわたるモノメチルスルファートの加水分解についての平衡定数を計測し、速度が0.027M
−1でほぼ一定していることを見いだした。両研究所の結果より、MMSは急速に形成され、広範囲にわたる温度および水濃度の条件下で安定していることが確認される。これらの結果はまた、モノメチル硫酸が反応性の低いアルキル化剤であるという事実と一致している。
【0107】
(実施例12)
ジメチルスルファートのメタノリシス。
1.5モル%DMSおよびメタノールの溶液をシールド管で35℃まで加熱し、時間依存性のNMRスペクトルを、これらの混合物について収集した。60分にわたり得られたデータより、ジメチルエーテル(DME)およびMMS共鳴は、DMSでの並列的な減衰に伴い、徐々に経時的に増大することが示された。NMRデータの使用は、スキーム2に提案された反応機構を確認するのに役立った。
【0108】
反応は、35℃でよりゆっくり進行したが、明らかにジメチルエーテル(DME)の形成が確認される。交換可能なOH共鳴(4.8ppm)の緩やかなダウンフィールドシフトにより、強酸、すなわちMMS(スキーム5)の発生が裏付けられる。二連の実験のうち別のセットを65℃(再び1.5モル%DMSを乾燥メタノールに0.01%未満の水と共に硫酸なしでスパイクする)の反応条件で実施し、反応を60分間モニタリングした。この反応は、反応容器が加圧されておらず反応生成物であるジメチルエーテルは溶液から泡立っているので、公称プラントプロセス条件下で本質的に非可逆的であると考えられた。
【0109】
DMS(k
3)のメタノリシスについての速度定数を、DynoChemを使用してこのデータより得て4.1×10
−5L/mol・秒であることを見いだした。
【0110】
(実施例13)
ジメチルスルファートの加水分解
ジメチルスルファートの加水分解速度を、既知量の水をDMSおよびメタノールの混合物中にスパイクすることにより決定した。水は、3種類の異なるレベル(10.5、14.0、および17.7モル%当量)で、DMS−メタノール溶液中にスパイクされた。反応を60分間、65℃でモニタリングし、DMSピーク積分値を得た。
【0111】
DMSの加水分解の速度定数(k
−2)を、全データを時間依存性のピーク積分値データを使用したDynoChemモデルに当てはめて得た。k
−2について実験的に決定した値が2.3x10
−4L/mol・秒であることを見いだした(Kolensikov, V.A., Kinetika I Katliz 18:1065-1066 (1977) and Chan, L.C., et al., Org. Proc. Res. Dev. 12:213-217 (2008)を参照のこと)。
【0112】
DMSのメタノリシスおよび加水分解実験のプロファイルにより、MeOH溶液が水を含有すると、MMSはより急速に形成されることが明らかとなった。反対に、ジメチルエーテル形成は水の添加により反応が遅れた。これらの結果より、DMSのメタノリシス(k
3)および加水分解(k
−2)が二分子機構であることが示唆された。メタノールおよび水が、S
N2様置換反応で競合し、取得可能なDMSを消費する。メタノールと比較して低濃度であるにもかかわらず、より求核性の強い水分子は、ジメチルスルファートがMeOHと反応する速さより速く(k
−2>k
3)、DMSを加水分解することが出来る。
【0113】
Teasdale, A.,et al.,Org.Proc.Res.Dev.14:999-1007(2010)は、メチルメタンスルホナートのメタノリシスおよび加水分解の試験の類似した知見を開示した。O
18標識メタノールを使用した彼らの調査により、メチルメタンスルホナートのメタノリシス中に形成されたジメチルエーテル中の酸素はメタノールからのものであって、メタンスルホン酸からのものではないことが確証された。
【0114】
上述から、当業者は、本発明の本質的特性を容易に確認することが可能であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更および修正をなし、不要な実験を行うことなく様々な使用および条件に合わせることが可能である。本明細書に引用された全ての特許、特許出願、および文献は、そのすべてが参照により組み込まれる。