【文献】
A. S. PATRA,An investigation of the two-beam polarization of a heterodyne interferometer,Journal of Optical Technology,2005年12月 1日,Vol. 72, Issue 12, ,pp. 905-908
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記偏光ビームスプリッタは、前記レーザー光源から照射された光が入射する第1の表面と、前記計測対象に対向する第2の表面と、前記相対的位相差検出用偏光素子に対向する第3の表面と、前記反射素子と対向する第4の表面とを有し、前記第2の表面、前記第3の表面及び前記第4の表面にはそれぞれ四分の一波長板が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の三次元形状計測装置。
前記偏光ビームスプリッタは、前記参照光の光路長と前記物体光の光路長とが略同一となるように、その一端に延長部を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の三次元形状計測装置。
少なくとも前記物体光が通過するテレセントリック光学系を配し、前記ホログラム画像とともに、前記計測対象の映像情報を取得することを特徴とする請求項12又は13に記載のホログラム画像取得方法。
前記計測対象の映像情報を取得する際には、前記ホログラム画像を取得する際に比べて、前記参照光の光量を低下させることを特徴とする請求項14に記載のホログラム画像取得方法。
請求項12乃至14の何れか1項に記載の方法によって取得した前記相対的位相差の異なる複数のホログラム画像から、前記計測対象からの物体光の位相分布を算出し、前記計測対象の三次元形状を再生することを特徴とする三次元形状計測方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[本発明の概要]
本発明は、位相シフトデジタルホログラフィーの技術を用いて、計測対象の三次元形状を計測する三次元形状計測装置である。本発明者らは、第1の円偏光の物体光と、第1の円偏光とは反対方向の第2の円偏光(以下同じ)の参照光とを偏光素子に入射させることによって、第1の円偏光の物体光のうちの偏光素子の偏光方向成分の直線偏光と、第2の円偏光の参照光のうちの偏光素子の偏光方向成分の直線偏光とを通過させ、通過した物体光及び参照光によってホログラムを撮像できることを見出した。さらに、本発明者らは、偏光素子の偏光方向に応じて、物体光と参照光との間の相対的位相差を制御できることを見出したのである。そこで、本発明では、従来のピエゾ素子を含むミラーによる参照光の光路差を物理的にシフトさせる手法に代えて、より簡易且つ振動に強い構造として、物体光と参照光とを回転方向の異なる円偏光に変換する波長板及び相対的位相差検出用偏光素子を用い、相対的位相差検出用偏光素子の偏光方向を制御する方法を採用した。本発明は、これによって物体光と参照光との間の相対的位相差が異なる複数のホログラムを撮像できる位相シフトデジタルホログラフィーの技術である。本発明は、かかる三次元形状計測装置を用いて計測対象のホログラム画像を取得し、計測対象の三次元形状を計測する方法も含む。
【0019】
本発明の三次元形状計測装置は、波長単位での精密な制御が必要であった従来技術に比べて、単に相対的位相差検出用偏光素子を回転駆動させるだけなので振動に強く、防振装置などを備えなくてもよく、低コスト、簡易且つコンパクトな構造であり、装置それ自体を適宜移動させながら使用することができる。例えば、工場などにおいて、本計測装置をロボットアーム先端に搭載して、比較的大きな工業製品の複数箇所に順次移動し、高速で計測することもできる。
【0020】
なお、本明細書では、簡単のため、一方向に進行する光(電磁波)において、その電場ベクトルが振動する方向を偏光方向といい、電場ベクトルと進行方向とを含む面を偏光面という。光学ユニットとして偏光ビームスプリッタを採用する場合、P偏光とは入射面に対して平行な方向に振動する成分をいい、S偏光とは、入射面に対して垂直な方向に振動する成分をいう。
【0021】
本発明の計測装置は、少なくとも、レーザー光源(例えば、
図1乃至
図3の符号1。以下同様)、計測対象(10)によって生成された物体光を第1の円偏光として相対的位相差検出用偏光素子(6)に入射させる物体光用光学系(20、23、5)、参照光を第2の円偏光として相対的位相差検出用偏光素子(6)に入射させる参照光用光学系(20、24、25、5)、相対的位相差検出用偏光素子(6)及び撮像手段(7)を備える。なお、
図1乃至
図3においては、物体光用光学系及び参照光用光学系は、両者を一体化させた光学ユニット(2)によって実現している。
【0022】
レーザー光源は、可干渉性の強いレーザー光を供給可能な光源であり、半導体レーザー(レーザーダイオード)、固体レーザー(ルビーレーザー、YAGレーザーなど)、気体レーザー(He−Neレーザー、CO
2レーザー他)、ファイバレーザーなどを使用することができる。レーザー光の強度及び波長は、計測対象、計測光学系の構成及び全体の光路長などに応じて適宜選択してよい。
【0023】
物体光用光学系は、レーザー光源などから供給される光の一部を用いて計測対象に照明するための照明光を生成し、計測対象に照明光を照射して生成した物体光を第1の円偏光に変換し、相対的位相差検出用偏光素子に入射させる光学系である。照明光を生成するためには、偏光ビームスプリッタを用いてレーザー光源などから供給される光を分割し、その一方の直線偏光を照明光として使用してもよいし、ビームスプリッタを用いてレーザー光源などから供給される光の一部を分離して照明光として使用してもよい。また、物体光を第1の円偏光に変換するために、四分の一波長板が適宜配置される。
【0024】
参照光用光学系は、レーザー光源などから供給される光の他の一部を用いて参照光を生成し、第2の円偏光に変換し、相対的位相差検出用偏光素子に入射させる光学系である。参照光を生成するためには、偏光ビームスプリッタを用いてレーザー光源などから供給される光を分割し、他の一方の直線偏光を参照光として使用してもよいし、ビームスプリッタを用いてレーザー光源などから供給される光を分離した他の一部を参照光として使用してもよい。また、参照光を第
2の円偏光に変換するために、四分の一波長板が適宜配置される。
【0025】
物体光用光学系及び参照光用光学系は、一体化させた光学ユニットとすることが小型化、簡易化、低コスト化に向けて好ましい。光学ユニットは、例えば、偏光ビームスプリッタ及び波長板などの組合せを使用することもできるし(例えば、
図1乃至
図3、
図8乃至
図11)、波長選択性、角度選択性、回折効率を適宜設定されたホログラフィック光学素子(Holographic Optical Element:以下、単に「HOE」と記載することもある)を使用することもできる(例えば、
図12)。ただし、各図に示した構成は単なる例であって、これに限定されない。光学ユニットは、回転方向が相互に反対の円偏光の物体光と参照光とを相対的位相差検出用偏光素子に向けて出射可能な構成であればよい。各種光学素子の種類、配置、数量などは、装置の構成、使用目的などに応じて、種々変形が可能である。例えば、特開2012−2616号公報に記載された干渉計などのような構成を適用してもよい。
【0026】
物体光用光学系及び参照光用光学系は、相対的位相差検出用偏光素子に対し、物体光及び参照光を略同軸で入射させることが好ましい。ここで、略同軸とは、物体光の光軸と参照光の光軸の交叉角がゼロであるか、十分に小さい(0〜±7°程度)ことをいう。上述したように、デジタルホログラフィーによる三次元形状計測では、撮像素子の分解能及び画素数に制限があるため、計測対象からの物体光と参照光との交叉角はできるだけ小さくして、干渉縞の間隔を大きくすることが好ましい。
【0027】
相対的位相差検出用偏光素子は、物体光又は参照光の光軸に対して垂直に配置され、偏光方向を変更可能に構成されている。例えば、相対的位相差検出用偏光素子は、直線偏光素子及び回転駆動手段を使用し、物体光又は参照光の光軸を中心として偏光素子を回転可能な構成を採用することができる。さらに、回転駆動手段は、撮像手段による撮像タイミングと同期させて所定の回転速度で偏光素子を回転させることにより、高速で相対的位相差検出したホログラムを撮像することが可能である(
図5参照)。ここで、相対的位相差検出用偏光素子が配置されたときの基準軸(例えば、X軸)と直線偏光素子の偏光軸(偏光方向)との間の角度を回転角度αという(
図5参照)。ただし、回転駆動手段は、特定の回転角度のみを段階的に変更可能な構成であってもよい。
【0028】
相対的位相差検出用偏光素子は、第1の円偏光及び第2の円偏光の少なくとも一部(偏光軸に対応する直線成分)を透過させる。相互に反対方向に回転する円偏光の物体光及び参照光において、ある時刻での回転角度αにおける透過可能な物体光及び参照光の一部(直線成分)は、それぞれ異なった位相を有するものとなる。そして、偏光素子を回転させると、透過した物体光の一部と参照光の一部との間の相対的位相差は、回転角度αの変化量に応じて変化する。このため、本発明では、ピエゾ素子などを用いて参照光の光路を変化させなくても、簡易な偏光素子の回転制御によって、物体光と参照光との相対的位相差を変化させることができるのである。
【0029】
撮像手段は、相対的位相差が生じた物体光(相対的位相差検出用偏光素子を透過した部分)と参照光(相対的位相差検出用偏光素子を透過した部分)とが干渉することによって撮像面に生成されるホログラム画像(以下、干渉縞パターンということもある)を撮像する。撮像手段には、例えば、CMOS(Complementary Metal−oxide Semiconductor)センサ、CCD(CCD:Charge Coupled Device)センサなどを使用することができる。
【0030】
また、本発明は、情報処理手段を含んでもよい。情報処理手段は、相対的位相差検出用偏光素子の回転駆動手段の動作、撮像手段の撮像タイミングなどを制御することができる。さらに、三次元形状計測において、撮像手段が取得したホログラム画像に対して各種の処理を実行するように構成される。三次元形状計測の具体的な処理については、
図6を用いて後述する。情報処理手段には、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバなどを使用することができる。また、プロセッサ及びその周辺回路によって構成し、ハードウェアとプログラムとを協働させ、各種処理を実現してもよい。また、画像演算のための専用回路を用いてもよい。例えば、撮像手段内部に配置されるFPGA(Field−Programmable Gate Array)に各種処理用のソフトウェアを組み込んでもよい。
【0031】
このように、本発明の計測装置によれば、相対的位相差検出用偏光素子を回転させることによって、第1の円偏光である物体光の一部と第2の円偏光である参照光と一部との間の相対的位相差を制御し、相対的位相差の異なる複数のホログラム画像を取得することができる。
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
【0033】
[装置構成]
図1は、本発明の実施形態の三次元形状計測装置の概略構成図であり、
図2は、レーザー光照射時の光路を示す説明図であり、
図3は、レーザー光反射時の光路を示す説明図である。なお、
図1において、レーザー光照射時と反射時の光路を一度に示すため、反射時の光路を照射時に対して角度を付けて記載しているが、基本的には照射時と反射時の光軸は同じであり、反射手段の表面の微小な凹凸や計測対象の形状を無視すれば、光路は重なる。
【0034】
本計測装置は、レーザー光源1、光学ユニット2、相対的位相差検出用偏光素子6(回転駆動手段(図示せず)を含む)、撮像手段7を備える。さらに、本計測装置は、情報処理手段8、ビームエキスパンダ9、入射光用二分の一波長板11などを備えてもよい。
【0035】
図1の光学ユニット2は、偏光ビームスプリッタ20、照明光用四分の一波長板23、参照光用四分の一波長板24、反射素子25及び円偏光変換用四分の一波長板5を含んでいる。さらに、
図1では、レーザー光源1と光学ユニット2との間にビームエキスパンダ9及び入射光用二分の一波長板11を設けている。光学ユニット2は、レーザー光源1から供給される光から照明光31と参照光33とを生成し、最終的には、回転方向が反対の第1の円偏光の物体光37と第2の円偏光の参照光38とを相対的位相差検出用偏光素子6に向けて略同軸で出射するものである。
図1の偏光ビームスプリッタにおいて、第1の表面Aの側にはレーザー光源1が配置され、レーザー光源1から照射されたレーザー光30が入射する。第2の表面Bの側には計測対象が配置され、表面B又はその近傍には照明光用四分の一波長板23が設けられる。第3の表面Cの側には、相対的位相差検出用偏光素子6及び撮像手段7が配置され、表面C又はその近傍には円偏光変換用四分の一波長板5が設けられる。第4の表面D又はその近傍には、参照光用四分の一波長板24、及び反射素子25が設けられる。
【0036】
図2を参照すると、まず、レーザー光源1から照射されたレーザー光は、ビームエキスパンダ9によって所定のビーム径の平行光に拡大され、偏光ビームスプリッタ20に入射する。ビームエキスパンダ9は、レーザー光のビーム径を平行に拡げる光学部材であり、コリメータレンズなどを含む。この場合、ビームエキスパンダ9から出射されたレーザー光は直線偏光であるが、この直線偏光が二分の一波長板11を透過すると、特定の偏光方向を有する直線偏光30が形成され、偏光ビームスプリッタ20と組み合わせることで照射光及び参照光の強度比を調整することができる。例えば、直線偏光30の偏光方向が偏光ビームスプリッタ20への入射面に対して45°となるように、二分の一波長板11の光学軸を設定すると、偏光ビームスプリッタ20によって分割される第1の直線偏光の振幅強度と第2の直線偏光の振幅強度は略同一となる。
【0037】
偏光ビームスプリッタ20は、その光学特性により、直線偏光30を、第1の直線偏光(以下、S偏光とする)と、第2の直線偏光(以下、P偏光とする)との二光束に分割し、一方(例えばS偏光)を媒質の境界面で反射させ、他方(例えばP偏光)を透過させる。ここでは、S偏光を照明光31として用い、P偏光を参照光33として用いるが、その逆としてもよい。この場合には、照明光用四分の一波長板23、参照光用四分の一波長板24、反射素子25及び計測対象10の配置は適宜設定される。
【0038】
S偏光である照明光31は、照明光用四分の一波長板23を透過すると、円偏光(例えば、左回転)に変換され、計測対象10に照射される。他方、P偏光である参照光33は、参照光用四分の一波長板24を透過すると、照明光31とは回転方向が反対の円偏光(例えば、右回転)に変換され、反射素子25によって反射される。反射素子25は、例えば、平面ミラー、反射型HOEなどを使用することができる。また、計測対象のおおよその形状が予め分かっている場合(例えば、球面)、凸面鏡、凹面鏡、あるいはこれらの組み合わせ、またはこれらの形状が位相情報で記録された反射型HOEなどを用いることもできる。製品の製造ラインでの検査のように、計測対象の形状があらかじめ決まっている場合には、計測対象の形状と略同一の形状の反射面を設けることが好ましい。例えば、レンズの形状の検査では、極めて正確な非球面形状の計測が求められるため、予めそのレンズとほぼ同じ形状の反射素子を配置すれば、計測対象であるレンズと、それと略同一の形状を有する反射素子との位相差は全面にわたって小さく且つ均一な位相差分布が得られるので、非常に高い精度の計測が可能になる。特に、フライアイレンズのような複数のレンズが組み合わされた光学部品の検査に適用することが好ましい。
【0039】
図3を参照すると、照明光31が計測対象10によって反射されることで生成された物体光32(左円偏光)は、照明光用四分の一波長板23を再び透過することにより、照明光のS偏光とは直交するP偏光に変換される。P偏光の物体光35は、偏光ビームスプリッタ20を透過し、円偏光変換用四分の一波長板5に向けて出射される。他方、反射素子25から反射された参照光34(右円偏光)は、参照光用四分の一波長板24を透過すると、照射時のP偏光とは直交するS偏光に変換される。S偏光の参照光36は、偏光ビームスプリッタ20で反射し、円偏光変換用四分の一波長板5に向けて出射される。
【0040】
次いで、偏光ビームスプリッタ20から出射したP偏光の物体光35及びS偏光の参照光36は、円偏光変換用四分の一波長板5を透過する。円偏光変換用四分の一波長板5は、光学ユニット2の出射側に配置され、相互に直交する直線偏光の物体光及び参照光の一方を第1の回転方向の円偏光(例えば、左回転。
図4の電場ベクトルE
1参照)に変換し、他方を第2の回転方向の円偏光(例えば、右回転。
図4の電場ベクトルE
2参照)に変換する。このため、P偏光の物体光35は、四分の一波長板5を透過すると、第1の回転方向の円偏光(例えば、右回転)の物体光37に変換される。他方、S偏光の参照光36は、円偏光変換用四分の一波長板5を透過すると、第2の回転方向の円偏光(例えば、左回転)の参照光38に変換される。
【0041】
図4は、物体光及び参照光の円偏光の状態を示す説明図である。円偏光は、一般的に、進行方向の軸(ここではZ軸)の周りを回転しながら進む電場ベクトルEの先端の軌跡として表現できる。ここでは、電場ベクトルEの回転方向は、進行方向(+Z軸方向を向く)に対して時計回りを右回転、反時計回りを左回転とした。また、基準面であるX−Z平面と電場ベクトルEを含む偏光面(偏光方向を含む)との間の角度を円偏光の偏光角度θとする。
【0042】
P偏光及びS偏光は、円偏光変換用四分の一波長板5を透過した後、図示のとおり、回転方向が相互に異なる円偏光になる。右円偏光(物体光37)の電場ベクトルE
1(Z=0の位置を基準として+X軸方向を向く)は、右回りに二分の一周分だけ回転すると、位相が反転し(−X軸方向を向く)、さらに二分の一周分回転すると、同位相に戻る。同様に、左円偏光(参照光38)の電場ベクトルE
2(Z=0の位置を基準として+X軸方向を向く)は、左回りに二分の一周分だけ回転すると、位相が反転し(−X軸方向を向く)、さらに二分の一周分回転すると、同位相に戻る。なお、同図では、簡単のため、基準(Z=0)における右円偏光37と左円偏光38との間の位相差はゼロとしているが、実際には初期位相差Δφを有する。
【0043】
その後、光学ユニット2から射出した右円偏光の物体光37及び左円偏光の参照光38は、相対的位相差検出用偏光素子6に入射すると、その偏光軸に対応する右円偏光37及び左円偏光38の一部の成分が透過し、撮像手段7の撮像面70において、同一の偏光軸を有する物体光と参照光とによって干渉縞パターンが形成される。なお、説明のため、物体光37及び参照光38は、別々に図示されているが、両者は略同軸で出射されることが好ましい。
【0044】
図5は、相対的位相差検出用偏光素子の動作を示す説明図である。相対的位相差検出用偏光素子6は、特定の偏光方向の光のみを透過させる偏光軸を有する光学部材であり、回転可能に構成される。相対的位相差検出用偏光素子6は、物体光37及び参照光38の光軸に対して略垂直に配置される。回転角度αは、相対的位相差検出用偏光素子6が配置された際の基準軸(X軸)と偏光軸との間の角度である。相対的位相差検出用偏光素子6は、二分の一周分だけ回転すると、偏光軸が再び一致する。
【0045】
相対的位相差検出用偏光素子6は、一定の回転速度で連続的に回転することが好ましい。この場合、情報処理手段8は、例えば、回転駆動手段からの回転角度を示す信号に同期して、撮像手段7の撮像タイミングを制御してもよい。具体的には、回転角度が、45°ずつシフトしたとき(すなわち、α=0°、45°、90°、135°)に、その各撮像タイミングでホログラム画像を撮像することが好ましい。これによって、相対的位相差検出用偏光素子6が二分の一周分回転する間に、4種類の位相情報を含むホログラム画像を取得することができる。また、これに限定されず、相対的位相差検出用偏光素子6を所定の時間間隔毎に所定の角度ずつ段階的に回転させるように制御してもよい。
【0046】
回転速度、撮像タイミング(回転角度)などは計測装置の構成に応じて適宜設定することができる。例えば、相対的位相差検出用偏光素子6の回転速度を7.5rps(7.5回転/秒)、撮像手段(CCDカメラ)の撮像のフレームレートを60fps(60フレーム/秒)に設定すると、1秒当たり、4×15枚のホログラム画像を撮像することができる。
【0047】
図5(A)(B)(C)(D)は、各々、回転角度がα=0°、45°、90°、135°の場合の状態である。相対的位相差検出用偏光素子6が、さらに45°回転すると(α=180°)、同図(A)の状態に戻る。
【0048】
以下でも、簡単のため初期位相差Δφはゼロとして説明する。相対的位相差検出用偏光素子6が
図5(A)の状態の場合(α=0°)、
図4の各円偏光において、円偏光のうちの偏光角度θ=0°及び180°に対応する成分が透過する。この場合、右円偏光37(物体光)のE
1(θ=0°)と左円偏光38(参照光)のE
2(θ=0°)との間の相対的位相差は、Δθ=0で揃っており、同位相である。すなわち、参照光と物体光とは、同一のタイミングで強め合うので、干渉縞パターンは強いものとなる。
【0049】
図5(B)の状態の場合(α=45°)、円偏光のうちの偏光角度θ=45°及び225°に対応する成分が透過する。ここで、
図4の左円偏光38(参照光)のE
2(θ=45°)の位置(π/4)に比べて、右円偏光37(物体光)のE
1(θ=45°)の位置(−π/4)はπ/2だけ遅れている。つまり、参照光と物体光との相対的位相差はπ/2であり、入射光の四分の一波長分に相当する。
【0050】
図5(C)の状態の場合(α=90°)、円偏光のうちの偏光角度θ=90°及び270°に対応する成分が透過する。ここで、
図4の左円偏光38(参照光)のE
2(θ=90°)の位置(π/2)に比べて、右円偏光37(物体光)のE
1(θ=90°)の位置(−π/2)はπだけ遅れている。つまり、参照光と物体光との相対的位相差はπであり、入射光の二分の一波長分に相当し、参照光と物体光とは、同一のタイミングでは弱め合うので、干渉縞パターンは弱いものとなる。
【0051】
図5(D)の状態の場合(α=135°)、偏光角度θ=135°及び315°に対応する成分が透過する。ここで、
図4の左円偏光38(参照光)のE
2(θ=135°)の位置(3π/4)に比べて、右円偏光37(物体光)のE
1(θ=135°)の位置(−3π/4)は3π/2だけ遅れている。つまり、参照光と物体光との相対的位相差は3π/2であり、入射光の四分の三波長分に相当する。
【0052】
このように、本計測装置によれば、相対的位相差検出用偏光素子を45°ずつ回転させることによって、参照光と物体光との間に4つの異なる相対的位相差を設けることができる。これによって、相対的位相差が異なる4つの状態のホログラム画像を撮像することができる。また、ピエゾ素子を使用しなくてもよいので、振動に影響されず、小型で簡単な構造の計測装置を構成することができる。なお、上記説明では、回転角度が、45°ずつシフトしたときの4種類の位相情報を含むホログラム画像を取得したが、より細かい回転角度で多数の位相情報を含むホログラム画像を取得してもよく、連続的に位相情報が変化する多数のホログラム画像を取得することも可能である。多数のホログラム画像(干渉パターン)を利用することによって、後述する式(2)の(初期)位相差Δφの算出に使用できる情報量が多くなるため、Δφの計算精度が高くなり、計測精度の向上が実現できる。また、連続的な位相情報を得られれば、式(2)を用いなくても、干渉縞の明暗の情報に含まれるsin波から直接的に初期位相差を求めることができる。
【0053】
[三次元形状計測の処理]
以下、撮像した4種類のホログラム画像に基づく三次元形状計測の処理について説明する。
【0054】
図6は、三次元形状計測の処理の概要を示すフローチャートである。
図7は、計測対象面及び撮像面の座標系を示す説明図である。参照光及び物体光の進行方向をzとする。(x,y)は撮像面70の座標であり、(ξ,η)は計測対象面100における座標であり、(ξ’,η’)は像平面150の座標である。撮像面70と計測対象面100との距離及び撮像面70と像平面150との距離はdとする。
【0055】
まず、情報処理手段8は、撮像手段7が撮像したホログラム画像を取得する(S202)。撮像した4種類のホログラム画像の干渉縞パターンI
n(x,y)(n=1,2,3,4)は、干渉理論によって、正弦波のパターンとして、式(1−1)〜式(1−4)のように表わすことができる。n=1,2,3,4は、順に、相対的位相差Δθ=0,π/2,π,3π/2の場合に対応する。
【0057】
ここで、B(x,y)は、干渉縞(正弦波)の直
線成分(平均値)のオフセット、C(x,y)は干渉縞の振幅である。Δφは、撮像面における参照光と物体光との初期位相差(各光の偏光角度θ=0の時の位相差)を表わす。初期位相差Δφを正確に算出するために、B(x,y)及びC(x,y)を算出する必要があるが、B(x,y)及びC(x,y)は未知数であるため、1枚の干渉縞パターンのみでは、初期位相差Δφを算出することが不可能である。本発明では、少なくとも4種類の干渉縞パターンを取得可能であるので、初期位相差Δφは、4種類の相対的位相差が異なる干渉縞パターンを用いて、式(2)のとおり、算出することができる。
【0059】
次いで、情報処理手段8は、位相シフト法(PSI: Phase Shift Interferometry)によって、撮像面70上の物体光の複素振幅E
0(x,y)を算出する(S204)。この物体光の複素振幅E
0(x,y)は式(3)のように表わすことができる。
【0061】
ここで、A(x,y)は計測対象から撮像面に到着した物体光の強度(干渉縞パターンI
1〜I
4の重ね合わせ)を表わし,Δφは撮像面70上の物体光と参照光との位相差を表わす。そして、参照光の位相値を0と仮定すれば、Δφは、参照光の位相値を基準にした撮像面70上の物体光の位相値(相対位相)となる。このため、式(3)に示すE
0(x,y)は、撮像面70上の物体光に相当する。しかしながら、実際には、参照光の位相値は未知である。この参照光の不確定性は、計測結果に好ましくない影響を与えると考えられる。このことにより、最も正確に物体光の位相値を算出するためには、フレネル変換を用いて、計測対象面上の物体光の位相値を算出する必要がある。
【0062】
情報処理手段8は、式(4−1)及び(4−2)に基づいて、フレネル変換によって、計測対象面100上の物体光Γ(ξ,η)を算出することができる(S206)。λはレーザー光の波長である。
【0064】
ここで、従来法では、まず、E
0(x,y)を含む式(7−1)を用い,フレネル変換によって撮像面70から像平面150へ回折する再生光Γ(ξ′,η′)を算出していた。また、従来法では、式(7―1)に示す再生光Γ(ξ′,η′)を算出する際に、フレネル変換のアルゴリズムを簡単にするために、式(7−2)に示すρ′をテイラー展開することによって、再生光を近似していた。しかしながら、このことにより、算出した再生光Γ(ξ′,η′)には、大きな計算誤差が含まれることがあり、計測精度に好ましくない影響を与えることがあった。加えて、式(7−2)に示すように、再生光の回折距離d(計算時設定した撮像面70と再生像平面150との間の距離)の変動により、算出した再生光Γ(ξ′,η′)の位相が変動することがあった。このため、従来法では、計測精度を向上させるために、計測に最適なdの値を検討する必要があった。
【0065】
本発明では、これらの問題を改善するため、式(4−2)に示すρ′をテイラー展開するのではなく、まず、式(5−1)を用い、高速フーリエ変換(FFT)によって、直接的に計測対象面100上の物体光Γ(ξ,η)を算出する(S206)。なお、式(5−1)における関数g(ξ,η,x,y)は、式(5−3)に対応する。
【0066】
これによって、本発明は、従来法と比較して、計算誤差を低減することができ、高精度な計測を実現できる。また、直接的に計測対象面100上の物体光の複
素振幅Γ(ξ,η)を算出するため、撮像面70と計測対象面100と間の距離dより遠い位置に実際の物体光が存在せず、再生光の位相が変動しない。このことから、従来法より、再生光の回折距離dに関する検討が容易に実現できる。
【0067】
なお、物体光Γ(ξ,η)を算出する際に、高速フーリエ変換(FFT)を使用するが、高速計算を実現するためには、すべての情報(画素)を使用せず、適当にサンプリングをすることが好ましい。しかしながら、本発明では、分解能の高い三次元計測を実現するために、全ての情報(画素)を使用する。すなわち、x軸上のサンプリング数はホログラム画像の幅方向の画素数と同一であり、y軸上のサンプリング数は高さ方向の画素数と同一である。
【0068】
次いで、情報処理手段8は、式(5―2)に示す物体光Γ(ξ,η)の位相分布φ(ξ,η)を算出する(S208)。なお、位相分布φは計測対象面100上における物体光Γ(ξ,η)の位相であり、参照光の位相値を基準としない位相値(絶対位相)である。
【0070】
式(5−2)によって算出した位相分布φ(ξ,η)は、[−π,π]の区間で変化するため、位相連結処理を実施する必要がある。このため、情報処理手段8は、例えば、Quality Map法などを用いて、位相連結処理を実施する(S210)。
【0071】
Quality Map法については、「Yuri Barseghyan Hakob Sarukhanyan, Laplacian Based LF Quality Map for Phase Reconstruction. CSIT 2009」に記載されている。Quality Map法は、参照光と物体光との間に一定の位相差を与えたときの干渉縞の強度変化を計測することによって、撮像面の各点での参照光と測定光の位相差を算出するものである。
【0072】
最後に、情報処理手段8は、干渉測量法などを用いて、計測対象の形状(三次元ワールド座標(X,Y,Z))を算出する(S212)。干渉測量法については、「Isaevich Ostrovski, Interferometry by Holography (Springer series in optical sciences), July 1980, Springer-Verlag, New York」に記載されている。干渉測量法とは、光の位相値が2πの整数倍分だけ変化する場合、計測対象の形状が等倍の波長分だけ変化することを利用して、物体の三次元形状を測定する手法である。
【0073】
本発明では、上記干渉測量法により、式(6−3)を用いて、連続的な位相値から計測対象の三次元形状のZ軸の座標値を算出する。次いで、式(5−3)に示される撮像面70のx軸、y軸の座標と計測対象面のξ軸、η軸の座標との対応関係から、式(6−1)(6−2)を用いて、三次元形状のX軸、Y軸の座標値を算出する。
【0075】
なお、Δx及びΔyは、CCDやCMOSなどのカメラセンサ素子の画素間の横及び縦方向の距離であり、Nはサンプリング数である。φは連結処理後の物体光の位相分布を表わす。以上のような処理によって、計測対象の三次元形状を計測することができる。
【0077】
[装置構成の変形例]
図8は、本計測装置の第1の変形例である。同図に示す装置は、コリメータレンズ9、アナモルフィックプリズム12及び光量調整用偏光素子13を備える点で、
図1に示した装置とは異なる。また、
図8では、相対的位相差検出用偏光素子6を回転させる回転駆動手段61も図示されている。
図8において、光量調整用偏光素子13及び入射光用二分の一波長板11は、入射光の光軸の回りに回転可能に構成されることが好ましい。なお、光量調整用偏光素子13及び入射光用二分の一波長板11の配置は、相互に入れ替えてもよい。
図1に示した構成と同一の構成には、同じ符号を付し、説明は省略する。本変形例は、計測対象との間にズーム光学系等を設けておらず、等倍での計測を前提としているため、比較的小さい計測対象(撮像面の大きさと同程度、直径10〜20mm程度)を計測する用途に適する。
【0078】
本変形例では、参照光と物体光の光路長がほぼ等しくなるように設定したので、レーザー光源としてコヒーレント長の短い半導体レーザーを使用することも可能であった。半導体レーザー1は、固体レーザーなどに比べて、コヒーレント長が短いため、適当な干渉縞パターンを取得するためには、参照光と物体光(照明光を含む)との光路長差はできるだけ小さくすることが好ましい。本変形例では、参照光が往復する光路に対応する偏光ビームスプリッタの一端に、偏光ビームスプリッタから出射された照明光が計測対象面に到達するまでの距離Lに相当する延長部29を設ける。計測対象の表面形状(凹凸)によっては、物体光と参照光のとの間に光路長差が生じる可能性があるが、半導体レーザーにおいて、通常のシングルモードを用いる場合、おおよそ1〜10mm程度の光路長差は許容できる。なお、比較的高価であるが、スペクトル線幅が狭い半導体レーザー(例えば、DFB(Distributed Feedback)レーザー)を用いる場合、さらに大きな光路長まで許容できる。
【0079】
半導体レーザー1から照射されたレーザー光30は、コリメータレンズ9を介して平行な光となる。アナモルフィックプリズム12によって、ビームの断面強度分布をほぼ円形にすることが好ましい。円形に形成されたレーザー光は、特定の方向の直線偏光を有する。
【0080】
光量調整用偏光素子13は、その透過軸を入射光の光軸の回りに回転できるように構成され、これによって、特定の方向の直線偏光を透過させることでき、入射光の光量を調整することができる。また、レーザー光源からのレーザー光の直線偏光の消光比を向上させ、より高品質の直線偏光にすることができる。入射光用二分の一波長板11は、その光学軸を入射光の光軸の回りに回転できるように構成される。二分の一波長板11によれば、入射光の偏光方向を光学軸との角度の2倍だけ変えることができる。このため、光学軸の方向を適宜設定すれば、偏光ビームスプリッタへ入射する入射光の偏光方向を適宜設定することができるので、境界面で反射されるS偏光(照明光)と境界面を透過するP偏光(参照光)の光量の比率を任意に変更することができる。したがって、計測対象の態様(透過、全反射)に応じて、かかる比率を最適化し、適当な干渉縞パターンを取得することができる。
【0081】
また、四分の一波長板23、四分の一波長板24及び反射素子25は、偏光ビームスプリッタ20の各表面に密着させて設けることが好ましい。また、四分の一波長板5も偏光ビームスプリッタ20の出射面に密着させて設けることが好ましい。これによって、光学ユニットを小型化することができる。また、光学素子の表面での反射、散乱などによる迷光を抑制でき、ノイズを低減できる。
【0082】
図9は、本計測装置の第2の変形例である。同図に示す装置は、撮像手段7側にテレセントリック光学系15,16,17を配置した点で、
図8に示した装置とは異なる。本変形例は、テレセントリック光学系によって計測対象の映像情報も取得することが可能であり、三次元形状だけではなく表面画像情報も必要な用途、例えばロボットアームなどに搭載し、計測対象の位置へアクセスする場合に好ましい。
【0083】
具体的なテレセントリック光学系の一例として、撮像手段側の四分の一波長板5と相対的位相差検出用偏光素子6との間に、中継レンズ15、中継レンズ17を配置する。測定精度を向上させるため、中継レンズ15と中継レンズ17との間に、アパーチャ16を適宜設けることが好ましい。計測対象からの物体光は、通常、様々な方向の成分を含んでいるが、アパーチャー16の開口径を適度に設定することによって、物体光において、参照光と略同一となるような成分のみを抽出することができるので、撮像面にノイズとなる不要な細かい干渉縞が生じるのを防ぐことができる。
【0084】
撮像手段7の大きさに応じて、テレセントリック光学系は、適宜、倍率を選択してよい。また、可変ズームの機能を有するテレセントリック光学系を配置してもよい。また、両側テレセントリック光学系であることが好ましい。両側テレセントリック光学系とは、入射瞳と射出瞳の両方が無限遠方に位置する光学系である。
【0085】
本変形例によれば、三次元形状計測において計測対象のホログラム画像を取得するだけでなく、テレセントリック光学系によって計測対象が撮像面に結像するため、撮像手段7で通常の画像(映像)も撮像することができる。通常の画像撮像用の光源としては、計測対象を照明する照明光をそのまま利用すると、観察位置を移動させながら観察する場合は干渉縞の影響は小さいが、静止した状態では干渉縞の影響によって観察し難くなる。このため、観察する際には、入射光用二分の一波長板11を回転させて参照光の光量をホログラム画像を取得する場合に比べて少なくし、より好ましくは参照光を最小にし、計測対象への照射光から映像画像を得ることが好ましい。
さらに、テレセントリック光学系の光学的な作用によって、3次元物体を撮像面近傍へ仮想的に移動させたような効果が生じるため、微細な凸凹などからの高周波成分も分解能良くデジタルホログラフィーで計測することが可能となる。
【0086】
また、撮像手段が取得した映像は、本計測装置を搭載したロボットアームの制御、計測結果の補足情報として利用することができる。さらに、ロボットアームを操作するためのCCDカメラを別途設けなくてもよいので、簡易な計測システムを構成することができる。
【0087】
図10は、本計測装置の第3の変形例である。同図に示す装置は、物体側にテレセントリック光学系を配置した点で、
図8に示した装置とは異なる。本変形例は、比較的大きな計測対象(例えば、10〜30cm程度)を計測する場合に好ましい。本変形例では、物体光と参照光との光路差が大きくなるため、レーザー光源として、コヒーレント長の長い気体レーザー又
は固体レーザーを用い、光ファイバによりレーザー光を光学ユニットに供給することが好ましい。
【0088】
テレセントリック光学系として、具体的には、計測対象10と四分の一波長板23との間に、中継レンズ45、アパーチャ46、中継レンズ47を配置する。前述のとおり、アパーチャ46によって、測定精度を向上させることができる。また、両側テレセントリック光学系を構成してもよいが、像側テレセントリック光学系を採用することが好ましい。像側テレセントリック光学系とは、射出瞳が無限遠方に位置する光学系である。像側テレセントリック光学系であれば、ズームの倍率を大きく設定する場合でも、対物側の中継レンズには比較的小さな開口のレンズを用いることができる。また、像側テレセントリック光学系であれば、光学ユニットから撮像面に到達する物体光は、撮像面のいずれにおいても光軸に垂直になるため、垂直に入射する参照光と大きな交叉角が生じない。このため、計測対象が大きい場合であっても、高精度の三次元形状計測が可能である。
【0089】
光源から供給されるレーザー光は、光ファイバ、コリメータレンズを介して光学ユニット2に照射される。照明光は、テレセントリック光学系を介して計測対象へ照射され、計測対象から反射した物体光は、再びテレセントリック光学系を介して光学ユニット2に入射する。
図10においても、テレセントリック光学系のズーム機能によって、計測対象の映像を撮像手段7で得ることは可能である。
図10では
図9の装置とは異なり撮像対象のみが撮像手段7に縮小投影され、参照光のパターンは縮小されない点に特徴がある。計測対象が大きな場合、撮像面上には、テレセントリック光学系のズーム機能によって縮小された物体光と、参照光との干渉縞が記録される。参照光は、テレセントリック光学系を介さず、縮小されていないので、干渉縞の間隔のオーダーは変わらない。このため、
図10のテレセントリック光学系を採用する場合でも、撮像素子の画素ピッチは変更しなくても大きな計測対象をサンプリングできる。
【0090】
図11は、本計測装置の第4の変形例である。同図に示す装置は、S偏光を参照光として撮像手段7側に反射させるように偏光ビームスプリッタ20を構成し、偏光ビームスプリッタ20を透過したP偏光を円環状の反射面を有する反射素子25によって照明光とし、照明光拡散手段18を計測対象近傍に設けた点で、
図10に示した装置とは異なる。計測対象の表面の反射率が高い場合や、傾斜が大きい場合は、計測対象に対して垂直に照明光を照射すると、反射した物体光が光路から大きく外れてしまい計測できないことがある。この点、
図11の装置によれば、照明光拡散手段18によって斜め方向からの拡散照明光を用いるので、本変形例は、反射率の高い計測対象(例えば、鏡面)、傾きが比較的大きい傾斜を含む計測対象を計測する場合に好ましい。
【0091】
光学ユニット2に入射したレーザー光30は、偏光ビームスプリッタ20によってP偏光とS偏光の二光束に分割される。S偏光は参照光として撮像手段7の方へ反射する。一方、P偏光は、照明光として偏光ビームスプリッタ20の境界面(反射面)を透過し、四分の一波長板24を通過し、反射素子25によって再び偏光ビームスプリッタ20の境界面(反射面)に向けて反射する。反射素子25は、円環状の反射面を有するミラーであり、その中心部分は光を反射しないように構成される。これによって、照明光は円環状の光となる。照明光は、四分の一波長板24を2回通過しているので、S偏光となり、偏光ビームスプリッタ20の境界面で計測対象10の方へ反射して、テレセントリック光学系に入射する。
【0092】
中継レンズ45を透過した円環状の照明光は、中継レンズ45の対物側の適宜の位置に配置された照明光拡散手段18によって、計測対象の中心部へ向かって拡散する。照明光拡散手段18は、HOE、フレネルレンズ、拡散板などによって構成されてもよい。この場合、照明光は、顕微鏡におけるいわゆる暗視野照明のような照明光となる。計測対象の表面で乱反射した光のうち光軸方向の光は、物体光としてテレセントリック光学系を介して、偏光ビームスプリッタ20に入射する。S偏光の物体光は、偏光ビームスプリッタの境界面を透過し、撮像手段7へ照射される。
【0093】
このように、本変形例では、計測対象に対して、略垂直に照明光を照射するのではなく、斜め方向から拡散した照明光を照射するので、計測対象で反射された物体光の少なくとも一部を取り込むことができる。このため、本変形例によれば、計測対象が反射率の高い物体である場合でも、従来の光学系とは異なり、計測対象の精密な三次元形状計測が可能である。また、計測対象が大きな傾きを有する場合でも、計測対象の傾きを非接触で計測することができる。さらに、計測対象が光を散乱させるような表面を有する場合でも、斜め方向から様々な入射角度のランダムな拡散照明で照らせば、計測対象の表面で散乱されて生じる物体光において、少なくとも一部は参照光と略同軸な成分を有する。このため従来は難しかった光を散乱させるような表面を有する計測対象についても三次元形状の計測も可能となる。
【0094】
図12は、本計測装置の第5の変形例である。本変形例では、光学ユニット2は、ホログラフィック光学素子によって構成される。光学ユニット2は、光束分割用HOE26、照明用HOE27、及び干渉用HOE28を備える。計測対象面100と照明用HOE27及び干渉用HOE28との間の距離f1と、干渉用HOE28と撮像面70との距離f2とは、計測装置及び計測対象の態様に応じて、適宜設定してよい。各HOEも計測装置及び計測対象の態様に応じて適宜設定してよい。
【0095】
光束分割用HOE26は、レーザー光源1から供給されるレーザー光30をP偏光とS偏光とに分割して、一方(例えば、S偏光)を照明用HOE27に向けて出射し、他方(例えば、P偏光)を干渉用HOE28に向けて出射する。
【0096】
照明用HOE27は、干渉用HOE28の周囲に設けられており、S偏光の照明光を拡散させて、計測対象10を周辺から照射する拡散照明光31を生成する。干渉用HOE28は、S偏光の物体光32を透過させて撮像手段7に向けて集束させ、P偏光の参照光33を撮像手段7に向けて反射する。
【0097】
図12の装置によれば、レーザー光源1から供給されたレーザー光が、光束分割用HOE26によってS偏光とP偏光とに分割され、S偏光が照明用HOE27に向けて射出され、P偏光が干渉用HOE28に向けて出射される。照明用HOE27に入射したS偏光は、拡散照明光31として計測対象10に向けて斜めから照射される。計測対象から反射されたS偏光の物体光32は、干渉用HOE28を透過して、撮像手段7に集光する。一方、干渉用HOE28に向けて出射されたP偏光は、干渉用HOE28によって参照光33として撮像手段7に向かって反射する。参照光も干渉用HOE28によって適宜集束させてよい。その後、円偏光変換用四分の一波長板5及び相対的位相差検出用偏光素子6によって物体光と参照光の相対的位相差を持つホログラムが撮像される。また、
図12に例示した装置において、光学ユニットと、計測対象及び/又は撮像手段との間に、中継レンズ又はHOE及びアパーチャなどから構成されるテレセントリック光学系を配置してもよい。
【0098】
以上で説明した各装置の構成は一実施形態であり、各装置に限定されるものではなく、相互に適用可能である。また、テレセントリック光学系によって計測対象を縮小して撮像したが、微小な計測対象について、計測対象を拡大してホログラムを撮像してもよい。このような用途として顕微鏡などに使用することができる。
【0099】
[実施例]
以下、本発明の三次元形状計測装置及び三次元形状計測方法の実施例について説明する。
【0100】
図13は、本計測装置の写真である。本計測装置は、レーザー光源(図示省略)、二分の一波長板11、偏光ビームスプリッタ20、四分の一波長板23、四分の一波長板24、ミラー25、円偏光変換用四分の一波長板5、相対的位相差検出用偏光素子6、CCDカメラ7、計測対象ホルダ110を備える。装置全体の大きさは、約250×250[mm]であり、小型コンパクトである。本実施例において使用したレーザー光源は、LASOS社製の型番LGK7654−8(ビーム径φ1.9mm、発光波長532nm)であり、撮像手段は、IMAGING SOURCE社製の型番DFK72BUC02(CMOSタイプ、撮像画像サイズ:2048×1536pixel、素子間距離4.4μm)であった。
【0101】
はじめに、平凸レンズを計測対象ホルダ110に載置し、4枚の干渉縞パターンを撮像し、情報処理手段が各干渉縞パターンを取り込む(
図6のステップ202)。
図14(A)は、計測対象である透明な平凸レンズの写真であり、5×4[mm]の計測範囲も示している。
【0102】
図15(A)(B)(C)(D)は、各々、相対的位相差検出用偏光素子6の回転角度がα=0°、45°、90°、135°の場合の干渉縞パターンである。情報処理手段は、これらの干渉縞パターンに基づいて、各種処理を実行し、物体光の位相分布を算出した(
図6のステップS204からS208)。
図16(A)は、算出した物体光の位相分布である。次いで、連結処理を実行し(
図6のステップS210)、連結処理後の物体光の位相分布を取得した。
図16(B)は、連結処理後の物体光の位相分布であり、濃淡で位相量を示している。最後に、干渉測量法を用いて計測対象の三次元形状を再生した(
図6のステップS212)。
図17は、再生された透明な平凸レンズの三次元形状である。
【0103】
平凸レンズの三次元形状計測と同様に、全反射の平面ミラーについても三次元形状計測を実施した。
図14(B)は、計測対象である平面ミラーであり、計測対象の概ね中央における5×4[mm]の計測範囲も示している。
【0104】
図18(A)(B)(C)(D)は、各々、相対的位相差検出用偏光素子6の回転角度がα=0°、45°、90°、135°の場合の平面ミラーの干渉縞パターンである。
図19(A)は、算出した平面ミラーからの物体光の位相分布である。
図19(B)は、連結処理後の平面ミラーからの物体光の位相分布である。
図20は、再生された平面ミラーの三次元形状である。
【0105】
さらに、実施例として、光学計測機の校正などに用いられる段差マスタを計測した。
図21(A)は、計測対象の段差マスタの写真であり、この段差マスタは、
図21(B)に示すとおり、計測範囲において1μmの段差を含む。本実施例において使用した段差マスタは、ミツトヨ社製の516シリーズの型番「セラミックス製516−498」である。この段差マスタを撮像し、撮像したホログラム画像に基づいて三次元形状を計測した。再現性の確認のため、計測は10回行った。
【0106】
図22は、段差マスタの計測結果であり、段差の計測値が10回分示されている。計測結果によれば、段差マスタの基準値1μmに対して、平均誤差は0.187μmであった。本実施例では、情報処理手段として、一般的なパーソナルコンピュータ(プロセッサ:corei7 3.2GHz,メモリ:3GB)を使用した。
図6に示す三次元形状計測の全ステップの処理時間は、約1.5秒であった。計測処理をGPUにおいて実行すれば、リアルタイムでの三次元形状計測も可能である。
【0107】
以上説明したとおり、本発明によれば、相対的位相差検出用偏光素子を回転させることによって物体光と参照光との相対的位相差を制御することができるので、複数の異なる位相状態のホログラム画像を取得することができる。特に、相対的位相差検出用偏光素子を45°ずつ回転させれば、4種類のホログラム画像を撮像することができる。また、本発明の計測装置は、ピエゾ素子を使用しなくてもよいので、振動に強く、低コストである。さらに、一体化した光学ユニットとすれば、小型、コンパクト、簡易な構造とすることができ、装置それ自体を適宜移動させながら使用することができる。さらに、本発明の一態様によれば、透明な計測対象、全反射の計測対象、大きな傾斜を有する計測対象、及び光を散乱させる表面を有する計測対象についても三次元形状計測が可能である。