(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385301
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】テストパターンおよび電気的導通検査プローブを用いて、3次元の物体の印刷中に動作不能インクジェットを検知するシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/106 20170101AFI20180827BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20180827BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20180827BHJP
【FI】
B29C64/106
B33Y30/00
B33Y10/00
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-52734(P2015-52734)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2015-196385(P2015-196385A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】14/231,390
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・エム・ムーア
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・エム・テレロ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・エイ・イリザリー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジー・シェルハート
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−170569(JP,A)
【文献】
特開2008−23886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/106
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を形成するプリンタであって、
表面を有する導電性下地と、
印刷ヘッド内のインクジェットを通して非導電性インクを前記導電性下地の前記表面上に吐出するよう構成される前記印刷ヘッドと、
導電性部材と、
前記導電性部材に動作可能に接続する電流センサであって、前記導電性部材内で電流が検知されると、電気信号を生成するよう構成される電流センサと、
前記印刷ヘッドと向かい合う第1の位置と前記導電性部材と向かい合う第2の位置との間で前記導電性下地を移動させるよう構成される下地搬送部と、
前記導電性部材に動作可能に接続するアクチュエータであって、前記導電性下地が前記第2の位置のときに前記導電性部材を前記導電性下地に向けて移動させるよう構成されるアクチュエータと、
前記印刷ヘッド、前記下地搬送部、および前記アクチュエータに動作可能に接続する制御装置であって、前記印刷ヘッドを操作して、所定のパターンに準拠して前記導電性下地の前記表面上に前記非導電性インクを吐出させ、前記下地搬送部を選択的に操作し、前記アクチュエータを操作して、前記導電性部材を前記導電性下地に向けて所定の距離だけ移動させ、前記電流センサにより生成される前記信号を受け取り、前記電流センサから受け取られる前記信号および前記所定のパターンを参照して、前記印刷ヘッド内の動作不能インクジェットを検知するよう構成される制御装置と、を含むプリンタ。
【請求項2】
前記所定のパターンを参照して配列される複数の導電性部材と、
前記複数の導電性部材と1対1の関係で動作可能に接続する複数の電流センサであって、前記電流センサが動作可能に接続する前記導電性部材内で電流が検知されると、電気信号を生成するようそれぞれ構成される複数の電流センサと、をさらに含み、
前記制御装置が、各電流センサに操作可能に接続し、前記複数の電流センサにより生成される前記電気信号を参照して、動作不能インクジェットを検知するようさらに構成される、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記所定のパターンと、前記複数の導電性部材および前記複数の電流センサの前記配列とが、前記印刷ヘッド内のインクジェットの配列に対応する、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
各導電性部材が、
前記導電性部材の残りの部分に対して移動可能な端部と、
前記導電性部材の前記端部を前記残りの部分から離すよう構成される付勢部材と、をさらに含む、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項5】
物体を形成するプリンタであって、
表面を有する導電性下地と、
前記印刷ヘッド内のインクジェットを通して非導電性インクを前記導電性下地の前記表面上に吐出するよう構成される印刷ヘッドと、
導電性部材と、
前記導電性部材に動作可能に接続する電流センサであって、前記導電性部材内で電流が検知されると、電気信号を生成するよう構成される電流センサと、
前記印刷ヘッドおよび前記導電性部材に動作可能に接続する第1のアクチュエータであって、前記印刷ヘッドが前記導電性下地の前記表面と向かい合い、前記導電性部材が前記導電性下地の前記表面と向かい合わない第1の位置と、前記印刷ヘッドが前記導電性下地の前記表面と向かい合わないで、前記導電性部材が前記導電性下地の前記表面と向かい合う第2の位置との間で前記印刷ヘッドおよび前記導電性部材を移動させるよう構成される第1のアクチュエータと、
前記導電性部材に動作可能に接続する第2のアクチュエータであって、前記導電性部材が前記第2の位置のときに前記導電性部材を前記導電性下地に向けて移動させるよう構成される第2のアクチュエータと、
前記印刷ヘッド、前記第1のアクチュエータ、および前記第2のアクチュエータに動作可能に接続する制御装置であって、前記印刷ヘッドを操作して、所定のパターンに準拠して前記導電性下地の前記表面上に前記非導電性インクを吐出させ、前記第1のアクチュエータを選択的に操作し、前記第2のアクチュエータを操作して、前記導電性部材を前記導電性下地に向けて所定の距離だけ移動させ、前記電流センサにより生成される前記信号を受け取り、前記電流センサから受け取られる前記信号および前記所定のパターンを参照して、前記印刷ヘッド内の動作不能インクジェットを検知するよう構成される制御装置と、を含むプリンタ。
【請求項6】
前記所定のパターンを参照して配列される複数の導電性部材と、
前記複数の導電性部材と1対1の関係で動作可能に接続する複数の電流センサであって、前記電流センサが動作可能に接続する前記導電性部材内で電流が検知されると、電気信号を生成するようそれぞれ構成される複数の電流センサと、をさらに含み、
前記制御装置が、各電流センサに操作可能に接続し、前記複数の電流センサにより生成される前記電気信号を参照して、動作不能インクジェットを検知するようさらに構成される、請求項5に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記所定のパターンと、前記複数の導電性部材および前記複数の電流センサの前記配列とが、前記印刷ヘッド内のインクジェットの配列に対応する、請求項6に記載のプリンタ。
【請求項8】
各導電性部材が、
前記導電性部材の残りの部分に対して移動可能な端部と、
前記導電性部材の前記端部を前記残りの部分から離すよう構成される付勢部材と、をさらに含む、請求項6に記載のプリンタ。
【請求項9】
3次元の物体を形成するプリンタ内に組み込まれて、動作不能インクジェットを検知する装置であって、
表面を有する導電性下地と、
導電性部材と、
前記導電性部材に動作可能に接続する電流センサであって、前記導電性部材内で電流が検知されると、電気信号を生成するよう構成される電流センサと、
下地搬送部および前記導電性部材に動作可能に接続する第1のアクチュエータであって、前記導電性下地が前記導電性部材と向かい合わない第1の位置と、前記導電性下地が前記導電性部材と向かい合う第2の位置との間で前記導電性下地を移動させるよう構成される第1のアクチュエータと、
前記導電性部材に動作可能に接続する第2のアクチュエータであって、前記導電性部材が前記導電性下地と向かい合うときに前記導電性部材を前記導電性下地に向けて移動させるよう構成される第2のアクチュエータと、
前記第1のアクチュエータおよび前記第2のアクチュエータに動作可能に接続する制御装置であって、前記第1のアクチュエータを操作して、前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記導電性下地を移動させ、前記第2のアクチュエータを操作して、前記導電性部材を前記導電性下地に向けて所定の距離だけ移動させ、前記電流センサにより生成される前記信号を受け取り、前記導電性下地上に材料を吐出するように印刷ヘッドを操作するために用いられる所定のパターン、および前記電流センサから受け取られる前記信号を参照して、前記印刷ヘッド内の動作不能インクジェットを検知するよう構成される制御装置と、を含む装置。
【請求項10】
前記所定のパターンを参照して配列される複数の導電性部材と、
前記複数の導電性部材と1対1の関係で動作可能に接続する複数の電流センサであって、前記電流センサが動作可能に接続する前記導電性部材内で電流が検知されると、電気信号を生成するようそれぞれ構成される複数の電流センサと、をさらに含み、
前記制御装置が、各電流センサに操作可能に接続し、前記複数の電流センサにより生成される前記電気信号を参照して、動作不能インクジェットを検知するようさらに構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記所定のパターンと、前記複数の導電性部材および前記複数の電流センサの前記配列とが、前記印刷ヘッド内のインクジェットの配列に対応する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
各導電性部材が、
前記導電性部材の残りの部分に対して移動可能な端部と、
前記導電性部材の前記端部を前記残りの部分から離すよう構成される付勢部材と、をさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
請求項10に記載の装置であって、
前記導電性部材に近接して配置されたワイパをさらに含み、
前記制御装置は、前記ワイパに動作可能に接続するアクチュエータに動作可能に接続し、前記制御装置はさらに、当該アクチュエータを操作することで、前記導電性部材の移動中に前記導電性部材を前記ワイパに接触させて、非導電性インクを前記導電性部材から除去するように構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される装置は、3次元の物体を作成するプリンタに関し、より具体的には、そのようなプリンタ内の動作不能インクジェットを正確に検知することに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル3次元造形とは、デジタル積層造形としても知られる、デジタルモデルからほとんど全ての形状の3次元の固体物体を作成する処理である。3次元印刷とは、1つ以上の印刷ヘッドが下地の上に異なる形状の材料の層を連続して吐出する積層処理である。3次元印刷は、切断や穴あけなどの切削処理により材料を加工物から取り除くことにその大部分を依存する、従来の物体造形技術とは区別可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのプリンタを用いる3次元の物体の製造には、数時間、物によっては数日かかる可能性がある。3次元プリンタを用いて3次元の物体を作成する際の課題の一つは、物体を形成する材料の小滴を吐出する印刷ヘッド内のインクジェットの機能を一定に保つことである。物体の印刷中、1つ以上のインクジェットが、そのインクジェットに対して通常とは異なる角度で材料を吐出することにより劣化し、そのインクジェットが吐出すべき大きさの小滴よりも小さな小滴を吐出したり、小滴を全く吐出しなくなったりする可能性がある。これらのような動作の欠陥のいずれかを抱えたインクジェットは、動作不能インクジェットとして知られている。物体の印刷中に1つ以上のインクジェットの動作状態が劣化した場合、印刷動作が完了するまで、印刷されている物体の品質を評価することはできない。したがって、長い時間または数日かかる印刷作業では、印刷ヘッド内の動作不能インクジェットにより、仕様書とは異なる物体が作成されてしまう可能性がある。そのような物体が検知されると、その印刷された物体を廃棄して、印刷ヘッドの修理処理を行い、インクジェットの機能を回復させ、その印刷作業を繰り返す。印刷を行いながら、動作不能インクジェットを検知可能な装置があれば、物体の印刷中に修理処理が可能となり、適切に形成される物体の生成が可能な印刷を継続することができる。このようにして、プリンタの生産歩留りを向上させ、印刷の効率を良くすることができる。この装置は、透明な材料、色の付いた材料、半透明な材料、燐光性材料、およびワックス状の材料などの多くの種類の印刷材料を吐出する、動作不能インクジェットを検知可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
3次元プリンタ内で動作不能インクジェットの検知を可能にする装置を開示する。この装置は、表面を有する導電性下地と、導電性部材と、導電性部材に動作可能に接続する電流センサであって、導電性部材内で電流が検知されると、電気信号を生成するよう構成される電流センサと、下地搬送部および導電性部材に動作可能に接続する第1のアクチュエータであって、導電性下地が導電性部材と向き合わない第1の位置と、導電性下地が導電性部材と向かい合う第2の位置との間で導電性下地を移動させるよう構成される第1のアクチュエータと、導電性部材に動作可能に接続する第2のアクチュエータであって、導電性部材が導電性下地と向かい合うときに導電性部材を導電性下地に向けて移動させるよう構成される第2のアクチュエータと、第1のアクチュエータおよび第2のアクチュエータに操作可能に接続する制御装置であって、第1のアクチュエータを操作して、第1の位置と第2の位置との間で導電性下地を移動させ、第2のアクチュエータを操作して、導電性部材を導電性下地に向けて所定の距離だけ移動させ、電流センサにより生成される信号を受け取り、印刷ヘッドを操作して、導電性下地上に材料を吐出するために用いられる所定のパターン、および電流センサから受け取られる信号を参照して、印刷ヘッド内の動作不能インクジェットを検知するよう構成される制御装置と、を含む。
【0005】
動作不能インクジェットを検知する装置を組み込んだプリンタを開示する。このプリンタは、表面を有する導電性下地と、印刷ヘッド内のインクジェットを通して非導電性インクを導電性下地の表面上に吐出するよう構成される印刷ヘッドと、導電性部材と、導電性部材に動作可能に接続する電流センサであって、導電性部材内で電流が検知されると、電気信号を生成するよう構成される電流センサと、印刷ヘッドと向かい合う第1の位置と導電性部材と向かい合う第2の位置との間で導電性下地を移動させるよう構成される下地搬送部と、導電性部材に動作可能に接続するアクチュエータであって、導電性下地が第2の位置のときに導電性部材を導電性下地に向けて移動させるよう構成されるアクチュエータと、印刷ヘッド、下地搬送部、およびアクチュエータに動作可能に接続する制御装置であって、印刷ヘッドを操作して、所定のパターンを参照し、導電性下地の表面上にインクを吐出し、下地搬送部を選択的に操作し、アクチュエータを操作して、導電性部材を導電性下地に向けて所定の距離だけ移動させ、電流センサにより生成される信号を受け取り、電流センサから受け取られる信号および所定のパターンを参照して、印刷ヘッド内の動作不能インクジェットを検知するよう構成される制御装置と、を含む。
【0006】
以下の記載では、3次元印刷中に動作不能インクジェットを検知する装置またはプリンタの前述の様態およびその他の特徴を下記の添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図2は、印刷動作中に印刷ヘッド内の動作不能インクジェットを検知可能なモジュールを配置するための筺体内の空間を示す、筺体を有する3次元プリンタの正面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示された空間に嵌合する、動作不能インクジェットを検知するモジュールの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のモジュールを動作させる方法のフローチャートである。
【
図5】
図5は、3次元の物体の印刷中に動作不能インクジェットを検知するモジュールを有するプリンタの別の実施形態を示す図である。
【
図6】
図6は、印刷ヘッド内のインクジェットの配列に対応する導電性部材の配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示される装置の環境、およびその装置の詳細の一般的な理解を得るために、これらの図面を参照する。これらの図面では、同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0009】
図1には、3次元の物体すなわち部品10を作成するプリンタ100内の構成部品の構成が示されている。本明細書で使用される用語「3次元プリンタ」とは、物体の画像データを参照し、材料を吐出して3次元の物体を形成する全ての装置のことを指す。このプリンタ100は、支持材料容器14、造形材料容器18、一対のインクジェット印刷ヘッド22および26、造形下地30、平面支持部材34、支柱部材38、アクチュエータ42、および制御装置46を含む。印刷ヘッド22と支持材料容器14は導管50により接続され、印刷ヘッド26と造形材料容器18は導管54により接続される。制御装置46は、この制御装置に動作可能に接続するメモリ内の3次元の画像データを参照し、両方のインクジェット印刷ヘッドを操作して、各印刷ヘッドに供給された支持材料および造形材料を吐出する。製造される部品10の構造は造形材料により形成され、支持構造体58は支持材料により形成され、この支持構造体58により、部品を製造する際、造形材料が固化するまでの間、その形状を維持することができる。部品の完成後、この支持構造体58は、洗浄、吹き飛ばし、あるいは溶かすことにより取り除かれる。
【0010】
また、制御装置46は少なくとも1つのアクチュエータ42(場合によっては、より多くのアクチュエータ42)にも操作可能に接続して、互いに関連する平面支持部材34、支柱部材38、および印刷ヘッド22および26の移動を制御する。すなわち、1つ以上のアクチュエータは、印刷ヘッドを支持する構造体に動作可能に接続して、平面支持部材の表面を参照して、印刷ヘッドを処理方向とクロス処理方向で移動させることができる。あるいは、1つ以上のアクチュエータは、平面支持部材34に動作可能に接続して、製造される部品を載せている表面を、平面支持部材34の平面での処理方向とクロス処理方向で移動させることができる。本明細書で使用される、用語「処理方向」とは、平面支持部材34の表面の一方の軸に沿った移動のことを指し、「クロス処理方向」とは、平面支持部材の表面の処理方向の軸と直交する軸に沿った移動のことを指す。これらの方向は、
図1で英字「P」および「C−P」で示されている。印刷ヘッド22および26と支柱部材38は、平面支持部材34と垂直な方向にも移動可能である。この方向は、本明細書では垂直方向と呼ばれ、支柱部材38と平行であり、
図1の英字「V」で示される。垂直方向の移動は、支柱部材38に動作可能に接続する1つ以上のアクチュエータ、印刷ヘッド22および26に動作可能に接続する1つ以上のアクチュエータ、あるいは支柱部材38と印刷ヘッド22および26に動作可能に接続する1つ以上のアクチュエータにより実行可能である。これらの種々の構成内のアクチュエータが制御装置46に動作可能に接続し、この制御装置46がこれらのアクチュエータを操作して、支柱部材38、印刷ヘッド22および26、またはそれらの両方を垂直方向に移動させることができる。
【0011】
図2には、筺体を有する3次元プリンタが示されている。このプリンタ60は、筺体64を有する。筺体64の内部は、ほぼ立方体形状の6つのコンパートメントに分けられている。
図2では、この筺体64はドアを省略して示されており、このドアを閉めることによりコンパートメントは隠される。コンパートメント72は、移動可能なプラットフォーム82の上に載った平面支持体78を含む。移動可能なプラットフォーム82は1つ以上のアクチュエータおよびガイド部材(図示せず)と共に構成され、この構成により、移動可能なプラットフォーム82は、垂直方向の上下移動が可能になる。この平面支持体78の表面に、3次元の物体が形成される。いくつかの実施形態では、この印刷ヘッド86は、コンパートメント72の後壁からコンパートメントの表面の開口の方向に平面支持体78の長さとほぼ同じ長さを有する。これらの実施形態では、印刷ヘッド86は、直線の往復移動だけを行えばいいよう、筺体64の側壁96と側壁100の間の空間で支持部材92に取り付けられる。他の実施形態では、印刷ヘッド86は、コンパートメント72の後壁からコンパートメントの表面の開口への方向に平面支持体78の長さより短い長さを有する。これらの実施形態では、印刷ヘッド86は、コンパートメント72の上方の平面の2つの直交する方向に往復移動を行うよう、筺体64の側壁96と側壁100の間の空間で支持部材92に取り付けられる。これらの種々の実施形態では、1つ以上のアクチュエータ104が、印刷ヘッド86に動作可能に接続する。制御装置108はアクチュエータ104を操作して、印刷ヘッド86を支持部材92上で直線的に往復移動させる、あるいは印刷ヘッドを平面の2つの直交する方向で移動させる。印刷ヘッド86内のインクジェットを選択的に操作し、支持プラットフォーム82を垂直方向に移動させ、支持部材92に載った印刷ヘッド86を水平方向に移動させることにより、平面支持体78上で3次元の物体を形成することができる。
【0012】
図2の点線で輪郭のみ示されている領域112は、電気的導通をチェックすることにより、プリンタ60の動作不能インクジェットを検知するモジュールの配置位置を示している。上記の通り、物体の印刷中に、インクジェットが、完全にまたは部分的に材料を吐出しなくなることにより、あるいは、傾いた方向で不規則に材料を吐出することにより故障した場合、製造される物体は変形する。現在、このような変形は、物体の製造が完了するまで検知することはできない。以下により詳しく説明する通り、電気的導通をチェックする領域112を用いることにより、プリンタ60は、物体の製造中に動作不能インクジェットを検知するよう構成され得る。モジュール300内のいくつかの構成部品は、図で示される、横方向H、奥行方向D、および垂直方向Vに移動可能である。
【0013】
図3のブロック図には、物体の印刷中に動作不能インクジェットを検知するモジュールの一実施形態が示されている。モジュール300は、プリンタ60の領域112内に嵌合するよう構成されている。このモジュール300は、導電性下地304、下地搬送部308、複数の導電性部材312、1つ以上のアクチュエータ316、複数の電流センサ328、および制御装置320を含む。制御装置320およびアクチュエータ316は、モジュール300の外側に示されているが、これは説明だけを目的としたものである。モジュールの実装形態では、制御装置320はモジュール内にインストールされるプリント回路カード上に設けられ、アクチュエータもモジュールの筺体内に配置されている。制御装置320は、アクチュエータ316に操作可能に接続して、搬送部308を用いて下地304をH方向で双方向に移動させ、そして導電性部材312を有するプラットフォームを動かし、これらの導電性部材312は、図中に示される通り、往復垂直方向Vに延在する。導電性部材312および電流センサ328はアレイ内で配列され、この配列はテストされる印刷ヘッド内のインクジェットの配列に対応する。
図6にはその配列が示されている。各導電性部材312は、2つの円筒形の中空導体312a、312bを含むことができ、付勢部材324により導体312aが導体312bから離れるよう伸縮自在に配置される。別の実施形態では、導電性部材は、バネまたはその他の付勢部材により付勢されて、これらの電導体が取り付けられたプラットフォームから離れ得る個体の電導体である。このように付勢されることにより、これらの導体どうしの相対的な動き、またはこれらの導体が取り付けられたプラットフォームに対する動きに許容量が付与される。各導電性部材312は、電流センサ328に動作可能に接続する。制御装置320は、電流センサに操作可能に接続して(図示を簡素化するため、センサ328と制御装置320の間の接続を3つだけ示す)、導電性部材312に電流が流れているかどうかを検知する。
【0014】
下地304は導電性の平面下地である。例えば、導電性の平面下地はその表面が銅の層で覆われたプリント回路板でよい。下地搬送部308は、下地304を支持するローラ330に巻き付くエンドレスベルトとして示されており、アクチュエータ316のうちの1つがローラ330を駆動させて、下地304を図中に示される2つの位置の間で横方向Hに往復移動させることができる。一方の位置は、図中に示されている通り、複数の導電性部材312と向かい合う位置であり、他方の位置は、下記に説明する通り、印刷ヘッド86がモジュール内に移動したときに下地304が印刷ヘッド86と向かい合うことができる、現在の位置と隣接する位置である。この制御装置320は、スイッチなどを操作することにより、下地304を電流源332に動作可能に接続させるよう構成される。このモジュール300は、ユニットとしてプリンタ60に取り付け可能、および取り外し可能な装置として構成される。
【0015】
印刷動作中に動作不能インクジェットを検知するために、
図4に示される方法400を参照してモジュール300が操作される。この方法の説明では、処理があるタスクまたは機能を実行するという記載は、制御装置すなわち汎用プロセッサが、この制御装置すなわちプロセッサに動作可能に接続するメモリに格納されたプログラム命令を実行して、データを処理すること、あるいは、プリンタ内の1つ以上の構成部品を操作してタスクまたは機能を実行することを指す。上記に記載した制御装置320は、そのような制御装置すなわちプロセッサでよい。あるいは、制御装置320は、本明細書に記載される1つ以上のタスクまたは機能を実行するようそれぞれ構成される、複数のプロセッサならびに関連する回路および構成部品を用いて実装可能である。
【0016】
印刷動作中の所定の時間で、制御装置108(
図2)がアクチュエータ104を操作して、印刷ヘッド86を領域112内に配置されたモジュール300内に移動させる(ブロック404)。制御装置320がモジュール300内で印刷ヘッドを検知すると、この制御装置320はアクチュエータ316を操作して、搬送部308およびこの搬送部に載った下地304を印刷ヘッド86の向かい側の位置に移動させる(ブロック408)。次いで、制御装置320は信号を生成し制御装置108に送信し、印刷ヘッド内のインクジェットを動作させて、テストパターンを印刷させる(ブロック412)。ある実施形態では、印刷ヘッド内の各インクジェットが繰り返し動作し、インクジェットの向かい側の下地304の一部に材料のパイルを形成する。テストパターンを印刷した後、制御装置108は制御装置320用に信号を生成し、その信号に応じて、制御装置320はアクチュエータ316を操作して、下地304を複数の導電性部材312の向かい側に移動させる(ブロック416)。次いで、下地304は電流源332と接続し(ブロック420)、そして、アクチュエータを操作して、複数の導電性部材312を下地304に向けて所定の距離だけ下げる(ブロック424)。この距離は、導電性部材312と下地304が接触する地点で下地上に造形材料が存在しない場合、各導電性部材312が下地304に接触することが十分に可能な距離である。造形材料または支持材料が存在する場合、導電性部材312の端部は造形材料または支持材料と接触する。前述した通り、導電性部材の付勢動作により、導電性部材は材料の厚さ分を差し引くことができ、これにより、導電性部材の端部が所定の距離に達することを防ぐ。次いで、制御装置320は、導電性部材312に電流が流れていることを示す電流センサ328を検知する(ブロック428)。下地上に吐出される材料は導電性ではないため、電流は下地304に接触する導電性部材312にのみ流れる。したがって、制御装置320は、電流を通す導電性部材312に対応するインクジェットとして、動作不能インクジェットを特定し(ブロック432)、不具合のある印刷ヘッドを示す信号をプリンタの操作者用に生成する(ブロック436)。次いで、操作者は好適な操作を行うことができる。
【0017】
図5に示される別の実施形態では、エンドレスベルト308は、導電性の材料で形成されている、あるいは、エンドレスベルト308は、このベルトで形成された、または取り付けられた可撓性のある導電性の材料を有することができる。制御装置320は、ローラ330に動作可能に接続するアクチュエータ316を操作して、印刷ヘッド86がテストパターンを印刷可能な位置にベルトの一部を移動させ、次いで、ローラを逆に回転させ、テストパターンを評価する位置にそのベルトの一部を戻す。そこで、ベルト308に向けて導電性部材312を降ろし、導電性部材312を流れる電流を検知することにより動作不能インクジェットを特定する。動作不能インクジェットが特定されると、制御装置320はアクチュエータ316を操作してワイパ350の斜縁354を動かしてベルト308と接触させる。次いで、制御装置は、ローラ330を駆動させて、テストパターンを載せたベルトの一部を回転させて、ワイパを通過させ、下地から造形材料を取り除き、ワイパの下部に配置される回収容器内に取り除かれた材料を掃きとる。この図では、ワイパはローラ330のうちの一方に隣接する位置に示されているが、エンドレスベルトの下側に配置されてもよい。このワイパは、クリーニング液の供給源と流体接続する導管と共に構成することができる。クリーニング動作中、クリーニング液には圧力がかけられ、この圧力により、クリーニング液は導管を通り下地上に押し出され、ワイパが下地を掃く前に、造形材料を下地から取り除き易くする。この回収容器はモジュールから取り外せるよう構成可能であり、これにより、ときどき回収容器を空にすることができる。
【0018】
議論されている実施形態では、導電性下地にテストパターンが印刷される。インクジェットのテストが終了後、動作不能インクジェットが検知されなければ、印刷ヘッドを平面支持体78の上に移動させ、物体の印刷を続ける。次のインクジェットのテストの用意のため、下地をクリーニングする、あるいは交換する必要がある。いくつかの実施形態では、モジュール300を開き、下地を取り除き、モジュール内に新しい下地を取り付ける。
図5に示される実施形態では、ワイパを設けて、テストパターンを形成した材料を取り除き、回収容器内に落とす。