(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、真空断熱パネルの製造方法の実施形態について説明する。この実施形態に係る製造方法によって製造される真空断熱パネルは、例えば
図1に示すように、芯材1をステンレス鋼板製の外包材2で包み込み、その芯材1を包み込んだ外包材2の内部空間3を真空状態としたものである。
【0023】
芯材1は、製造して出来上がった真空断熱パネル10の外包材2が大気圧によって圧潰しないように、内側から外包材2を支持するものである。この芯材1には無機繊維が使用される。無機繊維としては、グラスウール、セラミックファイバー等が例示される。この芯材1には、バインダーを一切含まないものを使用することが望ましい。バインダーを含む芯材を使用すれば、経時的に芯材からアウトガスが発生し、断熱性能が経時的に悪化するおそれがあるからである。
【0024】
外包材2は、2枚の外包板2A,2Bで構成されている。これらの外包板2A,2Bには、表面粗さRaが0.2μm以下のステンレス薄鋼板が使用される。2枚の外包板2A,2Bは、周縁部の形状およびサイズが一致している。少なくとも一方の外包板2Bに膨出部4が形成されており、2枚の外包板2A,2Bを周縁部を揃えて重ね合わせることで、一方の外包板2Bの膨出部4の凹側面と、もう一方の外包板2Aとの間に内部空間3が形成される。この内部空間3に芯材1が収容される。図面に例示する2枚の外包板2A,2Bは、厚さ方向から視て矩形状のものとなっている。なお、表面粗さRaが0.2μm以下のステンレス薄鋼板を使用する理由については後に詳述する。
【0025】
この実施形態における真空断熱パネルの製造方法では、芯材1が含有する水分を取り除く水分除去工程と、芯材1を外包材2で包み込む芯材包込工程と、外包材2を溶接する溶接工程と、で主に構成されている。更に溶接工程は、芯材1を包み込んだ外包材2の周縁部の一部を残して溶接する封止前溶接工程と、当該一部を溶接により封止する封止溶接工程とを含んでいる。
【0026】
水分除去工程においては、芯材1を加熱処理することにより、芯材1が含有する水分を水分量が0.05重量%以下(好ましくは0.02重量%以下)となるまで取り除く。なお、芯材1の水分量を0.05重量%以下(好ましくは0.02重量%以下)とする理由については後に詳述する。
【0027】
芯材1の加熱処理後は、当該芯材1を低湿度雰囲気におきながら、芯材1が所定温度以下(例えば約20℃等の室温以下)に低下するまで放置する。芯材1を低湿度雰囲気におく形態の一例として、加熱処理後の芯材1をデジケータ内に入れておくことが挙げられる。
【0028】
芯材包込工程においては、芯材1の含有水分量が前記値以下となり、芯材1が所定温度まで低下した後に、当該芯材1を外包板2Bの膨出部4の凹側に収容して、2枚の外包板2A,2Bを周縁部を揃えて重ね合わせる。これにより、芯材1が外包材2で包み込まれた状態となる。
【0029】
封止前溶接工程においては、重ね合わせた2枚の外包板2A,2Bの周縁部を厚さ方向に加圧保持した状態で、
図2(a)に示すように、その周縁部7のうちの3辺近傍7a〜7cを大気中で溶接する。これにより、周縁部7のうちの残りの一辺近傍に、外包材2の内外を通気可能に連通する開口部6が残る。
【0030】
封止溶接工程においては、封止前溶接工程が施された、芯材1を包み込んだ外包材2を、圧力が1Pa以下の真空中におき、重ね合わせた2枚の外包板2A,2Bの周縁部7のうちの残りの1辺近傍7dを、厚さ方向に加圧保持しながら、
図2(b)に示すように、溶接して外包材2の開口部6を封止する。
【0031】
封止前溶接工程および封止溶接工程では、溶接方法としてシーム溶接を用いる。シーム溶接の代わりに、アーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接など他の溶接方法を用いることもできる。但し、外包板2A,2Bが薄いステンレス鋼板である場合は、シーム溶接を用いることが好ましい。これは、外包板2A,2Bが薄いステンレス鋼板であるため、膨出部を絞り加工により形成した場合は、周縁部にしわが生じていることがあり、しわが生じている周縁部を溶接により接合すると、2枚の外包板2A,2Bの隙間において溶接不良が発生する可能性が高いためである。溶接不良としては、溶け落ち等が挙げられる。そのため、外包板2A,2Bの上下から加圧しつつ溶接することが可能なシーム溶接を用いて、しわを潰しながら隙間なく溶接することが好ましい。
【0032】
<芯材が含有する水分量を0.05重量%以下とする理由>
つぎに、芯材1が含有する水分量を0.05重量%以下とする理由について説明する。
図3に、芯材1が含有する水分量をどの程度まで除去すれば、ある程度の断熱性能を維持することができるかを調査した結果示す。この図は、含有する水分量が異なる複数のグラスウールからなる芯材1をそれぞれ使用した真空断熱パネルを複数試作し、試作直後の熱伝導率と、熱伝導率の経時変化が概ね止まる3ヶ月後の熱伝導率とを調査した結果を示している。一般的に世の中で使用されている高性能な真空断熱パネルの、製造直後の熱伝導率の平均的なレベルである熱伝導率5mW/m・Kを許容熱伝導率の上限とした場合、この熱伝導率を満足するものは、芯材1の含有する水分量が0.05重量%程度である事がこの調査結果からわかる。なお、芯材1が含有する水分量の測定には、京都電子工業株式会社製の電量滴定式カールフィッシャー水分計を使用した。
【0033】
この調査結果により、グラスウールからなる芯材1の含有水分量を0.02重量%まで除去することにより、長期間良好な断熱性能を維持することが可能な真空断熱パネルを製造できることが確認できる。また、ある程度の熱伝導率の経時変化はあるものの、最終的には熱伝導率が5mW/m・K以下におさまることを期待できる芯材1の含有水分量として、0.05重量%が上限であることがわかる。このことから、本実施形態においては、芯材1の含有水分量を0.05重量%以下(好ましくは0.02重量%以下)とした。
【実施例1】
【0034】
以下、真空断熱パネルの製造方法の具体的な実施例について説明する。製造方法の実施に先立って、まず、次のような外包材2と芯材1を準備した。
芯材1を包み込む外包材2を構成する外包板2A,2Bには、寸法が220mm×220mm×厚さ100μmのステンレス箔(SUS304)を用いた。ステンレス箔として、表面粗さRaが、それぞれ0.05μm、0.12μm(約0.10μm)、0.19μm(約0.20μm)、0.31μm(約0.3μm)、0.39μm(約0.4μm)の5種類のステンレス箔を準備した。各表面粗さごとに3体ずつ、計15体の真空断熱パネルを製造することとした。なお、ステンレス箔の表面粗さは、表面、裏面とも同一である。また、同一の表面粗さのステンレス箔を両方の外包板2A,2Bに用いた。一方の外包板2Bには、プレス成形の絞り加工により、190mm×190mm×高さ5.0mmの膨出部4を設けた。
【0035】
先ず、水分除去工程について説明する。芯材1には、約1200g/m
2の目付のグラスウールを用いた。そして、このグラスウールを、あらかじめ大気雰囲気の電気炉に挿入して、温度200℃、3時間の加熱処理を行ったのち、炉から取り出し、すみやかに室温(20℃)、相対湿度30%のデシケータに移して30分間保持する冷却処理を行った。この加熱処理と冷却処理の条件は、予備実験を行って、この芯材1が含有する水分量が0.03〜0.04重量%となるように決定した条件である。
【0036】
その後、芯材包込工程として、冷却処理後の芯材1をデシケータから取り出し、外包板2A、芯材1、外包板2Bの順に重ね合わせた。このとき、芯材1は、外包板2Bに設けられている膨出部4の内部にすき間なく充填されるように収容した。以下では、外包板2Aと芯材1と外包材2Bとを重ね合わせたものを「パネル」と記す。
【0037】
続いて、溶接工程について説明する。本実施例における真空断熱パネルの製造方法では、溶接工程は、第一工程(封止前溶接工程)と、真空中で行う第二工程(封止溶接工程)に分かれる。
【0038】
溶接の第一工程として、「パネル」に対し、外包板2Aの周縁部と外包板2Bの周縁部をシーム溶接によって加圧しながら溶接して接合した。このシーム溶接は、矩形の外包板2A,2Bの3辺の外周に沿ってシーム溶接を3回に分けて、それぞれ直線状に溶接し、残りの1辺を開口部6として残した(
図2(a)参照)。
【0039】
溶接の第一工程に用いたシーム溶接機8(
図4参照)は、単相交流式で、上側電極12の形状は円盤状、下側電極13の形状は棒状である。なお、16は電極ベース、17は、上側電極12を支持するシームヘッド、18はシームヘッド17の移動用レールである。「パネル」を、テーブル14に固定して、下側電極13の上と、回転可能な上側電極12との間にはさみこみ、上側電極12が「パネル」を下側電極13方向に加圧しながら回転移動して外包板2Aの周縁部と外包板2Bの周縁部を溶接した。上側電極12は、直径が100mm、厚さ4mm、電極先端の曲率は20Rとした。下側電極13は、厚さ4mmのブロック状の電極を用いた。溶接条件は、加圧力:150N、溶接速度:1m/min、溶接電流:1.6kA、通電時間のon/off比は3ms/2msとした。
【0040】
続く溶接の第二工程は、溶接の第一工程を終了した「パネル」を
図5に示すような真空溶接機15の真空チャンバー9内に持ち込み、真空中において、開口部6を溶接して封止する工程である。真空溶接機15は、第一工程で用いた溶接機と同じ溶接機8が真空チャンバー9内に設置されてなるものである。
【0041】
この第二工程では、真空チャンバー9内のワーク用テーブル14上の所定位置に「パネル」を固定し、真空チャンバー9内の圧力が1Pa以下になるまで真空排気を行った。このとき、「パネル」の内部空間3は開口部6を通じて自ずと真空排気される。その後、「パネル」の開口部6を第一工程と同一の溶接条件でシーム溶接することにより封止し、これにより真空封止を完了した。この第二工程では、シーム溶接は、
図2(b)に示すように、その溶接線が、第一工程において形成されたシーム溶接の溶接線と交差するように行った。最後に、「パネル」の周縁部の溶接線の外側約10mmを切除して、外形寸法が200mm×200mm×厚さ約5mmの真空断熱パネルを製造した。
【0042】
なお、芯材1をデシケータから取り出してから、「パネル」を溶接の第二工程に用いる真空溶接機15の真空チャンバー9内に持ち込むまでの所要時間は約10分であり、第二工程の溶接により開口部6の封止が終わるまでの所要時間は、さらに約15分である。
【0043】
<製造した真空断熱パネルの断熱性能の経時変化の評価>
以上の実施例に係る製造方法によって製造した真空断熱パネルについて、断熱性能の経時変化を、次の環境負荷試験と熱伝導率測定の組み合わせによって評価した。
【0044】
まず、製造直後の真空断熱パネルの熱伝導率を測定し、そのあと、真空断熱パネルを、高温環境と低温環境の両方を繰り返す環境負荷試験に供した。詳しくは、真空断熱パネルを80℃の温度環境で12時間保持したあと、−15℃の温度環境で12時間保持し、その後は、これらの温度環境を12時間毎に交互に繰り返す温度サイクルを形成した。この環境負荷試験を開始して60日経過した時点で真空断熱パネルを取り出し、熱伝導率を測定した。熱伝導率の測定後には、再び、上記環境負荷試験を継続した。その後も60日経過ごとに同様に真空断熱パネルを取り出し、熱伝導率を測定し、環境負荷試験を継続した。
【0045】
熱伝導率の評価は、英弘精機社製の熱伝導率測定装置HC−074/200を用い、真空断熱パネルの中央部の平均温度が25℃となる条件で、ステンレス箔の表面粗さRaが異なる複数の真空断熱パネルについて熱伝導率を測定した。詳細には、ステンレス箔の表面粗さRaが同じ真空断熱パネル3体についてその平均値を求めて、ステンレス箔の表面粗さRaごとの熱伝導率とした。
【0046】
表1に、真空断熱パネルの製造直後から、環境負荷試験60日ごとの時点における熱伝導率の測定結果を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
この表1から、外包材に用いたステンレス鋼板の表面粗さRaが小さいほど、製造直後からの日数が経過しても熱伝導率の増大が小さいことが明らかである。特に、ステンレス鋼板の表面粗さRaが最も小さい0.05μmの真空断熱パネル(表1中にNo.Aで示すもの)は、製造直後の熱伝導率と比較して、180日後における熱伝導率が殆ど増加しておらず、断熱性能の劣化という点ではきわめて優秀な真空断熱パネルであった。
【0049】
ステンレス鋼板の表面粗さRaが最も小さい0.05μmの真空断熱パネル(表1中にNo.Aで示すもの)以外の真空断熱パネルは、製造直後から180日後までの間にそれぞれ熱伝導率の増大が認められるものの、どの真空断熱パネルも熱伝導率が大きく増大しているのは製造直後から60日後までの間であり、その後の変化は小さく熱伝導率は安定している。このことは、製造直後から60日後までに真空断熱パネルの内部空間の酸素が枯渇してしまったため、真空断熱パネルの内部空間においてガス成分になりうるものが多かったものほど、熱伝導率が大きい結果になったと考えられる。なお、真空断熱パネルの内部空間の酸素の枯渇と熱伝導率が大きくなることとの因果関係については、後に詳述する。
【0050】
真空断熱パネルの内部空間においてガス成分になりうるものとしては、芯材を構成する繊維に吸着して持ち込まれた水分、真空断熱パネルの内部空間に残留していたガス成分、外包材に使用するステンレス鋼板の表面に吸着して持ち込まれた水分が考えられる。真空断熱パネルの断熱性能の経時変化を抑制するためには、繊維に吸着して持ち込まれた水分を0.05重量%以下に、また、真空断熱パネルの内部空間に残留していたガス成分を1Pa以下に規制するだけでなく、ステンレス鋼板の表面に吸着して外包材の内部空間に持ち込まれた水分も規制することにより達成できる。外包材として、表面粗さRaが0.2μm以下のステンレス鋼板を用いることにより、熱伝導率の上昇率が30%以下の断熱性能の経時変化が抑制された真空断熱パネルを製造することができる。
【0051】
<真空断熱パネルの断熱性能の劣化に関するメカニズム>
以下、真空断熱パネルが繰り返し温度履歴を受けた場合に断熱性能が劣化するメカニズムについて説明する。
【0052】
[1.真空断熱パネルの内面への水分の吸着について]
真空断熱パネルの内部空間のように、容器の内部を真空ポンプにより真空排気して作った真空空間では、その容器の内部に残留しているガス分子は大部分が水分である。通常の大気のように窒素ガスと酸素ガスが約4:1の割合で残留しているのではない。これは、どんなに真空ポンプを使ってガス成分を排気しても、真空容器の容器内側の表面に吸着している水分が脱離して、容器内でガス成分となるためである。
【0053】
ただし、水分が真空容器の容器内側の表面に吸着しているだけであれば、真空断熱パネルの熱伝導率の点では悪影響を与えない。これは、室温前後の温度においては、真空断熱パネルの内部空間の水分はこの不動態膜の表面に吸着されたままであり、ガス分子となっていないので、当該真空断熱パネルの熱伝導率を上昇させることにならないためである。
【0054】
しかし、水分の吸着と脱離の状況は吸着面の温度の影響を大きく受ける。真空断熱パネルの温度が上昇した場合は、水分は不動態膜から脱離して真空断熱パネルの内部空間にガス分子となって放出されるので、この場合は熱伝導率が上昇することになる。真空断熱パネルの温度が繰り返しの履歴をたどる場合には、真空断熱パネルの内部空間の水分は温度に対応して空間から壁面への吸着と壁面から空間への放出とを繰り返す。
【0055】
[2.表面粗さと水分量の関係]
表面粗さRaが大きい表面ほど、見掛け表面積よりも実際の表面積は大きいから、外包材の内部空間側の面の表面粗さが大きいほど、真空断熱パネルの内部空間に持ち込まれる水分量は増えると考えられる。
【0056】
[3.損傷した(傷ついた)不動態膜の再生について]
ステンレス鋼板の表面は、緻密な不動態膜(CrやFeの酸化物からなる、ごく薄い層)に覆われている。ステンレス鋼板の表面が芯材により擦られて不動態膜が損傷した場合であっても、大気中であればステンレス鋼板中のCr、Feが大気中の酸素と直ちに結合して不動態膜は修復される(再生する)。大気から酸素が供給されるのであれば、酸素の量は無尽蔵である。しかし、真空断熱パネルの内部は減圧されており、しかも外界とは遮断された閉じた空間であるため、パネル内部に存在する酸素量には限りがある。つまり、結合するために必要な酸素が必ず供給されるわけではない。この点が、繰り返し温度履歴を受ける真空断熱パネルの性能劣化に関する特有の事情である。
【0057】
[4.真空断熱パネルの断熱性能の劣化挙動]
表面粗さが大きい表面とは、凹凸の高低差が大きい表面ということである。一方、真空断熱パネルの外包材は、真空断熱パネルが受ける繰り返し温度履歴によって膨張と収縮を繰り返す。このため外包材の内部空間側の面にあるステンレス鋼板の表面の凸部が芯材と繰り返し接触して、凸部の不動態膜が擦られて破損すると考えられる。擦られて不動態膜が破損しても、真空断熱パネルの内部空間に酸素が存在している間は直ちに不動態膜は再生され、再生した不動態膜は水分を吸着してくれるので、内部空間の圧力が上昇して熱伝導率が増大してしまうことにはならない。しかし、真空断熱パネルの内部空間内の酸素量には限りがあるから、繰り返し温度履歴を受けているうちに、その酸素は不動態膜の修復のために消費されていき、やがて枯渇してしまうと考えられる。
【0058】
真空断熱パネルの内部空間の酸素が枯渇してしまうと、不動態膜が破損しても修復されず、破損部分には活性な金属面が露出した状態のままとなる。活性な金属面は真空断熱パネルの温度が下がっても水分を吸着せず、水分はガス分子の状態で内部空間内に存在しつづけることになる。真空断熱パネルの性能評価は、通常、室温で熱伝導率を測定することによって行われるが、この状態の真空断熱パネルは、温度が下がっても真空断熱パネルの内部空間の圧力は高いままとなるから、熱伝導率が増大した状態、つまり性能劣化した状態となる。すなわち、真空断熱パネルの断熱性能評価では、真空断熱パネルの内部空間の酸素が枯渇した後に、熱伝導率が上昇し断熱性が劣化したように観察されると考えられる。
【0059】
[5.断熱性能の劣化挙動に及ぼす表面粗さの影響]
[5.1表面粗さと真空断熱パネルの内部空間の酸素枯渇までの時間との関係]
表面粗さが小さい表面は、凸部の高さが小さいため、真空断熱パネルの外包材が膨張と収縮を繰り返しても凸部と芯材が接触しにくい(外包材の内部空間側の面と芯材との間にスキ間があるイメージである。)。また、凸部と芯材が接触したときの接触面圧も小さいと考えられる。そのため、真空断熱パネルが繰り返し温度履歴を受けても、表面粗さが大きい場合と比較して、不動態膜が損傷する頻度が小さい。また、芯材との擦れにより不動態膜の損傷が起こっても、不動態皮膜が損傷した箇所は内部空間から供給される酸素と結合して不動態膜の再生が行われるが、不動態膜が損傷する頻度が小さいので、酸素の消費量も少ない。すなわち、酸素の枯渇も起こりにくい。このため、表面粗さが大きい場合は、性能劣化の状態に至るまでの期間が表面粗さが小さい場合よりも短時間となると考えられる(性能劣化しやすい、すなわち耐久性が低いと考えられる。)。
【0060】
[5.2表面粗さと水分量の関係]
2.の繰返しになるが、表面粗さが大きい場合は、真空断熱パネルの内部空間に持ち込まれる水分量が多いので、酸素が枯渇して性能劣化の状態となったときに内部空間内にガス分子として存在する水分量も多いと考えられる。すなわち、性能劣化の状態となったときの劣化の程度が、表面粗さが大きいほど顕著(熱伝導率が顕著に大きくなる)と考えられる。
【0061】
[6.表面粗さRa0.2μmを境にした、量的又は質的な作用効果の違い]
5.に書いたように、真空断熱パネルの性能劣化は、外包材に用いるステンレス鋼板の表面粗さが大きいものほど早い時期に性能劣化の状態になり、また性能劣化の程度も顕著であると考えられる。
【0062】
実施例には、種々の表面粗さRaを有するステンレス鋼板を用いて製造した真空断熱パネルの、断熱性能の経時変化を示している。表面粗さRaがもっとも小さい0.05μmのステンレス鋼板を用いて製造した真空断熱パネルの熱伝導率は、製造直後から小さい値を示し、その後もほとんど増大しないという結果であった。これは、外包材に用いたステンレス鋼板の表面粗さが小さいことから、真空断熱パネルの内部空間に持ち込まれる水分量が少なかったことに加えて、内部空間での酸素の枯渇が起こらなかったため、性能劣化の状態に達しなかったものと考えられる。
【0063】
一方、表面粗さRaが0.05μm以外のステンレス鋼板を用いて製造した真空断熱パネルは、いずれも製造後60日までのうちに熱伝導率が増大した。その後、その熱伝導率は大きくは変化しないという結果であったが、これは、製造後60日までのうちに真空断熱パネルの内部空間の酸素が枯渇したため、内部空間を形成するステンレス鋼板の表面に吸着できなくなった水分により熱伝導率が上昇し、上昇の程度は表面粗さが大きいものほど顕著であったと考えれば説明できる。
【0064】
外包材に用いるステンレス鋼板の表面粗さRaが大きいことは、上記のように酸素枯渇による性能劣化までの期間を短くすることと、性能劣化したあとの熱伝導率を増大させることの両方を助長することになるので、表面粗さを規定することは、両方の観点から対策を講じることになる。仮に、熱伝導率の上昇率を30%まで許容するとすれば、表面粗さRaは0.2μm以下であることが指標となる。
【実施例2】
【0065】
前述のとおり、「パネル」に対して行う溶接工程は、第一工程(封止前溶接工程)と第二工程(封止溶接工程)から構成される。ここで、第二工程は真空チャンバー9内で行うため、「パネル」1枚ごとに真空チャンバー9の大気開放と真空排気を繰り返すこととなるが、これでは生産効率が低い。そこで、第一工程を終了した「パネル」について、後述する減圧室、封止溶接室、復圧室をこの順序で備えた設備を用いて第二工程を行うことにより、高い生産効率で真空断熱パネルの製造が可能な実施例を説明する。
【0066】
高い生産効率で真空断熱パネルの製造を可能とするには、
図6に示す連続製造設備30を用いて溶接の第二工程(封止溶接工程)を行う。連続製造設備30は、その要素設備として、真空加熱炉31、待機室32、減圧室33、封止溶接室34、復圧室35、搬送手段41、ゲートバルブ36〜40等を備えている。
【0067】
真空加熱炉31は、複数枚の「パネル」51を装填することができる真空炉と、炉内を真空に排気するための真空排気系と、「パネル」51を加熱するための加熱源とを備える。この真空加熱炉31内に複数枚の「パネル」51を装填した状態で炉内を真空に排気しながら、加熱源により「パネル」51を加熱することで、芯材の水分量を0.05重量%以下まで低減する水分除去が行える。
【0068】
待機室32は、減圧室33内の圧力が大気圧に復帰するまで(減圧室33については後述する。)、「パネル」51を待機させる室である。この待機室32には乾燥窒素ガスの流通装置が備わっている。
【0069】
減圧室33には、室内を真空に排気するための真空排気系と、「パネル」を加熱するための加熱源が備わっている。真空排気系を備えることにより、真空加熱炉31にて芯材1の水分除去が済んだ「パネル」51を減圧室33に装填した状態で、減圧室33内を減圧状態に保つことができる。そのため、「パネル」51を減圧室33から封止溶接室34に送り込むために、減圧室33と封止溶接室34を連通した場合でも封止溶接室34の室内圧力が大気圧近くまで復圧してしまうことを防ぐことができる。減圧室33の室内圧力は、大気圧以下であり、かつ封止溶接室34の室内圧力を超えない範囲である。好ましくは10Pa程度である。
また、減圧室33に備えた加熱源は、減圧室33内においても「パネル」51を加熱状態で保持するために用いる。加熱状態を保持することで、水分除去が済んだ後の芯材1に、再び水分が吸着することを防ぐことができる。加熱温度としては、200℃以下でよい。
【0070】
封止溶接室34は、室内を真空に排気するための真空排気系と、溶接の第二工程である封止溶接工程を行うための溶接機53を備える。この溶接機53として、実施例1の封止溶接工程に用いた、真空チャンバー9内に持ち込まれた真空溶接機15(
図5参照)を用いることができる。また、真空排気系は、この封止溶接室34の室内を減圧する。これにより、「パネル」51の開口部6(
図2(a)参照)を通じて芯材1を包み込んだ外包材2A,2Bの内部空間3の圧力が1Pa以下とされて、その状態で当該外包材2A,2Bの開口部6を溶接によって封止することができる。また、封止溶接室34内の圧力を迅速に減圧するため、ベーキング装置を備えて封止溶接室34の室内壁を加熱できることが好ましい。
【0071】
復圧室35は、室内を真空に排気するための真空排気系と、室内の圧力を大気圧に復圧するための復圧ガスの導入系を備える。真空排気系を備えることにより、復圧室の室内圧力を減圧状態に保つことができる。これにより、封止溶接室34で開口部6を封止した真空断熱パネル52を復圧室35に払い出す場合に、復圧室35と連通する前に復圧室35の室内圧力を低下させておくことで、封止溶接室34と復圧室35を連通しても封止溶接室34の室内圧力が大気圧近くまで上昇してしまうことを防ぐことができる。このときの復圧室35の室内圧力は、大気圧以下であり、かつ封止溶接室34の室内圧力を超えない範囲であり、好ましくは10Pa程度である。
【0072】
搬送手段41は、「パネル」51または真空断熱パネル52を各要素設備間で受け渡すためのものである。
【0073】
ゲートバルブ36〜40は、真空加熱炉31、待機室32、減圧室33、封止溶接室34および復圧室35の各接続部と、復圧室35の出口とに設けられている。このゲートバルブ36は、は各室間の接続部(通路)を開閉可能な装置であって、閉鎖時には各室間に圧力差が生じてもその圧力差を維持できる程度に気密状態を確保でき、真空中でも開閉動作が可能な構造を有するもので構成される。なお、ゲートバルブに代えて同様の構造を有するもの(例えばシャッター等)を採用してもよい。
【0074】
以下、
図6に示す連続製造設備30を用いて、「パネル」51の開口部を真空中で封止溶接して真空断熱パネル52を製造する方法について説明する。
【0075】
まず、次のように芯材1と外包材2を準備した。芯材1は、約1200g/m
2の目付のグラスウールを用いた。また、外包材2A,2Bには、どちらも寸法が220mm×220mm×厚さ100μmで、表面粗さRaが0.05μmのステンレス箔(SUS304)を用いた。2枚の外包材のうち、外包材2Bには、プレス成形の張出し加工により190mm×190mm×高さ5.0mmの膨出部4を設けた。
【0076】
そして、芯材1に対して水分除去工程を行わずに芯材1を外包材2A,2Bで包み、「パネル」を得た。そして、溶接の第一工程(封止前溶接工程)を行った。溶接の第一工程について具体的な操作は実施例1と同様であり、「パネル」の3辺の外周に沿ってシーム溶接を3回に分けて、それぞれ直線状に溶接し、残りの1辺を開口部6として残した(
図2(a)参照)。この溶接に用いた溶接機は、
図4に示した溶接機8と同様のものである。
【0077】
溶接の第一工程を終えた「パネル」を16枚用意し、
図6に示す連続製造設備30の真空加熱炉31に装填した。そして、芯材1の水分除去工程として、この真空加熱炉31を用いて炉内圧力を10Paに設定し、400℃の温度で加熱を開始した。開始直後は炉内圧力の上昇が認められたが、およそ30分後には炉内圧力が低下しはじめ、加熱開始からおよそ1時間後には炉内圧力が10Paで安定した。そのため、水分除去工程が完了したと判断した。
【0078】
真空加熱炉31から水分除去工程を終了した「パネル」51を1枚を取り出し、搬送手段41を用いて、待機室32まで移動させた。待機室32の中には、大気圧の乾燥窒素ガスを流通させた。これは、「パネル」51がこの待機室32内でゲートバルブ37が開くまで待機している間に、「パネル」51の芯材が水蒸気を吸収しないためである。
「パネル」51が待機室32で待機中に、減圧室33内を大気圧に復圧する。復圧するためには、大気を導入するのでなく乾燥窒素ガスを用いた。減圧室33内の圧力が大気圧となってから、ゲートバルブ37を開けて、「パネル」を減圧室33へ送り込んだ。
【0079】
続いて、ゲートバルブ37を閉めて、減圧室33の室内の真空排気を開始し、約10Paまで減圧した。また、封止溶接室34も室内の真空排気を行い、室内の圧力を1Pa以下となるように減圧した。そののち、ゲートバルブ38を開き、「パネル」51を真空溶接室34へ送り込んだ。このとき、封止溶接室34の室内圧力は、減圧室と接続したことによって悪化したが、高々4Pa程度であった。そのあと、ゲートバルブ38を閉めて封止溶接室34の室内の真空排気を行い、1Pa以下まで室内圧力が低下してから、真空溶接機53を用いて開口部6(
図2(a)参照)の溶接を行い真空断熱パネル52を製造した。
【0080】
開口部6の封止溶接が終了したのちは、ゲートバルブ39を閉じたままで復圧室35の真空排気を行って、室内圧力を約10Pa程度まで減圧した。そののち、ゲートバルブ39を開けて、真空断熱パネル52を復圧室35に払い出した。
真空断熱パネル52を復圧室35に払い出した後でゲートバルブ39を閉じ、復圧室35には復圧ガスを導入して大気圧まで復圧した。1Pa前後だった封止溶接室34の室内圧力は、ゲートバルブ39を開けて復圧室35と接続したことによって悪化したが、高々7Pa程度であった。
【0081】
復圧室35の室内圧力が大気圧まで復圧するのを待って、ゲートバルブ40を開けて、製造した真空断熱パネル52を連続製造設備30の出側に払い出した。
【0082】
ゲートバルブ38が開くとき、ゲートバルブ38の入側は大気圧ではなく約10Paに減圧された減圧室である。そのため、ゲートバルブ38を開けても封止溶接室34の室内の圧力が著しく悪化することはなく、高々4Pa程度であった。そのため、「パネル」51が封止溶接室34に搬入されてから溶接を開始する1Pa以下まで排気するために必要な所要時間が短くて済んだ。
また、ゲートバルブ39が開くとき、ゲートバルブ39の出側は大気圧ではなく約10Paに減圧された復圧室35である。そのため、ゲートバルブ39を開けても封止溶接室34の室内の圧力が著しく悪化せず、高々7Pa程度であった。そのため、次の「パネル」51が封止溶接室34に搬入されてから溶接を開始する1Pa以下まで排気するために必要な所要時間が短くて済んだ。
【0083】
<連続製造設備の自動制御>
上述した連続製造設備30は手動運転設備および自動運転設備の何れであってもよい。自動運転設備とする場合は、特に、封止溶接室34内の圧力を1Pa以下とした状態で、「パネル」51の開口部6を真空溶接機53にて封止することと、減圧室33および復圧室35の圧力を大気圧と封止溶接室34内の圧力との間の圧力(例えば10Pa)に維持することを自動制御により実施することが望ましい。この場合、連続製造設備30は、制御装置61(
図7参照)、各室33〜35内の圧力を検出する圧力センサ63〜65を備える。制御装置61は、圧力センサ64により検出される封止溶接室34内の圧力を真空排気系(減圧手段)によって1Pa以下となるように制御し、封止溶接室34内の圧力が1Pa以下の状態で、「パネル」51の開口部6の封止溶接を真空溶接機53にて実施する。これにより、外包材2の内部空間3(
図1参照)の圧力を確実に1Pa以下とすることができる。
また、連続製造設備30の制御装置61は、各圧力センサ63,65により検出される減圧室33内の圧力および復圧室35内の圧力をそれぞれ大気圧と封止溶接室34内の圧力との間の圧力(例えば10Pa)に維持するように真空排気系(減圧手段)を制御する。これにより、封止溶接室34と減圧室33または復圧室35とが連通した際に、封止溶接室34内の圧力上昇を抑制することができる。
【0084】
そのほか、自動制御によって、1つの真空断熱パネル52が封止溶接室34から復圧室35に移動するときに次の「パネル」51を封止溶接室34に入れて封止溶接室34内の圧力を1Pa以下にしたのち当該「パネル」51の開口部6の溶接を実施すること等も可能である。例えば、連続製造設備30に、待機室32、減圧室33、封止溶接室34および復圧室35内でのパネル51(真空断熱パネル52)の有無をそれぞれ検出するパネル検出器66〜69を設ける。そして、制御装置61が、パネル検出器68、69の出力状態に基づいて、1つの真空断熱パネル52の封止溶接室34から復圧室35への移動が完了したことを検出すると、ゲートバルブ39を閉じるとともに、ゲートバルブ38を開いて減圧室33にある「パネル」51を搬送手段41にて封止溶接室34に移動させる。その後、制御装置61は、パネル検出器67、68の出力状態に基づいて、「パネル」51の減圧室33から封止溶接室34への移動が完了したことを検出すると、ゲートバルブ38を閉じて真空排気系により封止溶接室34内の圧力を1Pa以下とした後に、「パネル」51の開口部6の封止溶接を真空溶接機53にて実施するとともに、減圧室33内を大気圧に復圧する。制御装置61は、圧力センサ63により検出される減圧室33内の圧力が大気圧となった後、ゲートバルブ37を開けて、待機室32から次の「パネル」51を搬送手段41にて減圧室33へ移動させる。そして、制御装置61は、パネル検出器66、67の出力状態に基づいて、「パネル」51の待機室32から減圧室33への移動が完了したことを検出すると、ゲートバルブ37を閉じて、真空排気系により減圧室33内の減圧を開始する。以上を実施することにより、封止溶接室34内の圧力の上昇を抑制できるとともに、「パネル」に対して効率的に封止溶接工程を行うことができる。
<実施形態のまとめ>
本実施形態の真空断熱パネルの製造方法は、無機繊維からなる芯材をステンレス鋼板製の外包材で包み込み、その芯材を包み込んだ外包材の内部空間が真空状態とされた真空断熱パネルを製造するものを前提とし、前記芯材を加熱して当該芯材が含有する水分量を0.05重量%以下とする工程と、前記芯材を前記外包材で包み込む工程と、前記芯材を包み込んだ外包材の内部空間の圧力を1Pa以下とした状態で当該外包材の開口部を溶接により封止する封止工程と、を含み、前記外包材の内部空間側となる面の表面粗さRaが0.2μm以下であることを特徴とするものである。
真空断熱パネルの性能劣化は、外包材に用いるステンレス鋼板の表面粗さが小さいものほど断熱性能の劣化を遅らせることができ、その劣化の程度も顕著に小さくなると考えられる。特に、外包材として、表面粗さRaが0.2μm以下のステンレス鋼板を用いることにより、製造直後と比較した熱伝導率の上昇率が30%以下となる、経時変化が抑制された真空断熱パネルを製造できる可能性が高まる。
前記封止工程は、前記芯材を包み込んだ外包材を圧力が1Pa以下の真空中においた状態で、当該外包材の開口部を溶接により封止するものとしてもよい。
かかる構成を備える真空断熱パネルの製造方法によれば、多数の外包材に対する真空排気処理を一緒に纏めて行うことが可能となる。
本実施形態の真空断熱パネルは、無機繊維からなる芯材をステンレス鋼板製の外包材で包み込み、その芯材を包み込んだ外包材の内部空間が真空状態とされたものを前提とし、前記芯材が含有する水分量が0.05重量%以下であり、前記外包材の内部空間側となる面の表面粗さが0.2μm以下であり、前記芯材を包み込んだ外包材の内部空間の圧力が1Pa以下である、ことを特徴とするものである。
真空断熱パネルの性能劣化は、外包材に用いるステンレス鋼板の表面粗さが小さいものほど断熱性能の劣化を遅らせることができ、その劣化の程度も顕著に小さくなると考えられる。特に、外包材として、表面粗さRaが0.2μm以下のステンレス鋼板を用いることにより、製造直後と比較した熱伝導率の上昇率が30%以下となる、経時変化が抑制されたものとなる可能性が高まる。
本実施形態の真空断熱パネルの製造装置は、無機繊維からなる芯材をステンレス鋼板製の外包材で包み込み、その芯材を包み込んだ外包材の内部空間が真空状態とされた真空断熱パネルを製造するための装置を前提とし、芯材を包み込んだステンレス鋼板製の外包材の開口部を封止する溶接機が室内に設置された封止溶接室と、前記封止溶接室の前に接続された減圧室と、前記封止溶接室の後に接続された復圧室と、前記各室内の圧力を減圧するための減圧手段と、前記各室の接続部にそれぞれ設けられた通路開閉手段と、前記各室内の圧力を検出する圧力検出手段と、制御装置と、を備える。そして、前記制御装置は、前記圧力検出手段により検出される前記封止溶接室内の圧力を、前記減圧手段によって1Pa以下とした状態で、芯材を包み込んだステンレス鋼板製の外包材の開口部を前記溶接機にて封止する手段と、前記減圧室および前記復圧室の圧力を大気圧と前記封止溶接室内の圧力との間の圧力に維持するように前記減圧手段を制御する手段と、を有することを特徴とするものである。
かかる構成を備える真空断熱パネルの製造装置によれば、外包材の内部空間の圧力を確実に1Pa以下とすることができる。また、封止溶接室と減圧室または復圧室とが連通した際に、封止溶接室内の圧力上昇を確実に抑制することができる。
また、本実施形態の他の真空断熱パネルの製造方法は、無機繊維からなる芯材をステンレス鋼板製の外包材で包み込み、その芯材を包み込んだ外包材の内部空間が真空状態とされた真空断熱パネルを製造する方法を前提とし、減圧室内で開口部を有する外包材の内部空間の圧力を大気圧から所定圧力に向けて減圧させる減圧工程と、前記減圧室に通路開閉手段を介して接続された封止溶接室内で外包材の内部空間の圧力を更に減圧して1Pa以下とした状態で当該外包材の開口部を溶接により封止する封止工程と、を含むことを特徴とするものである。
かかる構成を備える真空断熱パネルの製造方法によれば、封止溶接室の前に減圧室が設置されているため、封止溶接室内の圧力の上昇を抑制でき、生産効率の向上を図ることができる。
上記構成を備える真空断熱パネルの製造方法において、前記減圧工程に先だって、前記芯材を前記外包材で包み込む工程と、該工程に続いて前記外包材と外包材で包み込んだ芯材を加熱して当該芯材が含有する水分量を0.05重量%以下とする水分除去工程とを行うようにしてもよい。