特許第6385320号(P6385320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385320
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ブーム装置および薬剤散布装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20180827BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A01M7/00 J
   B05B17/00 101
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-190186(P2015-190186)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-63639(P2017-63639A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 航
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】松田 公邦
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−081672(JP,U)
【文献】 米国特許第05310115(US,A)
【文献】 実開平05−022982(JP,U)
【文献】 実開昭61−111573(JP,U)
【文献】 特開2005−007372(JP,A)
【文献】 実開昭61−025979(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
A01C 23/00
B05B 17/00−17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側の第1ブーム(21)と、
前記第1ブーム(21)に対して折りたたみ可能に取り付けられた先端側の第2ブーム(22)と、
前記第1ブーム(21)に添設されると共に、複数のノズル(9A,9C)が取り付けられた第1送液管(8A)と、
前記第2ブーム(22)に添設されると共に、複数の別のノズル(9B,9D)が取り付けられた第2送液管(8B)と、
前記第1送液管(8A)の先端部に設けられた管状の第1接続部材(41)と前記第2送液管(8B)の基端部に設けられた管状の第2接続部材(42)とを有し、前記第1接続部材(41)と前記第2接続部材(42)とが接続されることで、第1送液管(8A)と第2送液管(8B)との間の薬剤の流通を可能とする継手(40)と、を備え、
前記第2ブーム(22)が折りたたまれた状態で、前記第1接続部材(41)と第2接続部材(42)とは分離しており、前記第2ブーム(22)が伸ばされた状態で、前記第1接続部材(41)と前記第2接続部材(42)とが接続され
前記第2ブーム(22)が伸ばされて固定位置に移動するのと同時に、前記第1接続部材(41)に前記第2接続部材(42)が接続されて第1送液管(8A)と第2送液管(8B)との間の薬剤の流通が可能となることを特徴とするブーム装置。
【請求項2】
前記継手(40)は、少なくとも前記第1接続部材(41)の内部にバルブ(V1)を備え、前記第1接続部材(41)と前記第2接続部材(42)とが接続されることで前記バルブ(V1)が開き、前記第1接続部材(41)と第2接続部材(42)とが分離することで前記バルブ(V1)が閉じるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のブーム装置。
【請求項3】
前記複数のノズル(9A,9C)は、少なくとも前記第1送液管(8A)の前記先端部に取り付けられ、噴出角度を調整可能な角度調整式ノズル(9C)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のブーム装置。
【請求項4】
前記第1ブーム(21)のフレーム(24)および前記第2ブーム(22)のフレーム(26)の一方には、当該フレーム(24)の長手方向に延びる長孔(24b)が設けられており、
前記第1ブーム(21)のフレーム(24)および前記第2ブーム(22)のフレーム(26)の他方には、前記長孔(24b)に挿通される第1ピン(31)と、前記第1ピン(31)が前記長孔(24b)の一端に配置されたときに前記長孔(24b)の他端に対面する丸孔(26d)と、が設けられており、
前記長孔(24b)および前記丸孔(26d)に第2ピン(32)が挿通されることにより、前記第1ブーム(21)に対して前記第2ブーム(22)が固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のブーム装置。
【請求項5】
前記第2ブーム(22)が伸ばされた状態において、前記長孔(24b)に前記丸孔(26d)が対面する前記第2ブーム(22)の位置である前記固定位置は、前記第2接続部材(42)が前記第1接続部材(41)に接続される位置に対応していることを特徴とする請求項4に記載のブーム装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項のブーム装置を備える薬剤散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、折りたたみ式のブーム装置およびこれを備えた薬剤散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、折りたたみ式のブームを備えたブームスプレーヤ(薬剤散布装置)が知られている。この装置は、長尺片ブームを備えており、この長尺片ブームの下面に設けられた多数の噴霧ノズルから、薬液を散布する。長尺片ブームは、いずれも数mに及ぶ内ブームと外ブームとからなる2段式とされている。内ブームと外ブームとは、ヒンジ部を介して連結される。装置の移送時や収納時には、外ブームは折りたたまれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−165865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した装置では、2段式の長尺片ブームは折りたたまれるように構成されているが、散布作業の際に、外ブームを折りたたんだ状態とすることは想定されていない。一方で、ブームを折りたたみ式とすることで、薬剤を散布する幅を変更することが考えられる。すなわち、折りたたみ式のブームにおいて、ブームを伸ばした状態と、ブームを折りたたんだ状態との両方で使用可能とする場合が考えられる。そのためには、関節部分において、たとえばコックを装備する等、薬剤の流路を開閉する機構が必要である。しかしながら、ブームを伸ばしたり折りたたんだりする動作と、薬剤の流路を開閉する操作が別であると、たとえば作業者は流路を開閉し忘れる可能性があり、作業性が良くない。
【0005】
本発明は、ブームを伸ばした状態と、ブームを折りたたんだ状態との両方で使用可能とする場合に、作業性を向上することができるブーム装置および薬剤散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るブーム装置は、基端側の第1ブーム(21)と、第1ブーム(21)に対して折りたたみ可能に取り付けられた先端側の第2ブーム(22)と、第1ブーム(21)に添設されると共に、複数のノズル(9A,9C)が取り付けられた第1送液管(8A)と、第2ブーム(22)に添設されると共に、複数の別のノズル(9B,9D)が取り付けられた第2送液管(8B)と、第1送液管(8A)の先端部に設けられた管状の第1接続部材(41)と第2送液管(8B)の基端部に設けられた管状の第2接続部材(42)とを有し、第1接続部材(41)と第2接続部材(42)とが接続されることで、第1送液管(8A)と第2送液管(8B)との間の薬剤の流通を可能とする継手(40)と、を備え、第2ブーム(22)が折りたたまれた状態で、第1接続部材(41)と第2接続部材(42)とは分離しており、第2ブーム(22)が伸ばされた状態で、第1接続部材(41)と第2接続部材(42)とが接続され、第2ブーム(22)が伸ばされて固定位置に移動するのと同時に、第1接続部材(41)に第2接続部材(42)が接続されて第1送液管(8A)と第2送液管(8B)との間の薬剤の流通が可能となることを特徴とする。
【0007】
このブーム装置によれば、継手(40)の第1接続部材(41)は、第1送液管(8A)の先端部に設けられ、継手(40)の第2接続部材(42)は、第2送液管(8B)の基端部に設けられる。第2ブーム(22)が折りたたまれた状態では、第1接続部材(41)と第2接続部材(42)とは分離しており、薬剤は第2送液管(8B)に送られ得ない。第2ブーム(22)が伸ばされた状態では、第1接続部材(41)と第2接続部材(42)とが接続されて、薬剤は第2送液管(8B)に送られ得るようになる。このように、ブームを伸ばしたり折りたたんだりする動作と略同時の操作により、薬剤の流路を開閉することができ、作業性が向上する。
【0008】
継手(40)は、少なくとも第1接続部材(41)の内部にバルブ(V1)を備え、第1接続部材(41)と第2接続部材(42)とが接続されることでバルブ(V1)が開き、第1接続部材(41)と第2接続部材(42)とが分離することでバルブ(V1)が閉じるように構成されてもよい。この構成によれば、流路の開閉をワンタッチで操作可能であるので、作業性がより一層向上する。
【0009】
複数のノズル(9A,9C)は、少なくとも第1送液管(8A)の先端部に取り付けられ、噴出角度を調整可能な角度調整式ノズル(9C)を含んでもよい。この構成によれば、第2ブーム(22)を折りたたんだ際に先端になる部分に、角度調整式ノズル(9C)が設けられる。この角度調整式ノズル(9C)によって、より広範囲に薬剤を散布することが可能になる。
【0010】
第1ブーム(21)のフレーム(24)および第2ブーム(22)のフレーム(26)の一方には、当該フレーム(24)の長手方向に延びる長孔(24b)が設けられており、第1ブーム(21)のフレーム(24)および第2ブーム(22)のフレーム(26)の他方には、長孔(24b)に挿通される第1ピン(31)と、第1ピン(31)が長孔(24b)の一端に配置されたときに長孔(24b)の他端に対面する丸孔(26d)と、が設けられており、長孔(24b)および丸孔(26d)に第2ピン(32)が挿通されることにより、第1ブーム(21)に対して第2ブーム(22)が固定されてもよい。この構成によれば、第1ブーム(21)に対して第2ブーム(22)を容易に固定することができる。
【0011】
第2ブーム(22)が伸ばされた状態において、長孔(24b)に丸孔(26d)が対面する第2ブーム(22)の位置である固定位置は、第2接続部材(42)が第1接続部材(41)に接続される位置に対応していてもよい。この場合、第2ブーム(22)が固定位置まで移動するのと略同時のタイミングで、第2接続部材(42)が第1接続部材(41)に接続される。よって、第2ブーム(22)を伸ばした状態で固定する動作と、流路を開く動作とが一緒に行われ、第2ブーム(22)展開時の操作性が高められる。
【0012】
本発明の他の態様として、上記のいずれかのブーム装置を備える薬剤散布装置が提供される。この薬剤散布装置によれば、ブームを伸ばしたり折りたたんだりする動作と略同時に、薬剤の流路を開閉することができ、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブームを伸ばしたり折りたたんだりする動作と略同時の操作により、薬剤の流路を開閉することができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る薬剤散布装置を示す斜視図である。
図2図1中のブームを示す斜視図である。
図3】(a)は第2ブームを折りたたんだ状態を示す斜視図、(b)は第1ブームの先端付近に設けられた角度調整式ノズルの拡大図である。
図4】(a)は第2ブームの折りたたみ状態を示す斜視図、(b)は第2ブームを伸ばしている途中の状態を示す斜視図である。
図5】(a)は第2ブームを伸ばしきった状態を示す斜視図、(b)は第2ブームをスライドさせて継手を接続した状態を示す斜視図である。
図6】伸ばされたブームと、折りたたまれたブームとを用いた薬剤の散布範囲を概念的に示す平面図である。
図7】(a)および(b)は継手の断面図であり、(a)は第1接続部材と第2接続部材とが分離した状態を示す図、(b)はそれらが接続された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。本明細書及び特許請求の範囲において使用されている「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」等の方向を示す語は、水平面上の走行車に薬剤散布装置を設置した状態において、当該走行車の通常の前進方向を前方と定めた状態を基準としている。
【0016】
図1に示されるように、ブームスプレーヤ1は、たとえばトラクタ等の走行車50(図6参照)の後部に搭載される薬剤散布装置である。従来と同様、ブームスプレーヤ1は、薬剤が充填される薬剤タンク2と、この薬剤タンク2内の液状の薬剤を吸引して圧送するポンプ装置3と、ポンプ装置3から送られてくる薬剤を散布するブーム装置4とを備えている。
【0017】
ブームスプレーヤ1は、薬剤タンク2を固定するための設置フレーム5を備えている。設置フレーム5は、走行車50に対してブームスプレーヤ1を固定する。設置フレーム5は、主として鋼製である。ブームスプレーヤ1は、薬剤タンク2を取り囲むように配された設置フレーム5によって、薬剤タンク2を固定(または支持)する固定構造を備えている。
【0018】
ブーム装置4は、設置フレーム5の下部に取り付けられたセンターブーム6と、センターブーム6の両端部に揺動可能に取り付けられた左右一対のサイドブーム7,7とを含んで構成されている。サイドブーム7,7には送液管8がそれぞれ取り付けられており、送液管8には、ノズル9が取り付けられている。ポンプ装置3から圧送された薬剤は、送液管8を通り、これらのノズル9から噴出するようになっている。センターブーム6の後方には、センターブーム6と平行になるようにブーム6Aが設けられており、このブーム6Aにも、送液管8およびノズル9が取り付けられている。送液管8は、後述の第1送液管8Aおよび第2送液管8Bから構成される。ノズル9は、後述のノズル9A〜9Dから構成される。
【0019】
ブームスプレーヤ1は、ブーム装置4を昇降させるための昇降装置10を備えている。昇降装置10は、設置フレーム5の一部を構成する門形のマスト11と、センターブーム6上に固定されたリール16およびハンドル17と、マスト11の上端部材13に固定された滑車18と、一端がマスト11の下部に連結され他端がリール16に巻きつけられたワイヤ19とを有する。ワイヤ19は、滑車18に引っ掛けられている。
【0020】
薬剤の散布時には、センターブーム6と一対のサイドブーム7,7とはほぼ一直線上に配置され、左右方向にサイドブーム7を延ばして使用される。なお、左右一対のサイドブーム7,7を備える場合に限られず、センターブーム6を左右に転回可能なものとし、サイドブーム7がセンターブーム6の左右いずれか一方の先端部に取り付けられてもよい。この場合、ブームを180度転回させることで、サイドブーム7を右方および左方に延ばすことが可能である。
【0021】
ここで、ブームスプレーヤ1においては、サイドブーム7は、折りたたみ可能な構造になっている。図1および図2に示されるように、ブーム装置4のサイドブーム7は、基端側の第1ブーム21と、先端側の第2ブーム22とを備えている。第2ブーム22は、第1ブーム21に対して折りたたみ可能に取り付けられている。左右のサイドブーム7は同じ構成を有する。以下、左方のサイドブーム7について説明する。
【0022】
第1ブーム21は、第1ブーム21にかかる荷重を支えるメインフレーム23と、メインフレーム23の先端部に固定されて、第2ブーム22との連結のためのサブフレーム24とを有する。第2ブーム22は、第1ブーム21との連結のための連結用フレーム26を有する。メインフレーム23、サブフレーム24および連結用フレーム26は、たとえば鋼製である。より詳細には、メインフレーム23は、たとえばI形鋼であり、サブフレーム24および連結用フレーム26は、たとえば断面C字状の溝形鋼である。メインフレーム23、サブフレーム24および連結用フレーム26は、互いに連結されて一体となり、サイドブーム7にかかる荷重(自重や薬液を含む)を支える。
【0023】
メインフレーム23の後側には、第1送液管8Aが添設されている。この第1送液管8Aに、ノズル9が取り付けられている。より詳細には、第1送液管8Aには、等間隔に複数の基端側ノズル9A(たとえば4個)が取り付けられており、さらに、第1送液管8Aの先端部には、1個の中間ノズル9Cが取り付けられている。基端側ノズル9Aおよび中間ノズル9Cは、同じ種類のノズルであってもよいが、異なる種類のノズルであってもよい。基端側ノズル9Aは、下方に向けて薬液を噴出できるように設けられている。中間ノズル9Cは、噴出角度を自在に調整可能な角度調整式ノズルである(図3(b)参照)。中間ノズル9Cは、たとえばバルブを含んでおり、バルブを閉じることにより噴霧を停止することができるようになっている。
【0024】
メインフレーム23の先端部の一方側(サイドブーム7が展開している際の上側)には、メインフレーム23よりも先端側(図1および図2の左方)に突出するようにして、サブフレーム24が固定されている。メインフレーム23とサブフレーム24の延びる方向(長手方向)は同じ、すなわち平行であるが、サブフレーム24の位置は、メインフレーム23の延長線上よりも上側に外れている。
【0025】
サブフレーム24の下方かつ後側には、第2送液管8Bが添設されている。この第2送液管8Bに、ノズル9が取り付けられている。より詳細には、第2送液管8Bには、等間隔に複数の中間ノズル9C(たとえば3個)が取り付けられており、さらに、第2送液管8Bの先端部には、1個の先端ノズル9Dが取り付けられている。先端側ノズル9Bおよび先端ノズル9Dは、同じ種類のノズルであってもよいが、異なる種類のノズルであってもよい。先端側ノズル9Bは、下方に向けて薬液を噴出できるように設けられている。先端ノズル9Dは、噴出角度を自在に調整可能な角度調整式ノズルである。先端ノズル9Dは、たとえばバルブを含んでおり、バルブを閉じることにより噴霧を停止することができるようになっている。
【0026】
なお、基端側ノズル9Aおよび先端側ノズル9Bが同じ種類のノズルであり、中間ノズル9Cおよび先端ノズル9Dが同じ種類のノズルであってもよい。
【0027】
サブフレーム24の先端部と、連結用フレーム26の基端部とは、固定構造30によって連結および固定されている。この状態で、サブフレーム24と連結用フレーム26とは直線状に連結されると共に、第1送液管8Aおよび第2送液管8Bも直線状に接続される。
【0028】
第1送液管8Aと第2送液管8Bとの間には、継手40が設けられており、この継手40によって、第1送液管8Aと第2送液管8Bとが接続され、さらに、第1送液管8Aと第2送液管8Bとの間の薬液の流通が可能になっている。これにより、第2ブーム22が伸ばされた状態では、第1ブーム21のみの場合よりも延長された、長尺のサイドブーム7が構成される。複数の基端側ノズル9Aと複数の先端側ノズル9Bとは、たとえば、等間隔かつ略一直線上に配置される。もっとも先端側に位置する基端側ノズル9Aと、中間ノズル9Cとの間隔は、基端側ノズル9A同士の間隔よりも短い。もっとも先端側に位置する先端側ノズル9Bと、先端ノズル9Dとの間隔は、先端側ノズル9B同士の間隔よりも短い。
【0029】
次に、図2図3および図4を参照して、継手40による第1送液管8Aおよび第2送液管8Bの接続構造について詳しく説明する。継手40は、第1送液管8Aの先端部に設けられた管状のプラグ(第1接続部材)41と、第2送液管8Bの基端部に設けられた管状のソケット(第2接続部材)42とを有する。プラグ41は、ソケット42と同軸に配置されて、ソケット42内に挿入され得る。また、プラグ41は、ソケット42から分離可能である。
【0030】
図4(a)に示されるように、プラグ41は、内部にバルブV1を含んでいる。また、ソケット42は、内部にバルブV2を含んでいる。プラグ41とソケット42とを接続した際には、バルブV1およびバルブV2が押し合うことにより開き、流路が開通し薬液が流通可能となる。プラグ41とソケット42とを分離した際には、各バルブV1,V2が瞬時にバルブ座43,44(図7参照)に密着して閉じ、流路は自動的に閉鎖される。これにより、薬液は流通不能となり、第1送液管8Aの先端部および第2送液管8Bの基端部からの薬液の漏出は、それぞれ防止される。
【0031】
図7を参照して、継手40についてより詳細に説明する。図7(a)はプラグ41とソケット42とが分離した状態を示す図であり、図7(b)はそれらが接続された状態を示す図である。図7(a)に示されるように、プラグ41のプラグ本体41a内には、略円錐台状のバルブV1が中心軸線方向に移動可能に設けられている。プラグ本体41aの先端部には、円錐面の一部をなしバルブV1に対面するバルブ座43が形成されている。バルブV1は、スプリング47によって、ソケット42のバルブV2に近づく方向に付勢されており、継手40の分離状態において、バルブ座43に着座している。ソケット42のソケット本体42a内には、略円錐台状のバルブV2が中心軸線方向に移動可能に設けられている。ソケット本体42aの先端部には、円錐面の一部をなしバルブV2に対面するバルブ座44が形成されている。バルブV2は、スプリング48によって、プラグ41のバルブV1に近づく方向に付勢されており、継手40の分離状態において、バルブ座44に着座している。この状態で、流路は自動的に閉鎖されている。また、ソケット42には、ソケット本体42aにおいて内面側に突出可能な鋼球61が設けられている。プラグ本体41aの外面には、その鋼球61の突出した部分を収容可能な円環状の溝62が形成されている。
【0032】
図7(b)に示されるように、プラグ41がソケット本体42aのプラグ挿入部42bに挿入されると、バルブV1の端面とバルブV2の端面とが接触し、上記のとおりバルブV1およびバルブV2が押し合う。バルブV1はスプリング47の付勢力に抗して内方に後退し、バルブ座43から離れる。バルブV2はスプリング48の付勢力に抗して内方に後退し、バルブ座44から離れる。鋼球61が溝62に収まると、プラグ41は、ソケット42に嵌まり込み、装着および固定される。この接続状態において、流路は開通する。なお、ソケット本体42aに設けられたOリング46がプラグ本体41aの外筒部に圧着するため、流体の漏出は防止される。このように、継手40は、プラグ41およびソケット42の両方に自動バルブ機構を備えた継手である。継手40によれば、プラグ41とソケット42との着脱により、流路の開閉がワンタッチで可能になっている。
【0033】
続いて、図4を参照して、メインフレーム23およびサブフレーム24の固定構造30について詳しく説明する。なお、以下の説明では、第1ブーム21若しくはサブフレーム24に関し、特に断らない限り、これらが水平に配置された状態(図1に示される左側のサイドブーム7の状態)を基準とする。
【0034】
連結用フレーム26は、サブフレーム24に取り付けられた状態で、180度回動可能である。これにより、すなわち、第2ブーム22は、第1ブーム21に取り付けられた状態で、180度回動可能である。固定構造30によれば、第1ブーム21に対して第2ブーム22が180度の位置にあるとき、すなわち第2ブーム22が伸ばされた状態で、連結用フレーム26(第2ブーム22)はサブフレーム24(第1ブーム21)に固定され得る。また、第1ブーム21に対して第2ブーム22が0度の位置にあるとき、すなわち第2ブーム22が折りたたまれた状態で、連結用フレーム26(第2ブーム22)はサブフレーム24(第1ブーム21)に固定され得る。以下、より詳しく説明する。
【0035】
図4(a)および図4(b)に示されるように、断面C字状のサブフレーム24は、第1ブーム21が水平に展開された状態で、上方に向けられた開放部24aを有する。一方、断面C字状の連結用フレーム26は、サブフレーム24よりも僅かに小さく、サブフレーム24の開放部24a内に収納されている。すなわち、連結用フレーム26の外側の幅は、サブフレーム24の内側の幅よりも小さい。サブフレーム24は、サブフレーム24の開放部24aと連結用フレーム26の開放部26aとが向かい合った状態で、連結用フレーム26内に進入する。これにより、第2ブーム22は、180度回動して折りたたまれた状態で、第1ブーム21に対してコンパクトに収納されており、また前後方向への移動(揺れ動き)が防止されている。第2ブーム22が折りたたまれた状態で、連結用フレーム26の開放部26aは、下方に向けられる。なお、図2に示されるように、第2ブーム22が伸ばされた状態では、開放部24aと開放部26aとは、いずれも上方を向いており、左右方向に連続している。
【0036】
サブフレーム24には、サブフレーム24の長手方向(すなわち第1ブーム21が延びる方向)に延びる前後一対の長孔24b,24bが設けられている。長孔24bの幅(上下方向の長さ)は、一定である。
【0037】
連結用フレーム26には、これらの長孔24b,24bに挿通される一本の第1ピン31が固定されている。第1ピン31は、前後方向に配置されており、長孔24bの範囲内で左右に移動可能である。長孔24bは、第1ピン31を案内しつつ、サブフレーム24に対して連結用フレーム26が移動する範囲を規定する。また、長孔24bは、第1ピン31の回転を許容する。これにより、固定構造30にはヒンジ構造が備わっており、第2ブーム22が回動自在となっている。
【0038】
図4(a)に示されるように、第1ピン31は、連結用フレーム26に設けられた前後一対の丸孔26bに通されて、連結用フレーム26に取り付けられている。第1ピン31には、サブフレーム24から外側に突出した部分に鍔部31aが設けられており、さらに第1ピン31の径方向に抜け止めピン31bが貫通している。これにより、第1ピン31は、常に長孔24b,24b内に配置された状態を保つ。
【0039】
図4(a)および図5(b)に示されるように、連結用フレーム26には、第1ピン31が長孔24bの前端または後端(これらは一端に相当する)に配置されたときに、長孔24bの後端または前端(これらは他端に相当する)に対面する前後一対の丸孔26d,26dが設けられている。この丸孔26d,26dには、長孔24b,24bを介して第2ピン32が挿通される。第2ピン32は、長孔24bおよび丸孔26dに対して挿抜自在である。
【0040】
図5(b)に示されるように、第2ブーム22が伸ばされた状態において、丸孔26dが長孔24bに対面する第2ブーム22の位置は、継手40のソケット42がプラグ41に接続される位置に対応している。言い換えれば、連結用フレーム26を、図5(a)に示される左方の位置から、図5(b)に示される右方の位置へとスライド移動させ、長孔24bに丸孔26dが重なると、これと略同時に、プラグ41にソケット42が接続される。
【0041】
連結用フレーム26において、第1ピン31から丸孔26dまでの長さ(第1ピン31および丸孔26dの外側端部間の長さ)は、長孔24bの長さよりも僅かに短い。これにより、丸孔26dに第2ピン32が挿通されると、連結用フレーム26すなわち第2ブーム22は、サブフレーム24すなわち第1ブーム21に対して移動不可能となり、これによって固定がなされる(図2参照)。
【0042】
第1ブーム21に対して180度回動する第2ブーム22においては、図5(b)に示される伸長状態のみならず、図4(a)に示される折りたたみ状態においても、第2ピン32による固定が可能になっている。
【0043】
次に、図2図6を参照して、サイドブーム7における操作の手順およびブームスプレーヤ1による薬剤の散布について説明する。ブームスプレーヤ1では、ハウスH内の形状または広さに応じて、薬剤を散布する幅を変更する。たとえば、図6に示されるように、左方のエリアは狭いが右方のエリアは広い場合、左方のサイドブーム7では第2ブーム22を折りたたみ、右方のサイドブーム7では第2ブーム22を伸ばす。
【0044】
図3(a)に示されるように、第2ブーム22が折りたたまれた状態では、第2送液管8Bに薬液は供給されず、したがって、先端側ノズル9Bおよび先端ノズル9Dからは薬剤は噴出せず、第1ブーム21の基端側ノズル9Aおよび中間ノズル9Cからのみ薬剤が噴出する。なお、このとき、関節部分に装着された中間ノズル9Cの角度を調整することにより、ハウスHの隅まで薬剤を散布することができる(図6参照)。
【0045】
図2に示されるように、第2ブーム22が伸ばされた状態では、第2送液管8Bにも薬液は供給され、先端側ノズル9Bおよび先端ノズル9Dから薬剤が噴出する。もちろん第1送液管8Aにも薬剤が供給されるので、基端側ノズル9Aから薬剤が噴出するが、ここでは、中間ノズル9Cは、バルブが閉じる位置に角度を合わせることにより、中間ノズル9Cからの噴出を停止させる(図6も参照)。このとき、先端ノズル9Dの角度を調整することにより、ハウスHの隅まで薬剤を散布することができる(図6参照)。
【0046】
第2ブーム22の、折りたたまれた状態から伸ばされた状態への移行作業について説明する。まず、図4(a)に示されるように、丸孔26dから第2ピン32を取り外す。これにより、ヒンジ接合状態の連結用フレーム26すなわち第2ブーム22は、回動自在になる。
【0047】
図4(b)に示されるように、第2ブーム22全体を回動させる。ここで、サブフレーム24の先端部には、開放部24aに向かって内方に突出する前後一対の突起24cが設けられており、連結用フレーム26の基端部には、突起24cに係合可能な前後一対の段部26cが設けられている。
【0048】
図5(a)に示されるように、第1ブーム21が180度回動して第1ブーム21と真っ直ぐな状態になったとき、上記の突起24cに段部26cが当接し、第2ブーム22のそれ以上の下方への回動が規制される。図5(b)に示されるように、第2ブーム22を第1ブーム21側にスライド移動させる。このとき、第1ピン31は、長孔24bに案内されながら、長孔24b内を端から端まで移動する。
【0049】
図5(b)に示されるように、第2ブーム22が、丸孔26dが長孔24bに対面する(すなわち重なる)位置までスライド移動すると、その時、ソケット42がプラグ41に接続される。これにより、流路が開通すると共に、第1送液管8Aに第2送液管8Bが固定される。丸孔26dに第2ピン32を挿通することで、第2ブーム22を固定する。
【0050】
なお、第2ブーム22の、伸ばされた状態から折りたたまれた状態への移行作業については、上記と逆の手順である。
【0051】
以上説明したブームスプレーヤ1およびブーム装置4によれば、第2ブーム22が折りたたまれた状態では、プラグ41とソケット42とは分離しており、薬剤は第2送液管8Bに送られ得ない。第2ブーム22が伸ばされた状態では、プラグ41とソケット42とが接続されて、薬剤は第2送液管8Bに送られ得るようになる。このように、サイドブーム7を伸ばしたり折りたたんだりする動作と略同時の操作により、薬剤の流路を開閉することができ、作業性が向上している。
【0052】
従来のブーム装置では、サイドブームを伸ばして使用する際には、ブームを伸ばす操作、ブームを伸ばした状態で固定する操作、および、薬剤の流路を開く操作(コック等を開く操作)の3つの操作を必要とした。そして、サイドブームをたたんで使用する際にも、これと同じ操作を逆の順番で行う必要があった。各操作がまったく別個であるため、たとえば流路を開き忘れる恐れがあった。また、関節部分にホースによる接続を採用した場合には、ホースの接続部の位置関係の変化やホースの撚れ等を吸収するため、ホースを長くせざるを得なかった。そのため、ホースが下に垂れ下がる状態となり、薬剤を散布した際にホースが霧に干渉する恐れがあった。ホースが作物に接触するおそれもあった。本実施形態のブームスプレーヤ1では、これらの問題点は、ブーム装置4によってすべて解決されており、従来に比べ格段に作業性が向上している。すなわち、ワンタッチカプラ(「カプラ」は登録商標)の採用により、ホースは不要であり、ホースの取付けのための手間が省かれている。霧に対する干渉も生じることがなく、散布斑が無くなっている。ホースの作物への接触も無い。さらには、部品点数が減っており、重量および価格の低減が可能となっている。しかも、関節部付近のスペースに余裕が生まれるため、他の機能部品を追加することもできる。
【0053】
また、内部にバルブV1を備える継手40によれば、流路の開閉をワンタッチで操作可能であるので、作業性がより一層向上している。
【0054】
第2ブーム22を折りたたんだ際に先端になる部分に、角度調整式ノズルとされた中間ノズル9Cが設けられる。この中間ノズル9Cによって、より広範囲に薬剤を散布することが可能になっている。
【0055】
固定構造30が、長孔24b、第1ピン31および第2ピン32を備えることにより、第1ブーム21に対して第2ブーム22を容易に固定することができる。しかも、第2ブーム22を伸ばしたり折りたたんだりする動作は、いずれも、長孔24b内での第1ピン31のスライドと、第2ピン32の挿抜とによって行うことができるので、2つの状態の切替えが非常に容易になっている。
【0056】
さらにまた、第2ブーム22を伸ばした状態で固定する動作と、流路を開く動作とが一緒に行われ、第2ブーム22を展開する際の操作性が高められている。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、継手40はバルブ式でなくてもよい。第1および第2送液管の間隔と長孔24bの長さが図5(a)のように対応している場合に限られず、これらの長さが対応していなくてもよい。たとえば、送液管が可撓性を有していて、余分に長くなっていてもよい。
【0058】
第2ブーム22側の連結用フレーム26に長孔が設けられ、第1ブーム21側のサブフレーム24に第1ピンおよび丸孔が設けられてもよい。第1送液管8Aの先端部にソケットが設けられ、第2送液管8Bの基端部にプラグが設けられてもよい。
【0059】
プラグ41(第1接続部材)とソケット42(第2接続部材)とは、ストレートな管状である場合に限られない。たとえば、これらのいずれか一方または両方が、曲がった管状であってもよい。第1ブーム21と第2ブーム22とは、一直線状に伸ばされて使用される場合に限られない。これらは、所定の角度をなした状態(たとえば90度以上180度未満で折れ曲がった状態)で固定および使用されてもよい。
【0060】
上記実施形態では第1ブーム21および第2ブーム22からなるサイドブーム7について説明したが、このような2段構成の折りたたみ式ブーム装置に限られない。本発明は、3段構成またはそれ以上のブームを備えた折りたたみ式ブーム装置に適用されてもよい。上記実施形態ではトラクタ搭載式のブームスプレーヤ1について説明したが、本発明は、他の型式の薬剤散布装置にも適用可能である。たとえば、本発明は、自走式のブームスプレーヤに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…ブームスプレーヤ(薬剤散布装置)、2…薬剤タンク、3…ポンプ装置、4…ブーム装置、5…設置フレーム、7…サイドブーム、8…送液管、8A…第1送液管、8B…第2送液管、9…ノズル、9A…基端側ノズル、9B…先端側ノズル、9C…中間ノズル(角度調整式ノズル)、9D…先端ノズル、21…第1ブーム、22…第2ブーム、23…メインフレーム、24…サブフレーム、24b…長孔、26…連結用フレーム、26d…丸孔、30…固定構造、31…第1ピン、32…第2ピン、40…継手、41…プラグ(第1接続部材)、42…ソケット(第2接続部材)、50…走行車、V1、V2…バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7