(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385332
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】蓄熱式燃焼設備
(51)【国際特許分類】
F23L 7/00 20060101AFI20180827BHJP
F23L 15/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
F23L7/00 B
F23L15/02
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-256193(P2015-256193)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120142(P2017-120142A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2017年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】横井 範之
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−004128(JP,A)
【文献】
特開平11−241810(JP,A)
【文献】
特開平09−292119(JP,A)
【文献】
特開2009−186101(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/164053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 7/00
F23L 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気供給経路から蓄熱材が収容された蓄熱部を通して導かれた燃焼用空気と燃料供給部から供給された燃料とを炉内において燃焼させる一方、炉内における燃焼排ガスを蓄熱材が収容された蓄熱部を通して排ガス排気経路に導いて排出させる蓄熱式燃焼装置が対になって設けられた蓄熱式燃焼設備において、前記の対になった各蓄熱式燃焼装置においてそれぞれ、前記の空気供給経路及び排ガス排気経路と、前記の蓄熱部における蓄熱材との間に、窒素吸着材を収容させた窒素処理部を設け、前記の空気供給経路を通して蓄熱部に導かれる燃焼用空気中における窒素をこの窒素処理部における窒素吸着材に吸着させる一方、前記の蓄熱部を通して燃焼排ガスを排ガス排気経路に導く場合に、前記の窒素処理部に収容された窒素吸着材に吸着された窒素を離脱させて、前記の燃焼排ガスと一緒に排ガス排気経路を通して排出させることを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄熱式燃焼設備において、前記の空気供給経路と排ガス排気経路とが合流して前記の蓄熱部と連通される合流経路に前記の窒素処理部を設けると共に、前記の空気供給経路と排ガス排気経路とにそれぞれ開閉弁を設け、空気供給経路に設けた前記の開閉弁を開けて、燃焼用空気を空気供給経路から窒素処理部に導く一方、排ガス排気経路に設けた開閉弁を開けて、燃焼排ガスを蓄熱部から窒素処理部に導くことを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄熱式燃焼設備において、前記の合流経路に前記の窒素処理部を迂回するバイパス経路を設けると共に、前記のバイパス経路を通して流れる燃焼用空気及び/又は燃焼排ガスの量を調整する流量調整手段を設けたことを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄熱式燃焼設備において、前記のバイパス経路を通して前記の燃焼排ガスを流し、前記の窒素処理部内を減圧させて、前記の窒素吸着材に吸着された窒素を離脱させることを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項5】
請求項1に記載の蓄熱式燃焼設備において、前記の蓄熱材が収容された蓄熱部内に、前記の窒素吸着材を収容させた窒素処理部を設けたことを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気供給経路から蓄熱材が収容された蓄熱部を通して導かれた燃焼用空気と燃料供給部から供給された燃料とを炉内において燃焼させる一方、炉内における燃焼排ガスを蓄熱材が収容された蓄熱部を通して排ガス排気経路に導いて排出させる蓄熱式燃焼装置が対になって設けられた蓄熱式燃焼設備に関するものである。特に、前記の蓄熱式燃焼設備において、燃焼用空気中における窒素を窒素処理部に収容された窒素吸着材に吸着させて減少させ、燃焼用空気中における酸素濃度を高めて高温での燃焼を行うと共に、前記の窒素吸着材に吸着された窒素を離脱させるにあたり、これらの操作が簡単な設備によって効率よく行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、加熱炉等においては、燃焼排ガスの熱を利用して効率のよい燃焼を行うために、炉内において燃焼された燃焼排ガスの熱を蓄熱部に収容させた蓄熱材に蓄熱させ、空気供給経路から燃焼用空気を前記の蓄熱部に導いて、前記の蓄熱材に蓄熱された熱により燃焼用空気を加熱させ、このように加熱された燃焼用空気と燃料供給部から供給された燃料とを炉内において燃焼させる一方、炉内における燃焼排ガスを蓄熱材が収容された蓄熱部に導いて、燃焼排ガスの熱を蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱させた後、排ガス排気経路に導いて排出させる蓄熱式燃焼装置が対になって設けられた蓄熱式燃焼設備が用いられている。
【0003】
また、近年においては、燃焼排ガス中に含まれる不活性ガス成分を低減させると共に、熱効率の高い燃焼が行えるようにするため、特許文献1に示されるように、空気供給経路から蓄熱材が収容された蓄熱部を通して供給する燃焼用空気として、酸素濃度が高くなった酸素富化空気を使用することが提案されている。
【0004】
ここで、この特許文献1においては、酸素濃度が高くなった酸素富化空気を得るために、軸心を中心として回転可能な円筒型容器と、該円筒型容器に配置された窒素吸収用吸着剤と、該窒素吸収用吸着剤を挟んで前記円筒型容器に相対して配置された一対の水分吸収用吸着剤と、前記円筒型容器に対してそれぞれ反対側の方向から、水分吸収用吸着剤、窒素吸収用吸着剤、水分吸収用吸着剤の順に通過する空気を供給するための空気供給流路と、該空気供給流路によって供給され、前記円筒型容器を通過した空気を受けるための空気排出流路とを備えた回転式酸素富化空気製造装置を用いることが提案されている。
【0005】
そして、この特許文献1においては、第1の空気供給流路から燃焼用空気を回転可能な円筒型容器内の片側の部分に導いて、燃焼用空気中における窒素を窒素吸収用吸着剤に吸着させ、酸素濃度が高くなった酸素富化空気を第1の空気排出流路から排出させて燃焼に使用する一方、第2の空気供給流路から空気を回転可能な円筒型容器内の反対側の部分に導いて、窒素吸収用吸着剤に吸着された窒素を窒素吸収用吸着剤から離脱させて前記の空気と一緒に第2の空気排出流路から排出させるようにし、前記の円筒型容器を回転させて、窒素吸収用吸着剤に燃焼用空気中における窒素を吸着させる一方、窒素吸収用吸着剤に吸着された窒素を離脱させるようにしている。
【0006】
しかし、このような回転式酸素富化空気製造装置を各蓄熱式燃焼装置に個別に設ける場合、コストが非常に高く付くと共に装置も大型化し、また、前記のように円筒型容器を適当な時期に適切に回転させて、窒素吸収用吸着剤に燃焼用空気中における窒素を吸着させる一方、窒素吸収用吸着剤に吸着された窒素を離脱させることが必要なって、操作が非常に困難かつ面倒になる等の様々な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−186101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、空気供給経路から蓄熱材が収容された蓄熱部を通して導かれた燃焼用空気と燃料供給部から供給された燃料とを炉内において燃焼させる一方、炉内における燃焼排ガスを蓄熱材が収容された蓄熱部を通して排ガス排気経路に導いて排出させる蓄熱式燃焼装置が対になって設けられた蓄熱式燃焼設備における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0009】
すなわち、本発明は、前記のような蓄熱式燃焼設備において、燃焼用空気中における窒素を窒素処理部に収容された窒素吸着材に吸着させて減少させ、燃焼用空気中における酸素濃度を高めて高温での燃焼を行うと共に、前記の窒素吸着材に吸着された窒素を離脱させるにあたり、これらの操作が簡単な設備によって効率よく行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における蓄熱式燃焼設備においては、前記のような課題を解決するため、空気供給経路から蓄熱材が収容された蓄熱部を通して導かれた燃焼用空気と燃料供給部から供給された燃料とを炉内において燃焼させる一方、炉内における燃焼排ガスを蓄熱材が収容された蓄熱部を通して排ガス排気経路に導いて排出させる蓄熱式燃焼装置が対になって設けられた蓄熱式燃焼設備において、
前記の対になった各蓄熱式燃焼装置においてそれぞれ、前記の空気供給経路及び排ガス排気経路と、前記の蓄熱部における蓄熱材との間に、窒素吸着材を収容させた窒素処理部を設け、前記の空気供給経路を通して蓄熱部に導かれる燃焼用空気中における窒素をこの窒素処理部における窒素吸着材に吸着させる一方、前記の蓄熱部を通して燃焼排ガスを排ガス排気経路に導く場合に、前記の窒素処理部に収容された窒素吸着材に吸着された窒素を離脱させて、前記の燃焼排ガスと一緒に排ガス排気経路を通して排出させるようにした。
【0011】
本発明の蓄熱式燃焼設備のように、
対になった各蓄熱式燃焼装置においてそれぞれ、前記の空気供給経路及び排ガス排気経路と、前記の蓄熱部における蓄熱材との間に、窒素吸着材を収容させた窒素処理部を設け、前記の空気供給経路を通して蓄熱部に導かれる燃焼用空気中における窒素をこの窒素処理部における窒素吸着材に吸着させる一方、蓄熱部を通して燃焼排ガスを排ガス排気経路に導く場合に、前記の窒素処理部に収容された窒素吸着材に吸着された窒素を離脱させて、燃焼排ガスと一緒に排ガス排気経路を通して排出させるようにすると、対になった蓄熱式燃焼装置において燃焼動作と蓄熱動作とを繰り返して行うだけで、燃焼用空気中における酸素濃度を高めて高温での燃焼を行う一方、燃焼排ガスを排気させる際に、前記の窒素吸着材に吸着された窒素を離脱させることができるようになる。
【0012】
ここで、本発明の蓄熱式燃焼設備においては、前記の窒素処理部を設けるにあたり、前記の空気供給経路と排ガス排気経路とが合流して前記の蓄熱部と連通される合流経路に前記の窒素処理部を設けると共に、前記の空気供給経路と排ガス排気経路とにそれぞれ開閉弁を設け、空気供給経路に設けた前記の開閉弁を開けて、燃焼用空気を空気供給経路から窒素処理部に導く一方、排ガス排気経路に設けた開閉弁を開けて、燃焼排ガスを蓄熱部から窒素処理部を通して排ガス排気経路に導くようにすることができる。
【0013】
また、このように窒素処理部を空気供給経路と排ガス排気経路とが合流して蓄熱部と連通される合流経路に設ける場合、この合流経路に前記の窒素処理部を迂回するバイパス経路を設けると共に、前記のバイパス経路を通して流れる燃焼用空気及び/又は燃焼排ガスの量を調整する流量調整手段を設けることができる。そして、前記の流量調整手段によりバイパス経路を通して流れる燃焼用空気の流量を調整すると、蓄熱部を通して導かれる燃焼用空気中における酸素濃度の調整が簡単に行えるようになると共に、窒素処理部における窒素吸着材に窒素が多く吸着されて、燃焼用空気が窒素処理部を流れにくくなった場合においても、流量調整手段によりバイパス経路を通して流れる燃焼用空気の流量を調整することにより、適当量の燃焼用空気を蓄熱部に導いて燃焼に用いることができるようになる。
【0014】
また、前記のように窒素処理部を空気供給経路と排ガス排気経路とが合流して蓄熱部と連通される合流経路に設け、この合流経路に窒素処理部を迂回するバイパス経路を設けた場合、前記のバイパス経路を通して燃焼排ガスを流し、前記の窒素処理部内を減圧させて、前記の窒素吸着材に吸着された窒素を離脱させるようにすることができる。
【0015】
また、本発明の蓄熱式燃焼設備においては、前記のように空気供給経路から蓄熱部に導かれる燃焼用空気中における窒素を吸着させる窒素吸着材を収容させた窒素処理部を設けるにあたり、蓄熱材が収容された前記の蓄熱部内に、窒素吸着材を収容させた窒素処理部を設けるようにすることもできる。
【0016】
また、本発明の蓄熱式燃焼設備においては、前記の排ガス排気経路に燃焼排ガスを吸引する排気装置を設けるようにすることができる。このように、排ガス排気経路に排気装置を設け、この排気装置によって燃焼排ガスを吸引させると、窒素処理部内が減圧させて、窒素吸着材に吸着された窒素を適切に離脱させることが簡単に行えるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明における蓄熱式燃焼設備においては、前記のように
対になった各蓄熱式燃焼装置においてそれぞれ、前記の空気供給経路及び排ガス排気経路と、前記の蓄熱部における蓄熱材との間に、窒素吸着材を収容させた窒素処理部を設け、前記の空気供給経路を通して蓄熱部に導かれる燃焼用空気中における窒素を、窒素処理部に収容された窒素吸着材に吸着させる一方、窒素吸着材に吸着された窒素を、蓄熱部を通して排ガス排気経路に導かれる燃焼排ガス中に離脱させて排出させるようにしたため、対になった蓄熱式燃焼装置において燃焼動作と蓄熱動作とを繰り返して行うだけで、燃焼用空気中における酸素濃度を高めて高温での燃焼を行うことができると共に、燃焼排ガスを排気させる際に、前記の窒素吸着材に吸着された窒素を適切に離脱させることができるようになる。
【0018】
この結果、本発明における蓄熱式燃焼設備においては、従来のような回転式酸素富化空気製造装置を設けなくても、燃焼用空気中における窒素を窒素処理部に収容された窒素吸着材に吸着させて減少させ、燃焼用空気中における酸素濃度を高めて高温での燃焼を行うと共に、前記の窒素吸着材に吸着された窒素を離脱させる操作が簡単な設備によって効率よく行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓄熱式燃焼設備を用いた加熱炉を示した概略説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る蓄熱式燃焼設備において、空気供給経路と排ガス排気経路とが合流して蓄熱部に連通される合流経路に、窒素処理部を迂回するバイパス経路を設けると共に、このバイパス経路を通して流れる燃焼用空気及び/又は燃焼排ガスの量を調整する流量調整手段を設けた第1の変更例の蓄熱式燃焼設備を示した部分概略説明図である。
【
図3】前記の第1の変更例の蓄熱式燃焼設備において、前記の合流経路に設けられた窒素処理部において、バイパス経路に囲まれた部分における燃焼用空気の送り方向下流側の位置に、窒素処理部から蓄熱部に向かう燃焼用空気を通過させる一方、蓄熱部から燃焼排ガスが窒素処理部に導かれるのを停止させる逆止弁を設けた第2の変更例の蓄熱式燃焼設備を示し、(A)は蓄熱式燃焼装置において燃焼動作を行う状態を示した部分概略説明図、(B)は蓄熱式燃焼装置において蓄熱動作を行う状態を示した部分概略説明図である。
【
図4】前記の第2の変更例の蓄熱式燃焼設備において、バイパス経路における流量調整手段に代えて、バイパス経路に、空気供給経路から蓄熱部に向かう燃焼用空気を停止させる一方、蓄熱部から排ガス排気経路に導かれる燃焼排ガスを通過させる逆止弁を設けた第3の変更例の蓄熱式燃焼設備を示し、(A)は蓄熱式燃焼装置において燃焼動作を行う状態を示した部分概略説明図、(B)は蓄熱式燃焼装置において蓄熱動作を行う状態を示した部分概略説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る蓄熱式燃焼設備において、蓄熱材が収容された蓄熱部内に、窒素吸着材を収容させた窒素処理部を設けた第4の変更例の蓄熱式燃焼設備を示した部分概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る蓄熱式燃焼設備を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る蓄熱式燃焼設備は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0021】
この実施形態における蓄熱式燃焼設備においては、
図1に示すように、対になった蓄熱式燃焼装置10a,10bを加熱炉(炉)1の内部に向けて対向するように設け、対になった各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおいては、それぞれ燃料を供給する燃料供給部11a,11bを設けると共に、蓄熱材xを収容させた蓄熱部12a,12bを設けている。
【0022】
ここで、前記の各蓄熱式燃焼装置10a,10bにおいて、燃焼動作を行う場合には、燃焼用空気を給気装置2により空気供給経路3を通して蓄熱部12a,12bに導き、蓄熱部12a,12bに収容された蓄熱材xに蓄熱された熱により前記の燃焼用空気を加熱させ、このように加熱された燃焼用空気と前記の燃料供給部11a,11bから供給された燃料とを加熱炉1内において燃焼させるようにしている。一方、蓄熱動作を行う場合には、加熱炉1内において前記のように燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱部12a,12bに導き、蓄熱部12a,12bに収容された蓄熱材xに燃焼排ガスの熱を蓄熱させた後、この燃焼排ガスを排気装置4により排ガス排気経路5を通して吸引し、煙道6を通してこの燃焼排ガスを排出させるようにしている。
【0023】
そして、前記のような燃焼動作と蓄熱動作とを、前記の対になった蓄熱式燃焼装置10a,10bにおいて交互に切り換えて行うようにしている。
【0024】
ここで、この実施形態における蓄熱式燃焼設備においては、前記の各蓄熱式燃焼装置10a,10bの各蓄熱部12a,12bに燃焼用空気を導く空気供給経路3の部分にそれぞれ開閉弁3a,3bを設け、これらの開閉弁3a,3bを開閉させて、各蓄熱部12a,12bに燃焼用空気が導かれるのを制御するようにしている。また、各蓄熱部12a,12bから燃焼排ガスが導かれる前記の排ガス排気経路5の部分にもそれぞれ開閉弁5a,5bを設け、これらの開閉弁5a,5bを開閉させて、各蓄熱部12a,12bを通して燃焼排ガスが排ガス排気経路5に導かれるのを制御するようにしている。
【0025】
また、この実施形態における蓄熱式燃焼設備においては、各蓄熱部12a,12bに対して空気供給経路3と排ガス排気経路5とを接続させるにあたり、前記の各開閉弁3a,3b、5a,5bと各蓄熱部12a,12bとの間に、空気供給経路3と排ガス排気経路5とを合流させた合流経路21a,21bを設けると共に、各合流経路21a,21bに、それぞれ窒素吸着材yを収容させた窒素処理部20a,20bを設けている。
【0026】
ここで、この実施形態における蓄熱式燃焼設備において、
図1に示すように、燃焼動作を行う一方の蓄熱式燃焼装置10aにおいては、その蓄熱部12aから燃焼排ガスが導かれる排ガス排気経路5に設けた開閉弁5aを閉じた状態で、燃焼用空気を蓄熱部12aに導く空気供給経路3に設けた開閉弁3aを開け、燃焼用空気を窒素吸着材yが収容された窒素処理部20aに導き、この窒素処理部20aにおける窒素吸着材yに燃焼用空気中における窒素を吸着させて、燃焼用空気中における酸素濃度を高め、このように酸素濃度が高くなった燃焼用空気を前記の蓄熱部12aに導くようにする。
【0027】
そして、このように酸素濃度が高くなった燃焼用空気を前記の蓄熱部12aにおける蓄熱材xに蓄熱された熱によって加熱させ、このように酸素濃度が高い状態で加熱された燃焼用空気と前記の燃料供給部11aから供給された燃料とを加熱炉1内において燃焼させるようにする。
【0028】
このようにすると、燃焼用空気中における酸素濃度を高めて高温で、熱効率の高い燃焼を行うことができるようになる。
【0029】
一方、蓄熱動作を行う他方の蓄熱式燃焼装置10bにおいては、燃焼用空気を蓄熱部12bに導く空気供給経路3に設けた開閉弁3bを閉じた状態で、蓄熱部12bから燃焼排ガスが導かれる排ガス排気経路5に設けた開閉弁5bを開け、前記のように燃焼された加熱炉1内における燃焼排ガスを蓄熱部12bに導き、燃焼排ガスの熱を蓄熱部12bに収容された蓄熱材xに蓄熱させた後、この燃焼排ガスを前記の排気装置4により窒素吸着材yが収容された窒素処理部20bを通して排ガス排気経路5に吸引して、窒素処理部20bにおける窒素吸着材yに吸着された窒素を離脱させ、離脱された窒素を燃焼排ガスと一緒に排ガス排気経路5を通して煙道6に導いて排出させるようにしている。
【0030】
このようにすると、従来のような回転式酸素富化空気製造装置を設けなくても、窒素処理部20bにおける窒素吸着材yに吸着された窒素を、窒素吸着材yから簡単に離脱させて燃焼排ガスと一緒に排出できるようになる。
【0031】
そして、前記のような燃焼動作と蓄熱動作とを前記の対になった蓄熱式燃焼装置10a,10bにおいて交互に切り換えて行うと、燃焼動作時には、燃焼用空気中における窒素を窒素吸着材yに吸着させて燃焼用空気中における酸素濃度を高め、高温で熱効率の高い燃焼を行うことができるようになると共に、蓄熱動作時には、窒素吸着材yに吸着された窒素を簡単に離脱させて、燃焼排ガスと一緒に排出できるようになる。
【0032】
また、前記の実施形態における蓄熱式燃焼設備のように、空気供給経路3と排ガス排気経路5とが合流して蓄熱部12a(12b)と連通される合流経路21a(21b)に前記の窒素処理部20a(20b)を設けるにあたり、
図2に示すように、前記の合流経路21a(21b)に窒素処理部20a(20b)を迂回するバイパス経路22a(22b)を設けると共に、このバイパス経路22a(22b)を通して流れる燃焼用空気及び/又は燃焼排ガスの量を調整する流量調整手段23a(23b)を設けることができる。
【0033】
そして、
図2に示すように、排ガス排気経路5に設けた開閉弁5a(5b)を閉じる一方、空気供給経路3に設けた開閉弁3a(3b)を開けた状態で、前記の流量調整手段23a(23b)により、前記の窒素処理部20a(20b)を通して流れる燃焼用空気の流量とバイパス経路22a(22b)を通して流れる燃焼用空気の流量とを調整すると、蓄熱部12a(12b)を通して導かれる燃焼用空気中における酸素濃度を適切に調整して、適切な燃焼を行うことができるようになると共に、窒素処理部20a(20b)における窒素吸着材yの空気抵抗が大きく、燃焼用空気が窒素処理部20a(20b)を流れにくい場合においても、流量調整手段23a(23b)によりバイパス経路22a(22b)を通して流れる燃焼用空気の流量を調整することにより、適当量の燃焼用空気を蓄熱部12a(12b)に導いて燃焼に用いることができるようになる。
【0034】
また、前記の
図2に示す蓄熱式燃焼設備のように、前記の合流経路21a(21b)に窒素処理部20a(20b)を迂回するバイパス経路22a(22b)を設けると共に、このバイパス経路22a(22b)を通して流れる燃焼用空気及び/又は燃焼排ガスの量を調整する流量調整手段23a(23b)を設けた場合において、
図3(A),(B)に示すように、合流経路21a(21b)に設けられた窒素処理部20a(20b)において、バイパス経路22a(22b)に囲まれた部分における燃焼用空気の送り方向下流側の位置に、窒素処理部20a(20b)から蓄熱部12a(12b)に向かう燃焼用空気を通過させるようにする一方、蓄熱部12a(12b)から燃焼排ガスが窒素処理部20a(20b)に導かれないようにする逆止弁24a(24b)を設けるようにすることができる。
【0035】
このように、窒素処理部20a(20b)より燃焼用空気の送り方向下流側の位置において、窒素処理部20a(20b)から蓄熱部12a(12b)に向かう燃焼用空気を通過させる一方、蓄熱部12a(12b)から燃焼排ガスが窒素処理部20a(20b)に導かれるのを停止させる逆止弁24a(24b)を設けた場合において、
図3(A)に示すように、排ガス排気経路5に設けた開閉弁5a(5b)を閉じる一方、空気供給経路3に設けた開閉弁3a(3b)を開けて、窒素処理部20a(20b)を通して燃焼用空気を蓄熱部12a(12b)に導くにあたり、前記のように流量調整手段23a(23b)により、前記の窒素処理部20a(20b)及び逆止弁24a(24b)を通して流れる燃焼用空気の流量とバイパス経路22a(22b)を通して流れる燃焼用空気の流量とを調整すると、蓄熱部12a(12b)を通して導かれる燃焼用空気中における酸素濃度を適切に調整して、適切な燃焼を行うことができるようになると共に、窒素処理部20a(20b)における窒素吸着材yの空気抵抗が大きく、燃焼用空気が窒素処理部20a(20b)を流れにくい場合においても、流量調整手段23a(23b)によりバイパス経路22a(22b)を通して流れる燃焼用空気の流量を調整することにより、適当量の燃焼用空気を蓄熱部12a(12b)に導いて燃焼に用いることができるようになる。
【0036】
一方、
図3(B)に示すように、空気供給経路3に設けた開閉弁3a(3b)を閉じる一方、排ガス排気経路5に設けた開閉弁5a(5b)を開けた状態で、加熱炉1内における燃焼排ガスを蓄熱部12a(12b)に導き、燃焼排ガスの熱を蓄熱部12a(12b)に収容された蓄熱材xに蓄熱させた後、この燃焼排ガスを前記の排気装置4により排ガス排気経路5に吸引するようにした場合、燃焼排ガスは前記の逆止弁24a(24b)により抑止されて窒素処理部20a(20b)に導かれずに、前記の流量調整手段23a(23b)が設けられたバイパス経路22a(22b)だけを通して排ガス排気経路5に導かれるようになる。
【0037】
そして、このようにバイパス経路22a(22b)を通して排ガス排気経路5に導かれる燃焼排ガスの流れにより、前記の窒素処理部20a(20b)内が負圧になって吸引されると、この減圧によって窒素吸着材yに吸着されている窒素が離脱されて、前記の燃焼排ガスと一緒に排ガス排気経路5を通して煙道6に導かれて排出されるようになる。なお、このようにバイパス経路22a(22b)を通して排ガス排気経路5に導かれる燃焼排ガスの流れにより、前記の窒素処理部20a(20b)内を吸引させて、窒素吸着材yに吸着されている窒素を十分に離脱させるためには、蓄熱式燃焼装置10a,10bが蓄熱動作のときだけ、バイパス経路22a(22b)に設けた流量調整手段23a(23b)を十分に開放させて、バイパス経路22a(22b)を通して排ガス排気経路5に導かれる燃焼排ガスの流量を大きくすることが好ましい。
【0038】
また、
図4(A),(B)に示すように、前記の合流経路21a(21b)に窒素処理部20a(20b)を迂回するバイパス経路22a(22b)を設けると共に、このバイパス経路22a(22b)に、空気供給経路3から蓄熱部12a(12b)に向かう燃焼用空気を停止させる一方、蓄熱部12a(12b)から燃焼排ガスが排ガス排気経路5に導かれるようにする逆止弁25a(25b)を設けると共に、前記の
図3(A),(B)の場合と同様に、合流経路21a(21b)に設けられた窒素処理部20a(20b)において、バイパス経路22a(22b)に囲まれた部分における燃焼用空気の送り方向下流側の位置に、窒素処理部20a(20b)から蓄熱部12a(12b)に向かう燃焼用空気を通過させる一方、蓄熱部12a(12b)から燃焼排ガスが窒素処理部20a(20b)に導かれるのを停止させる逆止弁24a(24b)を設けるようにすることができる。
【0039】
このようにした場合、
図4(A)に示すように、排ガス排気経路5に設けた開閉弁5a(5b)を閉じる一方、空気供給経路3に設けた開閉弁3a(3b)を開けると、空気供給経路3から蓄熱部12a(12b)に向かう燃焼用空気は、バイパス経路22a(22b)を通らずに、前記の窒素処理部20a(20b)を通して蓄熱部12a(12b)に導かれ、燃焼用空気中における窒素が窒素処理部20a(20b)における窒素吸着材yに吸着されて、酸素濃度が高くなった燃焼用空気が蓄熱部12a(12b)に導かれるようになる。
【0040】
一方、
図4(B)に示すように、排ガス排気経路5に設けた開閉弁5a(5b)を開ける一方、空気供給経路3に設けた開閉弁3a(3b)を閉じた状態で、加熱炉1内における燃焼排ガスを蓄熱部12a(12b)に導き、燃焼排ガスの熱を蓄熱部12a(12b)に収容された蓄熱材xに蓄熱させた後、この燃焼排ガスを前記の排気装置4により排ガス排気経路5に吸引するようにした場合、燃焼排ガスは前記の逆止弁24a(24b)により抑止されて窒素処理部20a(20b)に導かれずに、前記のバイパス経路22a(22b)に設けられた逆止弁25a(25b)だけを通して排ガス排気経路5に導かれるようになる。
【0041】
そして、このようにした場合も、前記のようにバイパス経路22a(22b)を通して排ガス排気経路5に導かれる燃焼排ガスの流れにより、前記の窒素処理部20a(20b)内が負圧になって吸引され、この減圧によって窒素吸着材yに吸着されている窒素が離脱されて、前記の燃焼排ガスと一緒に排ガス排気経路5を通して煙道6に導いて排出させるようになる。
【0042】
また、前記の各蓄熱式燃焼設備においては、窒素吸着材yが収容された窒素処理部20a(20b)を、空気供給経路3及び排ガス排気経路5と蓄熱部12a(12b)との間に設けるようにしたが、
図5に示すように、蓄熱材xが収容された蓄熱部12a(12b)内に、窒素吸着材yが収容された窒素処理部20a(20b)を設けるようにすることもできる。
【0043】
また、前記の各蓄熱式燃焼設備においては、窒素吸着材yに吸着されている窒素が適切に離脱されるようにすると共に、燃焼排ガスが排ガス排気経路5を通して排出されるようにするため、排気装置4により燃焼排ガスを排ガス排気経路5に吸引させるようにしたが、煙道6の煙突効果による吸引力が排ガス排気経路5に働いて窒素吸着材yに吸着されている窒素が適切に離脱されて、燃焼排ガスが排ガス排気経路5を通して適切に排出される場合には、必ずしも、排気装置4を設ける必要はない。
【0044】
なお、この実施形態では、蓄熱式燃焼装置10a,10bを対向するように設けたが、横並びに配置する等、別の配置でも良い。
【符号の説明】
【0045】
1 加熱炉(炉)
2 給気装置
3 空気供給経路
3a、3b 開閉弁
4 排気装置
5 排ガス排気経路
5a、5b 開閉弁
6 煙道
10a、10b 蓄熱式燃焼装置
11a、11b 燃料供給部
12a、12b 蓄熱部
20a、20b 窒素処理部
21a、21b 合流経路
22a、22b バイパス経路
23a、23b 流量調整手段
24a、24b 逆止弁
25a、25b 逆止弁
x 蓄熱材
y 窒素吸着材