特許第6385333号(P6385333)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385333
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】振動リング構造体
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5684 20120101AFI20180827BHJP
【FI】
   G01C19/5684
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-500978(P2015-500978)
(86)(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公表番号】特表2015-511023(P2015-511023A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】GB2013050615
(87)【国際公開番号】WO2013140134
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】1205014.2
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509115236
【氏名又は名称】アトランティック イナーシャル システムズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Atlantic Inertial Systems Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ポール・フェル
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・エリー
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05872313(US,A)
【文献】 特開2007−271611(JP,A)
【文献】 特開平10−047972(JP,A)
【文献】 特表2003−530540(JP,A)
【文献】 特許第4571943(JP,B2)
【文献】 特表平11−513111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/56−19/5783
G01P 15/00−15/18
G01P 7/00
H03B 5/30− 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング本体およびそれに固定された少なくとも8つの実質的に同じリング容量電極を含む振動リングジャイロスコープであって、それぞれのリング容量電極が、前記リング本体の第1の角度範囲上に伸び、前記リング本体の第2の角度範囲上で前記リング本体に取付けられ、前記第1の角度範囲が、前記第2の角度範囲より大きく、前記リング容量電極が、取付け部材により前記リング本体に固定され、前記取付け部材の幅が前記第2の角度範囲を画定し、それぞれのリング容量電極が2つのカンチレバーを含み、それぞれのカンチレバーがその底部で前記取付け部材により前記リング本体に固定され、少なくとも1つのリング容量電極が、前記ジャイロスコープの面内曲げ振動モードの波腹に中心がある第2の角度範囲を有する、ジャイロスコープ。
【請求項2】
前記ジャイロスコープが、前記取付け部材と半径方向に整列される位置で前記リング本体に固定されたリガメントを含む懸架手段をさらに含む、請求項1記載のジャイロスコープ。
【請求項3】
前記リング容量電極が、前記リング本体の外側に放射状に配置される、請求項1または2に記載のジャイロスコープ。
【請求項4】
前記ジャイロスコープの前記面内曲げ振動モードで前記リング容量電極が実質的に変形を生じないように、前記少なくとも1つのリング容量電極が前記ジャイロスコープの前記面内曲げ振動モードの共振振動数の少なくとも2倍の共振振動数を有する、請求項に記載のジャイロスコープ。
【請求項5】
前記ジャイロスコープが、一次面内曲げ振動モードおよび二次面内曲げ振動モードを有し、リング軸の周りの前記ジャイロスコープの角運動が前記一次面内曲げ振動モードと前記二次面内曲げ振動モードの間でコリオリ結合を生じ、少なくとも1つのリング容量電極が、第2の角度範囲の中心が前記一次面内曲げ振動モードの波腹にある少なくとも1つの一次リング容量電極、および第2の角度範囲の中心が前記二次面内曲げ振動モードの波腹にある少なくとも1つの二次リング容量電極を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のジャイロスコープ。
【請求項6】
前記第1の角度範囲が、前記第2の角度範囲より少なくとも5倍大きい、請求項1からのいずれか一項に記載のジャイロスコープ。
【請求項7】
それぞれのリング容量電極に関連する固定電極をさらに含み、固定電極およびリング容量電極のそれぞれの対が容量変換器を規定する、請求項1からのいずれか一項に記載のジャイロスコープ。
【請求項8】
前記一次面内曲げ振動モードを開始し、維持する一次駆動手段および前記二次面内曲げ振動モードを検出する二次検出手段をさらに含み、前記一次駆動手段および/または前記二次検出手段が、リング容量電極および対応する固定電極を含む、請求項に記載のジャイロスコープ。
【請求項9】
前記一次面内曲げ振動モードを検出する一次検出手段、および前記二次面内曲げ振動モードをゼロにする二次駆動手段をさらに含み、前記一次検出手段および/または前記二次駆動手段が、リング容量電極および対応する固定電極を含む、請求項に記載のジャイロスコープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動リング構造体に関する。特に、本発明は、容量変換器を備えたジャイロスコープの振動リング構造体としての使用に適する構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
振動リング構造体を利用するデバイスの例は、特許文献1に記載のリングジャイロスコープである。このようなデバイスは、MEMS技術を使って作られ、cos2θ面内曲げモード対を使って動作する。リングは、静電容量変換を使って駆動され、検知されるが、この場合、固定電極がリング構造体の近くに配置される。リング構造体と固定電極との間の相互容量は、静電結合を生じ、これを使って、リング構造体に力を作用させるか、またはリング構造体の変位もしくは速度を検出することができる。特許文献1のジャイロスコープは、角速度センサーとして動作するが、レート積分振動ジャイロスコープも知られている。振動リング構造体は、その他のデバイスにも使用でき、ジャイロスコープは、このような構造体の1つの用途に過ぎないことは理解されよう。特許文献2には、リング構造体がリング構造体の面外にある支持脚により上と下から支持されている配置が記載されている。特許文献3および特許文献4には、それぞれ、圧電性リング構造体が外表面上に駆動電極を保持している配置が記載されている。特許文献5には、リング構造体の上表面に取付けられた圧電変換器を備えたリング構造体が記載されている。
【0003】
帯電はMEMSデバイスの非導電体層内に電荷が集積する既知の現象である。高度にドープされたシリコンが容量電極として使われるシリコンMEMS構造体では、通常、誘電体自然シリコン酸化物層が表面に形成される。さらに誘電体層が、表面上に成長または沈着する場合もある。電場が誘電体層の両端間に印加されると、電荷が誘電体層内のトラップに集積する可能性がある。容量変換器を備えたMEMSデバイスは、通常、比較的高電場を用いるために、電場内の誘電体材料が帯電する場合がある。電荷トラップが満たされると、電荷が蓄積され、最終的に定常状態に到達するであろう。電場が取り除かれると、電荷は、通常、最初の帯電よりはるかに遅い速度でトラップから消散し、これは、高電場の存在により加速された。例えば、電荷が数秒で蓄積するのに比べて、誘電体内の電荷が消散するのに数時間を要する場合がある。
【0004】
2つの導電体間の誘電体層上の電荷の蓄積は、導電体間の実効バイアス電圧を変更する効果がある。可動電極と固定電極との間で固定バイアスが採用される容量ピックオフ変換器に対しては、通常、このような帯電の影響は、変換器の導電体間の実効電圧バイアスを減らすことである。固定電圧バイアスの2つの電極の相対運動により生ずる変位電流は、その電圧バイアスに比例する。従って、電圧バイアスの変化は、容量変換器の感度の変化につながる。同様に、当業者なら、容量変換器からの力は、実効バイアス電圧に関係し、実効バイアス電圧は、帯電により影響を受ける可能性があることを理解するであろう。
【0005】
プロセスの変動、または材料の欠陥により、MEMSデバイス全体にわたる電荷のトラッピングの分布が変わり、結果として、電場の印加後に不均一な電荷分布が生じる場合がある。そのために、容量変換器の2つの導電体間で不均一な電荷分布が発生する場合がある。
【0006】
特許文献1に記載のMEMSジャイロスコープの場合、二次ピックオフ変換器は約40度の角度範囲にまで広げることができる。二次ピックオフ変換器のどちらの電極の表面上にトラップされた電荷密度の変動も、ピックオフ変換器の範囲全体にわたる感度の変動につながる可能性がある。これが、リング構造体に対するピックオフ変換器センサーの実効的整列を変える効果がある場合があり、このことが、二次ピックオフ変換器を一次モードに対し敏感にする可能性がある。同様に、電荷密度の変動が、電極に対する一次駆動変換器の実効的整列の変化につながる場合がある。
【0007】
特許文献1のデバイスでは、一次および二次変換器が相互に45度ずれていることが重要であり、それにより、二次変換器が一次変換器により励起される一次振動モードに敏感ではないことは理解されよう。例えば、前に記載のようないずれの位置ずれであっても、二次変換器が一次モードに敏感になる原因となり、レートバイアスの増加を生じる。
【0008】
従って、不均一な電荷トラッピングを生じるピックオフ変換器の位置ずれが起こる可能性を防ぐ振動リング構造体が望まれている。
【0009】
さらに、変換器の静電結合が最大化される場合に、容量リングジャイロスコープの性能が最大化されることが知られている。これを実現できる1つの方法は、一次および二次振動モードで固定電極とリング構造体との間の容量の変化を最大化することである。リング構造体の周辺で利用可能な空間により、変位を検出できる領域が制限される。さらに、一次または二次モードでのリングの半径方向変位は、円周方向の位置と共に変化し、その結果、振動波腹から離れた領域は半径方向変位が減少するので、固定電極の円周方向の広がりの増加は、収穫逓減を生じる場合がある。固定電極の半径方向の広がりを増やすことにより、半径方向の広がりの増加に比例して、合計容量が増える傾向があり、他方、半径方向の広がりのそれぞれの余分の増分に対する容量の変化は減少する傾向がある。
【0010】
不均一な電荷トラッピングに対し比較的低い感度であり、リング構造体と隣接固定電極との間の改善された静電結合を可能とする振動リング構造体を提供することが望まれている。可能な限り小さいリング構造体が望まれており、そのために、実質的に寸法を大きくしないでこれらの問題を解決するリング構造体がさらに望まれている。このような改善されたリング構造体は、改善された性能、例えば、改善されたバイアス性能および衝撃安定性を備えた角速度センサーとして使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1775551号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0036726号明細書
【特許文献3】特開平08−068638号公報
【特許文献4】特開平07−091955号公報
【特許文献5】国際公開2011/013429号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、リング本体およびそれに固定された少なくとも1つのリング容量電極を含む振動リング構造体が存在し、特定またはそれぞれのリング電極が、リング本体の第1の角度範囲上に伸び、リング本体の第2の角度範囲上でリング本体に取付けられ、第1の角度範囲が第2の角度範囲よりも広くなっている。
【0013】
このような配置は、全リング電極が使用時に実質的に半径方向に同じ距離だけ動くことになり、その全長に沿って対応する固定電極から実質的に均一な間隔を維持し、それにより、静電結合を強めることができる点で利点がある。
【0014】
少なくとも1つのリング電極が、リング構造体の面内曲げ振動モードの波腹を中心とする第2の角度範囲を有するのが好ましい。
【0015】
リング電極は、取付け部材によりリング本体に固定され、取付け部材の幅が第2の角度範囲を画定するのが好ましい。取付け部材は、リング本体およびリング電極と一体化されるのが好都合である。
【0016】
好ましくは、リング構造体は、取付け部材と半径方向に整列された位置でリング本体に固定されたリガメントなどの懸架手段をさらに含む。
【0017】
便宜上、リング電極は、リング本体の外側に放射上に配置される。
【0018】
好ましくは、第1の角度範囲は、第2の角度範囲より5倍大きい。
【0019】
リング構造体の振動モードでリング電極が実質的に変形しないように、少なくとも1つのリング電極に対し、リング構造体の振動モードの振動数の少なくとも2倍の共振振動数を持たせることができる。
【0020】
リング構造体は、一次および二次面内曲げ振動モードを持つことができ、リング軸周りのリング構造体の角運動が一次と二次モードとの間でコリオリ結合を生じ、少なくとも1つのリング電極が、一次モードの波腹を中心とする第2の角度範囲を有する少なくとも1つの一次リング電極、および二次モードの波腹を中心とする第2の角度範囲を有する少なくとも1つの二次リング電極を含む。
【0021】
好ましくは、構造体は、各リング電極に対応する固定電極をさらに含み、固定およびリング電極のそれぞれの対が容量変換器を規定する。このような配置は、ジャイロスコープとしての使用に適している。従って、本発明の別の態様では、以降で規定されるタイプの構造体、一次振動モードを開始して維持する一次駆動手段、および第2の振動モードを検出する二次検出手段を含むジャイロスコープが提供され、一次駆動手段および/または二次検出手段は、構造体のリング電極および対応する固定電極を含む。
【0022】
ジャイロスコープは、一次振動モードを検出する一次検出手段、および二次振動モードをゼロにする二次駆動手段をさらに含むことができ、一次検出手段および/または二次駆動手段は、リング電極および対応する固定電極を含む。
本発明に関して、付随する図面を参照しながら、実施例を使ってさらに説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】既知の角速度センサーの平面略図である。
図2】本発明の実施形態による振動リング構造体を示す概略図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】本発明の実施形態のモード解析図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初に、図1を参照すると、既知の振動リング構造体10が示されている。構造体10は、8個の懸架リガメント14に取付けられ、支持され、それにより、本体12が中央固定留め具16に連結され、支持されているリング部または本体12を含む。懸架リガメント14は、リング本体12の周方向で実質的に等角度の間隔を置いて相互に離れており、それぞれのリガメント14は、弓状部14cにより相互連結された半径方向に伸びる部分14a、14bの対を含む。
【0025】
8個の外側固定電極18は、リング本体12の外側で、かつそれと隣接して、放射上に配置され、固定電極18は、本体12の周方向に、実質的に等角度に間隔を置いて配置される。それぞれの固定電極18は、均一幅のトレンチ20の一部により、リング本体12の隣接部から分離され、トレンチは、それぞれの外側固定電極18の実質的に平行および垂直に隣接する面と、隣接するリング本体12の一部の間の間隙または空間を画定する。外側の、リング本体12および固定電極18の接面は、導電性になるように配置され、リング本体12および固定電極18の隣接面は、それにより、リング本体12の位置および/または速度を検知し、静電力を作用させてリング本体12で振動を励起し、および/またはリング本体12のモードの周波数をチューニングするために使用できる可変コンデンサーを形成する。
【0026】
図1の既知のジャイロスコープでは、18aと18bの番号で識別される固定電極を使って、一次cos2θモードを駆動でき、固定電極18cと18dを使って、一次モードの振幅が検出される。同様に、固定電極18eと18fを使って、二次モードを検出でき、固定電極18gと18hを使って二次モードをゼロにできる。
【0027】
それぞれの固定電極18は、例えば、約40度の角度範囲に伸びる。それぞれの電極18は、一次モード(電極18a、18b、18cおよび18dの場合)または二次モード(電極18e、18f、18gおよび18hの場合)の波腹が中心になっている。例えば、固定電極18bは、一次ノードの波腹上が中心であってもよい。便宜上、リング本体12は、固定電極18bの中心で1の一次モードに対する正規化半径方向モード変位を持つが、それから離れたリング本体12の領域、例えば、固定電極18bの端部に隣接する領域は、少ない半径方向モード変位を持つ。例えば、固定電極18bの端部では、正規化変位は、最大の0.77に過ぎない(cos(2*20度))。従って、モード波腹から離れたリング本体12の領域は、それらの領域に応じて、波腹に位置するリング本体12の領域よりそのモードに対する感度が低下する。リング本体12に対する固定電極18の角度位置ずれは、電極18の実効中心位置に影響を与えることになる。
【0028】
バイアスエラーの1つの原因は、一次駆動18a、18bと二次ピックオフ18e、18fとの間の角度の位置ずれである。前に考察したように、このような位置ずれは、変換器の範囲全体の実効バイアス電圧の変動を生じる不均一な電荷トラッピングの結果として発生する可能性がある。それぞれの固定電極18の実効位置は、固定電極とリング本体との間で形成された可変コンデンサーの実効電気中心により設定され、角度位置ずれは、可変コンデンサーの実効電気中心が固定電極の物理的中心から片寄っている結果として起こる可能性がある。
【0029】
リング構造体10のcos2θモードは、通常縮退しており、従って、何ら製造欠陥がない場合は、リングは、リング軸に対しどの方向でも同じ周波数のcos2θモードを効果的に維持することは理解されよう。当業者なら、懸架リガメント14の8回対称は、通常それらがcos2θモードの縮退に影響を与えないことを意味することを理解するであろう。従って、リング10およびその懸架リガメント14に対する固定電極18の特定の角度位置は、相対的に任意である。しかし、実際には、リング本体12は製造欠陥不含ではないので、チューニング手段を用いて、一次と二次モードとの間の周波数分離を最小限にすることができる。特許文献1のジャイロスコープは、リング本体12の内側に放射状に配置された追加の固定電極22を含む。これらのチューニング電極22を使って、チューニング電極22とリング構造体10との間に適切な電圧バイアスを加えることにより、一次および二次モードの実効剛性を変えることができる。
【0030】
図2は、本発明の実施形態による振動リング構造体10を示す。リング構造体10は、8つの懸架手段により中央留め具16に取付けられたリング部または本体12を含む。それぞれの懸架手段は、一対の懸架リガメント14を含む。図1の配置にあるように、それぞれの懸架リガメント14は、弓状部分14cにより相互連結された一対の半径方向に伸びる部分14a、14bを含む。それぞれの対のリガメント14の部分14aは、平行に、相互に隣接して伸び、それぞれの部分14bは、平行で、かつ別の対のリガメント14の部分14bに隣接して配置される。
【0031】
リング構造体10は、リング電極24a〜24hをさらに含む。リング電極24は、リング本体12の周の回りに、実質的に等角度に間隔を置いて配置され、それぞれ、実質的に同じ弓状形状と大きさである。リング電極24のそれぞれは、リング構造体10の軸の回りに第1の角度範囲θで広がり、対応する電極24と一体形成された取付け部材26によりリング本体に取付けられる。取付け部材26は、それぞれ、第1の角度範囲θより小さい第2の角度範囲β全体に広がる。図2の実施形態の例では、リング構造体の中心でそれぞれの電極24により範囲を定められた角度θは、約36度であり、一方、対応するリング電極24をリング本体10に連結する取付け部材26により範囲を定められた角度βは、約1度である。
【0032】
図3から最も明確に分かるように、リング電極24dは、弓形状で、リング本体12と同心円状になっている。狭い、実質的に均一な幅の間隙28がリング電極24dとリング本体12を間隔を置いて配置する。リング本体12および電極24dと一体形成されている取付け部材26は、間隙28を横切って伸び、リング電極24dをリング本体12に固定する。リング電極24dは、実質的に均一幅であり、そのため、その外側面もまた、リング本体12と実質的に同心円状である。
【0033】
図3では、リング電極24dの1つのみを示しているが、その他のリング電極も実質的にそれと同じであることは理解されよう。
【0034】
使用に際しては、リング構造体10は、一連の固定電極18内に位置し、それぞれの固定電極18は、それぞれ1つのリング電極24に隣接して配置される。図2では、1つの固定電極18のみが示されている。
【0035】
波腹がリング電極の中心と一致した一次cos2θモードでリング構造体10が振動している場合は、全リング電極24は、大きさ1の最大正規化半径方向変位で動き、それにより、隣接固定電極18との改善された静電結合を可能とする。対照的に、図1を参照して前に記載したように、既知の配置では、固定電極に隣接するリング本体の一部により形成された移動可能「電極」の小さい部分のみが、最大半径方向変位で動くことが可能となり、大部分の「電極」は、波腹からの距離に応じて少ない変位で動くであろう。さらに、リング電極24または対向する固定電極上のどのような不均一な電荷分布に対しても、実効変換器中心の変化を生じないであろう。理由は、これが取付け部材26の位置により決定されるからである。
【0036】
それぞれのリング電極24は、それぞれが底面で対応する取付け部材26によりリング本体12に固定された2つのカンチレバーに似ている。これらのカンチレバーが、リング構造体10のcos2θモードと類似の共振振動数を持つ場合、それらは、cos2θモードに関与する傾向があり、リング電極24dに沿った半径方向モードの大きさが変化する可能性がある。これが起こらないのが好ましく、そのために、それぞれのリング電極24を、リング構造体10のcos2θモードよりも高い共振振動数となるように比較的高剛性(および/または低質量)を使って設計できる。それぞれのリング電極24の共振振動数は、曲げリングモードの少なくとも2倍であってよい。
【0037】
対応する取付け部材26による狭いまたはポイントでのリング本体12への取付けと併せて、リング電極24の8回対称は、それらの質量負荷効果が、名目上、cos2θモードの縮退に対し影響を与えないことを意味する。図2の実施形態例では、それぞれのリング電極24は、リング本体12の外側上ではなく、対応する懸架手段と同じ半径上に取付けられ、一方、懸架手段は、リング本体12の内側に連結されている。従って、リング電極24の点質量負荷は、懸架リガメント14によるリングの剛性負荷を打ち消す傾向があり、これが、cos2θモード縮退を防止する働きが可能な懸架手段および/またはリング電極24からの二次効果を低減させる可能性がある。cos2θモードにおけるリング電極24の実効質量寄与は、cos2θモードの実効剛性に対する懸架手段の寄与を打ち消すように選択できる。
【0038】
懸架手段およびリング電極24が半径方向に整列されるのは好都合であるが、これは必須の特徴ではなく、リング構造体懸架リガメント14は、リング本体12のどこか他の場所、例えば、リング電極24の間の領域中へ取付けることができる。
【0039】
使用に際し、二次モードの波腹に対応するリング電極、24e、24f、24g、24hは、一次振動モードで、それらのリング構造体との取付け点26の回りでわずかに傾斜するであろう。しかし、この傾斜は、電極24e、24f、24g、24hの中心の実効電気位置に影響を与えない。一次および二次駆動容量変換器により加えられる力が、取付け点26でリング本体12に加えられるので、各電極24の角度位置は、リング本体12への取付け点26によりさらに良好に画定される。同様に、一次および二次検出器容量変換器の角度位置も、さらに良好に画定される。理由は、固定電極24に隣接する領域内のリング本体12の半径方向の動きの積分関数ではなく、角度位置が、それぞれの取付け点26でのリング本体12の半径方向の動きに対応するためである。
【0040】
リング本体12または固定電極24のいずれか上の電荷の不均一な分布は、固定電極24を含む実効変換器中心に影響を与えない。代わりに、合計トラップ電荷は、実効バイアス電圧を変えることにより、単に変換器の感度を変える。この改善された容量変換器の角度位置の定義は、前に記載のように位置ずれエラーの影響を減らすことにより、改善されたバイアス性能につながる。従って、本発明の実施形態によるリング電極を含む角速度センサーは、先行技術デバイスより改善された性能を有する。
【0041】
さらに、衝撃下で、リング構造体10は、実質的にリング本体12を変形させることなく、懸架手段上でずれる傾向がある。リングの反対側にあるリング電極を含む変換器の対応対が一次および二次駆動ならびに検出用に使われる本発明の実施形態によるジャイロスコープは、このようなショックによるリングの並進運動に対し比較的感度が低い。リング本体12の直線的な平行移動は、それぞれの電極の実効電極中心に影響を与えない。
【0042】
本発明の実施形態によるジャイロスコープは、改善された静電結合を有し、従って、リング電極を含む容量変換器でより高い信号レベルを有するであろう。さらに、リング電極を含む容量変換器の実効角度位置は、不均一な電荷分布に感受性が低く、この性質を、改善されたレートバイアス性能を備えたジャイロスコープを提供するために使用できる。
【0043】
次に、図4を参照すると、本発明の実施形態のモード解析の結果が示されている。モードの形状を明確に示すために、リング構造体が極端に誇張されたモード変位で示されていることは理解されよう。図4から明らかなように、リング電極24の半径方向モード変位は、同じ角度範囲に対するリング本体12の変動する半径方向モード変位の大きさ、および図1の配置で起こると思われる対応するリング電極の変動する変位とは対照的に、リング電極24の全範囲にわたり実質的に一定である。
【0044】
リング電極24は、導電材料を含んでもよい。リング電極24が、導電材料(例えば、アルミニウム)で被覆されるか、または導電材料(例えば、高度にドープされたシリコン)から構成される場合、リング構造体の電極を電気的に接続、例えば、使用時に共通電圧で、相互接続するのが都合がよい。あるいは、それぞれのリング電極の絶縁表面上に導電トラックを配置して、トラックをその外縁に沿って設置してもよい。この場合、それぞれのリング電極24または反対側のリング電極24a、24bのグループは、独立に電圧を印加できるように個々にアドレス可能なようにしてもよい。
【0045】
それぞれのリング電極が同じ大きさと形状である配置を記載してきたが、本発明の範囲内で、変動する大きさと形状のリング電極が意図されている。
【0046】
ジャイロスコープの部品としての使用に特に適切な配置が示されてきたが、本発明の実施形態の振動リング構造体のリング電極を使って、隣接固定電極と、振動リング構造体を用いた任意のデバイス中のリングの振動モードとの間の静電結合を改善することができることは理解されよう。そのために、単一のリング電極を用いた実施形態が、意図されている。
【0047】
特許文献1に記載のような開ループ運転および閉ループ運転などの一次および二次モードの駆動と検出用の多くの適切な配置を、本発明のリング電極を使って行うことができる。これらの技術はよく知られているので、それらを本明細書でさらに詳細には記載していない。
【0048】
添付の特許請求の範囲で定められる本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書で記載の配置に対し、他の多くの修正および変更を行うことが可能である。
図1
図2
図3
図4