【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、測定すべき歯科対象物の全体画像を得るために個別の三次元光学画像を記録する方法に関わり、その際歯科用カメラによる各個別撮影の後、繋ぎ合わせるべき画像間のオーバーラップ領域が、正確な記録のために定められた記録条件を満たすかどうかが、その都度コンピュータによって自動的にチェックされる。オーバーラップ領域が前記記録条件を満たす場合、繋ぎ合わせるべき画像間の記録が行われて第1画像シーケンスが続行され、その際第1画像シーケンスの画像は第1クラスタとなるように繋ぎ合わされる。しかしある画像のオーバーラップ領域が記録条件を満たさない場合、第1画像シーケンスは中断されて、その画像をもって次の第2画像シーケンスが自動的に開始され、その際第2画像シーケンスの画像は第2クラスタになるように繋ぎ合わされる。
【0009】
前記光学画像は、たとえばストリップ投影法で作動するところの歯科用カメラによって測定される。ストリップ投影法では、対象物上に投影した個別のストリップは、強度、色、偏光、干渉性、位相、コントラスト、場所、または経過時間をもとに同定され得る。その後三角測量法により、対象物上の個別の測定点の3D座標が計算される。色による符号化では、一定の順序のカラーストリップをもとに、各カラーストリップが一義的に同定され得る。測定には、たとえば140のカラーストリップを有するスライドまたは格子を使うことができ、その際このカラーストリップは、対象物面の測定ボリューム内で130μmのストリップ幅をもつ。これらのカラーストリップは、たとえば8つの異なる色を有することが可能であり、その際3つのカラーストリップからなるグループのアレイは、64のカラーストリップに渡って一義的である。
【0010】
測定中、手で保持された歯科用カメラは、下顎または上顎等の歯科対象物に対して相対的に動き、その際規則的な時間間隔で三次元の光学画像が生成される。個別の画像は、たとえば10Hz〜20Hzのクロック周波数で生成され得る。記録は、撮影された画像を評価するコンピュータによって行われる。記録方法としてたとえばICP記録法(反復最近点アルゴリズム)を使うことができる。このアルゴリズムは、二次元または三次元の対象物を記録する既知の方法である。この方法の狙いは、対象物の、異なる2つの3Dモデルを近似的に精密に相次いで結像させることである。そのため、様々な回転および並進が2つの3Dモデルの対応する点ペアに適用され、その際点ペア間の距離の二乗誤差が最小化される。そのため第1の手順において、ある特定の点に最も近い隣点が算定される。次の手順において、記録のための変換が計算される。計算された変換はその後、記録されるべき点ペアに適用される。この反復近似化は、重なり領域内で2つの3Dモデルが一致するまで行われる。
【0011】
それに代えて、またはそれに加えて記録は、撮影される対象物の色、撮影される対象物の表面湾曲、または幾何学的な一致に基づき行うこともできる。幾何学的な一致に基づく記録の場合、パターン検出アルゴリズムが使用され、その際第2画像は特定の幾何学パターン、たとえば特定の歯の咬合面に基づき第1画像から探し出される。
【0012】
オーバーラップ領域の記録条件が満たされない場合、新しいクラスタが開始される。歯科対象物の測定中は、対象物全体が測定され終わるまで、中断のたびにその後新しいクラスタが開始される。それら個別のクラスタは、その後対象物の全体画像となるように繋ぎ合わされ得る。上記記録条件は、たとえば歯科用カメラが対象物に対し相対的に速過ぎる動きをし、そのためオーバーラップ領域のサイズが不十分となる場合には満たされない。またこの他の原因としては、歯科用カメラのオートフォーカスが鮮明に調整されておらず、そのため対象物が明瞭に結像せず、画像の撮影品質が不十分ということもあろう。また別の原因としては、患者の舌や治療する歯科医の指など、動く対象物が測定中に記録されるということもあろう。それらにより画像のオーバーラップ領域は一致しなくなる。よって上記の各原因は、画像シーケンスの中断をもたらす可能性がある。
【0013】
この方法の利点は、記録条件が各撮影後にチェックされることにより、不正確な記録がもたらされ得ないところにある。
この方法のさらなる利点は、既に生成された画像が画像シーケンスの中断後に破棄されるのではなく、繋ぎ合わされてクラスタになることにある。その後これらの個別のクラスタは、自動的に比較されて、対象物の全体画像になるよう繋ぎ合わされ得るので、歯科対象物の個別領域を何度も測定する必要がない。そのため測定時間が短縮される。
有利なことに、十分なサイズのオーバーラップ領域、オーバーラップ領域内の対象物表面の十分な起伏、オーバーラップ領域内の表面の十分な粗さ、オーバーラップ領域内の特性ジオメトリの十分な数、および/またはオーバーラップ領域内の画像の十分な撮影品質などが記録条件となり得る。
【0014】
それらが、繋ぎ合わせるべき画像間の記録が不正確になるのを防ぐ。オーバーラップ領域の表面に十分な輝度と粗さがあれば、平らな面とは反対に信頼性のある記録が可能となる。たとえば裂溝や咬頭などの特性ジオメトリの数と配置が十分であれば、同じく信頼性のある記録が可能となる。撮影品質が十分であれば、歯科対象物は鮮明かつ強いコントラストで結像される。コントラストが弱いのは、たとえば対象物の照明が不十分であるためもしれない。画像が不鮮明なのは、たとえばオートフォーカスの調整が間違っているからかもしれない。
【0015】
有利なことに、オーバーラップ領域の十分なサイズを、各画像の画像表面の4分の1以上とすることができる。
【0016】
それだけのオーバーラップ領域があれば正確な記録が保証される。
【0017】
有利なことに、複数の画像シーケンスにおいて複数のクラスタが形成される場合、個別のクラスタを対象物の全体画像になるように繋ぎ合わすことが可能であり、その際測定中に自動的に規則的な時間間隔で、または測定後にも自動的に、目下のクラスタが、先行するクラスタとクラスタオーバーラップ領域を有するかどうか、またそのクラスタオーバーラップ領域が記録条件を満たすかどうかがチェックされる。
【0018】
よって測定中、目下の画像は、記録条件が満たされる限り前の画像に対して記録されて目下のクラスタに付加され、画像シーケンスは中断されない。この付加の間、目下のクラスタはその前に測定された先行クラスタと比較される。その際、目下のクラスタが先行クラスタとクラスタオーバーラップ領域をもつかどうか、そしてそのクラスタオーバーラップ領域が、既に個別画像の記録時に使われた記録条件を満たすかどうかがチェックされる。
【0019】
これにより個別のクラスタは、十分なクラスタオーバーラップ領域が確認されるやいなや、全体画像になるように自動的に繋ぎ合わされる。つまりクラスタを手動で繋ぎ合わせる必要がないので測定時間が短縮される。
【0020】
これにより目下のクラスタは、適切なクラスタオーバーラップ領域を見つけるために、先行クラスタと短い時間間隔で比較される。
【0021】
有利なことに、目下のクラスタのチェックは、規則的な時間間隔で10〜40画像が終わるごとに行われ得る。
【0022】
これにより、成長しつつある目下のクラスタは、短い時間間隔で10〜40画像が終わるごとに先行クラスタと比較される。
【0023】
有利なことに目下のクラスタは、先行するチェック以降に目下のクラスタに付加された面積が少なくとも0.25cm
2を超えるやいなやチェックされ得る。
【0024】
これにより、付加された面積が少なくとも0.25cm
2を超えて初めてチェックが行われる。その利点は、歯科用カメラが対象物に対して相対的に動く場合に初めてチェックが行われることにある。
【0025】
有利なことに、目下のクラスタと先行クラスタを表示装置を用いて同時にグラフィック表示することが可能であり、その際個別クラスタが対象物の全体画像となるよう繋ぎ合わされる様が測定中に描写される。
【0026】
これにより、既に記録された先行クラスタと目下のクラスタがモニタ等の表示装置によって表示され、それによりユーザーは撮影状況や撮影プロセスをより良く見通せるようになる。これによりユーザーは、歯科対象物のどの領域の測定が済んだか、そしてどの領域がまだかを測定中から見ることができるようになる。つまりユーザーは、既に記録されたクラスタの間にある領域に狙いを定めて測定し、そしてそれらのクラスタを一緒に記録することができるだろう。
【0027】
目下のクラスタの付加面積が表示されることで、ユーザーはそのクラスタがどの方向に成長しているかを見て取る。個別クラスタの撮影方向が表示されることで、ユーザーはさらに、歯科対象物のどの領域がまだ測定されていないか見当をつけ易くなる。中断の表示によりユーザーは、それぞれのクラスタのどの箇所で中断したのかを確認することができる。よってユーザーは、十分なクラスタオーバーラップ領域を生成するために、目下のクラスタを先行クラスタの中断箇所の方向に適切に動かすことができるだろう。
【0028】
有利なことに、目下のクラスタの付加面積、個別クラスタの撮影方向、および/または既に記録されたクラスタの中断ポジションは、表示装置によりグラフィック描写され得る。
【0029】
中断方向および中断ポジションの表示により、ユーザーは撮影プロセスをより良く見通せるようになる。
【0030】
有利なことに、対象物を測定中はカメラを置くことなく個別クラスタの記録を続けることができる。
【0031】
これにより対象物の測定は連続的に行われ、その際中断されるたびにその後新しいクラスタが形成される。
【0032】
有利なことに、画像および/またはクラスタの記録は、意味構造を用いて、すなわち測定されるべき顎湾曲の算定された延び具合、咬合方向、および/または歯の中心をもとに行うことができる。
【0033】
その際これらの意味構造は、様々な患者の顎湾曲、歯、および咬合面の様々なデータレコードを擁するデータベースを使って識別することができる。これらの追加的な情報に基づき、繋ぎ合わせるべき画像間の位置関係がチェックされ、それにより記録が向上する。意味構造に基づくこれらの追加的な情報は、記録の数学的課題をも簡易化するので計算時間が短縮される。
【0034】
有利なことに咬合方向は、撮影された画像の解析法を用いてコンピュータで自動的に算定することが可能であり、その際対象物の測定された歯の歯面の表面法線が生成され、そして咬合面の表面法線の平均値が特定の歯の咬合方向となる。
【0035】
これにより咬合方向は解析法を使って自動的に算定される。
【0036】
有利なことに、画像および/またはクラスタの記録は、画像フィールド記録を用いて行うことができ、その際繋ぎ合わせるべき画像またはクラスタは、定められた大きさの複数の部分領域に細分化され、その後それらの部分領域は、記録条件を満たすようなオーバーラップ領域またはクラスタオーバーラップ領域を見つけるために、決められた順序で互いに比較される。
【0037】
これにより小さな部分領域のみが互いに比較され、それにより記録のための計算時間が短縮される。