特許第6385353号(P6385353)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385353
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】攪拌装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/12 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   A61F7/12 Z
【請求項の数】36
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-541135(P2015-541135)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公表番号】特表2015-533594(P2015-533594A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】EP2013073292
(87)【国際公開番号】WO2014072423
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年4月7日
(31)【優先権主張番号】1220306.3
(32)【優先日】2012年11月12日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513155460
【氏名又は名称】バイオサージカル エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】BIOSURGICAL S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】アルバラート,アルベルト マルティネス
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−82461(JP,A)
【文献】 特開2000−296146(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0090819(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0213287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用流体で満たされた、患者の体腔内に攪拌をもたらす装置であって、
ガス供給源と、
前記ガス供給源から前記患者の体腔内の第1の位置にガスを供給する手段と、
前記患者の体腔内の第2の位置から前記治療用流体を回収し、回収した前記治療用流体からガスを分離すガス/流体分離装置と
を備え、
前記ガス/流体分離装置は、前記患者の体腔内の前記治療用流体の高さが前記第2の位置に達している場合に前記患者の体腔内に前記治療用流体が供給されると前記患者の体腔内から前記ガス/流体分離装置内に前記治療用流体が入る位置に前記患者の体腔に対して配置されることによって、前記ガス/流体分離装置内の前記治療用流体の高さが前記患者の体腔内の前記治療用流体の高さの視覚的な指標の働きをするように構成され、
前記装置は、前記体腔内に存在する、ほぼすべての前記治療用流体が攪拌されるように構成される装置。
【請求項2】
前記治療用流体が、前記患者の体腔内で、制御された圧力で攪拌される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガス/流体分離装置は、前記患者の体腔に供給された前記ガス量、および前記患者の体腔から回収された前記ガス量を監視する構成である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ガスを前記患者の体腔内に供給するための、少なくとも1つの入口管、および前記患者の体腔からガスを回収するための、少なくとも1つの出口管を有する配管システムと、
前記配管システムを通じてガスを循環させる手段と
を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記入口管が、前記患者の体腔内に、ガスを泡の状態で放出するガス放出手段をさらに備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ガス放出手段が、前記ガス供給源と流体連通する複数の穴を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記患者の体腔内に前記治療用流体を供給する流体供給システムを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ガス/流体分離装置が、前記患者の体腔から回収した前記治療用流体およびガスを受けるための少なくとも1つのチャンバを備え、前記チャンバが、前記患者の体腔から前記治療用流体およびガスを回収するための少なくとも1つの入口ポートを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記チャンバが、前記ガス/流体分離装置を前記患者に固定するための固定部品を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ガスが、炭酸ガスである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記患者の体腔内に供給する前に、前記ガスを加熱または冷却する手段をさらに備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記患者の体腔内に供給する前に、前記ガスの温度を制御する手段をさらに備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記患者の体腔内に、温度センサをさらに備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記患者の体腔に供給、および/または前記患者の体腔から回収される、前記ガス流量、および/または前記ガス圧を制御する手段をさらに備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記患者の体腔に供給された前記ガスの圧力および/または温度を測定するための、オンラインの圧力センサおよび/または温度センサをさらに備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記患者の体腔から回収された前記ガスの圧力および/または温度を測定するための、オンラインの圧力センサおよび/または温度センサをさらに備える、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記流体供給システムが、前記治療用流体の温度を制御する手段を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項18】
前記流体供給システムが、前記治療用流体を加熱または冷却する手段を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項19】
前記流体供給システムが、前記患者の体腔に入る前記治療用流体、前記患者の体腔から回収された前記治療用流体、および/または前記患者の体腔内にある前記治療用流体の温度を計測するための、1つ以上のセンサを備える、請求項7に記載の装置。
【請求項20】
前記流体供給システムが、前記治療用流体の流量、および/または圧力を制御する手段を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項21】
前記流体供給システムが、前記患者の体腔に入る、または前記患者の体腔から出る、前記治療用流体の流量および/または圧力を測定するための、1つ以上のセンサを備える、請求項7に記載の装置。
【請求項22】
前記流体供給システムが、前記流体供給システムから汚染物を選択的に除去する手段を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項23】
前記ガス/流体分離装置が、前記患者の体腔から回収した前記治療用流体およびガスを受けるための少なくとも1つのチャンバを備え、前記チャンバが、前記患者の体腔から前記治療用流体およびガスを回収するための少なくとも1つの入口ポートを有し、
前記チャンバが、前記患者の体腔から回収された前記ガスを前記チャンバから抜き出すための、少なくとも1つの出口ポートを備え、前記出口管とガス連通している、請求項4に記載の装置。
【請求項24】
前記抜き出されたガスを、前記装置内で再循環させる、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記チャンバが、前記チャンバから前記治療用流体を抜き出すための、少なくとも1つの出口ポートを備える、請求項8に記載の装置。
【請求項26】
前記抜き出された治療用流体を、前記装置内で再循環させる、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記チャンバが、前記治療用流体の凝縮を容易にするための凝縮手段を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項28】
前記凝縮手段が、前記チャンバの1つ以上の内面から延びる、1つ以上の凝縮面を備える、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記凝縮面が、前記凝縮面が伸びている前記内面に対して、0度より大きく、90度より小さい角度で配置されている、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記固定部品が、ピン基部を有するピンと、前記ピン基部から延びる中空のピン部材とを備え、前記ピン部材の外側寸法が、前記チャンバの基部にある穴の内側寸法にほぼ対応している、請求項9に記載の装置。
【請求項31】
前記ピンが、前記患者の体腔から前記治療用流体およびガスを回収するための前記入口ポートである、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記固定部品が、前記ピン部材を前記チャンバの基部に固定するためのプラグを備え、前記プラグが、前記ピン部材の内側寸法よりも大きい外側寸法を有する、請求項30または31に記載の装置。
【請求項33】
前記固定部品を部分的に囲むカバーをさらに備える、請求項9に記載の装置。
【請求項34】
前記ガス/流体分離装置が、前記患者の組織によって、前記入口ポートが詰まるのを防止する詰まり防止手段を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項35】
前記詰まり防止手段が、フィルタを備える、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記詰まり防止手段が、ほぼ椀型である、請求項34または35に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、加熱または冷却された治療用流体における、流体攪拌装置に関し、流体の供給、循環、および/または再循環の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法では、様々な種類の薬剤、例えば、癌細胞を破壊するための細胞毒性薬を使用することができる。従来、細胞毒性薬は、患者の血流内に直接注射されるか、または錠剤やカプセルの形状で経口投与されて、細胞毒性薬が間接的に患者の血流に入るように分解される。このような技術は、癌細胞に到達するために患者の血流内を循環する、細胞毒性薬に依存している。化学療法は、単独で用いることができるが、複合的な癌治療の一定の手法として、腫瘍縮小手術、放射線治療、その他等、他の種類の治療と併用することもできる。
【0003】
通常、温熱療法として知られ、前述した任意の治療との組み合わせ、特に、いくつかの化学療法薬と組み合わせて用いられる熱治療が、いくつかの臨床研究において、有望な結果を示している。通常、腫瘍細胞は、通常の健康な細胞と比較したときに、温度上昇に対して感受性がより高く、耐性はより低いため、温熱療法は、腫瘍細胞を殺すことについて治療効果があることが分かっているが、いくつかの薬剤の分布が変化(吸収率の増加)することも分かっている。特に、温熱療法は、標準的な化学療法の治療と組み合わせて用いたときに、効果が高まることが分かっている。
【0004】
様々な外科的技術が、異なる病状の治療に温熱化学療法を適用するために開発されてきた。
【0005】
最も一般的な種類の温熱療法の治療の1つは、腹膜温熱化学療法である。この手順において、細胞毒性薬は、流体の状態で、1本以上のカテーテルを介して患者の腹部に供給される。カテーテルは、患者の腹壁に切開された穴を介して、または腹腔鏡技術によって挿入することができる。流体は、1本または複数のカテーテルを通じて患者の腹部に導入でき、腹部内で循環することができる。その後、1本または複数の、第2の(組の)カテーテルを用いて、腹部から抜き出される。
【0006】
この種の手順を実行するための、異なる技術について説明する。
【0007】
この技術の一部は「開腹法」として知られ、腹腔に外科的アクセスを開いて、その内容物を露出させ、「コロシアム法」として知られる技術を用いて、アクセスを開いた箇所の縁を固定するものである。患者の体腔が開いているため、治療領域の汚染物によって患者が汚染される危険性があり、同時に、開いた体腔から蒸発する任意の化学療法流体によって、治療領域が汚染される危険性もある。
【0008】
腹腔は、化学療法薬で満たされ、これは、外部熱源を組み込んだ再循環システムを用いて加熱され得る。この種の治療においては、化学療法薬の温度が重要であるが、42℃未満1度ごとに、10%の効率損失が観測されている。したがって、治療用流体が、低すぎる温度で患者の体内を循環していた場合、治療用流体は、有効でなくなる場合があり、極端な場合、低体温症や熱衝撃を引き起こす可能性がある。44℃を超えると、患者の組織が局部的に損傷する場合がある。体の中心温度が、一定の値を超えて上昇すると、患者にとって、深刻な合併症、全身の損傷、および致命的な合併症も引き起こされる可能性がある。また、流体が蒸発しやすいことによって、流体の損失、およびここでも効率損失を引き起こす。薬剤の効率的な温度に達するように、治療領域の温度(通常は室温)から患者の体腔に至るまでの温度低下を相殺するため、および蒸発による流体の損失を相殺するために、薬剤は過熱される傾向がある。
【0009】
体腔内において、流体および熱の均一な分布を保証するためには、腹腔の内容物および薬剤の、手動による激しい攪拌が必要となる。この種の技術は、いくつかの臨床出版物において、その有効性が示されているが、いくつかの実施上の問題や制限、および上述したような副作用も示されている。この手順の複雑さおよび危険性のために、臨床医は、腫瘍縮小手術の後、外傷性はより少ないが効率の悪い、補助療法を選ぶことが多い。
【0010】
「閉腹法」と呼ばれる他の技術が、開腹/コロシアム法の複雑さ、および侵襲性を低減するために開発された。体腔が開かれず、この手順は外傷性がより少ないため、蒸発および熱損失の危険は最小限で済む。しかし、この技術は、開腹法によって得られるよりも効率が悪く、結果の再現性も低いことが分かった。これはおそらく、化学療法薬の均一な分布、および閉じた体腔内の温度を確保することの困難さに関係する。薬剤が体腔に導入されると、体腔内で停滞するか、またはゆっくりと自然に臓器の周囲に移動し、「開腹法」で用いられる、手動による攪拌がなければ、治療するすべての領域に薬剤が接触しない場合がある。このことは、特に、術後化学療法が必要とされる場合に著しく不利であり、術後化学療法においては、腫瘍細胞が再発するのを防ぐために、薬剤が、すべての標的領域および隣接領域に適用され投与される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2012/084268号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したような問題を軽減することが、本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、患者の体腔内で流体の攪拌をもたらす装置が提供され、この装置は、少なくとも1つのガス供給源と、ガス供給源から患者の体腔内にガスを供給する手段と、患者の体腔内からガスを回収する手段とを備え、その結果、体腔内に存在する、ほぼすべての流体が攪拌される。
【0014】
本発明による装置を用いることによって、「開腹法」において直面するような副作用の危険性が低減される。また、癌細胞の再発を防止するために、患者の体腔全体に、流体および温度を均一に分布させることを実現できる。また、本発明による装置は、流体を患者の体腔に投与することを含み、任意の治療と組み合わせて使用できる、多用途なものである点に注意することも重要である。
【0015】
流体は、患者の体腔内で、制御された圧力で攪拌されることが好ましい。好ましい実施形態において、この装置は、患者の体腔に供給されるガスの量を監視する手段を備え、この量のガスが、患者の体腔から回収される。体腔に供給されたガスの量が、体腔から回収されたガスの量を上回る場合は、患者の体腔内にガスのポケットが形成される危険性があり、その結果、流体が患者の体腔全体、特に、そのようなガスポケットに囲まれた患者の組織には、均一に分布することができない。本発明は、この危険性を最小化、または排除する。
【0016】
好ましい実施形態において、この装置は、ガスを患者の体腔内に供給する少なくとも1つの入口管、および患者の体腔からガスを回収するための少なくとも1つの出口管を有する配管システムと、配管システムを通してガスを循環させる手段とを備えている。
【0017】
用途や治療に応じて、異なるガスを用いることができるが、好ましくは、治療用流体の成分と反応しないように、および/または患者の血流に取り込まれて塞栓症の可能性を生じないように、化学的に安定で、特に毛管吸収率の低い生体適合性ガスが推奨されるべきである。ガス供給源は、医学基準に従うべきである。本発明においては、血液吸収能が低く、そのために塞栓症の危険が軽微な、炭酸ガスが好ましいガスである。また、最近の出版物には、動物モデルにおける、腹腔内に一定の圧力で供給されたときの、炭酸ガスの潜在的な抗癌治療効果が記載されている。
【0018】
この装置は、患者の体腔内に供給する前に、ガスを加熱または冷却する手段を備えていることが好ましい。この装置は、患者の体腔内に供給する前に、ガスの温度を制御する手段を備えていることが好ましい。この装置は、また、患者の体腔内に、温度センサを備えていることが好ましい。上述したように、この種の治療においては、効率を最適化し、患者への危険を最小限にとどめるために、患者の体腔に供給される流体またはガスを、いずれも正確に制御することが重要である。ガスの供給について言えば、患者の体腔内に供給されるガスの流量や圧力と同様に、ガスの温度もまた、影響要因となる。
【0019】
この装置は、配管システムおよび/または体腔において、ガス流量および/またはガス圧を制御する手段を備えていることが好ましい。患者の体腔に供給され、回収されるガスの流量や圧力は、調節する必要がある。圧力が低すぎると、体腔内の流体の攪拌が不十分となり、流量が多すぎると、ガスの供給が過剰となり、患者に損傷を引き起こす可能性がある。体腔内に導入されたガスがすべて除去されるように、入口と出口の流量と圧力を調節する必要がある。また、流量と圧力が正確に調節されない場合、健康合併症を引き起こす過剰なガスが、患者の体腔内に残留する場合がある。この装置は、また、装置内の圧力を監視し、起こりうる過圧を防止するために、圧力センサシステム、および/または逃がし弁を備えていてもよい。
【0020】
入口管は、患者の体腔に供給されたガスの圧力および/または温度を測定するための、オンラインの圧力センサおよび/または温度センサを備えていることが好ましい。また、出口管は、患者の体腔から回収されたガスの圧力および/または温度を測定するための、オンラインの圧力センサおよび/または温度センサを備えていることが好ましい。オンラインセンサは、ガスの温度、流量、および/または圧力を測定するために、管内に配置される。この種のセンサは、管の上に配置されたセンサ、または管の外面から延びているセンサと比較したときに、患者への管の挿入を容易にし、患者への損傷の危険性を最小限にすることにおいて、特に有利である。
【0021】
入口管は、ガスを患者の体腔内に、泡の状態で放出する手段をさらに備えていることが好ましい。ガスを泡の状態で放出することにより、泡が乱流を生成して、患者の体腔の流体内容物を攪拌する、「ジャグジー効果」をもたらす。これは、患者への悪影響を最小限にすること、および体腔全体への、流体および熱の均一な分布を確実にする利点をもたらす。
【0022】
ガス放出手段は、ガス供給源と流体連通する複数の穴を有し得る。ガスの流れが、配管システムを通って循環し、複数の穴を通って患者の体腔内へと出ていくことによって、多数のガス泡を生成する。穴の直径が、ガス放出手段によって生成された泡の大きさを決定し、これが乱流の強さ、そして体腔内での流体の攪拌に影響を及ぼすことになる。
【0023】
この装置は、流体供給システムをさらに備え得る。本発明の攪拌方法は、患者の体腔内での流体の供給、または再循環のための任意のシステムと組み合わせて用いられ得る。本発明の装置は、患者の体腔内での流体の供給、または再循環のためのシステムと同時に、あるいは、そのようなシステムと物理的に結合して用いられ得る。本発明者が所有する、国際公開第2012/084268号パンフレットに記載の流体循環システムは、本発明による攪拌システムと共に使用するための、好ましいシステムの一例である。
【0024】
流体供給システムは、流体の温度を制御する手段、流体を加熱または冷却する手段、ならびに/あるいは、患者の体腔に入る流体、患者の体腔から回収された流体、および/または患者の体腔内にある流体の温度を測定するための、1つ以上のセンサを備え得る。流体供給システムは、流体の流量および/または圧力を制御する手段、ならびに/あるいは、患者の体腔に入る、または患者の体腔から出る流量および/または圧力を測定するための、1つ以上のセンサを備えていることが好ましい。
【0025】
流体供給システムは、流体が患者の体腔に供給されて、ほぼ回収される、流体循環システムであり得る。攪拌装置は、ガスポンプユニットとは独立して、またはガスポンプユニットと連携して動作する流体供給システムのための、流体ポンプユニットを備え得る。
【0026】
流体供給システムは、システムから汚染物を選択的に除去する手段を備え得る。使用時に、このシステムは、患者の組織の小さい断片のような、固形の汚染物で汚染される場合があり、これは、配管システムに詰まり、かつ/またはポンプユニットに吸い込まれて、損傷を引き起こす可能性がある。これを防ぐために、例えば、フィルタやオンラインフィルタを用いて、固形の汚染物を流体から分離して、流体供給システムからほぼ除去することができる。生じ得る汚染物をガスから分離して、ガス循環システムからほぼ除去するために、同種の除去手段が、攪拌装置において使用されてもよい。
【0027】
好ましい実施形態において、この装置は、患者の体腔から回収された流体を、患者の体腔から回収されたガスから分離する装置をさらに備える。一部の流体は、患者の体腔から出るガスと、必然的に混合する。ガス/流体分離装置は、ガスおよび/または流体の回収が必要なときに、特に有利である。ガスは、攪拌システムにおける再循環用に回収でき、流体は、流体循環システムにおける再循環用に回収することができる。
【0028】
分離装置は、患者の体腔から回収した流体およびガスを受けるための少なくとも1つのチャンバを備え、チャンバは、患者の体腔から流体およびガスを回収するための少なくとも1つの入口ポートを有する。ガスと流体との混合物は、入口ポートを通ってチャンバに入り、チャンバ内で受けられて、例えばデカンテーションによって分離され得る。より重い流体は、チャンバの底に沈殿し、より軽いガスは、流体よりも上に堆積する。
【0029】
チャンバは、チャンバからのガス抜き出し用であって、出口管とガス連通している、少なくとも1つの出口ポートを備え得る。流体より上に堆積したガスは、出口ポートを通してチャンバから抜き出され、出口管に運ばれる。したがって、出口ポートは、チャンバの底部にある流体より上の、ガスが堆積する位置である、チャンバの上部に位置していることが好ましい。
【0030】
抜き出されたガスは、配管システムの中で再循環し得る。流体から分離されると、抜き出されたガスは、攪拌システムで再循環することができる。これは、大量のガスを必要とする手順において、特に有利である。あるいは、抜き出されたガスは、廃棄されてもよい。必要とされるのがごく少量のガスである場合は、抜き出されたガスが、単に大気中に放出される場合もある。しかし、治療領域の空気汚染の可能性がある点において、これは望ましくない。
【0031】
チャンバは、チャンバから流体を抜き出すための、少なくとも1つの出口ポートを備え得る。出口ポートは、流体が堆積する、チャンバの底部に位置していることが好ましい。好ましい実施形態において、チャンバは、取り外し可能な基部を備え、出口ポートは、強固で密封された結合が生成されるように、このチャンバ基部に一体成型されている。この基部とポートの部品は、製造が比較的容易で、それ故に安価であるという利点もある。抜き出された流体は、流体供給システムの中で再循環され得る。あるいは、抜き出された流体は、廃棄してもよい。
【0032】
チャンバは、流体の凝縮を容易にするための凝縮手段を備え得る。上述したように、ガスと流体との混合物は、デカンテーションチャンバで分離される。しかし、治療用流体の一部は、特に、流体が加熱された箇所では、ガスの状態でチャンバ内に存在する。
【0033】
凝縮手段は、例えば、チャンバの1つ以上の内面から延びる、1つ以上の凝縮面を備え得る。この凝縮面は、治療用流体を凝縮させて、ガスの状態から流体の状態に戻し、チャンバの底にほぼ沈殿させるために使用できる面積を増加させる。凝縮面は、凝縮面が伸びている内面に対して、0度より大きく、90度より小さい角度で配置され得る。角度付けされた面は、凝縮プロセスで回収された流体が、傾斜した表面を滑り落ちて、チャンバの底部に堆積するのを容易にするという利点をもたらす。
【0034】
分離チャンバは、分離装置を患者に固定するための固定部品を備えていることが好ましい。その最も単純な形状において、固定部品は、患者の体内に、延長部分を有する固定具を備えていることが好ましく、延長部分は、固定部品を分離装置に固定できるように、患者の組織を通って、患者の皮膚表面を越えて延び、それによって分離装置を患者に固定する。
【0035】
固定部品は、ピン基部を有するピンと、ピン基部から延びる中空のピン部材とを備え、ピン部材の外側寸法が、チャンバの基部にある穴の内側寸法とほぼ対応している。ピン基部は、患者の体内で、固定具として作用する。ピン部材は、ピン基部から延び、患者の組織を通って、患者の皮膚表面を越えて延びている。ピンは、チャンバの基部に固定され、それによって、分離装置を患者に固定する。好ましい実施形態において、ピン基部は、使用時に、患者の体内の腹部の層に沿って位置するように、ほぼ平坦である。ピン基部は、患者の組織の損傷を避けるために、角がないことが好ましく、円形または楕円形であることがより好ましい。使用時に、ピン基部が患者の皮膚内部の腹部の層に対して平坦に位置できるように、ピン部材は、ピン基部からほぼ垂直に延びている。ピン部材をチャンバの基部に固定するために、ピン部材は、1つ以上の延長リブ等の、保持手段を備えていることが好ましい。
【0036】
ピンは、患者の体腔から流体およびガスを回収するための入口ポートになり得る。したがって、ピン/入口ポートによって、ガスおよび流体が、患者の体腔からチャンバ内へと通過することが可能になる。
【0037】
この細長部材は、可撓性材料で作られることが好ましい。あるいは、ピン(ピン基部および細長部材を含む)は、一体的に形成され、可撓性材料で作られる。
【0038】
固定部品は、ピン部材をチャンバの基部に固定するためのプラグを備えていることが好ましく、プラグは、ピン部材の内側寸法よりも大きい外側寸法を有する。したがって、プラグは、ピン部材をチャンバの基部の穴の縁に押しつけ、それによってピン部材をチャンバの基部にさらにしっかりと固定し、より強力に密封するように、ピン部材に挿入され得る。
【0039】
この装置は、固定手段を部分的に囲むカバーをさらに備え得る。例えば、カバー部品は、チャンバの中に延びているピン部材、およびプラグを覆う。チャンバの基部は、多条ねじ部分を有していてもよく、これは、カバーの多条ねじ部分に対応する。
【0040】
分離装置は、患者の組織による入口ポートの詰まりを防止する手段を備え得る。ガスと流体との混合物が患者の体腔から抜き出されるときに、患者の組織が入口ポートに引き寄せられ、部分的に、または完全に、ガスと流体との混合物の通路を詰まらせて、損傷を引き起こす可能性がある。詰まり防止手段として、フィルタを備えていることが好ましく、これは、患者の組織が入口ポートに引っ掛かったり、詰まったりするのを防止するために、患者の体内、かつ入口ポートに隣接して配置することができる。詰まり防止手段は、ほぼ椀型であることが好ましい。この形状は、入口ポートの周囲に清浄な空間を作り、また、患者の組織がその表面で滑って、避けて通るようにできる点において有利である。
【0041】
本発明の第2の態様によれば、上述した攪拌装置と共に使用するための、ガス/流体分離装置が提供される。
【0042】
本発明の第3の態様によれば、上述した攪拌装置と共に使用するための、固定部品が提供される。
【0043】
本発明の第4の態様によれば、上述した攪拌装置の使用を含む、患者の体腔内で流体を攪拌する方法が提供される。
【0044】
本発明の第5の態様によれば、上述した攪拌装置を使用するステップを含む、患者の体腔内に治療用流体を投与する方法が提供される。
【0045】
これらの方法は、(a)患者の体腔内に流体を供給するステップと、(b)上述した攪拌装置を使用して、体腔内で流体を攪拌するステップとを有することが好ましい。
【0046】
これらの方法は、さらに、(c)患者の体腔からガスと流体との混合物を回収するステップと、(d)上述したガス/流体分離装置を使用して、ステップ(c)で回収した任意の流体を分離するステップとを備えていることが好ましい。また、これらの方法は、さらに、(e)ステップ(c)で回収されたガスを、攪拌装置の配管システムで再循環させるステップも含む。また、これらの方法は、さらに、(f)ステップ(d)で回収した流体を、流体循環システムで再循環させるステップも含む。
【0047】
本発明の第6の態様によれば、上述した固定部品を使用して、上述した攪拌装置を患者に固定する方法が提供される。
【0048】
本発明の第7の態様によれば、上述したガス/流体との分離装置を使用して、流体からガスを分離する方法が提供される。
【0049】
本発明について、添付の図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明による攪拌装置の概略図である。
図2】流体循環システムと組み合わせて使用される、本発明による攪拌装置の概略図である。
図3】流体循環システムを備える、本発明による攪拌装置の概略図である。
図4】本発明による、第1のガス/流体分離装置の概略図である。
図5】本発明による、第2のガス/流体分離装置の概略図である。
図6】本発明による、第3のガス/流体分離装置の概略図である。
図7A】本発明による固定部品が備える、チャンバ基部の概略図である。
図7B】本発明による固定部品が備える、ピンの概略図である。
図7C】本発明による固定部品が備える、プラグの概略図である。
図7D】本発明による固定部品が備える、カバーの概略図である。
図8】チャンバ基部、ピン、およびプラグを備える、本発明による固定部品の概略図である。
図9】カバーをさらに備える、図8の固定部品の概略図である。
図10】フィルタをさらに備える、図8の固定部品の概略図である。
図11A】本発明によるガス/流体分離装置と共に使用するための、第1のチャンバの概略図である。
図11B】本発明によるガス/流体分離装置と共に使用するための、第1のキャップの概略図である。
図12A】本発明によるガス/流体分離装置と共に使用するための、第2のチャンバの概略図である。
図12B】本発明によるガス/流体分離装置と共に使用するための、第2のキャップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1を参照すると、患者の体腔C内で流体の攪拌をもたらす装置1が示されており、この装置1は、少なくとも1つのガス供給源(図示せず)と、少なくとも1つのポンプ2と、少なくとも1つの配管システム3とを備え、この配管システム3が、患者の体腔内にガスGを供給するための、少なくとも1つの入口管4と、患者の体腔からガスを回収するための、少なくとも1つの出口管5とを有する。
【0052】
ガス供給源(図示せず)からもたらされる炭酸ガス等のガスGは、給気口6を介して、攪拌装置1の配管システム3の中に導入される。配管システム3には、攪拌装置1におけるガス量を増加させるために、ガスバルーン7等の、1つ以上のガス貯蔵器が設けられている。ポンプ2によって、図1において矢印で示されている方向で、配管システム3を通るガスGの循環が可能になり、その結果、ガスは入口管4を通じて、患者の体腔の中に放出される。
【0053】
入口管4の、患者の体腔Cに挿入された部分は複数の穴8を有しており、その穴を通じて、ガスGが体腔の中に泡の状態で放出される。体腔内の任意の流体Fは、ガス泡の導入によって引き起こされた乱流のために攪拌されて、均一に分布し、目標領域に投与される。
【0054】
ガスは、患者の体腔を出て、出口管5を通り、再び配管システム3に入る。図1に示す装置は、ガスが配管システムに再び入る前に、ガスと共に体腔を出た任意の流体が分離されるように、患者の体腔と出口管との間に挿入された、ガス/流体分離装置9をさらに備える。
【0055】
患者の体腔から回収された流体を、患者の体腔から回収されたガスから分離するための装置9が、図4に示されている。このガス/流体分離装置9は、患者の体腔から回収したガスと流体との混合物を受けるためのチャンバ10を備える。この実施形態において、チャンバ10は、シリンダの形状である。
【0056】
チャンバ10は、患者の体腔から、ガスと流体との混合物を回収するためのガス入口ポート11と、チャンバ10からガスを抜き出すためのガス出口ポート12とを備える。出口ポート12は、出口管5とガス連通しており、チャンバ10の上部で、流体の高さより上に位置している。この実施形態において、出口ポート12は、チャンバキャップ16と一体的に形成されている。図1に示す装置において、ガス/流体分離装置9を出たガスGは、攪拌装置1の中で再循環する。ガスGは、適切に廃棄されてもよいが、この代替手段は、ガスが少量の場合にしか推奨されない。
【0057】
図5は、チャンバ10から流体Fを抜き出すための、流体出口ポート13をさらに備える、第2のガス/流体分離装置9を示す。抜き出された流体Fは、図2の例に示すように廃棄することができ、または図3に示すように、流体循環システム14の中に再導入することができる。
【0058】
図6は、ガス出口ポート12が、チャンバ10の側面に位置する第3のガス/流体分離装置9を示すが、図4または図5に示すものと同様に、キャップ16と一体的に形成され得る。本実施形態において、装置9は、患者の体腔から回収した流体Fの凝縮を容易にするための手段を備える。治療用流体Fの一部は、特に、患者の体腔内に供給される前に加熱された場合はガスの状態となり、攪拌装置からのガスGと混合する。図6の分離装置9において、ガスの状態の流体Fは、凝縮面15、およびチャンバ10の内面に接触し、凝縮して流体の状態に戻ることによって、ガスGからの分離が容易になる。
【0059】
この凝縮手段は、チャンバ10の内面の面積を増加させる、任意の形状をとり得るが、図6に示す凝縮面15は、凝縮した流体Fがせき止められるのを防止するために、表面が平坦であることが好ましい。その傾斜によって、凝縮した流体Fが、チャンバ10の底に向かって移動するのが容易になり、設計が単純なことによって、チャンバ10の製造が簡単になる。凝縮面15は、チャンバ10の内壁に取り付けられることが好ましく、それに代えて、またはそれに加えて、チャンバ10の基部、またはチャンバ10のキャップ16に取り付けられてもよい。凝縮面15と、それが取り付けられている面との間の角度は、0度より大きく、90度より小さい(または90度より大きく、180度より小さい)。
【0060】
図7A図7D、および図8図10は、分離装置を患者に固定するために、本発明による固定手段と共に使用するための、チャンバ基部17、ピン18、プラグ19、カバー20、およびフィルタ21を示す。
【0061】
本実施形態において、チャンバ10の基部17は、チャンバ10の底に取り外し可能に結合(ねじ込み可能等)され、キャップ16は、チャンバ10の上部に取り外し可能に結合される。あるいは、チャンバ10、キャップ、および/または基部17は、一体的に形成されてもよい。
【0062】
ピン18は、使用時に、開口部を介して患者に挿入され、ピン基部18A、および中空のピン部材18Bを備える。本実施形態においては、患者の体腔と流体/ガス連通する、内部流路18Dを有する管状のピン延長部が、ピン基部18Aから延びている。本実施形態におけるピン基部18Aは、患者の皮膚(脂肪層?)に対して平坦に位置するディスクであり、患者の体腔と流体/ガス連通する、穴18Cを有している。使用時に、ピン部材18Bは、患者の組織を通って延び、患者の皮膚の開口部を越えて出る。本実施形態におけるピン18は、一体成型され、挿入を容易にするために、可撓性のプラスチック材料で作られている。あるいは、ピン延長部18Bを可撓性のプラスチック材料で作成し、ピン基部18Aは、ピン延長部18Bとは異なった材料で作成してもよい。
【0063】
プラグ19は、患者の体腔と流体/ガス連通する、内部流路19Aを有する。プラグ19の外側寸法は、ピン延長部18Bの内部流路18Dに挿入されたときに、ピン18が、チャンバ基部17を確実に密封し、固定されるように、ピン延長部18Bの複数の壁が、チャンバ10の基部17の開口部17Aの縁に押しつけられるような寸法である(図8参照)。さらなる把持のために、プラグ19は、リブを付けた外面19Cを有する。さらなる密封のために、プラグ19は、ピン延長部18Dの端部の上に載る、周縁19Bを有する。
【0064】
チャンバ10の中に延びる部品の、さらなる密封と保護のために、任意のキャップ20が設けられる。キャップ20は、それらの部品を部分的に囲み、患者の体腔と流体/ガス連通する、開口部20Aを有する。本実施形態におけるキャップ20は、チャンバ10の基部17内にある、対応するねじ山17Bと係合する、内部ねじ山20Bを有するねじ式のキャップである(図9参照)。
【0065】
図10を参照すると、分離装置9は、椀型のフィルタ21において、チャンバ10の入口ポート11の詰まりを防止する手段を備える。フィルタ21は、患者の組織その他の物質が、患者から出る流体およびガスの通過を阻止しようとするのを防止する、メッシュ等で作られている。装置1は、また、生物要素、または化学要素を保持して、ポンプ部品、患者、および/または環境の汚染を回避する、追加の濾過部品(図示せず)も有することができる。
【0066】
上述したように、装置9の主な機能は、患者の体腔から出たガスから、流体を分離することである。装置9の別の重要な機能は、患者の体内における流体の高さ、すなわち、患者の体腔内における治療用流体の均一な分布の、視覚的な指標の働きをすることである。装置9は、患者の腹部に載置され、最も好ましくは、患者の腹部の最上部に置かれる。治療用流体は、患者の体腔内に供給され、体腔の底部から、体腔の上部まで、体腔を徐々に満たす。流体の高さが体腔の上部に達すると、装置9の中へと上昇し始め、それが体腔内の流体の高さの視覚的な指標となる。装置9に流体がないことは、体腔内にエアポケット(流体が患者の組織と接触せず、したがって均一に投与されない)が存在する可能性を示し、体腔に供給される流体の量は調節され得る。これに従って、施術者は、流体の供給を調節することができる。装置9における流体の不在は、入口ポート11の詰まりを示している場合もあり、施術者は、ポート11の詰まりを除去するか、または患者の組織によってポート11が阻害されるのを防止するために、装置9を再配置することができる。装置内の流体が高いことは、体腔内の流体の過剰を示し、汚染されることなくガスを流体から分離できるように、施術者は、体腔に供給される流体の量を調節することができる。
【0067】
図1に戻ると、入口管4は、体腔Cに入るガスGの温度を監視するためのオンラインの温度センサ(図示せず)を備え、これは、正確に読み取るために、患者の体内に入る位置に隣接した、管4の一部にあることが好ましい。装置1は、患者の体腔内の温度を監視するための温度センサ(図示せず)もさらに備える。出口管5は、患者の体腔から出るガスの温度を監視するための、オンラインの温度センサ(図示せず)を備える。ガスの温度は、温度コントローラ(図示せず)で制御される、加熱または冷却装置(図示せず)を用いて調節される。
【0068】
同様に、入口管4は、体腔に入るガスの流量および/または圧力を監視するための、オンラインの流量および/または圧力センサ(図示せず)を備え、出口管5は、体腔を出るガスの流量および/または圧力を監視するための、オンラインの流量および/または圧力センサ(図示せず)を備える。ガスの流量および圧力は、流量/圧力コントローラ(図示せず)で調節される。
【0069】
本発明の攪拌装置1は、患者の体腔に、流体のみを供給する、流体供給システム(図示せず)と共に用いられる。流体供給システムは、患者の体腔内に流体を供給するための流体供給源と、流体入口管と、任意で、加熱および/または冷却システムと、対応する1つまたは複数のセンサおよびコントローラと、圧力および/または流量制御システムとを備える。流体は、抜き出されて、上述したガス/流体分離装置9を用いて分離される。
【0070】
図2に示す構成において、本発明の攪拌装置1は、流体循環システム14と同時に用いられている。流体循環システム14は、患者の体腔からの流体の回収、および抜き出した流体を患者の体腔に戻して再循環させることを可能にする、流体供給システムである。流体循環システム14は、患者の体腔内に流体を供給するための入口管22と、患者の体腔から流体を回収するための出口管23と、ポンプ24(蠕動ポンプ等)と、流体加熱/冷却装置25とを備える。
【0071】
図3に示す構成において、本発明の攪拌装置1は、流体循環システム14と組み合わされている。本実施形態において、流体循環システム14の出口管23は、流体Fが、攪拌装置によって患者の体腔から回収され、ガス/流体分離装置9においてガスGから分離され、流体循環システム14を通って再循環するように、攪拌装置1のガス/流体分離装置9の流体出口ポート13に結合されている。
【0072】
ここで、本発明の機能は、図3を参照して説明される。使用時に、流体攪拌装置1は、以下のように患者に結合される。ガス入口管4は、患者の体内に挿入され、入口管4の穴8が、治療する領域に隣接して位置するように、患者の体腔に隣接して位置決めされる。
【0073】
ガス/流体分離装置9を装着できるように、患者の体内で、体腔の近くに小さい開口部が設けられる。ピン18は、開口部を通して患者に挿入され、ピン基部18Aが、患者の組織に対して平坦に位置し、ピン延長部18Bが、開口部を越えて延び、ピン穴18Cおよび流路18Dが、患者の体腔と流体/ガス連通するように、ピン18が位置決めされる。ピン延長部18Bは、チャンバ10の基部17の穴17Aと係合し、ピン延長部18Bの流路18Dの中に、プラグ19Aを挿入することによって、さらに密封され固定される。カバー20は、ピン18およびプラグ19を部分的に囲んで保護するために、チャンバ基部17のねじ山17Bにねじ込まれる。
【0074】
治療用流体Fは、流体循環システム14を通して、患者の体腔Cに導入され、ポンプ24によって循環する。流体循環システム14の加熱/冷却装置25は、流体Fを加熱または冷却する。流体Fの温度は、患者の体内に入る前に、温度コントローラ(図示せず)を用いて調節され、オンラインの温度センサ(図示せず)によって測定される。温度センサは、流体入口管22内に配置され、正確に読み取られるように、患者の体内に侵入する位置に隣接して置かれる。追加の温度センサ(図示せず)が、患者の体腔内に置かれる。流体Fの流量および圧力は、流量および圧力コントローラ(図示せず)を用いて調節される。流体Fの圧力は、入口管22の上または中で、圧力センサ(図示せず)によって測定される。
【0075】
炭酸ガス等のガスGは、給気口6を通って攪拌装置1の配管システム3の中に導入され、ポンプ2によって、装置1を通って循環する。ガスGは、加熱または冷却でき、ガスGの温度は、温度コントローラ(図示せず)を用いて調節することができる。ガスGの温度は、患者の体内に入る前に、オンラインの温度センサ(図示せず)によって測定される。温度センサは、ガス入口管4内に配置され、正確に読み取られるように、患者の体内に侵入する位置に隣接して置かれる。ガスGの流量および圧力は、流量および圧力コントローラ(図示せず)を用いて調節される。ガスGの圧力は、ガス入口管4の上または中で、圧力センサ(図示せず)によって測定される。
【0076】
ガスGは、体腔C内で乱流が生成されるように、複数の穴8を通って患者の体腔Cの中に泡の状態で放出され、流体Fを攪拌する。攪拌によって、流体Fが体腔全体に均一に分布し、治療する領域に投与されることが確実になる。したがって、襞に隠れたり、臓器や組織の後ろにあったり等、通常はアクセスを妨げられるような領域に、流体Fを到達させることができる。
【0077】
ガスGおよび流体Fは、上述したようなガス/流体分離装置9を用いて、患者の体腔から回収される。図10に示す椀型のフィルタ21は、組織その他の物質が、分離装置9の入口ポート11に侵入したり詰まったりするのを防止する。ガスと流体との混合物は、入口ポート11を通ってチャンバ10に入る。より重い流体Fは、チャンバ10の底に沈殿し、より軽いガスは、流体の高さより上の、チャンバ10の上部に向かって移動する。ガスの状態の任意の流体Fは、図6に示すような凝縮面の使用によって凝縮が容易になる。
【0078】
ガスGは、チャンバ10の上部または側面のいずれかで、流体の高さよりも上に位置する、ガス出口ポート12を通って、分離チャンバ9から除去される。ガスは、出口ポート12に結合されたガス出口管5を介して、配管システム3の中に再導入される。ガスGの温度および圧力は、ガス出口管5の中または上に配置された、1つ以上のセンサによって測定される。ガス貯蔵器またはバルーン7が、攪拌システム1の容積容量を増加させるため、および冗長な配管の使用を避けるために設けられている。
【0079】
流体Fは、チャンバ10の底部に位置するか、あるいはチャンバ10の側面、または好ましくはチャンバ10の基部17のいずれかに位置する、流体出口ポート13を通って、分離チャンバ9から除去される。流体Fは、流体出口管23を介して、流体循環システム14の中に再導入される。チャンバ10を出た流体Fの温度、流量、および圧力は、流体出口管23の上または中に配置された、1つ以上のセンサによって測定される。
【0080】
本発明は、流体攪拌装置、および治療用流体の供給および/または再循環に有用な方法を提供する。本発明の装置は、腹膜のような、臓器および/または体腔への、加熱された治療用流体の供給に使用できるが、上記あるいはその他の、腎臓、結腸、または肝臓等の臓器への、異なる温度の(冷却または加熱された)治療用流体の供給にも使用され得る。本発明は、大量の治療用流体を必要とする治療、例えば、腹膜温熱化学療法に特に好適であり、そのような治療において、攪拌は、体腔全体に薬剤を均一に分布させ、温度を均一にすることを保証する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B