特許第6385354号(P6385354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385354
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】高耐熱吸遮音材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20180827BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20180827BHJP
   B29B 15/10 20060101ALI20180827BHJP
   D04H 1/488 20120101ALI20180827BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G10K11/168
   G10K11/16 120
   B29B15/10
   D04H1/488
   F02B77/13 D
   F02B77/13 E
   F02B77/13 G
【請求項の数】27
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-541684(P2015-541684)
(86)(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公表番号】特表2016-505865(P2016-505865A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】KR2013010027
(87)【国際公開番号】WO2014073860
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0124945
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】キム、クン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン、ウク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ウォン、ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウォン、グ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ス、ナム
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ビョン、チョル
【審査官】 須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−144818(JP,A)
【文献】 特開2005−335279(JP,A)
【文献】 特開2007−175567(JP,A)
【文献】 特開2003−313272(JP,A)
【文献】 特開2008−248866(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0236936(US,A1)
【文献】 特開2009−167571(JP,A)
【文献】 特開平11−158776(JP,A)
【文献】 米国特許第06583072(US,B1)
【文献】 特開2003−119657(JP,A)
【文献】 特開平11−297579(JP,A)
【文献】 特開平07−085863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
G10K 11/168
B29B 15/10
D04H 1/488
F02B 77/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱繊維を含む繊維素材の打綿混繊段階と、
打綿混繊された繊維素材のウェブ形成段階と、
形成されたウェブを積層させるウェブ積層段階と、
積層ウェブをニードルの上下運動によって不織布を形成するニードルパンチング段階と、
不織布をバインダー溶液に含浸させてバインダー含浸不織布を形成するバインダー含浸段階と、
バインダー含浸不織布から溶媒を除去して吸遮音材として用いられる不織布を得る溶媒回収段階と、
を含み、
前記バインダー含浸段階は、前記ニードルパンチング段階で形成された不織布を耐熱温度200℃以上の熱硬化性バインダー樹脂が有機溶媒に5〜70重量%の濃度で分散されたバインダー溶液に含浸させる工程からなることを特徴とする高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項2】
耐熱繊維を含む繊維素材の打綿混繊段階と、
打綿混繊された繊維素材のウェブ形成段階と、
形成されたウェブを積層させるウェブ積層段階と、
積層ウェブをニードルの上下運動によって不織布を形成するニードルパンチング段階と、
不織布をバインダー溶液に含浸させてバインダー含浸不織布を形成するバインダー含浸段階と、
バインダー含浸不織布から溶媒を除去する溶媒回収段階と、
乾燥された不織布を所望の形状の吸遮音材として製作する成形段階と、
を含み、
前記バインダー含浸段階は、前記ニードルパンチング段階で形成された不織布を耐熱温度200℃以上の熱硬化性バインダー樹脂が有機溶媒に5〜70重量%の濃度で分散されたバインダー溶液に含浸させる工程からなることを特徴とする高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項3】
前記打綿混繊段階は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が200℃以上の繊維素材を打綿するか、または混繊するか、または打綿及び混繊する工程からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項4】
前記打綿混繊段階は、1〜10個/cmのクリンプが存在し、直径が1〜33μmで、長さが20〜100mmの繊維素材の1つを打綿してなるか、1〜10個/cmのクリンプが存在し、直径が1〜33μmで、長さが20〜100mmの繊維素材の1つ以上を混繊してなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項5】
前記繊維素材は、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI−PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリケトン(PK)繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、及びセラミック繊維からなる群より選択された1つ以上を含んでなることを特徴とする請求項3に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項6】
前記繊維素材は、メタ系アラミド(m−Aramid)繊維及びパラ系アラミド(p−Aramid)繊維からなる群より選択された1つ以上を含んでなることを特徴とする請求項5に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項7】
前記ウェブ形成段階は、カーディングを適用してなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項8】
前記ウェブ積層段階は、水平ラッパーを用いて10m/mim以下の生産速度で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項9】
前記ニードルパンチング段階は、パンチング方式が単一下部方式、単一上部方式、ダブル下部方式及びダブル上部方式からなる群より選択された1つ以上を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項10】
前記ニードルパンチング段階でニードルストローク30〜350回/mにより不織布を形成することを特徴とする請求項9に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項11】
前記ニードルパンチング段階で形成された不織布は、単一層の厚さが3〜20mmで、密度が100〜2000g/mであることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項12】
前記バインダー含浸段階は、バインダーが含浸された不織布を1〜20kgf/cmの圧力で圧着して密度が1,000〜3,000g/mのバインダー含浸不織布を形成する圧着工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項13】
前記バインダー含浸段階は、20〜80重量部の前記不織布を20〜80重量部の前記熱硬化性バインダー樹脂に含浸させる工程からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項14】
前記バインダー溶液は、バインダー樹脂5〜70重量%、硬化剤0.1〜10重量%、触媒0.01〜5重量%、添加剤1〜40重量%、及び残量の溶媒からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項15】
前記バインダー溶液は、バインダー樹脂1〜30重量%、硬化剤0.1〜10重量%、触媒0.01〜5重量%、難燃剤1〜30重量%、及び溶媒40〜95重量%からなることを特徴とする請求項14に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項16】
前記熱硬化性バインダー樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項17】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゼンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、及びo−クレゾールノボラックエポキシ樹脂より選択された1種以上であることを特徴とする請求項16に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項18】
前記溶媒回収段階は、乾燥オーブンを用いて70〜200℃の温度条件で1〜10分間乾燥して前記有機溶媒を蒸発させる工程からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項19】
前記溶媒回収段階を経た不織布は、不織布100重量部に対してバインダーが1〜300重量部含まれることを特徴とする請求項18に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項20】
前記有機溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)及びジメチルカーボネイト(DMC)からなる群より選択された1つ以上からなることを特徴とする請求項18に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項21】
前記成形段階は、150〜300℃の温度条件で行われることを特徴とする請求項2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項22】
限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が200℃以上の繊維素材を打綿及び混繊する打綿混繊段階(S101)と、
前記打綿混繊段階で打綿及び混繊された繊維素材を連続した状態の薄いシート状のウェブとして形成するウェブ形成段階(S103)と、
前記ウェブ形成段階で形成されたウェブをオーバーラッピング積層して積層ウェブを形成するウェブ積層段階(S105)と、
前記ウェブ積層段階で形成された積層ウェブをニードルの上下運動によって相互結合して不織布を形成するニードルパンチング段階(S107)と、
前記ニードルパンチング段階で形成された不織布を耐熱温度が200℃以上の熱硬化性バインダー樹脂が分散されたバインダー溶液に含浸してバインダー含浸不織布を形成するバインダー含浸段階(S109)と、
前記バインダー含浸段階で形成されたバインダー含浸不織布で前記熱硬化性バインダー樹脂だけ残存するように溶媒を除去して硬化性フェルトを形成し、吸遮音材として使用する溶媒回収段階(S111)と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項23】
前記溶媒回収段階(S111)の後に乾燥された不織布を150〜300℃の温度条件で成形して所望の形状の吸遮音材を製作する成形段階(S121)をさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項24】
製造された吸遮音材は、耐熱繊維を含む不織布原糸の表面にバインダーが微細にかつ全体的に均一に分布して付着したまま存在しており、バインダー含浸前の不織布に比べて、さらに微細な大きさの通気孔を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱吸遮音材の製造方法。
【請求項25】
i)騒音を誘発する装置の立体構造を確認する段階と、
ii)前記装置の立体構造と一部または全部が一致するように請求項1または2に記載の方法で吸遮音材を製作及び成形する段階と、
iii)前記吸遮音材を前記騒音誘発装置に隣接させる段階と、
を含むことを特徴とする騒音誘発装置の騒音低減方法。
【請求項26】
前記装置は、モータ、エンジンまたは排気系であることを特徴とする請求項25に記載の騒音誘発装置の騒音低減方法。
【請求項27】
前記隣接は、騒音誘発装置に密着させて締結するか、または騒音誘発装置から一定の距離をおいて設置するか、または騒音誘発装置に適用される部品として成形して適用することを特徴とする請求項25に記載の騒音誘発装置の騒音低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱吸遮音材の製造方法に関するもので、より詳細には、打綿混繊段階、ウェブ形成段階、ウェブ積層段階、ニードルパンチング段階、バインダー含浸段階、溶媒回収段階を含んでなり、200℃以上の高温環境でも形状が変化することなく、UL 94V−0の難燃性を満足させる高耐熱吸遮音材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を運転すると様々な騒音が発生する。自動車の騒音は、主にエンジンと排気系による騒音が空気を通して自動車の室内に伝わる。このようにエンジン及び排気系から発生して室内に伝わる騒音を減少させるために自動車用吸遮音材が用いられている。車両のインシュレーションダッシュ(insulation dash)、ダッシュアイソレーションパッド(dash isolation pad)などはエンジンの放射騒音が室内に入るのを遮断するために使用され、トンネルパッド(tunnel pad)、フロアカーペット(floor carpet)などは排気系及び底部から発生する騒音が室内に侵入することを遮断するために使用される。
【0003】
自動車用吸音材は、特許文献1では20mmの厚さを有する吸遮音材のPET繊維(PET fiber)層の中間位置に、長手方向に向って40〜100μmの厚さを有する合成樹脂フィルム層が挿入される技術を開示しており、特許文献2ではポリエステル繊維とアクリル繊維を切断・打綿し、低融点ポリエステル系繊維と一定比率で混合した後、成形・加熱して不織布の形態を有する吸音断熱材を製造する技術を開示している。また、特許文献3では、ポリエステル(PET)フェルトとして低融点繊維(LMF)とレギュラー繊維(regular fiber)が混合されている繊維を用いて、上部層と下部層のうち少なくとも1つの層を樹脂でコーティングする技術を開示している。
【0004】
現在までに報告された自動車用吸遮音材は、エンジン及び排気系の放射騒音を低減させるために重量を増加しなければならず、重量を増加するにつれて室内騒音を遮断する効率が低下するという問題があった。このような限界を克服するために、エンジン及び排気系の騒音源に最も近接している部位に吸遮音材を適用することが最も効率的であるが、エンジン及び排気系の騒音源に最も近接している部位に適用するためには、200℃以上の高温環境でも形状が変化することがなく、難燃性を確保しなければならないため、今まで自動車用吸遮音材に適用する素材は使用することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許公報第2004−13840号
【特許文献2】韓国公開特許公報第2002−89277号
【特許文献3】韓国公開特許公報第2006−43576号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エンジン及び排気系の騒音源に最も近接している部位に200℃以上の高温環境でも形状が変化することがなく、UL 94V−0の難燃性が確保される高耐熱吸遮音材の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、200℃以上の金属部品の周辺に適用されて遮熱機能を発揮し、周辺のプラスチック及びゴム部品を保護できる高耐熱吸遮音材の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明のまた他の目的は、吸遮音材の単一材質だけでも成形可能な新たな概念の高耐熱吸遮音材を効果的に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一様態によれば、本発明は、耐熱繊維を含む繊維素材の打綿混繊段階と、打綿混繊された繊維素材のウェブ形成段階と、形成されたウェブを積層させるウェブ積層段階と、積層ウェブをニードルの上下運動によって不織布を形成するニードルパンチング段階と、不織布をバインダー溶液に含浸させてバインダー含浸不織布を形成するバインダー含浸段階と、バインダー含浸不織布から溶媒を除去して吸遮音材として用いられる不織布を得る溶媒回収段階と、を含む高耐熱吸遮音材の製造方法をその特徴とする。
【0010】
本発明の他の様態によれば、本発明は、耐熱繊維を含む繊維素材の打綿混繊段階と、打綿混繊された繊維素材のウェブ形成段階と、形成されたウェブを積層させるウェブ積層段階と、積層ウェブをニードルの上下運動によって不織布を形成するニードルパンチング段階と、不織布をバインダー溶液に含浸させてバインダー含浸不織布を形成するバインダー含浸段階と、バインダー含浸不織布から溶媒を除去する溶媒回収段階と、乾燥された不織布を所望の形状の吸遮音材として製作する成形段階と、を含む高耐熱吸遮音材の製造方法をその特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい実施例によれば、前記打綿混繊段階は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が200℃以上であり、1〜10個/cmのクリンプが存在し、直径が1〜33μmで、長さが20〜100mmの繊維素材の1つを打綿するか、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が200℃以上であり、1〜10個/cmのクリンプが存在し、直径が1〜33μmで、長さが20〜100mmの繊維素材の1つ以上を混繊するか、または前記条件で打綿及び混繊してなる。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記繊維素材は、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI−PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリケトン(PK)繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維及びセラミック繊維からなる群より選択された1つ以上を含んでなる。
【0013】
本発明の好ましい実施例によれば、前記ウェブ形成段階は、スウィフトの左右にはワーカーがあり、ファンシーは高速回転してスウィフトとシリンダー上に前記打綿混繊段階で打綿及び混繊された繊維素材を浮上させてカード機で繊維を梳毛する方法を用いて連続した状態の薄いシート状にしてウェブを形成する段階であって、カーディングを用いることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施例によれば、前記ウェブ積層段階は、前記ウェブ形成段階で形成されたウェブをコンベアベルト上にオーバーラッピング積層して積層ウェブを形成する段階であって、空気抵抗によってウェブが散るか、コンベアベルト上でウェブが切れる現象を防止するために水平ラッパーを用いて10m/mim以下の生産速度で行うことができる。
【0015】
本発明の好ましい実施例によれば、前記ニードルパンチング段階は、前記ウェブ積層段階で形成された積層ウェブをニードルの上下運動によって相互結合して不織布を形成する段階であって、パンチング方式は、単一下部方式、単一上部方式、ダブル下部方式及びダブル上部方式からなる群より選択された1つ以上を含んでなる。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記ニードルパンチング段階は、ニードルストローク30〜350回/mにより不織布を形成する段階を含んでなる。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記ニードルパンチング段階は、単一層の厚さが3〜20mmで、密度が100〜2000g/mの不織布を形成する段階を含んでなる。
【0018】
本発明の好ましい実施例によれば、前記バインダー含浸段階は、前記ニードルパンチング段階で形成された不織布を耐熱温度が200℃以上の熱硬化性バインダー樹脂が有機溶媒に5〜70重量%の濃度で分散されたバインダー溶液に含浸させる工程からなる。
【0019】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記バインダー含浸段階は、バインダー含浸された不織布を1〜20kgf/cmの圧力で圧着して密度が1,000〜3,000g/mのバインダー含浸不織布を形成する圧着工程をさらに含んでなる。
【0020】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記バインダー含浸段階は、前記不織布20〜80重量部を前記熱硬化性バインダー樹脂20〜80重量部に含浸させてバインダー含浸不織布を形成する段階である。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記バインダー溶液は、バインダー樹脂5〜70重量%、硬化剤0.1〜10重量%、触媒0.01〜5重量%、添加剤1〜40重量%、及び残量の溶媒からなる。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記バインダー樹脂がエポキシ樹脂からなる。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(bisphenol A diglycidyl ether)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(bisphenol F diglycidyl ether)、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル(polyoxypropylene diglycidyl ether)、ホスファゼンジグリシジルエーテル(phosphazene diglycidyl ether)、フェノールノボラックエポキシ(phenol novolac epoxy)、オルソ−クレゾールノボラックエポキシ(o−cresol novolac epoxy)及びビスフェノールAノボラックエポキシ(bisphenol A−novolac epoxy)からなる群より選択された1つ以上からなる。
【0024】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記有機溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)及びジメチルカーボネイト(DMC)からなる群より選択された1つ以上からなる。
本発明の好ましい実施例によれば、前記溶媒回収段階は、前記バインダー含浸段階で形成されたバインダー含浸不織布で前記有機溶媒を蒸発させて前記熱硬化性バインダー樹脂だけ前記不織布に存在するように熱硬化性フェルトを形成する段階であって、乾燥オーブンを用いて70〜200℃の温度条件で1〜10分間行うことができる。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施例によれば、前記溶媒回収段階を経た不織布には不織布100重量部に対してバインダーが1〜300重量部含むことができる。
【0026】
本発明の好ましい実施例によれば、前記成形段階は150〜300℃の温度条件で行われる。
【0027】
本発明の他の様態によれば、本発明は、i)騒音を誘発する装置の立体構造を確認する段階と、ii)前記装置の立体構造と一部または全部が一致するように前記吸遮音材を製作及び成形する段階と、iii)前記吸遮音材を前記騒音誘発装置に隣接させる段階と、を含む騒音誘発装置の騒音低減方法をその特徴とする。
【0028】
本発明の好ましい実施例によれば、前記装置は、モータ、エンジンまたは排気系であり得る。
【0029】
本発明の好ましい実施例によれば、前記隣接は、騒音誘発装置に密着させて締結するか、または騒音誘発装置から一定の距離をおいて設置するか、または騒音誘発装置に適用される部品として成形して適用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法は、複雑な3次元の迷路構造による不定形の通気孔が形成された不織布の内部にバインダーが浸透して通気孔を塞ぐことなく、不織布内部の3次元形状を維持する形態で硬化することによって、不織布の吸音性などの物性を改善し、バインダーの硬化過程中に所望の形状に成形が可能なようにする高耐熱吸遮音材を提供する。
【0031】
また、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法は、耐熱繊維からなる不織布にバインダーが含浸されているため、吸音性以外にも難燃性、耐熱性及び遮熱性が同時に優れ、200℃以上の高温が維持される騒音装置に適用されても吸遮音材が変形または変成することがない。
【0032】
また、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法は、バインダーとして熱硬化性樹脂を用いた場合、熱硬化性樹脂の硬化過程中に所望の形状に成形が可能であるため、工程単純化の効果が得られる。
【0033】
また、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法は、エンジン及び排気系の騒音源に最も近接している部位に装着され、エンジン及び排気系の放射騒音を低減させて車両室内の騒音を改善する吸遮音材を提供する。
【0034】
また、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法は、200℃以上の金属部品の周辺に適用されて遮熱機能を発揮することで、周辺のプラスチック及びゴム部品を保護できる吸遮音材を提供する。
【0035】
したがって、本発明の製造方法で製造された吸遮音材は、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、芝刈り機などの電気製品分野、自動車、船舶、航空機などの輸送機器分野、または壁材、底材などの建築材料分野などを始め、防音、吸音または遮音が要求される分野で吸遮音材として効果的である。本発明の製造方法で製造された吸遮音材は、200℃以上の高温が維持される騒音誘発装置に吸遮音材として効果的である。特に、本発明の製造方法で製造された吸遮音材を自動車分野に適用する場合、自動車のエンジン及び排気系などのような騒音誘発装置に密着させて締結するか、または騒音誘発装置から一定の距離をおいて設置するか、または騒音誘発装置に適用される部品として成形して適用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施例による高耐熱吸遮音材の製造方法を示すフローチャートである。
図2】バインダーへの含浸前後の不織布に対する電子顕微鏡写真(×300)である。(A)は、ニードルパンチング段階で製造された不織布の写真である。(B)と(C)は、バインダー含浸段階を経たバインダー含浸不織布の写真であって、(B)は不織布80重量部にバインダーが20重量部含浸されたバインダー含浸不織布の写真、(C)は不織布50重量部を基準としてバインダーが50重量部含浸されたバインダー含浸不織布の写真である。
図3】本発明の一実施例による高耐熱吸遮音材の製造方法で製造された高耐熱吸遮音材の写真と、従来のアルミニウムヒートプロテクターの写真を比較して示すものである。
図4】本発明の一実施例による高耐熱吸遮音材の製造方法で製造された高耐熱吸遮音材と従来のアルミニウムヒートプロテクターを排気系放射騒音を低減させるために装着した例を比較して示すものである。
図5】吸遮音材を部品として成形して自動車の騒音誘発装置に適用させた例を示す概略図である。(A)は自動車のエンジンに適用される吸遮音材を成形した写真、(B)は吸遮音材を自動車のエンジンの一部に装着させた例を示す写真である。
図6】吸遮音材を自動車の騒音誘発装置から一定の距離をおいて設置して適用した例を示す概略図である。(A)は自動車の車体下部に適用される吸遮音材を成形した写真、(B)は吸遮音材を自動車の車体下部に付着した例を示す写真である。
図7】不織布の密度による吸遮音材の吸音性能を比較したグラフである。
図8】本発明の一実施例による高耐熱吸遮音材の製造方法で製造された高耐熱吸遮音材と従来のアルミニウム遮熱板に対して遮熱性能を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の好ましい実施例と各成分の物性を詳細に説明するが、これは本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が発明を容易に実施するために詳細に説明するもので、これによって本発明の技術的な思想及び範疇が限定されることはない。
【0038】
本発明は、高耐熱吸遮音材の製造方法に関するもので、より詳細には、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が200℃以上の繊維素材を打綿及び混繊する打綿混繊段階、前記打綿混繊段階で打綿及び混繊された繊維素材を連続した状態の薄いシート状のウェブとして形成するウェブ形成段階、前記ウェブ形成段階で形成されたウェブをオーバーラッピング積層して積層ウェブを形成するウェブ積層段階、前記ウェブ積層段階で形成された積層ウェブをニードルの上下運動によって相互結合して不織布を形成するニードルパンチング段階、前記ニードルパンチング段階で形成された不織布を耐熱温度が200℃以上の熱硬化性バインダー樹脂が分散されたバインダー溶液に含浸してバインダー含浸不織布を形成するバインダー含浸段階、前記バインダー含浸段階で形成されたバインダー含浸不織布で前記熱硬化性バインダー樹脂だけ残存するように溶媒を除去して硬化性フェルトを形成して吸遮音材として使用する溶媒回収段階を含んでなる。
【0039】
また、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法は、前記溶媒回収段階(S111)の後、乾燥された不織布を150〜300℃の温度条件で成形して所望の形状の吸遮音材を製作する成形段階(S121)をさらに含んでなる。
【0040】
本発明による製造方法で製造された吸遮音材は、耐熱繊維を含む不織布原糸の表面にバインダーが微細にかつ全体的に均一に分布して付着したまま存在しており、バインダーの含浸前の不織布に比べて、さらに微細な大きさの通気孔を形成することによって、吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れ、耐熱繊維不織布と同じ層に位置するバインダーを用いて所望の立体的形状に成形が可能であるという点にその優秀性がある。
【0041】
図1に示すように、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法は、打綿混繊段階(S101)、ウェブ形成段階(S103)、ウェブ積層段階(S105)、ニードルパンチング段階(S107)、バインダー含浸段階(S109)、溶媒回収段階(S111)を含んでなる。
【0042】
図1のフローチャートに基づいて本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法を具体的に説明すると次の通りである。
【0043】
前記打綿混繊段階(S101)は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が200℃以上であり、1〜10個/cmのクリンプが存在し、直径が1〜33μmで、長さが20〜100mmの繊維素材の1つを打綿するか、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が200℃以上であり、1〜10個/cmのクリンプが存在し、直径が1〜33μmで、長さが20〜100mmの繊維素材の1つ以上を混繊するか、または前記の方法で打綿及び混繊して形成されるが、繊維を均一に分散させるためにエアーブローイング法を適用して形成される。
【0044】
本発明の打綿混繊段階(S101)で用いられた繊維素材は、高耐熱吸遮音材の基材となる素材であって、エンジン及び排気系の放射騒音を吸収して自動車の室内に伝わる騒音を減少させる役割をする。
【0045】
本発明では繊維素材として限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が150℃以上の耐熱繊維を使用する。耐熱繊維は、高温及び超高熱条件で耐えられる耐久性に優れた素材であれば何れも適用が可能である。好ましくは前記耐熱繊維として限界酸素指数(LOI)が25〜80%で、耐熱温度が150〜3000℃のものを使用する。特に好ましくは前記耐熱繊維として限界酸素指数(LOI)が25〜70%で、耐熱温度が200〜1000℃のものを使用する。また、耐熱繊維は繊度が1〜15デニール、好ましくは1〜6デニールで、原糸の長さは20〜100mm、好ましくは40〜80mmのものを使用することがよい。原糸の長さは20〜100mm、好ましくは40〜80mmのものがよいが、原糸の長さが短すぎると、ニードルパンチングの時、原糸を交絡しにくくなって不織布の結束力が弱くなることがあり、原糸の長さが長すぎると、不織布の結束力は向上するが、カーディング(carding)の時、原糸の移送が円滑でないという問題がある。
【0046】
前記繊維素材は、当分野で通常的に呼ばれている「スーパー繊維」を使用してもよい。スーパー繊維は、具体的にはアラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI−PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリケトン(PK)繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、セラミック繊維などより選択された1種以上が含まれる。本発明では耐熱繊維として好ましくはアラミド繊維を使用する。具体的に本発明では耐熱繊維としてメタ系アラミド(m−Aramid)、パラ系アラミド(p−Aramid)またはこれらを混合して使用してもよい。
【0047】
アラミド繊維は、ベンゼン環のような芳香族環がアミド群によって結合された構造を形成する芳香族ポリアミド繊維である。脂肪族ポリアミド(例えば、ナイロン)と区別するために、芳香族ポリアミド繊維を「アラミド(Aramide)」という。アラミド繊維は、芳香族ポリアミド紡糸(Polyamide spinning)により製造し、芳香族環に結合されるアミドの結合位置によってメタ系アラミド(m−Aramid)、パラ系アラミド(p−Aramid)に分けられる。
【化1】
【化2】
【0048】
前記一般式(1)で表されるメタ系アラミド(m−Aramid)は、塩化イソフタロイル(Isophthaloyl chloride)とメタ系フェニレンジアミン(m−phenylene diamine)をジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒に溶かして乾式紡糸により製造される。メタ系アラミドは、屈曲性高分子構造によって破断伸度が22〜40%で比較的高く、染色が可能なものであるため、繊維化する場合に効果的である。このようなメタ系アラミドは、ノーメックス(NomexTM、DuPont社)、コーネックス(ConexTM、Teijin社)という商品名で市販されている。
【0049】
前記一般式(2)で表されるパラ系アラミド(p−Aramid)は、塩化テレフタロイル(Terephthaloyl chloride)とパラ系フェニレンジアミン(p−phenylene diamine)をN−メチルピロリドン(NMP)溶媒に溶かして湿式紡糸により製造される。パラ系アラミドは、線形高配向の分子構造によって高強度の特性を持つが、メタ系アラミドに比べて3〜7倍程度高いため、補強材や保護材などとして用いられる。また、パラ系アラミドは、耐化学性が強く、熱収縮が低く、形態安定性に優れ、切断強度が高く、耐炎性(Flame resistant)と自己消化性(Self extinguish)を有する。このようなパラ系アラミドは、ケブラー(KevlarTM、DuPont糸)、トワロン(TwaronTM、Teijin糸)、テクノーラ(TechnoraTM、Teijin糸)という商品名で市販されている。
【0050】
前記アラミドは、フィラメント(Filament)、ステープル(staple)、糸(yarn)などの製品として提供されており、強度補強素材(変圧器、モータなど)、絶縁素材(絶縁ペーパー、絶縁テープなど)、耐熱性繊維(消防服、防火手袋など)、高温用フィルタなどに用いられている。
【0051】
本発明の吸音素材を製造するために用いられる繊維素材として耐熱繊維を使用することを特徴としているが、原価低減、軽量化、機能性の付与などのために耐熱繊維の原糸に他の繊維を含んで混繊してもよい。具体的に本発明の吸音素材は、耐熱繊維を原糸として製造されたものであるが、もっぱら耐熱繊維だけで構成される吸遮音材に限定されることはない。本発明の吸音素材に含まれた耐熱繊維の原糸の含量を限定すると、全繊維素材のうち耐熱繊維が30〜100重量%、さらに好ましくは60〜100重量%含まれる。
【0052】
前記ウェブ形成段階(S103)は、スウィフトの左右にはワーカーがあり、ファンシーは高速回転してスウィフトとシリンダー上に前記打綿混繊段階(S101)で打綿及び混繊された繊維素材を浮上させてカード機で繊維を梳毛する方法を用いて連続した状態の薄いシート状にしてウェブを形成するためにカーディングを適用して行われ、形成されたウェブに嵩高性を付与して開繊効率を極大化して重量散布を最小化する役割をする。
【0053】
前記ウェブ積層段階(S105)は、前記ウェブ形成段階(S103)で形成されたウェブをコンベアベルト上にオーバーラッピング積層して積層ウェブを形成する段階であって、水平ラッパーを用いて10m/mim以下の生産速度で行われ、空気抵抗によってウェブが散るか、コンベアベルト上でウェブが切れる現象を防止する役割をする。
【0054】
前記ニードルパンチング段階(S107)は、前記ウェブ積層段階(S105)で形成された積層ウェブの表面に対して垂直、傾斜方向または両方向にニードルの上下運動によって積層ウェブを相互結合して不織布を形成する段階であって、パンチング方式は単一下部方式、単一上部方式、ダブル下部方式及びダブル上部方式からなる群より選択された1つ以上を含んでなり、水平方向に配列されている積層ウェブの一部が垂直方向に配列されることで、不織布の結束力を増加させる。
【0055】
前記ニードルパンチング段階(S107)で形成された不織布は、単一層の厚さが3〜20mmで、密度が100〜2000g/mである。不織布の厚さ及び密度の変化により吸音性は異なるようになり、不織布の厚さ及び密度が大きいほど吸音性は増加すると予測される。本発明では、吸遮音材が適用される産業分野などを考慮すると、不織布の厚さは3〜20mmであることが好ましい。その理由は、不織布の厚さが3mm未満であれば、吸遮音材の耐久性と成形性を満足しにくく、厚さが20mmを超えると、生地の製作及び加工時の生産性が低下し、原価が増加する問題がある。また、不織布の重量は、性能と原価を考慮して密度が100〜2000g/m、好ましくは200〜1200g/m、さらに好ましくは300〜800g/mであることがよい。
【0056】
前記アラミド不織布は、カーディング(Carding)により形成された30〜100g/mのウェブを2〜12重に積層して連続的に1次のアップ−ダウンプレニードリング(Up−down preneedling)、2次のダウン−アップニードリング(Down−up needling)、3次のアップ−ダウンニードリング(Up−down needling)の連続工程により必要な厚さの調節、結束力の確保、及び物性の実現のための物理的交絡を形成する。この際、ニードル(needle)は、ワーキングブレード(working blade)が0.5〜3mmで、ニードルの長さ(クランクアウトサイド(crank outside)からポイントまでの距離)が70〜120mmのバーブ(Barb)型のニードルを使用する。ニードルストロークは30〜350回/mのものが好ましい。
【0057】
さらに好ましくは不織布用原糸の繊度が1.5〜8.0デニール、パイル形成層の厚さが6〜13mm、ニードルのストローク数が120〜250回/m、不織布の密度が300〜800g/mのものが好ましい。
【0058】
前記バインダー含浸段階(S109)は、前記ニードルパンチング段階(S107)で形成された不織布を耐熱温度が200℃以上の熱硬化性バインダー樹脂が有機溶媒に5〜70重量%の濃度で分散されたバインダー溶液に含浸させてバインダー含浸不織布を形成する段階である。また、前記バインダー含浸段階(S109)は、必要によってバインダーに含浸された不織布を圧着する段階をさらに含んでもよい。前記圧着段階は、不織布内の熱硬化性バインダー樹脂の含量を調節するために行われることで、具体的には通常の圧着用ローラーを用いて1〜20kgf/cmの圧力で圧着して密度が1,000〜3,000g/mのバインダー含浸不織布を形成することもできる。好ましくはマングルローラーなどの圧着用ローラーを用いて5〜15kgf/cmの圧力で圧着して密度が1,000〜2,000g/mのバインダー含浸不織布を形成することができる。
【0059】
前記バインダー含浸段階(S109)は、不織布20〜80重量部及び前記熱硬化性バインダー樹脂20〜80重量部からなる。
【0060】
本発明では、前記バインダー含浸段階(S109)により吸音及び遮音の特性を改善することはもちろん、所望の形状の吸遮音材として成形可能であることにその特徴がある。
【0061】
不織布は、その製造方法によって少し異なるが、繊維が3次元的に無秩序に配列されている。したがって、不織布内部の気孔構造は、それぞれが独立している毛細管チューブの束ではなく、規則または不規則な繊維配列によって3次元的に連結されている非常に複雑な迷路構造(labyrinth system)を形成する。具体的には、前記ニードルパンチング段階(S107)で形成された不織布は、耐熱繊維を含む原糸が粗く交差することで、不規則に通気孔(micro cavity)が形成される。
【0062】
本発明では、不織布をバインダー溶液に含浸させるバインダー含浸段階(S109)を行い、耐熱繊維を含む不織布原糸の表面にバインダーが微細に、かつ全体的に均一に分布して付着されたまま存在することによって実質的に不織布の固有の3次元気孔構造を維持したまま、含浸前の不織布に比べてさらに微細な大きさの通気孔を形成する。このように不織布の内部構造に、さらに微細な通気孔が形成されるということは騒音の共鳴性が増加することを意味し、それによって吸遮音性が向上することを意味する。この際、用いられたバインダー樹脂が3次元網状構造を自ら形成しながら硬化する場合、不織布の内部にはさらに多い微細通気孔が形成されるため、吸遮音性はより向上される。それによって、本発明の吸遮音材は、不織布にバインダーが均一に浸透して不織布の本来の3次元形状を維持し、さらにバインダーの硬化によって、微細通気孔(Micro ventilator)がさらに多く形成されるため、騒音が伝わると不織布内で多様な騒音の共鳴を形成して騒音の消滅効果が増加し、騒音の消滅効率性が極大化されることで、吸音性能が大きく改善することができる。
【0063】
前記バインダー含浸段階(S109)を経たバインダー含浸不織布には、不織布と同じ層にバインダーが位置して不織布内部の3次元形状を維持することができる。したがって、本発明は前記バインダーとして不織布内部の3次元形状を維持できる素材のバインダーであれば何れも使用することができる。前記「不織布内部の3次元形状を維持する形態」とは、不織布にバインダーが含浸されてバインダーが不織布の繊維原糸の表面に全体的に均一に分布した状態で付着され、不定形の通気孔構造を維持またはさらに形成させることで、不織布の本来の3次元内部形状を維持することを意味する。
【0064】
通常、バインダーといえば、2つの素材間の接着または接合を目的として用いられる材料を称するが、本発明でのバインダーは耐熱繊維からなる不織布に含浸された材料を称する。
【0065】
このように不織布に含浸されるバインダーとして様々な素材が適用される。先ず、バインダー素材として熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を考慮することができる。
【0066】
熱可塑性樹脂に代表されるポリアミド系樹脂は、耐熱繊維に代表されるアラミド繊維と同様に結晶性極性基を持っている。そのため、熱可塑性耐熱繊維からなる不織布に熱可塑性バインダーが含浸されると、これらの互いに類似した結晶性極性基によって面接触が行われ、これら接触部には固い境界層が形成されて不織布の通気孔を部分的に塞ぐようになる。すなわち、耐熱繊維からなる不織布に含浸されるバインダーに熱可塑性樹脂を使用すると、不織布の通気孔が部分的に詰まって吸音性能が低減される。一方、通気孔が詰まると、通常的に遮音性能が向上すると予測されるが、遮断された騒音は不織布内部で消滅することではなく、他の経路で音が伝えられるため、熱可塑性バインダーの含浸による遮音性能の向上も期待することができない。また、無機系耐熱繊維からなる不織布に熱可塑性バインダーを含浸させる場合、これらの間の接着力が弱いため、別途の接着性添加剤を使用しなければならない。
【0067】
反面、熱硬化性バインダーは、熱可塑性耐熱繊維と比較すると、全く異なる物理化学的特性を有する異質素材である。そのため、熱可塑性耐熱繊維からなる不織布に熱硬化性バインダーが含浸されると、これらの異質特性のため、線接触による境界層が形成され、不織布の通気孔が開かれたまま存在する。すなわち、耐熱繊維からなる不織布に含浸されるバインダーとして熱硬化性樹脂を使用すると、不織布内部の3次元形状の維持が可能となる。したがって、本発明では前記バインダーとして好ましくは熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0068】
また、熱硬化性樹脂は、光、熱または硬化剤によって硬化する特性と、高温条件でもその形状が変形しない特性を持っている。したがって、本発明は、耐熱繊維と熱硬化性バインダーを特定条件で構成することで、成形後に高温条件でも成形された形状をずっと維持できる効果が得られる。よって、不織布に含浸されるバインダーに熱硬化性樹脂を使用すると、樹脂の硬化過程中に所望する形態に成形できるだけでなく、高温条件でも成形された形状を維持するというさらなる効果を期待することもできる。
【0069】
以上、説明した通り、耐熱繊維からなる不織布に含浸させるバインダーとして熱硬化性樹脂を使用すると、不織布内部の3次元形状を維持する効果以外に、バインダー樹脂の硬化反応中に所望する形状への成形が可能となるという効果も期待することができる。
【0070】
前記バインダーとして、さらに好ましくはエポキシ樹脂を使用することができる。エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂の1種類で、硬化時に3次元的網状構造を有する高分子物質として硬化する特性がある。したがって、エポキシ樹脂は、不織布の内部構造内に浸透して硬化する時、自らの網状構造の形成によるまた他の通気孔を形成するため、不織布内部でさらに多い微細通気孔が形成され、吸音性能がより向上されることができる。
【0071】
また、前記硬化反応が硬化剤の存在下で行われると、より発達した3次元網状構造を形成できるため、吸音効果はより向上される。具体的には、エポキシ樹脂内のエポキシ群またはヒドロキシ群と硬化剤内のアミン群、カルボン酸群などの官能基が互いに反応して共有結合により架橋を形成して3次元的網状高分子を形成することになる。この際、硬化剤は、硬化反応を促進させる触媒として作用するだけでなく、反応に直接関与してエポキシ樹脂の分子内に連結される。したがって、硬化剤の選択によって通気孔の大きさ及び物性を調節することができる。
【0072】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゼンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂などより選択された1種以上を使用することができる。前記エポキシ樹脂としてエポキシ当量が70〜400範囲のものを使用することがさらに好ましい。その理由は、エポキシ当量が足りないと、3次元網状構造を形成するための分子間の結合力が低いか、耐熱繊維の接着力が低くなって吸遮音材の物性を低下させる要因になり得る。反面、エポキシ当量が高すぎると、極端に高密度の網状構造を形成して吸音性が低下することがある。
【0073】
また、本発明では、バインダーに熱硬化性樹脂を使用する場合、硬化剤をバインダー溶液に共に含んで使用してもよい。前記硬化剤は、バインダーに結合された官能基としてエポキシ群またはヒドロキシ群と反応しやすい官能基を有する化合物を使用することがよい。このような硬化剤は、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物、ウレア、アミド、イミダゾールなどが挙げられる。前記硬化剤を具体的に例示すると、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、三フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF、MEA)、ジアミノシクロヘキサン(DACH)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(NMA)、ジシアンジアミド(Dicy)、2−エチル−4−メチル−イミダゾールなどより選択された1種以上が挙げられる。さらに好ましくは硬化剤として脂肪族アミン系またはアミド系が挙げられ、これらは比較的架橋性に優れ、耐薬品性、耐候性も非常に高い。最も好ましくは架橋性、難燃性、耐熱性、貯蔵安定性、加工性をなどを考慮してジシアンジアミド(Dicy)が挙げられる。ジシアンジアミド(Dicy)は、融点が200℃以上で高く、エポキシ樹脂に配合された後にも貯蔵安定性に優れるため、硬化及び成形するまで十分な作業時間を確保することができる。
【0074】
また、本発明では、バインダーに用いられる熱硬化性樹脂の硬化を促進させる触媒を使用してもよい。前記触媒は、ウレア、ジメチルウレア、第4級DBUのテトラフェニルホウ酸塩、第4級臭化ホスホニウムなどより選択された1種以上が挙げられる。前記触媒は、バインダーが含まれている溶液に共に含んで使用してもよい。
【0075】
また、本発明では、吸遮音材に機能性を付与するために、様々な添加剤、例えば、難燃剤、耐熱向上剤、撥水剤などを使用することができる。前記添加剤は、バインダー溶液に含んで使用するため、吸遮音材に機能性を付与するための別途の表皮材を積層しなくてもよい。
【0076】
前記難燃剤は、メラミン類、リン酸塩、金属ヒドロキシドなどが挙げられる。前記難燃剤は、具体的にメラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミン、ホスファゼン、ポリリン酸アンモニウムなどより選択された1種以上が挙げられる。さらに好ましくは、難燃剤としてメラミン類を使用し、これによって難燃性と耐熱性を同時に向上させる効果が得られる。
【0077】
前記耐熱向上剤は、アルミナ、シリカ、タルク、クレー、ガラス粉末、ガラス繊維、金属粉末などが挙げられる。
【0078】
前記撥水剤は、フルオロ系などより選択された1種以上が挙げられる。
その他にも当分野で通常的に使われている添加剤を目的に合わせて選択して使用することができる。
【0079】
前記バインダー含浸段階(S109)で用いられるバインダー溶液は、バインダー樹脂以外にも硬化剤、触媒、通常の添加剤と溶媒を含んでなる。
【0080】
バインダー溶液に含まれるバインダー、硬化剤、触媒、通常の添加剤は、上述した通りである。また、バインダー溶液の製造時に用いられる溶媒は、ケトン系、カーボネイト系、アセテート系、セロソルブ系などより選択された1種以上が挙げられる。前記溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジメチルカーボネイト(DMC)、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどより選択された1種以上が挙げられる。
【0081】
本発明で用いられるバインダー溶液は、好ましくはバインダー5〜70重量%と残量の溶媒を含んでなる。本発明で用いられるバインダー溶液にさらに硬化剤と触媒を始め、その他の添加剤を含んで使用してもよい。この場合、バインダー溶液は、バインダー5〜70重量%、硬化剤0.1〜10重量%、触媒0.01〜5重量%、添加剤1〜40重量%、及び残量の溶媒を含む。さらに好ましくは、バインダー溶液は、バインダー1〜30重量%、硬化剤0.1〜10重量%、触媒0.01〜5重量%、添加剤として難燃剤1〜30重量%、及び溶媒40〜95重量%を含んでなる。
【0082】
本発明のバインダー溶液は、その濃度の調節により、不織布に対する含浸程度を調節できるが、固形分の含量を基準として1〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%の濃度で製造して使用することがよい。バインダー溶液の濃度が薄すぎると、不織布に含浸されるバインダーの含量が低くて本発明が目的とする効果を得ることができなく、濃すぎると、不織布が固く硬化して吸遮音材としての機能を発揮することができない。
【0083】
また、バインダー溶液に含まれる硬化剤の含量が低すぎると、バインダーの完全な硬化を期待できなく、所望する成形体を成形できないだけでなく、吸遮音材の機械的強度を改善する効果が不十分になり、高すぎると、吸遮音材が固く硬化して貯蔵安定性などが劣化することがある。また、触媒の含量が低すぎると、反応を促進させる程度が弱く、高すぎると、貯蔵安定性などが劣化することがある。また、添加剤は、難燃剤、耐熱向上剤、撥水剤などを始め、当分野で通常的に用いられる添加剤より選択された1種以上が挙げられる。これら添加剤は、添加の目的によって適切に調節して使用され、その含量範囲が未満であれば添加効果が弱く、前記範囲を超えて使用することは経済性が落ち、かえって他の副作用を招くようになる。
【0084】
図2は、バインダーへの含浸前後の不織布内部の3次元形状を確認するための電子顕微鏡写真である。
【0085】
図2の(A)は、バインダーに含浸される前の不織布の内部構造を確認した電子顕微鏡写真であって、耐熱繊維の原糸が互いに交差して不定形通気孔が形成されていることが分かる。図2の(B)と(C)は、前記不織布にバインダーを含浸した後の電子顕微鏡写真であって、耐熱繊維の原糸に全体的にバインダーが微細に分布して付着されていることが確認でき、バインダーの含量が増加すると原糸の表面にはさらに多量のバインダーが含まれることが確認できる。
【0086】
また、図2の電子顕微鏡写真から分かるように、本発明の吸遮音材は、不織布を構成する耐熱繊維の原糸の表面にバインダーが均一に分散して分布されている。
【0087】
前記溶媒回収段階(S111)は、前記バインダー含浸段階(S109)で形成されたバインダー含浸不織布で前記有機溶媒を蒸発させて前記熱硬化性バインダー樹脂だけ前記不織布に存在するように熱硬化性フェルトを形成する段階である。前記溶媒回収段階(S111)は、乾燥オーブンを用いて70〜200℃の温度条件で、好ましくは100〜150℃の温度条件で1〜10分間行われる。
【0088】
前記溶媒回収段階(S111)は、有機溶媒の蒸発により発生する有害物質を除去する役割以外にも、不織布内のバインダー含量の調節により、吸遮音材の物性を調節することができる。乾燥後の不織布内に含まれているバインダーの含量は、吸遮音材内部の通気孔の大きさ、形状、分布度を調節する重要要素で、これらによって吸遮音材の吸音特性及び機械的特性が調節される。本発明では前記乾燥過程により、不織布に含まれたバインダーの最終含量が不織布100重量部を基準として1〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部範囲に調節することができる。また、前記乾燥過程を経た不織布は、密度が300〜1500g/mの熱硬化性フェルトに製造され、好ましくは密度が300〜1000g/mの熱硬化性フェルトに製造される。また、熱硬化性フェルト内のバインダーの最終含量は50〜800g/m、好ましくは100〜500g/mとなるように調節することができる。
【0089】
一方、本発明は、前記溶媒回収段階(S111)の後に、乾燥された不織布を高温で成形して吸遮音材を製造する成形段階(S121)をさらに含む吸遮音材の製造方法を含む。
【0090】
具体的に、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法は、打綿混繊段階(S101)、ウェブ形成段階(S103)、ウェブ積層段階(S105)、ニードルパンチング段階(S107)、バインダー含浸段階(S109)、溶媒回収段階(S111)、成形段階(S121)を含んでなる。
【0091】
前記成形段階(S121)は、溶媒回収により、乾燥された不織布を高温で成形して所望の形状の吸遮音材を製作する段階である。前記高温成形過程は、熱硬化性バインダーの硬化反応も考慮した過程で、その成形温度は150〜300℃、さらに好ましくは170〜230℃の温度を維持するようにする。
【0092】
上述したような製造方法で製造された吸遮音材の内部構造は電子顕微鏡を用いて確認することができる。電子顕微鏡の写真から分かるように、本発明の吸遮音材の内部には1〜100μmの大きさを有する通気孔が分布しているが、これら通気孔は0.1〜500μm間隔で規則または不規則的に分布している。
【0093】
図3には本発明の製造方法で製造された高耐熱吸遮音材の写真と従来のアルミニウムヒートプロテクターの写真を比較して示す。
【0094】
一方、本発明は、i)騒音を誘発する装置の立体構造を確認する段階と、ii)前記装置の立体構造と一部または全部が一致するように前記方法で吸遮音材を製作及び成形する段階と、iii)前記吸遮音材を前記騒音誘発装置に隣接させる段階と、を含む騒音誘発装置の騒音低減方法を特徴とする。
【0095】
前記装置というものは、モータ、エンジン、排気系などを始め、騒音を誘発する装置を意味することで、本発明の装置が前記モータ、エンジン、排気系に限定されることはない。前記装置の立体構造と一部または全部が一致するように製作して使用してもよい。本発明の吸遮音材は、バインダーの硬化過程で成形できるという特長を有するため、装置の立体構造と一部または全部が一致するように吸遮材を成形製作して使用することができる。
【0096】
前記「隣接させる(adjacent)」ということは、騒音誘発装置に密着して締結するか、または騒音誘発装置から一定の距離をおいて設置するか、または騒音誘発装置に適用される部品として成形して適用することを意味する。また、本発明で隣接は、騒音誘発装置に結合された部材(例えば、他の吸遮音材)にさらに装着することも含む。
【0097】
図4図5及び図6には、本発明の吸遮音材を自動車の騒音誘発装置に適用した代表例を概略的に示す。
【0098】
図4は、本発明の製造方法で製造された高耐熱吸遮音材と従来のアルミニウムヒートプロテクターを排気系放射騒音を低減させるために自動車に装着させた例を示す写真である。
【0099】
図5は、吸遮音材を部品として成形して自動車の騒音誘発装置に適用した例を示す概略図であって、(A)は自動車のエンジンに適用される吸遮音材を成形した写真、(B)は吸遮音材を自動車のエンジンの一部に装着した例を示す写真である。
【0100】
また、図6は、吸遮音材を自動車の騒音誘発装置に設置して適用した例を示す概略図であって、(A)は自動車の車体下部に適用される吸遮音材を成形した写真、(B)は吸遮音材を自動車の車体下部に付着した例を示す写真である。
【0101】
上述したように本発明の吸遮音材は、不織布内部の3次元形状が維持されるようにバインダーが含浸されたもので、吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れ、室温はもちろん、200℃以上の高温が維持される騒音装置に直接適用しても成形体の変形を起こすことなく、本来の吸遮音の効果が得られる。
【0102】
以下、本発明を次の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明が次の実施例によって限定されることはない。
【0103】
本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法及び高耐熱吸遮音材の効果を実施例を挙げて説明する。
【0104】
実施例1.高耐熱吸遮音材の製造
1)不織布の製造
クリンプが6個/cmの2de、76mmのメタ系アラミド(m−Aramid)繊維をエアーブローイング(Air Blowing)で打綿し、カーディングを用いて30g/mのウェブを形成し、形成されたウェブを水平ラッパーを用いて5m/mimの生産速度でコンベアベルト上に10重オーバーラッピング積層して積層ウェブを形成した後、積層ウェブの表面に対して垂直方向に1次の単一上部方式、2次のダブル下部方式、3次のダブル上部方式でニードルパンチングして密度が300g/mの不織布を4mmの厚さで製造した。
【0105】
2)熱硬化性バインダー樹脂溶液の製造
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(bisphenol A diglycidyl ether)、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル(polyoxypropylene diglycidyl ether)、ホスファゼンジグリシジルエーテル(phosphazene diglycidyl ether)が混合されたエポキシ樹脂にエポキシ樹脂10重量%のシアノグアニジン(cyanoguanidine)硬化剤、エポキシ樹脂8重量%のビスジメチルウレア化合物(bis−dimethylurea compounds)触媒、エポキシ樹脂30重量%のメラミンシアヌレート(melamincyanurate)難燃剤を混合して熱硬化性バインダー樹脂を製造した。
【0106】
3)熱硬化性フェルトの製造
浴槽に前記実施例1の2)で製造した熱硬化性バインダー樹脂の濃度が25重量%となるようにジメチルカーボネイト(DMC)有機溶媒に分散させた後、前記実施例1の1)で製造した不織布を浴槽に含浸させ、マングルローラーの圧力を8kgf/cmに維持して密度が1,500g/mのバインダー含浸不織布を形成した。形成されたバインダー含浸不織布を1次の乾燥オーブン温度100℃、2次の乾燥オーブン温度120℃、3次の乾燥オーブン温度150℃、4次の乾燥オーブン温度150℃に設定された乾燥オーブンを5m/minの速度で通過させることで、熱硬化性バインダー樹脂が300g/m残るように有機溶媒900g/mを除去して密度が600g/mの熱硬化性フェルトを製造した。
【0107】
比較例1.既存のアルミニウムヒートプロテクターの製造
既存の排気系で発生する熱を遮断するために適用されたアルミニウム1mm素材をヒートプロテクター金型を用いてヒートプロテクターを製造した。
【0108】
比較例2.アラミド不織布からなる吸遮音材の製造
前記実施例1の1)と同様のニードルパンチング工程で密度300g/m及び厚さ6mmのアラミド不織布を製造した。
【0109】
比較例3.エポキシ樹脂でコーティングされたアラミド不織布からなる吸遮音材の製造
前記実施例1の1)と同様のニードルパンチング工程で密度300g/m及び厚さ6mmのアラミド不織布を製造した。そして、不織布表面にエポキシ樹脂のコーティング量が不織布100重量部を基準としてバインダーの含量が50重量部となるようにコーティングし、150℃で乾燥して成形した。
【0110】
不織布の表面へのコーティング溶液は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル8重量%、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー2重量%、ジシアンジアミド0.2重量%、ジメチルウレア0.02重量%、メラミンシアヌレート10重量%、ジメチルカーボネイト79.78重量%の組成を有する。
【0111】
比較例4.熱可塑性樹脂に含浸されたアラミド不織布からなる吸遮音材の製造
前記実施例1の1)と同様のニードルパンチング工程で密度300g/m及び厚さ6mmのアラミド不織布を製造した後に、バインダー溶液に含浸、乾燥及び成形した。
【0112】
バインダー溶液は、ポリエチレン樹脂10重量%、メラミンシアヌレート(Melaminecyanurate)10重量%、ジメチルカーボネイト(DMC)80重量%の組成を有する熱可塑性樹脂溶液を製造して使用した。
【0113】
比較例5.エポキシ樹脂に含浸されたPET不織布からなる吸遮音材の製造
前記実施例1の1)と同様のニードルパンチング工程で密度300g/m及び厚さ6mmのポリエチレンテレフタレート(PET)不織布を製造した後に、バインダー溶液に含浸、乾燥及び成形した。
【0114】
前記比較例5のPET不織布は、エポキシ硬化過程で発生する反応熱によってPET不織布が熱変形を起こし、熱間圧着成形過程では完全に熱変形されて、所望の形態に成形することができなかった。
【0115】
前記実施例1で製造した600g/mの熱硬化性フェルトを200℃の温度条件で200秒間100kgf/cmの圧力で厚さ3mmとなるように熱圧着して高耐熱吸遮音材の試験片を製造した。
【0116】
このような高耐熱吸遮音材の試験片は、吸音率の評価方法のISO R 354、Alpha Cabin法によって吸音係数を測定したが、測定された試片3枚の吸音係数の平均値を下記表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
既存のアルミニウム素材は、金属材質からなるため、吸音率がなかった。それに反して、前記表1に示すように、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法で製造された高耐熱吸遮音材は、エンジン及び排気系の騒音源に最も近接している部位に装着すると、エンジン及び排気系の放射騒音を低減させるため、車両室内の騒音の改善に優れた効果を発揮することができる。
【0119】
前記実施例1で製造した密度が600g/mの熱硬化性フェルトを200℃の温度条件で200秒間100kgf/cmの圧力でヒートプロテクター金型を用いて成形した高耐熱吸遮音材と、前記比較例1で製造されたアルミニウムヒートプロテクターに熱を加えて熱源方向の温度を250℃に維持し、反対側の温度を測定した結果を下記表2に示す。また、前記実施例1で製造した高耐熱吸遮音材の装着性能を検証するために、乗用ディーゼル(U2 1.7)自動車を対象として施し、3段のW.O.T PG評価結果を下記表3に示し、IDLE N段の室内騒音測定結果を下記表4に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
前記表2に示すように、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法で製造された高耐熱吸遮音材は、熱を遮断するために適用されたアルミニウムヒートプロテクターに比べて、車両の室内騒音を改善させ、それだけでなく遮熱機能を発揮して周辺のプラスチック及びゴム部品を保護できることが分かる。
【0122】
【表3】
【表4】
【0123】
前記表3と表4に示すように、本発明による高耐熱吸遮音材の製造方法で製造された高耐熱吸遮音材は、既存のアルミニウムヒートプロテクターに比べて、加速騒音は1.4〜2%改善され、室内騒音は1dB(A)減少することが分かる。
【0124】
[実験例]
<吸遮音材の物性評価方法>
吸遮音材の物性は下記の方法で測定して比較した。
1.耐熱性の評価
吸遮音材の耐熱性を評価するために、耐熱オーブンで260℃の温度条件で300時間老化させ、標準状態(温度23±2℃、 相対湿度50±5%)で1時間以上そのまま維持した後、外観及び引張強度を測定した。この際、外観に収縮及び変形、表面のはがれ、毛羽立ち、亀裂などがあるか否かを肉眼で確認して判別した。引張試験は、ダンベル状1号試験片を任意に5枚取って標準状態で引張速度200mm/分の条件で施した。
【0125】
2.熱サイクルの評価
吸遮音材の耐久性は熱サイクル試験法によって評価した。下記の条件を1サイクルとして5サイクルを施して耐久性を判断した。
1)1サイクル条件
室温→高温(150℃×3時間)→室温→低温(−30℃×3時間)→室温→耐湿(50℃×95%RH)
2)耐久性の評価基準
熱サイクルの試験後、外観に変化があるか否かを確認した。例えば、表面損傷、膨張、破砕、変色の程度などを確認し、これら外観に変化がない場合は「異常なし」と表記した。
【0126】
3.難燃性の評価
吸遮音材の難燃性はISO3795燃焼性の試験方法で測定した。
【0127】
4.不燃性の評価
吸遮音材の不燃性はUL94垂直難燃性の試験方法で測定した。
【0128】
5.吸音性の評価
吸遮音材の吸音性はISO354の方法で測定した。
【0129】
6.通気量の評価
1)評価方法
フラジール(FRAZIER)形試験機を用いて試験片を装着し、垂直に通過して流れる空気の量を測定した。空気が試験片を通過する面積は5cmで、この際、加えられた圧力は125パスカル(Pa)に調整した。
【0130】
実験例1.耐熱繊維の種類による吸遮音材の特性比較
本実験例1では耐熱繊維の原糸の選択によって製造された吸遮音材の物性を比較した。具体的には、前記実施例1の方法で吸音素材を製造するが、ニードルパンチング段階で繊度が2デニールで、長さ51mmの下記表5に示す原糸を用いた。
【0131】
前記吸遮音材の物性評価方法によってそれぞれの吸遮音材の物性を測定した。下記表5と表6には、耐熱繊維の種類を異なるようにして製造した各吸遮音材に対して物性を測定した結果を示す。
【0132】
【表5】
【表6】
【0133】
前記表5と表6の結果によれば、限界酸素指数が25%以上で、耐熱温度が150℃以上の耐熱繊維を用いて製造した吸遮音材は、耐熱性、耐久性、難燃性、不燃性及び吸音性を全て満足させることが分かる。それによって、本発明の吸遮音材を構成する不織布の素材は、スーパー繊維と知られている通常の耐熱繊維であれば何れも適用可能であることを確認することができる。
【0134】
実験例2.不織布の密度による吸遮音材の特性比較
本実験例2では、不織布の密度による吸遮音材の物性を比較した。具体的には、前記実施例1の方法で吸遮音材を製造するが、ニードルパンチング段階で製造した不織布の密度を異なるようにして吸遮音材を製造し、製造した吸遮音材の吸音性能は図7に示す。
【0135】
図7に示すように、密度が300g/mの不織布に比較して600g/mに増加した不織布を使用する場合、吸遮音材の吸音性能がさらに優れていることを確認することができる。
【0136】
実験例3.吸遮音材の物性評価
本実験例3では、吸音素材を製造する時、耐熱繊維からなる不織布に適用される熱硬化性バインダーの適用方式による吸遮音材の吸音特性を比較した。
【0137】
具体的には、吸音素材を製造する場合、不織布に適用される熱硬化性バインダーに含浸法(実施例1)を適用した時と、コーティング法(比較例3)を適用した時、製造された吸遮音材に対する吸音率を比較した。下記表7には不織布からなる吸遮音材(比較例2)、熱硬化性バインダーを表面コーティングした不織布からなる吸遮音材(比較例3)、熱硬化性バインダーを含浸した不織布からなる吸遮音材(実施例1)のそれぞれに対して吸音率を測定した結果を示す。
【0138】
【表7】
【0139】
前記表7の結果によれば、熱硬化性バインダーが含浸されていない不織布を吸遮音材として用いた比較例2に比較して、本発明による実施例1の吸遮音材は全周波数領域帯で優れた吸音効果が得られる。それに反して、熱硬化性バインダーが表面にコーティングされた不織布を吸遮音材として用いた比較例3では、吸遮音材は400〜5000Hz周波数領域帯で不織布(比較例2)に比較して吸音率がさらに低かった。
【0140】
実験例4.吸遮音材の遮熱性能評価
本実験例4では、前記実施例1(熱硬化性樹脂に含浸されたアラミド不織布)、比較例2(アラミド不織布)及び比較例4(熱可塑性樹脂に含浸されたアラミド不織布)で製造されたそれぞれの吸遮音材に対して遮熱性能を評価した。具体的には、25mm厚さの吸遮音材をそれぞれ設置し、吸遮音材の片面に1000℃の熱を5分間加えた後、吸遮音材の反対側面で温度を測定した。
【0141】
その結果、吸遮音材の反対側面で測定した温度が実施例1の吸遮音材は250℃で、比較例2の吸遮音材は350℃であった。それによって、本発明の吸遮音材は、熱硬化性樹脂が含浸されることで、遮熱性能も向上することが分かる。それに反して、比較例4の吸遮音材は、熱可塑性樹脂が含浸された吸遮音材であって、1000℃の熱を加えるやいなや熱可塑性樹脂が溶けて吸遮音材の形態が変形された。
【0142】
以上の実験によれば、本発明の吸遮音材は遮熱、断熱特性が非常に優れたことが分かる。
【0143】
実験例5.既存のアルミニウム遮熱板との遮熱性能の比較評価
本実験例5では、前記実施例1の吸遮音材と既存のアルミニウム遮熱板に対する遮熱性能を比較した。具体的には、用意されている吸遮音材と遮熱板の片面に同じ熱を加えて熱源方向の温度が250℃になるようにした。次に、加熱時間帯ごとに吸遮音材の反対側面で温度を測定した。その結果は図8に示す。
【0144】
図8に示すように、本発明による吸遮音材がアルミニウム遮熱板に比べて熱遮断温度が11℃以上低いため、さらに優れたことが分かる。
【0145】
実験例6.バインダーの含量による吸遮音材の特性比較
前記実施例1の方法で吸遮音材を製造するが、エポキシ樹脂溶液に含浸されたアラミド不織布を乾燥して最終的に含まれたバインダーの含量を調整した。この際、バインダーの含量は、乾燥された不織布100重量部を基準として吸遮音材に含まれたバインダーの重量部として示す。
【0146】
下記表8及び表9にはバインダーの含量を異なるようにして製造された吸遮音材に対する機械的物性と吸音率を比較した結果を示す。
【0147】
【表8】
【表9】
【0148】
前記表8及び表9の結果によれば、バインダーが含浸されていない不織布に比較して、不織布にバインダーが含浸されることによって吸音率が向上したことが分かる。また、バインダーの含量によって吸遮音材の吸音率が調節される可能性があることを確認することができた。
【0149】
実験例7.バインダーの種類による吸遮音材の特性比較
前記実施例1の方法でアラミド不織布100重量部を基準としてバインダーが50重量部含浸された吸遮音材を製造するが、前記バインダーとして下記表10に示す樹脂を用いた。
【0150】
下記表10には、バインダーの種類を異なるようにして製造した吸遮音材に対する機械的物性と吸音率を比較した結果を示す。
【0151】
【表10】
図1
図2(A)】
図2(B)】
図2(C)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8