【文献】
M.Kumemura et al.,Direct bio-mechanical sensing of enzymatic reaction on DNA by silicon nanotweezers,2010 IEEE 23rd International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS),2010年,915-918
【文献】
Chritsophe Yamahata et al.,Silicon Nanotweezers With Subnanometer Resolution for the Micromanipulation of Biomolecules,Journal of Microelectromechanical Systems,2008年 6月,Vol.17, No.3,623-631
【文献】
Erez Braun et al.,DNA-templated assembly and electrode attachment of a conducting silver wire,Nature,1998年 2月19日,Vol.391,775-778
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置を示す斜視図、
図2は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部を溶液に浸す方法を説明する図、
図3は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部を溶液に浸す方法を説明する写真である。なお、
図2において、(a)は模式側面図、(b)は上方からの顕微鏡写真である。
【0023】
図において、10は、本実施の形態における検出装置としてのナノ鉗子装置(Nanotweezers)であって、MEMS技術によってシリコン基板から製作された装置であり、非特許文献1及び2に示されるナノ鉗子装置と類似の構造を有する。
【0024】
前記ナノ鉗子装置10は、平面視における形状が略矩(く)形の平板状の本体部11と、該本体部11の一側辺から突出した互いに平行な一対の腕部材15とを有する。該腕部材15は、前記本体部11に対して移動可能乃至変位可能に取り付けられた移動腕15aと、移動不能に取り付けられた固定腕15bとから成る。なお、前記移動腕15a及び固定腕15bは、本体部11の表面に平行な平面上に並ぶように配設され、前記移動腕15aは本体部11の表面に平行な平面上を移動する。
【0025】
そして、前記移動腕15aの先端には先鋭な形状を備える移動先端部16aが形成され、前記固定腕15bの先端には先鋭な形状を備える固定先端部16bが形成されている。前記移動先端部16aと固定先端部16bとは互いに対向する。なお、前記移動先端部16a及び固定先端部16bを統合的に説明する場合には、先端部16として説明する。該先端部16は、電極として機能し、所定のAC電圧が印加される。なお、先端部16の表面の少なくとも一部は、金で被覆されていることが望ましい。
【0026】
また、前記本体部11は、前記移動腕15aを変位させるための櫛(くし)歯アクチュエータ(Comb−drive Actuator)17を有する。該櫛歯アクチュエータ17は、図示されない導電性の櫛歯間に作用する静電力を利用するリニアアクチュエータであって、
図1における両方向矢印で示されるように、移動腕15aをその長手方向と直交する方向に変位させ、固定腕15bとの間隔を変化させることができる。これにより、一対の先端部16間の間隔、すなわち、移動先端部16aと固定先端部16bとの間隔を変化させることができる。
【0027】
さらに、前記本体部11は、前記移動腕15aの変位量を計測するための変位センサ(Displacement sensor)18を有する。該変位センサ18は、静電容量の変化を検出する容量式センサであって、移動腕15aの変位量を計測することができる。これにより、一対の先端部16間の間隔、すなわち、移動先端部16aと固定先端部16bとの間隔、及び、該間隔の変化量を計測することができる。
【0028】
前記本体部11の表面には、櫛歯アクチュエータ17に駆動電流を供給するためのアクチュエータ用端子21と、変位センサ18の静電容量の変化を検出するためのセンサ用端子22と、一対の腕部材15の先端部16にAC電圧を印加するための腕部材用端子23とが形成されている。
【0029】
図2に示されるように、本実施の形態において、ナノ鉗子装置10は、溶液収容装置30とともに使用される。該溶液収容装置30は、平板状の一対の板部材31と、該板部材31の間に形成された微小空間32とを有する。前記板部材31は、上側に配設される上板部材31aと、下側に配設される下板部材31bとから成り、上板部材31aと下板部材31bとは、微小間隔(例えば、約300〔μm〕程度の間隔)を空けて互いに平行となるように配設されている。なお、少なくとも上板部材31aは、ガラス等の透明材料から成るものであることが望ましい。そして、前記微小空間32内には、DNAを含む溶液が注入されて収容される。なお、前記微小空間32は、前方(
図2における左方)が開放されているが、上板部材31aと下板部材31bとの間隔が微小であるため、収容されている溶液は、ほとんど漏出したり、蒸発したりすることがない。
【0030】
そして、前記ナノ鉗子装置10は、実験室の床等に固定される基礎部40の上面に固定された鉗子保持台41の平坦(たん)な上面に、本体部11の表面がほぼ水平となるように取り付けられる。したがって、腕部材15はほぼ水平となるように配設される。
【0031】
また、前記溶液収容装置30は、基礎部40の上面に前記鉗子保持台41と対向するように固定された溶液保持装置42に取り付けられる。該溶液保持装置42は、前記鉗子保持台41に対して接近及び離間するように移動可能な可動保持台42aを備え、該可動保持台42aの平坦な上面に、板部材31がほぼ水平となるように溶液収容装置30が取り付けられる。また、板部材31の間に形成された微小空間32の位置が鉗子保持台41に取り付けられたナノ鉗子装置10の腕部材15の位置と対応するように、前記可動保持台42aの高さ方向の位置は調整されている。
【0032】
したがって、
図2(a)における両方向矢印で示されるように、可動保持台42aを水平方向に移動させることによって、ナノ鉗子装置10の腕部材15の先端部16を溶液収容装置30の微小空間32に相対的に出し入れすることができ、
図2(b)に示されるように、前記先端部16を微小空間32内に収容されている溶液に浸すことができる。
【0033】
なお、
図3は、本発明の発明者が実際に製作したナノ鉗子装置10及び溶液収容装置30の位置関係を示す写真であって、ナノ鉗子装置10の腕部材15の先端部16を溶液収容装置30の微小空間32から出した状態を示している。
【0034】
次に、本実施の形態におけるDNAを検出する方法であって、本発明の発明者が
図3に示されるような装置を使用して実際にDNAを検出した方法について説明する。まず、先端部16間をDNAによって橋渡しさせる方法について説明する。
【0035】
図4は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部にプライマーを固定する方法を説明する図、
図5は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部にDNA生成物を生成する方法を説明する図、
図6は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部間を橋渡しするDNAを説明する図、
図7は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部間を橋渡しするDNAを示す顕微鏡写真である。なお、
図4及び5において、(a)及び(b)は方法の第1及び第2の工程を示す図であり、
図6において、(a)は先端部に橋渡ししたDNAを示す図、(b)〜(d)は橋渡ししたDNAに含まれるDNA分子を示す図である。
【0036】
図4(a)に示されるように、互いに対向する先端部16間の間隔は、最小でも3〜5〔μm〕程度である。ナノ鉗子装置10の微細化にも限界があり、現時点では、これよりも狭い間隔とすることは、不可能である。なお、図においては、左側に移動先端部16aが位置し、右側に固定先端部16bが位置しているが、移動先端部16a及び固定先端部16bのいずれが左側に位置してもよく、また、いずれが右側に位置してもよい。また、前記先端部16は、表面が金で被覆されている。
【0037】
そして、可動保持台42aを
図2(a)における左方向に移動させ、前記先端部16を溶液収容装置30の微小空間32内に入れ、該微小空間32内に収容されている第1の溶液に浸すことによって、
図4(b)に示されるように、先端部16の表面にプライマー51を付着させて固定する。ここで、第1の溶液は、プライマー51を含む溶液である。
【0038】
本発明の発明者は、プライマー51として、5’−チオール−モディファイドRCAプライマー(5'-thiol-modified RCA primer)を使用した。
【0039】
続いて、可動保持台42aを
図2(a)における右方向に移動させ、前記先端部16を溶液収容装置30の微小空間32内から出した後、該微小空間32内に収容されている第1の溶液を、該第1の溶液と異なる第2の溶液と入れ替える。そして、可動保持台42aを再度
図2(a)における左方向に移動させ、前記先端部16を溶液収容装置30の微小空間32内に入れ、該微小空間32内に収容されている第2の溶液に浸す。該第2の溶液は、単鎖DNAの環状テンプレート52を含有する溶液である。
【0040】
本発明の発明者は、環状テンプレート52として、オリゴヌクレオチドを合成して環状にしたものを使用した。
【0041】
そして、前記先端部16を第2の溶液に浸した状態で、
図5(a)に示されるように、環状テンプレート52のアニールを定温(等温)で行う。該アニールは、熱サイクル(thermal cycle )を必要とせず、室温で行うことができる。さらに、前記先端部16を第2の溶液に浸した状態で、
図5(b)に示されるように、その場で(in situ )行うRCA法によって単鎖DNA生成物53を生成する。RCA法は、熱サイクルを必要とせずに等温で行うことができる強力なDNAの増幅方法であって、室温で行うことができ、1時間に十億倍程度の増幅率を達成し得る。
【0042】
本発明の発明者は、30〔℃〕の環境下で2時間に亘(わた)ってRCA法を行い、非常に長い(例えば、100キロベース〔kB〕以上)単鎖DNA生成物53を生成することができた。
【0043】
そして、前記先端部16に所定の電圧を印加することによって、先端部16間を伸張したDNA分子によって橋渡しさせることができ、
図6(a)に示されるように、DNA橋54を形成することができる。該DNA橋54は、複数の単鎖DNA分子を含むものであって、DNAが束になっている。また、DNA橋54は、二本鎖DNA分子を含むDNAの束であってもよい。
【0044】
本発明の発明者は、先端部16に高周波のAC電圧(例えば、1〔MHz〕、1〔MV/m〕)を印加して強い電場を生成し、DNA分子を伸張し、誘電泳動(DEP:dielectrophoresis)させ、左右の先端部16に引き付け、これにより、DNA橋54を形成した。両端が左右の先端部16に固定されたDNA橋54として、15〔μm〕以上の長いDNA橋54を得ることができた。なお、
図7は、左右の先端部16の間隔が6〔μm〕の場合に、実際に形成されたDNA橋54の写真であって、先端部16を溶液収容装置30の微小空間32の外に出して撮影した写真である。
【0045】
そして、ナノ鉗子装置10をそのまま使用して、先端部16間を橋渡しするDNAの性質決定を行うことができる。該性質決定は、DNAの機械的性質、又は、DNAの電気的性質に基づいてリアルタイムで行われる。
【0046】
具体的には、DNA橋54を形成した後、可動保持台42aを
図2(a)における右方向に移動させ、前記先端部16を溶液収容装置30の微小空間32内の第2の溶液から抜き出す際に、具体的には、ナノ鉗子装置10の櫛歯アクチュエータ17を作動させて移動先端部16aと固定先端部16bとの間隔を所定の周波数で変化させ、先端部16間を橋渡しするDNAに振動を付与し、該DNAの共振周波数を計測することによって、前記DNAの性質決定を行うことができる。
【0047】
例えば、
図6(b)〜(d)に示されるように、DNAの鎖同士が架橋結合(cross-linking )55によって結合している場合、その共振周波数は、結合形態に応じて変化すると考えられるので、あらかじめ計測した架橋結合55のないDNAの共振周波数、架橋結合55によって特定の結合形態になっているDNAの共振周波数等に基づいて、DNA橋54のDNAがどのような結合形態を備えているのかを判別することができる。具体的には、
図6(b)に示されるように架橋結合55によって単鎖DNA分子が鎖内で結合している場合、
図6(c)に示されるように架橋結合55によって単鎖DNA分子が鎖間で結合している場合、及び、
図6(d)に示されるように架橋結合55によって二本鎖DNA分子が鎖間及び鎖内で結合している場合では、それぞれ、共振周波数が異なるから、
図6(b)〜(d)に示される場合のいずれに該当するのかを判別することもできる。
【0048】
また、ナノ鉗子装置10の一対の先端部16間に印加される電圧及び供給される電流の変化に基づいて、先端部16間を橋渡しするDNAの電気導電率の変化を計測することによって、前記DNAの性質決定を行うことができる。さらに、先端部16間をDNAが橋渡しする前、すなわち、DNA橋54が形成される前とでは、電気導電率が異なるから、蛍光体等の標識物質を使用することなく、DNA橋54が形成されたこと乃至DNA分子の存在を検出することができる。
【0049】
次に、本発明の発明者が行ったDNAの性質決定の結果について説明する。まず、DNAの機械的性質に基づく性質決定の結果について説明する。
【0050】
図8は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部間を橋渡しするDNAの共振周波数シフトを示すグラフ、
図9は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部間を橋渡しするDNAの共振周波数の時間変化を示すグラフである。
【0051】
前述の方法によって先端部16間にDNA橋54が形成されたと考えられる腕部材15の共振周波数を計測し、該共振周波数を、
図4(a)に示されるように、先端部16に何も付着していない初期状態の腕部材15の共振周波数と比較することによって、実際に先端部16間にDNA橋54が形成されたか否かを、in situ で確認することができる。すなわち、DNAの検出をin situ で行うことができる。
【0052】
図8には、本発明の発明者が実際に製作したナノ鉗子装置10を使用して行った腕部材15の共振周波数の計測結果が示されている。ナノ鉗子装置10の櫛歯アクチュエータ17を作動させ、腕部材15の先端部16間の間隔を変化させる周波数を変化させ、周波数毎の振幅の変化を測定した。図において、○は、DNAがない状態、すなわち、先端部16に何も付着していない初期状態の計測値を示し、■は、ss DNA bundle の状態、すなわち、先端部16間に単鎖DNA分子が束になったDNA橋54が形成された状態の計測値を示している。なお、図において、横軸は共振周波数〔kHz〕を示し、縦軸は振幅〔mV〕を示している。
【0053】
図8から分かるように、先端部16に何も付着していない初期状態では、共振周波数が1377.75〔Hz〕であるのに対し、先端部16間に単鎖DNA分子が束になったDNA橋54が形成された状態では、共振周波数が1669.39〔Hz〕である。
【0054】
したがって、前述の方法によって先端部16間にDNA橋54が形成されたと考えられる腕部材15の共振周波数を計測して、
図8を参照することによって、実際に先端部16間にDNA橋54が形成されたか否かを、in situ で確認することができる。
【0055】
また、前述の方法によって先端部16間にDNA橋54が形成される途中及びDNA橋54が形成された後において、DNAの機械的性質は、時間の経過とともに変化することが分かった。
【0056】
図9には、本発明の発明者が実際に製作したナノ鉗子装置10を使用して計測したDNA橋54の共振周波数の時間変化が示されている。図において、○は、DNAがない状態、すなわち、先端部16に何も付着していない初期状態の計測値を示し、■は、ss DNA bundle の状態、すなわち、先端部16間に単鎖DNA分子が束になったDNA橋54が形成された状態の計測値を示している。なお、図において、横軸は経過時間〔s〕を示し、縦軸は共振周波数〔kHz〕を示している。
【0057】
図9から分かるように、DNA橋54が形成された場合であっても、先端部16を溶液収容装置30の微小空間32内に入れ、該微小空間32内に収容されている溶液に浸す、すなわち、In solution の状態にする前は、先端部16に何も付着していないのであるから、初期状態と同様の共振周波数である。そして、先端部16が溶液に浸された状態で前述の方法が行われると、先端部16間がDNA分子によって橋渡しされてDNA橋54が形成されるので、共振周波数が上昇する。そして、先端部16を微小空間32内に収容されている溶液から出し始める、すなわち、Removal が開始される時には、共振周波数が相当程度上昇する。そして、先端部16が微小空間32内に収容されている溶液の外に出て静電泳動が停止しても、すなわち、DEP stopped になっても、さらに、先端部16が完全に大気中にあっても、すなわち、In airの状態になっても、共振周波数は、時間の経過とともに上昇し続ける。
【0058】
次に、DNAの電気的性質に基づく性質決定の結果について説明する。
【0059】
図10は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部間を橋渡しするDNAの電気導電率を示す第1のグラフ、
図11は本発明の第1の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部間を橋渡しするDNAの電気導電率を示す第2のグラフである。
【0060】
前述の方法によって先端部16間にDNA橋54が形成されたと考えられる腕部材15の先端部16間に電圧を印加したときに流れる電流を計測し、該電流を、
図4(a)に示されるように先端部16に何も付着していない初期状態の先端部16間に電圧を印加したときに流れる電流と比較することによって、実際に先端部16間にDNA橋54が形成されたか否かを、in situ で確認することができる。すなわち、DNAの検出をin situ で行うことができる。
【0061】
図10には、本発明の発明者が実際に製作したナノ鉗子装置10を使用して行った先端部16間に電圧を印加したときに流れる電流の計測結果が示されている。ナノ鉗子装置10の先端部16間に印加される電圧を変化させ、電圧毎の電流値を測定した。図において、○は、DNAがない状態、すなわち、先端部16に何も付着していない初期状態の計測値を示し、■は、ss DNA bundle の状態、すなわち、先端部16間に単鎖DNA分子が束になったDNA橋54が形成された状態の計測値を示している。なお、図において、横軸は電圧〔V〕を示し、縦軸は電流〔mA〕を示している。
【0062】
また、
図10中には、電流の単位を〔mA〕から〔pA〕に変えて縦軸のスケールを拡大したグラフが枠に囲まれて示されている。これは、先端部16に何も付着していない初期状態では、電流の変化量が小さく、電流の単位が〔mA〕の縦軸では、全く変化しないように見えてしまうからである。
【0063】
図10から分かるように、先端部16に何も付着していない初期状態では、電圧を上昇させても電流があまり大きく増加せず、例えば、電圧を5〔V〕にまで上昇させても電流は3〔pA〕に届かないのに対し、先端部16間に単鎖DNA分子が束になったDNA橋54が形成された状態では、電圧を上昇させると電流が大きく増加し、例えば、電圧を5〔V〕にまで上昇させると電流が1.7〔mA〕を超えるほどになる。
【0064】
したがって、前述の方法によってDNA橋54が形成されたと考えられる先端部16間に電圧を印加して電流を計測して、
図10を参照することによって、実際に先端部16間にDNA橋54が形成されたか否かを、in situ で確認することができる。
【0065】
ところで、リアルタイムでDNA橋54の形成を確認するという観点からは、DNA橋54が形成される直前の段階と比較することが望ましい。つまり、
図4(a)に示されるような先端部16に何も付着していない初期状態でなく、
図4(b)に示されるような先端部16にプライマー51が固定された状態と比較することが望ましい。
【0066】
図11には、本発明の発明者が実際に製作したナノ鉗子装置10を使用して行った先端部16間に電圧を印加したときに流れる電流の他の計測結果が示されている。ナノ鉗子装置10の先端部16間に印加される電圧を変化させ、電圧毎の電流値を測定した。図において、●は、primer の状態、すなわち、先端部16にプライマー51としての5’−チオール−モディファイドRCAプライマーが固定された状態の計測値を示し、■は、rinsed ss DNA bundleの状態、すなわち、先端部16間に単鎖DNA分子が束になったDNA橋54が形成された状態であって、DNA橋54を純水に浸してリンス(洗浄)した状態の計測値を示している。なお、図において、横軸は電圧〔V〕を示し、縦軸は電流〔pA〕を示している。
【0067】
図10及び11から分かるように、先端部16にプライマー51が固定された状態では、電圧を上昇させても電流があまり大きく増加しないのに対し、先端部16間に単鎖DNA分子が束になったDNA橋54が形成された状態では、電圧を上昇させると電流が大きく増加する。
【0068】
したがって、前述の方法によってDNA橋54が形成されたと考えられる先端部16間に電圧を印加して電流を計測して、
図10及び11を参照することによって、実際に先端部16間にDNA橋54が形成されたか否かを、in situ で確認することができる。
【0069】
また、
図11に示されるように、DNA橋54を純水に浸してリンスした状態では、電圧を上昇させても電流があまり大きく増加しないのに対し、
図10に示されるように、DNA橋54をリンスしない状態では、電圧を上昇させると電流が大きく増加する。これは、DNA橋54をリンスしない状態では、DNA橋54に塩が付着しているために、電気導電率が高くなっているからである。DNA橋54を純水に浸してリンスすることによって、DNA橋54に付着した塩が除去されるので、DNA橋54自体の電気導電率を計測することができる。
【0070】
このように、本実施の形態におけるDNAの検出方法は、一対の電極として腕部材15の先端部16を備える検出装置であるナノ鉗子装置10を使用する方法であって、先端部16にプライマー51を固定し、単鎖DNAの環状テンプレート52を含有する溶液内に先端部16を浸し、環状テンプレート52をアニールし、RCA法によって単鎖DNA生成物53を生成することにより、所定の電圧を印加した先端部16間を伸張したDNAによって橋渡しさせ、複数の単鎖DNA分子を含む先端部16間を橋渡しするDNAの性質決定を行うこと、を含む方法である。
【0071】
これにより、DNAを、蛍光体等の標識物質を使用することなく、容易に、かつ、確実に検出することができる。
【0072】
なお、先端部16の少なくとも一部は金で被覆されていることが望ましい。
【0073】
また、伸張したDNAによる先端部16間の橋渡しは、定温で行われる。したがって、従来の検出方法で行われているようなDNAを増幅させるために溶液等の温度を変化させる温度サイクル操作が不要となるので、容易にDNAを検出することができる。
【0074】
さらに、先端部16間を橋渡しするDNAの性質決定は、先端部16間を橋渡しするDNAの共振周波数に基づいて行われる。より具体的には、先端部16間の間隔を所定の周波数で変化させることによって行われる。これにより、DNAの検出をin situ で行うことができる。
【0075】
また、先端部16間を橋渡しするDNAは束になっている。さらに、このDNAは、二本鎖DNA分子を含む束になっている。
【0076】
さらに、先端部16間を橋渡しするDNAの性質決定は、先端部16間を橋渡しするDNAの導電性に基づいて行われる。これにより、DNAの検出をin situ で行うことができる。
【0077】
さらに、先端部16間を橋渡しするDNAの性質決定は、先端部16間を橋渡しするDNAのリアルタイム計測によって行われる。したがって、時間経過に伴うDNAの性質変化を把握することができる。
【0078】
さらに、単鎖の相補的DNAが生成されるように、対向する先端部16には異なるプライマー51を固定することもできる。生成された単鎖DNA同士は、相補的であるため、二本鎖DNAを形成する。したがって、合成された二本鎖DNAの性質変化を把握することができる。
【0079】
さらに、複数対の先端部16を、例えば、厚さ方向に並べるようにして、並列に配置し、異なるプライマー51を固定することによって、プライマー51に相互作用するそれぞれのテンプレートからDNAの増幅、橋渡し、性質決定を行うことができる。
【0080】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0081】
図12は本発明の第2の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部間を橋渡しするDNAに金の微粒子を被覆させる方法を説明する図、
図13は本発明の第2の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部間を橋渡しするDNAに金の微粒子を被覆させた状態を示す顕微鏡写真、
図14は本発明の第2の実施の形態におけるナノ鉗子装置の腕部材の先端部間を橋渡しするDNAにパラジウムの微粒子を被覆させた状態の電気導電率を示すグラフである。なお、
図12において、(a)は先端部に橋渡ししたDNAを示す図、(b)は金の微粒子を被覆させたDNAを示す図であり、
図13において、(a)はDNAがない状態の写真、(b)及び(c)はDNAに金の微粒子を被覆させた第1及び第2の状態の写真である。
【0082】
本実施の形態においては、
図12(b)に示されるように、ナノ鉗子装置10の腕部材15の先端部16間を橋渡しするDNAに金(Au)から成る微粒子57を被覆させ、これにより、前記先端部16間を橋渡しするDNAの存在を確認する。
【0083】
なお、ナノ鉗子装置10及び溶液収容装置30の構成は、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。また、ナノ鉗子装置10の腕部材15の先端部16間をDNAによって橋渡しさせ、
図12(a)に示されるように、DNA橋54を形成するまでの動作についても、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。なお、
図12(a)は、前記第1の実施の形態において説明した
図6(a)と同様のものである。
【0084】
図12(a)に示されるように、先端部16間にDNA橋54が形成されると、可動保持台42aを
図2(a)における右方向に移動させ、前記先端部16を溶液収容装置30の微小空間32内から出した後、該微小空間32内に収容されている第2の溶液を、該第2の溶液と異なる第3の溶液と入れ替える。そして、可動保持台42aを再度
図2(a)における左方向に移動させ、前記先端部16を溶液収容装置30の微小空間32内に入れ、該微小空間32内に収容されている第3の溶液に浸す。
【0085】
該第3の溶液は、金の微粒子57を含有する溶液である。前記微粒子57は、ナノ粒子(nanoparticle)であって、直径が1〜100〔nm〕程度の超微粒子である。そして、前記第3の溶液には、例えば、3〜30〔ng/μl〕程度の割合で、微粒子57が含有されている。
【0086】
これにより、
図12(b)に示されるように、前記先端部16間に形成されたDNA橋54が金の微粒子57によって被覆される。金の微粒子57によって被覆されたDNA橋54は、被覆されていないDNA橋54と比較して、視認が容易であるとともに、電気導電率が高い(導電抵抗が低い)。したがって、顕微鏡写真を撮影したり、先端部16間に電圧を印加して流れる電流を計測したりすることによって、先端部16間にDNA橋54が形成されたか否か、すなわち、先端部16間を橋渡しするDNAの存在を容易に確認することができる。
【0087】
本発明の発明者は、第3の溶液として、3〔ng/μl〕の割合で、金の微粒子57が含有されている溶液、及び、30〔ng/μl〕の割合で、金の微粒子57が含有されている溶液を使用することによって、先端部16間に形成されたDNA橋54に金の微粒子57を被覆した。
図13は、左右の先端部16の間隔が6〔μm〕の場合に、実際に形成されたDNA橋54の写真であって、
図13(a)は、DNA橋54が形成される前の状態を示し、
図13(b)は、3〔ng/μl〕の割合で金の微粒子57が含有されている溶液に浸してDNA橋54に金の微粒子57を被覆した状態を示し、
図13(c)は、30〔ng/μl〕の割合で金の微粒子57が含有されている溶液に浸してDNA橋54に金の微粒子57を被覆した状態を示している。なお、
図13(a)に示されるように、左右の先端部16の間隔は、6〔μm〕である。
【0088】
図13(b)に示されるように、金の微粒子57が被覆されたDNA橋54は、視認が容易になっていることが分かる。また、
図13(b)と(c)とを比較すると、金の微粒子57の含有量の多い溶液に浸した場合の方がDNA橋54を被覆する金の微粒子57の量が多いので、視認がより容易になっていることが分かる。
【0089】
また、先端部16間に電圧を印加して流れる電流を計測し、前記先端部16間の導電抵抗を算出したところ、
図13(a)に示される場合が26〔TΩ〕、
図13(b)に示される場合が692〔GΩ〕、
図13(c)に示される場合が390〔GΩ〕であった。
【0090】
このことから、金の微粒子57によって被覆されたDNA橋54は、被覆されていないDNA橋54と比較して、導電抵抗が桁(けた)違いに低く、検出が容易であることが分かる。また、DNA橋54を被覆する金の微粒子57の量が多い方が、導電抵抗がより低いので、検出がより容易であることが分かる。
【0091】
ところで、DNAに被覆する微粒子57の材料は、必ずしも金である必要はなく、その他の導電性の材料であってもよく、例えば、パラジウム(Pd)であってもよい。
【0092】
本発明の発明者は、第3の溶液として、パラジウムの微粒子57が含有されている溶液を使用することによって、先端部16間に形成されたDNA橋54にパラジウムの微粒子57を被覆した。
図14には、本発明の発明者が実際に製作したナノ鉗子装置10を使用して行った先端部16間に電圧を印加したときに流れる電流の計測結果が示されている。ナノ鉗子装置10の先端部16間に印加される電圧を変化させ、電圧毎の電流値を測定した。図には、ss DNA bundle の状態、すなわち、先端部16間に単鎖DNA分子が束になったDNA橋54が形成された状態の計測値、DNA coated with Pdの状態、すなわち、先端部16間に形成されたDNA橋54がパラジウムの微粒子57で被覆された状態、及び、rinsed DNA coated with Pd の状態、すなわち、先端部16間に形成されたDNA橋54がパラジウムの微粒子57で被覆された状態であって、該微粒子57で被覆されたDNA橋54を純水に浸してリンス(洗浄)した状態の計測値を示している。なお、図において、横軸は電圧〔V〕を示し、縦軸は電流〔pA〕を示している。
【0093】
図14から分かるように、先端部16に単鎖DNA分子が束になったDNA橋54が形成された状態では、電圧を上昇させても電流があまり大きく増加しないのに対し、DNA橋54がパラジウムの微粒子57で被覆された状態では、電圧を上昇させると電流が大きく増加する。なお、リンスをした状態では、DNA橋54に付着した塩が除去されるので、電気導電率が低くなっている。
【0094】
このように、本実施の形態におけるDNAの検出方法は、一対の電極として腕部材15の先端部16を備える検出装置であるナノ鉗子装置10を使用する方法であって、先端部16にプライマー51を固定し、単鎖DNAの環状テンプレート52を含有する溶液内に先端部16を浸し、環状テンプレート52をアニールし、RCA法によって単鎖DNA生成物53を生成することにより、所定の電圧を印加した先端部16間を伸張したDNAによって橋渡しさせ、先端部16間を橋渡しするDNAに導電性の微粒子57を被覆し、先端部16間を橋渡しするDNAの存在を確認すること、を含む方法である。
【0095】
これにより、先端部16間を橋渡しするDNAの存在を容易に、かつ、確実に確認することができる。
【0096】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0097】
図15は本発明の第3の実施の形態におけるマイクロ流体デバイスの概念図、
図16は本発明の第3の実施の形態におけるマイクロ流体デバイスの写真、
図17は本発明の第3の実施の形態におけるマイクロ流体デバイスの電極ユニットを示す図、
図18は本発明の第3の実施の形態におけるマイクロ流体デバイスのマイクロチャネルユニットを示す図、
図19は本発明の第3の実施の形態におけるマイクロ流体デバイスのマイクロチャネルユニットの突起構造部の顕微鏡写真、
図20は本発明の第3の実施の形態におけるマイクロ流体デバイスのDNA捕獲部を示す図、
図21は本発明の第3の実施の形態におけるマイクロ流体デバイスのDNA捕獲部の顕微鏡写真である。なお、
図16において、(a)はマイクロ流体デバイスの全体を示す写真、(b)は電極ユニットを示す写真、(c)は電極先端部を示す写真であり、
図17において、(a)は電極ユニットの全体を示す図、(b)は電極ユニットの中央部拡大図であり、
図18において、(a)はマイクロチャネルユニットの全体を示す図、(b)はマイクロチャネルユニットの中央部拡大図であり、
図19において、(a)は突起構造部の顕微鏡写真、(b)は(a)の写真に突起構造部の外周を示す黒線を付加した写真であり、
図20において、(a)はDNA捕獲部の全体を示す図、(b)はDNA捕獲部の中央部拡大図であり、
図21において、(a)はDNAがない状態の写真、(b)は蛍光染色したDNAを捕獲した状態の写真である。
【0098】
本実施の形態においては、
図16(a)に示されるようなマイクロ流体デバイスを使用してDNAを検出する。該マイクロ流体デバイスは、
図17に示されるような電極ユニット61、及び、
図18に示されるようなマイクロチャネルユニット70であって前記電極ユニット61と統合されたマイクロチャネルユニット70を有する。より具体的には、前記マイクロ流体デバイスは、一方の表面に金(Au)から成る電極ユニット61がパターン形成されたカバーガラスと、前記マイクロチャネルユニット70が形成され、前記カバーガラスに重ね合わされたポリマー製の板とを有する。なお、
図16(a)に示される例において、カバーガラスは、縦26〔mm〕、横36〔mm〕の矩形の透明なガラス板である。
【0099】
前記電極ユニット61は、互いに同じ形状を有する一対の第1電極ユニット61a及び第2電極ユニット61bから成る。そして、第1電極ユニット61aと第2電極ユニット61bとは、
図17に示されるように、互いに向き合って配設され、これにより、電極ユニット61は、全体としてほぼ左右対称の形状を有する。
【0100】
前記第1及び第2電極ユニット61a、61bは、それぞれ、第1及び第2接続パッド62a、62bと、該第1及び第2接続パッド62a、62bに基端が接続された第1及び第2軸部63a、63bと、該第1及び第2軸部63a、63bの先端に接続された第1及び第2櫛部64a、64bと、該第1及び第2櫛部64a、64bが含む複数の第1及び第2歯部65a、65bと、該第1及び第2歯部65a、65bの各々の先端から突出する第1及び第2電極先端部66a、66bとを備える。
【0101】
前記第1及び第2接続パッド62a、62bは、縦及び横が3〔mm〕の正方形の部分であり、
図16(a)に示されるような外部の電源に他端が接続されたテープ状の導電線の先端が接続される部分である。また、前記第1及び第2軸部63a、63bは、幅が200〔μm〕の帯状の部分である。さらに、前記第1及び第2歯部65a、65bは、幅の狭い直線的な帯状の部分であり、前記第1及び第2電極先端部66a、66bは、第1及び第2歯部65a、65bよりも幅の狭い直線的な帯状の部分である。
【0102】
そして、対応する第1歯部65aと第2歯部65bとは互いに平行となるように配置され、かつ、対応する第1電極先端部66aと第2電極先端部66bとは互いに平行となるように配置される。対応する第1電極先端部66aと第2電極先端部66bとの間隔は、
図16(c)に示されるように、4〔μm〕である。
【0103】
また、前記マイクロチャネルユニット70は、
図18に示されるように、第1及び第2接続部74a、74bと、第1接続部74aと第2接続部74bとを連結する直線的なマイクロチャネル71と、該マイクロチャネル71の中央部においてマイクロチャネル71の両側縁から突出するように形成された複数の突起構造部73とを備える。
【0104】
前記第1及び第2接続部74a、74bは、縦及び横が3〔mm〕の正方形の部分であり、
図16(a)に示されるような外部の溶液供給口及び溶液排出口に他端が接続されたチューブの先端が、パイプ状の金具を介して接続される部分である。また、前記マイクロチャネル71は、前記第1の溶液、第2の溶液、第3の溶液等の溶液や純水、すなわち、流体を流すための流路であって、幅が70〔μm〕、厚さ(深さ)が3〔μm〕の直線的な帯状の部分である。さらに、前記突起構造部73は、マイクロチャネル71の両側縁から外方に突出するように、かつ、左右対称となるように形成された部分であって、互いに対向する一対の突起構造部73の先端同士の間隔は105〔μm〕となっている。各突起構造部73は、マイクロチャネル71と連通する空洞であるから、マイクロチャネル71内を流れる流体によって満たされる。
【0105】
そして、前記電極ユニット61とマイクロチャネルユニット70とは、
図20に示されるように組み合わされる。具体的には、第1及び第2歯部65a、65b並びに第1及び第2電極先端部66a、66bの延在する方向とマイクロチャネル71の延在する方向とが直交し、対応する第1歯部65aの先端と第2歯部65bの先端との間をマイクロチャネル71が通過し、一対の第1及び第2電極先端部66a、66bが、少なくとも部分的に、一対の突起構造部73と重なり合うように、前記電極ユニット61とマイクロチャネルユニット70とは組み合わされる。
【0106】
このように電極ユニット61とマイクロチャネルユニット70とを組み合わせたマイクロ流体デバイスにおいて、
図15に示されるように、マイクロチャネル71に矢印72で示される方向に溶液を流しつつ、電極ユニット61に所定の電圧を印加することによって、互いに対応する第1電極先端部66aと第2電極先端部66bとの間にDNA橋54を形成することができる。
【0107】
なお、マイクロチャネル71内を溶液が流れているので、互いに対応する第1電極先端部66aと第2電極先端部66bとの間にDNA橋54が形成されても、該DNA橋54は、溶液の流れによって前記第1及び第2電極先端部66a、66bから離脱して流されてしまうことがある。しかし、突起構造部73内では溶液が滞留するので、
図15に示されるように、突起構造部73と対応する箇所に位置する第1電極先端部66aと第2電極先端部66bとの間に形成されたDNA橋54は、流されることがない。
【0108】
また、マイクロチャネル71内を流れる溶液を、例えば、第1の溶液から第2の溶液に取り替えたり、リンスのための純水に取り替えたりすることにより、第1及び第2電極先端部66a、66bが浸される溶液又は流体を容易に交換することができる。
【0109】
このようなマイクロ流体デバイスを使用することにより、前記第1及び第2の実施の形態と同様の方法で、第1電極先端部66aと第2電極先端部66bとの間をDNAによって橋渡しさせることができる。
【0110】
本発明の発明者は、実際に前記マイクロ流体デバイスを使用して予備的実験を行うことによって、第1電極先端部66aと第2電極先端部66bとの間をDNAにより橋渡しさせることが可能であることを確認した。なお、前記予備的実験では、DNAの増幅を行わなかった。また、前記予備的実験で使用したマイクロ流体デバイスでは、電極ユニット61とマイクロチャネルユニット70との組み合わせが完璧でなく、
図21(a)に示されるように、一対の第1及び第2電極先端部66a、66bと、一対の突起構造部73とが完全には重なり合っていない。さらに、前記予備的実験では、便宜的に、YOYO−1と呼ばれる蛍光色素によって標識付けを行い、蛍光を観察することにより、
図21(b)における点線の楕(だ)円内に示されるように、第1電極先端部66aと第2電極先端部66bとの間を橋渡しするDNAの存在を確認した。
【0111】
このように、本実施の形態におけるDNAの検出方法では、一対の電極として一対の第1及び第2電極先端部66a、66bを備える電極ユニット61とマイクロチャネルユニット70とを組み合わせたマイクロ流体デバイスを使用する。そして、前記第1及び第2の実施の形態において説明した方法と同様の方法によって、一対の第1電極先端部66aと第2電極先端部66bとの間を伸張したDNAにより橋渡しさせ、該DNAの性質決定を行うことや、前記DNAの存在を確認することができる。
【0112】
これにより、DNAを容易に、かつ、確実に検出することができる。
【0113】
前記第1〜第3の実施の形態において説明したように、本発明は、DNAを容易に、かつ、確実に検出することができるDNAの検出方法に関するものである。したがって、本発明は、蛍光体等の標識物質を使用することのない突然変異及び病原体の検出、遺伝子型判定から、種々のDNA相互作用因子(例えば、架橋結合化学物質)及び照射のような物理的効果に対応した配列特異DNAの物理的性質決定までの広汎(はん)な分野に適用することができる。配列特異DNAの物理的性質決定は、トランスレーショナルリサーチ(例えば、癌(がん)治療薬の機能確認)及び環境試験に直接的に適用し得る。本発明は、単一のプラットホームにおいて、DNAの検出と物性分析とを可能にするものである。
【0114】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。