(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0004】
様々な図面における類似参照番号は、類似要素を表す。特に指定されない限り、本文献における全ての図面及び図は、一定の縮尺ではなく、本発明の異なる実施形態を例示する目的で選択される。特に、様々な部品の寸法は、指示のない限り、例示的な表現としてのみ記述され、様々な部品の寸法間の関係は、図面から推測されるべきではない。「上部」、「下部」、「上側」、「下側」、「下」、「上」、「上方」、「下方」、並びに「第1」及び「第2」などの用語が本開示に使用され得るが、特に断らない限り、これらの用語はあくまで相対的な意味においてのみ使用される点を理解すべきである。本明細書で使用するとき、「前方」及び「前側」などの用語は、(本明細書で開示される呼吸マスクが着用者の顔面上の適切な位置にフィットしたときに)概ね着用者の顔面から離れる方向を表し、「後方」及び「後側」などの用語は、概ね着用者の顔面に向かう方向を表す。「内方」及び「内側」などの用語は、呼吸マスクの周縁部から離れる方向であり、呼吸マスクによって画定された内部空気空間内の概ね中心位置(例えば、幾何学的中心)に向かう方向を表す。「外方」及び「外側」などの用語は、そのような幾何学的中心から離れ、例えば呼吸マスクの周縁部に向かう及び/又は周縁部を越える方向を表す。本明細書において、特性又は属性に対する修飾語として用いられる「概ね」なる用語は、特に定めのない限り、その特性又は属性が当業者により直ちに認識されるものであるが、絶対的な精度又は完全な一致を必要としないことを意味する(例えば、定量化可能な特性の場合、+/−20%の範囲内)。特に定めのない限り、「実質的に」なる用語は、高い程度の近似(例えば、定量化可能な特性の場合、+/−10%の範囲内)を意味するが、この場合もやはり絶対的な精度又は完全な一致を必要としない。同じ、等しい、均一な、一定の、厳密に等といった用語は、絶対的な精度又は完全な一致を必要とせずに、特定の状況に適用可能な通常の公差又は計測誤差の範囲内に含まれると理解されるべきである。
【0005】
用語
「形状適合性を有する」は、通常の使用条件からの力又は圧力に反応して、付形された、湾曲した、又は平坦な部分を形成するのに適合した十分な可撓性又は変形性を有する構造体を指す。
【0006】
「使い捨て」は、再使用される及び/又は使用済み呼吸マスクに取り付けられる新しいフィルタカートリッジ等を有する呼吸マスクではなく、適切な使用期間の後で廃棄される呼吸マスクを表す。
【0007】
「外部空気空間」とは、吐き出された空気が、マスク本体及び/又は呼気弁を通過し、それらを越えた後に入る、周囲大気中の空気空間を意味する。
【0008】
「フェースシール」とは、呼吸マスクのマスク本体の開放端部の周縁部から内方に延びるシート状構造体を意味し、着用者が呼吸マスクを着用したときに着用者の顔面の輪郭に適応するのに十分な形状適合性を有し、かつ、粒子が内部空気空間に侵入するのを最小限に抑える又は防止するのを助ける。
【0009】
「フィルタ式顔面装着呼吸マスク」は、そこを通過する空気を濾過するように設計されたマスク本体を有する呼吸マスクを表し、定義によれば、この目的を達成するためにマスク本体に取り付けられた、マスク本体上に成形された等の、個別に識別可能なフィルタカートリッジは存在しない。
【0010】
「ハーネス」とは、着用者の顔面上にマスク本体を支持及び保持するのを補助する構造体又は部品の組み合わせを意味する。
【0011】
「一体の」とは、問題となっている複数部分が1つの部品として同時に作製されたものであり、2つの別々の部品を後で合わせて接合したものではないことを意味する。
【0012】
「内部空気空間」とは、マスク本体と人の顔面との間の空間を意味する。
【0013】
「撥水性(liquid-water-repellent)」とは、層に関連して使用されるとき、層が、液状水分(例えば、汗)がその層を貫通する(例えば、ウィッキングする)のを十分に防ぐことを意味する。
【0014】
「マスク本体」とは、人の鼻及び口を覆ってフィットするよう設計され、かつ外部空気空間から分離された内部空気空間を画定するのを助ける、呼吸マスクの通気性構造体を意味する。
【0015】
「微小空隙」とは、ポリマー層(例えば、フィルム)の空洞を意味し、この空洞は、約0.01〜約20マイクロメートルの範囲の最短寸法を含む。
【0016】
「粒子」とは、呼吸マスクの内部空気空間から部分的又は完全に排除されることが望ましいあらゆる粒子状汚染物を意味し、固体、半固体、又は凝集体である粒子、及び液体(エアロゾル)液滴である粒子を広く包含する。
【0017】
「周縁部」とは、マスク本体の外縁部を意味し、人が呼吸マスクを着用したときに、この外縁部は、概して着用者の顔に近接して配置される。
【0018】
「造形された」とは、フィルタ式顔面装着呼吸マスク及びそのマスク本体に関連して使用されるとき、呼吸マスクのマスク本体が、顔にフィットする所望の構造に永続的に形成され、かつ使用の際にこの構造を概ね保持することを意味し、この造形された呼吸マスクは、定義によれば、使用していないときに平坦に折り畳まれるように設計された呼吸マスクと区別される。
【0019】
「小分子」添加剤とは、分子量が5000以下であり、層(例えば、ポリマーフィルム又は不織布ウェブ)のポリマー鎖に共有結合していない添加剤を意味する。
【0020】
「水蒸気通気性」とは、38℃の試験した場合に、撥水性であり、かつ24時間当たり400〜20000グラム/平方メートルの水蒸気透過率(MVTR)を有する層を意味する。
【0021】
図1は、呼吸マスク10のフェースシール60の一部を示すために部分的に切り欠いた、例示的な造形されたフィルタ式顔面装着呼吸マスク10を、正面側斜視図で示す。
図2は、例示的な呼吸マスク10を後面側斜視図で(即ち、呼吸マスク10の開放端部から)示す。呼吸マスク10は、造形されたマスク本体12とハーネス14とを含み、ハーネス14は、例えば弾性材料から製造され得る1つ以上のストラップ16を含み得る。マスク本体12は、着用者の顔面(例えば鼻梁を跨ぎ、頬を横断してその周囲から顎の下まで)と接触するように造形された周縁部33を有する。いくつかの実施形態では、
図1及び
図2の例示的な設計のように、周縁部33の概ね全て、又は実質的に全ては、仮想平面内にあってもよい。他の実施形態では、周縁部33の一部のみがかかる仮想平面内にあってもよい。マスク本体12は、着用者の鼻及び口の周囲に密閉内部空気空間30を形成して、この空間を外部空気空間31から分離すように造形され、そのため、例えば、外部空気空間31から内部空気空間30に入るあらゆる空気は、マスク本体12の濾過層を通過しなければならない。多くの実施形態において、マスク本体12は、マスク本体12の周縁部33から前方(即ち、着用者の顔面から離れる方向)に突出する球状部分35を含み得る。球状部分35の形状は、多くの場合、概ねカップ形状であるが、好適な形状を用いることができる。
【0022】
図2は、例示的な実施形態におけるフェースシール60の背面図を示す。フェースシール60は呼吸マスク10の開口部側(後側)に設けられ、着用者の顔面に対する快適なフィットを提供すると同時に、内部空気空間30に粒子が侵入するのを最小限に抑える、又は防止するのも助けることができる。よって、フェースシール60は、マスク本体12の周縁部33から内方に延びており、かつ、例えば気密シールを達成するために、着用者が呼吸マスク10を着用したときに着用者の顔面の輪郭に適応するのに十分な形状適合性を有するシート状材料である。多くの実施形態において、フェースシール60は、マスク本体12の周縁部33の概ね全て、又は実質的に全ての部分から内方に(例えばマスク本体の周縁部33によって画定された仮想平面と概ね整合した方向に)延出していてもよく、その結果、フェースシール60の内側縁部64は、着用者の顎、頬、口、及び鼻の少なくとも一部を受承及び収容するように構成された開口部を画定する(即ち、取り囲む)周縁部を提供するようになっている。呼吸マスク10が着用者に提供されたとき、フェースシール60は、多くの場合、マスク本体12の周縁部33により確立される上記の仮想平面と整合し得ることに留意すべきである。しかしながら、着用者が呼吸マスク10を身に着けると、フェースシール60の一部は、着用者の顔面に形状適合する際にわずかに前方に(即ち、マスク本体12の球状部分35に向かって)変形し、例えば、先に述べた気密シールを維持するために、着用者の顔面に対して軽度の圧迫を維持するようになっている。フェースシール60は、呼吸マスク10が、例えば着用者の顔面から一時的に外されたときにも、わずかに前方に変形した状態を留めることができる。(一部のそのようなわずかな前方への変形は、出荷及び保管のために複数の呼吸マスク10が一緒に積み重ねられた場合に生じ得ることも理解されたい。)しかしながら、上述したようにシート状であるフェースシール60は、シート状以外の形状の構造体、例えば、略管状の断面を有する構造体(例えば、米国特許第4,665,570号に記載されている種類)と区別されることが理解されるであろう。
【0023】
よって、
図3に更に詳細に示されるように、フェースシール60は(外側)周縁部62を含み得、この周縁部62はマスク本体12の周縁部33に連結(例えば、接合)され、フェースシール60は内方に延びて、フェースシールの内側縁部64で終端する。多くの実施形態において、内側縁部64は、
図2の例示的な実施形態に示されるように、顎収容部66、頬収容部68、及び鼻収容部69を含み得るが、これらの部分のいずれか又は全ての個別の形状及び構成は、所望通りに選択され得る。
【0024】
種々の実施形態において、フェースシール60は、マスク本体12の周縁部33から、少なくとも約5、10、15、20、又は25mmの距離で内方に延在し得る。更なる実施形態では、フェースシール60は、マスク本体12の周縁部33から、最大で約50、40、30、20、又は10mmの距離で内方に延在し得る。いくつかの実施形態では、かかる距離は、顎収容部66又は鼻収容部69におけるよりも、頬収容部68においてより大きくてもよい(例えば、1.5、2、又は3倍)。いくつかの実施形態では、フェースシール60は、マスク本体12によって支持されず、かつ、マスク本体の周縁部33に連結されている(例えば、取り付けられている)先に述べたフェースシール周縁部62以外、フェースシール60のいずれの位置又は部分においてもマスク本体12と接触しない。いくつかの実施形態では、フェースシール60は、(例えば、フェースシール60の前面と接触している支持部材又はストラットから構成される)いかなる種類の支持フレームによっても支持されない。
【0025】
フェースシール60は、所望の取り付け機構又は方法によりマスク本体12、例えばマスク本体12の周縁部33に取り付けられてもよい。かかる方法としては、例えば、超音波結合、熱接着、感圧接着剤などの接着剤の使用、ホットメルト接着剤、放射線硬化性接着剤、1つ以上のステープル、クリップなど機械的締結具の使用、及びこうした方法の任意の組み合わせを挙げることができる。マスク本体12に対するフェースシール60の取り付けは、例えばマスク本体12の周縁部33全体の周囲に実質的に連続的に行われてもよく、又は、周縁部33の選択した位置においてのみ行われてもよい。
図2の例示の実施形態では、フェースシール60の一部は、マスク本体12のハーネス取り付けタブ34に沿って外方に延びているが、必要に応じて、フェースシール60は、この部分がこのようにしてタブ34に沿って外方に延びないように終端されてもよい。
【0026】
前述の通り、フェースシール60は、共形のシート状材料(いくつかの実施形態では、本明細書において以下に詳述するように複数の層を含み得る)で好都合に作製され得る。種々の実施形態において、フェースシール60の(全)厚さは、約2、1、0.5、0.2、又は0.1mm未満であり得る。いくつかの実施形態では、フェースシール60はマスク本体12と一体でない。つまり、そのような実施形態では、フェースシール60は、例えばマスク本体の周縁部から内方にカールして又は巻かれてフェースシールを形成する、マスク本体12の拡張部により提供されない。この種の更なる実施形態では、フェースシール60は、マスク本体12で使用されるものとは異なる材料の層で構成されてもよい(例えば、フェースシール60は、マスク本体12の濾過層18と同じ組成及び特性の濾過層を含んでいなくてもよく、この濾過層18については本明細書において以下に詳述する)。この種の具体的な実施形態では、マスク本体12の濾過層18とは異なり、フェースシール60は(本明細書において定義されるように)空気に対して不透過性であってもよい。
【0027】
フェースシール60の弾性は、所望通りに選択することができる。種々の実施形態において、フェースシール60は、(上述のような形状適合性を保ちつつも)有意な弾性を示さなくてもよい(即ち、種々の実施形態において、フェースシール60の破断点伸びは、40、20、10、又は5%未満であってよい)。他の実施形態では、フェースシール60は、(例えば少なくとも40、80、又は120%の破断点伸びで示されるように)有意な弾性を含み得る。
【0028】
本明細書において開示されるフェースシールは、少なくとも1つの水蒸気通気性層を含む。こうした層は、第1の部分において、温度約38℃、「直立」形態(液状水分が試験対象層と直接接触している「倒立」試験形態とは異なる)で試験した場合に、つまり、例えば、米国特許第5,981,038号(Weimer)及び米国特許出願公開第2011/0112458号(Holm)(試験方法1A)に開示されているのと概ね同様の方法で試験した場合に、24時間当たり400〜20000グラム/1
平方メートルの水蒸気透過率(本明細書ではMVTRと略される)を示すとして定義される。種々の実施形態において、開示されるフェースシールの水蒸気通気性層は、上記方法で試験した場合、24時間当たり少なくとも約1000、2000、4000、5000、8000、10000、又は12000グラム/1
平方メートルの水蒸気透過率を示し得る。フェースシールがそのような水蒸気通気性層を含むことにより、少なくともほとんどの通常の状態において、呼吸マスクの着用者の皮膚から発散される汗は、(許容できない様式でフェースシールと皮膚との間に汗が集まるのではなく)皮膚を十分に乾燥した状態に保つのに十分な速度で水蒸気として皮膚から離れて搬送され得る。
【0029】
多くの基材(例えば、ポリマーフィルム材料、薄膜等)が、開示されるフェースシールの水蒸気通気性層として使用するのに好適であり得る。そのような材料は、大きく分けて2つのカテゴリーに分類することができる。第1のカテゴリーとしては、基材内部に多くの微小空隙(即ち、一般的な寸法範囲が0.01〜20マイクロメートルである微細な空洞であるが、他の寸法の空洞が存在していてもよい)を含むことにより、高いMVTRを達成する基材(例えば、フィルム)が挙げられる。第2のカテゴリーとしては、水分子が、所望のMVTRを達成するのに十分な速度で基材の少なくとも親水性部分を通して浸透(例えば、放散)することができるように、親水性部分を含むことにより、高いMVTRを達成する基材(例えば、非多孔質フィルム)が挙げられる。これら一般的なカテゴリーについては、本明細書において後に詳細に説明する(水蒸気通気性層によっては、これら一般的な種類の両方の特性を含み得るものがあることが認識される)。
【0030】
水蒸気通気性層は、第2の部分において撥水性であるとして更に定義される。つまり、そのような層は、大気圧において層に衝突する液状水分を、一方の主面から他方へと毛管現象(ウィッキング)により容認し難いほど貫通させない。かかる特性は当業者に十分に認識されるであろう(また、例えば、米国特許第5,981,038号(Weimer)及び同第6,858,290号(Mrozinski)に記載され、説明がなされている)。特定の実施形態では、撥水性層は、汗が毛管現象により層を通って流れるのを可能にしない場合がある。そのようなバリア特性は、例えば、例えば米国特許第5,981,038号(Weimer)に開示されている種類の耐汗汚染性試験によって特徴付けることができる。よって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される水蒸気通気性層は、耐汗汚染性試験において「合格」評価を得ることができる。
【0031】
本明細書に開示されるフェースシールは、着用者の皮膚とフェースシールとの間の隙間を通る浮遊粒子の許容できない漏れを防止するように、着用者の顔面に形状適合し得る。少なくともいくつかの実施形態では、本明細書に開示されるフェースシールはまた、例えば浮遊粒子に対するバリアとなる層を含むことによって、浮遊粒子がフェースシール自体を通過するのを最小限に抑える又は防止することができる。そのような浮遊粒子バリア層は、上記の水蒸気通気性層自体であってもよく、又はフェースシール内に存在する追加の層であってもよい。実現されれば、そのような実施形態において、フェースシールは、水蒸気の望ましい通過及び液状水分の阻止を可能にし得るだけでなく、フェースシールが使用されている呼吸マスクの所望の濾過性能を実現及び維持するのに十分な、浮遊粒子の通過に対するバリアも提供し得る。よって、浮遊粒子に対する十分なバリア特性をフェースシールが提供しているかどうかを評価するための1つの方法は、フェースシールを含む呼吸マスクを試験して、(着用者の顔面に適切にフィットしているときに)呼吸マスクが所望の性能評価を得られるかどうかを決定することである。種々の実施形態において、本明細書に開示される水蒸気通気性層を有するフェースシールを含むそのような呼吸マスクは、米国特許出願公開第2005/007937号(Wadsworth)(段落0022−0023)に記載されている手順と概ね同様の方法で試験したとき、及び2003年8月に施行されたNIOSHの規格基準42 CFR Part 84に従って評価したときに、NIOSHの分類システムに従ってN95、N99、又はN100規格を達成することができる。しかしながら、層を呼吸マスクのフェースシールに必ずしも組み込まずに、フェースシールで使用するための候補となる浮遊粒子バリア層に対して他のスクリーニング法を行ってもよい。
【0032】
前述の通り、いくつかの実施形態では、フェースシールの浮遊粒子バリア特性は、水蒸気通気性層自体によって与えられてもよい。一部の水蒸気通気性基材(例えば、一方の主面からもう一方へと基材を通って空気が流れるのをかなりの程度まで可能にする、相互連結した微小空隙を含まないもの、例えば非多孔質フィルム)に関しては、浮遊粒子に対して適切なバリア特性を提供するということを容易に決定できる場合があることが理解されるであろう。例えば、空気の流れをほとんど又は全く貫通させないが、十分に高いMVTRを示す基材は、それ以上試験することなく適していると判断することができる。しかしながら、他の水蒸気通気性基材は、スクリーニングすることにより、様々な寸法の浮遊粒子がどの程度基材を貫通できるか、又はできないかを決定することができる。つまり、基材の一方の主面から他方の主面まで延びる、連結した貫通通路を形成するように配置された微小空隙を有する基材であっても、その通路は十分小さく、十分蛇行しており、又はそれらのいくつかの組み合わせであり得、依然として浮遊粒子が基材を貫通するのを十分に制限することができる。そのような基材をスクリーニングすることができる簡単な方法の1つは、空気透過デンソメータ(air-permeability densometer)(例えばGurley Precision Instruments(Troy,NY)より入手可能なデンソメータなど)を使用して行うことができ、デンソメータでは、(例えば、米国特許第6,858,290号(Mrozinski)に記載されているように)所定の体積の空気が所定の力で所定の基材面積を通過するのに要する時間を測定する。基材が、適切なデンソメータ時間を有するのに十分なだけ低い多孔性及び/又は十分なだけ小さい孔サイズの組み合わせを有する場合、その基材は使用にふさわしい候補であり得る。種々の実施形態において、好適な水蒸気通気性基材は、100ccにおいて少なくとも約5秒、10秒、20秒、50秒、又は100秒のデンソメータ時間を示し得る。更なる実施形態では、好適な空気透過性の水蒸気通気性基材は、100ccにおいて最大で約1000秒、500秒、200秒、100秒、又は500秒のデンソメータ時間を示し得る。例えば、基材を通る相互連結した貫通通路を実質的に欠いた基材では、かかるデンソメータ時間は、例えば1000秒を超える場合があり、この1000秒を、本記述の目的のため、空気透過性である基材と、空気不透過性である基材との間の境界(cut-off)として定義することを理解されたい。(多くのそのような空気不透過性基材では、デンソメータ時間は無限大に近づく場合がある。)浮遊粒子の通過を防止するために水蒸気通気性層に依存するのではなく個々の浮遊粒子バリア層を使用する場合には、上で示したデンソメータ時間基準は、そのような個々の層の適合性を判断するためにも使用され得ることを理解されたい。
【0033】
潜在的に好適な浮遊粒子バリア層(例えば、フィルム)を特定することができる別の方法は、呼吸マスク等の濾過層の性能を特性評価するためにしばしば用いられる周知のパラメータである品質係数を決定することによるものである。かかる品質係数は、例えば米国特許第7,858,163号(Angadjivand)に説明されているように、例えば、0.075μmの塩化ナトリウムエアロゾル液滴を含む空気流に基材を暴露し、エアロゾル液滴のうちのどれくらいの割合が基材を貫通することができるかを決定することによって、決定され得る。種々の実施形態において、好適な浮遊粒子バリア基材(水蒸気通気性基材であってもそうでなくてもよい)は、面速度13.8cm/秒(又は、速度が試験を良好に実施するのにふさわしい限りにおいて、空気が基材を通過することができるあらゆる速度)で流れる0.075μmの塩化ナトリウムエアロゾルに暴露されたときに、少なくとも約0.4、0.6、0.8、又は1.0mm
−1 H
2Oの品質係数を示し得る。この点において、そうした品質係数試験は、貫通多孔性をほとんど又は全く有さない基材には適さない場合があることが認識されるが、しかしながら、当業者は、品質係数試験を必要とせずに、(例えば、先に述べた基準の1つ以上に基づいて)そのような基材の多くが適切な粒子阻止特性を有していることを判断することができるので、かかる試験は必ずしも必要ではない場合がある。
【0034】
よって、要約すると、フェースシールの水蒸気通気性層として機能するのに好適な基材(例えば、任意の組成、種類、又は構造のフィルム)は、少なくとも、水蒸気分子の基材通過を可能にする十分に高い能力と、基材を貫通する液状水分のウィッキングに対する十分に高い抵抗性との組み合わせを含むことになる。いくつかの実施形態では、こうした基材は、上述のように十分に高い浮遊粒子バリア特性を更に有し得る。いくつかの他の実施形態では、フェースシールは、個々の浮遊粒子バリア層を含んでもよい。更に他の実施形態では、フェースシールの設計では、(例えば、マスク本体の表面積と比べて、フェースシールのごくわずかな表面積が外部空気空間に暴露されている場合に)浮遊粒子がフェースシール自体を貫通するのを防止するフェースシールの能力は問題でない可能性があるので、そのような浮遊粒子バリア特性は必要とされない場合がある。
【0035】
先に述べたように、水蒸気通気性層として使用するのに好適であり得る基材の一般的なカテゴリーの1つとしては、多くの微小空隙を含むフィルム/薄膜が挙げられる。そのような微小空隙によりもたらされ得るのは、フィルムの固体「骨格」を形成するポリマー材料は、水分子の透過に対して比較的不透過性であり得るけれども、水分子は、主に微小空隙を通ってフィルムを貫通することができるということである。この関連で、隣接する微小空隙間の(及び/又はフィルムの主面の)任意の固体材料が十分に薄く、水分子の放散に対する許容できないバリアとならない限り、微小空隙は、互いに連結されて、一方の主面から他方の主面までフィルムを貫通する連続した通路を形成する必要は必ずしもあり得ないことに留意すべきである。本明細書において定義される微小空隙とは、最短寸法が0.01〜20マイクロメートルの範囲内である微細な空洞を意味するが、他の寸法の空洞が存在していてもよい(細長い形状を有する空洞では、かかる最短寸法は、空洞の細長い長さに沿った任意の位置で測定され得ることにも留意されたい)。
【0036】
先に述べたように、隣接する微小空隙間の任意の固体材料が十分に薄く、水分子の放散に対する許容できないバリアとならない限り、微小空隙は、互いに連結されて、フィルムを貫通する連続した通路を形成する必要は必ずしもあり得ない。よって、いくつかの実施形態では、かかるフィルムは、空気の流れに対して不透過性であってもよく、この不透過性は、本明細書では、フィルムが100ccにおいて1000秒を超えるデンソメータ時間を示すとして具体的に定義される。しかしながら、他の実施形態では、かかるフィルムは、上で説明したように、例えば1000秒未満(多くの場合、実質的に1000秒未満)のデンソメータ時間によって特徴付けられるように、少なくともいくらかの空気の流れを貫通させることができてもよい。
【0037】
多くの微小空隙含有フィルム基材が利用可能であり、ここでは、微多孔性フィルムの総称で呼ぶこととする。種々の実施形態において、微多孔性フィルムとしては、前駆体フィルム(例えば、米国特許第6,444,302号(Srinivas)及び同第3,953,566号(Gore)に記載されているもの)、特に、核形成剤、炭酸カルシウなどの無機充填剤等を含有する前駆体フィルム(例えば、米国特許第6072005号(Kobylivker)、同第6,106,956号(Heyn)、及び同第6,569,225号(Edmundson)に記載されているもの)を延伸することによって製造される微多孔性フィルムが挙げられる。そのような微多孔性フィルムとしては更に、溶媒転相法によって製造されたもの(例えば、米国特許第6,413,070号(Kelly)に記載されているような)、熱転相法によって製造されたもの(例えば、米国特許第4,539,256号(Shipman)及び同第4,726,989号(Mrozinski)に記載されているような)、前駆体フィルムから物質を抽出する(例えば、浸出する)ことによって製造されたもの(例えば、米国特許第4,210,709号(Doi)に記載されているような)などが挙げられる。いくつかの実施形態では、好適な微多孔性フィルムは、フラッシュ紡糸法(例えば、米国特許第7,338,916号(Rollin,Jr.)に記載されているような)によって製造されてもよい。こうした方法の組み合わせを用いてもよい(例えば、米国特許第5,176,953(Jacoby)に記載のように、例えば、前駆体フィルムは、延伸されても、前駆体フィルムから抽出される物質を有していてもよい)。更に他の実施形態では、膜の孔サイズ及び孔密度が、水分子を十分に通過させることができる能力と、液状水分を膜を通してウィッキングさせない能力との必要な組み合わせを提供すべく組み合わせされて設計されている限り、いわゆるトラック−エッチ(track-etch membrane)膜(フィルム)を使用してもよい。いくつかの実施形態では、好適な微多孔性フィルム(又は複数のフィルム)は、多層構造の一部として提供されてもよい(例えば、米国特許第6,929,853号(Forte)に記載されているように)。例えば、商品名CELGARDでCelgard(Charlotte,NC)より入手可能なフィルム、商品名EXXAIREでTredegar(Richmond,VA)より入手可能なフィルム、商品名APTRAでRKW(Rome,GA)より入手可能なフィルム、及び商品名NUCLEPOREでGE Healthcare/Whatman(Piscataway,NJ)より入手可能なフィルムで例示されるこれら様々な種類の微多孔性フィルムが、広く入手可能である。上の記述及び列挙は、潜在的に好適な材料の代表的で非限定的な例であることを強調する。
【0038】
いくつかの実施形態では、微小空隙は、フィルム断面全体にわたって(即ち、一方の主面から他方の主面まで)実質的に均一に分布していてもよい。他の実施形態では、例えば、微小空隙の寸法がフィルムの断面にわたってだんだん小さくなるある種の溶媒転相薄膜に代表されるように、微小空隙の寸法の傾斜は、フィルムの断面にわたって存在していてもよい(例えば、米国特許第5,006,247号(Dennison)を参照のこと)。いくつかの具体的な実施形態では、フィルムは、フィルムの第1の主側面に対して開いている空隙(孔)を有する第1の主面と、フィルムの第2の主側面に対して開いている空隙を含まないようにスキン層を構成する第2の主面とを含んでいてもよい(溶媒転相薄法によって作製することができる、表面がスキン化された膜で例示される)。
【0039】
上記の種類のいずれの微多孔性フィルムも、任意の好適な材料、例えば、合成ポリマー材料、天然由来のポリマー材料、又は任意の好適なポリマーの物理的ブレンド又はコポリマーから製造され得る。潜在的に好適な材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、セルロースポリマー及び誘導体、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ビニルポリマーなどを挙げることができる。いくつかの実施形態では、そのような微多孔性フィルムは、相対的に疎水性の材料(例えば、ポリプロピレン、フッ素含有ポリマー等といったポリマー材料)で作製されてもよく、及び/又は、材料の表面エネルギーを低下させて、液状水分が材料の孔を貫通できにくくするために、添加剤でコーティングされてもよく、表面処理されてもよく、以下同様である。
【0040】
先に述べたように、フェースシールの水蒸気通気性層として使用するのに好適であり得る、高MVTR基材の別の一般的なカテゴリーは、水分子がフィルムの少なくとも親水性部分を通って十分な速度で放散できるように、フィルムの親水性部分を処理することによって高MVTRを達成するフィルム基材である。よって、そのようなフィルムは、このようにして、水蒸気通気性層の上述の2つの部分の定義のうちの第1の部分(高MVTR)を得ることができる。多くのそのようなフィルムは(特に、フィルムが相互接続した微小空隙を欠いている場合、即ち、例えば、少なくとも部分的に多孔質でない場合には)、液状水分がフィルムを通ってウィッキングするのを十分に防止することが可能であり得、したがって本明細書において定義されるように撥水性であり得ることが理解されよう。多くのそのようなフィルムは(特に、フィルムが相互接続した微小空隙を欠いている場合、(例えば、少なくとも部分的に多孔質でない))、浮遊粒子がフィルムを通過するのを十分に防止することが可能であり得ることが更に理解されよう。よって、いくつかの実施形態では、そのようなフィルムは、本明細書において定義されるように空気不透過性であり得る。
【0041】
フィルムの親水性部分は、十分な量の親水基を含む任意の好適なポリマー材料をフィルムに含ませることによって(かかる親水基が、例えば主鎖セグメント、側鎖セグメント、グラフト側鎖等の形態であるかどうかにかかわらず)、及び/又は親水性添加剤を含ませることによって(粒子、ポリマー鎖、親水性可塑剤、ワックス、オイルなどの小分子添加剤等の形態であるかどうかにかかわらず)などによって提供され得る。多く場合、そのような親水基は、群又は集団を作ってフィルムの親水性部分を形成するといった方法で提供され得る。
【0042】
この一般的なカテゴリーの好適な材料の例としては、例えば米国特許第5,849,325号(Heinecke)及び同第4,595,001号(Potter)に記載されているような、親水性熱可塑性ウレタン及び親水性熱可塑性ポリエーテルアミドブロックコポリマーが挙げられる。他の好適な材料としては、例えば米国特許第6,001,464号(Schultze)に記載されているような、例えば親水性ポリエーテルエステルブロックコポリマーを挙げることができる。更に他の好適な材料としては、詳細には相対的に親水性の(メタ)アクリル部分(例えば、アクリル酸など)を含む、アクリル及び/又はメタクリルモノマー及びコポリマーを含むポリマーフィルムを挙げることができる。この一般的な種類のフィルムは、米国特許第8,029,892号(Lacroix)に記載されている(Lacroixは親水性ポリオール等の先に述べた使用についても論じていることに留意されたい)。例えば、商品名ESTANEでLubrizol(Wickliffe,OH)より入手可能なフィルム、商品名PEBAXでArkema(Colombex,France)より入手可能なフィルム、商品名ARNITEL VTでDSM(Evansville,IN)より入手可能なフィルム、及び商品名HYTRELでDuPont(Wilmington,DE)より入手可能なフィルムで例示されるこれら様々な種類のフィルムが、広く入手可能である。上の記述及び列挙は、潜在的に好適な材料の代表的で非限定的な例であることを強調する。
【0043】
任意のこうした材料及び/又は添加剤の混合物、コポリマー、及びブレンドを、所望通りに使用することができる。こうした親水基、添加剤等の組成及び/又は量は、例えば、容認し難い程度に水膨潤を起こしやすくなるくらい大量の水を吸収するほどフィルムを親水性にすることなく、所望のMVTRを提供するように、所望通りに調節することが可能である。例えば、ポリウレタンを使用する場合、親水性は、相対的に親水性である(一般に、得られるポリウレタンの、いわゆる軟質セグメントを形成する)ポリオールを使用することによって、即ち、例えばポリ(テトラメチレングリコール)と比べて、例えばポリ(エチレングリコール)を高い割合で使用することによって、増大し得る。MVTRを高めるのに十分な親水性セグメント等を含むポリウレタンは、例えば米国特許第7,086,400号(Shigematsu)に開示されているように、組成が不特定の(更には気体透過性である必要はないと言うことができる)ポリウレタンと区別されなければならないことに留意すべきである。いくつかの実施形態では、高MVTR基材の第1及び第2の一般的なカテゴリーの組み合わせを用いてもよい。例えば米国特許第4,613,544号(Burleigh)に記載されているように、例えば、微小空隙のいくつか又は全てが親水性材料で充填されている微小空隙を含む材料(例えば、微多孔膜)を使用することができる。
【0044】
種々の実施形態において、本明細書に開示される水蒸気通気性層は、約1.0、0.5、0.2、又は0.1mm未満の厚さを含んでもよい。種々の実施形態において、本明細書に開示される水蒸気通気性層は、連続気泡ポリマー発泡体でも、独立気泡ポリマー発泡体でもない。本明細書に記載される第1及び第2の一般的なカテゴリーの高MVTRフィルム、特に、例えば0.5mm未満の厚さのものは、例えば従来の連続気泡ポリマー発泡体基材と区別され得ることを理解されたい(連続気泡ポリマー発泡体基材は、特にこのように薄い厚さで提供される場合には、それらの連続気泡の性質により、必ずしも液状水分バリア特性及び/又は浮遊粒子バリア特性をもたらさない場合がある)。本明細書に記載される第1及び第2の一般的なカテゴリーの高MVTRフィルム、特に、このように薄い厚さのものは、例えば従来の独立気泡ポリマー発泡体基材と区別され得ることを更に理解されたい(独立気泡ポリマー発泡体基材は、それらの製造プロセス及び独立気泡の性質により、必ずしもこのように薄い厚さで入手可能でない場合がある及び/又は水蒸気に対する透過性を有さない場合がある)。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する水蒸気通気性層は、他の層が存在しない状態で単独で使用される場合に、フェースシールとして機能し得る(そのような役割を果たすのに十分な物理的強度、形状適合性等を有する限りにおいて)。他の実施形態では、水透湿性層は、多層フェースシールの層として提供され得る。そのような実施形態では、例えば、水蒸気通気性層の強度及び耐摩耗性を高めるため、装飾目的で、フェースシールの後方側に皮膚に良好に適合する層を提供するためなどの目的に応じて、任意の好適な追加の層又は層が設けられてもよい。すでに述べたように、いくつかの実施形態では、フェースシールは、浮遊粒子に対するバリアとして機能する追加の層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、追加の層は弾性クッション層として機能してもよく、この弾性クッション層は、例えば着用者の顔面に対するフェースシールの快適性を改善してもよい。例えば不織布材料、連続気泡発泡体などの任意の好適な弾性基材を、この目的のために使用することができる。
【0046】
かかる追加の層(1又は複数)は、水蒸気通気性層と概ね又は実質的に隣接するように設けられてもよく、即ち、かかる層(1又は複数)は、水蒸気通気性層よりも小さい又は大きなエリアを占めてもよい。例えば、かかる層は、フェースシールの内側周縁領域に沿って、又はフェースシールの外縁領域に沿って設けられてもよく、及び/又はフェースシールの様々なエリア内で不連続的に(例えば、島として)設けられてもよい。かかる追加の層(1又は複数)は、水蒸気通気性層の両側に設けられてもよい。しかしながら、追加の層(1又は複数)は、水蒸気を着用者の顔面から離れて搬送する水蒸気通気性層の能力を、容認し難いほど妨げてはならない。つまり、本明細書に開示されるフェースシールは、十分低い(例えば、24時間当たり400グラム/平方メートル未満の)MVTRを示し、かつ水蒸気通気性層の大きな面積を覆い(閉塞し)、それにより皮膚を乾燥状態に保つ水蒸気通気性層の能力を容認し難いほど低下させる、任意の追加の層(1又は複数)を含まない。よって、種々の実施形態において、水蒸気通気性層の面積の約40、20、10、又は5%未満が、低MVTR層(又は複数の低MVTR層を合わせた面積)で覆われてもよい。
【0047】
具体例として、極めて水蒸気不透過性(例えば、MVTRが24時間当たり約1グラム/平方メートル未満)であり、かつ水蒸気通気性層の実質的に全体を覆う無孔フィルムの形態の追加の層は、適していないことになる。それに対して、MVTRが適切に高い任意の層は、(特に、この層が水蒸気通気性層の一部しか覆わない場合には)好適であり得る。好適な追加の層は、例えば、不織布ウェブ、織布、編布、ネット(例えば、エキスパンドメッシュ又は原線維からなるポリマー基材)などのような繊維状基材の形態で提供されてもよい。多くのそのような繊維状基材は、非常に開放された構造を含み得るので、水蒸気通気性層によって得られるMVTRに著しい影響を与えないことが理解されるであろう。
【0048】
追加の層が織布ウェブを含む特定の実施形態では、そのようなウェブは任意の好適な織り柄パターン(例えば、繊維の寸法、繊維間の間隔等)を有していてもよく、任意の好適な天然又は合成ポリマー、例えば、ポリエステル、ポリアミド、セルロースポリマー及びその誘導体、アクリルポリマーなどから構成されてもよい。追加の層が不織布ウェブを含む特定の実施形態では、そのような不織布ウェブは、メルトブローンウェブ(例えば、ブロー成形されたマイクロファイバー(BMF)ウェブ)、スパンボンドウェブ、スパンレース(例えば、水流絡合)ウェブ、カードウェブ、エアレイドウェブ、湿式ウェブなどであってもよい。異なる種類の繊維の複数の層(例えば、2つのスパンボンド繊維層の間に挟着されたメルトブローン繊維の内部層を含む、いわゆるSMS積層体)などが存在してもよいので、複数種の繊維の混合物(例えば、メルトブローン繊維とステープル繊維)を使用してもよい。そのような不織布ウェブの繊維は、任意の好適な方法、例えば水流交絡、ニードルパンチ、熱接着、結合剤の使用などによってコヒーレントウェブを形成するように結合されるか、あるいは別様に配置され得る。
【0049】
一般に、こうした追加層の繊維又はストランドは、任意の好適な材料、例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、セルロース誘導体などから構成され得る。天然由来の繊維(例えば、再生セルロース、ポリ乳酸等のセルロース系)が、こうした層に存在してもよい。かかる追加の層(1又は複数)は、水蒸気通気性層80に好都合に取り付けられて多層積層体を形成することができ、次にこの多層積層体は、本明細書において先に述べたようにマスク本体12に取り付けられることができる。こうした追加の層の取り付けは、取り付けが水蒸気通気性層の上述の機能を容認し難いほど妨げない限り、任意の好適な方法又は機構によって達成され得る。例示的な取り付け方法としては、例えば、接着剤結合、熱接着、機械的取り付けなどを挙げることができる。こうした取り付けは、水蒸気通気性層及び追加の層の面積の一部、概ね全て、又は実質的に全てにわたって行われ得る。いくつかの実施形態では、こうした取り付けは、層の選択された位置における点接合を含み得、この点接合は、例えば熱点接合、選択された位置に接着剤を付着させる、選択された位置に機械的締結具を配置するなどによって達成される。接着剤(例えば、感圧性接着剤及び/又はホットメルト接着剤)を使用する場合、接着剤組成物(並びに接着剤が占める面積)は、水蒸気通気性層の上述の機能が十分に維持されるのを確保するように選択され得る。
【0050】
図4に例示的に示す具体的な実施形態では、フェースシール60は、上述した水蒸気通気性層80を含んでいてもよく、かつ水蒸気通気性層80の後方(例えば、最後部)側に追加の層82を含んでいてもよく、この層82は、先に述べたフェースシール60の顔面接触面65を提供し得る裏側主面83を含み得る。いくつかの実施形態では、追加の層82はウィッキング層であってよく、このウィッキング層は、適度な親水性を備える任意の好適な不織布ウェブ、織布、編布、又は一般的な任意の種類の繊維状基材を含む。適度な親水性のウィッキング層とは、層82が、液状水分(例えば、着用者の皮膚から層82まで移動する液状の汗)を層82の主要平面に沿ってウィッキングして、この液状水分が水蒸気通気性層80を通って水蒸気としてより迅速に除去され得るようにこれを広げることができるほど十分に親水性であることを意味する。適度な親水性とは、更に、層82が、所望のウィッキングを促進するのに十分な程度に親水性であるが、液状水分を容認し難いほど保持(例えば、吸収)するほど親水性ではないこと意味する。別の言い方をすれば、適度な親水性を有する繊維層は、水ウィッキング能をほとんど又は全く示さないほど、実質的に疎水性のポリマー(例えば、ポリエチレン等)で完全に構成されるべきではない。しかしながら、適度な親水性の繊維層は、液状水分を強力に吸収しかつ保持し過ぎるほど、実質的に親水性のポリマー(例えば、高吸収性ポリマー等)で完全に構成されるべきではない。別の言い方をすれば、好適なウィッキング層は、あらゆる液状水分をより広い面積にわたって広げ、水を高MVTR層に通過させて(水蒸気として)そこから移動させやすくしなければならないが、ウィッキング層は、水が高MVTR層内に移動(例えば、蒸発により)して皮膚から除去されるようにするのではなく、水を皮膚の近くに保持するほど吸水性であってはならない。よって、こうしたウィッキング層を、着用者の顔面と水蒸気通気性層との間で使用する場合には、疎水性−親水性特性のバランスをとるのが有利であることが分かっている。いくつかの実施形態では、フェースシールは、水蒸気通気性層及びウィッキング層(水蒸気通気性層の少なくとも一部の後方側に位置する)のみからなり、他の層が存在しなくてもよい。他の実施形態では、フェースシール内に他の層が存在してもよい。
【0051】
このようなウィッキング層を提供するための一般的方法はいくつかあり、そうした方法を非限定的な様式で本明細書に記載する。1つの方法では、繊維ウィッキング層(例えば、不織布ウェブ、織布又は編布など)は、「適度な」親水性を有する繊維から(例えば、概ね、実質的に、又は完全に)構成され得る。こうした繊維に適し得る材料としては、例えば、特定のナイロン、ポリエステル、アセチルセルロースなどが挙げられる。別の方法では、繊維ウィッキング層は、相対的に疎水性の繊維(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、天然ゴムなど)から構成され得るが、ウェブは、相対的に親水性の繊維の一部分(例えば、有意な量の親水性コモノマーを含むセルロース繊維、アクリル繊維など)を組み込む。つまり、疎水性繊維と親水性繊維との任意の好適なブレンドを使用して、最適な特性バランスに到達することができる。このような方法の変形例では、繊維ウィッキング層は相対的に疎水性の繊維から構成され得るが、任意の好適な組成の親水性粒子(例えば親水コロイド粒子、木材パルプ、でんぷん粒子など)を更に含んでいてもよい。反対に、繊維ウィッキング層は相対的に親水性の繊維から構成され得るが、任意の好適な組成の疎水性粒子を更に含んでいてもよい。
【0052】
更に別の方法では、繊維ウィッキング層は、相対的に疎水性の繊維から構成され得るが、より親水性になるように処理されてもよい(例えば、プラズマ処理、コロナ処理、界面活性剤又は任意の他の親水性コーティングでコーティングすること、親水性表面基又は親水性表面基にグラフトされた側鎖を有することなどによる)。更に別の方法では、繊維ウィッキング層は、相対的に親水性の繊維から構成され得るが、より疎水性になるように処理されてもよい(例えば、相対的に疎水性のコーティングでコーティングすること、疎水性表面基又は疎水性表面基にグラフトされた側鎖を有することなどによる)。更に別の方法では、繊維ウィッキング層は、親水性及び疎水性の成分及び領域のバランスのよい多成分繊維から構成され得る。また、ウィッキング層は、例えば組成及び特性の異なる複数の副層から構成され得る。
【0053】
種々の方法の間に確固たる境界線が必ずしも存在しない、多くのこうした方法が存在することを強調しなければならない。広くは、疎水性繊維と親水性繊維との任意の組み合わせ、疎水性粒子状添加剤と親水性粒子状添加剤との任意の組み合わせ、疎水性添加剤と親水性添加剤との任意の組み合わせ、表面エネルギー増加及び表面エネルギー低下処理用のコーティング、結合剤等、及びその他をあらゆる組み合わせで使用して、最適な特性バランスを有する好適なウィッキング層を得ることができる。いくつかの例示の実施例では、適切に表面処理(例えば、プラズマ処理又はコロナ処理による)されているポリプロピレン及び/又はポリエチレン繊維を含む繊維層、相対的に親水性の低い繊維と相対的に親水性の高い繊維との適切なブレンドを含む繊維層、(例えば、DuPont(Wilmington,DE)から商品名SONTARAで入手可能なある種の不織布ウェブで例示される、ポリエステル繊維と再生セルロース繊維とのブレンド)、好適に適度な親水性を本来有する繊維(例えば、ある種のポリエステル繊維、ナイロン繊維又はアセチルセルロース繊維)から実質的に構成される繊維層、親水性モノマー単位を適切な割合で有するアクリル繊維を含む繊維層、及び適切な疎水性表面コーティング又は処理が施されたセルロース繊維を含む繊維層は、フェースシールのウィッキング層として使用するのに好適であり得る。
【0054】
こうしたウィッキング層(例えば、基材)中に高親水性の成分が存在しないようにする必要は必ずしもなく、むしろ、存在する場合、層のウィッキング能を高めることができるが、容認し難いほど高い液状水分の吸収及び保持能力を層が示さないように、(例えば層の全重量に対して)十分に少ない量で存在すべきであることを強調する。少なくともいくつかの実施形態では、任意のこうした親水性成分を含む材料は、液状水分がウィッキングできるように、液状水分が材料の表面を濡らすことができるようにするために比較的高い表面エネルギーを有するが、液状水分を材料の内部まで吸収する能力が大きすぎないのが有利であり得ることが理解されるであろう。よって、種々の実施形態において、ウィッキング基材中に存在する(例えば、基材の全重量の5重量%超で)任意のそうした親水性繊維又は粒子は、一般にASTM試験方法D2404に従って試験したとき、約20%、10%、又は5%未満の保水値を含み得る(一般的に言えば、この試験は、基材の全体としての保水能力の試験ではなく、個々の繊維に適用可能であることに留意されたい)。
【0055】
いくつかの実施形態では、潜在的に好適なウィッキング層(例えば、繊維状基材)の全体としての親水性は、基材の水分率値によって特徴付けることができる(即ち、ASTM規格D1909−04、Standard Table of Commercial Moisture Regains、及びASTM試験方法D2654(Test Methods for Moisture in Textiles)に準拠した、予め乾燥させた基材が水に暴露されたときに取り戻す水の量)。種々の実施形態において、こうした基材は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、又は8%の水分率値を含み得る。更なる実施形態では、こうした基材は、最大で約15、12、又は8%の水分率値を含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、基材が液状水分を保持する全体的な傾向は、一般に、ASTM試験方法D−1117に概説されている手順に従って得られる液状水分吸収値によって特徴付けることができる(米国特許第4,957,795号(Riedel)に記載されている)。種々の実施形態において、繊維ウィッキング層に好適であり得る基材は、少なくとも約2、4、8、又は16%の液状水分吸収値を含み得る。更なる実施形態では、こうした基材は、最大で約50、25、10、又は5重量%の液状水分吸収値を含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、基材のウィッキング能は、一般に、INDA試験手順10.3−70に概説されている手順に従って実施されるウィッキング速度試験によって特徴付けることができる(米国特許第4,957,795号(Riedel)に記載されている)。種々の実施形態において、繊維ウィッキング層に好適であり得る基材は、少なくとも約0.2、0.5、1.0、又は2.0cmのウィッキング速度(試験の場合)を含み得る。更なる実施形態では、こうした基材は、最大で約10、5、又は2cmのウィッキング速度を含み得る。
【0058】
マスク本体12は、
図3の例示的な実施形態に示すように、少なくとも1つの濾過層18を含む。こうした濾過層は、外部空気空間中に潜在的に存在している粒子を除去するのに適した濾材層を1つ以上含み得る。つまり、類似の濾材又は異なる濾材の複数の層を使用して、濾過層18を構築してもよい。有利にも、濾過層18は、マスク着用者の呼吸労力を最小限に抑えるために圧力低下が一般に小さく、例えば、13.8センチメートル/秒の面速度において、約20〜30mm H
2O未満である。濾過層18は、微細無機繊維(繊維ガラスなど)又は合成ポリマー繊維の1つ以上のウェブから構成されてもよい。合成ポリマー繊維ウェブとしては、メルトブローン法等のプロセスによって製造されるエレクトレット帯電ポリマーマイクロファイバーを挙げることができる。非極性捕集電荷を生成するために表面フッ素化を行いかつ/又はエレクトレット帯電したポリプロピレンから形成されたポリオレフィンマイクロファイバーは、微粒子捕捉用途に特に有用であり得る。濾過層18の層(例えばその副層)、又は個々の濾過層18は、不必要な又は悪臭ガス又は水蒸気分子を呼吸空気から除去するための吸着剤機能を提供してもよい。任意の好適な吸着剤(この用語は吸収剤と吸着剤の両方を広く包含する)を使用することができ、接着剤、結合剤、又は繊維性構造体によって濾過層内に保持される、例えば粉末又は顆粒として提供され得る。特定用途において有用であり得る吸着剤の例としては、活性炭(化学処理済み、若しくは未処理)、多孔質アルミナ−シリカ触媒基材、及びアルミナ粒子等の吸着材料が挙げられる。
【0059】
本質的に任意の好適な材料を層18の濾過材として使用することができる。Wente,Van A.,Superfine Termoplastic Fibers,48 Indus.Engn.Chem.,1342 et seq.(1956)において教示されているもの等のメルトブローン繊維のウェブは、特に持続性帯電(エレクトレット)形である場合、特に有用である。そのようなメルトブローン繊維は、例えば、有効繊維直径が約20マイクロメートル(μm)未満、典型的には約1〜12μmのマイクロファイバー(一般に「ブローンマイクロファイバー)」(BMFと呼ばれる)であってもよい。特に好ましいのは、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)及びこれらの組み合わせから形成される繊維を含有するBMFウェブであり得る。ロジンウール繊維ウェブ、及びガラス繊維又は溶液吹込み若しくは静電噴射した繊維のウェブ(特にマイクロファイバーの形態のもの)に加えて、帯電解繊繊維(Electrically charged fibrillated-film fibers)も好適であり得る。ナノ繊維含有ウェブも濾過層として使用することができる。
【0060】
電荷は、例えば、米国特許第7,765,698号(Sebastian)、同第6,824,718号(Eitzman)、及び同第6,783,574号(Angadjivand)に開示されているように、繊維を水と接触させることにより、濾過層18の少なくとも一部の繊維に付与することができる。電荷はまた、米国特許第4,588,537号(Klasse)に開示されているようなコロナ帯電により、又は、同第4,798,850号(Brown)に開示されているような摩擦帯電により、繊維に付与されてもよい。こうした方法の組み合わせを用いてもよい。必要に応じて、繊維材料が電荷を得る及び維持する能力を高めるために、繊維は添加剤を含むことができる。必要に応じて、オイルミスト環境における濾過性能を改善するため、繊維層の繊維表面にフッ素原子を配置してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、マスク本体12は、追加の層、例えば外側又は内側カバー層、造形層、前置濾過層、装飾層などのうちの1つ以上を更に含んでもよい。こうした層のいずれか又は全ては、例えばマスク本体12の周縁部33の選択された位置又はその実質的に全てに沿って、マスク本体12の球状部分35の選択された位置において、あるいは球状部分35の全ての領域の概ね全体にわたって、濾過層に接合(例えば、超音波接合、接着剤接合、熱接着など)され得る(こうした接合が、空気がマスク本体12を通過する能力を容認し難いほど妨げない限りにおいて)。こうした接合位置の任意の組み合わせを用いることができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、濾過層18の前方に位置付けられる追加の層は、外部空気空間中に存在する可能性のある大きな物体(例えば、毛髪、大きい塵埃粒子等)を除去するための前置フィルタとして機能することができ、及び/又は濾過層18を摩耗及び/又は外部空気空間中に存在する可能性のある過度な汚染物質、不純物、及び埃への暴露から保護する役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、追加の層(例えば、外側カバー層)は、マスク本体12の最も前方の層として設けられてもよい。こうした層は、例えば装飾層としての役割を果たしてもよく、及び/又は上記の前置濾過又は保護機能の一方又は両方の役割を果たしてもよい。いくつかの実施形態では、追加の層(例えば、内側カバー層)は、濾過層18の後方に(内部空気空間30に向けて)設けられてもよい。こうした層は、濾過層の後方側を保護することができ、着用者の皮膚と接触したときに快適な表面を提供することができる、といった具合である。いくつかの実施形態では、マスク本体は、例えばカップ形状の構成を形成及び維持するのを支援ために、造形層(1又は複数)含んでもよく、この造形層は、所要に応じて、濾過層のどちら側に設けられてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、マスク本体12は撥水性層を含んでもよい(あるいは、濾過層18は撥水性となるように設計されてもよい)。こうした特性は、例えば任意の組成又は種類(例えば、血液、汗など)の液状水分がマスク本体12の表面にはねかかるか、あるいは別様に衝突したときに、この液状水分がマスク本体12を通って流れる(例えば毛管現象により)可能性を最小限に抑えることができる。しかしながら、フィルタ式顔面装着呼吸マスクのマスク本体(例えば、米国特許第5,673,690号(Tayebi)に記載されているようなもの)は、一般に、撥水性であると明確に記載されていない限り、又はマスク本体の組成が本明細書において定義される撥水性であることに結びつくことが当業者に明らかになるような文言で、その組成に関する記述がない限り、撥水性であると推定することはできないことに留意すべきである。
【0064】
いくつかの実施形態では、
図2の例示的な実施形態に示されるように、(例えばアルミニウム又は任意の好適な展性金属で製造された)鼻クリップ19が、マスク本体12の内面又は外面の、これら面の上縁部に隣接した中心部に固定され得、それによりマスクは、この領域において変形又は造形されて、特定の着用者の鼻を覆って適切にフィットすることができるようになる。いくつかの実施形態では、鼻に対するマスクのフィット及び/又はマスクが鼻の上に載っているときの快適性を改善するために、発泡体のストリップ(図示せず)がマスク本体12の内面に固定されてもよい。吐き出された空気を内部空気空間30から逃すのを容易にするために、1つ以上の呼気弁(例えば、
図1及び
図2に示すような例示的な弁15)がマスク本体12に取り付けられてもよい。呼気弁は、吐き出された暖かくて湿った空気を内部空気空間30から素早く追い出すのを可能にし、着用者の快適性を改善することができる。本質的に、好適な圧力低下をもたらし、かつマスク本体に適切に固定することができる任意の呼気弁を使用することができ、任意の好適な技術を用いてマスク本体に取り付けることができる。他の実施形態では、こうした呼気弁は存在しなくてもよい。いくつかの実施形態では、例えばマスク本体を概ねカップ形状の構成に維持するのを支援するために、支持構造体が設けられてもよい。こうした支持構造体は、例えば米国特許出願公開第2012/0125341号(Gebrewold)に記載されているように、例えば1つ以上の支持部材、骨組部材などを含んでもよい。他の実施形態では、このような支持構造体は存在しない。
【0065】
例えば弾性材料で作製された任意の好適なストラップ(1又は複数)を使用して、ハーネス14を提供してもよい。こうしたストラップ(例えば、本明細書に描かれているようなストラップ16)は、接着手段、接合手段、又は機械的手段などの任意の好適な手段によって、マスク本体12に固定され得る。ストラップ16は、例えば、マスク本体12に超音波接合されてもよく、又はステープルなどの他の手段によって機械的に取り付けられてもよい。調節可能なバックルは、ストラップ16の長さを調節できるように、ハーネス14上に提供されてもよい。人の顔から呼吸マスク10を取り外すときにハーネス14を分解することができるように、そして人の顔に呼吸マスク10を着用するとき再組立てすることができるように、ストラップ16に、締結する又はバックルで固定する機構も取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、単一ストラップ(米国特許第7,131,442号(Kronzer)の図に示されている各ストラップ14の一般的な方法で、マスク本体の第1の側方縁部に連結された第1の端部と、マスク本体の第2の側方縁部に連結された第2の端部とを有する)を使用してもよい。他の実施形態では、2つのストラップ(例えば、同様にKronzerに示されているような上側ストラップ及び下側ストラップ)、又はそれ以上のストラップを使用してもよい。こうした複数ストラップのいくつかの実施形態では、第1のストラップは、マスク本体の第1の側方縁部に連結された第1の端部と、マスク本体の第2の側方縁部に連結された第2の端部とを有してもよく、第2のストラップも同様に、マスク本体の第1の側方縁部に連結された第1の端部と、マスク本体の第2の側方縁部に連結された第2の端部とを有してもよい(ここでもKronzerに示されているように)。複数ストラップの他の実施形態では、本明細書において
図1及び
図2の例示的な実施形態に描かれているストラップ16のように、第1のストラップは、共にマスク本体の第1の側方縁部に連結された第1及び第2の端部を有してもよく、第2のストラップは、共にマスク本体の第2の側方縁部に連結された第1及び第2の端部を有してもよい。そのような実施形態では、連結具(例えば、
図1及び
図2に示すようなフック17)を提供するのが好都合であり得、この連結具は、2本のストラップの一部を着用者の頭の後で互いに連結するために使用して、呼吸マスクを着用者の顔面に対して確実に保持するのを強化するようにすることができる。このような構成は、本明細書で開示されるフェースシールと併用した場合に、着用者の顔面に対するぴったりとしたフィットを確立して維持するフェースシールの能力を強化するのに特に役立つことが分かっている。具体的な実施形態では、こうした連結具(例えば、フック17)は、第1のストラップに永続的に連結されてもよく(つまり、呼吸マスク10の通常使用では、呼吸マスク10から取り外せないように設計されている)、
図1及び
図2のフック17で例示されるように、第2のストラップに取り外し可能に連結可能である。ハーネス14の特定の設計に関わらず、連結具は、着用者が呼吸マスク10を一旦身に着け、その後取り外すのを可能にし、又は身に着け、取り外し、再度身に着けるのを可能にし、以下同様であり、こうした呼吸マスクの通常使用にふさわしい。(前述の通り、少なくともいくつかの実施形態では、呼吸マスク10は使い捨てであってもよい、つまり、使用期間が1つの連続した出来事において生じるか、本質的に断続的であるかにかかわらず、通常使用において適切な使用期間の後で廃棄される。)
【0066】
本明細書に開示されるフェースシール60を含む呼吸マスク10は、任意の好適なプロセスを用いて製造され得る。かかる層(例えば、繊維ウェブ)の全てが平坦な状態で追加の層を濾過層18に取り付けた後、全ての層を、例えばカップ形状の構成に多層積層体として変形させるのが好都合であり得る。フェースシール60はプロセスの任意の好適な工程で取り付けることができるが、マスク本体12を所望の形状に形成した後、任意の好適な方法でフェースシール60をマスク本体12に取り付けるのが最も好都合であり得る。同様に、他の部品(例えば、ハーネス14、鼻クリップ19、呼気弁15等)は、任意の都合のよいときに、任意の従来法を用いてマスク本体12に取り付けることができる。
図1及び
図2の例示的な実施形態では、ストラップ16は、マスク本体12の周縁部33を越えて外方に延びるタブ34に連結されて示されているが、一般に、このようなストラップは、マスク本体12の任意の部分又は部品に取り付けられてもよい(マスク本体12の周縁部33又は他の部分に直接取り付けることを含む)ことにも留意すべきである。更に、こうした外方に延びるタブ(及び、一般に任意のこのような外方に延びるタブ突起部)は、マスク本体12の周縁部33を定義する目的で無視されてもよい。
【0067】
例示的実施形態の一覧
実施形態1.少なくとも1つの濾過層を含み、かつ周縁部を有する後方開放端部を含む造形されたマスク本体と、フェースシールであり、前記マスク本体の前記周縁部に連結され、かつ前記マスク本体の前記周縁部から内方に延びて、前記フェースシールの内側縁部において終端するフェースシールと、を含み、前記フェースシールが、撥水性でもある少なくとも1つの水蒸気通気性層を含む、造形されたフィルタ式顔面装着呼吸マスク。
【0068】
実施形態2.前記水蒸気通気性層が、38℃の温度で試験した場合に、24時間当たり1000〜20000グラム/平方メートルの水蒸気透過率を示す、実施形態1に記載の呼吸マスク。
【0069】
実施形態3.前記水蒸気通気性層が、38℃の温度で試験した場合に、24時間当たり2000〜20000グラム/平方メートルの水蒸気透過率を示す、実施形態1に記載の呼吸マスク。
【0070】
実施形態4.前記水蒸気通気性層が、38℃の温度で試験した場合に、24時間当たり4000〜20000グラム/平方メートルの水蒸気透過率を示す、実施形態1に記載の呼吸マスク。
【0071】
実施形態5.前記水蒸気通気性層が、38℃の温度で試験した場合に、24時間当たり8000〜20000グラム/平方メートルの水蒸気透過率を示す、実施形態1に記載の呼吸マスク。
【0072】
実施形態6.前記水蒸気通気性層が、空気透過性基材を含む、実施形態1に記載の呼吸マスク。
【0073】
実施形態7.前記空気透過性の水蒸気通気性基材が、100ccにおいて約10秒〜約100秒のデンソメータ時間を含む、実施形態6に記載の呼吸マスク。
【0074】
実施形態8.前記水蒸気通気性層が、空気不透過性フィルムを含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の呼吸マスク。
【0075】
実施形態9.前記水蒸気通気性層が、浮遊粒子バリア層としても機能する、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の呼吸マスク。
【0076】
実施形態10.前記水蒸気通気性層が、微小空隙を含む多孔質ポリマー基材を含む、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の呼吸マスク。
【0077】
実施形態11.前記多孔質ポリマー基材が、前駆体フィルムの主要平面に沿って前記前駆体フィルムを延伸することによって形成される微多孔性フィルム、前駆体フィルムからの物質の抽出によって形成される微多孔性フィルム、溶媒転相法によって形成される微多孔性フィルム、熱転相法によって形成される微多孔性フィルム、及び、トラック−エッチ膜からなる群から選択される、実施形態10に記載の呼吸マスク。
【0078】
実施形態12.前記水蒸気通気性層が、親水性部分を含むポリマーフィルムを含む、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の呼吸マスク。
【0079】
実施形態13.ポリマーフィルムは、前記親水性部分が、主鎖セグメント、側鎖セグメント、若しくはグラフト側鎖、又はこれらの任意の組み合わせの親水基によって提供される非多孔質フィルムである、実施形態12に記載の呼吸マスク。
【0080】
実施形態14.前記ポリマーフィルムが、親水性熱可塑性ポリウレタン、親水性熱可塑性ポリエーテルアミドブロックコポリマー、親水性ポリエーテルエステルブロックコポリマー、少なくともいくつかの親水性アクリル及び/又はメタクリルモノマー単位を含む親水性材料、並びにこれらの任意の混合物、コポリマー、及びブレンドからなる群から選択される材料を含む、実施形態13に記載の呼吸マスク。
【0081】
実施形態15.前記ポリマーフィルムの前記親水性部分が、少なくとも一部において、親水性粒子状添加剤及び親水性小分子添加剤からなる群から選択される1つ以上の親水性添加剤によって提供される、実施形態12に記載の呼吸マスク。
【0082】
実施形態16.前記水蒸気通気性層が、多層フェースシールの層である、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の呼吸マスク。
【0083】
実施形態17.前記多層フェースシールの少なくとも1つの追加の層が、不織布ウェブ、織布若しくは編布、及びポリマーネットからなる群から選択される、実施形態16に記載の呼吸マスク。
【0084】
実施形態18.前記多層フェースシールの少なくとも1つの追加の層が、浮遊粒子バリア層である、実施形態16に記載の呼吸マスク。
【0085】
実施形態19.前記多層フェースシールの少なくとも1つの追加の層が、前記水蒸気通気性層の後方に位置するウィッキング層であり、このウィッキング層は、前記多層フェースシールの顔面接触面の役割を果たす後方主面を含む、実施形態16に記載の呼吸マスク。
【0086】
実施形態20.前記ウィッキング層が、織布を含む、実施形態19に記載の呼吸マスク。
【0087】
実施形態21.前記多層フェースシールの少なくとも別の追加の層が、前記ウィッキング層の前方に位置する弾性クッション層である、実施形態19に記載の呼吸マスク。
【0088】
実施形態22.前記呼吸マスクが、共に前記マスク本体の第1の側方縁部に連結された第1及び第2の端部を有する第1のストラップと、共に前記マスク本体の第2の側方縁部に連結された第1及び第2の端部を有する第2のストラップと、を含み、前記呼吸マスクが、前記第1のストラップの一部と前記第2のストラップの一部とを着用者の頭の後で連結するように構成された、少なくとも1つの連結具を更に含む、実施形態1〜21のいずれか一つに記載の呼吸マスク。
【0089】
実施形態23.前記連結具が、前記第1のストラップに永続的に連結され、前記第2のストラップに取り外し可能に連結可能である、実施形態22に記載の呼吸マスク。
【0090】
実施形態24.前記フェースシールが、前記マスク本体と一体でない、実施形態1〜23のいずれか1つに記載の呼吸マスク。
【0091】
実施形態25.前記フェースシールのどの部分も、前記マスク本体の前記周縁部に連結された前記フェースシールの側方周縁部以外、前記マスク本体のいずれの部分とも連結されない、実施形態1〜24のいずれか1つに記載の呼吸マスク。
【0092】
実施形態26.前記濾過層が、エレクトレット繊維を含む、実施形態1〜25のいずれか1つに記載の呼吸マスク。
【0093】
本明細書で開示された具体的な代表的構造、特徴、詳細、形態などは、改変することができ、及び/又は数多くの実施形態で組み合わせることができることが、当業者には明らかであろう。このような変形例及び組み合わせは全て、発明者によって、例示的な説明としての役割を果たすべく選択された代表的な設計としてだけではなく、想到される発明の境界内にあるものと考えられるものである。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載される特定の例示的構造に限定されるべきではないが、むしろ少なくとも請求項の言語によって説明される構造、及びそれらの構造に相当する構造にまで拡大する。記載される本明細書と、参照により本明細書に援用されるいずれかの文書の開示内容との間に矛盾又は食い違いが存在する場合、記載される本明細書が優先するものである。