特許第6385369号(P6385369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラピスカン システムズ、インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385369
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】運搬可能な安全性検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/10 20180101AFI20180827BHJP
   G01N 23/203 20060101ALI20180827BHJP
   G01N 23/04 20180101ALN20180827BHJP
【FI】
   G01N23/10
   G01N23/203
   !G01N23/04
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-556177(P2015-556177)
(86)(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公表番号】特表2016-509223(P2016-509223A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】US2014014198
(87)【国際公開番号】WO2014121097
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2017年1月23日
(31)【優先権主張番号】61/759,211
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509347538
【氏名又は名称】ラピスカン システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子
(74)【代理人】
【識別番号】100192337
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100195992
【弁理士】
【氏名又は名称】城臺 顕
(72)【発明者】
【氏名】モートン、エドワード、ジェイムス
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−069943(JP,A)
【文献】 特表2013−500470(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0099710(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0064192(US,A1)
【文献】 特開平10−185842(JP,A)
【文献】 特表2000−514183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を検査するための検査システムであって、該検査システムは、車両のトレーラ部に載置されて輸送されるように構成されており、
4つの壁部と、4つの角部と、天井と、基台とで閉ざされた容積を画成するコンテナであって、その収容位置では、車両のトレーラ部に静止して載置されているコンテナと、
該閉ざされた容積内に位置し、放射線の放出により視野を画定する少なくとも一つの放射線ソースと、
該閉ざされた容積内に位置するか又は該コンテナに物理的に付設された少なくとも一つの検出器列と、
それぞれが該4つの角部のそれぞれに位置する4つのピストンであって、それぞれが水平方向に移動することで格納状態から伸張状態になるように構成される4つのピストンと、
それぞれが該コンテナの4つの角部に位置する該4つのピストンのそれぞれに付設された4つの脚部であって、付設された該4つのピストンの移動に基づいてそれぞれが該4つの角部のそれぞれから水平方向外方に伸張可能かつ該4つの角部のそれぞれに格納可能に構成される4つの脚部と、を有し、該4つの脚部のそれぞれ、水平方向外方に伸張されたときに、地面に接触して該コンテナを該トレーラ部から上昇させるように鉛直方向下方に伸張可能であって、地上から少なくともあるひとつの高さ位置に鉛直方向に調整可能であり、該少なくともある一つの高さ位置は、複数のデータを用いて決定されることを特徴とする検査システム。
【請求項2】
該複数のデータは、検査対象の大きさ、所望の検査領域、検出器列の配列、所望の視野、X線ソースの種類、X線ソースの配列、拘束構造、および、人の存在のうちの少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項3】
該コンテナは、それぞれの角部に該脚部を収容するための鉛直方向凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項4】
4つの脚部は、それらの収容位置では、該鉛直方向凹部内に静止して位置し、該コンテナの鉛直方向に延びる該壁部に対して少なくとも一部が埋め込まれていることを特徴とする請求項3記載の検査システム。
【請求項5】
該検査システムが設置位置にある状態では該4つの脚部のそれぞれは地上に接触し、該コンテナは車両のトレーラ部に載置されていないことを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項6】
該少なくとも一つの放射線ソースと該少なくとも一つの検出器列は、検査対象のスキャン情報を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項7】
4つの脚部は伸縮式であり、設置された時点で該4つの脚部は後退して該コンテナが地面に接触し、該コンテナの該4つの壁部のうちの2つの壁部が水平方向に倒れ込むことを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項8】
調査地点で、該コンテナの該4つの壁部のうちの2つの壁部が水平方向に倒れ込んだ時点で、該天井が鉛直方向に上昇しており、ドライブスルー方式のポータルが提供されることを特徴とする請求項記載の検査システム。
【請求項9】
該少なくとも一つの放射線ソースと該少なくとも一つの検出器列は、検査対象の多視点スキャン像を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項10】
4つの壁部と天井と基台とで閉ざされた容積を画成すると共に輸送車両のトレーラ部に載置されるコンテナと、該閉ざされた容積内に位置し放射線の放出により視野を画定する少なくとも一つの放射線ソースと、該閉ざされた容積内に位置するか又は該コンテナに物理的に付設された少なくとも一つの検出器列と、それぞれが該コンテナの4つの角部のそれぞれにピストンを介して付設された複数の脚部と、を有する検査システムの設置方法であって、
該複数の脚部のうちの少なくとも1本の脚部を該ピストンの少なくとも一つを用いて該コンテナから水平方向外方に伸張し、
複数の脚部のそれぞれを鉛直方向下方に伸張して該複数の脚部のそれぞれを調査地点の地面に接触させ、
該複数の脚部のそれぞれを鉛直方向下方に伸張し続けて該コンテナを該トレーラ部から上昇させ、該コンテナを該複数の脚部で該調査地点に完全に支持し、
該トレーラ部を該調査地点から走りださせることを特徴とする検査システムの設置方法。
【請求項11】
複数のスキャン高さに対応させるために、該複数の脚部の高さは調整可能であることを特徴とする請求項10記載の設置方法。
【請求項12】
該コンテナの地面からの高さは、複数のデータを用いることで決定され、該複数のデータは、検査対象の大きさ、所望の検査領域、検出器列の配列、所望の視野、X線ソースの種類、X線ソースの配列、拘束構造、および、人の存在のうちの少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項11記載の設置方法。
【請求項13】
該コンテナが地面の高さに位置するように該複数の脚部は完全に後退するように構成され、該コンテナの該4つの壁部のうちの2つの壁部が水平方向に倒れ込み、該天井が鉛直方向に上昇して、該調査地点にドライブスルー方式のポータルが形成されることを特徴とする請求項10記載の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2013年1月31日に出願された米国仮出願番号61/759,211号で発明の名称が「運搬可能な安全性検査システム」に基づくものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、運搬可能な検査システムに関する。特に本明細書は、様々な高さで通過する車両や貨物の総合的な安全チェックを実行するために複数の調査地点に設置される運搬可能な統合X線検査システムに関する。
【背景技術】
【0003】
不正取引や密輸やテロにより、非侵入型の検査システムの必要性が増している。この検査システムの範囲は、駐車中の車両に対する縁石側からの検査から混雑した交通量の多いポートにまで及ぶ。交通システムは、国境を越えて商品を効率的に移動させるものであるが、同時に武器や爆発物や不正薬物、貴金属などの禁制品を含める機会も提供するからである。ポートという字句は、一般的には港湾を意味するが、国境検問所や通関手続き地をも意味する。
【0004】
X線システムは医療、産業、保安検査の目的で用いられる。なぜならこのシステムは人の眼では見えない内部空間の像をコスト効率よく生成できるからである。X線又はその種の放射線に曝された物体は、異なる量のX線照射を吸収し、それ故X線ビームを多かれ少なかれ減衰し、物体の特性である放射の伝達又は後方散乱レベルになる。減衰する放射又は後方散乱の放射は、照射された対象の容量を有益に描写するために用いられる。安全検査装置に用いられる単一エネルギX線配置の代表的な装置は、ファン形状又はスキャンX線ビームを備え、これは検査対象を通過するか後方散乱される。吸収されるか後方散乱されたX線は、ビームが対象を通過した後に複数の検知器で測定され、画像全体が生成されて操作者に提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
場所が限られている一方で必要性が高まっているなか,付加的な検査設備を通常の方法で設置することは困難になってきている。更に、ポートの操作者に長期間の検査装置の設置を約束するには、選定された場所は必ずしも永久的ではない。更に、高エネルギX線ソース又は線形加速器(LINAC)を備えるシステムは、物質を遮蔽するための(一般的にはコンクリートまたはビルの形態)主要投資が必要であるか又は、ビルの周囲に立入禁止区域(デッドスペース)を備える必要がある。いずれの場合も、検査すべき貨物コンテナの寸法に依存したビルの専有面積についての要求が過度に著しくなる。
【0006】
適応性のある高度な検査能力の必要性のためには、可動の検査システムにより適切な問題解決を提供できる。このようなシステムは再配置可能であり、装置を収容するための永久的なビルへの投資は避けられるので、用地を割り当てることが重要な問題ではなくなり、このようなシステムを導入することで,取り壊し作業を減らせる。また、可動検査システムは操作者に対して、より高い処理能力によって、貨物、積荷、車両、その他のコンテナのより多くの列を検査する能力を提供する。
【0007】
従来の検査システムは、剛性が低いこと、作業が困難であること、及び又は視界が小さいことなどの不利益があった。特に、従来の再配置可能な検査システムは、少なくとも2本のブームを有し、一方のブームには複数の検知器が収納され、他方のブームには少なくとも1個のX線ソースが収納される。複数の検知機とX線ソースは同期的に動作して、移動する車両上の貨物をスキャンする。従来の単一ブームの再配置可能な検査システムでは、X線ソースはトラックまたは平台上に位置し、複数の検出器はトラックから外方に延びるブーム構造に位置する。これらのシステムは、スキャンエンジンシステムを移動させることに特徴づけられ、そこでは、ソース・検出器システムは検査されるべき静止した対象に対して移動する。更に、複数の検出器と放射ソースは、可動ベッド、ブーム又は車両のいずれかに載置されて、車両と一体的に結合される。そのために、最適の携帯性のためまた、調整可能な配置をして、異なる寸法の貨物や積荷、車両、その他のコンテナのより広い列を収容することを目的として、全体のシステムを分解することの柔軟性が制約される。その結果、これらのシステムは配置が複雑化し、いくつかの不都合や制約を突きつけるものである。
【0008】
そのために、トラック又は車両に牽引されたトレーラに、短時間で積み込み可能で、瞬時かつ容易に調査場所に設置できる検査方法やシステムの改良が望まれる。
【0009】
また、調査場所に輸送するために特殊な高価な輸送車両を必要としない運搬可能な検査システムが望まれる。
【0010】
更に、軽量で、検査のために瞬時に設置できる運搬可能な検査システムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書は、容易にかつ瞬時に設置可能な非侵襲型の保安検査システムを提供する。
【0012】
また本明細書は、例えば限定的ではないが、調査が必要とされる複数の場所に輸送される補強された箱体のようなコンテナに容易に入れるように設計された放射線検査アレンジメントを提供する。
【0013】
また本明細書は、トラックまたは輸送車両で牽引されたトレーラに載置されるコンテナであって調査が必要とされる複数の場所に輸送されるコンテナに、容易に入れるように設計された放射線検査アレンジメントを提供する。
【0014】
また本明細書は、調査地点への輸送に際して、容易にコンテナに入れるように設計され、コンテナの搬送に際して特殊な車両を必要とすることのない放射線検査アレンジメントを提供する。
【0015】
また本明細書は、軽量であり、通過する車両や貨物の調査場所に容易に設置できる運搬可能な放射線検査システムを提供する。
【0016】
また本明細書は、軽量であり、通過する人や彼らの所有物の調査場所に容易に設置できる運搬可能な放射線検査システムを提供する。
【0017】
また本明細書は、乗用車、バン及びトラックの検査を可能にするために様々な高さで設置できる運搬可能な放射線検査システムを提供する。
【0018】
ある実施の形態によれば、本明細書では、少なくとも一つ又はそれ以上の種類の放射ソース(複数の場合有り)と複数の検出器アセンブリとを備える放射線検査システムを記載する。
【0019】
また、ある実施の形態は、運搬可能な検査システムは、後方散乱型X線検査システムであり、後方散乱X線ソースと、検出アセンブリを有する。
【0020】
ある実施の形態では、本明細書は、検査対象を検査するための検査システムについて記載しており、検査システムは、4つの壁部と天井と基台とで閉ざされた容積を画成するコンテナと、該閉ざされた容積内に位置し、放射線の放出により視野を画定する少なくとも一つの放射線ソースと、該閉ざされた容積内に位置するか又は該コンテナに物理的に付設された少なくとも一つの検出器列と、それぞれが該コンテナの4つの角部のそれぞれに付設された複数の脚部と、を有し、該複数の脚部は地上から少なくともあるひとつの高さ位置に伸張可能であり、該少なくともある一つの高さ位置は、複数のデータを用いて決定される。
【0021】
ある実施の形態では、該複数のデータは、検査対象の大きさ、所望の検査領域、検出器列の配列、所望の視野、X線ソースの種類、X線ソースの配列、拘束構造、人の存在を含む。
【0022】
ある実施の形態では、該コンテナは、それぞれの角部に該脚部を収容するための鉛直方向凹部が形成されている。
【0023】
ある実施の形態では、該複数の脚部は、それらの収容位置では、該鉛直方向凹部内に静止して位置し、該コンテナの鉛直方向に延びる該壁部に対して少なくとも一部が埋め込まれている。
【0024】
ある実施の形態では、該コンテナは、その収容位置では、輸送車両のトレーラ部に静止して載置されている。
【0025】
ある実施の形態では、調査地点での設置位置では、該複数の脚部のうちの少なくとも1本の脚部は、最初に該コンテナの4つの角部から水平方向外方に伸張され、その後に鉛直方向下方に伸張されて、該複数の脚部が地面に接触して、該コンテナを該トレーラ部から上昇させる。
【0026】
ある実施の形態では、該複数の脚部がひとたび地上に接触して該検査システムが完全に設置位置にある状態となると、該トレーラ部は該コンテナから走り去る。ある実施の形態では、該コンテナを該調査地点から輸送するために、該トレーラは該コンテナの下側に走り込み、該複数の脚部が鉛直方向に後退して該コンテナを下降させ該トレーラ部に載置させる。
【0027】
ある実施の形態では、該少なくとも一つの放射線ソースと該少なくとも一つの検出器列は、検査対象のスキャン情報を生成するように構成されている。
【0028】
ある実施の形態では、該脚部は伸縮式であり、設置された時点で該脚部は後退して該コンテナが地面に接触し、該コンテナの該4つの壁部のうちの2つの壁部が水平方向に倒れ込む。
【0029】
ある実施の形態では、該調査地点で、該コンテナの該4つの壁部のうちの2つの壁部が水平方向に倒れ込んだ時点で、スキャンの実施が要求された場合には、該天井が選択的に鉛直方向に上昇して、ドライブスルー方式のポータルが提供される。
【0030】
ある実施の形態では、該少なくとも一つの放射線ソースと該少なくとも一つの検出器列は、検査対象の多視点スキャン像を生成するように構成されている。
【0031】
ある別の実施の形態では、本明細書は調査地点に設置されるための検査システムについて記載しており、検査システムは、4つの壁部と天井と基台とで閉ざされた容積を画成すると共に輸送車両のトレーラ部に設置されるコンテナと、該閉ざされた容積内に位置し、放射線の放出により視野を画定する少なくとも一つの放射線ソースと、該閉ざされた容積内に位置するか又は該コンテナに物理的に付設された少なくとも一つの検出器列と、それぞれが該コンテナの4つの角部のそれぞれに付設された複数の脚部と、を有し、最初に該複数の脚部のうちの少なくとも1本の脚部が、該コンテナから水平方向外方に移動し、その後に複数の脚部を鉛直方向下方に移動して、該複数の脚部が地面に接触して、該コンテナを該トレーラ部から上昇させるように、該複数の脚部は伸縮可能である。
【0032】
ある実施の形態では、該コンテナの地面からの高さは、該複数の脚部の伸縮運動によって調整可能である。ある実施の形態では、該コンテナの地面からの高さは、複数のデータを用いることで決定され、該複数のデータは、検査対象の大きさ、所望の検査領域、検出器列の配列、所望の視野、X線ソースの種類、X線ソースの配列、拘束構造、人の存在を含む。
【0033】
更に別の実施の形態では、本明細書は検査システムの設置方法について記載しており、検査システムは、4つの壁部と天井と基台とで閉ざされた容積を画成すると共に輸送車両のトレーラ部に設置されるコンテナと、該閉ざされた容積内に位置し放射線の放出により視野を画定する少なくとも一つの放射線ソースと、該閉ざされた容積内に位置するか又は該コンテナに物理的に付設された少なくとも一つの検出器列と、それぞれが該コンテナの4つの角部のそれぞれに付設された複数の脚部と、を有する。当該設置方法は、該複数の脚部のうちの少なくとも1本の脚部を該コンテナから水平方向外方に伸張し、複数の脚部を鉛直方向下方に伸張して該複数の脚部を調査地点の地面に接触させ、該複数の脚部を鉛直方向下方に伸張し続けて該コンテナを該トレーラ部から上昇させ、該コンテナを該複数の脚部で該調査地点に完全に支持し、該トレーラ部を該調査地点から走りださせる、という工程を含む。
【0034】
ある実施の形態では、複数のスキャン高さに対応させるために、該複数の脚部の高さは調整可能である。ある実施の形態では、該コンテナの地面からの高さは、複数のデータを用いることで決定され、該複数のデータは、検査対象の大きさ、所望の検査領域、検出器列の配列、所望の視野、X線ソースの種類、X線ソースの配列、拘束構造、人の存在を含む。
【0035】
ある実施の形態では、該コンテナが地面の高さに位置するように該複数の脚部は完全に後退し、該コンテナの該4つの壁部のうちの2つの壁部が水平方向に倒れ込み、該天井が選択的に鉛直方向に上昇して、該調査地点にドライブスルー方式のポータルが形成される。
【0036】
上述した実施の形態や他の形態は、図面及び詳細な説明の欄によってより詳細に説明される。本明細書の特徴や利点は、添付の図面を参照しつつ、以下の詳細な説明の欄によってよりいっそう理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本明細書の実施の形態による箱体に収納されたX線検査システムを示すブロック図。
図2A】本明細書の実施の形態による箱体に収納されたX線検査システムであって、輸送のために車両に積載された状態を示す図。
図2B】本明細書の実施の形態による箱体に収納されたX線検査システムであって、箱体は伸縮可能な複数の脚部を有する。
図3】異なる高さの車両をスキャンするための高さの異なる複数のコンテナの例を示す図。
図4A】コンテナに収容されたX線検査システムの斜視図であって、コンテナは伸縮可能な複数の脚部を有し、トレーラに積み込まれる。
図4B】コンテナから水平方向に外側に延びて位置する上述した複数の脚部を示す図。
図4C】第1の鉛直方向中間位置に延びた脚部の位置を示す図。
図4D】第2の鉛直方向中間位置に延びた脚部の位置を示す図。
図4E】コンテナから水平方向及び鉛直方向に延びた脚部を示す近接図。
図4F】複数の脚部が鉛直方向に延びきり、コンテナがトレーラから上昇して離れた状態を示す図。
図4G】延びた4本の脚部でコンテナが設置され、トレーラがコンテナの下側から移動して離れた状態を示す図。
図4H】延びた4本の脚部でコンテナが設置された状態を示す図。
図4I】地面上の第1の高さで設置されたコンテナを示す図。
図4J】地面上の第2の高さで設置されたコンテナを示す図。
図4K】X線検査システムを収容したコンテナを設置して通過する車両をスキャンする状態を示す図。
図4L】コンテナのトレーラへの再積載を開始するために、トレーラが設置されているコンテナの下側に位置した状態を示す図。
図4M】コンテナがトレーラに向かって下降する状態を示す図。
図4N】コンテナがトレーラ上で停止した状態を示す図。
図4O】通過する車両をスキャンするために用いられ、静止したトレーラに載置されたコンテナに収納されたX線検査システムを示す図。
図5A】本実施の形態によるコンテナを安全に載置するために設けられたトレーラのシャーシを示す図。
図5B】トレーラのシャーシに受け入れられたコンテナを示す図。
図6】本実施の形態によるX線検査システムに用いられる公知のX線ソース検出器アセンブリを示す概略図。
図7A】本実施の形態によるソースと検出器アセンブリを示す図。
図7B】他の実施の形態によるソースと検出器アセンブリを示す図。
図8】本実施の形態によるX線検査システムに用いられる多視点X線ソース検出器アセンブリを示す図。
図9A】実施の形態による伸張屋根を備えたコンテナを示す図。
図9B】ドライブスルー態様の扉を提供するために、折り畳み降下した側壁と、伸縮可能な天井を備えたコンテナを示す図。
図9C】実施の形態による、ソース・検出器アセンブリを備えたコンテナの側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書は、運搬可能な放射線検査システムについて記載する。様々な実施の形態において、運搬可能な検査システムは、コンテナに容易に収容されるように設計されており、コンテナの例としては、限定的ではないが、調査が必要な複数の場所に輸送される補強された箱体である。箱体に収容された検査システムは、複雑な組み立て手順を経ることなく、即座に調査場所に設置できる。更に様々な実施の形態において、検査システムと収容箱体は共に、軽量な構成要素によって構成され、例えばトラックやトレーラのような適当な車両でこれらを搬送することができ、調査地点において簡単に設置できる。様々な実施の形態において、運搬可能な検査システムは、箱体の外側に位置する通過する車両または貨物などを放射線でスキャンするのに用いられる。
【0039】
本明細書は、複数の実施の形態について記載する。以下の開示は、当業者が本明細書を実施することができるように提供される。本明細書で使用される言語は、特定の実施の形態の一般的な否認として解釈すべきではなく、又は、使用されている用語の意味を超えて請求項を限定するために使用されない。本明細書にて定義される一般的な原理は、本発明の請求項の範囲から逸脱せずに、他の実施の形態や適用例に対し適用される。また、使用される用語や表現は、例示的な実施の形態を記載する目的のためであり、限定するものとして考慮すべきではない。このように、本明細書には、多数の代替例、変更例、及び開示された原理及び特徴と一致する等価例を包囲する最大の権利範囲が与えられるべきである。明確さを目的として、本発明に係る技術分野において周知の技術的材料に関する詳細は、本発明を必要以上に不明確にしないようにするために、詳細には記載しない。
【0040】
本明細書に記載されているシステムは、X線放射の使用を前提としているが、多の放射線ソース又はこれらの組合わせも使用可能である。他の放射線の例としては、ガンマ線、マイクロ波、光波、高周波、ミリ波、テラヘルツ放射、赤外線放射、超音波放射などである。
【0041】
当業者にとって明らかなように、遠隔地での運搬可能な放射線検査システムの使用については、コストと適当な輸送車両の複雑さの観点から、制約を受ける。本明細書は、自己完結型の検査システムを提供し、それは特殊且つ高価な輸送車両を用いる必要がなく調査地点に搬送可能であり、当該地点に容易に設置できて、通過する車両や貨物に対して自動的な検査がただちに開始できる。
【0042】
図1は、本明細書の実施の形態による箱体に収納されたX線検査システムを示すブロック図である。様々な実施の形態において、検査システム102は、4つの側壁と床と天井を有する箱体104のようなコンテナに収容され、検査対象のX線写真を得るためのソース・検出器アセンブリ106と、検査ワークステーション108とを有する。ソース・検出器アセンブリ106からの画像データは、検査ワークステーション108に送られる。検査ワークステーション108はソース・検出器アセンブリ106に近接してコンテナ内に設けられるか、必要に応じて、ソース・検出器アセンブリ106からは離間して設けられる。検査ワークステーション108は、装甲車両内、又は既存のビル、仮設構造物、又は検査システム内に設けてもよい。検査ワークステーションは、有線、又は無線通信を用いて検査システムとデータ通信ができる。
【0043】
様々な実施の形態において、本明細書の輸送可能な放射線検査システムは、検査対象のX線画像を得るために、X線ソースと複数の検出器とを有する。
【0044】
ある実施の形態では、X線検査システムは、ビーム質が1MeV乃至9MeVの線形加速器によって発生したX線放射を用いた、透過撮像に基づく高エネルギ検査設備を有する。このようなシステムは、比較的高い原子番号の物体の構造や形状を厳密に調査するのにきわめて有効である。
【0045】
ある実施の形態では、通過する車両や貨物の一つまたはそれ以上のパラメータを解析するために、一つまたはそれ以上のセンサ110を更に備える。センサ110の例としては、写真装置、ビデオカメラ、温度カメラ、赤外線(IR)カメラ、微量化学物質検知装置、ラジオ周波数(RF)モニター装置、RFジャミング装置、自動ナンバープレート捕獲システム、自動コンテナコード捕獲システムなどである。ある実施の形態では、センサ110を介して得られた画像データ、ビデオデータ、グラフィックデータ、温度データ、熱データ、化学的データ、通信信号、又はその他のデータを含む補助データも、検査ワークステーション108に搬送され、システム検査官の分析のためにグラフィックの形態で提供される。ある実施の形態では、補助データは有利に結合され、システム検査官のために全体で統合された脅威報告を生成する。
【0046】
様々な実施の形態において、本明細書の運搬可能なX線検査システムは、車両と共に使用できる。車両はシステムを即座に再配置できまた容易に運搬できる。図2Aは、本明細書のX線検査システムであって、一つの調査地点から別の調査地点に高速で走る車両204の後部荷台に積載することのできる箱体202に収容されたX線検査システムを示す。ある実施の形態では、箱体202に収容されたX線検査システムの重量は、調査地点の特定のセンサ構造や総合的な遮蔽の条件にもよるが、100キロから4500キロの範囲である。
【0047】
図2Bは、箱体202に収納されたX線検査システムを示し、箱体202は、伸縮可能な脚部206を有する。脚部206は降下して地上面まで引き出され、X線検査システムの全重量を支持する。伸縮可能な脚部206は、輸送用車両204の後部荷台からX線検査システムを持ち上げるか、後部荷台上に載せるように用いられる。
【0048】
様々な実施の形態において、伸縮可能な脚部の態様は様々であり、機械式、水圧式、空気圧式などのような推進運動形態のものである。これらの対応は本明細書の範囲内としてカバーされる。
【0049】
ある実施の形態では、伸縮可能な脚部206の高さが調整可能であり、その結果X線検査システムが地上から所望の高さに保持できて、通過する車両や貨物の検査の便宜に供する。ある実施の形態では、検査対象に対するX線検査システムが最適な高さに保持できることに加えて、X線検査システムの(沿直面における)視野を必要な視野にだけ調整可能にして、周囲環境全体へのX線被爆を最小化している。ある実施の形態では、最初に3点スイッチのようなマルチポイントスイッチを用いてX線検査システムについての必要な高さ設定を行い、次いで上昇又は下降ボタンのようなボタンを作動させて設定された高さまで検査システムを移動させることにより、視野についての手動調整が行われる。別の実施の形態では、近づいてくる検査対象のビデオ解析に基づいて、視野が自動調整される。
【0050】
ある実施の形態では、伸縮可能な脚部206の最適な高さを決定するために、検査対象の大きさ、所望の検査場所、検出器の列の構成、所望の視野、X線ソースの種類、X線ソースの形態、及び又は抑制構造または人の有無などの複数のデータに基づいて、コントローラによる処理がなされる。脚部206を特に用いない場合には、プラットフォーム又は支持構造の高さを制御するためにコントローラが用いられても良い。当業者にとっては、検査対象や調査地点に応じて、複数のデータが扱われる場合があることも理解されるであろう。
【0051】
調査地点でのX線検査システムのスキャン動作が完了すると、伸縮可能な脚部を用いて、箱体に収納されたX線検査システムは輸送車両の後部荷台に再積載され、別の調査地点に即座に輸送される。ある実施の形態では、X線検査システムは一般用車両に牽引されたトレーラに積載されて、一つの調査地点から別の調査地点に輸送される。本発明による検査システムの設置や再積載については、図4A乃至図4Qを参照しつつ後述されている。
【0052】
図3は、互いに異なる高さ310,311、312の車両又は対象325をスキャンするために、地上からの互いに異なる高さ205、306、307に位置する検査コンテナ300を示す。更に、ある実施の形態では、検査コンテナ300は、検査対象又は車両から距離315をおいて位置している。更に、ある実施の形態では、検査対象の車両又は物体に応じて、検査コンテナ300は視野320を変化させることができる。
【0053】
ある実施の形態では、車両325は、高さ310がほぼ4000ミリのトラックであり、検査コンテナ300は地上から1200ミリの高さ305に位置している。更にこの検査コンテナは、車両からの距離315が1500ミリである。この構成によって、全体の視野320が88度となる。
【0054】
別の実施の形態では、車両325は、高さ311がほぼ3000ミリのバンであり、検査コンテナ300は地上から900ミリの高さ306に位置している。更にこの検査コンテナは、車両からの距離315が950ミリである。この構成によって、全体の視野320が87度となる。
【0055】
更に別の実施の形態では、車両325は、高さ312がほぼ1800ミリの乗用車であり、検査コンテナ300は地上から600ミリの高さ307に位置している。更にこの検査コンテナは、車両からの距離315が400ミリである。この構成によって、全体の視野320が86度となる。
【0056】
上述した構成は一例であり、対象物のスキャンを達成するように調整がなされることは当業者にとって明らかである。
【0057】
図4A乃至4Qは、本明細書の検査システムを示す現場の斜視図であり、このシステムは、箱体のようなコンテナ又はコンパートメントに収容され、輸送車両から調査地点に設置され、次いで輸送車両の後部荷台に再積載される。
【0058】
図4Aは、コンテナ405に収容され、輸送車両415のトレイラ部410に載せられた本明細書によるX線検査システムを示す。ある実施の形態では、輸送車両415はトラックであり、通常の速度で平面道路上や高速道路上を輸送するのに適している。本発明の実施の形態によれば、コンテナ405は4つの鉛直壁面406を有し、実質的に四角の箱体を形成している。更に、コンテナ405は、4つの角部のそれぞれに鉛直方向に延びる凹部420を有し、計4つの凹部420を有する。積載位置にあるときに、それぞれの脚部425は、それぞれの鉛直凹部420に収容され、収容状態では脚部はコンテナ405の鉛直壁面406と面一かまたは壁面よりも内方に凹部内に沈んで位置する。
【0059】
設置位置ではそれぞれの脚部425は、コンテナ405のそれぞれの角部から水平方向に延びることができ、また鉛直方向にも伸縮自在に上下に延びることができ、地上からのコンテナ405の台座の高さを可変に設定できるようにしている。調査地点に設置するために、図4Bに示されるように、少なくとも一つの脚部425は、最初に鉛直凹部420から水平方向外方に延ばされる。ここで、全ての脚部が水平方向に延ばされることは必ずしも要求されない。これは、延ばされた脚部間で、トレーラの車輪が通過できる程度の隙間の必要性に応じればよい。次に、複数の脚部425は、鉛直方向下方に延ばされる。図4Cは、第1の中間鉛直脚部位置又は伸縮可能に延ばされた脚部位置430aを示し、図4Dは、第2の中間鉛直脚部位置又は伸縮可能に延ばされた脚部位置430bを示し、図4Dにおいては、延びた脚部位置430bにおいては,脚部425は地面に接触している。
【0060】
図4Eは、水平方向に延びた位置におけるピストン426を示す近接図であり、この位置では、水平方向に延びた脚部425は鉛直凹部420の外側に位置する。脚部425が鉛直方向下方にも延びたときには脚部を目視でき、図4Dの位置430bのような鉛直方向に延びた脚部の位置であることがわかる。
【0061】
図4Fに示されるように、(脚部425が地面に接触している)図4Dの脚部位置430bを越えて、脚部425は更に鉛直方向下方に延び、その結果コンテナ405はトレーラ410のシャーシから上昇する。コンテナ405が最適の高さに位置して4本の脚部425全てが地面に接触すると、図4Gに示されるように、トレーラ410はコンテナ405の下側から遠ざかるようになる。
【0062】
その結果、図4Hに示されるように、調査地点において、コンテナ405は第1の高さで、十分に延びた脚部425の上に設置される。そして、スキャンのために、脚部425の鉛直方向の伸縮運動を用いて、地上からのコンテナ405の台座の高さが調整される。図4Iは、第2の鉛直方向後退位置にある脚部425を示し、コンテナ405を第2の高さに位置させている。また図4Jは、第3の鉛直方向後退位置にある脚部425を示し、コンテナ405を第3の高さに位置させている。ひとたび地上に設置されれば、脚部425を鉛直方向に後退させるか延ばして、コンテナ405を降下させるか上昇させ、地上からのコンテナ405の位置を変化させて、様々なスキャン高さを提供することは、当業者にとって理解されることである。図4H乃至4Jに示されるコンテナ405の第1、第2、第3の高さは、図3に示されるコンテナの高さ305、306、307にそれぞれ対応する。
【0063】
脚部425を鉛直方向に後退させるか延ばすことでコンテナ405の高さを所望の位置にした後は、対象の物体又は車両をスキャンできる。例えば、図4Kでは、コンテナ405を適切な高さに位置させて、通過する乗用車435をスキャンし、乗用車435のX線スキャン像を生成する。
【0064】
図4Lにおいて、別の場所に輸送し又は再設置するために、コンテナ405はトレーラ410に積載されるか再積載される必要がある。しかして、トレーラ410は、調査地点に設置されているコンテナ405の下に位置するように操縦される。必要であれば、脚部425を鉛直方向に延ばすことで、コンテナ405の高さを調整し、トレーラ410が何ら妨げられることなくコンテナ405の下側に位置できるように操縦される。トレーラ410をコンテナ405の下側に位置させるために輸送車両を背走中に、コンテナ405の下側にトレーラ410を安全に位置させるため、また輸送車両がコンテナに間違って衝突するのを避けるために、複数の予防手段が設けられる。例えば以下の例がある。(a)輸送車両にリヤビューカメラを設ける、(b)運転室の後ろに金属製のバッファを設けて、運転手が位置を知るようにする、(c)コンテナ405(背走する輸送車両に面するコンテナ405の壁)に、位置センサを設ける。この場合、トレーラ410にコンテナ405を再積載するための正しい位置の近くに輸送車両が近づいたときに、位置センサが作動する。
【0065】
ひとたびトレーラ410がコンテナ405の下側に位置すると、図4Mに示されるように脚部425は鉛直方向で後退して、コンテナ405は次第にトレーラ410に向かって降下する。図4Nは、コンテナ405がトレーラ410上に積載された状態を示す。トレーラ410に積載されれば、脚部425は十分に鉛直方向で後退し、その後、脚部425は水平方向に後退して鉛直凹部420内に位置する。
【0066】
本発明の一つの観点によれば、コンテナを静止したトレーラ上に載せたままで、(例えば車両のような)移動標的についても、スキャンの対象とすることができる。図4Oは、静止したトレーラ410上に載せられたコンテナ405を示し、トラック445がトレーラのそばを通り過ぎている。通過するトラック445はスキャンを受け、それのX線画像が生成される。ある実施の形態では、トレーラ410に積載されたコンテナ405の高さは、図3の高さ306に対応する。
【0067】
X線検査システムを内蔵するコンテナが、輸送中にトレーラのシャーシ上に安全に積載されるようにし、またシャーシにコンテナが積載された状態で対象物のスキャンをできるようにするために、トレーラのシャーシには適切な装備が設けられている。ある実施の形態では、図5Aに示されるように、トレーラのシャーシ505には、シャーシの前端部と後端部に設けられた一対のコンテナ載置ブラケット510と、それぞれがシャーシ505の角部に位置する4個のV字形状のコンテナ位置決め板515を有する。図5Bに示されるように、4個の位置決め板515とそれらに対応する(コンテナ525の台座に設けられている)ローラ520とにより、コンテナ525がシャーシ505上に向かって下降たときに、コンテナ525が前後の載置ブラケット510と整合する位置になるようにしている。ある実施の形態では、コンテナ525がシャーシ505上に積載された後に、4本の脚部530が機内方向に移動して収容位置に位置し、4本の脚部アセンブリ530のそれぞれに位置する角付き板535によって脚部が所定の位置に保持される。それぞれの脚部530の機内側端部にある角付き板535は、載置ブラケット510の側方のそれぞれにあるクレードル内に位置し、コンテナ525がシャーシ上505で積載されている状態を確保する。
【0068】
図6は、本明細書の検査システムに用いられる公知の放射ソースと検出器アセンブリ600を示す概略図である。ある実施の形態では、アセンブリ600は回転ディスクの形態をなすX線ソース602を有する。スキャンの対象として、トラックまたは大型貨物自動車604が示されている。ある実施の形態では、検出器606と放射源とは、トラックまたは大型貨物自動車の同一側に位置する。放射源はどの時点においても(即ち、一回の放射毎に)対象の単一な領域を照射するように構成される。放射源は、密な平行ペンシルビームを生成し、ビームは物体604の一点を照射する。放射線610はあらゆる方向に分散し、検出器606で検出される。放射中の物体の一点についての情報を得るために、検出器606は、一回の放射ごとの放射線の量を測定する。
【0069】
別の実施の形態では、本明細書の検査システムに用いられるX線ソースは、多要素散乱コリメータを備え、スキャンされるべき物体を照射するためのX線ファンビームを生成する。物体からの後方散乱X線は、多要素コリメータの後方に位置するセグメント化された検出器列で検出される。ここで一つの検出器要素は、一つのコリメータ要素に対応している。このようなX線ソースは本出願人による米国出願第13/368,202号に記載されており、当該出願明細書の内容全体は本出願に援用される。
【0070】
更に別の本明細書の実施の形態では、X線後方散乱ソース検出器アセンブリが、高強度線形加速器ベースの透過撮像ソース検出器アセンブリと組合される。その目的は、表面X線後方散乱画像と、かさばる物体の透過撮像とを空間的に相互に関連づけるためである。これは荷物中の違法な材料や対象を検出するための更なる捜査である。
【0071】
図7Aは、本明細書の実施の形態によるソース検出器アセンブリを示す。ここでは、検査を受ける物体722を通過してX線検出器セット724に向かうコリメートされた高エネルギー(少なくとも900KeV)のファンビーム放射線を発射するために、X線線形加速器(linac)720が用いられる。このX線検出器セット724は、検査対象の高解像透過X線撮像のために用いられる。X線線形加速器ビームはパルス状であり、検査対象がビーム中を移動したとき、複数の一次元画像のセットが得られ、しかる後に互いに重ね合わされて二次元画像が形成される。本実施の形態では、X線後方散乱検出器726は、検査領域の縁部付近であって、検査対象に対しX線線形加速器720と同じ側に位置するが、X線ビームの一方の側にオフセットしており、X線ビームの透過を弱めないようにしている。
【0072】
別の実施の形態では、ソース720が低エネルギX線管ソースでありエネルギは60keV乃至450keVの範囲にある。
【0073】
上述したように、放射線ソースは別の様々な実施の形態において、高エネルギX線、低エネルギX線の他に、ガンマ線、マイクロ波、光線、高周波、ミリ波、テラヘルツ、赤外線、超音波の一つ又は組合せであってもよい。
【0074】
図7Bは、本明細書の別の実施の形態におけるソース検出器アセンブリを示す。主ビームの一方側と他方側にそれぞれ配置された計2個の後方散乱画像検出器726を用いることが有利である。いくつかの実施の形態では、複数の後方散乱検出器は、異なる態様で設けられてもよい。またいくつかの実施の形態では、後方散乱検出器は単一であってもよい。更に別の実施の形態では、3個以上の後方散乱検出器を設けても良い。このような後方散乱ソース検出器アセンブリを用いたX線検査システムは本出願人による米国出願第12/993,831号に記載されており、当該出願明細書の内容全体は本出願に援用される。
【0075】
別の実施の形態では、本明細書は、4つの個別の後方散乱ソース検出器アセンブリを有する多視点ソース検出器アセンブリを提供する。この後方散乱ソース検出器アセンブリは、一つの後方散乱システムからのペンシルビームを再利用して、第2の後方散乱視システムからの大領域の複数の検出器を照射し、多層の同時後方散乱と同じセットの4本のX線ビームを用いたX線透過撮像が達成できる。
【0076】
図8は本明細書の実施の形態によるX線検査システムに用いられる多視点X線ソース検出器アセンブリを示す。ある実施の形態では、システム800は、同時に回転する3本のX線ビーム805、806、807と対応する複数の検出器によって可能となった3つの視界を備える。ある実施の形態では、スキャントンネル820を形成した透過構成である。システム800は、本明細書の目的どおりの高度の検査能力を備えており、同時にX線量が実質的に低いものである。なぜなら、画素化した多数のX線検出器やファンビームX線照射を伴う従来のラインスキャンシステムと比較して、時間内のいずれの瞬間においても照射される空間容積が小さいからである。図8に示されるように、同時に収集された3本のX線の視点間では、クロストークがほとんどない。
【0077】
別の実施の形態において多視点スキャンを可能にするために、本発明の放射線検査システムはドライブスルー形式で動作可能である。図9Aと9Bは、検査システムを内蔵したコンテナ905を示しており、外壁910が回動可能であり、天井915が鉛直方向に移動可能である。図9Bに示されるように、コンテナ905が4本の脚部930で調査地点に設置されると、天井915が鉛直方向に上昇し、(図9Aに参照番号が付された)外壁910が下方に回動して、ランプ935が提供され、乗用車のような検査対象車両がランプ935内に、即ちコンテナ605内を通過するように移動できる。
【0078】
図9Cは、ドライブスルーポータル形式のコンテナ905の概略側断面図を示し、鉛直方向に移動可能な天井915とランプ935を形成する直立姿勢から平らな姿勢になった複数の壁を有する。ある実施の形態では、X線ソース920は天井915に位置し、複数の検出器がコンテナ905内に設けられている。ある実施の形態では、3個の検出器列が戦略的に配置されている。第1の検出器は、床又は台座925に、第2第3の検出器はコンテナ905の2つの固定壁940内に設けられる。更なる実施の形態では、1つ又はそれ以上の検出器は天井915に設けられ、例えばソース920の両側に設けられ、コンテナ905を通過する対象車両の後方散乱像と透過スキャン像の両方を生成できるようにしている。更に別の実施の形態では、付加的な放射線ソースがそれぞれの側壁940に位置し、図8のような多視検査システム800を実現することができる。
【0079】
本明細書のひとつの観点によれば、それぞれの検出器セグメント821が常にわずか一つの主X線ビームによって照射される本システム800において、同時に収集できる画像ビューの数にほとんど制限はない。ある実施の形態では、図8に示される検出器830の配列ではそれぞれが1メートルの長さの計12個の検出器セグメント821を備え、幅3メートル、高さ3メートルの検査トンネルを形成している。ある実施の形態の検出器830の配列では、6個の独立したX線視野をサポートすることができ、隣合った検出器の間で、全面的なX線画像ビューの通過が可能となる。別の実施の形態では、長さ0.5mの検出器セグメント821が12個までの独立したX線画像ビューをサポートすることができる。
【0080】
本明細書のシステム800では、検出器材料の容量は収集されるべき画像ビューの数とは関係がなく、読み出し側の電子機器の密集度は、従来の画素化されたX線検出器列に比較すると極端に低いということは、当業者にとって理解されるべきである。更に複数のX線ソースは、適切な定格の高電圧発生器によって駆動でき、比較的簡単に都合良く付加的なX線ソースを追加することができる。これらの特徴により、本明細書高密度の多視点システム800が実現でき、手荷物検査の場合でも有利に実現可能である。このような多視点X線検査システムは本出願人による米国出願第13/756,211号に記載されており、本明細書に内容が全て援用される。
【0081】
本明細書による運搬可能なX線検査システムにおいて、複数種類のX線ソース検出器アセンブリが用いられることは当業者にとって自明であり、これらアセンブリの例は、上述したようなソース検出器アセンブリの例に限定されない。
【0082】
本明細書による運搬可能なX線検査システムは頑丈な検査システムであり、特殊で高価な輸送用車両を必要とすることなく、一つの調査地点から別の地点に容易に運送することができる。更に、運搬可能なX線検査システムは、輸送のためまた複数の調査地点に容易に設置するために箱体に収納された軽量なシステムである。
【0083】
上記実施の形態は、本発明のシステムの多数の用途を例示したにすぎない。本明細書の実施の形態をいくつか記載したが、本明細書の精神及び範囲から逸脱せずに多数の形態で実施されることを理解すべきである。故に、本発明の実施の形態は、例示であって、限定的に解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0084】
102 検査システム
104 202 箱体
106 ソース・検出器アセンブリ
108 検査ワークステーション
110 センサ
204。415 輸送用車両
206、425 脚部
300 検査コンテナ
325 車両
405、525、605 コンテナ
406 鉛直壁面
410 トレーラ
420 凹部
435 乗用車
445 トラック
505 シャーシ
530 脚部アセンブリ
600 検出器アセンブリ
604 大型貨物自動車
606 検出器
610 放射線
720 ソース
800 多視点システム
821 検出器セグメント
830 検出器
905 コンテナ
910 外壁
915 天井
920 ソース
925 台座
930 脚部
935 ランプ
940 固定壁
940 側壁
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図4M
図4N
図4O
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C