特許第6385375号(P6385375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385375
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ガスタービン内の燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/42 20060101AFI20180827BHJP
   F23R 3/06 20060101ALI20180827BHJP
   F23R 3/16 20060101ALI20180827BHJP
   F23R 3/34 20060101ALI20180827BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20180827BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F23R3/42 D
   F23R3/06
   F23R3/16
   F23R3/34
   F02C7/24 C
   G10K11/16 130
   G10K11/16 140
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-559453(P2015-559453)
(86)(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公表番号】特表2016-516169(P2016-516169A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】EP2014052347
(87)【国際公開番号】WO2014131597
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年1月30日
(31)【優先権主張番号】13/778,769
(32)【優先日】2013年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エム. クレイン
(72)【発明者】
【氏名】マウナ ラムナウアー
(72)【発明者】
【氏名】マザファー サトク
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−220335(JP,A)
【文献】 特開昭57−000426(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0006029(US,A1)
【文献】 特表2010−539435(JP,A)
【文献】 特開平05−044928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン内の燃焼器において、
主燃焼ゾーンを規定する内側容積部材を含むライナと、
前記主燃焼ゾーン内に燃料を供給する燃料噴射システムと、
前記ライナの半径方向外側に配置されたフロースリーブと、
トランジションダクトを含むトランジションアセンブリと、
前記ライナと前記トランジションアセンブリの少なくとも一方に取り付けられたフロー調整部材と
が設けられており、
前記フロースリーブは前記ライナと共に、前記燃料噴射システムから送出された燃料と混合される空気の、混合に至る途上で流れる通路を規定し、前記主燃焼ゾーン内で混合物が燃焼して高温燃焼ガスが発生し、
前記トランジションダクトは、前記燃焼器から排出されてエンジンのタービンセクションへ向かう前記高温燃焼ガスの流れ方向に関して、前記ライナの下流に配置されており、前記高温燃焼ガスの流れ方向により軸線方向が規定され、
前記フロー調整部材は、前記フロースリーブの近接領域内まで延在しているが、該フロースリーブとは結合されておらず、前記フロー調整部材は、少なくとも1つのパネルを有しており、該少なくとも1つのパネルは、空気が前記通路に至る途上で該少なくとも1つのパネルを通過できるように構成されており、前記主燃焼ゾーン内で燃焼させるために前記通路に入る空気の少なくとも大部分は、前記少なくとも1つのパネルを通過する、
ただし、トランジションリングからフレームを外すことなく前記パネルの取り外しおよび交換が可能であるように、該パネルは前記フレームに着脱可能に取り付けられている、
ことを特徴とする、ガスタービン内の燃焼器。
【請求項2】
前記フロー調整部材はさらにフレームを有しており、
前記少なくとも1つのパネルは、該フレームに取り付けられた複数のパネルから成る、
請求項1記載の燃焼器。
【請求項3】
個々のパネルをそれぞれ通過して流れる許容空気量をコントロール可能であるように、望ましい通気率をもたせて前記パネルをそれぞれ選択可能である、
請求項記載の燃焼器。
【請求項4】
前記トランジションアセンブリはさらに、前記トランジションダクトと結合された環状のトランジションリングを有しており、
前記フロー調整部材は、該トランジションリングに取り付けられた環状の部材を有している、
請求項1記載の燃焼器。
【請求項5】
前記フロー調整部材はさらにフランジを有しており、
前記フランジが前記フロースリーブと共に封止部を形成して、前記フランジと前記フロースリーブとの間からの漏出を実質的に防止するように、前記フランジは、前記フロースリーブと半径方向でオーバラップして前記フロースリーブに近接しているが、前記フロースリーブとは結合されていない、
請求項1記載の燃焼器。
【請求項6】
前記主燃焼ゾーン内で燃焼させるために前記通路に入る実質的にすべての空気は、前記少なくとも1つのパネルを通過するか、または前記フランジと前記スリーブとの間から漏出する、
請求項記載の燃焼器。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパネルは複数の孔を含み、
前記少なくとも1つのパネルを通過して前記通路に入る空気は、前記少なくとも1つのパネルにおける前記孔を通過する、
請求項1記載の燃焼器。
【請求項8】
前記ライナから前記通路へ半径方向で外側に向かって延在する複数の共鳴器ボックスが設けられており、該共鳴器ボックスは、前記通路内の空気を該共鳴器ボックス内の内側容積部に流入させる開口部を含む、
請求項1記載の燃焼器。
【請求項9】
前記ライナは、前記共鳴器ボックスの内側容積部内の空気を前記ライナの内側容積部材に流入させる複数の開口部を含む、
請求項記載の燃焼器。
【請求項10】
前記フロー調整部材の上流で前記ライナから前記フロー調整部材の近接領域まで、半径方向で外側に向かって延在する複数の共鳴器ボックスが設けられており、該共鳴器ボックスは、該共鳴器ボックス内の内側容積部に空気を流入させる開口部を含む、
請求項1記載の燃焼器。
【請求項11】
ガスタービンエンジン内の燃焼器において、
フロースリーブと、燃料噴射システムと、流路構造と、フロー調整部材とが設けられており、
前記流路構造は、前記燃焼器からエンジンのタービンセクションへ高温燃焼ガスを搬送する流路を規定し、
前記流路構造は、主燃焼ゾーンを規定する内側容積部材を有するライナと、トランジションダクトを備えたトランジションアセンブリとを含み、
前記ライナは、前記フロースリーブの半径方向内側に配置されていて、前記フロースリーブと共に、前記燃料噴射システムから送出された燃料と混合される空気の、混合に至る途上で流れる通路を規定し、前記主燃焼ゾーン内で混合物が燃焼して、高温燃焼ガスが発生し、
前記トランジションダクトは、前記流路を通過する前記高温燃焼ガスの流れ方向に関して、前記ライナの下流に配置されており、前記高温燃焼ガスの流れ方向により軸線方向が規定され、
前記フロー調整部材は、前記流路構造および前記フロースリーブのうちの一方に取り付けられ、前記流路構造および前記フロースリーブのうちの他方の近接領域内まで延在しているが、該他方とは結合されておらず、
前記フロー調整部材は、フレームと、該フレームに取り付けられた複数のパネルを有しており、
前記複数のパネルは、空気が前記通路に至る途上で該複数のパネルを通過できるように構成されており、
前記通路に入る空気の少なくとも大部分は前記パネルを通過し、
前記フロー調整部材を前記流路構造および前記フロースリーブの一方から外すことなく、前記パネルの取り外しおよび交換が可能であるように、前記パネルが前記フレームに着脱可能に取り付けられている
ことを特徴とする、ガスタービンエンジン内の燃焼器。
【請求項12】
前記トランジションアセンブリはさらに、前記トランジションダクトと結合された環状のトランジションリングを有しており、
前記フロー調整部材は、該トランジションリングに取り付けられた環状の部材を有している、
請求項11記載の燃焼器。
【請求項13】
前記フロー調整部材はさらにフランジを有しており、前記フランジが前記フロースリーブと共に封止部を形成して、前記フランジと前記フロースリーブとの間からの漏出を実質的に防止するように、前記フランジは、前記フレームから延在し前記フロースリーブと半径方向でオーバラップして前記フロースリーブに近接しているが、前記フロースリーブとは結合されておらず、
前記主燃焼ゾーン内で燃焼させるために通路に入る実質的にすべての空気は、前記パネルを通過するか、または前記フランジと前記スリーブとの間から漏出する、
請求項11記載の燃焼器。
【請求項14】
前記パネルは複数の孔を含み、前記パネルを通過して前記通路に入る空気は、前記パネル内の孔を通過する、
請求項11記載の燃焼器。
【請求項15】
個々のパネルをそれぞれ通過して流れる許容空気量をコントロール可能であるように、望ましい孔の構成をもたせて前記パネルをそれぞれ選択可能である、
請求項14記載の燃焼器。
【請求項16】
個々のパネルをそれぞれ通過して流れる許容空気量をコントロール可能であるように、望ましい通気率をもたせて前記パネルをそれぞれ選択可能である、
請求項11記載の燃焼器。
【請求項17】
前記ライナから前記通路へ半径方向で外側に向かって延在する複数の共鳴器ボックスが設けられており、該共鳴器ボックスは、前記通路内の空気を該共鳴器ボックス内の内側容積部に流入させる開口部を含む、
請求項11記載の燃焼器。
【請求項18】
前記ライナは、前記共鳴器ボックスの内側容積部内の空気を前記ライナの内側容積部材に流入させる複数の開口部を含む、
請求項17記載の燃焼器。
【請求項19】
前記フロー調整部材の上流で前記ライナから前記フロー調整部材の近接領域まで、半径方向で外側に向かって延在する複数の共鳴器ボックスが設けられており、該共鳴器ボックスは、該共鳴器ボックス内の内側容積部に空気を流入させる開口部を含む、
請求項11記載の燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンの燃焼器に設けられたフロー調整部材に関する。このフロー調整部材には複数のパネルが含まれており、燃焼器内で燃料と共に燃焼されるに至る途上で空気がこれらのパネルを通過して流れる。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの動作中、空気は、圧縮機セクションにおいて圧縮され、ついで燃料と混合され、燃焼セクションにおいて燃焼して高温燃焼ガスが発生する。カン・アニュラ型ガスタービンエンジンの場合、燃焼セクションは、環状に配列された複数の燃焼器から成り、これらの燃焼器は場合によっては「カン」とも呼ばれ、各燃焼器がエンジンのタービンセクションへ高温燃焼ガスを供給する。さらにタービンセクションにおいて、高温燃焼ガスが膨張させられて、燃焼ガスからエネルギーが取り出され、発電に利用される出力パワーが供給される。
【0003】
発明の概要
本発明の第1の観点によれば、ガスタービン内に燃焼器が設けられており、この燃焼器は、主燃焼ゾーンを規定する内側容積部材を含むライナと、燃料を主燃焼ゾーンに供給する燃料噴射システムと、半径方向でライナの外側に配置されたフロースリーブとを有している。フロースリーブはライナと共に、燃料噴射システムから送出された燃料と混合されるに至る途上で空気が流れる通路を規定しており、この場合、主燃焼ゾーン内で混合物が燃焼して、高温燃焼ガスが発生する。さらに燃焼器は、トランジションダクトを含むトランジションアセンブリを有している。この場合、トランジションダクトは、燃焼器から排出された高温燃焼ガスがエンジンのタービンセクションへ向かう流れ方向に関して、ライナの下流に配置されており、この高温燃焼ガスの流れ方向によって軸線方向が規定される。さらに燃焼器は、ライナとトランジションアセンブリのうち少なくとも一方に取り付けられたフロー調整部材も有しており、このフロー調整部材は、フロースリーブの近接領域内まで延在しているが、フロースリーブとは結合されていない。フロー調整部材は少なくとも1つのパネルを備えており、このパネルは、空気が通路に至る途上で少なくとも1つのパネルを通過できるように構成されている。この場合、主燃焼ゾーン内で燃焼させるために通路に入る空気の少なくとも大部分が、少なくとも1つのパネルを通過する。
【0004】
本発明の2番目の観点によれば、燃焼器がガスタービンエンジン内に設けられており、この燃焼器は、フロースリーブと、燃料噴射システムと、燃焼器からエンジンのタービンセクションへ高温燃焼ガスを搬送する流路を規定する流路構造とを備えている。この流路構造は、ライナとトランジションアセンブリとを含む。ライナは、主燃焼ゾーンを規定する内側容積部材を含み、半径方向でフロースリーブの内側に配置されている。ライナはフロースリーブと共に、燃料噴射システムから送出された燃料との混合に至る途上で空気が流れる通路を規定しており、この場合、主燃焼ゾーン内で混合物が燃焼して、高温燃焼ガスが発生する。トランジションアセンブリはトランジションダクトを含んでおり、このトランジションダクトは、流路を通過する高温燃焼ガスの流れ方向に関して、ライナの下流に配置されており、この高温燃焼ガスの流れ方向によって軸線方向が規定される。燃焼器はさらにフロー調整部材を有しており、このフロー調整部材は、流路構造とフロースリーブのうち一方の部材に取り付けられており、流路構造とフロースリーブのうち他方の近接領域内まで延在しているが、この他方の部材とは結合されていない。フロー調整部材は、フレームと、このフレームに取り付けられた複数のパネルとを含み、これらのパネルは、空気が通路に至る途上でこれらのパネルを通過できるように構成されている。通路に入る空気の少なくとも大部分は、これらのパネルを通過する。さらにこの場合、流路構造とフロースリーブのうちの一方からフロー調整部材を外さなくても、パネルの取り外しと交換が可能であるように、それらのパネルはフレームに着脱可能に取り付けられている。
【0005】
本明細書に続いて最後に特許請求の範囲が記載されており、これは本発明を明確に表すものであり、その権利範囲をはっきりと主張しているが、添付の図面を参照した以下の説明からも、本発明の理解が深まるであろう。なお、図中、同等の部材には同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の1つの実施形態による複数の燃焼器を含むガスタービンエンジンの側面を部分的に示す断面図
図2図1に示したエンジンに含まれる燃焼器の一部分を示す斜視図であって、本発明の1つの観点によるフロー調整部材を含む燃焼器を示す図
図3図2に示した燃焼器とフロー調整部材の一部分を示す側面横断面図
図4図2および図3に示したフロー調整部材の組み立て中に用いられる1つのステップを示す斜視図
図5】本発明の別の実施形態によるフロー調整部材を含む燃焼器の一部分を示す側面横断面図
図6】本発明の別の実施形態によるフロー調整部材を含む燃焼器の一部分を示す側面横断面図
図7】本発明の別の実施形態によるフロー調整部材を含む燃焼器の一部分を示す側面横断面図
図8】本発明の別の実施形態によるフロー調整部材を含む燃焼器の一部分を示す側面横断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
有利な実施形態に関する以下の詳細な説明では、それらの実施形態の一部を成す添付の図面を参照するが、図面には、限定のためではなく例示のために、本発明を実施可能な特別な有利な実施形態が示されている。なお、他の実施形態を採用してもよいし、本発明の着想および範囲を逸脱することなく、変更を加えることができるのは自明である。
【0008】
図1には、本発明に従って構成されたガスタービンエンジン10が示されている。エンジン10には、圧縮機セクション12と、複数の燃焼器16から成る燃焼器アセンブリCAを備えた燃焼セクション14と、タービンセクション18とが含まれている。なお、本発明による燃焼器アセンブリCAは、好ましくは環状に配列された複数の燃焼器16から成り、これらの燃焼器16は、エンジン10内部の軸線方向を規定するエンジン10の長手軸LAを中心に配置されている。このような構成は一般に、「カン・アニュラ型燃焼器アセンブリ」と呼ばれる。
【0009】
圧縮機セクション12は吸入空気を取り込んで圧縮し、それらの空気の少なくとも一部分は、燃焼器16へ供給するために燃焼器シェル20へと案内される。燃焼器シェル20内の空気のことを、以下では「シェル空気」と称する。圧縮された空気の残りの部分は、エンジン10内の様々なコンポーネントを冷却するために、圧縮機セクション12から取り出すことができる。たとえば、圧縮された空気を圧縮機セクション12から逃がして、タービンセクション18内のコンポーネントへ供給することができる。
【0010】
圧縮空気が燃焼器シェル20から燃焼器16に入ると、この空気は燃料と混合され、主燃焼ゾーンCZ内で着火されて高温燃焼ガスが発生し、このガスは個々の燃焼器16内を乱流として著しく高い速度で流れる。ついで各燃焼器16内の燃焼ガスは、個々のトランジションダクト22(図1には1つのトランジションダクト22にしか示されていない)を通過してタ―ビンセクション18へ流れ、燃焼ガスはこのセクションで膨張し、そこからエネルギーが取り出される。燃焼ガスから取り出されたエネルギーの一部分は、タービンロータ24を回転させるために利用される。タービンロータ24は、長手軸LAに沿って軸線方向でエンジン10を貫通して延在する回転可能なシャフト26に平行に延在している。
【0011】
図1に示されているように、個々のエンジンセクション12,14,18を収容するために、エンジンケーシング30が設けられている。燃焼セクション14を取り囲むケーシング30の一部分は、燃焼器シェル20を規定するケーシング壁32から成り、つまり燃焼器シェル20によって、燃焼セクション14を取り囲むケーシング30の一部分中の内側容積部が規定される。
【0012】
次に図2および図3を参照しながら、図1に示した燃焼器アセンブリCAの複数の燃焼器のうち1つの燃焼器16と、燃焼器16の燃焼ゾ―ンCZへシェル空気を供給するためのフロー調整部材40について説明する。なお、図2および図3には、ただ1つの燃焼器16とフロー調整部材40だけしか示されていないけれども、燃焼器アセンブリCA内の残りの燃焼器16にも、図2および図3に示して説明するものと同様のまたは同一のフロー調整部材40が含まれる。
【0013】
燃焼器16には、フロースリーブ42とライナ48が設けられており、ライナ48は、高温作動ガスを発生させるために燃料とシェル空気とを混合して燃焼させる燃焼ゾーンCZ図3参照)を規定する内側容積部材48Aを有している。さらに燃焼器16には、トランジションダクト22を含むトランジションアセンブリ50と、半径方向でトランジションダクト22の外側に延在する環状部材を含むトランジションリング54と、燃焼ゾーンCZに燃料を供給するための燃料噴射システム56(図1参照)が設けられている。トランジションダクト22は、高温作動ガスをタービンセクション18へ供給するために、ライナ48と結合されており、つまり図3に示されているように、トランジションダクト22は、燃焼器16から排出された高温燃焼ガスがタービンセクション18へと向かう流れ方向FDCGに関して、ライナ48の下流に配置されている。この場合、高温燃焼ガスの流れ方向FDCGによって軸線方向が規定される。なお、ここではライナ48とトランジションアセンブリ50をまとめて「流路構造FPS」と称し、この流路構造FPSによって、高温燃焼ガスを燃焼器16からエンジン10のタービンセクション18へと搬送する高温燃焼ガスの流路が規定される。
【0014】
さらに図3を参照すると、図示の実施形態におけるフロースリーブ42は、一般に円柱状の部材から成り、この部材によって、燃焼ゾーンCZへ供給すべきシェル空気が通過して流れる通路60に対する外側の境界が規定される。フロースリーブ42は、このフロースリーブ42とライナ48との間に半径方向で通路60が規定されるように、半径方向でライナ48の外側に配置されている。フロースリーブ42は、燃焼器16の頭端部16Aのところでエンジンケーシング32に取り付けられた第1端部42A(図1参照)と、第1端部42Aとは反対側の第2端部42Bとを有する。
【0015】
図示の実施形態の場合、燃料噴射システム56は、中央パイロット燃料噴射器と、このパイロット燃料噴射器の周囲に環状に配列された主燃料噴射器とを有している(図1参照)。ただし本発明の着想および範囲を逸脱することなく、燃料噴射システム56がこれとは別の構成を有するようにしてもよい。パイロット燃料噴射器および主燃料噴射器はそれぞれ、エンジン10の動作中、燃焼ゾーンCZへ燃料を供給する。
【0016】
さらに図2および図3を参照すると、流路構造FPSとフロースリーブ42との間において半径方向に、フロー調整部材40が配置されている。図示の実施形態の場合、フロー調整部材40は、トランジションリング54からフロースリーブ42に向かって延在する環状部材を有しており、この部材はフロースリーブ42の第2端部42Bに接近しているが、フロースリーブ42とは結合されていない。ここで述べておくと、フロー調整部材40を、トランジションリング54からではなく、流路構造FPSの他のコンポーネントから延在させてもよい。たとえばフロー調整部材40を、図6および図7に示されている後述の実施形態のようにライナ48の一部分から、またはトランジションダクト22から、フロースリーブ42に向かって延在させてもよいし、あるいはフロー調整部材40を、図5に示されている後述の実施形態のように、フロースリーブ42から流路構造FPSに向かって延在させてもよい。
【0017】
フロー調整部材40は、通路60内に入るシェル空気の入口を規定するものであり、トランジションリング54に固定されそこから延在するフレーム70と、このフレーム70内に着脱可能に取り付けられた複数の交換可能なパネル72とを有している(ただし図2においてパネル72の半径方向で内側に配置された構造が見えるように、図2ではパネル72のいくつかが取り外されている)。本発明の1つの観点によれば、パネル72は、空気が通路60に至る途上でそれらのパネル72を通過して流れるように構成されている。この場合、各パネル72は、個々のパネル72を通過して流れる許容空気量をコントロールできるように、望ましい通気率をもたせて選択することができる。図4を参照すると、パネル72は、それらのパネル72がフレーム70内に収容されるように、パネル72を通常は軸線方向にスライドさせることによって、フレーム70内に着脱可能に取り付けられる。この場合、フレーム70をトランジションリング54から外さずに、さらにはトランジションリング54をトランジションダクト22から外さずに、パネル72を取り外して交換することができる。
【0018】
図2図4に示した実施形態によれば、パネル72は複数の孔74を有しており、パネル72を通過して通路60に入るシェル空気は、これらの孔74を通過する。本発明の1つの観点によれば、通路60に至る途上で個々のパネル72を通過して流れる許容空気量をコントロールできるように、望ましい孔の構成をもたせて各パネル72を選択することができる。個々のパネル72を通過する許容空気量を制御するために、たとえば孔74のサイズ、形状、配置および/または配向を変更することができる。なお、図示の実施形態におけるパネル72は、通常は円形の孔7を有しているけれども、空気を通過させることのできる別の構成を備えたパネルを用いてもよく、たとえば楕円形の孔、スロット、メッシュパネル、穿孔パネル、またはワイヤが封入された圧延された薄板パネルを用いてもよい。さらにここで述べておくと、フロー調整部材40に含まれるパネル72がすべて、同じ孔の構成を備えていなくてもよい。つまり、これらのパネル72のうちの1つまたは複数のパネルが、残りのパネル72とは異なる孔の構成を有するようにしてもよい。
【0019】
図2および図3に示されているように、フロー調整部材40はさらにフランジ78を有しており、これはフレーム70から延在し、半径方向でフロースリーブ42と重なり合っている。フランジ78は、フロースリーブ42の第2端部42Bに接近しているが、フロースリーブ42とは結合されておらず、フランジ78とフロースリーブ42とが共働して、それらの間の漏れを実質的に防ぐための封止部が形成されるように構成されている。したがって、主燃焼ゾーンCZ内で燃焼させるために通路60に入るシェル空気の少なくとも大部分は、パネル72における孔74を通過するけれども、主燃焼ゾーンCZ内で燃焼させるために通路60に入る実質的にすべてのシェル空気は、パネル72における孔74を通過するか、または、フランジ78とフロースリーブ42の第2端部42Bとの間で漏出する。なお、1つまたは複数のパネル72を交換すべき場合に、フランジ78を容易に取り外せるように、フランジ78をボルトでフレーム70に締結するのが好ましい。
【0020】
引き続き図2および図3を参照すると、燃焼器16にはさらに複数の共鳴器ボックス80が設けられており、これらはライナ48から半径方向で外側に通路60に向かって延在している。図2および図3の実施形態の場合、共鳴器ボックス80は、通路60へ向かうシェル空気の流れ方向FDSAに関して、フロー調整部材40の下流に配置されている(図3参照)。ただし、図5に示されている後述の実施形態のように、シェル空気の流れ方向FDSAに関して、フロー調整部材40の上流に配置してもよい。
【0021】
共鳴器ボックス80には開口部82が設けられており(図2参照)、これによって通路60内の空気の一部分を、共鳴器ボックス80内の内側容積部84に流すことができる。ついで共鳴器ボックス80の内側容積部84における空気は、ライナ48に形成された開口部86を介して、ライナ48の内側容積部材48Aに流入する(図3参照)。共鳴器ボックス80に入って通過するシェル空気の一部分の流れにより、当業者には明らかであるように、燃焼器内16内の振動が減衰する。
【0022】
エンジン10の動作中、上述のように圧縮機セクション12から燃焼器シェル20に流れ込んだシェル空気は、燃焼器シェル20からフロー調整部材40のパネル72に設けられた孔74を通過して、通路60に入る。ここで判明したのは、燃焼器16内のいくつかのコンポーネントたとえばフィードパイプ、支持脚部など(図示せず)が、1つまたは複数のパネル72に対応する位置において、通路60内へ搬送される有効シェル空気量に影響を及ぼす可能性がある、ということである。したがって本発明によれば、各パネル72を通過する許容シェル空気量をコントロールして、各パネル72を介して通路60にほぼ均等なシェル空気量を流入させるように構成できるよう、望ましい通気率をもたせてパネル72各々を選択することができる。パネル72を介して通路60中へ流入するほぼ均等なシェル空気流量を発生させることが有利である理由は、このようにすることで、主燃料噴射器各々に対し実質的に等しい空気流パターンが得られるからであり、その結果、いっそう強く集束されて制御された燃焼ガスが各燃焼器16内に生成されるようになるからである。
【0023】
当業者に自明であるように、共鳴器ボックス80は、特定の音響周波数を抑圧するように調整されている。燃焼器16内には、限られた個数の共鳴器ボックス80のためのスペースしかないので、最もリスクが高い周波数だけが抑圧のために選択され、その際、共鳴器の調整は、個々の共鳴器ボックス80各々の内側容積部84内の内部圧力の調整、および内側容積部84のサイズの選定によって行われ、さらにライナ48内に形成される開口部86のサイズ設定によっても行われる。この実施形態の場合、共鳴器ボックス80は、通路60内へ流入するシェル空気の流れ方向FDSAに関して、フロー調整部材40の下流に配置されているので、各共鳴器ボックス80が設計された調整パラメータに従い機能できるように、ほぼ均等なシェル空気量の圧力を共鳴器ボックス80各々に供給することができる。
【0024】
これらのことに加え、フレーム70をトランジションリング54から外さずに、さらにトランジションリング54をトランジションダクト22から外さずに、パネル72をフロー調整部材40から取り外すことができるので、パネル72の交換に関して効率が高まる。これらのパネル72は、個々のパネル72の損傷により、または上述のように通気率調整のために、交換可能である。
【0025】
しかも、この実施形態によるフロー調整部材40は、トランジションアセンブリ50と、つまりトランジションリング54と結合されているが、フロースリーブ42またはライナ48とは結合されていないので、熱成長量が異なることに起因してこれらの個々のコンポーネントに発生する内部応力が低減され、またはその発生が回避される。つまりエンジン10の動作中、フロースリーブ42、ライナ48、およびトランジションダクト54は、それぞれ異なるように熱膨張および熱収縮する可能性がある。これは少なくとも部分的に、ライナ48の内側容積部材48Aにおいて規定される主燃焼ゾーンCZ内に高温燃焼ガスが発生することに起因する。したがって、高温燃焼ガスをエンジン10のタービンセクション18へ搬送するライナ48とトランジションダクト54は、エンジン動作中、高温燃焼ガスに直接晒されないフロースリーブ42よりも著しく高い温度に達する。さらにフロースリーブ42とライナ48とトランジションダクト54は、熱膨張係数がそれぞれ異なる材料から形成されている場合もある。フロースリーブ42とライナ48とトランジションダクト54の熱膨張係数と動作温度がそれぞれ異なることから、エンジン動作中、それらのコンポーネントの熱膨張および熱収縮の率と量がそれぞれ異なったものとなる可能性がある。本発明のこの実施形態によるフロー調整部材40は、トランジションアセンブリ50とは結合されているが、フロースリーブ42またはライナ48とは結合されていないので、さもなければそれぞれ異なる率と量で熱膨張するそれらのコンポーネントに起因する内部応力によって、それらのコンポーネント相互間の引き合い/押し合いが生じてしまうけれども、本発明によればこのような内部応力は実質的に低減または回避される。
【0026】
シェル空気がフロー調整部材40を通過して通路60に入ると、フロースリーブ42の第2端部42Bから燃焼器16の頭端部16Aへ向かう流れ方向FDSAで、つまりタービンセクション18から圧縮機セクション12へ向かう方向で、通路60を通過して空気が流れる。通路60の一方の端部にある燃焼器16の頭端部16Aに空気が到達すると、空気はおおよそ180°方向転換して、燃焼器16の頭端部16Aから離れる方向で、つまり圧縮機セクション12からタービンセクション18へ向かう方向で、燃焼ゾーンCZ内に流入する。空気は、噴射システム56により供給される燃料と混合されて燃焼し、既述のように高温作動ガスが発生する。
【0027】
次に図5を参照すると、この図には、本発明の別の実施形態によるフロー調整部材140が例示されている。図中、図1図4を参照してこれまで述べてきた構造と類似の構造には、同じ数字に100を加えた参照符号が用いられている。ただしここで図5に関しては、図1図4を参照しながらこれまで説明してきた燃焼器16のコンポーネントとは異なる燃焼器116のコンポーネントについてのみ、説明することにする。
【0028】
この実施形態によれば、フロー調整部材140は、フロースリーブ142の第2端部142Bから流路構造FPSに向かって延在しているが、流路構造FPSとは結合されていない。したがって、図1図4の実施形態を参照しながらこれまで説明してきたような熱成長の問題は、この実施形態によるフロー調整部材140によって低減または回避されることになる。
【0029】
さらにこの実施形態によるフロー調整部材140は、複数のパネル172を支持するフレームも有している(この実施形態では図示せず)。図1図4の実施形態を参照しながらこれまで説明してきたように、望ましい通気率をもたせて、これらのパネル172をそれぞれ選択することができる。
【0030】
次に図6および図7を参照すると、そこには本発明の他の実施形態によるフロー調整部材240,340が例示されている。図中、図1図4を参照してこれまで述べてきた構造と類似の構造には、図6では同じ数字に200を加えた参照符号が、図7では300を加えた参照符号が、それぞれ用いられている。ただしここで図6および図7に関しては、図5を参照した上述の燃焼器116のコンポーネントとは異なる燃焼器216,316のコンポーネントについてのみ、説明することにする。また、図6および図7では見やすくするため、燃料噴射システム256は取り除かれている。
【0031】
この実施形態によれば、フロー調整部材240,340が個々のライナ248,348に有効に取り付けられるように、ただしフロースリーブ242,342とは結合されないように、フロー調整部材240,340がライナ248,348の延長部EPからフロースリーブ242,342に向かって延在している。したがって、図1図4の実施形態を参照しながらこれまで説明してきたような熱成長の問題は、この実施形態によるフロー調整部材240,340によって低減または回避されることになる。
【0032】
さらに、これらの実施形態による共鳴器ボックス280,380は、個々の通路260,360へ流入するシェル空気の流れ方向FDSAに関して、個々のフロー調整部材240,340の上流で、ライナ248,348から半径方向で外側に延在している。これらの実施形態による共鳴器ボックス280,380それぞれに供給されるシェル空気量は、上述の図1図5の実施形態のようには個々のフロー調整部材240,340によって精密にコントロールできないけれども、これらの実施形態による共鳴器ボックス280,380それぞれに供給されるシェル空気の量は、フロー調整部材を設けなかった場合よりは精密にコントロールすることができる。
【0033】
この実施形態によるフロー調整部材240,340は、複数のパネル272,372を支持するフレーム270,370も有している。図1図4の実施形態を参照しながらこれまで説明してきたように、望ましい通気率をもたせて、これらのパネル272,372をそれぞれ選択することができる。
【0034】
次に図8を参照すると、この図には、本発明の別の実施形態によるフロー調整部材440が例示されている。図中、図1図4を参照してこれまで述べてきた構造と類似の構造には、同じ数字に400を加えた参照符号が用いられている。ただしここで図8に関しては、図1図4を参照した上述の燃焼器16のコンポーネントとは異なる燃焼器416のコンポーネントについてのみ、説明することにする。また、図8では見やすくするため、燃料噴射システム456は取り外されている。
【0035】
この実施形態によれば、フロー調整部材440がライナ448に有効に取り付けられるように、ライナ448の延長部EPから軸線方向に延在し周方向に間隔をおいて配置されたサポートスピンドルSSが、フロー調整部材440に設けられている。なお、サポートスピンドルSSを、本発明の着想および範囲を逸脱することなく、流路構造FPSにおいてライナ448とは異なるコンポーネントから延在させることができる。サポートスピンドルSSは、フロースリーブ442に隣接するフロー調整部材440のフレーム470を、共鳴器ボックス480の上流で構造的に支持する。上述の実施形態と同様に、フロー調整部材440は、流路構造FPSとフロースリーブ442のうちの一方とだけしか結合されておらず、つまりこの実施形態では、フロー調整部材440はライナ448と結合されているが、フロースリーブ442とは結合されていない。したがって、図1図4の実施形態を参照しながらこれまで説明してきたような熱成長の問題は、この実施形態によるフロー調整部材440によって低減または回避されることになる。
【0036】
なお、図2図4および図6図8に示したフロー調整部材40,240,340,440は、流路構造FPSから延在し、図5に示したフロー調整部材140は、フロースリーブ142から延在しているけれども、これらの実施形態をこれとは逆に構成してもよく、その場合、図2図4および図6図8に示したフロー調整部材40,240,340,440を、フロースリーブ42,242,342,442から延在させることができ、図5に示したフロー調整部材140を、流路構造FPSから延在させることができる。
【0037】
これまで本発明の特別な実施形態について例示して説明してきたけれども、当業者に自明のとおり、本発明の着想および範囲を逸脱することなく、それらとは異なる様々な変更や変形を行うことができる。したがって添付の特許請求の範囲においては、本発明の範囲内にあるそのような変更や変形すべてをカバーすることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8