(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
親作業車の実際の走行位置に基づいて順次目標走行位置を決定し、その目標走行位置を目指して子作業車を操縦する車両制御システムが、特許文献1から知られている。この車両制御システムでは、親作業車に対して設定されたX(経度)方向とY(緯度)方向のオフセット量を維持するように子作業車を親作業車に追従させる制御モードや親作業車の走行軌跡を作業幅分だけ平行移動させることによって得られる走行経路を目標走行経路として子作業車を親作業車に追従させる制御モードなどが開示されている。ここでは、作業車の走行位置はGPS(全地球測位衛星システム)を用いて取得しているが、GPSによる走行位置情報に基づくトラクタの無人操縦制御技術は特許文献2に詳しく説明されている。
【0003】
特許文献1による追従制御では、広大な作業地における作業を意図しており、畦等によって境界づけられた比較的狭い面積の田畑などを作業地とする作業は意図されていない。そのような田畑などで行われる代表的な刈取り作業では、まず畦等の境界に沿って周回作業を行う。続いて、この周回作業によって生み出された既作業領域を作業車の転回用エリアとして用いる転回(180度方向転換)走行を挟んで、往路作業走行と復路作業走行を繰り返すことで、隙間なく、確実に作業地全体の対地作業を完了する。また、田植え作業などでは、畦等の境界に沿った周回領域だけを残しておいて、最後にこの周回領域の作業を行う。いずれにせよ、実質的な作業においては、往復の対地作業走行とその間での転回走行を繰り返すことになるが、転回走行が考慮されていない特許文献2に開示されているような追従モードでは、転回走行の追従が困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実情に鑑み、作業走行と転回走行とが混在する対地作業形態において効果的に機能する作業車協調システムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
親作業車とこの親作業車に追従する無人操縦式の子作業車とにより対地作業を行う、本発明による作業車協調システムは、前記親作業車の位置を検出する親位置検出モジュールと、前記子作業車の位置を検出する子位置検出モジュールと、前記親作業車の位置から前記親作業車の走行軌跡を算定する親走行軌跡算定部と、転回エリアにおける1つの作業走行から次の作業走行へ移行するための前記親作業車の転回走行を検知する転回検知部と、前記親作業車の対地作業幅及び前記子作業車の対地作業幅と、前記親作業車の作業走行軌跡と、前記子作業車の位置とに基づいて前記子作業車の作業走行時の目標走行位置を算定する作業走行目標算定部と、前記親作業車の対地作業幅及び前記子作業車の対地作業幅と、前記親作業車の転回走行開始位置と転回走行終了位置に基づいて前記子作業車の前記転回エリアにおける転回走行経路を算定し、前記転回走行経路に基づいて転回走行時の目標走行位置を算定する転回走行目標算定部と、前記目標走行位置に基づいて前記子作業車を無人操縦する操縦制御部とを備え
、前記子作業車の位置からの前記子作業車の走行軌跡を算定し、前記親作業車の走行軌跡と前記子作業車の走行軌跡とに基づいて対地作業残し領域の位置を算定する。
【0007】
この構成によれば、両端で転回走行を挟んだ往路と復路での作業走行の繰り返しで対地作業を行う場合、作業走行時の子作業車は、自身の位置と先行する親作業車の走行軌跡に基づいて親作業車の対地作業幅と子作業車の対地作業幅を考慮して作業走行のために算定された目標走行位置を制御目標として操縦制御部によって無人操縦される。これにより実質的には、親作業車の対地作業幅と子作業車の対地作業幅とを足し合わせた対地作業幅での対地作業が実現する。追従制御誤差を考慮して、親作業車と子作業車の対地作業幅に多少のオーバーラップ領域が設定される。転回走行時の子作業車は、親作業車との間の位置関係あるいは親作業車の転回走行時の走行軌跡とは関係なく、親作業車の対地作業幅及び子作業車の対地作業幅は考慮しなければならないが、親作業車の転回走行開始位置と転回走行終了位置とから算定された転回走行経路に基づいて走行する。つまり、親作業車の走行軌跡に依存しない適切な転回走行経路に基づいて目標走行位置が算定され、その目標走行位置を用いて無人操縦される。これにより、転回エリアの奥行が必要以上に長くしなければならないといった問題が回避される。
なお、親作業車は、作業地に存在する障害物の回避、あるいは複雑な作業地形状などを考慮すると、有人操縦式が好ましいが、プログラム制御やリモコン制御を用いた無人操縦式を親作業車に対して用いてもよい。
【0008】
転回走行は対地作業とは直接関係しないので、子作業車のための転回走行経路はその始点と終点が設定されているとある程度自由に算定することができるが、転回エリアの外側境界が畦や境界壁などであることを考慮すると、作業装置を含む作業車の外側軌跡がその転回エリアの奥行を超えないようにすることが重要である。このため、前記転回走行目標算定部は、前記転回エリアの奥行を規制条件として前記転回走行経路を算定するように構成することが好ましい。
【0009】
子作業車の転回走行から作業走行への移行時の追従性を良くするために、本発明の好適な実施形態では、前記子作業車の転回走行の終了が前記転回エリア内で行われ、前記親作業車の作業走行軌跡に基づく前記子作業車の追従が作業走行に先立って行われる。つまりこの実施形態では、実際に親作業車が転回走行を終了した時点(作業走行開始点)に対応する転回終了位置の手前で、転回走行を止めて親作業車への追従を行うことで迅速な追従を実現している。
【0010】
親作業車の転回走行が終了して作業走行が開始されない限り、子作業車の転回走行終了点(作業走行開始点)を算定することができない。したがって、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記親作業車の転回走行中に前記子作業車が前記転回エリアに進入することが禁止されている。つまり、親作業車の転回走行中に子作業車が転回エリアに達した場合には子作業車がその位置で停止して親作業車が転回走行を終了するまで待機する。
【0011】
本発明では、親作業車及び子作業車の走行軌跡が得られる。それぞれの走行軌跡とそれぞれの対地作業幅から対地作業が施された領域を把握できるので、逆に対地作業が施されなかった領域を把握できる。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記子作業車の位置から前記子作業車の走行軌跡を算定する子走行軌跡算定部と、前記親作業車の走行軌跡と前記子作業車の走行軌跡とに基づいて対地作業残し領域の位置を算定する作業残し位置算定部が備えられている。
【0012】
親作業車の転回走行の検知はその走行軌跡から判断することができるが、作業車が耕耘装置(対地作業装置)を装着したトラクタなどの場合、転回走行時には耕耘装置(対地作業装置)を上昇させるという作動特性を利用して、転回走行を検知することが可能である。このような作業車に好適な実施形態として、前記転回検知部が、対地作業を行う対地作業装置の非作動状態に基づいて前記親作業車の転回走行を検知する構成が提案される。
【0013】
先行する親作業車に子作業車を追従させるための機能部は、できるだけ1つのコントロールユニットに収めることが望ましい。この目的のため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記子位置検出モジュールと前記操縦制御部とが前記子作業車に搭載され、前記親位置検出モジュールと、前記親走行軌跡算定部と、前記転回検知部と、前記作業走行目標算定部と、前記転回走行目標算定部とが前記親作業車に搭載され、前記子作業車と前記親作業車とが相互にデータ伝送、好ましくは無線データ伝送可能に接続されている。この構成では、子作業車はわずかな改造だけで済むので、複数台の子作業車を用いるシステムには好都合である。
【0014】
また、さらに別の好適な実施形態では、前記子位置検出モジュールと前記操縦制御部とが前記子作業車に搭載され、前記親位置検出モジュールが前記親作業車に搭載され、前記親走行軌跡算定部と、前記転回検知部と、前記作業走行目標算定部と、前記転回走行目標算定部とが、別個のコントロールユニットに構築され、前記コントロールユニットと前記子作業車と前記親作業車とが相互にデータ伝送、好ましくは無線データ伝送可能に接続されている。この構成では、作業車と別個に構成されるコントロールユニットに本発明を実現する主要な機能が構築されているので、親作業車及び子作業車の改造は少なくて済む。親作業車及び子作業車とコントロールユニットとをWiFiや電話回線などを利用してデータ伝送可能に接続すれば、この作業車協調システムをクラウドシステムとして利用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による作業車協調システムの具体的な実施形態を説明する前に、
図1と
図2とを用いてその基本原理を説明する。この作業車協調システムでは、有人操縦式の親作業車1Pとこの親作業車1Pに追従する無人操縦式の子作業車1Cとにより対地作業を行う。
図1で示された作業例では、先行する親作業車1Pの左後方から子作業車1Cが親作業車1Pを追従走行する。対地作業地は畦によって境界づけられている。基本的には、往復直線走行によって対地作業を行うため、最初に、畦に沿った周回作業走行が行われ、これによって作り出された既作業跡が、往路走行と復路走行との間で行われる転回(Uターン)走行のための転回エリアAtとなる。最後に周回作業を行う場合は、予め想定した周回作業軌跡に基づくエリアが転回エリアAtとなる。
【0017】
図1では、親作業車1Pの対地作業幅である親作業幅Wpと子作業車1Cの対地作業幅である子作業幅Wcとは同じであるが、相違してもよい。親作業車1Pと子作業車1CとのX方向の位置ずれ量は、理想的には(親作業幅Wp+子作業幅Wc)/2であるが、追従誤差による作業残しを避けるために、例えば数十cm程度オーバーラップさせている(図中OLで示されている)。親作業車1Pと子作業車1CとのX方向の位置ずれ量は、互いの接触を避けるに十分な距離としている。
【0018】
図1に示された例では、親作業車1Pの走行軌跡である親走行軌跡Tpは、両端の転回エリアAtの間を対地作業しながら直線走行している親作業走行軌跡Tpwと転回エリアでの親転回走行経路Tpuとからなり、運転者による有人操縦によってその軌跡は作り出される。子作業車1Cの走行経路である子走行経路Tcは、両端の転回エリアAtの間を対地作業しながら親作業車1Pを追従する子作業走行経路Tcwと転回エリアでの子転回走行経路Tcuとからなり、無人操縦によってその経路を走行することで子作業車1Cの走行軌跡が作り出される。
【0019】
運転者の操縦結果としての親作業走行軌跡Tpwと、親作業車1Pの対地作業幅Wp及び子作業車1Cの対地作業幅Wcと、子作業車1Cの現位置から、次に到達すべき子作業車1Cの目標走行位置が算定できる。この目標走行位置を目標とする操縦制御により、子作業車1Cは、予め設定した親作業車1Pとの位置関係を保持しながら作業走行する。親作業車1Pの転回エリアAtでの走行である親転回走行軌跡Tpuは運転者の操縦により作り出されるが、運転者は、親作業車1Pの対地作業幅Wp及び子作業車1Cの対地作業幅Wcとを考慮して、次の作業走行に正確に移行できるように操縦する。その際、後続の子作業車1Cは、転回エリアAtにおいては親作業車1Pの親転回走行軌跡Tpuとは無関係に子転回走行経路Tcuを算定し、その子転回走行経路Tcuに基づいて無人制御される。子転回走行経路Tcuは、親作業走行軌跡Tpwの最終位置Epに対応する子作業走行軌跡Tcuの最終位置Ecと、次の親作業走行軌跡Tpwの開始位置Spに対応する子作業走行軌跡Tcwの開始位置Scとをつなぐものであればよい。実際の子転回走行経路Tcuは、転回エリアAtの奥行Dに制限をうけるので、転回エリアAtの奥行Dが規制条件として設定される必要がある。親作業車1Pと子作業車1Cとの協調走行の前に、親作業車1Pが周回作業走行を行い、対地作業済みの転回エリアAtを形成している場合には、この対地作業幅Wpが転回エリアAtの奥行Dとして与えられる。これとは逆に、最初に親作業車1Pと子作業車1Cとの協調走行を行い、その後に親作業車1Pが周回作業走行を行う場合には、対地作業幅Wpを考慮して、転回エリアAtの奥行Dを予め設定しておくとよい。
上記の親作業走行軌跡Tpwにおける最終位置Epと開始位置Spは、親作業走行軌跡Tpwから検知することができるが、転回走行時には対地作業が中断されるような作業車においては、その対地作業の中断開始時期と中断終了時期に基づいて検知することも可能である。
【0020】
親作業車1Pと子作業車1Cには、GPSセンサまたは、方位センサや走行距離センサなどを組み合わせた位置検出センサあるいはそれら両方から構成される位置検出モジュールが備えられており、親作業車1Pと子作業車1Cのリアルタイムの走行位置を検出して記録することができる。親作業車1Pの位置検出データをプロットすることで親作業車1Pの走行軌跡Tpを算定することができ、子作業車1Cの位置検出データをプロットすることで子作業車1Cの走行経路Tcを算定することができる。なお、位置検出データから親作業車1Pの走行軌跡Tpや子作業車1Cの走行軌跡Tcを算定する作業は、リアルタイムではなく、必要な時にバッチ的に、例えば、1日あるいは数日後に行ってもよい。
【0021】
次に、
図2を用いて、有人操縦の親作業車1Pと無人操縦の子作業車1Cとの間のデータの流れを説明する。ここでは、親作業車1Pは、親作業車1Pの位置を示す親位置データと、転回走行の開始時期(作業走行の終了時期)を示す親転回開始データと転回走行の終了時期(作業走行の開始時期)を示す親転回終了データを生成する。子作業車1Cは、子作業車1Cの位置を示す子位置データを生成し、与えられた目標走行位置データに基づいて子作業車1Cを自動操縦する操縦制御機能が備えられている。また、対象となる対地作業地の境界線としての畦の位置や転回エリアAtの奥行Dなどのデータを含む転回エリア情報、親作業車1Pの対地作業幅Wpを示す親対地作業幅データ、子作業車1Cの対地作業幅Wcを示す子対地作業幅データは、作業車協調システムを構築するコントロールユニット(コンピュータシステム)に記録されているが、このコントロールユニットは親作業車1Pまたは子作業車1Cに搭載されてもよいし、あるいは別な場所に配置されてもよい。
【0022】
本システムが稼働すると、所定のサンプリング周期で生成された親位置データから親走行軌跡データが算定される(#a)。作業走行時には、算定された親走行軌跡データと各時点での子位置データとから、親対地作業幅データと子対地作業幅データと前述したオーバーラップOLとを考慮して、作業走行目標位置データが算定される(#b)。この算定された作業走行目標位置データが操縦制御目標値となって、子作業車1Cは親作業車1Pと共同して幅広の対地作業を行うべく無人操縦される(#c)。転回走行時には、親転回開始データと親転回終了データと親位置データとから親作業車1Pの転回走行開始位置データと転回走行終了位置データが算定される(#d)。この算定された両データに親対地作業幅データと子対地作業幅データを考慮して、子転回走行経路データが生成される(#e)。なお、子転回走行経路データの生成時に、転回エリアAtの奥行Dを規制条件として用いることで、子作業車1Cと畦との接触を確実に回避することができる。生成された子転回走行経路データと各時点での子位置データとから転回走行目標位置データが算定される(#f)。この算定された作業走行目標位置データが操縦制御目標値となって、子作業車1Cは、転回エリアAt内で適切な転回走行をすべく無人操縦される(#g)。
【0023】
次に、本発明の作業車協調システムの具体的な実施形態の1つを説明する。この実施形態では、作業車は畦によって境界づけられた田畑を耕耘する耕耘装置を装備した、
図3に示されたトラクタである。親作業車1Pとしての親トラクタ1Pと、子作業車1Cとしての子トラクタ1Cとは、実質的に同形であり、前輪2aと後輪2bとによって支持された車体3の中央部に操縦部30が形成されている。車体3の後部には油圧式の昇降機構4を介して対地作業装置としての耕耘装置5が装備されている。親トラクタ1Pと子トラクタ1Cの操縦部30には、従来通りのステアリングホイールや各種操作レバー、さらに運転者が着座するシートなどが備えられている。本発明の作業車協調システムに基づく追従制御の実行時には、親トラクタ1Pは運転者によって操縦され、子トラクタ1Cは無人操縦される。
【0024】
図4で示すように、この実施形態では、作業車協調システムを構築するための電子コントロールユニットが、親トラクタ1Pに装備される親機コントロールユニット6と子トラクタ1Cに装備される子機コントロールユニット7とに分割されている。親機コントロールユニット6と子機コントロールユニット7とは、互いに無線方式でデータ伝送できるように、通信モジュール60と70を備えている。
【0025】
親機コントロールユニット6は、さらに、親位置検出モジュール61と、親走行軌跡算定部62と、転回エリア記録部63と、転回検知部64と、転回走行管理部65と、子機制御モジュール8などの機能部を備えている。これらの機能部は、ハードウエアとの連携動作を行うこともあるが、実質的にはコンピュータプログラムの起動によって実現する。
【0026】
親位置検出モジュール61は、GPSを利用して、自身の位置つまり親トラクタ1Pの位置を検出する。親走行軌跡算定部62は、親位置検出モジュール61で検出された位置から親トラクタ1Pの走行軌跡を算定する。転回エリア記録部63は、親トラクタ1Pによって対地作業すべき領域の周囲を周回走行して作り出されたエリア、あるいは元から存在する転回可能な用地を転回エリアAtとしてその位置や奥行などの寸法を読み出し可能に記録する。なお、親作業車1Pによる周回作業走行が最初ではなく、最後に行われる場合は、周回作業走行によって作り出される転回エリアAtを記録する必要はないので、この転回エリア記録部63は省くことができる。但し、予め設定される転回エリアAtの奥行Dを、読み出し可能に記録しておく必要はある。転回検知部64は、転回エリアAtにおける1つの作業走行から次の作業走行へ移行するための前記親作業車1Pの転回走行を検知する。耕耘装置5は、作業走行から転回走行に入る時点で上昇され、転回走行から作業走行に入り時点で下降される。この耕耘装置5の昇降は、親トラクタ1Pに搭載された作業装置制御部31からの制御指令による昇降機構4の昇降動作によって実現する。この実施形態では、作業装置制御部31は車載LANを通じて親機コントロールユニット6と接続されており、作業装置制御部31の昇降機構4に対する動作指令は転回走行管理部65によって管理される。したがって、転回検知部64は、昇降機構4に対する上昇指令の出力タイミングで転回走行の開始を判定し、下降指令の出力タイミングで転回走行の終了を判定する。つまり、この実施形態では、転回検知部64は、対地作業を行う耕耘装置の作動状態に基づいて親トラクタ1Pの転回走行を検知するように構成されている。
【0027】
作業走行目標算定部82は、親トラクタ1Pの耕耘幅及び子トラクタ1Cの耕耘幅と、親トラクタ1Pの作業走行軌跡と、子トラクタ1Cの位置とに基づいて、上述した基本原理に基づいて互いの耕耘幅のオーバーラップも考慮して、子トラクタ1Cの作業走行時の目標走行位置を算定する。作業走行目標算定部82で算定された目標走行位置は子機コントロールユニット7に出力される。
【0028】
転回走行目標算定部83は、子トラクタ1Cの転回エリアにおける転回走行経路を所定の転回走行経路演算アルゴリズムに基づいて算定する転回走行経路算定部84を内蔵している。この転回走行経路演算アルゴリズムは、基本的には、親トラクタ1Pの転回走行開始点と転回走行終了点とから算定される子トラクタ1Cのための転回走行開始点と転回走行終了点とを結ぶように子トラクタ1Cの旋回半径を考慮してその走行経路を求めるものであるが、予め設定しておいた旋回走行経路と直線走行経路とを組み合わせてもとめるようなアルゴリズムでもよい。このような走行軌跡演算アルゴリズムはよく知られているので、それを流用することができ、本発明では特定のアルゴリズムが限定されていない。転回走行目標算定部83は、転回走行経路算定部84で算定された転回走行経路と子トラクタ1Cの現在位置とに基づいて目標走行位置を算定して通信モジュール60に出力して、そこから子機コントロールユニット7に送信される。
【0029】
子機コントロールユニット7は、さらに、子位置検出モジュール71と、操縦制御部72を備えている。子位置検出モジュール71は、親位置検出モジュール61と同様に、GPSを利用して自身の位置つまり子トラクタ1Cの位置を検出する。得られた子トラクタ1Cの位置データは通信ジュール70を介して親機コントロールユニット6に送信される。操縦制御部72は、親機コントロールユニット6の子機制御モジュール8から無線送信された走行目標位置に基づいて、子トラクタ1Cの前輪2aの操向や後輪2bの駆動を制御して、子トラクタ1Cを順次設定される目標走行位置に無人操縦する。
【0030】
なお、この実施形態では、親機コントロールユニット6は、さらに子走行軌跡算定部66と作業残し領域算定部67とを備えている。子走行軌跡算定部66は、子位置検出モジュール71から順次出力され送信されてくる子トラクタ1Cの位置から子トラクタ1Cの子走行軌跡を算定する。作業残し領域算定部67は、親走行軌跡算定部62によって算定された親走行軌跡と子走行軌跡算定部66によって算定された子走行軌跡とから、耕耘作業ができていないと推定される対地作業残し領域の位置を算定する。これにより、必要に応じて対地作業残し領域を耕耘することで、信頼性の高い耕耘作業(対地作業)が実現できる。
【0031】
次に、
図5のフローチャートを用いて、この実施形態における親トラクタ1Pと子トラクタ1Cとの協調走行の制御の流れの一例を説明する。その際に実施される親トラクタ1Pと子トラクタ1Cの一方側の転回エリアAtでの転回走行の様子が
図6に示されている。
【0032】
この実施の形態では周回作業走行は最初に行われる。したがって、まず、最初に親トラクタ1Pによる畦に沿った周回作業走行が行われる(#01)。この周回作業走行により転回エリアAuが形成されるので、この転回エリアAuに関する位置などのデータを記録する(#02)。
次いで、親トラクタ1Pによる作業走行(実質的には直線走行)が開始される(#11)。同時にあるいは所定時間遅れて、子トラクタ1Cによる追従作業走行が開始される(#12)。親トラクタ1Pが転回エリアAtに到達すると、耕耘装置5を上昇させ、親トラクタ1Pの転回走行が開始される(#21)。その時点の親トラクタ1Pの位置が、親転回開始位置P1として記録される(#22)。親トラクタ1Pが転回走行し、対地作業エリアAに再び進入すると、耕耘装置5を下降させ、親トラクタ1Pの作業走行が再開される(#23)。その時点の親トラクタ1Pの位置が、親転回終了位置P2として記録される(#24)。親転回開始位置P1及び親転回終了位置P2が記録されると、子トラクタ1Cの子転回開始位置Q1及び子転回終了位置Q2が算定される。対応する図示された転回エリアAtでは、子転回開始位置Q1は、親トラクタ1Pと子トラクタ1Cの横方向の間隔及びオーバラップ量を考慮して、親転回開始位置P1からずらせた位置となる。子転回終了位置Q2は、親転回終了位置P2と子転回開始位置Q1とのの間の位置となり、例えば
図6では中間位置としている。なお、図示されていない、他方の転回エリアTuでは、親転回開始位置P1及び親転回終了位置P2と子転回開始位置Q1及び子転回終了位置Q2との位置関係はちょうど逆となり、子転回終了位置Q2は親転回終了位置P2よりさらに外側の位置で、親トラクタ1Pと子トラクタ1Cの耕耘幅及びそのオーバーラップ量から求められる。
【0033】
子転回開始位置Q1及び子転回終了位置Q2が算定されると子転回開始位置Q1から子転回終了位置Q2に至る子転回走行経路が算定される(#25)。さらに、子転回終了位置Q2の手前で、子トラクタ1Cがほぼ作業走行の方向姿勢に達する位置を追従開始点Qsとして算定する(#26)。つまり、この追従開始点Qsは、ここから親トラクタ1Pへの追従を開始することにより、転回終了位置Q2から始まる子トラクタ1Cの作業走行軌跡が親トラクタ1Pの作業走行軌跡に正確に対応することができる位置である。
【0034】
子トラクタ1Cが子転回開始位置Q1に達すると、子トラクタ1Cの転回走行が開始される(#27)。子トラクタ1Cの転回走行においては、子トラクタ1Cが追従開始点Qsに到達するかどうかがチェックされる(#28)。子トラクタ1Cが追従開始点Qsに到達すると(#28Yes分岐)、子トラクタ1Cの転回走行が終了し、子トラクタ1Cの追従走行、つまり作業走行が再開される(#12へのジャンプ)。
【0035】
なお、親作業車1Pの転回走行が終了して作業走行が開始されない限り、子作業車1Cの転回走行終了点Q2(作業走行開始点)を算定することができないので、このことを考慮して、親作業車1Pと子作業車1Cとの間の距離を設定している。親作業車1Pの転回走行中に子作業車1Cが転回エリアAtに達した場合には子作業車1Cがその位置で停止して親作業車1Pが転回走行を終了するまで待機するような待機制御が組み込まれているが、このフローチャートでは省略されている。
【0036】
さらに、このフローチャートには記載されていないが、常時この協調走行制御の終了指令が入力されたかどうかがチェックされており、協調走行制御の終了指令が入力されると、割り込み処理としてこの協調走行制御の終了処理が行われる。
【0037】
〔別実施の形態〕
(1)本発明による作業車協調システムでは、親トラクタ1Pと子トラクタ1Cの走行軌跡は
図1に示したような走行軌跡に限定されるわけではない。例えば、
図7に示すように、往路作業走行と復路作業走行で、親トラクタ1Pに対する子トラクタ1Cの位置関係が左右方向で逆になるような走行軌跡を採用することも可能である。この走行軌跡では、転回走行軌跡も親トラクタ1Pと子トラクタ1Cとで同じでよいが、転回走行では有人操縦される親トラクタ1Pの位置の変化に、無人操縦の子トラクタ1Cが正確に追従することが難しいので、子トラクタ1Cは独自の転回走行経路を採用したほうが好都合である。
(2)上述した実施形態では、子トラクタ1Cは一台であったが、類似する制御方法で複数台の子トラクタ1Cにも本発明を適用することは可能である。その際、子トラクタ1Cが2台とすれば、2つの追従制御方法が可能である。その1つでは、第1の子トラクタ1Cは、親トラクタ1Pの軌跡に基づいて親トラクタ1Pの作業幅を考慮して追従制御され、第2の子トラクタ1Cは、親トラクタ1Pの軌跡に基づいて、第1の子トラクタ1Cの作業幅も考慮して追従制御される。他の1つでは、第1の子トラクタ1Cは、親トラクタ1Pの軌跡に基づいて追従制御され、第2の子トラクタ1Cは、第1の子トラクタ1Cを親トラクタ1Pとして追従制御される。つまり、子トラクタ1Cが複数台ある場合には、先行する子トラクタ1Cを、親トラクタ1Pとする追従制御も可能である。
(3)上述した実施の形態では、親トラクタ1Pは有人操縦式であったが、この親トラクタ1Pも、プログラム制御方式やリモコン制御方式を採用して、無人運転することも可能である。本発明は、親トラクタ1P、つまり親作業車も無人運転される形態も対象としている。
(4)上述した実施形態では、作業車として耕耘装置5を搭載したトラクタを取り上げたが、耕耘装置5に代えて散布装置や施肥装置など他の作業装置を搭載しても、本発明の特徴を有効に利用することができる。さらにはその他の作業車、例えばコンバイン、田植機、芝刈機、除草機、ブルドーザなどの土木建設機械などにも本発明は適用可能である。また、親作業車と子作業車は同機種でなくてもよい、例えばコンバインと搬送トラックなどの組み合わせでもよい。
(5)対地作業装置が耕耘装置などの場合には、親作業幅Wpと子作業幅Wcとの重なり長さであるオーバーラップOLは、基本的には必須であるが、散布装置や施肥装置などの場合、オーバーラップOLを設けずに、むしろ親作業幅Wpと子作業幅Wcとの間に所定間隔をとる、いわゆるアンダーラップが設定される。したがって、本発明では、オーバーラップOLを設定することは必須ではなく、親作業車1Pと子作業車1Cの互いの経路間隔が所定範囲を保持するような追従制御の実現が重要である。