特許第6385426号(P6385426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385426
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】電池の正負電極端子接続部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/20 20060101AFI20180827BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01M2/20 A
   H01M2/30 B
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-510383(P2016-510383)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2015058907
(87)【国際公開番号】WO2015146976
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年6月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-61185(P2014-61185)
(32)【優先日】2014年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠彦
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−151045(JP,A)
【文献】 特開昭53−120194(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/087472(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/018841(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20
H01M 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を直列に接続するための正負電極端子間に配置されるシート状接続部材であって、該シート状接続部材は、一方の面に正極端子を構成する金属又はその合金から構成される第一層を、他方の面に負極端子を構成する金属又はその合金から構成される第二層を、それぞれ、有し、かつ、厚みが2mm以下であり、該第一層と該第二層は接合されており、その接合面には、金属間化合物のない部分と金属間化合物がある部分が存在し、金属間化合物のない部分が全接合面積の10%以上であり、かつ、該一方の面内と該他方の面内の任意の位置において該第一層と該第二層の両者が該シート状接続部材の厚み方向において存在する、前記部材。
【請求項2】
前記電池はリチウムイオン二次電池である、請求項1に記載の部材。
【請求項3】
前記シート状接続部材の厚みが1mm以下である、請求項1又は2に記載の部材。
【請求項4】
前記第一層を構成する金属又はその合金がアルミニウム又はその合金であり、かつ、前記第二層を構成する金属又はその合金が銅又はその合金である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の部材。
【請求項5】
前記第一層と前記第二層の中間にチタン又はその合金から構成される中間層を有し、該第一層と該中間層と該第二層とが互いに接合されており、その接合面には、金属間化合物のない部分と金属間化合物がある部分が存在し、金属間化合物のない部分が全接合面積の10%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の部材。
【請求項6】
前記シート状接続部材の形状は、縦3〜9mm×横50〜100mmの長方形の平板状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の部材。
【請求項7】
前記シート状接続部材の形状は、縦10〜20mm×横50〜100mmの長方形の平板を、側面から見たときZ字状又はS字状に折り曲げた形状である、請求項1〜のいずれか1項に記載の部材。
【請求項8】
材質1からなる電極及び材質2からなる電極で構成される平行平板異材電極の接合方法であって、一方の面が材質1からなり、他方の面が材質2からなり、該材質1と該材質2が爆発圧着により接合されており、かつ、厚みが2mm以下であるクラッド板を、Z字状又はS字状に折り曲げ、前記材質1の電極及び材質2の電極の間に、同じ材質同士が各々接するように挿入し、該電極及びクラッド板の同じ材質同士を接合することにより、材質1の電極及び材質2の電極を接合する前記方法。
【請求項9】
材質1からなる電極及び材質2からなる電極で構成される平行平板異材電極の接合方法であって、前記材質1からなる電極の、前記材質2からなる電極に隣接する面と反対側の面に、一方の面が材質1からなり、もう一方の面が材質2からなり、該材質1と該材質2が爆発圧着により接合されており、かつ、厚みが2mm以下であるクラッド板を、該クラッド板の材質1からなる面が接するように重ね合せて、接合し、該クラッド板を接合した材質1からなる電極を、前記材質2からなる電極の側へ、該クラッド板の材質2からなる面を外側に向けて、折り曲げ、該材質2からなる電極を前記材質1からなる電極の側へ折り曲げ、該材質2からなる電極とクラッド板の材質2からなる面が接するように重ね合せて、接合することにより、材質1からなる電極及び材質2からなる電極を接合する前記方法。
【請求項10】
前記クラッド板の厚みが0.3mm以上である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記材質1からなる電極及び材質2からなる電極は、リチウムイオン二次電池の正極タブ及び該リチウムイオン二次電池に隣接して配置されるもう一つのリチウムイオン二次電池の負極タブである、請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記クラッド板の異種金属接合面において、金属間化合物のない部分と金属間化合物がある部分が存在し、金属間化合物のない部分が全接合面積の10%以上である、請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記クラッド板と前記電極とを同種材同士で重ね合わせ、該電極側からレーザ照射し、該レーザ照射後のレーザ溶接部の溶け込み深さが該クラッド板の異種金属接合界面にまで到達していない、請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項13のいずれか1項に記載の方法により接合された平行平板異材電極を有する電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池を直列に接続するための正負電極端子間に配置されるシート状接続部材に関する。より詳しくは、本発明は、異種金属が爆発圧着により接合された厚みの薄いシート状の接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、爆薬が爆発する際の瞬間的な高エネルギーを利用して、異種金属を冷間で冶金的に接合させることによる爆発圧着クラッド法により異種金属が接合されたクラッド材(以下、爆発圧着クラッド材ともいう。)が製造されている。
以下、かかる爆発圧着クラッド材の製造方法の概要を説明する。
まず、図1に示すように母材の上に合わせ材を、間隔をもたせて重ね、合わせ材の上に全面に粉末の爆薬をセットする。次に、図2に示すように、爆薬を一端から起爆させ、爆発の高エネルギーにより、合わせ材は、母材面に高速駆動され、衝撃面から液化された金属(メタルジェット)が発生し、メタルジェットが母材及び母材表面の酸化物、窒化物、吸着ガス等を除去する。そして、図3に示すように、活性化された面は高圧で押さえつけられ、両金属の原子間力によって引き寄せられるところまで近づけられ接合される。
爆発圧着は、瞬時(2500m/秒)に完了するので、爆発熱が金属材料に伝わる余裕がないため、純然たる冷間圧着といえ、また、図4に示すように、圧着界面が「さざ波状」を呈することを特徴とする。
【0003】
かかる爆発圧着クラッド材は、例えば、以下の用途に使用されている。
以下の特許文献1には、所望厚さの大型のアルミニウム板の下面に、同じ大きさ位の銅薄板を、鑞付けに代えて爆発圧着(接)法にて接合し、前記接合板より端子羽子板部に相応する単片を切取り、前記切取り単片にアルミニウム線挿入孔を有するアルミニウム圧縮部の一端を溶接することを特徴とする銅板を接合したアルミウム端子の製造方法が開示されている。かかるアルミニウム端子は、発電所又は変電所の電気設備の接続部に用いられるものであり、電池用ではなく、厚み2mmを超え、大型であり、また、2層のシート状でない。
【0004】
また、以下の特許文献2には、アルミニウムブスバーに、爆発圧着法で製造され、圧延によって平面度の良好な銅−アルミニウムクラッド板のアルミニウム層を接合されてなるアルミニウムブスバーが開示されている。同書実施例には、爆発圧着法によって(2+18mm)×1000mm×1000mmの銅−アルミニウムクラッド板を製造し、約100mm/1000mmの歪があったので、シャーリングで500mm巾に切断し、1mm/1000mmの平面度を出し、5mmの板厚に仕上げるために3工程のロール圧延を行い15分で仕上げたことが記載されている。かかるブスバーは、発、変電所設備とアルミニウム送電線との接続部に使用されることを想定している。また、爆発圧着法によるクラッド板は変形が大きく、クラッド板の板厚が厚くなるにしたがって歪矯正作業が困難になると共に要求板厚が確保できなくなったり、銅表面に傷が生じるといった不具合を生じるため、満足できる端子が得られないという問題を解決するために、かかる欠点を改良した厚肉の銅−アルミニウムブスバーを圧延によって提供するものである。このように、特許文献2に記載されたブスバーも、電池用ではなく、厚み2mmを超え、大型であり、また、2層のシート状でもない。
【0005】
また、以下の特許文献3には、銅またはその合金からなる部材とアルミニウムまたはその合金からなる部材とが、チタニウム層を介して、圧延クラッド法、拡散接合クラッド法、爆発圧着クラッド法、及び摩擦接合クラッド法のいずれかにより接合されてなることを特徴とする銅−アルミニウム異種金属継手材が開示されている。引用文献3に記載された発明は、銅とアルミニウムの接合の際またはこれらの直接接合による異種継手を高温にさらした際に発生しやすい(約200℃の比較的低温で生成する)脆弱な金属間酸化物の生成を抑えるために、チタニウムを中間材として挿入することで、均一で良好な特性を有する異種継手を提供するものである。すなわち、引用文献3に記載された発明は、高温熱処理を行った後でも、継手の性能を維持し、十分に信頼できる機械的性能と接合強度と気密性を有する継手を提供するものであり、電池の電極端子接続材ではなく、2層のシート状ではなく、また、厚み2mmを超えることは明らかである。
【0006】
以下の特許文献4には、少なくとも、第一の金属で構成された板状部と、前記第一の金属より融点が高い第二の金属で構成された板状部が、互いに重ねられ、一方の表面に、第一の金属が露出した第一領域と、前記第二の金属が露出した第二領域とが形成されるとともに、他方の表面のうち前記第二領域に対向する領域で前記第二の金属が露出するように形成され、前記第一領域と前記第二領域との境界で、厚さ方法の段差が実質的に存在しないように形成されていることを特徴とする端子接続体が開示されている。また、第一の金属はアルミニウム又はその合金であり、第二の金属は銅、ニッケル、鉄又はそれらの合金であり、第一の金属で構成された板状部と、第二の金属で構成された板状部とが、互いに貼り合わされたクラッド材であること、また、該接続体が複数の電池を接続するためのものであることが記載されている。特許文献4に記載された発明は、端子接続導体を介して電池の端子間等を接続する場合に、端子接続導体を構成する金属と、正極端子又は負極端子を構成する金属の融点が異なることに起因する溶接の困難製性という問題を解決するためになされたものである。かかる接続体は、図5に示すように、電池外装ケースと電池外装ケースから上方向に突出するように設けられた正極端子と負極端子を備えた電池用の端子接続体であり、これを用いて、薄型の組電池の端子を接続固定するための溶接を容易かつコンパクトにすることができると記載されている。接続体の厚みは記載されていないが、組電池の厚みが5mm以下であることから2超〜3mm程度であると思われ、また、一方の表面内と他方の表面内の任意の位置において第一領域と第二領域の両者が接続体の厚み方向において存在するものではなく、第一領域と第二領域との境界が存在する。
【0007】
以下の特許文献5には、電動車両を駆動するモータの電源用の複数の電池セルを金属プレートで接続している組電池が開示され、図6に示すように、該組電池は、正負の電極端子2を異種金属とする複数の電池セル1を備えており、各々の電池セル1の正負の電極端子2は金属製の金属プレート3で接続され、金属プレート3は、電池セル1の一方の電極端子2に接続してなる第1の金属板3Aと他方の電極端子2に接続してなる第2の金属板3Bとを、正負の電極端子2の接続部の間で接合しなるクラッド材としたものが開示されている。かかるクラッド材は単に異種金属を積層したものでなく、その接合面において異種金属が互いに合金状態となって強く結合していると記載されている。電極端子と金属プレートは、レーザ溶接又はナットのより接合されている。金属プレートの厚みは記載されていない。また、記載された金属プレートは、異種金属がプレートの厚み方向ではなく、長さ方向に接合されたものであり、各電極端子の位置においてはいずれか1の金属のみが存在するため、一方の表面内と他方の表面内の任意の位置において2つの異種金属が金属プレートの厚み方向において存在するものではない。
【0008】
以下の特許文献6には、隣接する2つの電池の一方の負極端子と他方の正極端子が、帯状、平板状のバスバーにより電気的に接続される態様が記載されているが、バスバーが爆発圧着クラッド材であることは一切記載されていない。
【0009】
以下の特許文献7には、電気コネクタ、導電体、熱伝導デバイスとして使用される、アルミニウム又はアルミニウム合金と、銅又は銅合金とが、固相接合されたクラッド材が記載されているが、アルミニウムと銅は突合せ又は一部重ね合わせて接合されており、全面接合ではない。また、特許文献7には、使用されるクラッド材の形状や接合形態については一切記載されていない。
【0010】
また、以下の非特許文献1には、アルミニウム及び銅は、電気用材用として広い範囲で使用され、これらの材料間をつなぐ継手部は、ボルト等の機械的な締結では接触抵抗が大きく、また、Al/Cu爆接材は加熱により接合界面に金属間化合物を生成しやすく、これによって接合強度は曲げ強度が低下し、かかる金属の組み合わせでは爆接時においても界面部近傍の熱的影響は避けられず、条件が悪い場合には厚い反応層を形成して必ずしも十分な接合強度が得られない場合があることが記載されている。かかる問題を解決するための手段として、比較的薄いAl板(4mm厚さ)とCu板の組み合わせにおいて爆接実験を行い、Cu中間材の使用が有効であると記載されている。また、導電用異材継手に用いられるAl/Cuクラッドは、電流容量を確保するために、Al,Cuともに20mm程度の厚さが要求されると記載されている。
【0011】
以上のとおり、爆発圧着クラッド材は電極端子接続部材として使用されているものの、厚みが薄いシート状のものは従来使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭48−53280号公報
【特許文献2】特開昭51−20744号公報
【特許文献3】特許第3240211号公報
【特許文献4】国際公開第2010/087472号パンフレット
【特許文献5】特開2011−60623号公報
【特許文献6】特開2012−160339号公報
【特許文献7】特表2013−514188号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】溶接学会論文集 第12巻 第1号 p.77−81(1994)
【非特許文献2】日本金属学会誌第75 巻第3 号(2011)166・172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
例えば、自動車用リチウムイオン二次電池では、大きな容量と低い内部抵抗、高い放熱性能が要求されるため、これらの要求を満足できる積層ラミネートタイプの電池が開発されている。この電池の構造を図7に示す。この電池は正極、セパレータ、負極を交互に積層し、それぞれの電極をタブといわれる金属電極に接続し、アルミラミネートフィルムで構成した容器の中に入れ、電解液を注入してシールした形であり、かかる構成により、軽量、薄型化が可能であり、放熱性に優れ、単純な集電構造により大電流充放電に対応可能であり、サイズや容量の変更が比較的容易であるなどの特徴を持っている。例えば、かかるラミネートタイプの複数のセルを積層し、隣接するセルの正極タブと負極タブを直列に接続する場合に、正極タブがアルミニウムで、負極タブが銅で構成されているため、異種金属同士の接続を確実に行う必要がある。
【0015】
例えば、セルの厚みが10mm以下と薄いものであれば、隣接する正極タブと負極タブの間隔も同じく10mm以下であり、また、正極タブであるアルミニウム板の厚みが0.5mm以下、負極タブの厚みが0.5mm以下、巾が100mm以下である場合に、このような狭い場所で両極間の電気的な接続をどのようにして確実に行うかが品質管理上極めて重要である。
すなわち、例えば、ラミネートタイプのリチウムイオン二次電池のセルを積層する場合、正極材がアルミ薄板、負極材が銅薄板であり材質が異なっている、電池をいくつも直列に接続するので異材接合の箇所が多い、さらに小型化のために接合部のスペースが限られている等の問題がある。
【0016】
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、正負電極との高品質な接続を溶接で確実に行うことができ、電池の小型化が可能な正負電極端子間の接続部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、薄型2層構造の爆発圧着クラッド材を使用することで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0018】
すなわち、本発明は以下のとおりのものでる。
[1]複数の電池を直列に接続するための正負電極端子間に配置されるシート状接続部材であって、該シート状接続部材は、一方の面に正極端子を構成する金属又はその合金から構成される第一層を、他方の面に負極端子を構成する金属又はその合金から構成される第二層を、それぞれ、有し、かつ、厚みが2mm以下であり、該第一層と該第二層は接合されており、その接合面には、金属間化合物のない部分と金属間化合物がある部分が存在し、金属間化合物のない部分が全接合面積の10%以上であり、かつ、該一方の面内と該他方の面内の任意の位置において該第一層と該第二層の両者が該シート状接続部材の厚み方向において存在する、前記部材。
[2]前記電池はリチウムイオン二次電池である、前記[1]に記載の部材。
[3]前記シート状接続部材の厚みが1mm以下である、前記[1]又は[2]に記載の部材。
[4]前記第一層を構成する金属又はその合金がアルミニウム又はその合金であり、かつ、前記第二層を構成する金属又はその合金が銅又はその合金である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の部材。
[5]前記第一層と前記第二層の中間にチタン又はその合金から構成される中間層を有し、該第一層と該中間層と該第二層とが互いに接合されており、その接合面には、金属間化合物のない部分と金属間化合物がある部分が存在し、金属間化合物のない部分が全接合面積の10%以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の部材。
[6]前記シート状接続部材の形状は、縦3〜9mm×横50〜100mmの長方形の平板状である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の部材。
[7]前記シート状接続部材の形状は、縦10〜20mm×横50〜100mmの長方形の平板を、側面から見たときZ字状又はS字状に折り曲げた形状である、前記[1]〜[]のいずれかに記載の部材。
[8]材質1からなる電極及び材質2からなる電極で構成される平行平板異材電極の接合方法であって、一方の面が材質1からなり、他方の面が材質2からなり、該材質1と該材質2が爆発圧着により接合されており、かつ、厚みが2mm以下であるクラッド板を、Z字状又はS字状に折り曲げ、前記材質1の電極及び材質2の電極の間に、同じ材質同士が各々接するように挿入し、該電極及びクラッド板の同じ材質同士を接合することにより、材質1の電極及び材質2の電極を接合する前記方法。
[9]材質1からなる電極及び材質2からなる電極で構成される平行平板異材電極の接合方法であって、前記材質1からなる電極の、前記材質2からなる電極に隣接する面と反対側の面に、一方の面が材質1からなり、もう一方の面が材質2からなり、該材質1と該材質2が爆発圧着により接合されており、かつ、厚みが2mm以下であるクラッド板を、該クラッド板の材質1からなる面が接するように重ね合せて、接合し、該クラッド板を接合した材質1からなる電極を、前記材質2からなる電極の側へ、該クラッド板の材質2からなる面を外側に向けて、折り曲げ、該材質2からなる電極を前記材質1からなる電極の側へ折り曲げ、該材質2からなる電極とクラッド板の材質2からなる面が接するように重ね合せて、接合することにより、材質1からなる電極及び材質2からなる電極を接合する前記方法。
[10]前記クラッド板の厚みが0.3mm以上である前記[9]に記載の方法。
[11]前記材質1からなる電極及び材質2からなる電極は、リチウムイオン二次電池の正極タブ及び該リチウムイオン二次電池に隣接して配置されるもう一つのリチウムイオン二次電池の負極タブである、前記[]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記クラッド板の異種金属接合面において、金属間化合物のない部分と金属間化合物がある部分が存在し、金属間化合物のない部分が全接合面積の10%以上である、前記[]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]前記クラッド板と前記電極とを同種材同士で重ね合わせ、該電極側からレーザ照射し、該レーザ照射後のレーザ溶接部の溶け込み深さが該クラッド板の異種金属接合界面にまで到達していない、前記[]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]前記[]〜[13]のいずれかに記載の方法により接合された平行平板異材電極を有する電池パック。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、量産に適し、全面接合が可能で接合強度が高い爆発圧着クラッド又はそれを圧延したものを使用することで電池の正負極端子を同種材同士での接合とすることができるため、高品質な接合が可能となる。また、本発明により、正負極端子の接合面積を十分に保ったまま電池及びその周囲部材の小型化も可能となり、さらに、小型化と高品質な接合により、電極部の抵抗値とインダクタンスの減少による出力電流の増加などの性能アップが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】爆発圧着クラッド材の製造方法におけるセット状態を示す概略図である。
図2】爆発圧着クラッド材の製造方法における圧着進行状態を示す概略図である。
図3】発圧着クラッド材の製造方法における圧着完了状態を示す概略図である。
図4】発圧着クラッド材における「さざ波状」の圧着界面の写真である。
図5】特許文献4に記載された組電池及び接続体を示す概略図である(特許文献4の図1に同じ)。
図6】特許文献5に記載された電池セルを接続するための金属プレートを示す概略図である(特許文献5の図5に同じ)。
図7】積層ラミネートタイプの自動車用リチウムイオン二次電池の構造の具体例を示す図面である。
図8】本発明に係るシート状接続部材を、ラミネートタイプのリチウムイオン二次電池の隣接セルの正極タブと負極タブとの間に配置して、互いに溶接で接続する方法を説明する概略図である。
図9】爆発圧着クラッド材の接合部のミクロ観察を行った写真である(拡大SEM:接合部に金属間化合物の層が無い部分の撮影)。
図10】冷間圧延後に採取した接続部材の写真である。
図11】接続部材を曲げたものの写真である。
図12】レーザ溶接部の断面のミクロ観察写真である。
図13】比較例のロウ付けクラッド材の超音波探傷試験した結果を示す写真である。
図14】比較例の圧接クラッド材の超音波探傷試験した結果を示す写真である。
図15】比較例のロウ付けクラッド材の接合界面の写真である。
図16】比較例の圧接クラッド材の接合界面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態は、複数の電池を直列に接続するための正負電極端子間に配置されるシート状接続部材であって、一方の面に正極端子を構成する金属又はその合金から構成される第一層を、他方の面に負極端子を構成する金属又はその合金から構成される第二層を、それぞれ、有し、該第一層と該第二層が、爆発圧着により接合されており、該一方の面内と該他方の面内の任意の位置において該第一層と該第二層の両者が該シート状接続部材の厚み方向において存在する、前記部材である。好ましくは、該シート状接続部材の厚みは2mm以下である。
【0022】
前記電池は、好ましくはリチウムイオン二次電池であり、より好ましくは積層ラミネートタイプの自動車用リチウムイオン二次電池であることができる。
積層ラミネートタイプの自動車用リチウムイオン二次電池においては、隣接するセルの正極タブと負極タブを直列に接続する場合に、通常、正極タブがアルミニウムで、負極タブが銅で構成されているため、異種金属同士の接続を確実に行うため、正極端子を構成する金属又はその合金から構成される第一層を構成する金属又はその合金は、アルミニウム又はその合金であり、かつ、負極端子を構成する金属又はその合金から構成される第二層を構成する金属又はその合金は、銅又はその合金であることができる。また、アルミニウムと銅との間の耐熱性を高めるために、第一層と第二層の中間にチタン又はその合金から構成される中間層を設け、第一層と中間層と第二層とが互いに爆発圧着により接合したものを用いてもよい。
図1〜3に示すように、銅板を母材として用い、合材としてアルミニウム板を用いて爆発圧着を行えば、銅とアルミニウムの二層からなる爆発圧着グラッド材を製造することができる。当業者は、技術常識に従い製造条件等を適宜設定し、所望のクラッド材を製造することができる。
【0023】
本実施形態に係るシート状接続部材は、一方の面に正極端子を構成する金属又はその合金から構成される第一層を、他方の面に負極端子を構成する金属又はその合金から構成される第二層を、それぞれ、有し、該第一層と該第二層が、爆発圧着により接合されており、該一方の面内と該他方の面内の任意の位置において該第一層と該第二層の両者が該シート状接続部材の厚み方向において存在するものである。すなわち、例えば、下端が銅、上端がアルミニウムである長方形の接続部材とは異なり、例えば、銅層とアルミニウム層が全面に亘って積層されたシート状のものである。
【0024】
他の実施形態においては、前記第一層と前記第二層との接合面において、金属間化合物のない部分と金属間化合物がある部分が規則的に存在し、金属間化合物のない部分が全接合面積の10%以上であるものであることができる。
【0025】
他の実施形態においては、材質1からなる電極及び材質2からなる電極で構成される平行平板異材電極の接合方法であって、一方の面が材質1からなり、他方の面が材質2からなるクラッド板をZ字状又はS字状に折り曲げ、前記材質1の電極及び材質2の電極の間に、同じ材質同士が各々接するように挿入し、該電極及びクラッド板の同じ材質同士を接合することにより、材質1の電極及び材質2の電極を接合する前記方法が提供される。
【0026】
他の実施形態においては、材質1からなる電極及び材質2からなる電極で構成される平行平板異材電極の接合方法であって、前記材質1からなる電極の、前記材質2からなる電極に隣接する面と反対側の面に、一方の面が材質1からなり、もう一方の面が材質2からなるクラッド板を、該クラッド板の材質1からなる面が接するように重ね合せて、接合し、該クラッド板を接合した材質1からなる電極を、材質2からなる電極の側へ折り曲げ、該材質2からなる電極を前記材質1からなる電極の側へ折り曲げ、該材質2からなる電極と前記クラッド板の材質2からなる面が接するように重ね合せて、接合することにより、材質1からなる電極及び材質2からなる電極を接合する前記方法も提供される。
【0027】
好ましくは、前記材質1からなる電極及び材質2からなる電極は、リチウムイオン二次電池の正極タブ及び該リチウムイオン二次電池に隣接して配置されるもう一つのリチウムイオン二次電池の負極タブであることができる。また、前記クラッド板の厚みは、好ましくは0.3mm以上である。前記クラッド板の異種金属接合面において、金属間化合物のない部分と金属間化合物がある部分が規則的に存在し、金属間化合物のない部分が全接合面積の10%以上であることができる。
【0028】
前記クラッド板と前記電極とを重ね合わせて同種材同士で、溶け込み深さが該クラッドの異種金属接合界面にまで到達していない状態でレーザ溶接することができる。
【0029】
他の態様においては、前記方法により接合された平行平板異材電極を有する電池パックも提供される。
【0030】
従来技術の圧延クラッド材においては、例えば、下端が銅、上端がアルミニウムである長方形の接続部材を、縦15mm×横70mm×厚み1mmの形状に得ようとする場合、長方形の下端を銅のみに、上端をアルミニウムになるように、厚み15mmの圧延クラッド材を予め用意し、これを1mmの厚さにスライスしたものを、長さ70mmになるように、切断して得なければならない。
これに反し、本実施形態に係る積層シート状の銅とアルミニムの爆発圧着クラッド材を、最終的に、例えば、縦15mm×横70mm×厚み1mmの形状に得ようとする場合、厚み1mmを超える爆発圧着クラッド材を予め用意し、これを1mmに圧延したものを、長さ70mm×15mmの長方形の形状に切断すればよい。
【0031】
前記したように、爆発圧着クラッド材では、圧着界面が「さざ波状」を呈するので、異種金属同士の剥離が起き難く、また冷間圧着であるために、加熱による金属間化合物の生成し難いため、異種金属間の高品質な電気的接続を達成することができる。かかる特徴は、厚み2mm以下に圧延された場合でも保持されている。本実施形態に係る積層シート状の銅とアルミニムの爆発圧着クラッド材の一方の面にはアルミニウムが確実に存在し、他方も面には銅が確実に存在し、アルミニウム正極タブとの同種金属溶接、及び銅負極タブとの同種金属溶接が可能となるため、溶接によりAl−Cu間異種金属間接合を行う際の品質低下の問題は全く生じない。例えば、かかる接合には、生産性の高いレーザ溶接を使用することができるため、ボルト・ナット等による接続による問題、大型化、緩み等の問題は生じない。
【0032】
図8を参照して、本実施形態に係るシート状接続部材を、ラミネートタイプのリチウムイオン二次電池の隣接セルの正極タブと負極タブとの間に配置して、互いに溶接で接続する方法を説明する。
図8(a)案1では、例えば、一方の面がアルミニウムであり他面が銅である厚み1mm(アルミニウム0.5mm+銅0.5mm)×縦15mm×横70mmのシート状接続部材(ピッチ7mm用の場合)を用意し、これを側面方向からみてZ字型に折り曲げ、Z字の上面のアルミニウム側をアルミニウム正極タブに当接して、溶接し、同様に、Z字の下面の銅側を銅負極タブに当接して、溶接することで、正負タブ間を接続することができる。この案1では、正負極タブは折り曲げ加工する必要はない。
【0033】
図8(b)案2では、正負極タブを折り曲げ加工するが、シート状接続部材は折り曲げ加工しない。したがって、案2では、案1よりも厚いものを用いてもよく、例えば、一方の面がアルミニウムであり他面が銅である厚み2mm(アルミニウム1mm+銅1mm)×縦6.5mm×横70mmのシート状接続部材(ピッチ7mm用の場合)を用意し、銅負極タブの下方から上記シート状接続部材の銅面を当接し、これを90°下方に向かって折り曲げた後に溶接し、これを上方に向かって180°折り曲げ、次いで、アルミニウム正極タブを下方に向かって90°に折り曲げ、該シート状接続部材のアルミニム面に当接して、溶接することで、正負タブを接続することができる。案2は、案1に比べて、異種金属接合部の接合面積を大きくして抵抗値を低下することができ、また接続部材の厚みを大きくすることができるが、正負極タブの折り曲げ加工が必要になる。
正負極タブの折り曲げについては、折り曲げる前の状態で接続部材と重ね合わせてCuとAlの金属間化合物ができないように溶接した後で、正負極タブを折り曲げてもよい。爆発圧着では、金属間化合物ができないので接合強度が高いため、溶接後に正負極タブを折り曲げることができる。
【0034】
本実施形態に係るシート状接続部材の形状は、適用するラミネートタイプのリチウムイオン二次電池の隣接セルの正極タブと負極タブの間隔や形状に依存して適宜選択することができるが、厚みは2mm以下、好ましくは1mm以下であることができ、例えば、縦3〜9mm×横50〜100mmの長方形の平板状、縦10〜20mm×横50〜100mmの長方形の平板を側面から見たときZ字状又はS字状に折り曲げた形状であることができる。
【0035】
本実施形態に係る接続部材と、正負極タブとの接続は、レーザ溶接、超音波溶接、鑞付け、スポット溶接なとの各種溶接により行うことができ、当業者は適用する電池に応じて適宜最適な溶接方法を選択することができる。
【0036】
なお、前述したラミネートタイプのリチウムイオン二次電池の隣接セルの正極タブと負極タブとを接続する方法は、爆発圧着により接合されたシート状接続部材を用いる方法に限られない。一方の面が正極と、他方の面が負極と各々同一の材料から成るクラッド板であれば、前記方法における接続部材として使用することが可能である。
【0037】
本明細書中、金属間化合物については、クラッドの断面を電子顕微鏡によって観察し、成分分析によって金属間化合物を判定した。接合界面において、金属間化合物が生成していない領域の長さを、観察断面全体の長さで除した値を、金属間化合物のない領域として算出した。また、溶接時の溶け込み深さについても、電子顕微鏡によって溶接部の断面を観察し、溶け込み深さが最も大きい部分を溶け込み深さとした。
【実施例】
【0038】
[実施例]
板厚4 mmのCuと板厚11 mmのAlをそれぞれ1000×2000 mmのサイズで爆発圧着によりクラッド材を製作した。このクラッド材の超音波探傷試験を行ったところ、非接合部は外周部の極一部に限られ、900x1900mm以上の全面接合が得られていることが分かった。かかる全面接合部分を正負電極端子間の接続部材とすることで、電気抵抗値が低く、且つ、接合強度が高い接続部材とすることができた。
この爆発圧着クラッド材の接合部のミクロ観察で、接合部がさざ波状であること確認できた。接合界面は、さざ波状の巻込み部分に金属間化合物ができやすいが、それ以外の部分ではほとんど金属間化合物ができずに接合しており、接合強度が高いものであった。この金属間化合物ができない領域は、全接合面積の5割以上を占めており、その領域を拡大SEMにより観察した画像を図9に示す。図9から金属間化合物の層が無いことを確認できた。
この爆発圧着クラッドから下記サイズの抵抗測定用試験片を採取し、接合部の抵抗値を4端子法で測定した。爆発圧着クラッドの接合部の抵抗値は1μΩ以下であり、金属間化合物がほとんど無いので非常に小さかった。この接合部の抵抗値は、下記抵抗計を使用して測定した値から、素材部の理論抵抗値を差し引いて、クラッド接合部の抵抗値を算出した値である。
試験片サイズ:(15+15)×5×5(板厚15 mmのCuと板厚15 mmのAlのクラッドを5 mm角に加工したもの)
電圧測定位置:接合部からそれぞれの素材側に10 mm離れた位置
抵抗計:日置電機製RM3545と専用4端子リード線を使用
【0039】
非特許文献2には、銅とアルミニウムの接合部に金属間化合物が接合面全体に層状に存在すると脆くなり接合強度が低下することが記載されているが、爆発圧着の場合は接合面に金属間化合物が存在せずに接合している部分が5割以上を占めているため、接合強度が高い。実際に引張試験を行ったところ、接合面で破断せずに、アルミ素材の部分で破断した。
【0040】
次に、得られた爆発圧着クラッド材を、総厚1.5 mmまで冷間圧延した。圧延後のものについては、Cuの板厚は約0.4 mmで、Alの板厚は約1.1 mmとなる。冷間圧延した後でも前記全面接合範囲に変化はなく、冷間圧延後のものから接続部材を採取しても接合不良のものがほとんど発生しなかった。
図10に、冷間圧延後に採取した接続部材のミクロ観察結果を示す。図10から、爆発圧着クラッド材と同様、これを冷間圧延により製作した部材でも、接合面における金属間化合物ができない部分は全接合面積の5割以上を占めていることが分かった。
【0041】
図11に、本実施形態に係る接続部材を曲げたものを示す。爆発圧着により接合したクラッド材は接合強度が高いので、両面どちら側に曲げても接合部は剥れないため、S字やZ字などの曲げ加工にも充分対応可能であることが分かった。
【0042】
上記のように得られた板状の接続部材を電池用の正負電極端子間用接続部材として用いるため、厚さ0.2 mmのCu模擬電極と厚さ0.4 mmのAl模擬電極のそれぞれを同種材同士が重ねあうように配置して、レーザ溶接を行った。図12は、レーザ溶接部の断面のミクロ観察写真である。接続部材が上記構成であり、以下の条件下でレーザ溶接を行ったとき、溶け込み深さを同種材の範囲内で抑えることができ、爆発圧着接合部においても溶接の熱影響が少なく金属間化合物がほとんど増加していないことが分かった。
(レーザ溶接条件)
メーカ:アマダミヤチ
装置名:ファイバーレーザ溶接機
型名:ML6950A
スポット径:φ0.15 mm
溶接速度:200 mm/s
レーザ出力:CW2.3 kW
【0043】
クラッド材への溶け込み深さは、Cu側で0.3 mm、Al側で1.0 mmであった。上記条件であれば、Cu側とAl側でレーザ溶接条件が同じなので、1台の一定出力のレーザ溶接機にて溶接が可能であり、溶接作業が簡単で、製造時間を短縮できるため、品質向上や価格の低減に繋がる。
【0044】
レーザ出力をCW1.4 kWに変更した場合、クラッド材への溶け込み深さはAl側で0.2 mmであり、上記の条件と組み合わせれば、クラッド材の厚さは約0.6 mmあれば、溶け込み深さは接合界面まで到達しないように調整可能である。
【0045】
さらに、下記の変更・調整を行えば、溶け込み深さをより高精度で制御することができ、クラッド材の厚さが0.3mmであれば、溶け込み深さが接合界面にまで到達しないように調整可能である。
・スポット径を、例えば、0.05 mmまで小さくしてレーザ出力を調整する。
・CuやAlなどの高反射材に対応したレーザ溶接機を使用する。
・Cu電極とAl電極の板厚を小さくする。例えば、0.1 mm。
・パルス出力タイプのレーザ溶接機を使用する。
【0046】
[比較例]
比較のために、下記の2種類のクラッド材を準備した。
・板厚12 mmのCuと板厚40 mmのAlそれぞれのサイズが280×300のものを板厚方向にロウ付けしたクラッド材
・長さ70 mmのCuと長さ70 mmのAlそれぞれの径がφ30のものを軸方向に圧接したクラッド材
これらの超音波探傷試験した結果を図13と14に示す。銅とアルミの接合面での超音波の理論反射率は約28 %であり、異種金属接合面で非接合部の反射信号を80 %となるように調整しているので、反射率約22 %の部分が接合している領域である。両方のクラッドとも内部に広い範囲で非接合があるので、接続部材の採取時には接合力不足や導電性不良などの不良品が発生する恐れがある。
【0047】
[金属間化合物の層厚の比較]
図15と16は、上記2種類のクラッドの接合界面である。ロウ付けクラッドはロウ材の厚さは200μm以上であり、また、ロウ材がなく空隙となっている箇所が多数存在した。圧接クラッドは金属間化合物の厚さが20μm以上であった。
上記のように金属間化合物の層が厚かったり、空隙があったりすると、抵抗値の上昇や許容電流値の低下などの性能低下の要因となる。
また、上記2種類の金属間化合物の層が厚いクラッドの引張試験を行ったところ、接合面から破断した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る正負電極端子間に配置されるシート状接続部材を用いれば、量産に適し、全面接合が可能で接合強度が高い爆発圧着クラッド又はそれを圧延したものを使用することで電池の正負極端子を同種材同士での接合とすることができるため、高品質な接合が可能となる。また、本発明により、正負極端子の接合面積を十分に保ったまま電池及びその周囲部材の小型化も可能となり、さらに、小型化と高品質な接合により、電極部の抵抗値とインダクタンスの減少による出力電流の増加などの性能アップが可能となる。それゆえ、本発明に係る接続部材は、例えば、大きな容量と低い内部抵抗、高い放熱性能が要求される積層ラミネートタイプの自動車用リチウムイオン二次電池に好適に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16