特許第6385431号(P6385431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385431
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】アルミニウムドロス処理
(51)【国際特許分類】
   C22B 21/00 20060101AFI20180827BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20180827BHJP
   F27D 15/00 20060101ALI20180827BHJP
   F27D 27/00 20100101ALI20180827BHJP
【FI】
   C22B21/00
   C22B7/00 Z
   F27D15/00 Z
   F27D27/00
【請求項の数】32
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-522482(P2016-522482)
(86)(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公表番号】特表2016-526607(P2016-526607A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2014063452
(87)【国際公開番号】WO2014207072
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年3月27日
(31)【優先権主張番号】1311344.4
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516000251
【氏名又は名称】タハ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】TAHA INTERNATIONAL SA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】ポルマン、フランク
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−227567(JP,A)
【文献】 特表平06−504320(JP,A)
【文献】 特開平02−015126(JP,A)
【文献】 特開平10−195554(JP,A)
【文献】 特開2002−069541(JP,A)
【文献】 特開2003−172585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 21/00
C22B 7/00− 7/04
F27D 15/00
F27D 27/00
F27D 3/00− 3/14
F27B 14/00−14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムドロスから前記アルミニウムドロスの処理によってアルミニウム金属を回収する方法において、
前記ドロスを生成する溶融アルミニウムを含有する炉からホットドロスを移送する工程であって、前記ホットドロスは、酸化物及び初期含有量の金属アルミニウムを含有し且つドロス処理容器内に含有されると共に部分的に満たされており、前記ドロス処理容器は、前記容器から溶融アルミニウムを注出するための少なくとも1つの出口をそれぞれ有する対向端壁を含み、前記出口は、前記容器の底と前記容器を閉じる取外し可能な蓋との間の高さ部分方向に位置する工程と、
前記ドロス処理容器を、前記容器の前記対向端を交互に下げて前記容器を揺動させるための揺動装置上に配置する工程と、
前記揺動装置を作動させて前記容器の前記対向端を交互に下げ、前記出口から溶融アルミニウムを注出する工程と、
前記初期含有量の金属アルミニウムの少なくとも70重量%が注出されるまで前記揺動及び注出を続ける工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記ホットドロスは、前記ドロス処理容器の全内部容積の40%以下を満たしている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホットドロスは、前記ドロス処理容器の全内部容積の50%以下を満たしている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ホットドロスは、前記ドロス処理容器の全内部容積の60%以下を満たしている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ホットドロスは、前記ドロス処理容器の全内部容積の70%以下を満たしている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ホットドロスの温度は600℃〜860℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ホットドロスの温度は630℃〜830℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ホットドロスの温度は650℃〜810℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ホットドロスの温度は680℃〜780℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記温度範囲を超える温度の前記ホットドロスは、予め冷却されたドロスを添加及び混合することによって前記温度範囲内の温度に下げられ、前記予め冷却されたドロスの温度が680℃未満である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記予め冷却されたドロスは前記ホットドロスと同じ金属合金含有量である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記温度範囲未満の温度の前記ホットドロスは、前記ホットドロスに空気を吹き込むことによって前記温度範囲内の温度に上げられる、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記揺動装置は、前記容器の前記底が水平位置から65°〜85°の角度となるように前記対向端を下げる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記揺動装置は、前記容器の前記底が水平位置から70°〜80°の角度となるように前記対向端を下げる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記揺動及び注出は、前記初期含有量の金属アルミニウムの少なくとも80重量%が注出されるまで続けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記揺動及び注出は、前記初期含有量の金属アルミニウムの少なくとも90重量%が注出されるまで続けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記揺動装置は、前記ホットドロスが生じた前記炉の500m以内に設置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記注出した金属アルミニウムは、前記ホットドロスが生じた前記炉に戻される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
容器であって、前記容器が2つの対向端壁、2つの対向側壁、底及び取外し可能な蓋を含み、前記対向端壁が前記容器から溶融アルミニウムを注出するための少なくとも1つの出口をそれぞれ含み、前記少なくとも1つの出口が前記容器の前記底と前記容器を閉じる前記蓋との間の高さ部分方向に位置する容器と、
支持構造物上に取付けられた揺動装置であって、前記揺動装置が取付物及び前記取付物を揺動するための揺動機構を含み、前記取付物が前記揺動装置に前記容器を取付けるためのものである揺動装置と、
前記少なくとも1つの出口から注出する溶融アルミニウムを受け取るためのコンテナと
を含む、アルミニウムドロスからアルミニウム金属を回収する装置。
【請求項20】
前記底に隣接する前記対向壁の少なくとも一部が、前記底の方向に収束し
前記底に隣接する前記対向側壁の少なくとも一部が、前記底の方向に収束している、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
2つの前記対向壁は、上部において平行であり且つ下部において前記底の方向に収束し
2つの前記対向側壁は、上部において平行であり且つ下部において前記底の方向に収束している、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記容器から溶融アルミニウムを注出するための前記出口が、前記容器の前記上部と前記下部との間に形成された接合部で前記対向端壁に位置している、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記取外し可能な蓋は、締結機構によって前記容器に取付けられている、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記容器は、前記取付物の取付突出部を受け取るための少なくとも1つの取付溝をさらに含む、請求項19に記載の装置。
【請求項25】
前記揺動装置に前記容器を取付けるための取付物は、前記取付溝を嵌め込むための少なくとも1つの水平に突出する突出部を含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記容器は外部冷却フィンをさらに含む、請求項19に記載の装置。
【請求項27】
前記取外し可能な蓋は、ブラケットによって前記蓋に取付けられた中央支持梁をさらに含み、前記中央支持梁は縦軸の周りを自由に回転し、少なくとも1つの取付溝は前記中央支持梁の上側に取付けられている、請求項19に記載の装置。
【請求項28】
前記揺動機構は液圧装置である、請求項19に記載の装置。
【請求項29】
前記揺動機構は電動機である、請求項19に記載の装置。
【請求項30】
前記容器、取付物及びコンテナはハウジングに収納されている、請求項19に記載の装置。
【請求項31】
前記ハウジングは絶縁箱である、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記ハウジングは排気システムを含む、請求項30に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムドロスを処理するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一次アルミニウム製造業者であるアルミニウムの再溶融業者(remelter)又はリサイクル業者はいずれも、空気と接触する溶融アルミニウムに関わる全ての方法において、溶融アルミニウム金属が炉内雰囲気と反応するためにドロスが形成されるという事実に直面している[1]。この文脈において「アルミニウム」とは、様々な合金金属と合金化されたアルミニウムを含む。本明細書で使用される「ドロス」とは、炉内の溶融アルミニウム金属の表面に浮遊しており、酸化アルミニウムと、捕捉された回収可能なアルミニウム金属とを含む固体不純物の塊を意味する。ドロスは、1〜10重量%の溶融物を一般的に表し、方法によっては、酸化物層中に分散された遊離アルミニウム金属を平均で30〜60重量%含有することがある(ただし、より高い又はより低い含有量が生じることがある)[2][3]。炉から除去されたばかりのドロスは、もちろん熱いけれども、ほとんどのドロス処理法は、冷却され、しばしば処理のために長距離移送することがドロスに対して行われる。
【0003】
伝統的に、アルミニウム金属の回収は、回転塩炉(RSF)法を用いて行われてきた。RSF法では、油燃焼炉又はガス燃焼炉がドロスで満たされ、塩フラックス(ドロスの50重量%以下)が加えられる。塩は反応性雰囲気から金属を保護し、そして金属の凝集及び分離を容易にし、それによって金属の回収を増大させる。塩を用いることは、コストの増大、環境災害及び安全上の危険などの著しい不利益をもたらす。塩ケーキ(ソルトケーキ)と称される非金属の副生成物は、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウム、金属並びに塩の混合物である。1トンを超える塩ケーキが、処理されるドロス1トンごとに生成し、環境懸念が増大している[4]。特にヨーロッパでの厳しい規則は、塩ケーキの埋立処分の法的禁止をもたらした。かくして、無塩(ソルトフリー)プロセスの開発を目的として、かなり多くの研究開発活動が世界中の様々な場所で行われてきた。
【0004】
<アルキャン(Alcan)プラズマアークドロス処理法>
米国特許第4,960,460号は、アルキャンプラズマアークドロス処理法を開示している。ガス又は燃料バーナを用いる代わりに、RSFの場合と同じように、転炉内の装入物を加熱するのに要求される熱を与えるためにプラズマトーチが用いられる。トーチは、転炉の装入口に取り付けられ、雰囲気組成の厳密な制御を可能にする。プラズマトーチは、空気又は窒素などのプロセスガスが連続的に注入される小さな隙間(ギャップ)によって分離された2つの水冷内部電極からなる。冷たいドロスを装入し、ドアを閉じ、高圧の印加によってトーチ電極間に電気アークを引き起こす。アークはガスを非常に高い温度に加熱し、炉を回転しつつ装入物が700〜800℃に加熱される。プロセスガスとして空気又は窒素を用いて行うプラズマアークによるドロスの加熱中、ドロス中に含有されるいくつかの遊離金属とプラズマガスが反応するため、更なる酸化物及び窒化物が形成される。炉の回転は、酸化物膜を破断し、溶融金属を遊離し、そして金属の回収を向上させる機械的攪拌を与える。非金属生成物(NMP)と呼ばれる、ドロスの酸化物部分は、合金組成に応じて様々な量の窒化アルミニウム及び酸化マグネシウムと共に、アルミナを主に含有する灰色の粉末である[5]。この方法は、電極の維持管理のためにトーチを定期的に除去しなければならないため、手がかかる。
【0005】
<ハイドロ・ケベックDROSCARグラファイトアーク法>
DROSCARは、装入物をアルミニウムの融点超過に加熱するために、2つのグラファイト電極間に伸張し且つ保持されたDC電気アークを用いる。エネルギー移動機構は、主に、アークからの放射、及び加熱された耐火物と装入物との間の伝導である。炉は、機械的攪拌を与えるため、ドロスの加熱中に回転する。また、回転は、装入物又は耐火物上の高温点(ホットスポット)の形成を抑制し、エネルギー移動を向上させる。加熱の完了時に、側面の出銑口(タップホール)を通して炉から金属が出銑される[6]。この方法はグラファイトアークを用いるので、冷却水は必要ではなく、維持管理はプラズマアーク技術の場合ほど徹底しなくてよい。
【0006】
<ALUREC法>
ALUREC法は、炉の同一側面に配置された酸素バーナ及び排気ガス口を含む回転傾動転炉型の炉(rotary tiltable converter type furnace)を用いる。この設計は、高エネルギー効率を生み、炉雰囲気の良好な制御を可能にする[4]。酸素バーナは、短時間に転炉の耐火壁を約1000℃に加熱する。炉の回転を通して熱が伝導によって装入物に移動し、混合によって装入物内で熱がさらに分配される。熱はまた、火炎からの直接放射を通して装入物に移動する。金属は転炉の底部で収集され、固体NMPが上部に浮遊する。金属は、NMPから分離して出銑され、溶融炉若しくは保持炉に直接戻るか、又は大型銑鉄塊又はTインゴットに鋳造される。NMPは転炉口を通して排出される[6]。酸素バーナからの排気ガスは窒素を含有しておらず、排気ガスの量も少ない。低減した排気ガス量及び増大した火炎温度は、よりエネルギー効率の高い方法をもたらす。
【0007】
<ECOCENT法>
ECOCENT法では、温度及び粘度などの分離用の関連パラメータが調整された転炉に如何なるフラックス塩を添加することなくホットドロスを供給する[7]。さらに、後の金属の分離を改善するために、ドロスの大きな塊を、より小さな片に破砕する。温度を均一及び調整した後、ドロスを遠心分離機にできるだけ素早く注ぐ。遠心分離機の取鍋又は代替的に型において、ドロスの主成分である酸化アルミニウムから金属の分離のために遠心力が用いられる。遠心分離が終了した後すぐに、液体アルミニウムは、炉に注ぎ戻され、インゴットを鋳込む(ingot pouring)のに用いられ得る。この方法は、ホットドロスの固有エネルギーを利用するので、追加のエネルギー入力は要求されず、従来のドロス処理技術に比べて50%未満のエネルギー消費をもたらす。
【0008】
<DROSRITE法>
国際公開第97/39155号は、アルミニウムドロスを処理するためのDROSRITE法を開示する。ホットドロスは、アルミニウム保持炉からスキミング(すくい取り)を行った直後に、予熱された、耐火物裏打ちされた回転炉に装入される。DROSRITE炉は、密封され、アルゴン雰囲気下に保持される。装入物を徐々に転がすように炉を回転させる。出銑口を開き、収容容器又は取鍋に金属を注ぐ。次に、温度を目標値(酸素注入を停止した時点で典型的に800〜900℃の範囲内)に増大させるために、制御された量の酸素を炉キャビティ(furnace cavity)に注入し、残留物中に含有される回収不能のアルミニウム金属のいくつかを燃焼させる。この方法は、如何なる外部エネルギー入力を要求せず、プロセスエネルギーは、固体残留物から抽出され、炉の耐火物壁に保存され、そして新しいドロスの次のバッチに放出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】[1]MFS Engineering Ltd Catalogs. Rotary Dross Cooling Systems. Switzerland: Kreuzlingen; 1997. p. 1-6.
【非特許文献2】[2]Ruff WS . From waste to valuable raw material refinement of aluminium dross. Aluminium 1998;74:1-2.
【非特許文献3】[3]Gripenberg H, Mullerthann M, Jager N. Salt-free dross processing with Alurec − two years experience. Light Metals 1997 : 1171-1175.
【非特許文献4】[4]Gripenberg H, Grab H, Flesch G, Mullerthann M. Alurec − a new salt-free process. In: Quenean PB, Peterson RD (editors) . Third International Symposium on Recycling of Metals and Engineered Materials, 12-15 November 1995, Point Clear, Alabama. The Mineral, Metals and Materials Society; 1995. p. 819-828.
【非特許文献5】[5]Lavoie S, Dube G. A salt-free treatment of aluminium dross using plasma heating. J Metals 1991;2:54-55.
【非特許文献6】[6]Drouet MG, Meunier J, Laflamme CB, Handheld MD, Biscaro A, Lemire C. A rotary arc furnace for aluminium dross processing. In: Quenean PB, Peterson RD (editors) . Third International Symposium on Recycling of Metals and Engineered Materials, 12-15 November 1995, Point Clear, Alabama. The Mineral, Metals and Materials Society; 1995. p. 803-812.
【非特許文献7】[7]Kos B. A new concept for direct dross treatment by centrifuging of hot dross in compact type ecocent machines. Light Metals 1997:1167-9.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のドロス処理方法はいずれも、著しい量の外部エネルギーの入力を要求するか、又は複雑及び高価な装置を要求する。Ecocent及びDrosrite法では、エネルギー必要量が大いに減少するが、初期資本コスト及びランニングコストが高い。したがって、フラックス塩又は複雑で高価な装置を使用しない、エネルギー効率の高いドロス処理方法及び装置に対する要求が明確にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、今回、エネルギー効率が高く、フラックス塩を必要とせず、そして方法において単純で低コストの装置を使用することができるアルミニウムドロス処理方法を提供する。
【0012】
第1の実施形態において、本発明は、アルミニウムドロスから前記アルミニウムドロスの処理によってアルミニウム金属を回収する方法において、
前記ドロスを生成する溶融アルミニウムを含有する炉からホットドロスを移送する工程であって、前記ホットドロスは、酸化物及び初期含有量の金属アルミニウムを含有し且つドロス処理容器内に含有されると共に部分的に満たされており、前記ドロス処理容器は、前記容器から溶融アルミニウムを注出するための少なくとも1つの出口をそれぞれ有する対向端壁を含み、前記出口は、前記容器の底と前記容器を閉じる取外し可能な蓋との間の高さ部分方向に位置する工程と、
前記ドロス処理容器を、前記容器の前記対向端を交互に下げて前記容器を揺動させるための揺動装置上に配置する工程と、
前記揺動装置を作動させて前記容器の前記対向端を交互に下げ、前記出口から溶融アルミニウムを注出する工程と、
前記初期含有量の金属アルミニウムの少なくとも70重量%が注出されるまで前記揺動及び注出を続ける工程と
を含む方法に関する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、前記ホットドロスは、前記ドロス処理容器の全内部容積の40%以下、前記ドロス処理容器の全内部容積の50%以下、前記ドロス処理容器の全内部容積の60%以下、又は前記ドロス処理容器の全内部容積の70%以下を満たす。
【0014】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記ホットドロスの温度は、600℃〜860℃、好ましくは630℃〜830℃、より好ましくは650℃〜810℃、最も好ましくは680℃〜780℃である。
【0015】
本発明の好ましい温度範囲を超える温度でホットドロスは、予め冷却されたドロスを添加及び混合することによって前記温度範囲内の温度に下げられてよく、前記予め冷却されたドロスの温度は680℃未満である。前記予め冷却されたドロスは前記ホットドロスと同じ金属合金含有量であることが好ましい。
【0016】
本発明の好ましい温度範囲未満の温度で前記ホットドロスは、前記ホットドロスに空気を吹き込むことによって前記温度範囲内の温度に上げられてよい。
【0017】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記揺動装置は、前記容器の前記底が水平位置から65°〜85°、好ましくは70°〜80°の角度となるように前記対向端を下げる。
【0018】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記揺動及び注出は、前記初期含有量の金属アルミニウムの少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%が注出されるまで続けられる。
【0019】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記揺動装置は、前記ホットドロスが生じた前記炉の500m以内、好ましくは250m以内、より好ましくは100m以内、最も好ましくは50m以内に設置されている。
【0020】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記注出した金属アルミニウムは、前記ホットドロスが生じた前記炉に戻されることができ、又は実質的に同じ合金含有量のアルミニウムのバッチと混合されることができる。
【0021】
他の態様において、本発明は、
容器であって、前記容器が2つの対向端壁、2つの対向側壁、底及び取外し可能な蓋を含み、前記対向端壁が前記容器から溶融アルミニウムを注出するための少なくとも1つの出口をそれぞれ含み、前記出口(1つ又は複数)が前記容器の前記底と前記容器を閉じる前記蓋との間の高さ部分方向に位置する容器と、
支持構造物上に取付けられた揺動装置であって、前記揺動装置が取付物及び前記取付物を揺動するための揺動機構を含み、前記取付物が前記揺動装置に前記容器を取付けるためのものである揺動装置と、
前記出口から注出する溶融アルミニウムを受け取るためのコンテナと
を含む、アルミニウムドロスからアルミニウム金属を回収する装置に関する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、前記底に隣接する前記対向壁の少なくとも一部が、前記底の方向に収束している。好ましくは、前記対向壁は、前記容器の上部が立方体状に成形され且つ前記容器の下部が切頭角錐状に成形されるように、上部において平行であり且つ下部において前記底の方向に収束している。また好ましくは、前記容器から溶融アルミニウムを注出するための前記出口が、前記容器の前記上部と前記下部との間に形成された接合部で前記対向端壁に位置している。
【0023】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記取外し可能な蓋は、締結機構によって前記容器に取付けられている。
【0024】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記容器は、前記取付物の取付突出部を受け取るための少なくとも1つの取付溝をさらに含む。好ましくは、前記揺動装置に前記容器を取付けるための取付物は、前記取付溝を嵌め込むための少なくとも1つの水平に突出する突出部を含む。
【0025】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記容器は外部冷却フィンをさらに含む。
【0026】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記取外し可能な蓋は、ブラケットによって前記蓋に取付けられた中央支持梁をさらに含み、前記中央支持梁は縦軸の周りを自由に回転し、少なくとも1つの前記取付溝は前記中央支持梁の上側に取付けられている。
【0027】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記揺動機構は液圧装置又は電動機である。
【0028】
本発明の他の好ましい実施形態において、アルミニウムドロスからアルミニウム金属を回収する装置の容器、取付物及びコンテナはハウジングに収納されており、前記ハウジングは絶縁箱、好ましくは絶縁鋼箱であり、前記ハウジングは排気システムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ドロス処理容器の好ましい実施形態である。
図2】ドロス処理容器用の蓋の好ましい実施形態である。
図3】揺動装置の好ましい実施形態である。
図4】半自動化の回転アルミニウムドロスハウジング(SARAH)ユニットの側面図である。
図5】半自動化の回転アルミニウムドロスハウジング(SARAH)ユニットの後面図(rear side view)である。後方壁パネル45は、説明の目的のみのために除去されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<ドロス処理方法>
本発明によるアルミニウムドロスを処理する方法は、本質的に、以下のようにして行うことができる。
【0031】
容器は、炉の前に配置される。ホットドロスは、前記容器が約半分満たされるまで炉から前記容器に直接スキミングされる。ドロスをスキミングする経過時間(容器を約半分満たすのにかかる時間)は、テルミット化(thermiting)を引き起こし、ドロス中の利用可能なアルミニウムの「燃焼損失」をもたらし得るホットドロスと酸素との反応を最小化すると共に、導入される周囲空気の量及び炉からの熱損失を最小限にするために、好ましくは8分未満、より好ましくは5分未満である。さらに、スキミング時間を最小化することは、スキミングされたホットドロスからの熱の損失を最小化する。
【0032】
スキミングされたドロスの温度は、操作者による目視観察によって定性的に評価することができる。最適な方法条件に関し、ホットドロスは、好ましくは黄色/橙色である。ドロスが、方法のための好ましい最適な温度未満(680℃未満)であると、そのときドロスは深紅色であるのに対し、ドロスが、好ましい最適な温度を超える(780℃超過である)と、ドロスは鮮やかな黄色/白色に輝く。ドロスがあまりにも冷たい場合、遊離アルミニウム金属が固化し始めるので、空気を容器に吹き込み、温度を高めて溶融状態の遊離アルミニウムを維持する遊離アルミニウム金属のいくつかのテルミット化を引き起こす。ドロスがあまりにも熱い場合、遊離アルミニウムはテルミット化し始め、予め冷却されたドロス、好ましくは同じ合金含有量の予め冷却されたドロスをドロス処理容器に加えてホットドロスと混合し、温度を低下させる共に燃焼損失を最小化する。或いは、機器温度測定手段を用いることができる。しかしながら、目視観察ドロス温度評価法は、温度測定にかかる時間の必要性を取り除く。
【0033】
ドロスが方法のための好ましい温度範囲にある(黄色/橙色、約680〜780℃)と考えられると、容器上に蓋を取付け、任意に締結機構を用いて固定される。密閉されたドロス処理容器は、次に揺動装置上に取付けられる。スキミングと揺動装置への取付との間の経過時間は、好ましくは8分未満、より好ましくは5分未満である。
【0034】
容器は、揺動装置の下部に配置された溶融アルミニウムを受け取るコンテナに容器の排出口からアルミニウムが注がれるまで、揺動装置(制御装置を操作する操作者によって制御され、容器の底が水平位置から約70°〜80°の角度となるように容器の一端を下げる)によってゆっくり揺動される。溶融アルミニウムがコンテナに流入するのを停止する場合、操作者は、逆方向に容器をゆっくり揺動させ、容器内の溶融アルミニウムの凝集を促進させると共に、コンテナへの金属流れの継続を促進させる。この方法は、容器からのそれ以上のアルミニウム流れがなくなるまで繰り返され;この段階でホットドロスにおける90%を上回る回収可能なアルミニウムがコンテナ内で回収される。揺動装置での処理時間は、合金組成に応じて変化し、典型的に15〜45分である。
【0035】
一端が下げられた位置から他への容器の揺動は最大で60秒かかり得る。角回転速度は、例えば4〜8°/秒である。ドロスの精力的な攪乱を通して、いくつかの先行技術の方法のように、ドロスを圧縮し、もはや十分に自由に排出されない回収されるべき溶融アルミ中に閉じ込めることができる。
【0036】
回収された金属は、コンテナ内で冷却することができる。それが固化したら、アルミニウムは測量され、それが起源の炉に戻され;迅速なターンアラウンドタイムのために、アルミニウム金属の組成は、それが由来する炉内の金属と実質的に同じである。或いは、前記回収された金属は、実質的に同じ合金含有量のアルミニウムのバッチと混合され得るか、又は異なる組成のバッチの組成を変えるために使用され得る。
【0037】
ホットドロス処理の後、ドロス容器は揺動装置から除去され、残留ドロスが冷却ベイ(cooling bay)に移動され、ここで第2段階の処理設備に移動される前に強制冷却され、そして測量される。第2段階の冷却ドロス処理は、当該技術分野において公知の方法:機械的処理(すなわち、グラインディング、クラッシング、サイズ分離)及び電流分離(「渦電流分離」)を用いて残りのドロスを処理する。
【0038】
或いは、ドロス処理方法は自動化することができる。そのように自動化された方法は、次のようにして行うことができる。ドロス処理容器(蓋を含む)は、床に埋め込まれたレールシステムを介して炉の前に移送することができる。容器が炉の前にあると、蓋はロボットアームによって持ち上げられ、スキミングプロセスの開始を引き起こす。レールシステムは、炉と、橋秤と、前述した回転機装置が位置するドロス処理領域との間のループ軌道であり得る。
【0039】
所望のドロス量に到達した場合、容器内の充填レベルを測定してアプリケーションソフトウェア(コンピュータに埋め込まれたオペレーティングシステムを動かす)に信号を送るためにセンサが用いられ得る。センサは、当該技術分野において公知のあらゆる適切な充填レベルセンサであり得る。容器が対応する蓋で閉じられ、次に橋秤に移送される間、スキミングは停止され得る。次の空の容器はレールシステムを介して炉の前に移動し、スキミングプロセスが継続され得る。
【0040】
充填された容器は、ドロス処理領域に移動する前に自動的に測量することができる。
【0041】
それぞれのスキミング操作に関し、操作者は、ドロスの合金組成及び予測された温度挙動に基づいてドロス処理プログラム(アプリケーションソフトウェアにプログラミングされた)を選択することができる。プログラムは、ドロス温度及び予め決定された容器充填量についてのセンサ情報を含むことができる。
【0042】
ドロス容器の出口を通る液体金属の流出は、例えば、溶融アルミニウムを受け取るコンテナの下の光バリア又は重量センサによって監視することができる。監視装置は、動作を再開するか又は金属の流出を可能にする動きを停止させるために回転装置を指示するアプリケーションソフトウェアに信号を送る。
【0043】
ドロス処理容器は、ドロスの温度を監視するための温度監視装置、好ましくは熱電対を備えることができる。ドロスが630℃〜860℃の好ましい温度範囲内の温度にある限り、干渉は起こらないであろう。
【0044】
温度が860℃を超えると、温度監視装置がアプリケーションソフトウェアに信号を送り、前記ドロスのテルミット化を停止するために、その蓋を通してドロス処理容器にアルゴンガスの放出をもたらし、それにより860℃未満に冷却することができるはずである。
【0045】
温度が630℃未満にあると、監視装置がアプリケーションソフトウェアに信号を送り、ドロス処理容器に酸素の放出をもたらし、好まし温度範囲内にドロスを再加熱するために遊離アルミニウム金属の燃焼を開始(テルミット化)するはずである。
【0046】
容器から金属の流出を監視する装置は、3回の回転サイクルについて、如何なる金属流れを記録することができず、ソフトウェアアプリケーションはプロセスを終了すべきことを決定するはずである。ドロス処理容器は、次に揺動装置から移動し、指定された冷却ベイに移送され得る。
【0047】
<ドロス処理容器の好ましい実施形態>
図1は、容器の好ましい実施形態を示す。前記容器の対向壁10,11は、前記容器の上部が立方体状に成形され且つ下部が切頭角錐状に成形されるように、上部において平行であり且つ下部において底の方向に収束している。この全体の設計は、ホットドロスからの熱損失を最小化しつつアルミニウム金属の燃焼(「テルミット化」)を低減する。
【0048】
容器は、溶融アルミニウムが容器を出ることを可能にする排出口12をさらに含み、前記排出口は、容器の前記上部と前記下部との間に形成された接合部に位置している。ドロス処理方法の間に、容器は70〜80°の角度に揺動される。前記時間で前記接合部は容器の最も低い部分となり(すなわち、地面に最も近い位置である)、したがって、それは、溶融アルミニウムが重力のために前記位置で自然に溜まり、その結果、容器から排出され得るアルミニウム金属の量を最大化するので、出口の最適な位置である。
【0049】
ドロス処理容器は、1つ以上の取付溝14をさらに含むことができる。好ましい実施形態において、前記取付溝14は、前記容器の前記床の下に接続される。
【0050】
ドロス処理容器は、容器の表面領域を増大させることによって余熱を分散する容器の外面に接続された冷却フィン16をさらに含むことができる。さらに、冷却フィン16は、ドロス処理容器を強化する。
【0051】
ドロス処理容器は、溶融アルミニウムを収容するのに適した当該技術分野において公知のいかなる材料から作製することができる。このような適切な材料としては、限定されるわけではないが、鋼である。
【0052】
<ドロス処理容器のための取外し可能な蓋の好ましい実施形態>
図2は、取外し可能な蓋の好ましい実施形態である。前記蓋は、冷却支持フィン20及び横断支持部品22,22’に接続され得る基板18を含む。前記冷却フィン及び支持部品は、蓋の表面領域を増大させることによって蓋を冷却し、したがって、予熱を分散させ得る大きな領域を与える。さらに、冷却支持フィン20及び冷却支持部品22,22’は、蓋の熱による変形を低減するのに役立つ。
【0053】
中央支持梁24は、中央支持梁24が前記基板を縦方向に二等分するように、ブラケット26によって基板18に接続され得る。ブラケット及び中央支持梁は、蓋の維持管理の間に除去及び/又は交換することができる。中央支持梁の上側に1つ以上の取付溝14が接続され、例えば、操作者がフォークリフト車を操作して蓋を持ち上げ、容器の上部にそれを配置することを可能にする。中央支持梁は、その縦軸の周りを自由に回転し、蓋を容器に載せるプロセスを容易にする。
【0054】
蓋の各部品は、溶融アルミニウムを収容するのに適した当該技術分野において公知のいかなる材料から作製され得る。このような材料としては、限定されるわけではないが、鋼である。
【0055】
<ドロス処理容器に蓋を接続する締結機構>
上記したように、蓋は、締結機構を用いて容器に締結され得る。このような締結機構は、2つの重い物体を可逆的に接続することが可能な当該技術分野において公知のいかなる適切な機構であり得る。締結機構は、少なくとも2つのファスナー(締結具)を含み、ドロス処理容器及び取外し可能な蓋の両方は、容器及び蓋の両方にファスナーを取付け可能なブラケットをさらに含み、それにより、蓋を容器に締結する。このようなファスナーとしては、特に限定されるわけではないが、ねじ部品である。
【0056】
好ましい実施形態において、ドロス処理容器は、各端壁10の外面に取付けられた2つのJ−ボルトストラット15を含み、蓋は、蓋の各端に取付けられた2つのJ−ボルトブラケット30を含み、前記蓋は4つのJ−ボルトによって前記容器に締結され、各J−ボルトのU−部分(U-section)は各ストラット15に引っ掛けられ、各J−ボルトの直線部分は各ブラケット30におけるギャップを通り、そして各J−ボルトは、各J−ボルトの前記直線部分のねじ切りされた端部分(threaded end section)にねじ切りされたナット(threaded nut)を取付けることによって固定される。この種類のJ−ボルト締結機構は、当該技術分野において公知である。
【0057】
<揺動装置の好ましい実施形態>
図3は、揺動装置の好ましい実施形態を示す。前記揺動装置は、コンクリート製の支持体36によってコンクリート製の支持構造物34に取付けられた取付物を含む。前記取付物は、2つの水平に突出する突出部40に取付けられた2つの取付支持体38に取付けられた回転台32を含む。水平に突出する突出部は、前記突出部を前記取付支持体にしっかりと取付けることができるように、好ましくは「L」形状をなしている。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、容器は、床の下部に取付けられた2つの取付溝14を含み、揺動装置は、2つの水平に突出する突出部40を含む。前記溝14及び前記突出部40は、前記水平に突出する突出部を各取付溝に挿入することができるように、距離dでそれぞれ分離されており、したがって前記揺動装置に前記容器を取付けることを可能にする。
【0059】
コンテナ42は、操作中にドロス処理容器から落下する溶融アルミニウム金属を収集するように、揺動装置の下部に位置する。前記コンテナは、溶融アルミニウムを収容するのに適したいかなるコンテナであり得る。
【0060】
好ましい実施形態において、前記揺動機構44は液圧装置(hydraulic system)であり、前記液圧装置は前記取付物を回転させる。操作者は、前記取付物を回転させる液圧装置を制御することにより、取付られたドロス処理容器の揺動速度を手動で制御することができる。
【0061】
またさらに好ましい実施形態において、前記揺動機構44は、電動機、好ましくは統合ギヤボックスを含む電動機であり、前記電動機は前記取付物を回転させる。操作者は、前記取付物を回転させる電動機を制御することにより、取付けられたドロス処理容器の揺動速度を手動で制御することができる。好ましくは、電動機及び揺動装置の動力伝達装置は、3つの部品:1)3相可逆電動機、2)ギヤユニット、及び3)ギヤユニットに電動機からの力を伝達するブレーキ/クラッチユニットを含む。3相可逆電動機は、少なくとも4.5トンの重量を回転させることができ、ギヤユニットは、好ましくは可逆(逆転ロックがない)であり、ドロス処理プロセス中にドロス処理装置の揺動に役立つ。
【0062】
<半自動化の回転アルミニウムドロスハウジング(SARAH)>
図4は、ドロス処理方法で使用するアルミニウムドロス処理装置のさらに好ましい実施形態、すなわち、半自動化の回転アルミニウムドロスハウジング(SARAH)ユニットの側面図を示す。図5は、SARAHユニットの後面図を示し、後方壁パネル45は、説明の目的のみのために除去されている。
【0063】
SARAHユニットは、絶縁箱46、好ましくは絶縁鋼箱を含み、絶縁箱は、外側の垂直端に蝶番で取り付けられた少なくとも1つ、好ましくは2つの外に向かって開く扉48を含み、前記各扉は、その中で起こるドロス処理方法を操作者が観察することができる窓(図示していない)を含むことができる。
【0064】
有線テレビ(CCTV)システム(図示していない)を、ドロス処理方法を監視するためにSARAHユニットの内側又は外側に設置することができる。好ましくは、前記CCTVシステムは2つのカメラを含み、各カメラはそれぞれSARAHユニットの絶縁箱の外側の左壁又は右壁に設置され、前記カメラは、個別に設置された窓(図示していない)を通してドロス処理方法を観察するように位置し、窓は、SARAHユニットの絶縁箱の左壁及び右壁のそれぞれに設けられる。カメラは、操作者が、ドロス処理容器からアルミニウム金属の流れを監視及び制御することができるように、SARAHユニットの外側に設けられたモニタに接続することができる。
【0065】
SARAHユニットは、上記したようなドロス処理装置に組み込むことができる。例えば、揺動装置(回転台32、コンクリート製の支持構造物34、コンクリート製の支持体36、取付支持体38、水平に突出する突出部40、及びコンテナ42)は、破線ボックス43(絶縁箱を表す、図3の側面図を参照)によって概略的に示されるように、前記絶縁箱の外側に位置した揺動装置をもつSARAHユニットの絶縁箱内に任意に配置させることができる。或いは、SARAHユニットは、1つ以上の下記の部品を任意に含むことができ、それは、上記のようなドロス処理装置の1つ以上の部品の組み合わせ又はその部品の代替的な選択としてのいずれかである。
【0066】
SARAHユニットの揺動装置は、SARAHユニットの絶縁箱46内に配置された回転板50、好ましくは回転鋼板の形の取付物を含むことができ、それは、少なくとも1つ、好ましくは2つの水平に突出する突出部40で取付けられる。使用するとき、ドロス処理容器の床の下部に取付けられた取付溝(複数可)14に、水平に突出する突出部(複数可)を挿入し、したがって、前記揺動装置に前記容器を取付けることを可能にし、前記揺動装置は、容器の排出口12からアルミニウムが注出するように、取付けられたドロス処理容器を揺動する。
【0067】
コンテナ42は、操作中にドロス処理容器の排出口12から落下する溶融アルミニウム金属を収集するように、揺動装置の下部に位置する。前記コンテナ42は、溶融アルミニウムを収容するのに適したいかなるコンテナであり得る。
【0068】
回転板は、ガイドホイール52上に好ましくは載り、前記ガイドホイールは、ドロス処理方法中にドロス処理容器の重量の一部を支えることによって揺動装置を補助し、回転方向を制御するのに役立つ。回転板はドライブシャフト54に接続することができ、ドライブシャフト54は次に、好ましくは粘性継手(viscous coupling)を介して揺動機構56に接続され、前記揺動機構は好ましくは電動機であり、前記電動機は好ましくは統合ギヤボックスを含み、前記揺動機構は、絶縁箱46の外部に配置される。
【0069】
ドライブシャフト54は、フレキシブル継手(flexile coupling)58を介して揺動機構に任意に接続され、前記継手は、損傷した場合、容易に交換することができる。フレキシブル継手は、ドロス処理方法の始動及び停止の間の衝撃に対する緩和を与え、それによって装置の作動機械部品の寿命を延ばす。
【0070】
ドライブシャフトは、重荷重に耐えることができる(好ましくは少なくとも4.5トンの重量に耐えることができる)プランマブロックハウジング組立体60によって支持することができる。この種類のプランマブロックハウジング組立体は、当該技術分野において公知であり、鋳鉄などのいかなる適切な材料から作製することができる。
【0071】
揺動機構及びドライブシャフト組立体は、幅広土台62上に好ましくは取付けられる。幅広土台を用いることにより、土台にかかる重量を均一に分散させる。土台62は、ボルトを介して床に好ましくは固定される。
【0072】
ホットドロスからの煙霧及びごみは、絶縁箱の上面に配置された排気導管64によってSARAHユニット内から排出され、排気導管は、好ましくはルーバー付フード(louvered hood)であり、フードは、SARAHユニットに隣接して組み込まれた小型除塵ユニット(好ましくはCE認証Ringler除塵ユニット)に(ダクトを介して)好ましくは接続される。SARAH排気システムは、ドロス処理方法中に放出されるガス及び粒子状物質を収容、収集及び/又は処理し、それによってSARAHユニットから有害なガス及び粒子状物質の漏出を防止するように密閉系であり得る。
【0073】
SARAHユニットは密閉系であるので、そのときの環境規制を容易にし、それによってドロス中のアルミニウム金属の制御不能の過剰なテルミット化を通した、望まれない「燃焼損失」による回収可能なアルミニウムの損失を最小化する。環境規制は、SARAHユニット内の雰囲気中の酸素レベルを制御することによって達成することができる。例えば、これは、SARAHユニットに入力ガスを与えることによって達成することができ、前記入力ガスは、予め選択された酸素と不活性ガス(例えば、限定されないが、窒素又は酸素)との比を含むが、密閉系の環境制御のために当該技術分野において公知のいかなる適切な方法を用いることができる。
【0074】
<現在の技術に対する利点>
本明細書中に記載されたホットドロス処理方法を、アルミニウム消耗ドロス(aluminium depleted dross)を処理するための当該技術分野において公知のコールドドロス処理方法と組み合わせることにより、ドロスから回収可能なアルミニウム金属の最大限の回収が可能になり、残りのアルミニウムドロスの全てをリサイクルし、したがって埋立ての必要がなく、有害な塩ケーキも生成しない。さらに、当該方法は、非常に費用効率が高く、ホットドロス処理方法はエネルギーの外部入力を要求しないので、それは高いエネルギー効率であり、廃棄物処理費用が必要なく、機器/装置の維持管理費用も低い。
【0075】
或いは、装置の簡易性のために、ホットドロス処理方法を連続的に実行することが可能である。例えば、本明細書に記載されるような3つのドロス処理容器が順番に使用され、1つ及び/又は2つが清掃/維持管理/除染の目的のために使用されないなら、ドロス処理のためにまだ1つが利用可能である。これは、清掃/維持管理/除染のための時間を短くする装置に対する必要性(もしある場合)がないので、現在の技術に対する著しい改善である。
【0076】
さらに、SARAHユニットは、ドロス処理が収容される環境内で起こり得るので、安全性に対する懸念を低減することができ、それによって潜在的に有害なガス及び粒子状物質に操作者及び環境が曝されることを最小化する。
【実施例】
【0077】
<ドロス処理方法の実施例>
スキミング:834kgドロス
合金:3105シリーズ
ドロス中の回収可能なアルミニウム:378kg
回収されたアルミニウム:337kg
収率:89%
【0078】
ドロス中の回収可能なアルミニウムの量は、国際公開第2010/027267号及び国際公開第01/20300号に開示されているような当該技術分野において公知の方法によって決定した。
【0079】
スキミング用具を備えた操作者が操作するフォークリフト車を用いて、特別に設計されたドロス処理容器に容器が約半分満たされるまでアルミニウムドロスをスキミングした。操作者が操作するフォークリフト車によって、半分満たされたドロス処理容器を、指定されたドロス処理領域に移送した。
【0080】
操作者は、目視観察を通してドロスの温度を定性的に検査し、ドロスが黄色/橙色に輝くまで温度を変えた。好ましい処理温度範囲に到達したら、操作者によってフォークリフト車を用いて容器上に蓋を載せ、4J−ボルトを用いて所定日に手動で固定した。
【0081】
次に、操作者が操作するフォークリフト車によって、密閉されたドロス処理容器を揺動装置上に載せた。操作者は、回転機の下に位置したコンテナに排出口から溶融アルミニウム金属が注出し始めるまで、前記容器の底が水平から70°〜80°の角度となるようにドロス処理容器を揺動させた。アルミニウム金属の流れが排出口から注出することを停止した時に、溶融アルミニウムが、反対の端壁の排出口から溶融アルミニウム金属が再び注出し始めるまで、前記容器を反対方向に70°〜80°の角度に再び傾けた。
【0082】
プロセスが完了したら、コンテナ内のアルミニウムを自然に冷却し、目盛り秤(calibrated scale)に移送した。操作者は、金属及びコンテナの総重量を記録した(937kg)。空のコンテナは、予め決定されており(600kg)、正味の金属重量は重量差によって決定された(337kg)。ドロス処理容器内の残留酸化アルミニウムを目盛り秤に移送し、操作者は容器の総重量を記録した(1978kg)。空のアルミニウムドロス処理容器は予め決定されており(1481kg)、正味のドロス重量は重量差によって決定された(497kg)。
炉スキミング=回収された正味のアルミニウム337kg+正味のドロス重量497kg=834kg
【0083】
%アルミニウム回収=(回収されたアルミニウムkg/ドロス中の回収可能なアルミニウムkg)×100=(337/378)×100=89%
【0084】
容器内の残留アルミニウムドロスは、第2の処理建物に移送され、絶縁床に広げることによって強制冷却した。冷却したら、ドロス中の残留アルミニウム金属を機械分離及び電流分離を用いて回収した。
【0085】
この明細書において、特段の指示がない限り、「又は」なる語は、条件の1つのみが満たされることを要求する操作(operator)「排他的な又は」とは対照的に、述べられた条件のいずれか又は両方を満たすときに真値を返す操作という意味で使用される。「含む」という語は、「からなる」を意味するよりも「包含する」という意味で用いられる。上記で認められた全ての先行技術は、参照することによって本明細書中に援用される。本明細書において先に公開された文書の認定は、その教示が、契約日にオーストラリア又は他の場所で一般に共通の知識であったことの承認又は表明であると思われるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5