特許第6385441号(P6385441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385441ボルデテラ属種の工業規模培養のための合成培地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385441
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ボルデテラ属種の工業規模培養のための合成培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   C12N1/20 A
【請求項の数】18
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2016-542423(P2016-542423)
(86)(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公表番号】特表2016-530891(P2016-530891A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】IB2014064428
(87)【国際公開番号】WO2015036953
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年8月28日
(31)【優先権主張番号】1316351.4
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】デオッテイ,フィリップ マルク エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゴッフィン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブランコ ドス サントス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】トゥーシンク,バス
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−253377(JP,A)
【文献】 特開昭59−175439(JP,A)
【文献】 特開昭58−067182(JP,A)
【文献】 特開昭58−067188(JP,A)
【文献】 特開昭59−063183(JP,A)
【文献】 特表2015−506691(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090554(WO,A1)
【文献】 特開2002−253217(JP,A)
【文献】 細菌学と農芸化学の接点,日本細菌学雑誌,1999年,Vol. 54, No. 4,p. 833-839
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルデテラ属種の工業規模培養のための合成培地であって、
(i)有機化合物と複合体を形成したFe(II)及び有機化合物と複合体を形成したFe(III)からなる群から選択される鉄成分であって、前記有機化合物が、ヘム、ヘモグロビン、ミオグロビン、トランスフェリン、フェリチン、ラクトフェリン、エンテロバクチン、エアロバクチン、アルカリジン、コプロゲン、フェリクロム、デスフェリクロム、フェロキサミン、ヒドロキサメート、シトレート及びジヒドロキシベンゾイルセリンから選択される、前記鉄成分、
(ii)3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、
(iii)ジメチル-β-シクロデキストリン、及び
(ii)1000μM以上の濃度でのアスパルテート、1000μM以上の濃度でのグリシン、500μM以上の濃度でのメチオニン、及び1500μM以上の濃度でのロイシンからなる群から選択されるアミノ酸を含み、
かつFeSO4又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含まない、前記合成培地。
【請求項2】
(vi)2μM以上、3μM以上、4μM以上、5μM以上、又は6μM以上の銅;
(vii)2μM以上、5μM以上、10μM以上、50μM以上、100μM以上、又は400μM以上のマグネシウム;
(x)亜鉛、コバルト、チアミン、リボフラビン及びパントテネートからなる群から選択される添加剤;
(xi)0.4μM以上のビオチン、50μM以上のカルシウム、15μM以上のナイアシン、及び25μM以上のアスコルビン酸からなる群から選択される添加剤
をさらに含む、請求項1に記載の合成培地。
【請求項3】
チオサルフェート、トリチオネート、テトラチオネート、ペルオキソジサルフェート、スルフィド及びサルファイトからなる群から選択される無機硫黄源を含み、かつ有機硫黄源を含まない、請求項1又は2に記載の合成培地。
【請求項4】
0.005mM超、0.006mM超、0.007mM超、0.008mM超、0.010mM超、0.050mM超、0.100mM超、約0.120mM又は約0.011mMのチオサルフェートを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項5】
0.003mM超、0.004mM超、0.005mM超、0.008mM超、0.010mM超、0.020mM超、0.050mM超、約0.007mM、又は約0.080mMのトリチオネートを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項6】
0.002mM超、0.003mM超、0.004mM超、0.005mM超、0.025mM超、0.050mM超、約0.060mM、又は約0.0006mMのテトラチオネートを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項7】
0.005mM超、0.006mM超、0.007mM超、0.008mM超、0.010mM超、0.050mM超、0.100mM超、約0.120mM、又は約0.011mMのペルオキソジサルフェートを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項8】
0.010mM超、0.012mM超、0.014mM超、0.016mM超、0.020mM超、0.100mM超、0.200mM超、約0.240mM、又は約0.022mMのスルフィドを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項9】
0.010mM超、0.012mM超、0.014mM超、0.016mM超、0.020mM超、0.100mM超、0.200mM超、約0.240mM、又は約0.022mMのサルファイトを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項10】
2mM超、5mM超、7mM超、9mM超、10mM超、又は11mM超の濃度でMOPSを含む、請求項1に記載の合成培地。
【請求項11】
塩化銅の形態で銅を含む、請求項2に記載の合成培地。
【請求項12】
アンモニウム塩及び塩化アンモニウムから選択される無機窒素源を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項13】
グルタメート、プロリン、シトレート、ラクテート、アセテート、ピルベート、フマレート、及びサクシネートからなる群から選択される炭素源を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項14】
(i)0.1μM超、1μM超、50μM超、100μM超、200μM超、300μM超、400μM超、500μM超、600μM超、又は700μM超の亜鉛;
(ii)0.05μM超、0.10μM超、又は0.15μM超のコバルト;
(iii)100μM超、120μM超、又は140μM超のカルシウム;
(iv)20μM超、30μM超、又は35μM超のナイアシン;
(v)50μM超、75μM超、100μM超、1000μM超、2000μM超、又は3000μM超のアスコルビン酸;
(vi)0.1μM超、1μM超、5μM超、10μM超、又は25μM超のチアミン;
(vii)0.4μM超、0.5μM超、0.6μM超、又は0.8μM超のビオチン;
(viii)0.1μM超、0.2μM超、0.3μM超、0.4μM超、0.5μM超、0.6μM超、又は0.8μM超のリボフラビン;及び
(ix)0.1μM超、0.5μM超、1.0μM超、2.0μM超、5.0μM超、又は7.0μM超のパントテネート
からなる群から選択される成分をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項15】
(i)50mM超、75mM超、90mM超、100mM超、又は110mM超の濃度のグルタメート;
(ii)1000μM超、1500μM超、2000μM超、2500μM超、又は3000μM超の濃度のアラニン;
(iii)500μM超、750μM超、1000μM超、1250μM超、又は1400μM超の濃度のフェニルアラニン;
(iv)50μM超、100μM超、150μM超、又は200μM超の濃度のヒスチジン;
(v)500μM超、1000μM超、1500μM超、又は1750μM超の濃度のイソロイシン;
(vi)500μM超、1000μM超、1500μM超、又は2000μM超の濃度のリシン;
(vii)1000μM超、3000μM超、4000μM超、5000μM超、6000μM超、又は7000μM超の濃度のプロリン;
(viii)500μmM超、1000μM超、1500μM超、又は1700μM超の濃度のセリン;
(ix)1000μM超、2000μM超、2500μM超、又は3000μM超の濃度のバリン;及び
(x)25μM超、50μM超、75μM超、100μM超、150μM超、又は175μM超の濃度のチロシン
からなる群から選択されるアミノ酸をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項16】
100μM超、200μM超、400μM超、500μM超、600μM超又は700μM超の濃度のグルタチオンをさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項17】

(i)45mM未満、40mM未満、35mM未満、30mM未満、25mM未満、20mM未満、10mM〜20mM、又は約16mMの濃度の塩化物;
(ii)1mM超、2mM超、3mM超、4mM超、4mM〜6mM、又は約5mMの濃度のアセテート;及び
(iii)1mM超、2mM超、3mM超、4mM超、5mM超、6mM超、5.5mM〜7mM、又は約6.5mMの濃度のカリウム
からなる群から選択される成分をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の合成培地。
【請求項18】
(a)請求項1〜17のいずれか一項に記載の合成培地にボルデテラ属種を接種するステップ、及び
(b)バイオマスの蓄積を可能とするのに十分な期間、合成培地中でボルデテラ属種を維持するステップ
を含む、合成培地(CDM)においてボルデテラ属種を増殖させるための発酵方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ボルデテラ(Bordetella)属は、多数の細菌性疾患に対する原因病原体である。例えば、百日咳菌(ヘモフィルス・ペルツシス(Haemophilus pertussis)としても知られる)は、百日咳、つまり幼児及び低年齢小児では重篤になるおそれのある呼吸器疾患の原因である。この疾患の臨床経過は、激しい咳の発作とそれに続く吸気努力に特徴があり、特徴的な「ゼイゼイいう(whooping)」音を伴う場合が多い。症状が重篤になると、酸素欠乏によって脳損傷に至る場合もあるが、最も一般的な合併症は二次性肺炎である。
【0002】
百日咳は、通常、百日咳菌によって引き起こされると考えられているが、百日咳の典型的な特徴と徴候とを伴う患者からパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)が単離される場合もある。パラ百日咳菌感染症は、百日咳菌よりも頻度が低く、百日咳の5〜10%がパラ百日咳菌と関連している(Mertsola(1985)Eur J Clin Microbiol 4;123;Lautrop(1971)Lancet 1(7711)1195〜1198)。パラ百日咳菌は、百日咳菌との血清学的交差反応と併せて臨床的に穏やかな徴候を伴い、それによりパラ百日咳菌の診断が難しくなっている。
【0003】
百日咳菌に対する第一世代ワクチンは、完全殺菌された細菌で構成される全細胞ワクチンであった。1950年代及び1960年代に多数の国がこれらを導入し、百日咳の発生の低減に成功した。全細胞百日咳菌ワクチンに関する課題は、このワクチンに伴う反応源性が高レベルであることである。精製百日咳菌タンパク質を含む無細胞性ワクチンは反応源性がより低く、多数の国のワクチン接種プログラムで採用されている。百日咳毒素(PT)と、繊維状赤血球凝集素(FHA)と、極めてしばしばパータクチン(PRN)とを通常含む無細胞性ワクチンは、広く使用され、百日咳の重篤化の有効な防止を提供する。
【0004】
そのようなワクチンにおいて使用するためのボルデテラ毒素は、ボルデテラ属を発酵させ、産生された病原性因子を単離することによって産生されるが、ボルデテラ属種は、高濃度での増殖が困難である偏好性の生物であり(Doern Clin.infect.dis.2000、30 166〜173)、加えて、FHA(繊維状赤血球凝集素)、パータクチン(PRN)及び百日咳毒素(PT)などのボルデテラ病原性因子を高レベルで百日咳菌から発現させるこはが困難である。
【0005】
ボルデテラ属は、合成培地で増殖させることができる。例えば、Stainer及びScholte(Journal of General Microbiology(1971)、63、211〜220)は、百日咳菌を産生するための簡単な合成培地を開示している。組成が規定されていない培地はその栄養の含有量が変動する場合があり、それによって増殖及び発現の予測が不可能になることから、合成培地での増殖には利点が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mertsola(1985)Eur J Clin Microbiol 4;123
【非特許文献2】Lautrop(1971)Lancet 1(7711)1195〜1198
【非特許文献3】Doern Clin.infect.dis.2000、30 166〜173
【非特許文献4】Stainer及びScholte(Journal of General Microbiology(1971)、63、211〜220
【発明の概要】
【0007】
しかし、合成培地は、高価になり、大量の製造が困難である場合があり、加えて、毒素の高レベルでの産生を支持するバランスのとれた合成培地を設計することは困難である。本発明者らは、驚くべきことに、百日咳菌属種のための合成培地に対して多数の改変を行って、病原性因子の高レベルでの産生を支持する簡単な培地を形成し得ることを見出した。
【0008】
本発明の第一の態様では、ボルデテラ属種のための合成培地であって、以下の改変:
(i)合成培地が、0.035mM未満、0.030mM未満、0.020mM未満又は0.010mM未満のサルフェートを含む;
(ii)合成培地が、システイン及びシスチンからなる群から選択されるシステイン源を含み、該システイン源が、0.50mM未満、0.30mM未満、0.25mM未満、0.20mM未満、0.15mM未満、0.10mM未満、0.05mM未満又は0.03mM未満の濃度である;
(iii)合成培地が、チオサルフェート、トリチオネート、テトラチオネート、ペルオキソジサルフェート、スルフィド(sulphide)及びサルファイト(sulphite)からなる群から選択される無機硫黄源を含む;
(iv)合成培地が、有機硫黄源を含まない;
(v)合成培地が、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)及びPIPES(ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))からなる群から選択される緩衝液を含む;
(vi)合成培地が、2μM超、3μM超、4μM超、5μM超、6μM超の銅を含む;
(vii)合成培地が、2μM超、5μM超、10μM超、50μM超、100μM超又は400μM超のマグネシウムを含む;
(viii)合成培地が、唯一のアミノ酸源を含む;
(ix)合成培地が、アミノ酸源を含まない;
(x)合成培地が、亜鉛、コバルト、チアミン、リボフラビン及びパントテネートからなる群から選択される添加剤を含む;
(xi)合成培地が、0.4μM超のビオチン、50μM超のカルシウム、15μM超のナイアシン及び25μM超のアスコルビン酸からなる群から選択される添加剤を含む;又は
(xii)合成培地が、1000μM超の濃度でのアスパルテート、1000μM超の濃度でのグリシン、500μM超の濃度でのメチオニン、及び1500μM超の濃度でのロイシンからなる群から選択されるアミノ酸を含む
の1つ以上を含む前記合成培地が提供される。
【0009】
本発明の第二の態様では、ボルデテラ属種のための合成培地であって、少なくとも2つの成分を含み、該少なくとも2つの成分が、
(a)100:1超、125:1超、150:1超、175:1超又は200:1超(炭素:リン)(モル/モル)の比の炭素及びリン;
(b)20:1超、22:1超、24:1超又は25:1超(グルタメート:リン)(モル/モル)の比のグルタメート及びリン;
(c)600:1未満、500:1未満、400:1未満又は300:1未満(炭素:マグネシウム)(モル/モル)の比の炭素及びマグネシウム;
(d)115:1未満、110:1未満、105:1未満又は100:1未満(グルタメート:マグネシウム)(モル/モル)の比のグルタメート及びマグネシウム;
e)3000:1超、3500:1超又は4000:1超(炭素:銅)(モル/モル)の比の炭素及び銅;
(f)170:1超、180:1超、200:1超又は250:1超(グルタメート:銅)(モル/モル)の比のグルタメート及び銅;
(g)9500:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超(炭素:鉄)(モル/モル)の比の炭素及び鉄;
(h)1600:1超、1800:1超、2000:1超又は2500:1超(グルタメート:鉄)(モル/モル)の比のグルタメート及び鉄;
(i)500:1未満、400:1未満、300:1未満又は250:1未満(炭素:グリシン)(モル/モル)の比の炭素及びグリシン;
(j)100:1未満、80:1未満、75:1未満又は60:1未満(グルタメート:グリシン)(モル/モル)の比のグルタメート及びグリシン;
(k)440:1未満、400:1未満、350:1未満又は300:1未満(炭素:ロイシン)(モル/モル)の比の炭素及びロイシン;
(l)75:1未満、70:1未満、60:1未満又は50:1未満(グルタメート:ロイシン)(モル/モル)の比のグルタメート及びロイシン;
(m)1200:1未満、1000:1未満、800:1未満又は750:1未満(炭素:メチオニン)(モル/モル)の比の炭素及びメチオニン;
(n)200:1未満、175:1未満、150:1未満又は120:1未満(グルタメート:メチオニン)(モル/モル)の比のグルタメート及びメチオニン;
(o)3750:1超、4000:1超、4500:1超又は5000:1超(炭素:カルシウム)(モル/モル)の比の炭素及びカルシウム;
(p)620:1超、650:1超、675:1超又は750:1超(グルタメート:カルシウム)(モル/モル)の比のグルタメート及びカルシウム;
(q)3000:1超、3500:1超、4750:1超又は5000:1超(炭素:コバルト)(モル/モル)の比の炭素及びコバルト;
(r)750:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超(グルタメート:コバルト)(モル/モル)の比のグルタメート及びコバルト;
(s)3000:1超、3500:1超、4000:1超又は5000:1超(炭素:亜鉛)(モル/モル)の比の炭素及び亜鉛;
(t)750:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超(グルタメート:亜鉛)(モル/モル)の比のグルタメート及び亜鉛;
(u)750:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超(炭素:サルフェート当量)(モル/モル)の比の炭素及びサルフェート当量;並びに
(v)130:1超、150:1超、175:1超又は200:1超(グルタメート:サルフェート当量)(モル/モル)の比のグルタメート及びサルフェート当量
からなる群から選択される前記合成培地が提供される。
【0010】
本発明の第三の態様では、合成培地(CDM)中でボルデテラ属種を増殖させる発酵方法であって、
(a)本発明の合成培地にボルデテラ属種を接種するステップ、
(b)バイオマスの蓄積を可能にするのに十分な期間、合成培地中でボルデテラ属種を維持するステップ
を含む、発酵方法が提供される。
【0011】
本発明の第四の態様では、本発明の発酵方法によって得られ得る病原性因子が提供される。
【0012】
本発明の第五の態様では、本発明の発酵方法によって得られる病原性因子が提供される。
【0013】
本発明の第六の態様では、本発明の病原性因子を含む免疫原生組成物が提供される。
【0014】
本発明の第七の態様では、本発明の免疫原生組成物を含むワクチンが提供される。
【0015】
本発明の第八の態様では、疾患の予防又は治療における、本発明の免疫原生組成物又は本発明のワクチンの使用が提供される。
【0016】
本発明の第九の態様では、細菌性疾患を治療また予防するための医薬の調製における本発明の免疫原生組成物又は本発明のワクチンの使用が提供される。
【0017】
本発明の第十の態様では、ワクチンの免疫原生組成物を患者に投与するステップを含む疾患の予防又は治療の方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、1つだけのアミノ酸を含む最小の培地中の百日咳菌の増殖アッセイの結果を示すグラフである。
図2図2は、アミノ酸を含まない最小培地における百日咳菌の増殖アッセイの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
合成培地
合成培地(Chemically defined media、CDM)は、非合成培地とは異なりそれぞれの栄養成分を正確な濃度で含有しており、それによって培地のばらつきが低減され、発酵産物の品質が改善されるので、合成培地は有効であると考えられることが多い。しかし、多様な細菌が要求する栄養/培地成分を予測することは困難であることから、バランスのとれた最適な合成培地を作り出すことは困難である場合がある。バランスのとれた培地はより効果的な増殖を支持し、コスト的にもより有利であることから、理想的には、合成培地は、実質的にバランスがとれているべきであり、すなわち発酵終了時に細菌が代謝するには多すぎる培地成分の存在によるいかなる特定の培地成分の過剰も存在するべきでない。百日咳菌のための半合成培地は、Goldner(J.Gen.Microbiol.(1966)、44、439〜444)によって設計されたが、これは複雑であり、工業規模で使用するには高価であった。Stainer Scholteは、工業規模の発酵により適したより簡単な培地の設計を試みたが、これは、病原性因子の産生には最適ではない(Journal of General Microbiology(1971)、63、211〜220)。本発明者らは、培地を簡素化するか又はそのような培地中で増殖するボルデテラ属から得られる病原性因子の収率を優位に増加させるために、幾つかの改変をこれらの合成培地に実施し得ることを見出した。
【0020】
これらの改変には、
(i)合成培地が、0.035mM未満、0.030mM未満、0.020mM未満又は0.010mM未満のサルフェートを含む;
(ii)合成培地が、システイン及びシスチンからなる群から選択されるシステイン源を含み、該システイン源が、0.50mM未満、0.30mM未満、0.25mM未満、0.20mM未満、0.15mM未満、0.10mM未満、0.05mM未満又は0.03mM未満の濃度である;
(iii)合成培地が、チオサルフェート、トリチオネート、テトラチオネート、ペルオキソジサルフェート、スルフィド及びサルファイトからなる群から選択される無機硫黄源を含む;
(iv)合成培地が、有機硫黄源を含まない;
(v)合成培地が、MOPS、MES、HEPES及びPIPESからなる群から選択される緩衝液を含む;
(vi)合成培地が、2μM超、3μM超、4μM超、5μM超、又は6μM超の銅を含む;
(vii)合成培地が、2μM超、5μM超、10μM超、50μM超、100μM超又は400μM超のマグネシウムを含む;
(viii)合成培地が、唯一のアミノ酸源を含む;
(ix)合成培地が、アミノ酸源を含まない;
(x)合成培地が、亜鉛、コバルト、チアミン、リボフラビン及びパントテネートからなる群から選択される添加剤を含む;
(xi)合成培地が、0.4μM超のビオチン、50μM超のカルシウム、15μM超のナイアシン及び25μM超のアスコルビン酸からなる群から選択される添加剤を含む;又は
(xii)合成培地が、1000μM超の濃度でのアスパルテート、1000μM超の濃度でのグリシン、500μM超の濃度でのメチオニン、及び1500μM超の濃度でのロイシンからなる群から選択されるアミノ酸を含む
が含まれる。
【0021】
したがって、本発明の第一の態様では、ボルデテラ属種のための合成培地であって、上記の改変の1つ以上を含む合成培地が提供される。
【0022】
加えて、新規の合成培地を調合する試みには、しばしば、複雑な培地を採用し、その複雑な培地成分(カゼイン加水分解物であるカザミノ(casmino)など)を当量の個別の化学的に規定された(chemically defined)成分で置換するステップを含む。しかし、本発明者らは、驚くべきことに、合成培地をバランスのとれたものとし、病原性因子の高収率産生を支持することを確実にするためには、培地成分間の比が非常に重要であり得ることを見出した。
【0023】
したがって、本発明の第二の態様では、ボルデテラ属種のための合成培地であって、少なくとも2つの成分を含み、該少なくとも2つの成分が、
(a)100:1超、125:1超、150:1超、175:1超又は200:1超(炭素:リン)(モル/モル)の比の炭素及びリン;
(b)20:1超、22:1超、24:1超又は25:1超(グルタメート:リン)(モル/モル)の比のグルタメート及びリン;
(c)600:1未満、500:1未満、400:1未満又は300:1未満(炭素:マグネシウム)(モル/モル)の比の炭素及びマグネシウム;
(d)115:1未満、110:1未満、105:1未満又は100:1未満(グルタメート:マグネシウム)(モル/モル)の比のグルタメート及びマグネシウム;
(e)3000:1超、3500:1超又は4000:1超(炭素:銅)(モル/モル)の比の炭素及び銅;
(f)170:1超、180:1超、200:1超又は250:1超(グルタメート:銅)(モル/モル)の比のグルタメート及び銅;
(g)9500:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超(炭素:鉄)(モル/モル)の比の炭素及び鉄;
(h)1600:1超、1800:1超、2000:1超又は2500:1超(グルタメート:鉄)(モル/モル)の比のグルタメート及び鉄;
(i)500:1未満、400:1未満、300:1未満又は250:1未満(炭素:グリシン)(モル/モル)の比の炭素及びグリシン;
(j)100:1未満、80:1未満、75:1未満又は60:1未満(グルタメート:グリシン)(モル/モル)の比のグルタメート及びグリシン;
(k)440:1未満、400:1未満、350:1未満又は300:1未満(炭素:ロイシン)(モル/モル)の比の炭素及びロイシン;
(l)75:1未満、70:1未満、60:1未満又は50:1未満(グルタメート:ロイシン)(モル/モル)の比のグルタメート及びロイシン;
(m)1200:1未満、1000:1未満、800:1未満又は750:1未満(炭素:メチオニン)(モル/モル)の比の炭素及びメチオニン;
(n)200:1未満、175:1未満、150:1未満又は120:1未満(グルタメート:メチオニン)(モル/モル)の比のグルタメート及びメチオニン;
(o)3750:1超、4000:1超、4500:1超又は5000:1超(炭素:カルシウム)(モル/モル)の比の炭素及びカルシウム;
(p)620:1超、650:1超、675:1超又は750:1超(グルタメート:カルシウム)(モル/モル)の比のグルタメート及びカルシウム;
(q)3000:1超、3500:1超、4750:1超又は5000:1超(炭素:コバルト)(モル/モル)の比の炭素及びコバルト;
(r)750:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超(グルタメート:コバルト)(モル/モル)の比のグルタメート及びコバルト;
(s)3000:1超、3500:1超、4000:1超又は5000:1超(炭素:亜鉛)(モル/モル)の比の炭素及び亜鉛;
(t)750:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超(グルタメート:亜鉛)(モル/モル)の比のグルタメート及び亜鉛;
(u)750:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超(炭素:サルフェート当量)(モル/モル)の比の炭素及びサルフェート当量;並びに
(v)130:1超、150:1超、175:1超又は200:1超(グルタメート:サルフェート当量)(モル/モル)の比のグルタメート及びサルフェート当量
からなる群から選択される前記合成培地が提供される。
【0024】
「合成培地」という用語は、酵母、カザミノ酸、ペプトン、トリプトン、酵母抽出物などの複雑な材料を実質的に含まない培地を指す。例えば、Jayme及びSmith、Cytotechnology33(1〜3):27〜36(2000)を参照されたい。特に、本明細書では、合成培地は、培地中のアミノ酸源としてカザミノ酸(CAA)を含まない。本明細書では、カザミノ酸は、カゼインの加水分解で得られるアミノ酸の混合物を指す。
【0025】
本発明のCDMは、正の用語(培地中に含まれる成分(複数可)又は構成成分(複数可))及び負の用語(培地から除外される成分(複数可)又は構成成分(複数可))の両方で記載される。
【0026】
「源」は、培地に少なくとも1つの具体的な成分を提供する培地の成分である。例えば、シスチンは、培地上で増殖する生物体による使用のためのシステインを提供することから、シスチンはシステイン源である。本明細書では、成分それ自体が「源」とみなされる。例えば、サルフェートは、サルフェート源であり、システインは、システイン源であるなどである。「源」は、1つを超える成分を提供してもよい。例えば、アミノ酸は、炭素源及び窒素源、並びにアミノ酸源であってもよい。
【0027】
「培地」という用語は、ボルデテラ属が適度に高い密度に(例えば、1.0g/L超、1.5g/L超、2.0g/L超又は2.5g/L超乾燥細胞重量のバイオマスに)増殖することを可能にするのに十分な栄養源を指す。
【0028】
本発明の合成培地は、ボルデテラ属種の工業規模培養のためのものである。「工業規模培養」という用語は、発酵槽での培養を指し、一実施形態では、工業規模培養は、5から10000リットルの間、10から5000リットルの間、20から2000リットルの間、50リットルから1000リットルの間、5リットル以上、10リットル以上、15リットル以上、20リットル以上、25リットル以上、50リットル以上、100リットル以上、10000リットル以下、5000リットル以下、又は2500リットル以下の作業容積を備える発酵槽での培養である。さらなる実施形態では、「工業規模培養」は、10mg/L超、15mg/L超又は20mg/L超の百日咳毒素の産生に適する培養である。
【0029】
発酵方法中、本発明の合成培地は、方法の開始時に発酵槽に添加されるが、任意に、培地のさらなる部分が発酵方法(例えば、流加発酵において)中に添加されてもよく;又は多様な組成を有する培地を後から発酵に添加してもよい。そのような培地はまた、ケモスタットやリテントスタット(retentostat)などの系で使用するために培養培地中に連続的に添加することもできる。好ましくは、発酵は、流加発酵である。
【0030】
本発明の合成培地は、好ましくは、Stainer Scholte培地によって支持された場合より、高い増殖収率のボルデテラ属種を支持する(Journal of General Microbiology(1971)、63:211〜220に記載されている)。これは、ボルデテラ属の株を接種し、ボルデテラ属の株の第1の試料をStainer Scholte培地を含むフラスコ又は発酵槽に接種し、ボルデテラ属の株の第2の試料(Stainer Scholte培地で選択された容積と同じ容積を使用して)を試験される合成培地を含むフラスコ又は発酵槽に接種することによって測定することができる。OD650nmは、両方の試料に対して複数回の2つの時点で測定されるべきであり、これらの時点は、接種直後の時点(時点Aと呼ばれる)と増殖終了時の時点(時点Bと呼ばれる)とを含んでいなければならない。2つの連続時点(少なくとも24時間離れた)間の細胞濃度が、10%超増加していない場合に、増殖が停止したとみなされることに留意されたい。時点Bと時点Aの間のOD650nm差が、Stainer Scholte培地中に接種された第1の試料より第2の試料の方が大きい場合に、試験される合成培地は、Stainer Scholte培地で支持された場合よりも高い増殖収率のボルデテラ属種を支持する。
【0031】
合成培地は、好ましくは、15時間未満、12時間未満、10時間未満又は9時間未満のボルデテラ属種の平均世代時間を支持する。これは、段落[030]に記載のものに類似の方法を使用して試験することができるが、平均世代時間は、時点Aと時点Bの間の時間をこの2つの時点の間の世代数で割ることによって得られる。時点Aと時点Bの間の世代数は、第2の時点におけるOD650nmと第1の時点におけるOD650nmの比を計算してLog2に変換することによって得られる。
【0032】
合成培地は、好ましくは、Stainer Scholte培地によって支持されたものより高いレベルの百日咳毒の産生を維持する。これは、百日咳菌株の第1の試料をStainer Scholte培地を含むフラスコ又は発酵槽に接種し、百日咳菌株の第2の試料を試験される合成培地(Stainer Scholte培地に対して選択された容積と同じ容積)を含むフラスコ又は発酵槽に接種し、増殖が停止するまで両方の試料をインキュベートし、それぞれの試料中の百日咳毒産生のレベルを計算することによって測定することができる。百日咳毒産生のレベルを測定するための方法は、実施例1に記載されている。第2の試料に対する百日咳毒産生のレベルが、第1の試料より高い場合は、合成培地は、Stainer Scholte培地によって維持されたものより高いレベルの百日咳毒産生を支持する。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の合成培地は、10mg/L超又は15mg/L超の収率で百日咳毒を産生するボルデテラ属種を支持し、より好ましくは、収率は、20mg/L超である。合成培地が、ボルデテラ属種を支持し、ある収率で百日咳毒を産生させるか否かは、合成培地にボルデテラ属種の試料を接種し、増殖が停止するまで細胞をインキュベートすることによって測定することができる。増殖終了時では、百日咳毒の収率は、実施例1に記載された方法を使用して計算することができる。
【0034】
一実施形態では、合成培地は、実質的にバランスのとれた培地である。実質的にバランスのとれた培地とは、培養終了時に、いずれの特定の栄養成分についても顕著な過剰が存在しない培地である。合成培地が、実質的にバランスのとれた培地であるか否かは、増殖が停止するまで培地中でボルデテラ属種をインキュベートし、増殖が停止した後に培地上清を検査することによって試験することができる。代謝源(つまり、窒素、リン及び硫黄源)が、実質的に類似の速度(相互に10%以内)で使用される場合、合成培地は、バランスがとれている。好ましい実施形態では、すべての代謝源の最終濃度は、約0mMとなる。
【0035】
一般には、合成培地は、少なくとも炭素源、リン源、窒素源、硫黄源及び緩衝液を含んでいなければならない。窒素源は、有機であっても、無機であってもよい。窒素源は、アミノ酸であっても、ペプチドであってもよく、或は窒素源は、アミノ酸又はペプチドでない窒素源であってもよく、そのような合成培地では、合成培地はアミノ酸を含まない。一実施形態では、窒素源は、無機である。一実施形態では、窒素源は、アミノ酸、尿素、ポリアミン、アンモニウム(塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム又は硝酸アンモニウムなど)、核酸塩基、ヌクレオシド、及びヌクレオチドからなる群から選択される化合物を含む、又はからなる。さらなる実施形態では、窒素源は、塩化アンモニウムを含む、又はからなる。炭素源は、アミノ酸又はペプチドを含んでも、又はからなってもよく、或は、アミノ酸又はペプチドでない炭素源を含んでも、又はからなってもよい;そのような合成培地では、合成培地は、アミノ酸を含まない。本明細書では、「アミノ酸を含まない」という用語は、培地がペプチドもタンパク質も「含まない」ことを意味するが、これは、ペプチド又はタンパク質がアミノ酸源であるためである。一実施形態では、炭素源は、単糖、二糖、多糖、ポリオール(糖アルコール)、有機酸及びアミノ酸からなる群から選択される化合物を含む、又はからなる。さらなる実施形態では、炭素源は、グルコース、フルクトース、ソルボース、ガラクトサミン、マンノース、スクロース、ラムノース、ソルビトール、マンニトール、シトレート、ラクテート、アセテート、ピルベート、フマレート、スクシネート、プロリン及びグルタメートからなる群から選択される化合物を含む、又はからなる。さらなる実施形態では、炭素源は、グルタメート又はプロリンを含む。さらなる実施形態では、炭素源は、シトレート、ラクテート、アセテート、ピルベート、フマレート及びスクシネートからなる群から選択される有機酸を含む、又はからなる。
【0036】
本発明の合成培地は、ボルデテラ属種の工業規模培養のためのものである。一実施形態では、培地は、ボルデテラ属種を含む。一実施形態では、ボルデテラ属種は、ボルデテラ・ペトリー(Bordetella petrii)、ボルデテラ・アビウム(Bordetella avium)、ボルデテラ・ヒンジー(Bordetella hinzii)、ボルデテラ・トレマツム(Bordetella trematum)、ボルデテラ・ホルムシー(Bordetella holmesii)、パラ百日咳菌、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)及び百日咳菌(他には、ヘモフィルス・ペルツシスとしても知られる)からなる群から選択される種である。好ましくは、ボルデテラ属種は、パラ百日咳菌、気管支敗血症菌及び百日咳菌からなる群から選択される。より好ましくは、ボルデテラ属種は、百日咳菌である。
【0037】
硫黄源
第一の実施形態では、合成培地は0.035mM未満、0.030mM未満、0.020mM未満、0.010mM未満のサルフェート、0.005mM未満、0.0001mM未満、0.00005mM未満、0.00001mM未満、0.035mM〜0mM、0.005mM〜0mM、又は0.00001mM〜0mMを含む。本発明者は、驚くべきことに合成培地からのサルフェートの除去が、ボルデテラのための合成培地において用いられた場合に、PT等の病原性因子の収率を顕著に増加させることを見出した。WO0178462及びLacey(1960; J.Hyg. 58:57-93)は、サルフェートが病原性因子の産生の阻害剤になり得るというアイデアを開示しているが、WO0178462において開示された低サルフェート培地は、0.001g/Lの添加されたFeSO4を含んでいた。したがって、WO0178462の発明者が、百日咳(pertussis)の増殖を可能とする合成培地を調製するために、少なくともいくらかの量のFeSO4の存在が必要であったと考えていたことは明白である。高レベルの病原性因子を得るためには、培地が病原性因子の産生及び好適なバイオマスまでのボルデテラの増殖の両方を支持しなければならず、したがってサルフェートが病原性因子の発現を阻害することは知られていたが、ボルデテラがサルフェートの非存在下で妥当なバイオマスまで増殖できるかどうかは知られていなかったことに留意されたい。Jebb及びTomlinson(J.Gen.Microbiol.17, 59-68)は、サルフェートが硫黄源を提供するのに十分でなかったことを開示しているが、これは他の文献、並びにJebb及びTomlinsonを引用する、続いて彼らの培地にサルフェートを加えた後の文献(例えば、Licary, Siber and Swartz, Journal of Biotechnology l 20 (1991) 117-130) と矛盾することにも留意されたい。この結論は、ボルデテラのための培地に関する他の刊行物によっても支持され、一般に、これらの刊行物では全てサルフェートが存在することを必要とするようである(例えば、上記のStainer Scholte培地はサルフェートを含む)。しかしながら、本発明者は、驚くべきことに、サルフェートを除く(したがって、病原性因子の発現の阻害を低減する)ために、FeSO4がクエン酸Fe(III)に置換され得、またボルデテラの増殖を支持する効率的な培地を提供すること、及びサルフェートの濃度をWO0178462で開示されたものよりもさらに低減することによって、PT等の病原性因子の収率の顕著な増加がもたらされることを見出した。さらなる実施形態では、合成培地はサルフェートを含まない。
【0038】
サルフェートなどのある物質を「含まない」との語句は、培地の作製者が、その物質を顕著な量添加していない培地を指す。したがって、培地が、例えば混入物質であるその物質を少量含む場合、培地はある物質を「含まない」とみなし得る。あるいは、培地の作製者が、百日咳毒素等の病原性因子の収率を変えるのに十分でない非常に少量のその物質を添加した場合は、培地はある物質を「含まない」とみなし得る。これは、少量のその物質の存在下で、及び少量のその物質の非存在下でボルデテラ属種を培養し、これらの二つの培地においてELISAを用いて病原性因子の収率を測定することによって、決定され得る。好適なELISAは段落[0124]に記載されている。
【0039】
一実施形態では、本発明は、システイン及びシスチンからなる群から選択されるシステイン源を含む合成培地であって、システイン源が0.50mM未満、0.30mM未満、0.25mM未満、0.20mM未満、0.15mM未満、0.10mM未満、0.05mM未満、0.03mM未満、0.01mM未満、0.005mM未満、0.001mM未満、0.0005mM未満、0.0001mM未満、0.00005mM未満又は0.00001mM未満の濃度である前記合成培地を提供する。
【0040】
システインは、ボルデテラによるバイオマス合成のために一般に用いられるが、システインが高濃度で存在する場合には、それはサルフェートに分解され得る(Bogdan et al ((2001); Infect. Immun. 69:6823-6830))。サルフェート同化経路として同化され得るこのサルフェートは、機能的ではない(Parkhill et al ((2003); Nat.Genet. 35:32-40))。したがって、培地における高濃度のシステインの使用は、上記の通り、病原性因子の発現を阻害するサルフェートイオンを提供し得る。しかしながら、Bogdan et alは、システインが増殖に必要であったことを認めており、したがって、Bogdan et alで開示された培地は(おそらく低減した量のシステインを含む培地であっても)、比較的高濃度のシステインを含む。同様に、Jebb及びTomlinson (J.Gen.Microbiol.17, 59-68)には、システインの存在が増殖に不可欠であると記載されている。しかしながら、本発明者は、初めてボルデテラがシステインの非存在下で増殖し得ること、したがって、Bogdan et alで開示されたものよりもさらに低い濃度のシステインが用いられ得ることを示した。
【0041】
シスチンは、ボルデテラによってシステインと同じように分解され得るが、ボルデテラに二倍のシステインを提供する、システインの二量体である。
【0042】
さらなる実施形態では、合成培地はシステイン又はシスチンを含まない。好ましい実施形態では、合成培地は、サルフェート、システイン又は及びシスチンを含まない。
【0043】
さらなる実施形態では、合成培地はチオサルフェート、トリチオネート、テトラチオネート、ペルオキソジサルフェート、スルフィド及びサルファイトからなる群から選択される無機硫黄源を含む。さらなる実施形態では、合成培地は有機硫黄源を含まない。
【0044】
本発明者は、初めて(システインではなく)無機硫黄がボルデテラの増殖のための硫黄源として用いられ得ることを示した。
【0045】
従来技術、例えばJebb and Tomlinson (J.Gen.Microbiol.17, 59-68)から、有機硫黄源がボルデテラの増殖に必要であると考えられていた。これは、サルフェート及びチオサルフェートからのシステインの合成経路が、ボルデテラ族のメンバーでは機能しないためである(Parkhill et al ((2003); Nat.Genet. 35:32-40))。しかしながら、本発明者は、初めて、ボルデテラが(チオサルフェートなどの無機硫黄源が存在する限り)有機硫黄源の非存在下で増殖し得ることを示した。
【0046】
一実施形態では、合成培地はチオサルフェートを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、0.005mM超、0.006mM超、0.007mM超、0.008mM超、0.010mM超、0.050mM超、0.100mM超、0.005mM〜0.100mM、0.005mM〜0.050mM、0.005mM〜0.025mM、約0.120mM又は約0.011mMのチオサルフェートを含む。さらなる実施形態では、合成培地はトリチオネートを含む。さらなる実施形態では、合成培地は0.003mM超、0.004mM超、0.005mM超、0.008mM超、0.010mM超、0.020mM超、0.050mM超、0.003mM〜0.500mM、0.003mM〜0.100mM、0.005mM〜0.010mM、約0.007mM又は約0.080mMのトリチオネートを含む。一実施形態では、合成培地はテトラチオネートを含む。さらなる実施形態では、合成培地は0.002mM超、0.003mM超、0.004mM超、0.005mM超、0.025mM超、0.050mM超、0.002mM〜1.000mM、0.002mM〜1.000mM、0.010mM〜0.100mM、約0.060mM又は約0.0006mMのテトラチオネートを含む。一実施形態では、合成培地はペルオキソジサルフェートを含む。さらなる実施形態では、合成培地は0.005mM超、0.006mM超、0.007mM超、0.008mM超、0.010mM超、0.050mM超、0.100mM超、0.005mM〜1.000mM、0.005mM〜0.200mM、0.005mM〜0.015mM、約0.120mM又は約0.011mMのペルオキソジサルフェートを含む。一実施形態では、合成培地はスルフィドを含む。さらなる実施形態では、合成培地は0.010mM超、0.012mM超、0.014mM超、0.016mM超、0.020mM超、0.100mM超、0.200mM超、0.010mM〜1.000mM、0.010mM〜0.300mM、0.010mM〜0.100mM、約0.240mM又は約0.022mMのスルフィドを含む。一実施形態では、合成培地はサルファイトを含む。さらなる実施形態では、合成培地は0.010mM超、0.012mM超、0.014mM超、0.016mM超、0.020mM超、0.100mM超、0.200mM超、約0.240mM又は約0.022mMのサルファイトを含む。
【0047】
一実施形態では、合成培地はチオサルフェート及びトリチオネート、チオサルフェート及びテトラチオネート、チオサルフェート及びペルオキソジサルフェート、チオサルフェート及びスルフィド、チオサルフェート及びサルファイト、トリチオネート及びテトラチオネート、トリチオネート及びペルオキソジサルフェート、トリチオネート及びスルフィド、トリチオネート及びサルファイト、テトラチオネート及びペルオキソジサルフェート、テトラチオネート及びスルフィド、テトラチオネート及びサルファイト、ペルオキソジサルフェート及びスルフィド、ペルオキソジサルフェート及びサルファイト又はスルフィド及びサルファイトを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、チオサルフェート、トリチオネート、テトラチオネート、ペルオキソジサルフェート、スルフィド及びサルファイトからなる群から選択される、2、3、4、5、6、又はそれ以上の無機硫黄源を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、合成培地はサルフェート、システイン又はシスチンを含まず、かつ0.005mM超、0.006mM超、0.007mM超、0.008mM超、0.010mM超、0.050mM超、0.100mM超、0.005mM〜0.100mM、0.005mM〜0.050mM、0.005mM〜0.025mM、約0.120mM又は約0.011mMのチオサルフェートを含む。
【0049】
緩衝液
さらなる実施形態では、合成培地は、MOPS、MES、HEPES及びPIPESからなる群から選択される緩衝液を含む。
【0050】
本発明者は、驚くべきことに、トリス及びβ-グリセロリン酸以外の緩衝液、特にMOPS緩衝液を含む合成培地が、他の培地に比べて百日咳菌の改善された増殖率を示すことを見出した。百日咳菌のための合成培地における使用のための代替的な緩衝液は、Lothe et al (Journal of Biological Standardisation (1985) 13, 129-134)によって探索されたが、彼達はβ-グリセロリン酸が優れた緩衝液であると結論付けた。しかしながら、本発明者は、さらなる緩衝液が効果的であるだけでなく、MOPSがβ-グリセロリン酸に対して改善を示すことも見出した。この理由のために、本発明は、MOPS緩衝液を含む合成培地を提供する。一実施形態では、緩衝液は、2mM超、5mM超、7mM超、9mM超、10mM超、11mM超、2mM〜100mM、2mM〜50mM、5mM〜20mM又は約12mMの濃度のMOPSである。
【0051】
高濃度の銅
ボルデテラのための培地において銅が必要でないことが示されたが(Stainer and Scholte Journal of General Microbiology (1971), 63:211-220)、本発明者は、驚くべきことに、比較的高濃度の銅をボルデテラのための合成培地に添加することで、ボルデテラによって産生される毒素の量(例えば、百日咳菌からの百日咳毒素の発現)の顕著な増加がもたらされることを見出した。
【0052】
したがって、さらなる実施形態では、合成培地は2μM超、3μM超、4μM超、5μm超、6μM超、7μM超、8μM超、200μM未満、150μM未満、100μM未満、4μM〜10μM、2μM〜200μM、3μM〜150μM、又は5μM〜100μMの銅を含む。一実施形態では、銅源は塩化銅、硫酸銅、酢酸銅、塩素酸銅及び炭酸銅からなる群から選択される。さらなる実施形態では、銅は塩化銅の形態である。
【0053】
高濃度のマグネシウム
高濃度のマグネシウムは、ボルデテラを調節すること、並びに百日咳毒素及びFHA等の病原性因子を発現する傾向が弱い状態へのボルデテラの変換を誘導することが知られている(Idigbe et al J.MED.MICROBIOL (1981) 409-418)、及びLacey et al ((1960) J.Hyg. 58:57-93))。上記の通り、高レベルの毒素の発現を誘導する環境におけるボルデテラの増殖が有利であり、マグネシウムの添加は病原性因子の発現を低減し、したがって培地でのボルデテラのワクチン産生を除去することが知られていた。しかしながら、本発明者は、驚くべきことに、高濃度のマグネシウムの添加がPT等の病原性因子の高レベルの発現を有する合成培地において用いられ得ることを見出した。
【0054】
これらの理由のため、一実施形態では、合成培地は、2μM超、5μM超、10μM超、25μM超、50μM超、75μM超、100μM超、200μM超、300μM超、400μM超、2μM〜6000μM、1000μM〜6000μM又は約5000μMのマグネシウムを含む。
【0055】
アミノ酸源
培地が窒素源及び炭素源を含まなければならないこと、多くの場合いくつかのアミノ酸(必須アミノ酸)が増殖に必要であることが一般に知られている。Stainer及びScholte (Stainer and Scholte Journal of General Microbiology (1971), 63:211-220)は、単純化した合成培地を作製しようと試みたが、彼達は少なくとも二つのアミノ酸、すなわちグルタミン酸、プロリン及びシステインが必要であったと結論付けた。
【0056】
しかしながら、本発明者は、驚くべきことに、ボルデテラが単一の種類のアミノ酸のみを含む培地で増殖し得ることを見出した。特に、本発明者は、ボルデテラが単一のアミノ酸のみを含み、システインを含まない培地で増殖し得ることを示し、上記の通り、これまではシステインが硫黄源として必要であると考えられていたため、これは特に驚くべきことである。これは、上記の通り、商業的使用のための培地が、培地の製造の難しさ、培地のコスト、及びバッチ間のばらつきの潜在的原因を低減するために、可能な限り単純であるべきであることから、有利である。
【0057】
この理由のため、一実施形態では、合成培地は唯一のアミノ酸源を含む。用語「唯一のアミノ酸源」は、一種類のアミノ酸源(例えば、グルタミン、又はアスパラギン又は他のアミノ酸)を有する培地を提供する化合物を指し、シスチン等の化合物は、ジペプチドであるが、システインのみを含み、したがって単一のアミノ酸のみが供給されるため、唯一のアミノ酸源とみなされ得る。培地は、システイン及びシスチンの両方が存在する場合、単一のアミノ酸源を含むとみなされ得ることに留意されたい。なぜなら、これらの化合物の両方が、システインのみ(唯一のアミノ酸源)を培地に供給するからである。この用語は、アミノ酸のD-及びL-エナンチオマーを含む。一実施形態では、アミノ酸源はD-エナンチオマーであり、さらなる実施形態では、アミノ酸源はL-エナンチオマーであり、さらなる実施形態では、アミノ酸はL-エナンチオマー又はD-エナンチオマーのいずれかであり得る。「唯一のアミノ酸源」を有する培地は、他のアミノ酸を含まず、例えば、システインを唯一のアミノ酸源として有する培地は、グルタメート、アラニン、アスパルテート、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、バリン、チロシン又は他の任意のアミノ酸を含まない。上記の通り、あるアミノ酸等のある物質を「含まない」との用語は、培地の作製者が、その物質を顕著な量添加していない培地を指す。したがって、培地が、例えば混入物質であるその物質を少量含む場合、培地はある物質を「含まない」とみなし得る。あるいは、培地の作製者が、百日咳毒素等の病原性因子の収率を変えるのに十分でない非常に少量のその物質を添加した場合は、培地はある物質を「含まない」とみなし得る。これは、少量のその物質の存在下で、及び少量のその物質の非存在下でボルデテラ属種を培養し、これらの二つの培地においてELISAを用いて病原性因子の収率を測定することによって、決定され得る(上記の通り)。さらなる実施形態では、唯一のアミノ酸源は、唯一の窒素源である。
【0058】
一実施形態では、唯一のアミノ酸源は、システイン、シスチン、アラニン、グリシン、グルタメート、プロリン、セリン、グルタミン、アスパルテート、ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニン、オルニチン、リシン、トレオニン、アスパラギン及びメチオニンからなる群から選択される。一実施形態では、唯一のアミノ酸源は、75mM超、100mM超、125mM超、75mM〜250mM、100mM〜150mM又は約125mMの濃度のシステインである。一実施形態では、唯一のアミノ酸源は、75mM超、100mM超、125mM超、75mM〜250mM、100mM〜150mM又は約125mMの濃度のプロリンである。一実施形態では、唯一のアミノ酸源は、75mM超、100mM超、125mM超、75mM〜250mM、100mM〜150mM又は約125mMの濃度のグルタメートである。一実施形態では、唯一のアミノ酸源は、75mM超、100mM超、125mM超、75mM〜250mM、100mM〜150mM又は約125mMの濃度のグルタミンである。一実施形態では、唯一のアミノ酸源は、10mM超、20mM超、30mM超、10mM〜100mM、20mM〜50mM又は約30mMのアスパルテートである。一実施形態では、唯一のアミノ酸源は、75mM超、100mM超、125mM超、75mM〜250mM、100mM〜150mM又は約125mMの濃度のアスパラギンである。一実施形態では、唯一のアミノ酸源は、75mM超、100mM超、125mM超、75mM〜250mM、100mM〜150mM又は約125mMの濃度のセリンである。一実施形態では、唯一のアミノ酸源は、75mM超、100mM超、125mM超、75mM〜250mM、100mM〜150mM又は約125mMの濃度のアラニンである。
【0059】
本発明者は、さらに、ボルデテラのための合成培地において唯一のアミノ酸源を用いることが、毒素の高産生を支持し得るため有利であり得るが、アミノ酸源を全く含まない培地を開発することも可能であることを示した。これは、炭素及び窒素源が別々の成分を介して提供される培地を提供し、これは炭素及び窒素源を別々に操作することを可能とする。実際、Thalen et al (Journal of Biotechnology (1999) 75: 147-159)は、(Stainer and Scholte (Journal of General Microbiology (1971), 63:211-220)の培地で見られる様な)1:5の窒素対炭素比は、ボルデテラの増殖に最適でなく、アンモニアの蓄積をもたらすことを報告した。Thalen et alは、1:10の窒素対炭素比を用いることによって、アンモニアの蓄積が劇的に低減し得ることを示した。しかしながら、かかる比は、この比が分子組成によって決定され、1:1.5(アルギニン)〜1:9(チロシン及びフェニルアラニン)の範囲である天然のアミノ酸では達成することができない。この制限を避けるために、Thalen et alは、窒素を含まない第二の炭素源(有機酸であるラクテート)を添加することによって炭素対窒素比を操作した。しかしなから、この解決手段は、次にプロセスのモニタリング及び理解を複雑にする代謝フラックス、及びバランスのとれた培地の達成の点で複雑である(Neeleman et al. (Applied Microbiology and Biotechnology (2001), 57:489-493))。完全にアミノ酸を除去することは、一方で窒素を含まない炭素源の、他方で炭素を含まない窒素源の相対濃度を注意深く調節することによって、炭素対窒素比を正確に操作するための代替的な解決手段を提供する。この理由のため、さらなる実施形態では、合成培地はアミノ酸源を含まない。
【0060】
培地は、アミノ酸源を含まない場合、炭素源を含むべきである。炭素源は、好ましくは有機酸である。一実施形態では、有機酸は、シトレート、ラクテート、アセテート、ピルベート、フマレート及びスクシネートからなる群から選択される。本発明者は、有機酸が、ボルデテラの炭素源として、妥当なレベルの増殖を支持する、グルタメートの好適な代替物であることを示した。
【0061】
一実施形態では、合成培地が単一のアミノ酸源を含み、又はアミノ酸源を含まない場合、合成培地は、リン酸水素カリウム、塩化カリウム、マグネシウム、カルシウム、クエン酸Fe(III)、MOPS緩衝液、ナイアシン、ジメチル-β-シクロデキストリン、銅、又はコバルトを含む少なくとも一つの合成培地成分をさらに含み、好ましくは、培地は2、3、4、5、6、7、8、又は9のこれらの成分を含む。好ましい実施形態では、合成培地はこれらの成分の全てを含む。さらなる実施形態では、合成培地はナトリウム、亜鉛、ビオチン、リボフラビン、及びパントテン酸カルシウムを含み得る。好ましくは、培地はナトリウム、亜鉛、ビオチン、リボフラビン、及びパントテン酸カルシウムを含む。
【0062】
さらなる実施形態では、合成培地は単一のアミノ酸源を含み、又はアミノ酸源を含まず、かつ合成培地は、250mg/L〜750mg/LのKH2PO4、100〜300mg/LのKCl、500〜1500mg/LのMgCl2.6H2O、50mg/L〜150mg/LのCaCl2.2H2O、10mg/L〜30mg/Lのクエン酸Fe(III).3H2O、1000mg/L〜5000mg/LのMOPS、4mg/L〜8mg/Lのナイアシン、500mg/L〜2000mg/Lのジメチル-β-シクロデキストリン、0.5mg/L〜2mg/LのCuCl2.2H2O、及び0.1mg/L〜1mg/LのCoCl2.H2Oを含む。さらなる実施形態では、培地は、1mg/L〜25mg/LのZnCl2、0.01〜1.00 mg/Lのビオチン、0.01〜1.00mg/Lのリボフラビン、1mg/L〜10mg/Lのパントテン酸カルシウム及び5000mg/L〜1500mg/LのNaClをさらに含む。
【0063】
さらなる有益な添加物
上記の通り、合成培地は少なくとも炭素源、窒素源、リン源、硫黄源及び緩衝液を含まなければならないと考えられる。一般に、合成培地を単純になるように(多すぎる成分を含まないように)設計することが、コスト及び製造の複雑さを低減するため、有利である。しかしながら、本発明者は、亜鉛、コバルト、チアミン、リボフラビン、パントテネート、0.4μM超のビオチン、50μM超のカルシウム、15μM超のナイアシン、及び25μM超のアスコルビン酸からなる群から選択される添加物の添加が、百日咳毒素等の病原性因子の発現の収率を顕著に増加させ得ることを示した。
【0064】
この理由のため、一実施形態では、合成培地は、亜鉛、コバルト、チアミン、リボフラビン、及びパントテネートからなる群から選択される添加物を含む。さらなる実施形態では、合成培地は、0.4μM超のビオチン、50μM超のカルシウム、15μM超のナイアシン、及び25μM超のアスコルビン酸からなる群から選択される添加物を含む。
【0065】
一実施形態では、合成培地はこれらの添加物の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、又は9を含む。好ましい実施形態では、合成培地は、亜鉛、コバルト、リボフラビン、チアミン、パントテネート、0.4μM超のビオチン、0.05mM超のカルシウム、15μM超のナイアシン、及び25μM超のアスコルビン酸の全てを含む。一実施形態では、合成培地における添加物の濃度は、ボルデテラによる病原性因子の産生のレベルを増加させるのに、添加物について十分である(これは、添加物の添加が百日咳毒素の収率を変更させるか否かを測定するための、段落[0038]のアッセイを用いて試験され得る)。
【0066】
一実施形態では、合成培地は、0.1μM超、1μM超、5μM超、10μM超、20μM超、30μM超、40μM超、50μM超、60μM超、70μM超、100μM超、200μM超、400μM超、400μM超、600μM超、700μM超、10μM〜2000μM、20μM〜1000μM、30μM〜100μM又は約75μMの亜鉛を含む。一実施形態では、合成培地は、0.05μM超、0.10μM超、0.15μM超、0.10μM〜0.30μM、0.10μM〜0.20μM又は約0.18μMのコバルトを含む。一実施形態では、合成培地は、0.05μM超、0.10μM超、0.15μM超、0.05μM〜5.00μM、0.10μM〜1.00μM、又は0.15μM〜0.50μMのチアミンを含む。一実施形態では、合成培地は、0.1μM超、0.2μM超、0.3μM超、0.4μM超、0.5μM超、0.6μM超、0.8μM超、0.1μM〜10μM、0.5μM〜1.0μM又は約0.8μのリボフラビンを含む。一実施形態では、合成培地は、0.10μM超、0.5μM超、1.0μM超、1.5μM超、2.0μM超、5.0μM超、8.0μM超、0.5μM〜100μM、0.5μM〜25.0μM、5.0μM〜10.0μM、又は約8.0μMのパントテネートを含む。一実施形態では、合成培地は、0.4μM超、0.5μM超、0.6μM超、0.8μM超、0.5μM〜100μM、0.5μM〜25.0μM、5.0μM〜10.0μM、又は約8.0μMのビオチンを含む。一実施形態では、合成培地は、100μM超、120μM超、140μM超、50μM〜1000μM、50μM〜500μM、100μM〜200μM又は約140μMのカルシウムを含む。一実施形態では、合成培地は、20μM超、30μM超、35μM超、15μM〜500μM、15μM〜100μM、25μM〜75μM又は約50μMのナイアシンを含む。一実施形態では、合成培地は、50μM超、75μM超、100μM超、1000μM超、2000μM超、3000μM超、25μM〜10000μM、10000μM〜5000μM、又は約3500μMのアスコルビン酸を含む。
【0067】
好ましい実施形態では、合成培地は、0.01mM超の亜鉛、0.0005mM超のコバルト、0.005mM超のチアミン、0.0001mM超のリボフラビン、0.005超のパントテネート、0.4μM超のビオチン、0.05mM超のカルシウム、15μM超のナイアシン及び25μM超のアスコルビン酸を含む。
【0068】
さらなる好ましい実施形態では、合成培地は700μM超の亜鉛、0.15μM超のコバルト、29μM超のチアミン、0.8μM超のリボフラビン、8.0μM超のパントテネート、0.8μM超のビオチン、140μM超のカルシウム、35μM超のナイアシン及び3000μM超のアスコルビン酸を含む。
【0069】
さらなる好ましい実施形態では、合成培地は、10μM〜150μMの亜鉛、0.10μM〜0.30μMのコバルト、25μM〜200μMのチアミン、0.1μM〜10μMのリボフラビン、0.5μM〜100μMのパントテネート、0.5μM〜100μMのビオチン、50μM〜1000μMのカルシウム、1μM〜500μMのナイアシン及び25μM〜10000μMのアスコルビン酸を含む。
【0070】
さらなる好ましい実施形態では、合成培地は、30μM〜80μMの亜鉛、0.10μM〜0.20μMのコバルト、25μM〜50μMのチアミン、0.5μM〜1.0μMのリボフラビン、5.0μM〜10.0μMのパントテネート、5.0μM〜10.0μMのビオチン、100μM〜200μMのカルシウム、25μM〜75μMのナイアシン及び10000μM〜5000μMのアスコルビン酸を含む。
【0071】
アミノ酸濃度
本発明者は、Stainer Scholte等の従来の培地が、高レベルのアスパルテート、グリシン、メチオニン及びロイシンの添加によって改善され得ることをさらに示した。したがって、さらなる実施形態では、1000μM超の濃度のアスパルテート、1000μM超の濃度のグリシン、500μM超の濃度のメチオニン、及び1500μM超の濃度のロイシンからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む合成培地が提供される。
【0072】
一実施形態では、合成培地は、1000μM超、2000μM超、2450μM超、3000μM超、3500μM超、1000μM〜10000μM、1000μM〜5000μM又は約4000μMの濃度のアスパルテートを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、500μM超、1000μM超、1500μM超、1750μM超、500μM〜5000μM、500μM〜2500μM又は約2000μMの濃度のグリシンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、100μM超、300μM超、500μM超、600μM超、700μM超、100μM〜2000μM、100μM〜1000μM又は約775μMの濃度のメチオニンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、500μM超、1000μM超、1500μM超、2000μM超、2500μM超、3000μmM超、500μM〜10000μM、500μM〜5000μM、3000μM〜4000μM又は約3300μMの濃度のロイシンを含む。一実施形態では、合成培地は、100μM超の濃度のアスパルテート、1000μM超の濃度のグリシン、500μm超の濃度のメチオニン、及び1500μm超の濃度のロイシンの少なくとも2、3、又は4を含む。好ましい実施形態では、本発明の合成培地は、1000μM超の濃度のアスパルテート、1000μM超の濃度のグリシン、500μM超の濃度のメチオニン、及び1500μM超の濃度のロイシンを含む。
【0073】
さらなる実施形態では、合成培地は、50mM超、75mM超、90mM超、100mM超、110mM超、50mM〜500mM、50mM〜250mM、100mM〜150mM、又は約120mMの濃度のグルタメートを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、1000μM超、1500μM超、2000μM超、2500μM超、3000μM超、1000μM〜10000μM、1000μM〜5000μM、3000μM〜4000μM又は約3400μMの濃度のアラニンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、500μM超、750μM超、1000μM超、1250μM超、1400μM超、500μM〜10000μM、500μM〜5000μM、1000μM〜2000μM又は約1400μMの濃度のフェニルアラニンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、50μM超、100μM超、150μM超、200μM超、50μM〜1000μM、50μM〜500μM、150μM〜250μM又は約200μMの濃度のヒスチジンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、500μM超、1000μM超、1500μM超、1750μM超、500μM〜5000μM、500μM〜2500μM、1000μM〜2000μM又は約1800μMの濃度のイソロイシンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、500μM超、1000μM超、1500μM超、2000μM超、500μM〜10000μM、500μM〜5000μM、1500μM〜2500μM又は約2100μMの濃度のリシンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、1000μM超、3000μM超、4000μM超、5000μM超、6000μM超、7000μM超、1000μM〜50000μM、1000μM〜10000μM、7000μM〜8000μM又は約7600μMの濃度のプロリンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、500μmM超、1000μM超、1500μM超、1700μM超、500μM〜10000μM、500μM〜5000μM、1000μM〜2000μM又は約1700μMの濃度のセリンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、1000μM超、2000μM超、2500μM超、3000μM超、1000μM〜10000μM、1000μM〜5000μM、3000μM〜4000μM又は約3400μMの濃度のバリンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、25μM超、50μM超、75μM超、100μM超、150μM超、175μM超、25μM〜1000μM、25μM〜500μM、100μM〜200μM又は約180μMの濃度のチロシンを含む。さらなる実施形態では、合成培地は、100μM超、200μM超、400μM超、500μM超、600μM超、700μM超、100μM〜5000μM、100μM〜2500μM、100μM〜1000μM又は約750μMの濃度のグルタチオンを含む。好ましい実施形態では、合成培地は、50mM超の濃度のグルタメート、1000μM超の濃度のアラニン、1000μM超の濃度のアスパルテート、500μM超の濃度のフェニルアラニン、500μM超の濃度のグリシン、50μM超の濃度のヒスチジン、500μM超の濃度のイソロイシン、500μM超の濃度のリシン、500μM超の濃度のロイシン、100μM超の濃度のメチオニン、1000μM超の濃度のプロリン、500μM超の濃度のセリン、1000μM超の濃度のバリン、25μM超の濃度のチロシン、及び700μM超の濃度のグルタチオンを含む。さらなる好ましい実施形態では、合成培地は、110mM超の濃度のグルタメート、3000μM超の濃度のアラニン、3500μM超の濃度のアスパルテート、1400μM超の濃度のフェニルアラニン、1750μM超の濃度のグリシン、200μM超の濃度のヒスチジン、1750μM超の濃度のイソロイシン、2000μM超の濃度のリシン、3000μM超の濃度のロイシン、700μM超の濃度のメチオニン、7000μM超の濃度のプロリン、1700μM超の濃度のセリン、3000μM超の濃度のバリン、175μM超の濃度のチロシン、及び700μM超の濃度のグルタチオンを含む。
【0074】
好ましい実施形態では、合成培地は、1000μM〜10000μMの濃度のアスパルテート、500μM〜5000μMの濃度のグリシン、100μM〜2000μMの濃度のメチオニン、500μM〜10000μMの濃度のロイシン、50mM〜500mMの濃度のグルタメート、1000μM〜10000μMの濃度のアラニン、500μM〜10000μMの濃度のフェニルアラニン、50μM〜1000μMの濃度のヒスチジン、500μM〜5000μMの濃度のイソロイシン、500μM〜10000μMの濃度のリシン、1000μM〜50000μMの濃度のプロリン、500μM〜10000μMの濃度のセリン、1000μM〜10000μMの濃度のバリン、25μM〜1000μMの濃度のチロシン、及び100μM〜5000μMの濃度のグルタチオンを含む。
【0075】
好ましい実施形態では、合成培地は、1000μM〜5000μMの濃度のアスパルテート、500μM〜2500μMの濃度のグリシン、100μM〜1000μMの濃度のメチオニン、3000μM〜4000μMの濃度のロイシン、100mM〜150mMの濃度のグルタメート、3000μM〜4000μMの濃度のアラニン、1000μM〜2000μMの濃度のフェニルアラニン、150μM〜250μMの濃度のヒスチジン、1000μM〜2000μMの濃度のイソロイシン、1500μM〜2500μMの濃度のリシン、7000μM〜8000μMの濃度のプロリン、1000μM〜2000μMの濃度のセリン、3000μM〜4000μMの濃度のバリン、100μM〜200μMの濃度のチロシン及び100μM〜1000μMの濃度のグルタチオンを含む。
【0076】
成分の比
本発明者は、驚くべきことに、ある成分比が用いられた場合に、合成培地が百日咳毒素及びFHA等の病原性因子の改善された収率をもたらすであろうことを見出した。この理由のために、少なくとも二つの成分を含み、該少なくとも二つの成分が、以下からなる群から選択される合成培地が提供される:
(a)100:1超、125:1超、150:1超、175:1超又は200:1超の比の炭素及びリン(炭素:リン)(mol/mol);
(b)20:1超、22:1超、24:1超、又は25:1超の比のグルタメート及びリン(グルタメート:リン)(mol/mol);
(c)600:1未満、500:1未満、400:1未満又は300:1未満の比の炭素及びマグネシウム(炭素:マグネシウム)(mol/mol);
(d)115:1未満、110:1未満、105:1未満又は100:1未満の比のグルタメート及びマグネシウム(グルタメート:マグネシウム)(mol/mol);
(e)3000:1超、3500:1超、又は4000:1超の比の炭素及び銅(炭素:銅) (mol/mol);
(f)170:1超、180:1超、200:1超又は250:1超の比のグルタメート及び銅(グルタメート:銅) (mol/mol);
(g)9500:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超の比の炭素及び鉄(炭素:鉄) (mol/mol);
(h)1600:1超、1800:1超、2000:1超又は2500:1超の比のグルタメート及び鉄(グルタメート:鉄) (mol/mol);
(i)500:1未満、400:1未満、300:1未満又は250:1未満の比の炭素及びグリシン(炭素:グリシン) (mol/mol);
(j)100:1未満、80:1未満、75:1未満又は60:1未満の比のグルタメート及びグリシン(グルタメート:グリシン) (mol/mol);
(k)440:1未満、400:1未満、350:1未満又は300:1未満の比の炭素及びロイシン(炭素:ロイシン) (mol/mol);
(l)75:1未満、70:1未満、60:1未満又は50:1未満の比のグルタメート及びロイシン(グルタメート:ロイシン) (mol/mol);
(m)1200:1未満、1000:1未満、800:1未満又は750:1未満の比の炭素及びメチオニン(炭素:メチオニン) (mol/mol);
(n)200:1未満、175:1未満、150:1未満又は120:1未満の比のグルタメート及びメチオニン(グルタメート:メチオニン) (mol/mol);
(o) 3750:1超、4000:1超、4500:1超又は5000:1超の比の炭素及びカルシウム(炭素:カルシウム) (mol/mol);
(p)620:1超、650:1超、675:1超又は750:1超の比のグルタメート及びカルシウム(グルタメート:カルシウム) (mol/mol);
(q) 3000:1超、3500:1超、4750:1超又は5000:1超の比の炭素及びコバルト(炭素:コバルト) (mol/mol);
(r)750:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超の比のグルタメート及びコバルト(グルタメート:コバルト) (mol/mol);
(s)3000:1超、3500:1超、4000:1超又は5000:1超の比の炭素及び亜鉛(炭素:亜鉛) (mol/mol);
(t)750:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超の比のグルタメート及び亜鉛(グルタメート:亜鉛) (mol/mol);
(u)750:1超、1000:1超、1250:1超又は1500:1超の比の炭素及びサルフェート等価物(炭素:サルフェート等価物) (mol/mol);並びに
(v)130:1超、150:1超、175:1超又は200:1超の比のグルタメート及びサルフェート等価物(グルタメート:サルフェート等価物)(mol/mol)。
【0077】
一実施形態では、合成培地は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)、(n)、(o)、(p)、(q)、(r)、(s)、(t)、(u)及び(v)の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22全てを含む。一実施形態では、合成培地は、200:1超の比の炭素及びリン(炭素:リン) (mol/mol)、25:1超の比のグルタメート及びリン(グルタメート: リン) (mol/mol)、300:1未満の比の炭素及びマグネシウム(炭素:マグネシウム) (mol/mol)、100:1未満の比のグルタメート及びマグネシウム(グルタメート:マグネシウム) (mol/mol)、4000:1超の比の炭素及び銅(炭素:銅) (mol/mol)、250:1超の比のグルタメート及び銅(グルタメート:銅) (mol/mol)、1500:1超の比の炭素及び鉄(炭素:鉄) (mol/mol)、2500:1超の比のグルタメート及び鉄(グルタメート:鉄) (mol/mol)、250:1未満の比の炭素及びグリシン(炭素:グリシン) (mol/mol)、250:1未満の比のグルタメート及びグリシン (炭素;グリシン) (mol/mol)、300:1未満の比の炭素及びロイシン(炭素::ロイシン) (mol/mol)、50:1未満の比のグルタメート及びロイシン(グルタメート:ロイシン) (mol/mol)、750:1未満の比の炭素及びメチオニン(炭素:メチオニン) (mol/mol)、120:1未満の比のグルタメート及びメチオニン(グルタメート:メチオニン) (mol/mol)、5000:1超の比の炭素及びカルシウム(炭素:カルシウム) (mol/mol);750:1超の比のグルタメート及びカルシウム(グルタメート:カルシウム) (mol/mol)、5000:1超の比の炭素及びコバルト(炭素:コバルト) (mol/mol)、1500:1超の比のグルタメート及びコバルト(グルタメート:コバルト) (mol/mol)、5000:1超の比の炭素及び亜鉛(炭素:亜鉛)、1500:1超の比のグルタメート及び亜鉛(グルタメート:亜鉛) (mol/mol)、1500:1超の比の炭素及びサルフェート等価物(炭素:サルフェート等価物)、並びに200:1超の比のグルタメート及びサルフェート等価物(グルタメート:サルフェート等価物)を含む。
【0078】
用語「サルフェート等価物」は、無機サルフェート、又はその分解がサルフェートの産生をもたらす有機化合物(限定されるものではないが、システイン、シスチン及びグルタチオンを含む)を指す。
【0079】
FE(III)を含む培地
FeSO4を含むStainer Scholte等のボルデテラ培地は、Fe(II)イオンの形態で鉄を含む傾向があるが(Stainer and Scholte Journal of General Microbiology (1971), 63:211-220)、本発明者は、Fe(III)イオンもまたボルデテラのための培地に用いられ得ること、さらに(クエン酸Fe(III)等の)Fe(III)イオンを含む培地が、(FeSO4等の)Fe(II)イオンを含む培地よりも、高レベルの百日咳毒素等の病原性因子の産生を提供することを示した。
【0080】
したがって、一実施形態では、合成培地はFe(III)イオンを含む。同様に、一実施形態では、合成培地は、有機化合物と複合体を形成したFe(II)又はFe(III)を含み、好ましくは、合成培地は、有機化合物と複合体を形成したFe(III)を含む。一実施形態では、有機化合物は、ヘム、ヘモグロビン、ミオグロビン、トランスフェリン、フェリチン、ラクトフェリン、エンテロバクチン、エアロバクチン、アルカリジン、コプロゲン、フェリクロム、デスフェリクロム、フェロキサミン、ヒドロキサメート、シトレート及びジヒドロキシベンゾイルセリンからなる群から選択される有機化合物である。一実施形態では、合成培地は、シトレートと複合体を形成したFe(III)を含む。さらなる実施形態では、合成培地は、10μM超、20μM超、30μM超、40μM超、50μM超、10μM〜500μM、10μM〜100μM、25μM〜75μM又は約60μMのクエン酸Fe(III)を含む。
【0081】
さらなる培地成分
本発明の培地は、上記の成分に対してさらなる成分を含み得る。例えば、合成培地は塩化物を含み得る。一実施形態では、合成培地は、45mM未満、40mM未満、35mM未満、30mM未満、25mM未満、20mM未満又は15mM未満、0.1mM〜500mM、10mM〜20mM、又は約16mMの濃度の塩化物を含む。合成培地は、アセテートを含み得、一実施形態では、合成培地は、1mM超、2mM超、3mM超、4mM超、1mM〜100mM、4mM〜6mM又は約5mMの濃度のアセテートを含む。合成培地は、カリウムを含み得る。一実施形態では、合成培地は、1mM超、2mM超、3mM超、4mM超、5mM超、6mM超、1mM〜100mM、5.5mM〜7mM又は約6.5mMの濃度のカリウムを含む。合成培地はリン源を含み得、一実施形態では、リン源は、0.5mM超、1mM超、1.5mM超、2mM超、2.5mM超、0.5mM〜100mM、3mM〜4mM又は約3.6mMの濃度のホスフェートを含む。合成培地は、ジメチル-β-シクロデキストリンを含み得る。一実施形態では、合成培地は、0.1 mM超、0.2 mM超、0.3 mM超、0.4 mM超、0.5mM超、0.6mM超、0.01mM〜10mM、0.7mM〜0.8mM又は約0.75mMの濃度のジメチル-β-シクロデキストリンを含む。
【0082】
一実施形態では、合成培地は、サルフェート、システイン又はシスチンを含まず、かつ0.008mM超のチオサルフェート、11mM超のMOPS、6μM超の銅、400μM超のマグネシウム、700μM超の亜鉛、0.15μM超のコバルト、0.15μM超のコバルト、29μM超のチアミン、0.8μM超のリボフラビン、8.0μM超のパントテネート、0.8μM超のビオチン、140μM超のカルシウム、35μM超のナイアシン、3000μM超のアスコルビン酸、110mM超の濃度のグルタメート、3000μM超の濃度のアラニン、3500μM超の濃度のアスパルテート、1400μM超の濃度のフェニルアラニン、1750μM超の濃度のグリシン、200μM超の濃度のヒスチジン、1750μM超の濃度のイソロイシン、2000μM超の濃度のリシン、3000μM超の濃度のロイシン、700μM超の濃度のメチオニン、7000μM超の濃度のプロリン、1700μM超の濃度のセリン、3000μM超の濃度のバリン、175μM超の濃度のチロシン、700μM超の濃度のグルタチオン、15mM未満の塩化物、4mM超のアセテート、6mM超のカリウム、0.6mM超のジメチル-β-シクロデキストリン、及び2.5mM超のリンを含み;任意に合成培地は、ナトリウム及び50μM超のクエン酸Fe(III)をさらに含む。
【0083】
一実施形態では、合成培地は、サルフェート、システイン又はシスチンを含まず、かつ0.005mM〜0.100mMのチオサルフェート、2mM〜100mMのMOPS、2μM〜200μMの銅、2μM〜6000μMのマグネシウム、10μM〜150μMの亜鉛、0.10μM〜0.30μMのコバルト、25μM〜200μMのチアミン、0.1μM〜10μMのリボフラビン、0.5μM〜100μMのパントテネート、0.5μM〜100μMのビオチン、50μM〜1000μMのカルシウム、1μM〜500μMのナイアシン、25μM〜10000μMのアスコルビン酸、1000μM〜10000μMの濃度のアスパルテート、500μM〜5000μMの濃度のグリシン、100μM〜2000μMの濃度のメチオニン、500μM〜10000μMの濃度のロイシン、50mM〜500mMの濃度のグルタメート、1000μM〜10000μMの濃度のアラニン、500μM〜10000μMの濃度のフェニルアラニン、50μM〜1000μMの濃度のヒスチジン、500μM〜5000μMの濃度のイソロイシン、500μM〜10000μMの濃度のリシン、1000μM〜50000μMの濃度のプロリン、500μM〜10000μMの濃度のセリン、1000μM〜10000μMの濃度のバリン、25μM〜1000μMの濃度のチロシン、及び100μM〜5000μMの濃度のグルタチオン、0.1mM〜500mMの塩化物、1mM〜100mMのアセテート、1mM〜100mMのカリウム、0.01mM〜10mMのジメチル-β-シクロデキストリン及び0.5mM〜100mMのホスフェートを含み;任意に、合成培地は、ナトリウム及び10μM〜500μMのFe(IIIクエン酸)をさらに含む。
【0084】
一実施形態では、合成培地はサルフェート、システイン又はシスチンを含まず、かつ0.005mM〜0.025mMのチオサルフェート、5mM〜20mMのMOPS、4μM〜10μMの銅、1000μM〜6000μM、30μM〜80μMの亜鉛、0.10μM〜0.20μMのコバルト、25μM〜50μMのチアミン、0.5μM〜1.0μMのリボフラビン、5.0μM〜10.0μMのパントテネート、5.0μM〜10.0μMのビオチン、100μM〜200μMのカルシウム、25μM〜75μMのナイアシン、10000μM〜5000μMのアスコルビン酸、1000μM〜5000μMの濃度のアスパルテート、500μM〜2500μMの濃度のグリシン、100μM〜1000μMの濃度のメチオニン、3000μM〜4000μMの濃度のロイシン、100mM〜150mMの濃度のグルタメート、3000μM〜4000μMの濃度のアラニン、1000μM〜2000μMの濃度のフェニルアラニン、150μM〜250μMの濃度のヒスチジン、1000μM〜2000μMの濃度のイソロイシン、1500μM〜2500μMの濃度のリシン、7000μM〜8000μMの濃度のプロリン、1000μM〜2000μMの濃度のセリン、3000μM〜4000μMの濃度のバリン、100μM〜200μMの濃度のチロシン及び100μM〜1000μMの濃度のグルタチオン、10mM〜20mMの塩化物、4mM〜6mMのアセテート、5.5mM〜7mMのカリウム、0.7mM〜0.8mMのジメチル-β-シクロデキストリン及び3mM〜4mMのホスフェートを含み;任意に、合成培地は、ナトリウム及び25μM〜75μMのFe(IIIクエン酸)をさらに含む。
【0085】
発酵方法
本発明は、
(a)本発明の合成培地にボルデテラ属種を接種するステップ、
(b)バイオマスの蓄積を可能とするのに十分な期間、合成培地中でボルデテラ属種を維持するステップ
を含む、合成培地(CDM)においてボルデテラ属種を増殖させるための発酵方法をさらに提供する。
【0086】
用語「発酵方法」は、細胞を増殖させ、及び/又はそれらの細胞から病原性因子を発現させるための工業規模の方法を指す。用語「工業規模の方法」は、発酵槽における方法を指し、一実施形態では、工業規模の方法は、5〜10000リットル、10〜5000リットル、20〜2000リットル、50リットル〜1000リットル、5リットル以上、10リットル以上、15リットル以上、20リットル以上、25リットル以上、50リットル以上、100リットル以上、10000リットル以下、5000リットル以下又は2500リットル以下の作業容量を有する発酵槽における方法を指す。さらなる実施形態では、「工業規模の方法」は、10mg/L超、15mg/L超又は20mg/Lの百日咳毒素の産生に好適な方法である。
【0087】
一実施形態では、発酵方法は、15h未満、12h未満、10h未満又は9h未満の平均世代時間を有する。段落[0031]には、平均世代時間を決定するための方法が記載されている。
【0088】
さらなる実施形態では、発酵方法は、10mg/L、15mg/L又は20mg/L超の百日咳毒素をもたらす。段落[0033]には、百日咳毒素の収率を決定するための方法が記載されている。
【0089】
一実施形態では、発酵方法は、32℃以上、33℃以上、34℃以上、45℃以下、42℃以下、40℃以下、38℃以下、32℃〜45℃、33℃〜42℃、33℃〜40℃又は33℃〜38℃の温度で行われる。
【0090】
一実施形態では、発酵方法の間に消泡剤が用いられる。さらなる実施形態では、消泡剤はポリジメチルシロキサンである。
【0091】
一実施形態では、溶存酸素のレベルは、1μM〜160μM、15μM〜140μM、30μM〜120μM、45μM〜110μM、60μM〜100μM又は約80μMである。
【0092】
一実施形態では、発酵方法のpHは、pH 6.0〜pH 7.5、pH 6.5〜pH 7.0又は約pH 7.2である。
【0093】
病原性因子の発現及び精製
一実施形態では、ボルデテラ属種は、百日咳毒素(PT)、繊維状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(PRN)、凝集原2型又は凝集原3型を含む少なくとも1つの病原性因子を発現する。一実施形態では、ボルデテラ属種は、PTを発現し、一実施形態では、ボルデテラ属種は、FHAを発現し、一実施形態では、ボルデテラ属種は、PRNを発現し、一実施形態では、ボルデテラ属種は、PT及びFHAを発現し、一実施形態では、ボルデテラ属種は、PT及びPRNを発現し、一実施形態では、ボルデテラ属種は、PRN及びFHAを発現し、一実施形態では、ボルデテラ属種は、PT、PRN及びFHAを発現する。PT、FHA及びPRNは、当技術分野で周知である。
【0094】
一実施形態では、本方法は、病原性因子を精製して精製された病原性因子を産生するステップc)をさらに含む。精製された病原性因子は、精製された百日咳毒素(PT)、繊維状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(PRN)、凝集原2型又は凝集原3型であってよい。精製された病原性因子は、精製後、変化してもよく、例えば、百日咳毒素は、精製後、化学的に解毒することができる。百日咳抗原の調製については、EP427462及びWO91/12020号も参照されたい。一実施形態では、ステップc)は、クロマトグラフィーを使用する細胞精製を含む。一実施形態では、クロマトグラフィー技術は、親和性クロマトグラフィー、ゲルろ過、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)又はイオン交換クロマトグラフィーである。任意に、親和性クロマトグラフィーは、親和性タグ精製カラム、抗体精製カラム、レクチン親和性カラム、プロスタグランジン精製カラム又はストレプアビジン(strepavidin)カラムを使用してもよい。任意に、HPLCは、イオン交換カラム、逆相カラム又はサイズ排除カラムを使用してもよい。任意に、イオン交換カラムは、アニオン交換カラム又はカチオン交換カラムであってもよい。
【0095】
本方法は、精製された病原性因子を含む免疫原性組成物を調合するステップd)をさらに含むことができる。
【0096】
本方法は、少なくとも1つのさらなる抗原を免疫原性組成物に添加するステップe)をさらに含むことができる。一実施形態では、少なくとも1つのさらなる抗原は、百日咳毒素、繊維状赤血球凝集素、パータクチン、線毛性凝集原(Fimbrial Agglutinogen)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、髄膜炎菌由来の少なくとも1つのコンジュゲートした糖抗原(conjugated saccharide antigen)、B型肝炎表面抗原、不活性化ポリオウイルス(IPV)及びヘモフィルスインフルエンザ菌b型由来のコンジュゲートした糖抗原からなる群から選択される。髄膜炎菌由来の少なくとも1つのコンジュゲートした糖抗原は、MenC、MenY、MenA及びMenW(例えば、A+C、A+Y、A+W、C+Y、C+W、Y+W、A+C+Y、A+C+W、A+Y+W、C+Y+W、A+C+Y+W)であってよく;任意に、MenC及び/又はMenYが含まれれていてもよい。任意に、4つすべてが含まれていてもよい。
【0097】
上記の髄膜炎菌性抗原に代えて、又は加えて、免疫原性組成物は、1つ以上の肺炎菌性莢膜オリゴ糖又は多糖-キャリアタンパクコンジュゲートを含むことができる。
【0098】
通常、本発明の組成物中に現れる肺炎球菌性莢膜オリゴ糖又は多糖(好ましくは、後者)は、肺炎球菌の少なくとも4つの血清型由来の抗原を含む。好ましくは、4つの血清型は、6B、14、19F及び23Fを含む。より好ましくは、少なくとも7つの血清型、例えば、血清型4、6B、9V、14、18C、19F、及び23F由来のものが、組成物中に含まれる。さらにより好ましくは、少なくとも11の血清型、例えば、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F由来のものが、組成物(11価)中に含まれる。本発明の好ましい実施形態では、そのようなコンジュゲートした肺炎球菌性抗原のうち少なくとも13種が含まれるが、さらなる抗原、例えば、23価(例えば、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33F)も本発明によって企図される。
【0099】
一実施形態では、免疫抗原組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。一実施形態では、本発酵法は、薬学的に許容される賦形剤を免疫抗原組成物に添加するステップf)を含む。
【0100】
一実施形態では、免疫抗原組成物は、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウムなどのアジュバントを含む。一実施形態では、本発酵法は、アジュバントを免疫抗原組成物に添加するステップg)を含む。DTPa及びDTPw抗原をアルミニウムアジュバント上に吸着させる方法は、当技術分野で公知である。例えば、WO93/24148及びWO97/00697を参照されたい。通常、アジュバント上に吸着される成分は、大部分の、好ましくは、すべての抗原を吸着させるために、適切なpHにおいて室温で少なくとも10分間放置された後に、抗原を本発明の組み合わせ免疫原性組成物中で一緒に混合する。
【0101】
他の成分(例えばIPV)は、好ましくは、吸着されないか又は他のアジュバント上に特異的に吸着される-B型肝炎表面抗原(HBsAg)は、好ましくは、(WO93/24148に記載されているのと同様に)リン酸アルミニウム上に吸着された後に他の成分と混合される。
【0102】
さらなる実施形態では、本方法によって取得可能な病原性因子が提供される。さらなる実施形態では、本方法によって得られる病原性因子が提供される。
【0103】
さらなる実施形態では、病原性因子及び薬学的に許容される賦形剤を含む免疫原性組成物が提供される。一実施形態では、免疫原性組成物は、少なくとも1つのさらなる抗原を含む。一実施形態では、少なくとも1つのさらなる抗原は、百日咳毒素、繊維状赤血球凝集素、パータクチン、線毛性凝集原、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、髄膜炎菌由来の少なくとも1つのコンジュゲートした糖抗原、B型肝炎表面抗原、不活性化ポリオウイルス(IPV)及びヘモフィルスインフルエンザ菌b型由来のコンジュゲートした糖抗原(任意に、破傷風トキソイドとコンジュゲートしていてもよい)からなる群から選択される。髄膜炎菌由来の少なくとも1つのコンジュゲートした糖抗原は、MenC、MenY、MenA及びMenW(例えば、A+C、A+Y、A+W、C+Y、C+W、Y+W、A+C+Y、A+C+W、A+Y+W、C+Y+W、A+C+Y+W)であってもよく、任意にMenC及び/又はMenYが含まれていてもよい。任意に4つすべてが含まれていてもよい。一実施形態では、ワクチンは、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、並びにPT、FHA及びPRN(DTPaワクチン)の少なくとも1つを含む。
【0104】
一実施形態では、免疫原性組成物を含むワクチンが提供される。
【0105】
ワクチンの調製は、一般に、Vaccine Design-The Subunit and adjuvant approach、Powell及びNewman編、Pellum Pressに記載されている。有利には、本発明による組み合わせワクチンは、小児用ワクチンである。
【0106】
それぞれのワクチン用量中の多糖又はオリゴ糖コンジュゲート抗原の量は、典型的なワクチン被接種者において顕著に有害な副作用をもたらさずに免疫保護応答を引き起こす量として選択される。そのような量は、どの特定免疫源が用いられるかに応じて変動するだろう。一般に、それぞれの用量が、1〜1000μgのコンジュゲートした多糖又はオリゴ糖(糖の量で表される)、好ましくは、2〜100μg、より好ましくは、4〜40、2〜15、又は3〜10μg、最も好ましくは、約又は正確に5μgを含むと予想される。
【0107】
ワクチン中のタンパク抗原の含有量は、通常、1〜100μgの範囲、好ましくは、5〜50μg、最も典型的には5〜25μgの範囲であろう。
【0108】
特定のワクチンに対する抗原の好適な量は、対象における抗体力価及び他の応答の観察を含む標準的な調査によって確認することができる。最初のワクチン接種に続いて、対象は、約4週間以上の間隔で1又は2回のブースター注射を受け得る。
【0109】
本発明のワクチン製剤は、前記ワクチンを全身又は粘膜経路を介して投与するという手段によって、感染しやすい哺乳類(好ましくは、ヒト)を保護又は治療するのに使用することができる。こうした投与として、筋肉内、腹腔内、皮内又は皮下経路を介する注射を挙げることができる。
【0110】
さらなる態様では、疾患の予防又は治療で使用するための、先に記載された免疫原性組成物又はワクチンが提供される。
【0111】
さらなる態様では、百日咳菌疾患の予防又は治療で使用するための、先に記載された免疫原性組成物又はワクチンが提供される。
【0112】
さらなる態様では、疾患の予防又は治療における、先に記載された免疫原性組成物又はワクチンの使用が提供される。
【0113】
さらなる態様では、細菌性疾患の治療又は予防のための医薬の調製における、先に記載された免疫原性組成物又はワクチンの使用が提供される。
【0114】
さらなる態様では、先に記載された免疫原性組成物又はワクチンを患者に投与するステップを含む疾患を予防又は治療する方法が提供される。
【0115】
一実施形態では、疾患は、百日咳菌疾患である。
【0116】
「百日咳毒素」という用語は、百日咳毒素、あるいは百日咳毒素の遺伝子学的にトキソイド化された形態を指す。一実施形態では、百日咳毒素は、百日咳毒素の遺伝子学的なトキソイドではない。
【0117】
用語「含む(comprising)」及びその変化形は、すべての場合において、用語「からなる(consisting)」及びその変化形と置換することができる。「含む」という用語は、「包含する(includes)」を意味する。したがって、文脈上要求されない限り、単語「含む」及びその変形形態は、述べられた化合物若しくは組成物(例えば、核酸、ポリペプチド、抗原)若しくはステップ、又は化合物若しくはステップの群を包含することを意味し、任意の他の化合物、組成物、ステップ、又はその群を排除しないことを意味すると理解されるものとする。「からなる(consists)」という用語は、他の化合物、組成物、ステップ又は群などを排除することを意味する。
【0118】
単数用語は、文脈が他に明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、単語「又は(or)」は、文脈が他に明確に示さない限り、「及び(and)」を含むと意図される。「複数」という用語は、2つ以上をさす。核酸又はポリペプチドに対して与えられたすべての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ、及びすべての分子量又は分子質量値は、概略であり、説明のために提供されていることがさらに理解されよう。加えて、抗原などの物質の濃度又はレベルに関して与えられた数値の限定は、概略であることが意図される。したがって、濃度が、少なくとも(例えば)200pgと指示された場合、濃度は、少なくともおよそ(approximately)(又は、「約(about)」又は「(〜)」)200pgであると理解されることが意図される。
【0119】
[実施例1]
基本合成培地における百日咳菌の20L規模の発酵
、Stainer&Scholteの培地(SS;Stainer及びScholte、J Gen.Microbiol.63:211〜220(1971))の組成を基礎として、アミノ酸サプリメント及びジメチル-β-シクロデキストリンを含有した合成培地(B-CDM)を設計した。表1は、Stainer&Scholte(SS)の元の培地、ジメチル-β-シクロデキストリン-百日咳菌の確認済みの増殖刺激剤(Imaizumi et al、J.Clin.Microbiol.17:781〜786(1983))-及び他の小さな変更(SS-シクロ)を含むSS培地の改変形態、並びに基本合成培地(B-CDM)の組成を比較する。
【0120】
SS-シクロ及びB-CDM培地を、それぞれ発酵COQ467及びCOQ365で評価した。両方の発酵に対して、新鮮な培地(B-CDM)7.5mlを含む第1の振とうフラスコ前培養に109CFUの百日咳菌を接種し、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートした。第1の前培養を使用して、新鮮な培地(B-CDM)100mlを含む第2の振とうフラスコ前培養に接種した。第2の前培養を、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートし、これを使用して、新鮮な培地(COQ467に対するSS-シクロ及びCOQ365に対するB-CDM;表1の組成を参照されたい)1Lをそれぞれ含む2つの振とうフラスコに接種した。35℃(+/-1℃)及び150rpmで40時間(+/-4時間)増殖させた後、第3の前培養からの2つの振とうフラスコをプールした。第3の前培養が停止したら直ちに、プールした前培養を使用して発酵槽に接種した。
【0121】
20Lの発酵槽(Biolafitte)を使用した。培地(COQ467に対する「SS-シクロ」及びCOQ365に対する「B-CDM」)10Lを無菌的に発酵槽に移した。以下の条件、即ち、温度(35℃)及び上部圧力(0.4バール)を使用して100%溶解酸素(DO)レベルを設定した。プールした前培養1.5Lの添加によって、接種を実施した。
【0122】
発酵中、温度(35℃)、上部圧力(0.4バール)及び空気流速(20L/分)を一定に保持した。泡制御器からポリジメチルシロキサンエマルションを自動的に添加することによって発泡を制御した。溶解酸素のレベルを25%に設定し、DOが25%未満に低下したら撹拌を増加することによって調整した。最小撹拌速度を50rpmに設定し、最大撹拌速度を1,000rpmに設定した。COQ467(SS-シクロ)では50%(w/v)リン酸の添加によって、COQ365(B-CDM)では50%(w/v)酢酸の添加によってpHを7.2に調整した。
【0123】
発酵中、増殖を650nmの光学密度(OD650nm)としてモニタリングした。発酵終了時(グルタメート枯渇の結果として酸素の消費が低減し、撹拌速度を低減させる時間として定義される)に、培養上清中の百日咳毒素(PT)産生をElisaによって測定した。表2は発酵COQ365(B-CDM)及び発酵COQ467(SS-シクロ)の、バイオマス収率、PT収率、及び平均世代時間を比較する。
【0124】
PT濃度の測定
培養上清中のPT濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定した。ポリスチレン微量稀釈プレートのウェル(4-39454;Nunc)を精製ポリクロナールモルモット抗PT抗血清(pH9.6の50mM炭酸塩緩衝液中の1:16,000希釈液)100μlで4℃で終夜コーティングした。プレートをDPBST(0.1%(v/v)Tween20を含む、Ca及びMgを含まないDubelccoのリン酸塩緩衝生理食塩水)で3回洗浄した。次いで、精製PT標準液の連続希釈液及び培養上清(DPBST中)をそれぞれのウェルに添加した(ウェル当り100μl)。室温で30分インキュベートした後、プレートをDPBSTで3回洗浄した。次いで、ヤギ抗PT抗血清(DPBST中1:500希釈液)及び抗PTを含まないモルモット血清(DPBST中1:1,000希釈液)をそれぞれのウェルに添加した(ウェル当り100μl)。室温で30分インキュベートした後、プレートをDPBSTで3回洗浄した。次いで、アルカリフォスファターゼコンジュゲートウサギ抗ヤギ免疫グロブリンG(Zymed;DPBST中1:1,000希釈液)をそれぞれのウェルに添加した(ウェル当り100μl)。室温で30分インキュベートした後、プレートをDPBSTで3回洗浄した。ジエタノールアミン緩衝液(ジエタノールアミン9.7%(v/v)、アジ化ナトリウム0.2g/L、MgCl2.6H2O 0.214g/L、pH9.8)中のp-ニトロフェニルホスフェート(Calbiochem)溶液10g/Lをそれぞれのウェルに添加することによって(ウェル当り100μl)プレートを発色させた。室温で発色させ、3M NaOH 50μlをそれぞれのウェルに添加することによって停止させた。Versamaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して、NaOH添加後1時間以内に、ウェルの吸収を405nmで読み取った。
【0125】
B-CDM条件によって、SS-シクロより高い増殖収率及び速度がもたらされた。PT産生も、顕著に増加した(表2を参照されたい)。
【表1】
【表2】
【0126】
[実施例2]
鉄源が合成培地中の百日咳菌の20L規模の発酵に及ぼす効果
発酵COQ348における硫酸第一鉄に対する代替としてのクエン酸第二鉄を評価した。
【0127】
新鮮な培地(B-CDM;表1の組成を参照されたい)7.5mlを含む第1の振とうフラスコ前培養に109CFUの百日咳菌を接種し、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートした。第1の前培養を使用して、新鮮な培地(B-CDM)100mlを含む第2の振とうフラスコ前培養に接種した。第2の前培養を、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートし、これを使用して、新鮮な培地(クエン酸Fe(III)三水和物10mg/Lを含み、FeSO4を含まないように改変されたB-CDM)1Lをそれぞれ含む2つの振とうフラスコに接種した。35℃(+/-1℃)及び150rpmで40時間(+/-4時間)増殖させた後、第3の前培養からの2つの振とうフラスコをプールした。第3の前培養が停止したら直ちに、プールした前培養を使用して発酵槽に接種した。
【0128】
20Lの発酵槽(Biolafitte)を使用した。培地(クエン酸Fe(III)三水和物10mg/Lを含み、FeSO4を含まないように改変されたB-CDM)10Lを無菌的に発酵槽に移した。以下の条件、即ち、温度(35℃)及び上部圧力(0.4バール)を使用して100%溶解酸素(DO)レベルを設定した。プールした前培養1.5Lの添加によって、接種を実施した。
【0129】
発酵中、温度(35℃)、上部圧力(0.4バール)及び空気流速(20L/分)を一定に保持した。泡制御器からポリジメチルシロキサンエマルションを自動的に添加することによって発泡を制御した。溶解酸素のレベルを25%に設定し、DOが25%未満に低下したら撹拌を増加することによって調整した。最小撹拌速度を50rpmに設定し、最大撹拌速度を1,000rpmに設定した。50%(w/v)酢酸の添加によってpHを7.2に調整した。
【0130】
発酵中、増殖を650nmの光学密度(OD650nm)としてモニタリングした。発酵終了時(グルタメート枯渇の結果として酸素の消費が低減し、撹拌速度を低減させる時間として定義される)で、培養上清中の百日咳毒素(PT)産生をElisaによって測定した。表3は、発酵COQ352(クエン酸Fe(III)三水和物10mg/Lを含み、FeSO4を含まないように改変されたB-CDM)及び発酵COQ365(FeSO4を含むB-CDM;実施例1を参照されたい)の、バイオマス収率、PT収率、及び平均世代時間を比較する。
【0131】
増殖収率及び速度は、最大バイオマス濃度の点で2つの条件の間で類似しており、これは、百日咳菌の増殖に影響を与えることなく、無機サルフェートを培地組成物から除外してもよいこと、また鉄をFe(II)、Fe(III)いずれでも供給できることを示している。さらに、PT産生は、鉄源としてクエン酸第二鉄を使用した方が硫酸第一鉄より顕著に増加した。
【表3】
【0132】
[実施例3]
百日咳菌の増殖のための硫黄源としてのチオサルフェート
文献に基づけば、百日咳菌の増殖は、有機硫黄源が存在する場合に限り可能であり、この有機硫黄源は、シスチン、システイン、及び/又はグルタチオンとして提供することができる(Jebb及びTomlinson(1957)J.Gen.Microbiol.17:59)。
【0133】
無機硫黄源が百日咳菌の増殖を支持できるか否かを決定するためにアッセイを実施した。新鮮な培地(ナイアシン0.604g/Lを含むように改変されたB-CDM)7.5mlを含む振とうフラスコに109CFUの百日咳菌を接種し、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-5時間)インキュベートした。細胞を遠心分離によって回収し、NaCl 0.9%(w/v)で2回洗浄し、回収前の培養のOD650nmから計算した理論上のOD650nm0.5でS源を含まない新鮮な培地(表4の組成を参照されたい)に再懸濁させた。この細胞再懸濁液20μlを使用して、S源を含まない新鮮な培地(表4の組成を参照されたい)180μlを満たした96ウェルマイクロタイタープレートのそれぞれのウェルに接種した。それぞれのウェルに、表5に列挙した化合物のうちの1つを含むサプリメント溶液20μlを添加した。蒸発を最小にする目的で、培養のためにはプレートの内側のウェルのみを使用し、サプリメント溶液を水で置換した1つの対照を含めた。次いで、振とうを一定にしたBiotek Synergy H1リーダーでプレートを35℃で53時間インキュベートし、増殖をOD650nmとして10分ごとに自動的にモニタリングした。増殖アッセイの結果を表5に示す。
【0134】
無機サルフェート及びサルファイトは、百日咳菌の増殖を支持することができなかった。しかし、培地中に唯一の硫黄源としてのチオサルフェートの存在下では増殖が観察された。これらの結果は、i)サルフェートは培地から除外し得ること、ii)チオサルフェートなどの増殖を支持する化合物が存在する限り、シスチン、システイン、又はグルタチオンなどの有機硫黄源は存在する必要がないことを示している。
【表4】
【表5】
【0135】
[実施例4]
合成培地における代替的な緩衝液の選別
B-CDM培地のトリス緩衝液に対する代替のためにスクリーニングを実施した。新鮮な培地(B-CDM)7.5mlを含む第1の振とうフラスコ前培養に109CFUの百日咳菌を接種し、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートした。第1の前培養を使用して、新鮮な培地(B-CDM)100mlを含む第2の振とうフラスコ前培養に接種した。第2の前培養を、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートした。次いで、細胞を遠心分離によって回収し、NaCl 0.9%で洗浄し、NaCl 0.9%に再懸濁させた。この細胞懸濁液を使用して、新鮮な培地(B-CDM)又はCDM中のトリス緩衝液が表6に列挙された別の緩衝液で置換された培地50mlをそれぞれ含む、9つの振とうフラスコの組に接種した。フラスコを35℃及び150rpmで48時間インキュベートした。24時間及び48時間後、OD650nmとして増殖をモニタリングした。結果を表6に示す。
【0136】
β-グリセロリン酸とMOPSの両方が、B-CDM中の百日咳菌の増殖を支持することができた。全体として、増殖速度(24時間後のバイオマス収率)及び収率(48時間後のバイオマス収率)の点でMOPSがβ-グリセロリン酸より優れていた。両方の緩衝液において、濃度が低いほど、増殖が速く、最終バイオマス収率が高かった。試験された最小濃度(2.5g/L)で、MOPSは、緩衝液としてトリスを使用する対照条件と比較して、増殖速度(24時間後のバイオマス収率)に対して有利な効果を有していた。
【表6】
【0137】
[実施例5]
合成培地における百日咳菌の20L規模の発酵に及ぼすCu2+添加の影響
COQ348発酵におけるCu2+補充の効果を評価した。
【0138】
新鮮な培地(B-CDM;表1の組成を参照されたい)7.5mlを含む第1の振とうフラスコ前培養に109CFUの百日咳菌を接種し、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートした。第1の前培養を使用して、新鮮な培地(B-CDM)100mlを含む第2の振とうフラスコ前培養に接種した。第2の前培養を、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートし、これを使用して、新鮮な培地(CuCl2.2H2O 1.28mg/L(7.5μM)を補充したB-CDM)1Lをそれぞれ含む2つの振とうフラスコに接種した。35℃(+/-1℃)及び150rpmで40時間(+/-4時間)増殖させた後、第3の前培養からの2つの振とうフラスコをプールした。第3の前培養が停止したら直ちに、プールした前培養を使用して発酵槽に接種した。20Lの発酵槽(Biolafitte)を使用した。培地(CuCl2.2H2O 1.28mg/L(7.5μM)を補充したB-CDM)10Lを無菌的に発酵槽に移した。以下の条件、即ち、温度(35℃)及び上部圧力(0.4バール)を使用して100%溶解酸素(DO)レベルを設定した。プールした前培養1.5Lの添加によって、接種を実施した。発酵中、温度(35℃)、上部圧力(0.4バール)及び空気流速(20L/分)を一定に保持した。泡制御器からポリジメチルシロキサンエマルションを自動的に添加することによって発泡を制御した。溶解酸素のレベルを25%に設定し、DOが25%未満に低下したら撹拌を増加することによって調整した。最小撹拌速度を50rpmに設定し、最大撹拌速度を1,000rpmに設定した。50%(w/v)酢酸の添加によってpHを7.2に調整した。
【0139】
発酵中、増殖を650nmの光学密度(OD650nm)としてモニタリングした。発酵終了時(グルタメート枯渇の結果として酸素の消費が低減し、撹拌速度を低減させる時間として定義される)で、培養上清中の百日咳毒素(PT)産生をElisaによって測定した。表7は、発酵COQ348(Cu補充を含むB-CDM)及び発酵COQ365(Cu補充を含まないB-CDM;実施例1を参照されたい)の、バイオマス収率、PT収率、及び平均世代時間を比較する。
【0140】
合成培地に対するCuCl2の添加はバイオマス収率の顕著な増加をもたらした。増殖速度及びPT収率もまた、正の影響を受けた。
【表7】
【0141】
[実施例6]
改良された合成培地での百日咳菌の20L規模発酵
基本CDM(B-CDM)の改良された調合を発酵COQ426で評価した。
【0142】
新鮮な培地(B-CDM;表1の組成を参照されたい)7.5mlを含む第1の振とうフラスコ前培養に109CFUの百日咳菌を接種し、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートした。第1の前培養を使用して、新鮮な培地(B-CDM)100mlを含む第2の振とうフラスコ入り前培養に接種した。第2の前培養を、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートし、これを使用して、新鮮な培地(改良されたCDM;表8の組成を参照されたい)1Lをそれぞれ含む2つの振とうフラスコに接種した。35℃(+/-1℃)及び150rpmで40時間(+/-4時間)増殖させた後、第3の前培養からの2つの振とうフラスコをプールした。第3の前培養が停止したら直ちに、プールした前培養を使用して発酵槽に接種した。20Lの発酵槽(Biolafitte)を使用した。培地10Lを無菌的に発酵槽に移した。以下の条件、即ち、温度(35℃)及び上部圧力(0.4バール)を使用して100%溶解酸素(DO)レベルを設定した。プールした前培養1.5Lの添加によって、接種を実施した。発酵中、温度(35℃)、上部圧力(0.4バール)及び空気流速(20L/分)を一定に保持した。泡制御器からポリジメチルシロキサンエマルションを自動的に添加することによって発泡を制御した。溶解酸素のレベルを25%に設定し、DOが25%未満に低下したら撹拌を増加することによって調整した。最小撹拌速度を50rpmに設定し、最大撹拌速度を1,000rpmに設定した。50%(w/v)リン酸の添加によってpHを7.2に調整した。
【0143】
発酵中、増殖を650nmの光学密度(OD650nm)としてモニタリングした。発酵終了時(グルタメート枯渇の結果として酸素の消費が低減し、撹拌速度を低減させる時間として定義される)で、培養上清中の百日咳毒素(PT)産生をElisaによって測定した。
【0144】
表9は、発酵COQ426(改良されたCDM)及び発酵COQ365(B-CDM;実施例1を参照されたい)のバイオマス収率、PT収率、及び平均世代時間を比較する。改良されたCDMの条件によって、基本CDMに比較してわずかに低い増殖収率がもたらされた。増殖速度もまた、わずかに低かった。しかし、PT産生は、劇的に増加した(+170%)。
【表8】
【表9】
【0145】
[実施例7]
硫黄源としてチオサルフェートを含む改良された合成培地での百日咳菌の20L規模の発酵
改良されたCDM(実施例6)の改変調合を発酵COQ454で評価した。この培地では、硫黄源としてシステインをチオサルフェートで置換した。
【0146】
新鮮な培地(B-CDM;表1の組成を参照されたい)7.5mlを含む第1の振とうフラスコ前培養に109CFUの百日咳菌を接種し、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートした。第1の前培養を使用して、新鮮な培地(B-CDM)100mlを含む第2の振とうフラスコ前培養に接種した。第2の前培養を、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-1時間)インキュベートし、これを使用して、新鮮な培地(チオサルフェートを含む改良されたCDM;表10の組成を参照されたい)1Lをそれぞれ含む2つの振とうフラスコに接種した。35℃(+/-1℃)及び150rpmで40時間(+/-4時間)増殖させた後、第3の前培養からの2つの振とうフラスコをプールした。第3の前培養が停止したら直ちに、プールした前培養を使用して発酵槽に接種した。20Lの発酵槽(Biolafitte)を使用した。培地10Lを無菌的に発酵槽に移した。以下の条件、即ち、温度(35℃)及び上部圧力(0.4バール)を使用して100%溶解酸素(DO)レベルを設定した。プールした前培養1.5Lの添加によって、接種を実施した。
【0147】
発酵中、温度(35℃)、上部圧力(0.4バール)及び空気流速(20L/分)を一定に保持した。泡制御器からポリジメチルシロキサンエマルションを自動的に添加することによって発泡を制御した。溶解酸素のレベルを25%に設定し、DOが25%未満に低下したら撹拌を増加することによって調整した。最小撹拌速度を50rpmに設定し、最大撹拌速度を1,000rpmに設定した。50%(w/v)リン酸の添加によってpHを7.2に調整した。
【0148】
発酵中、増殖を650nmの光学密度(OD650nm)としてモニタリングした。発酵終了時(グルタメート枯渇の結果として酸素の消費が低減し、撹拌速度を低減させる時間として定義される)に、培養上清中の百日咳毒素(PT)産生をElisaによって測定した。表11は、発酵COQ454(チオサルフェートを含む改良されたCDM)、発酵COQ426(改良されたCDM;実施例6を参照されたい)、及び発酵COQ365(B-CDM;実施例1を参照されたい)の、バイオマス収率、PT収率、及び平均世代時間を比較する。
【0149】
「チオサルフェートを含む改良されたCDM」のバイオマス収率は、基本CDMに比較してわずかに低かったが、より高い増殖速度及びより高いPT産生(+310%)をもたらした。「改良されたCDM」に比較して、「チオサルフェートを含む改良されたCDM」培地は、同様のバイオマス収率、より高い増殖速度及びより高いPT産生(+52%)をもたらした。
【表10】
【表11】
【0150】
[実施例8]
1つだけのアミノ酸を含む最小の培地中の百日咳菌の増殖
唯一の炭素及び窒素源として単一のアミノ酸を含む最小の培地中で百日咳菌の増殖が可能か否かを測定するためにアッセイを実施した。新鮮な培地(ナイアシン0.604g/Lを含むB-CDM)7.5mlを含む振とうフラスコに109CFUの百日咳菌を接種し、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-5時間)インキュベートした。細胞を遠心分離によって回収し、NaCl 0.9%(w/v)で2回洗浄し、収集前の培養のOD650nmから計算した理論上のOD650nm0.5で新鮮な培地(表12の組成を参照されたい)に再懸濁させた。この細胞懸濁液1mlを使用して、C及びN源としての、単一のアミノ酸(L-システイン125mM、L-プロリン125mM、L-グルタメート125mM、L-グルタミン125mM、L-アスパルテート30mM、L-アスパラギン125mM、L-セリン125mM、又はL-アラニン125mM)、及びS源としてのチオサルフェート0.25mM(チオサルフェートが添加されないL-Cys補充の場合を除く)を補充した、表12の培地30mlを含む振とうフラスコに接種した。塩化アンモニウム(25mM)及びチオサルフェート(0.25mM)を含むがアミノ酸を含まない同じ培地を陰性対照として使用した。次いで、一定振とう(150rpm)下、35℃で約10日間振とうフラスコをインキュベートした。増殖をOD650nmとしてモニタリングした。増殖アッセイの結果を図1に示す。
【0151】
試験されたアミノ酸はすべて、S源(チオサルフェート)が存在する限り、唯一のC及びN源として百日咳菌の増殖を支持することができた。アミノ酸としてL-Cysを使用した場合、硫黄の追加の供給源は必要でなかった。
【表12】
【0152】
[実施例9]
アミノ酸を含まない最小培地における百日咳菌の増殖
窒素が無機アンモニウムとして、硫黄がチオサルフェートとして、炭素が有機酸としてのみ提供された最小培地中で百日咳菌の増殖が可能か否かを測定するためにアッセイを実施した。新鮮な培地(ナイアシン0.604g/Lを含むB-CDM)7.5mlを含む振とうフラスコに109CFUの百日咳菌を接種し、35℃(+/-1℃)及び150rpmで24時間(+/-5時間)インキュベートした。細胞を遠心分離によって回収し、NaCl 0.9%(w/v)で2回洗浄し、収集前の培養のOD650nmから計算した理論上のOD650nm0.5で新鮮な培地(表13の組成を参照されたい)に再懸濁させた。この細胞懸濁液1mlを使用して、単一の有機酸(シトレート100mM、L-ラクテート100mM、アセテート100mM、ピルベート100mM、フマレート100mM、又はスクシネート100mM)を補充した、表13の培地30mlを含む振とうフラスコに接種した。有機酸の補充を含まない同じ培地を陰性対照として使用した。次いで、一定振とう(150rpm)下、35℃で約10日間振とうフラスコをインキュベートした。増殖をOD650nmとしてモニタリングした。増殖アッセイの結果を図2に示す。
【0153】
試験された有機酸はすべて、唯一のC源として百日咳菌の増殖を支持することができた。
【表13】
図1
図2