特許第6385539号(P6385539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6385539
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】液体サイクロンろ過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/50 20060101AFI20180827BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20180827BHJP
   B04C 9/00 20060101ALI20180827BHJP
   B01D 29/66 20060101ALI20180827BHJP
   B04C 5/12 20060101ALI20180827BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20180827BHJP
   B24B 57/00 20060101ALI20180827BHJP
   B01D 36/04 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B01D29/24 E
   B04C5/04
   B04C9/00
   B01D29/38 530A
   B01D29/38 540
   B04C5/12 A
   B01D29/24 C
   B23Q11/00 U
   B24B57/00
   B01D36/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-165053(P2017-165053)
(22)【出願日】2017年8月30日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】300020603
【氏名又は名称】東栄アクアテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516314170
【氏名又は名称】有限会社東栄製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】峯松 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−034718(JP,U)
【文献】 特開2013−086027(JP,A)
【文献】 実開昭60−017209(JP,U)
【文献】 実開昭60−009554(JP,U)
【文献】 特開2015−178058(JP,A)
【文献】 特開2018−065093(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0044287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/50
B01D 29/66
B04C 5/04
B04C 5/12
B04C 9/00
B23Q 11/00
B24B 57/00
C02F 11/12
B01D 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状中空部と逆円錐状中空部が鉛直方向に連続した中空を密閉した容器で構成され、前記円柱状中空部の下部には懸濁液を外部から内壁面の接線方向へ流入させる流入口が、前記逆円錐状中空部の最下部分には前記懸濁液から遠心沈降分離された粗大粒子のスラリーを外部へ排出させる排出口が、前記円柱状中空部の天井壁の中央にはろ過水を外部へ流出させる流出口が設けられていると共に、前記流入口より上側で前記円柱状中空部を上下に仕切り、前記懸濁液から粗大粒子が分離された後の液体をろ過するフィルターろ過機構を有する液体サイクロン式ろ過装置において、
前記フィルターろ過機構が、
前記円柱状中空部の前記天井壁寄りの位置で前記円柱状中空部を上下に仕切る板材であって、その中央部分には中央孔が、また前記中央孔の周囲には周方向に沿って均等間隔で複数の周設孔がそれぞれ穿設されている仕切板と、
有底筒体であって、その底部には後記カートリッジ式フィルターの下側端面を密閉支持する支持部が設けられており、その開口端側が前記仕切板の中央孔の周囲に密閉固定されて、前記仕切板の下側に垂下されるカートリッジ支持筒と、
多孔板材からなる有底筒体の外面にろ布を被着させたろ壁構成を有し、その開口端側が前記仕切板の周設孔の周囲に密閉固定されて、前記仕切板の下側に前記流入口より上側の位置まで垂下される複数のろ過筒と、
円筒状のろ材であって、その下側端面が前記カートリッジ支持筒の支持部によって密閉支持され、その上側端面が前記天井壁の前記流出口に軸中空部を連通させて密閉固定され、且つ筒壁部のろ材としてのろ過精度が前記ろ過筒のろ布よりも小さいカートリッジ式フィルターと
を具備していることを特徴とする液体サイクロンろ過装置。
【請求項2】
前記容器が前記仕切板を境界として上側ハウジング部と下側ハウジング部に分割されており、前記上側ハウジング部の下端に設けた外向きフランジと前記下側ハウジング部の上端に設けた外向きフランジの間に、前記仕切板の外周領域がシール部材を介して挟装されている請求項1に記載の液体サイクロンろ過装置。
【請求項3】
前記カートリッジ支持筒の筒長を前記ろ過筒の筒長より長く設定した請求項1又は請求項2に記載の液体サイクロンろ過装置。
【請求項4】
前記カートリッジ式フィルターが糸巻きタイプのものである請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液体サイクロンろ過装置。
【請求項5】
前記円柱状中空部の天井壁に、逆洗時に外部から圧搾空気を吹き込むための吹込口を設けた請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の液体サイクロンろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離技術の分野に属し、特に、液体サイクロンによる遠心分離とフィルターろ過分離とを組み合わせた液体サイクロンろ過装置におけるフィルターろ過機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
液体サイクロンろ過方式では、懸濁液を円柱状中空部と逆円錐状中空部からなる密閉容器内で旋回させて遠心力を利用した固液分離が行われるが、その構造が簡単で処理能力が大きい一方、据付面積は比較的小さいという特長を有しており、従来から、プリント配線基板の研磨排水から銅を回収する場合や研削クーラント液・ホーニング液から研磨剤を除去する場合などの産業排水の処理に利用されている。
【0003】
ただ、液体サイクロンによる遠心分離は、懸濁液から粗大粒子を分離する機能については優れているが、中粒子や精密ろ過の粒子サイズになると捕捉効率が低くなる。
そのため、下記特許文献1〜5のように、従来から、密閉容器内の上側にフィルターろ過機構を設けておき、液体サイクロンにより懸濁液から粗大粒子を遠心分離した後の液体から、さらに比較的小さい粒子サイズの懸濁粒子をフィルターろ過により分離し、その分離後のろ過水を排水する二段分離構成を採用した液体サイクロンろ過装置の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−286493号公報
【特許文献2】特許第3282781号公報
【特許文献3】特開2015−178058号公報
【特許文献4】特許第5896681号公報
【特許文献5】実開昭58−86217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠心分離とフィルターろ過による二段分離方式の液体サイクロンろ過装置の場合、懸濁液の種類や処理流量や使用目的に応じて、液体サイクロンによる分級範囲とフィルターろ過による分級範囲が決定されるが、フィルターろ過機構について、ろ過効率が高く、ろ過速度が速く、ろ過寿命が長いという特性が要求されることは言うまでもない。
【0006】
ところで、液体サイクロンでは、気体の場合と比較して、流体の粘性が著しく大きく、流体と分離対象の固体物質との比重差も小さいことから、所要の分級性能を実現するには旋回流の速度を大きくしなければならない。
そして、旋回流の速度を大きくするには、懸濁液の流入速度を大きくすることも必要であるが、密閉容器の内径を小さくすることが遥かに有効である。
一方、単位時間当たりのろ過処理量を大きくするには、単位時間当たりの懸濁液の流入量と共にフィルターろ過機構のろ過速度が速くなければならない。
【0007】
したがって、前記液体サイクロンろ過装置におけるフィルターろ過機構では、内径の小さい密閉容器内で大きいろ過面積を確保し、圧力損失も低いものであることが求められる。
また、ろ過装置一般に要求されるフィルターろ材の逆洗や交換の容易さも必要であることは当然である。
【0008】
上記特許文献2(段落[0025]〜[0028]及び図2)においては、密閉容器内を上室と下室に区画した仕切板に複数本の中空糸膜モジュール(多数本の中空糸膜によりろ過膜を構成)を垂下させ、下室の下部空間をサイクロンセパレータとして構成した構成が開示されており、ろ過面積を大きくとれるようになっているが、中空糸膜は0.01〜0.3μm程度の微細孔を有する樹脂薄膜であるため、精密ろ過への対応のみで汎用性に欠け、破断によるろ過不良も生じやすいことから、プリント配線基板の研磨排水や研削クーラント液・ホーニング液のような産業排水の処理には適用できない。
【0009】
そこで、本願発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、フィルターろ過機構を小さい内径の密閉容器内にできるだけ大きなろ過面積で圧力損失も低い条件で合理的に配置構成し、フィルターろ材の逆洗や交換についての対応も容易とした前記二段ろ過方式の液体サイクロンろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、円柱状中空部と逆円錐状中空部が鉛直方向に連続した中空を密閉した容器で構成され、前記円柱状中空部の下部には懸濁液を外部から内壁面の接線方向へ流入させる流入口が、前記逆円錐状中空部の最下部分には前記懸濁液から遠心沈降分離された粗大粒子のスラリーを外部へ排出させる排出口が、前記円柱状中空部の天井壁の中央にはろ過水を外部へ流出させる流出口が設けられていると共に、前記流入口より上側で前記円柱状中空部を上下に仕切り、前記懸濁液から粗大粒子が分離された後の液体をろ過するフィルターろ過機構を有する液体サイクロン式ろ過装置において、前記フィルターろ過機構が、前記円柱状中空部の前記天井壁寄りの位置で前記円柱状中空部を上下に仕切る板材であって、その中央部分には中央孔が、また前記中央孔の周囲には周方向に沿って均等間隔で複数の周設孔がそれぞれ穿設されている仕切板と、有底筒体であって、その底部には後記カートリッジ式フィルターの下側端面を密閉支持する支持部が設けられており、その開口端側が前記仕切板の中央孔の周囲に密閉固定されて、前記仕切板の下側に垂下されるカートリッジ支持筒と、多孔板材からなる有底筒体の外面にろ布を被着させたろ壁構成を有し、その開口端側が前記仕切板の周設孔の周囲に密閉固定されて、前記仕切板の下側に前記流入口より上側の位置まで垂下される複数のろ過筒と、円筒状のろ材であって、その下側端面が前記カートリッジ支持筒の支持部によって密閉支持され、その上側端面が前記天井壁の前記流出口に軸中空部を連通させて密閉固定され、且つ筒壁部のろ材としてのろ過精度が前記ろ過筒のろ布よりも小さいカートリッジ式フィルターとを具備していることを特徴とする液体サイクロンろ過装置に係る。
【0011】
本願発明によれば、流入口から容器に流入した懸濁液は流入口より下側で遠心分離されて粗大粒子が除去されるが、粗大粒子が除去された液体は中空の中心軸周りに沿って上昇してフィルターろ過機構によってろ過される。
本願発明におけるフィルターろ過機構では、上昇してきた液体を各ろ過筒のろ布でろ過し、そのろ過後の液体を各ろ過筒内から仕切板の上側へ送り出し、さらにその液体をカートリッジ式フィルターの筒壁部(ろ壁)でろ過して軸中空部へ取り込み、軸中空部に連通している流出口から最終ろ過水として容器の外部へ流出させる。
このとき、各ろ過筒のろ布のろ過精度はカートリッジ式フィルターのそれよりも大きく設定されており、遠心分離で粗大粒子が除去された液体の中に含まれている中サイズ粒子を各ろ過筒で、各ろ過筒を通過した液体の中に含まれている小サイズ粒子をカートリッジ式フィルターで分離してろ過する。
したがって、本願発明においては、ろ過精度に関して三段階の分級処理を順次行っていることになるが、遠心分離で粗大粒子が分離されているとはいえ、ろ過筒で分離される中サイズ粒子の量は相当に多くなるため、ろ過筒を周方向に複数配置させる態様で仕切板の下側へ垂下させてろ過面積を大きくとっている。
また、カートリッジ式フィルターも、仕切板から垂下させたカートリッジ支持筒の内側に立設させるようにして、筒長の長いものを用いることができるように構成されており、そのろ過面積を大きく確保させている。
なお、前記の「粗大粒子」、「中サイズ粒子」及び「小サイズ粒子」は、相対的に粒子サイズで分けているだけであり、具体的な粒子サイズ範囲で分けているわけではない。
【0012】
本願発明の液体サイクロンろ過装置では、前記容器が前記仕切板を境界として上側ハウジング部と下側ハウジング部に分割し、前記上側ハウジング部の下端に設けた外向きフランジと前記下側ハウジング部の上端に設けた外向きフランジの間に、前記仕切板の外周領域がシール部材を介して挟装されるようにすれば、前記仕切板と前記カートリッジ支持筒と前記各ろ過筒を一体のアッセンブリーとして取り扱うことができ、装置の組み立てやメインテナンスにおいて便利である。
【0013】
本願発明の液体サイクロンろ過装置において、懸濁液は前記流入口より下側の中空部の内壁面に沿って旋回しているが、中空部の中心軸付近は懸濁液が遠心分離された後の液体が上昇してくるだけであり、前記カートリッジ式フィルターの筒長を大きく確保するために、前記カートリッジ支持筒の筒長を前記ろ過筒の筒長より長く設定してもよい。
【0014】
本願発明の液体サイクロンろ過装置では、前記カートリッジ式フィルターが糸巻きタイプのものであることが望ましい。
糸巻きタイプのものは、圧力損失が低く、幅広い粒度分布を持つ液体に対応できるため、前段の遠心分離と前記ろ過筒でのろ過精度の範囲に対して幅広く対応できる。
【0015】
本願発明の液体サイクロンろ過装置では、前記円柱状中空部の天井壁に、逆洗時に外部から圧搾空気を吹き込むための吹込口を設けておけば、前記各ろ過筒の圧搾空気による逆洗が容易になる。
なお、前記カートリッジ式フィルターも前記流出口を吹込口として用いれば逆洗を行えないことはないが、カートリッジ式のものであり、糸巻きタイプのフィルターが適していることから、交換部品とする方が合理的である。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の液体サイクロンろ過装置によれば、遠心分離で粗大粒子を分離した後の液体を、内径の小さい容器内でろ過面積を大きく確保しながら、ろ過精度が異なる二段のフィルターろ過を合理的に実現し、幅広い範囲のろ過精度の要求に対して容易に対応可能な構成を提供する。
また、フィルターろ過機構の逆洗やメインテナンスも簡単であり、液体サイクロンろ過装置を含むシステムの運用も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願発明の実施形態に係る液体サイクロンろ過装置の断面図である。
図2】仕切板の平面図である。
図3図1におけるA-A矢視断面図である。
図4図1におけるB-B矢視断面図である。
図5】カートリッジ式フィルターの装着・交換操作を説明するための断面図である。
図6】ろ過筒の個別逆洗の方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の液体サイクロンろ過装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は液体サイクロンろ過装置全体の断面図であるが、10は本体容器であり、その筐体上の基本構成としては、上側ハウジング部11と下側ハウジング部12とそれらの境界に介装されている仕切板13とからなる。
具体的には、上側ハウジング部11の下端には外向きフランジ11aが、下側ハウジング部12の上端には外向きフランジ12aがそれぞれ設けられており、仕切板13の外周領域が各フランジ11a,12aの間にシール部材14を介して挟装されている。
【0019】
そして、上側ハウジング部11と下側ハウジング部12で構成される本体容器10は円柱状中空部15と逆円錐状中空部16が同軸状に連続した中空を密閉しているが[図1の右側の(15),(16)を参照]、円柱状中空部15の下部には懸濁液を外部から内壁面の接線方向へ流入させる流入管17が接続されており、逆円錐状中空部16の最下部分には懸濁液から遠心沈降分離された粗大粒子のスラリーを外部へ排出させる排出管18が接続されている。
【0020】
また、この実施形態では、上側ハウジング部11が内圧を考慮してドーム状に形成されているが、その上方は円柱状中空部15の天井壁11aに相当し、同天井壁11aの中央に穿設された孔に対して、ろ過水を外部へ流出させる流出管19と一体的に構成された天板19aがボルト締めで着脱可能になっている。
ここに、天板19aは、中央に流出管19を貫設させて密封していると共に、その下側面が後記カートリッジ式フィルター30の上側端面を密閉把持する受座になっており、上側ハウジング部11に対してシール部材を介してボルトで締着される。
【0021】
ところで、仕切板13は円柱状中空部15をその上部位置で上室20と下室21に分割しているが、この実施形態の装置には、図1図3及び図4に示されるように、仕切板13にろ過機構が設けられている。
まず、仕切板13には、図2に示すように、その中央部分に中央孔23が穿設されていると共に、その中央孔23の周囲に周方向へ均等間隔で5つの周設孔24が穿設されている。
【0022】
そして、中央孔23にはカートリッジ支持筒25が、各周設孔24にはろ過筒26がそれぞれ取り付けられている。
ここに、カートリッジ支持筒25は、長尺の有底筒体の底部に後記カートリッジ式フィルター30の下側端面を密閉支持するための支持部25aが設けられており、一方、その開口部には外向きフランジ25bが付設されている。
また、各ろ過筒26は、パンチングメタルなどの多孔板材からなる有底筒体26aの外面にろ布26bを被着させたろ壁構成を有するものであり、一方、その開口部には外向きフランジ26cが付設されている。
【0023】
なお、仕切板13(図2)において、外周縁に沿って穿設されている各孔27は、仕切板13を各ハウジング部11,12の間にシール部材14を介してボルトナットで挟装固定する際のボルト貫通用のものであり、中央孔23と各周設孔24の周囲に沿って形成されている各ネジ孔28,29は、カートリッジ支持筒25の外向きフランジ25bやろ過筒26の外向きフランジ26cを仕切板13に対してシール部材を介してボルト止めするためのものである。
【0024】
したがって、仕切板13とカートリッジ支持筒25と各ろ過筒26は一つのアッセンブリーをなし、仕切板13の外周部が上側ハウジング部11と下側ハウジング部12の間に挟装されることにより、図1に示されるように、カートリッジ支持筒25と各ろ過筒26が中空部15の下室21側へ垂下せしめられる。
【0025】
一方、図1に示すように、カートリッジ支持筒25の支持部25aと上側ハウジング部11の天板19aの間にはカートリッジ式フィルター30が縦架固定されている。
このカートリッジ式フィルター30は糸巻きタイプの円筒状フィルターであり、そのろ過精度は前記各ろ過筒26のろ布26bのろ過精度より小さい。
また、5本のろ過筒26のろ過面積との整合性を得るためにカートリッジ式フィルター30は長いものを用いる必要があり、カートリッジ支持筒25の長さは当然にろ過筒26よりも長く、さらには円柱状中空部15の下部にある流入管17の位置より下側の逆円錐状中空部16にまで達する長さになっている。
【0026】
カートリッジ式フィルター30の取り付けについては、図5に示すように、上側ハウジング部11から天板19aを外しておき、カートリッジ式フィルター30を上側からカートリッジ支持筒25へ挿入し、カートリッジ式フィルター30の下端をカートリッジ支持筒25の支持部25aの受座に嵌合させた状態で、天板19aの受座をカートリッジ式フィルター30の上端に嵌合させ、天板19aを上側ハウジング部11にシール部材を介してボルト止めする。
【0027】
その場合、カートリッジ支持筒25の支持部25aが、カートリッジ式フィルター30の下端面を密閉封止する受座と、その受座を弾力的に支承するコイルばねと、受座を上下方向へ案内するガイドとからなる支持機構を備えており、前記作業を迅速且つ容易に行うことができる。
また、天板19aと支持部25aの各受座にはカートリッジ式フィルター30の上下端面に喰い込む環状歯が形成されているため、カートリッジ式フィルター30の機械的固定とその上下端面でのシールが確実なものとなり、その結果、カートリッジ式フィルター30の軸中空部30aと円筒状中空部15の上室20との間には円筒状の糸巻きろ過壁が介在すると共に、軸中空部30aが天板19aの流出管19にのみ連通していることになる。
【0028】
なお、上側ハウジング部11には、逆洗時に円柱状中空部15の上室20へ圧縮エアーを供給するための吹込み管31が設けられている。
そして、上記の流入管17、排出管18、流出管19及び前記吹込み管31に対してはそれぞれ電磁弁41,42,43,44を介在させた配管がなされており、流入管17については懸濁液の流入を、排出管18についてはスラリーの排出を、流出管19についてはろ過水の流出を、吹込み管31については圧縮エアーの吹込みをそれぞれオン/オフ制御するようになっている。
【0029】
以上のような構成を有するこの実施形態の液体サイクロンろ過装置は、次のように動作する。
まず、電磁弁41,43を開に、電磁弁42,44を閉に設定した状態において、懸濁液を圧送ポンプ(図示せず)で流入管17から円柱状中空部15の下部へ送り込むと、懸濁液は内壁面に沿って旋回流となり逆円錐状中空部16へ降下してゆくが、その旋回過程で懸濁液に対する遠心分離がなされ、懸濁液から分離された粗大粒子が逆円錐状中空部16の内壁面に沿って下側へ滑り落ちてゆく。
【0030】
一方、遠心分離により粗大粒子が分離された後の液体は、逆円錐状中空部16の中心軸近傍を旋回しながら円柱状中空部15の下室21へ上昇し、各ろ過筒26に被着されているろ布26bでろ過された後、筒壁や底壁の孔を通過して筒内に流入する。
そして、筒内へ流入した液体は、筒内から円柱状中空部15の上室21へ上昇し、その上室21だけでなくカートリッジ支持筒25の内壁面とカートリッジ式フィルター30との間にも充満することになるが、同フィルター30の糸巻き円筒全体でろ過されて、そのろ過後の液体が糸巻き円筒の軸中空部30aへ流入し、最終的に軸中空部30aに直結している天板19aの流出管19からろ過水として外部へ放出される。
【0031】
したがって、この実施形態の液体サイクロンろ過装置では、流入管17から供給される懸濁液に対して、本体容器10へ流入した直後の遠心分離と、各ろ過筒26のろ布によるフィルターろ過と、カートリッジ式フィルター30によるフィルターろ過からなる三段の分離処理を施してろ過水を放出させている。
例えば、円柱状中空部15の内径を400mmとし、他の機構要素のサイズが図1に基づいた比例関係にあるとして、流入管17から単位時間当たりに流入させる懸濁液の流量を3m3、流入させる懸濁液の懸濁粒子径の範囲を1μm〜1000μm(研削クーラント液など)とした場合において、遠心分離では、懸濁粒子の比重にもよるが、ほぼ100μm以上の懸濁粒子を分級可能と推定でき、各ろ過筒26では、ろ布の選択によるが、1〜10μmの懸濁粒子を50%以上、10〜100μmの懸濁粒子を98%以上の分級が可能であり、カートリッジ式フィルター30では、通常の糸巻きタイプで圧力損失の小さいものを採用しても、1〜10μmの懸濁粒子を80%以上分級することが可能であることから、最終的なろ過水は排水基準を十分に満たすレベルまで清澄化できる。
【0032】
前記の懸濁液の場合、粒子径:10〜100μmの懸濁粒子が占める割合が高く、遠心分離では分離されないためにろ過筒26での分離が多くなる。
そのため、狭い本体容器10内に5本のろ過筒26を合理的に配置してろ過面積を大きくし、圧力損失の低下を避けてろ過速度を速くすると共に、ろ過寿命もできるだけ長くするようにしてある。
また、ろ過筒26だけで粒子径:1〜10μmの懸濁粒子を捕捉する割合を高くするためにろ布26bの目開きを小さくしておくと、早く目詰まりを生じてろ過寿命が著しく短くなるため、ろ布26bの目開きをある程度大きくしておき、粒子径:1〜10μmの懸濁粒子はカートリッジ式フィルター30側で捕捉するようにしている。
これにより、この実施形態の液体サイクロンろ過装置によれば、ろ過効率を高く確保しながら、ろ過速度とろ過寿命を最適化したフィルターろ過処理を実現できる。
【0033】
ところで、液体サイクロンろ過装置の稼動が継続すると、遠心分離により逆円錐状中空部16の最下部分には懸濁液から分離された粗大粒子がスラリーとして堆積してゆく。
したがって、一定時間ごとに電磁弁42を開設定に切り換えて、堆積したスラリーを排出管18から外部へ排出させ、脱水装置(図示せず)によってケーキ化するなどの処理がなされる。
【0034】
また、この実施形態の液体サイクロンろ過装置においても、フィルターろ過機構を用いている以上、無制限な連続稼動を行うことはできず、所定稼働時間毎の逆洗が不可欠である。
この逆洗手順は、電磁弁41,43を閉設定に切り換えて電磁弁42,44を開設定とし、吹込み管31から本体容器10内へエアーを送り込み、その時点で逆円錐状中空部16の最下部分に堆積しているスラリーと本体容器10内を満たしている懸濁液とろ過途中の液体をすべて排出管18から電磁弁42を通じて外部(一般的には懸濁液の貯留槽)へ吐出させる。
【0035】
そして、吐出が完了した段階で、今度は吹込み管31から圧搾エアーを送り込むと、圧搾エアーが各ろ過筒26の内側からろ布26bを通過して外側へ勢いよく流れ、ろ布26bの外側面に付着して目詰まりを生じさせている懸濁粒子を吹き落とすことができ、ろ布26bのろ過性能の回復が図れる。
なお、分離・ろ過動作を再開させるには、前記のように、電磁弁41,43を開に、電磁弁42,44を閉に設定して、流入管17から懸濁液を所定速度で送り込めばよい。
【0036】
ところで、吹込み管31からの圧搾エアーの送り込みによって、5本のろ過筒26の内のいずれか1本のろ過筒26の目詰まりの解消だけが先に進行し、他のろ過筒26の逆洗が正常に行えなくなるような場合もある。
その場合には、アッセンブリーとしての仕切板13を取り外し、図6に示すように、単一のろ過筒26の開口部を上側から覆うドーム状乃至逆漏斗状の吹込み用アダプタ51を用いて、個別のろ過筒26に対して圧搾エアーを吹き込んで目詰まり状態から確実に回復させることも可能である。
【0037】
各ろ過筒26と同様に、カートリッジ式フィルター30についても当然に目詰まりによるろ過寿命がある。
この実施形態では、カートリッジ式フィルター30として糸巻きタイプのものを使用していることから明らかなように、逆洗による回復は予定しておらず、ろ過性能が一定レベルまで低下した段階で新規なものと交換することとしている。
その場合には、図5に示したように、天板19aを上側ハウジング部11から取り外して天頂部分を開放するだけで、カートリッジ式フィルター30の交換を容易に行える。
【産業上の利用可能性】
【0038】
液体サイクロン方式の遠心分離とフィルターろ過分離を組み合わせた液体サイクロンろ過装置に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
10…本体容器、11…上側ハウジング部、12…下側ハウジング部、13…仕切板、14…シール部材、15…円柱状中空部、16…逆円錐状中空部、17…流入管、18…排出管、19…流出管、19a…天板、20…円柱状中空部の上室、21…円柱状中空部の下室、23…中央孔、24…周設孔、25…カートリッジ支持筒、25a…支持部、25b…外向きフランジ、26…ろ過筒、26a…多孔板材からなる有底筒体、26b…ろ布、26c…外向きフランジ、27…孔、28,29…ネジ孔、30…カートリッジ式フィルター、30a…軸中空部、31…吹込み管、41,42,43,44…電磁弁、51…吹込み用アダプタ。
【要約】
【課題】サイクロン方式の遠心分離とフィルターろ過分離とを組み合わせた液体サイクロンろ過装置において、旋回流の速度確保のために容器内径を大きくとれず、フィルター側のろ過面積が確保し難い。
【解決手段】円柱状中空部15と逆円錐状中空部16からなる容器10における円柱状中空部15の天井壁寄り位置にフィルターろ過機構を備えた仕切板13を挟装する。前記仕切板13の中央にカートリッジ支持筒25を、またその外周に複数本のろ過筒26を垂下させる。ろ過筒26は多孔板材からなる有底筒体26aにろ布26bを被着させたものであり、一方、円筒形状のろ材で、ろ過精度が前記ろ布26bより小さいカートリッジ式フィルター30を、カートリッジ支持筒25の底部と前記天井壁の中央に設けたろ過水の流出口19との間に立設固定し、前記フィルター30の軸中空部29aと流出口19とを連通させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図5
図6