特許第6385551号(P6385551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385551Nd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6385551
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】Nd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20180827BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20180827BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20180827BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01F41/02 G
   H01F1/057 170
   B22F1/00 D
   B22F1/00 G
   B22F1/00 B
   B22F1/00 Y
   C21D6/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-224230(P2017-224230)
(22)【出願日】2017年11月22日
【審査請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】201710598036.8
(32)【優先日】2017年7月21日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】310005618
【氏名又は名称】煙台首鋼磁性材料株式有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】彭 衆傑
(72)【発明者】
【氏名】楊 昆昆
(72)【発明者】
【氏名】徐 明鋒
(72)【発明者】
【氏名】柳 光洋
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−236221(JP,A)
【文献】 特開2008−71904(JP,A)
【文献】 特開2010−114200(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2540149(GB,A)
【文献】 特開2013−107206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00
C21D 6/00−6/04
C22C 1/04−1/05
33/02
H01F 1/00−1/117
1/40−1/42
41/00−41/04
41/08
41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法であって、
A)Nd−Fe−B系磁性体薄片をアルゴンガス保護容器内に置き、ジスプロシウム、テルビウム又はジスプロシウム−テルビウム合金の少なくとも一種の重希土類粉末を前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の少なくとも一方表面に均一に散布し、急速加熱法によって前記重希土類粉末を前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の表面に迅速に成膜させて前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の前記一方表面に凝着させ、
B)重希土類膜層で覆われた前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を真空焼結炉に投入し、真空又はアルゴンガスでの保護条件下において前記Nd−Fe−B系磁性体薄片に対して高温拡散及び時効処理を行う、
ことを特徴とするNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法。
【請求項2】
前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の厚みは0.5〜10mmの範囲である、
ことを特徴とする請求項1に記載のNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法。
【請求項3】
前記重希土類粉末の粒子径は0.5〜300μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法。
【請求項4】
前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の少なくとも一方表面を覆う前記重希土類粉末のNd−Fe−B系磁性体に対する質量比は0.1〜2質量%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法。
【請求項5】
前記急速加熱法はランプ照射加熱又はレーザクラッディングである、
ことを特徴とする請求項1に記載のNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法。
【請求項6】
前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に前記重希土類粉末を成膜した後、更に前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を180度反転させ、前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の他方表面にも前記重希土類粉末を散布して成膜する、
ことを特徴とする請求項1に記載のNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法。
【請求項7】
前記高温拡散の拡散温度は800〜1000℃、拡散時間は3〜72時間であり、
前記時効処理の温度は450〜700℃、時効時間は3〜15時間である、
ことを特徴とする請求項1に記載のNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNd−Fe−B系磁性体の加工技術分野に属し、具体的にはNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Nd−Fe−B系磁性体は1983年に登場し、コンピュータ、自動車、医療及び風力発電等の分野に広範に応用されているが、近年、より多くの先端応用分野においてNd−Fe−B系磁性体のさらなる小型化、軽量化及び薄片化が要求されるとともに、より高い残留磁束密度と保磁力が要求されている。
【0003】
焼結Nd−Fe−B系磁性体合金に、テルビウム又はジスプロシウムの純金属又はジスプロシウム−テルビウム合金を添加することでNd−Fe−B系磁性体の保磁力を増強させることができるが、当該方法を用いると、ジスプロシウム又はテルビウム元素が主相結晶粒子へ入り込み、Nd−Fe−B系磁性体の残留磁束密度が明らかに低下し、且つ重希土類元素の使用量が増えてしまう。
【0004】
NdFe14B主相の縁部にジスプロシウム、テルビウム元素又はジスプロシウム−テルビウム合金を浸透させることで、NdFe14B主相が硬化し、Nd−Fe−B系磁性体の保磁力が増強する。この理論によれば、既存の多くの技術は、Nd−Fe−B系磁性体をジスプロシウム、テルビウム等の重希土類元素を含んだ環境に置き、高温拡散及び時効処理を経ることで、ジスプロシウム、テルビウム元素を粒界に沿ってNd−Fe−B系磁性体のNdFe14Bの相境界へと拡散させ、NdFe14Bの磁気異方性が増強することで、Nd−Fe−B系磁性体の保磁力が増強する。
【0005】
日立金属株式会社の中国特許公開CN101375352Aには、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を用いてNd−Fe−B系磁性体の表面に重金属層を堆積すること及びその重金属層を高温拡散した後の磁性を高める方法を開示しているが、当該方法では蒸着時に発生する高温が磁性体に対して一定の影響を与えるとともに、重金属ターゲット材の利用効率が低く、コストが高騰するという問題がある。
【0006】
また、特開2005−0842131号公報には、ジスプロシウム又はテルビウムの酸化物、フッ化物、オキシフッ化物を塗料とし、Nd−Fe−B系磁性体の表面に塗布し、乾燥させた後に高温拡散及び時効処理を施し、磁性体の保磁力を増強させる方法が開示されているが、当該方法は磁性体表面の塗布物が乾燥後に剥がれ落ちやすく、また、フッ素、酸素元素が磁性体に拡散した後に磁性体の力学的特性と耐食性に悪影響を及ぼすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許公開CN101375352A
【特許文献2】特開2005−0842131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決した新たなNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、主として従来技術によるNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法の高コスト及び性能へ与える影響等の問題を解決し、低コストで磁石性能に悪影響の無い方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、Nd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法であって、
A)Nd−Fe−B系磁性体薄片をアルゴンガス保護容器内に置き、ジスプロシウム、テルビウム又はジスプロシウム−テルビウム合金の少なくとも一種の重希土類粉末を前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の表面に均一に散布し、急速加熱法によって前記重希土類粉末を前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の表面に迅速に成膜させ、かつ前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の表面に凝着させ、
B)重希土類膜層で覆われた前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を真空焼結炉に投入し、真空又はアルゴンガスでの保護条件下において前記Nd−Fe−B系磁性体薄片に対して高温拡散及び時効処理を行う、ことを特徴とする。
【0011】
更に、前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の厚みは0.5〜10mmの範囲である、ことを特徴とする。
【0012】
更に、前記重希土類粉末の粒子径は0.5〜300μmである、ことを特徴とする。
【0013】
更に、前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を覆う重希土類粉末の前記Nd−Fe−B系磁性体に対する質量比は0.1〜2%である、ことを特徴とする。
【0014】
更に、前記急速加熱法はランプ照射加熱又はレーザクラッディングである、ことを特徴とする。
【0015】
更に、前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に前記重希土類粉末を成膜した後、更に前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を180度反転させ、前記Nd−Fe−B系磁性体薄片の他方表面に前記重希土類粉末を散布して成膜する、ことを特徴とする。
【0016】
更に、前記高温拡散の拡散温度は800〜1000℃、拡散時間は3〜72時間であり、前記時効処理の時効温度は450〜700℃、時効時間は3〜15時間である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法によれば、従来技術に比べ、突出した実質的な特徴と顕著な進歩を有し、重希土類粉末を用いた高温凝着成膜法によって、Nd−Fe−B系磁性体薄片表面に重希土類層を形成し、粒界拡散技術と時効処理とを組み合わせて、Nd−Fe−B系磁性体薄片の残留磁束密度を低下させずに、保磁力を増強させることができる。従来技術である真空鍍金により得られる純重希土類金属膜と対比すると、高効率、低コスト等の優位点を有し、重希土類金属酸化物、フッ化物、水素化物を用いた場合と対比すると、酸素、フッ素、水素等の元素によるNd−Fe−B系磁性体材料への力学的特性と耐食性にもたらす悪影響を徹底して排除することができ、かつ高価で希少な重希土類材料の利用効率を高め、重希土類膜層の純度が高く、成膜速度が速く、大量生産に有利であり、製造が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明の更なる理解のため、以下、実施例をもとに本発明のNd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法を詳細に説明する。ここに挙げる実施例は本願発明の解釈だけに用いるものであり、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【0019】
実施例1
以下、本発明の実施例1について、その製造過程を詳細に説明する。
まず、縦×横×厚さが、20mm×20mm×2mmサイズからなるNd−Fe−B系磁性体薄をアルゴンガス保護容器内に置き、平均粒子径2μmのジスプロシウム粉末を、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に均一に散布した。ジスプロシウム粉末の質量はNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対し0.3%である。なお、以下説明する磁石サイズの表記は、いずれも縦×横×厚みである。
【0020】
その後、ジスプロシウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片をタングステンハロゲンランプ下まで移動させ、タングステンハロゲンランプをオンにし、Nd−Fe−B系磁性体薄片の表面を急速加熱し、Nd−Fe−B系磁性体薄片表面にジスプロシウム粉末を迅速に成膜硬化して、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に凝着させた。
【0021】
上記Nd−Fe−B系磁性体薄片を所定時間冷却した後、180度反転させ、他方表面にも上記と同様の方法にてジスプロシウム粉末をNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対し0.3%散布・凝着させ、Nd−Fe−B系磁性体薄片の両面にジスプロシウム膜層を形成した。Nd−Fe−B系磁性体薄片に対するジスプロシウム粉末量は、両面合わせて0.6質量%である。
【0022】
両面にジスプロシウム膜層が形成されたNd−Fe−B系磁性体薄片を真空焼結炉に投入し、真空又はアルゴンガスでの保護条件下において、900℃、10時間拡散処理し、磁性体を炉内で冷却した後、500℃まで再度上昇させ6時間の時効処理を行った。
【0023】
上記実施例1によって得られたNd−Fe−B系磁性体薄片の磁性性能の測定結果は表1のとおりであった。なお、表1中で示す初期サンプルとは、上記ジスプロシウム膜層を形成していない20mm×20mm×2mmサイズのNd−Fe−B系磁性体薄片である。
【0024】
表1に示す分析結果のとおり、両面で合計0.6質量%のジスプロシウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片の拡散・時効処理後の残留磁束密度は0.1kGs低下し、保磁力は5.02Koe上昇し、且つ磁性体の角形比の変化はほとんど無かった。
【0025】
実施例2
以下、本発明の実施例2について、その製造過程を詳細に説明する。
まず、20*20*2TサイズからなるNd−Fe−B系磁性体薄片をアルゴンガス保護容器へ置き、平均粒子径300μmのテルビウム粉末を、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に均一に散布した。テルビウム粉末の質量はNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対し0.3%である。
【0026】
その後、テルビウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片をタングステンハロゲンランプまで移動させ、タングステンハロゲンランプをオンにし、Nd−Fe−B系磁性体薄片の表面を急速加熱し、Nd−Fe−B系磁性体薄片にテルビウム粉末を迅速に成膜硬化させて、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に凝着させた。
【0027】
上記Nd−Fe−B系磁性体薄片を所定時間冷却した後、180度反転させ、他方表面にも上記と同様の方法にてテルビウム粉末をNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対し0.3%散布・凝着させ、Nd−Fe−B系磁性体薄片の両面にテルビウム膜層を形成した。Nd−Fe−B系磁性体薄片に対するテルビウム粉末量は、両面合わせて0.6質量%である。
【0028】
両面にテルビウム膜層が形成されたNd−Fe−B系磁性体薄片を真空焼結炉に投入し、真空又はアルゴンガスでの保護条件下において、800℃、30時間拡散処理し、磁性体を炉内で冷却した後、470℃まで再度上昇させ6時間の時効処理を行った。
【0029】
上記実施例2によって得られた焼結Nd−Fe−B系磁性体薄片の磁性性能の測定結果は表2のとおりであった。なお、表2中で示す初期サンプルとは、上記テルビウム膜層を形成していない20mm×20mm×2mmサイズのNd−Fe−B系磁性体薄片である。
【0030】
表2に示す分析結果のとおり、両面合計で0.6質量%のテルビウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片の拡散・時効処理後の残留磁束密度は0.05kGs低下し、保磁力は7.61Koe上昇し、且つ磁性体の角形比の変化はほとんど無かった。
【0031】
実施例3
以下、本発明の実施例3について、その製造過程を詳細に説明する。
まず、20mm×20mm×10mmサイズからなるNd−Fe−B系磁性体薄片をアルゴンガス保護容器へ置き、平均粒子径200μmのジスプロシウム粉末を、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に均一に散布した。ジスプロシウム粉末の質量はNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対して1.0%である。
【0032】
その後、ジスプロシウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片をレーザクラッド機まで移動させ、Nd−Fe−B系磁性体薄片表面のジスプロシウム粉末をレーザクラッディングし、Nd−Fe−B系磁性体薄片にジスプロシウム粉末を迅速に成膜硬化させて、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に凝着させた。
【0033】
前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を所定時間冷却した後、180度反転させ、他方表面にも上記と同様の方法にてジスプロシウム粉末をNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対し1.0%散布・凝着させ、Nd−Fe−B系磁性体薄片の両面にジスプロシウム膜層を形成した。Nd−Fe−B系磁性体薄片に対するジスプロシウム粉末量は、両面合わせて2.0質量%である。
【0034】
両面にジスプロシウム膜層が形成されたNd−Fe−B系磁性体薄片を真空焼結炉に投入し、真空又はアルゴンガスでの保護条件下において、Nd−Fe−B系磁性体薄片を850℃、72時間拡散処理し、磁性体を炉内で冷却した後、560℃まで再度上昇させ15時間の時効処理を行った。
【0035】
上記実施例3によって得られた焼結Nd−Fe−B系磁性体薄片の磁性性能の測定結果は表3のとおりであった。なお、表1中で示す初期サンプルとは、上記ジスプロシウム膜層を形成していない20mm×20mm×10mmサイズのNd−Fe−B系磁性体薄片である。
【0036】
表3に示す分析結果のとおり、両面合計で2.0質量%のジスプロシウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片の拡散・時効処理後の残留磁束密度は0.23kGs低下し、保磁力は7.2Koe上昇し、且つ磁性体の角形比の変化はほとんど無かった。
【0037】
実施例4
以下、本発明の実施例4について、その製造過程を詳細に説明する。
まず、20mm×20mm×10mmサイズからなるNd−Fe−B系磁性体薄片をアルゴンガス保護容器へ置き、平均粒子径2μmのテルビウム粉末を、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に均一に散布した。テルビウム粉末の質量はNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対して0.8%である。
【0038】
その後、テルビウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片をレーザクラッド機まで移動させ、Nd−Fe−B系磁性体薄片表面のテルビウム粉末をレーザクラッディングし、Nd−Fe−B系磁性体薄片にテルビウム粉末を迅速に成膜硬化させて、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に凝着させた。
【0039】
前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を所定時間冷却した後、180度反転させ、他方表面にも上記と同様の方法にてテルビウム粉末をNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対して0.8%散布・蒸着させ、Nd−Fe−B系磁性体薄片の両面にテルビウム膜層を形成した。Nd−Fe−B系磁性体薄片に対するテルビウム粉末量は、両面合わせて1.6質量%である。
【0040】
両面にテルビウム膜層が形成されたNd−Fe−B系磁性体薄片を真空焼結炉に投入し、真空又はアルゴンガスでの保護条件下において、960℃、24時間拡散処理し、磁性体を炉内で冷却した後、560℃まで再度上昇させ15時間の時効処理を行った。
【0041】
上記実施例4によって得られた焼結Nd−Fe−B系磁性体薄片の磁性性能の測定結果は表4のとおりであった。なお、表1中で示す初期サンプルとは、上記テルビウム膜層を形成していない20mm×20mm×10mmサイズのNd−Fe−B系磁性体薄片である。
【0042】
表4に示す分析結果のとおり、両面合計で2.0質量%のテルビウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片の拡散・時効処理後の残留磁束密度は0.23kGs低下し、保磁力は7.2Koe上昇し、且つ磁性体の角形比の変化はほとんど無かった。
【0043】
実施例5
以下、本発明の実施例5について、その製造過程を詳細に説明する。
まず、20mm×20mm×5mmサイズからなるNd−Fe−B系磁性体薄片をアルゴンガス保護容器に置き、平均粒子径0.5μmのジスプロシウム粉末及びテルビウム粉末を、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に均一に散布した。ジスプロシウム粉末及びテルビウム粉末の質量比は3:7であり、かつNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対して合計で0.1%である。なお、ジスプロシウム及びテルビウムの単体粉末に代えて、ジスプロシウム−テルビウム合金粉末を用いても良い。
【0044】
その後、ジスプロシウム粉末、テルビウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片をタングステンハロゲンランプまで移動させ、タングステンハロゲンランプをオンにし、Nd−Fe−B系磁性体薄片の表面を急速加熱し、Nd−Fe−B系磁性体表面にジスプロシウム粉末、テルビウム粉末を迅速に成膜硬化して、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に凝着させた。
【0045】
前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を所定時間冷却した後、180度反転させ、他方表面にも上記と同様の方法にてジスプロシウム粉末、テルビウム粉末をNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対して0.1%散布・蒸着させ、Nd−Fe−B系磁性体薄片の両面にジスプロシウム及びテルビウム膜層を形成した。Nd−Fe−B系磁性体薄片に対するジスプロシウム及びテルビウム粉末量は、両面合わせ0.2質量%である。
【0046】
前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を真空焼結炉に投入し、真空又はアルゴンガスでの保護条件下において、Nd−Fe−B系磁性体薄片を1000℃、3時間拡散処理し、磁性体を炉内で冷却した後、700℃まで再度上昇させ3時間の時効処理を行った。
【0047】
上記実施例5によって得られた焼結Nd−Fe−B系磁性体薄片の磁性性能の測定結果は表5のとおりであった。なお、表中で示す初期サンプルとは、上記ジスプロシウム及びテルビウム粉末膜層を形成していない20mm×20mm×5mmサイズのNd−Fe−B系磁性体薄片である。
【0048】
表5に示す分析結果のとおり、両面合計で0.2質量%のジスプロシウム及びテルビウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片の拡散・時効処理後の残留磁束密度は0.1kGs低下し、保磁力は5.0Koe上昇し、且つ磁性体の角形比の変化はほとんど無かった。
【0049】
実施例6
以下、本発明の実施例6について、その製造過程を詳細に説明する。
まず、20mm×20mm×5mmサイズのNd−Fe−B系磁性体薄片をアルゴンガス保護容器に置き、平均粒子径100μmのジスプロシウム及びテルビウム粉末を、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に均一に散布し、ジスプロシウム及びテルビウム粉末の質量比は3:7であり、かつNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対し合計で0.2%であった。なお、ジスプロシウム及びテルビウムの単体粉末に代えて、ジスプロシウム−テルビウム合金粉末を用いても良い。
【0050】
その後、ジスプロシウム及びテルビウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片をタングステンハロゲンランプまで移動させ、タングステンハロゲンランプをオンにし、Nd−Fe−B系磁性体薄片の表面を急速加熱し、Nd−Fe−B系磁性体表面にジスプロシウム及びテルビウム粉末を迅速に成膜硬化させて、Nd−Fe−B系磁性体薄片の一方表面に凝着させた。
【0051】
前記Nd−Fe−B系磁性体薄片を所定時間冷却した後、180度反転させ、他方表面にも上記と同様の方法にてジスプロシウム及びテルビウム粉末をNd−Fe−B系磁性体薄片の質量に対して0.2%散布・蒸着させ、Nd−Fe−B系磁性体薄片の両面にジスプロシウム及びテルビウム膜層を形成した。Nd−Fe−B系磁性体薄片に対するジスプロシウム及びテルビウム粉末量は、両面合わせて0.4質量%である。
【0052】
前記ジスプロシウム及びテルビウム膜層で覆われたNd−Fe−B系磁性体薄片を真空焼結炉に投入し、真空又はアルゴンガスでの保護条件下において、850℃、60時間で拡散処理し、磁性体を炉内で冷却した後、450℃まで再度上昇させ15時間の時効処理を行った。
【0053】
上記実施例6によって得られた焼結Nd−Fe−B系磁性体薄片の磁性性能の測定結果は表6のとおりであった。なお、表中で示す初期サンプルとは、上記ジスプロシウム及びテルビウム粉末膜層を形成していない20mm×20mm×5mmサイズのNd−Fe−B系磁性体薄片である。
【0054】
表6に示す分析結果のとおり、両面合計で0.4質量%のジスプロシウム及びテルビウム粉末を散布したNd−Fe−B系磁性体薄片の拡散・時効処理後の残留磁束密度は0.05kGs低下し、保磁力は6.0KOe上昇し、且つ磁性体の角形比の変化はほとんど無かった。
【0055】
上記各実施例によれば、急速加熱法によって、Nd−Fe−B系磁性体薄片表面に重希土類膜層を形成することにより、拡散・時効処理後にNd−Fe−B系磁性体の保磁力が顕著に増強し、拡散した磁性体中のC、H、O、N、F元素の含有量は、C<800ppm、H<20ppm、O<800ppm、N<200ppm、F<20ppmと僅かであった。
【0056】
また、上記した各実施例では、磁石の両表面を重希土類粉末によって被膜したが、場合によっては、片側表面(一方表面)のみに形成しても良い。
なお、本発明で言う磁石表面とは、四角柱からなる薄片磁石の上面と底面を構成する最大面(上記各実施例中の縦×横を構成する面)を意味する。
【0057】
以上、本願発明に係る実施例について説明したが、あくまで本発明の良好な実施例を示しただけに過ぎず、本発明に対し如何なる形式上の制限を加えるものでもなく、実質的に本発明技術に基づいてなされた如何なる改良は、すべて本発明の保護範囲内に属するものである。
【要約】      (修正有)
【課題】重希土類材料の利用効率が高く、重希土類膜層の純度が高く、成膜速度が速く、大量生産に適し、且つ熱処理後の磁性体の保磁力が大幅に増強する、Nd−Fe−B系磁性体の保磁力増強方法を提供する。
【解決手段】Nd−Fe−B系磁性体薄片をアルゴンガス保護容器に置き、ジスプロシウム、テルビウム又はジスプロシウム−テルビウム合金粉末をNd−Fe−B系磁性体の表面に均一に散布し、急速加熱法によって、Nd−Fe−B系磁性体表面の粉末を迅速に加熱硬化成膜させ、磁性体を真空炉に投入して熱処理し、重希土類元素を粒界に沿って磁性体内部へと拡散させ、残留磁束密度を低下させずに、保磁力を増強させる。
【選択図】なし