【実施例1】
【0019】
[自立式擁壁]
<1>全体の構成(
図1、2)。
本発明の自立式擁壁1は、CFT(Concrete Filled Steel Tube:コンクリート充填鋼管)構造による高耐力支柱によって背面の土圧を有効に支持可能な構造物である。
自立式擁壁1は、壁面材11と拘束管12を有する擁壁パネル10と、擁壁パネル10を支持する杭体20と、拘束管12内に充填する充填材30と、を少なくとも備える。杭体20の上部は拘束管12内に配置し、充填材30によって、擁壁パネル10と杭体20とを一体に連結する。
本例では、擁壁パネル10と杭体20を杭頭固定部Jによって連結する杭頭固定の構造を採用する。
複数の自立式擁壁1を擁壁パネル10の面方向に連続することで連続壁として背面の土を支持する。
【0020】
<2>擁壁パネル(
図3)。
擁壁パネル10は、自立式擁壁1の壁面を構成するパネル部材である。
擁壁パネル10は、壁面材11と、壁面材11の背面中央に高さ方向に沿って連結した拘束管12と、を少なくとも備える。なお、拘束管12の付設位置は背面中央に限らず、設計に応じて背面の片側に偏芯して付設してもよい。
本例では、壁面材11が複数の連結片11bを有し、壁面材11と拘束管12を、拘束管12の両側面に添接した複数の連結片11bを介して連結する。
【0021】
<2.1>壁面材。
壁面材11は、擁壁パネル10における面状の構成要素である。
本例では、壁面材11として、矩形面状の壁面本体11aと、壁面本体11aの背面から一部が突出した複数の連結片11bと、を備える。
壁面本体11aとして、プレキャストの鉄筋コンクリートを採用する。壁面本体11aの表面には凹凸や溝などの意匠加工(化粧)を施してもよい。
本発明の自立式擁壁1は、擁壁パネル10が壁面材11と拘束管12の連結構造であるため、軽量で施工性に優れる上、壁面材11の間に角材などを挟むことで、平積みして搬送・保管することができる(
図4)。
【0022】
<2.1.1>連結片(
図5)。
連結片11bは、壁面材11を拘束管12に連結するための構成要素である。
連結片11bは、一部を壁面本体11a内に埋設し、他部を壁面本体11aの背面から突出させる。これによって、連結片11bが壁面本体11a内に一体に固定されるため、供用時、土圧によって連結片11bが引き抜けるおそれがない。
本例では、連結片11bとして、面状の支持部11cと、支持部11cの一面の中央から突起する連結部11dと、を備えた断面略T字形状の鋼材を採用する。
連結部11dの側面には、高さ方向の所定の間隔でボルト孔を穿設する。
支持部11cを壁面本体11aの背面と平行に配置し、連結部11dを壁面本体11aの背面から突出させる。
複数の連結片11bを所定間隔で上下方向に埋設して、拘束管12の側面を二面から挟み込むことが可能なように連結部11dを二列に配置する。
この際、連結片11bの支持部11cを壁面本体11aの鉄筋11gに係合することで、壁面本体11aと連結片11bの一体性を強化し、引き抜きに対する抵抗をさらに強めることができる。
ここで「係合」とは支持部11cを鉄筋11gに直接接触して掛ける他、鉄筋11gより前面側に配置し、過大な土圧で壁面本体11aのコンクリートが破壊された時に支持部11cが鉄筋11gに係止される位置に配置することを含む。
なお、連結片11bの構造は上記に限定されず、例えば、断面略L字形状や断面略Z字形状、断面略コ字形状等を採用してもよい。
【0023】
<2.2>拘束管。
拘束管12は、内部に充填された充填材30を拘束することによって、CFT構造による高耐力支柱を構成する構成要素である。
拘束管12は、長尺の角形鋼管からなる。
拘束管12の幅、厚さ、及び長さは、自立式擁壁1の設計や要求性能に応じて適宜設定する。本例では拘束管12の長さを壁面材11の高さより短く設定する。
本例では、拘束管12の側面の、連結片11bのボルト孔に対応する位置に、複数のボルト孔を穿設する。
拘束管12は、側面の一面が壁面材11の背面に接し、該側面に隣接する二面が二列の支持部11cの間に挟まれる。
拘束管12の下端は、壁面材11の底面に揃える。
【0024】
<2.2.1>CFT構造。
本発明の自立式擁壁1は、拘束管12内に充填された充填材30が硬化することによって、拘束管12と充填材30によるCFT構造の高耐力支柱を構成する点に特徴の一つがある。
CFT構造は、コンクリートが鋼管の局部座屈を防ぐと同時に、鋼管がコンクリートの破壊を防ぐ相互拘束効果(コンファインド効果)によって、強靱性、高強度、および高耐力を発揮可能な構造である。
充填材30の均質・密実かつ隙間のない充填、適切な強度発現、及び拘束管12と充填材30の一体化を保証することで、設計上もCFT構造の相互拘束効果を考慮することができる。このため、従来の自立式擁壁と比較して、同一性能において控え部のサイズを大幅に縮小することができる。
【0025】
<3>杭体。
杭体20は、地中から擁壁パネル10を支持する部材である。
本例では、杭体20として地中に形成したソイルセメント改良体22と、改良体22の芯部に配置したH鋼の芯材21と、を備えたH鋼ソイルセメント杭を採用する。
H鋼ソイルセメント杭は軟弱地盤にも適用可能であり、芯材21を深く根入れすることで、滑動に対する高い抵抗性を発揮することができる。
但し、杭体20はH鋼ソイルセメント杭に限られず、例えば、鋼管ソイルセメント杭、鋼管杭、H鋼杭などであってもよい。
芯材21の頭部は地盤から上方に突出させ、拘束管12の下端の内部に配置する。
【0026】
<4>充填材。
充填材30は、拘束管12内に充填することによって擁壁パネル10と杭体20を一体に連結する部材である。
本例では、充填材30として高強度・高流動コンクリートを採用する。
CFT構造の性能は充填材30の品質に大きく左右されるため、充填材30調合及び品眞つ管理には特に留意を要する。
【0027】
<5>杭頭固定部(
図2)。
本例の自立式擁壁1は、芯材21の頭部と拘束管12の内壁の間に充填した充填材30が硬化することによって、杭頭固定部Jを構成する点に特徴の一つがある。
杭頭固定部Jは、H鋼の芯材21の頭部をCFT構造の拘束管12内に強固に拘束することで、擁壁パネル10を杭体20に杭頭固定し、壁面材11に作用する背面土圧を、杭頭固定部Jにおける拘束管12、充填材30、及び芯材21の一体連結を介して、杭体20の地中部分に有効に伝達することができる。
このように、芯材21の地上への突出長を大幅に短縮できるので、芯材21の長さを半減でき、材料コストを大幅に低減することができる。
【0028】
[施工方法]
引き続き、本発明の自立式擁壁の施工方法について詳細に説明する。
<1>擁壁パネルの組立。
壁面材11背面から突出する2列の連結片11bの間に拘束管12を配置し、両者のボルト孔が一致するように位置合わせをする。
連結片11bと拘束管12に連結ボルト13を連通し、両者をボルト結合する。
【0029】
<2>改良体の形成。
攪拌混合装置によって、セメント系固化材を地盤に注入しながら攪拌混合し、地中に柱状の改良体22を形成する。
同様にして、自立式擁壁1の連続方向に沿って所定間隔で所定数の改良体22を形成する。
【0030】
<3>芯材の建て込み。
改良体22が未硬化の内に改良体22内に芯材21のH鋼を建て込む。この際、芯材21の頭部を地盤上に突出させる。突出長は設計に応じて適宜設定するが、本例では芯材21の頭部を200mm程度突出させる。
芯材21の鉛直性と芯ずれがないかを確認する。
同様にして全ての改良体22に芯材21を建て込む。
【0031】
<4>擁壁パネルの設置。
擁壁パネル10を地盤上に吊り下ろす。
この際、拘束管12内に芯材21を挿通する。
本例では、擁壁パネル10を杭頭固定部Jによる杭頭固定とするため、擁壁パネル10を高く吊り上げる必要がない。このため、施工効率が非常に高い。
設置後、壁面材11の水平確認及び鉛直確認と、拘束管12の内壁と芯材21の間に所定のクリアランスが確保できていることを確認する。
【0032】
<5>充填材の充填。
拘束管12内に上方から充填材30を充填する。
充填材30は適切な打設速度で、拘束管12の上部まで充填する。
なお、充填方法は拘束管12上部からの落とし込みに限らず、拘束管12下部から圧入してもよい。
充填後、充填材30が拘束管12内に隙間なく充填されるようにバイブレーターで十分に締め固める。
【0033】
<6>充填材の硬化。
拘束管12内の充填材30が硬化して強度発現することによって、充填材30と拘束管12が相互に拘束し合って高耐力柱構造が構成される。
また、芯材21の頭部と、拘束管12と、充填材30とによって、前記壁面材に作用する背面土圧を前記杭体の地中部分に有効に伝達可能な、杭頭固定部Jが構成される。
【0034】
<7>その後の工程。
擁壁パネル10の一箇所の立設が終わったら、隣の杭体20に<4>〜<6>の作業を繰り返して自立式擁壁1を水平方向に連続してゆく。
なお、本例では工程<1>〜<3>を擁壁パネル10の連続方向に沿って各工程まとめて行い、工程<4>〜<6>を杭体20ごとに行ったが、これに限られない。
例えば、全ての工程を水平方向にまとめて行うなど、適宜手順を変更してもよい。