特許第6385559号(P6385559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385559細胞培養体からのポリオウイルスの精製プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385559
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】細胞培養体からのポリオウイルスの精製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   C12N7/02
【請求項の数】9
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-503831(P2017-503831)
(86)(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公表番号】特表2017-524360(P2017-524360A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】EP2015066638
(87)【国際公開番号】WO2016012445
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2017年2月6日
(31)【優先権主張番号】14178392.8
(32)【優先日】2014年7月24日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14178399.3
(32)【優先日】2014年7月24日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516257833
【氏名又は名称】ヤンセン ファッシンズ アンド プリベンション ベーフェー
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN VACCINES & PREVENTION B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100162617
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マリケン セゲーズ
(72)【発明者】
【氏名】ベックリー クンガー フォー
(72)【発明者】
【氏名】フェラス ナチミ アラジ
(72)【発明者】
【氏名】マルセル レオ デ ボット
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−532616(JP,A)
【文献】 特開2007−295937(JP,A)
【文献】 特開2012−040026(JP,A)
【文献】 特表2014−516554(JP,A)
【文献】 特表2013−507141(JP,A)
【文献】 特開2004−313019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオウイルスを含む粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを精製する方法であって:
a)陽イオン洗浄剤を前記粗細胞培養収穫物に加えて混合物を得る工程と;
b)前記工程a)で得られた混合物を浄化して上澄みまたはろ液を回収し、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と
を含む方法。
【請求項2】
ポリオウイルスを含む粗細胞培養収穫物からのポリオウイルスの放出を促進する方法であって:
a)陽イオン洗浄剤を前記粗細胞培養収穫物に加えて混合物を得る工程と;
b)前記工程a)で得られた混合物を浄化して上澄みまたはろ液を回収し、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と
を含む方法。
【請求項3】
ポリオウイルスを含む粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを精製する方法であって:
a)陽イオン洗浄剤を前記粗細胞培養収穫物に加えて混合物を得る工程と;
b)前記工程a)で得られた混合物を浄化して上澄みまたはろ液を回収し、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と;
c)工程b)において得られた前記浄化済み収穫物を捕捉工程にかけて、ポリオウイルス含有懸濁液を得る工程と
を含む方法。
【請求項4】
前記捕捉工程は、陽イオン交換クロマトグラフィ工程である、請求項3に記載の粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを精製する方法。
【請求項5】
工程c)において得られた前記ポリオウイルスは、サイズ排除によって前記ポリオウイルス含有懸濁液からさらに分離される、請求項3または4に記載の粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを精製する方法。
【請求項6】
前記サイズ排除は、サイズ排除クロマトグラフィによって実行される、請求項5に記載の粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを精製する方法。
【請求項7】
ポリオウイルスを含む粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを精製する方法であって:
a)陽イオン洗浄剤を前記粗細胞培養収穫物に加えて混合物を得る工程と;
b)前記工程a)で得られた混合物を浄化して上澄みまたはろ液を回収し、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と;
c)工程b)において得られた前記浄化済み収穫物を陽イオン交換クロマトグラフィ工程にかけて、ポリオウイルス含有懸濁液を得る工程と;
d)サイズ排除クロマトグラフィによって、前記ポリオウイルス含有懸濁液から前記ポリオウイルスをさらに精製分離する工程と
を含む方法。
【請求項8】
前記陽イオン洗浄剤は、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ヘキサデシルピリジニウムクロリド(CPC)、塩化ベンゼトニウム(BTC)、および臭化ドミフェン(DB)の群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記陽イオン洗浄剤は、臭化ドミフェン(DB)である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス生産の分野に関する。より詳細には、本発明は、細胞懸濁液からのポリオウイルス粒子の向上した精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチン生産の分野での最近の開発により、大規模製造の必要性が生じた。ポリオ等の感染症に対処するのに十分な量の(組換え)ワクチンで世界を支援するには、ロバストで高い収率のプロセスが必要とされる。
【0003】
ポリオウイルスは、ピコルナウイルス(Picornaviridae)科のエンテロウイルス(Enterovirus)属のメンバーである。ポリオウイルスは、カプシドが単鎖プラスセンスRNAゲノムを取り囲む、小型の非エンベロープウイルスである。3タイプのポリオウイルス:1型、2型および3型が存在する。感受性個体がポリオウイルスに感染すると、麻痺性灰白髄炎が生じるおそれがある。灰白髄炎は、高度に伝染性である。2つの異なるポリオワクチンであるSalkの不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)およびSabinの生弱毒化経口ポリオウイルスワクチン(OPV)が、長い期間をかけて開発された。両方のワクチンとも安全かつ効果的である。それぞれに特有の利点および不利点があり、両方とも、灰白髄炎の制御において重要な役割を果たしてきた。ポリオウイルスおよびポリオワクチンについての総説に関して、例えばKew et al,2005を参照されたい。
【0004】
ワクチン、特にIPVに用いられ得るバルクポリオウイルス材料を生産する培養精製系が、比較的高いコストの大きい一因となる。
【0005】
そのため、ワクチンに用いるポリオウイルスを生産する効率的な培養精製系の必要性が、当該技術分野において依然として存在する。特に、高収率のポリオウイルス精製プロセスの必要性が依然として存在する。
【0006】
典型的なポリオウイルス生産プロセスにおいて、細胞が特定の培地中で増殖し、続いてポリオウイルスが細胞と接触して、ウイルスは前記細胞に感染して増殖することができる。前記細胞中でのポリオウイルスの増殖後、ウイルスまたはその成分は、細胞培養体から収穫される。
【0007】
1つの好ましい現在用いられているIPV製造プロセスは、マイクロキャリア上で増殖し、かつ血清補充培地中で培養される、付着依存性のサル由来VERO細胞を用いるものである。
【0008】
細胞培地中に生産かつ放出されるウイルスは、従来の方法、例えば深層濾過、遠心分離によって細胞バイオマスから分離され得る。そのような場合、濾過または遠心分離は、収穫工程である。濾過された収穫物は、典型的には限外濾過されて、ウイルス懸濁液が濃縮され、続いてポリオウイルスは、例えばゲル濾過および/またはイオン交換クロマトグラフィを用いて、精製され得る。ポリオウイルスまたはウイルスの成分を収穫かつ精製する方法、およびそこからのワクチンの生産は、当該技術分野において既に数十年間用いられているため、周知であり、例えば、Van Wezel et al,1978;Montagnon et al,1984;国際公開第2007/007344号パンフレット、および米国特許第4525349号明細書(全てが参照によって本明細書中に組み込まれる)において詳しく記載されている。結果として生じた濃縮ウイルス懸濁液は、任意選択的に希釈されてもよく、IPVを調製するためにその中のポリオウイルスは不活化されることとなり、これには従来の方法が用いられ得る。
【0009】
現在使用されているポリオウイルス生産プロセスの生産性は、世界規模でのポリオ根絶に必要とされるIPV生産量を準備するのに十分でない。そのため、世界的な生産能力の限界がある。また、現在用いられている生産プロセスは、その低い生産性のために、単位操作コストが高い。これは、施設の土地専有面積が大きく、それに応じて培地およびバッファの消費が高く、同時に(生物活性)廃棄物の排出も高いためである。ワクチン製造プロセスと関連するコストは別として、産物バッチの制御および放出コストもまた、生産性と比例する。すなわち、高い生産性のバッチは、ワクチン用量あたりのコストをかなり下げる。
【0010】
ポリオウイルスの生産収率を向上させる一方法が、上流の生産プロセスを向上させることである。生産培養の細胞密度を上げることによって、高収率でのポリオウイルスの生産プロセスが達成された(例えば国際公開第2011/06823号パンフレット参照)。しかしながら、これは、ダウンストリームプロセシングにおいて、付加的なチャレンジをもたらすおそれがある。ポリオウイルス精製プロセスを向上させる開発は、より低い密度での培養についても高い密度での培養についても、これまで記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、ポリオウイルスの精製プロセスの収率をさらに増大させるための、ダウンストリームプロセスを向上させる必要性が当業界に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、粗細胞収穫物からのポリオウイルス粒子の向上した精製方法に関し、細胞密度が高い収穫物にも適している。ある例示的な実施形態において、本発明の方法は、例えば、全体的な生産性が、ポリオウイルス1型、2型および3型についてのホルムアルデヒド不活化後、それぞれ15〜25;6〜12および10〜16IPV用量/ウイルス培養体mlに及び得る。これは、これまで知られている方法よりも実質的に高い容量収率である。実際に、Kreeftenberg et al.(2006)は、従来のVERO細胞プラットホームベースのIPVプロセスの全体的な収率が、ポリオウイルス1〜3型についてそれぞれ40:8:32のD−抗原ユニット/用量に基づいて、かつ不活化後の全体的なD−抗原回収率を40%と仮定して、0.64、1.04および0.34用量/ウイルス培養体mlとなると推定した。生産性の顕著な増大は、施設の土地専有面積を顕著に引き下げ、それに伴い製造コストを下げることとなる一方で、IPV用量の世界的需要を供給するのに必要とされる能力を最大にする。
【0013】
既知のプロセスを用いる、高い細胞密度の懸濁液のダウンストリームプロセシングは一般的に、多数の工程を必要とするであろう。第1の濾過工程は、細胞全体を取り除くためのコース濾過に続いて、残留細胞残渣を取り除いて材料を沈殿させるための、より小さいサイズの一連のメンブランフィルタからなるであろう。続いて、濃縮工程の後に、2つ以上の選択的クロマトグラフィ工程が、調節要件(WHO/EP)に従う十分に精製されたポリオウイルス懸濁液を得るために必要とされる。
【0014】
本発明者らは、本明細書中において、細胞培養においてポリオウイルスを増殖させた直後に、ポリオウイルスを含有する得られた粗細胞培養収穫物が、陽イオン洗浄剤、陰イオン洗浄剤、非イオン洗浄剤、および双極性イオン洗浄剤の群から好ましくは選択される洗浄剤で処理されて、収穫物懸濁液中へのポリオウイルスの放出が向上し得ることを見出し、かつこのことを開示した。そうして得られた全体的な精製収率は、前例のないものであった。実際に、ある実施形態において、本発明のプロセスは、これまでに開示されているプロセスを用いて得られた0.3〜1IPV用量/細胞懸濁液mlの従来のVero細胞ベースのプラットホーム収率に対して、6〜25IPV用量/細胞懸濁液mlの収率に達した。
【0015】
本発明は、粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを精製する方法を提供し、前記方法は:a)洗浄剤を粗細胞培養収穫物に加える工程と;b)前記ポリオウイルス含有細胞培養収穫物を浄化して、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程とを含む。
【0016】
本発明はまた、粗細胞培養収穫物からのポリオウイルスの放出を促進する方法を提供し、前記方法は:a)洗浄剤を粗細胞培養収穫物に加える工程と;b)前記ポリオウイルス含有細胞培養収穫物を浄化して、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程とを含む。
【0017】
浄化工程は、浄化済み収穫物をもたらし、これは、粗細胞培養収穫物と比較して、宿主細胞DNAおよび細胞残渣が大幅に引き下げられた内容物を含む。
【0018】
驚くべきことに、浄化後、高度に選択的な陽イオン交換捕捉工程に続く、サイズ分離ベースの仕上げ工程、すなわちサイズ排除クロマトグラフィまたは透析濾過プロセス工程が、浄化済み収穫物からの高いレベルの宿主細胞タンパク質(HCP)不純物を除去することができた。
【0019】
したがって、本発明はまた、細胞培養体からポリオウイルスを精製する方法を提供し、前記方法は:a)洗浄剤を細胞培養体に加える工程と;b)前記ポリオウイルス含有細胞培養体を浄化して、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と;c)工程b)において得られた浄化済み収穫物を捕捉工程にかけて、ポリオウイルス含有懸濁液を得る工程とを含む。好ましくは前記捕捉工程は、陽イオン交換クロマトグラフィ工程である。
【0020】
好ましい実施形態において、先の方法の工程c)において得られたポリオウイルスは、サイズ排除によってポリオウイルス含有懸濁液からさらに分離される。好ましくは、前記サイズ排除は、サイズ排除クロマトグラフィによって実行される。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明はまた、細胞培養体からポリオウイルスを精製する方法を提供し、前記方法は:a)洗浄剤を細胞培養体に加える工程と;b)前記ポリオウイルス含有細胞培養体を浄化して、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と;c)工程b)において得られた浄化済み収穫物を陽イオン交換クロマトグラフィ工程にかけて、ポリオウイルス含有懸濁液を得る工程と;d)サイズ排除クロマトグラフィによって、ポリオウイルス含有懸濁液からポリオウイルスをさらに精製する工程とを含む。
【0022】
本発明において用いられる洗浄剤は好ましくは、陽イオン洗浄剤、陰イオン洗浄剤、非イオン洗浄剤、および双極性イオン洗浄剤の群から選択される。さらにより好ましい実施形態において、前記洗浄剤は、陽イオン洗浄剤であり、好ましくは前記陽イオン洗浄剤は、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ヘキサデシルピリジニウムクロリド(CPC)、塩化ベンゼトニウム(BTC)、および臭化ドミフェン(DB)の群から選択される。より好ましい実施形態において、前記洗浄剤は、臭化ドミフェン(DB)である。
【0023】
さらに別の実施形態において、前記洗浄剤は好ましくは、陰イオン洗浄剤である。好ましくは、前記陰イオン洗浄剤は、タウロデオキシコール酸ナトリウム水和物(STH)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の群から選択される。
【0024】
さらに別の実施形態において、前記洗浄剤は好ましくは、非イオン洗浄剤である。好ましくは、前記非イオン洗浄剤は、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール(Triton(登録商標)X−100)およびデシル−β−D−1−チオマルトピラノシド(DTP)の群から選択される。
【0025】
別の実施形態において、前記洗浄剤は好ましくは、双極性イオン洗浄剤である。好ましくは、前記双極性イオン洗浄剤は、3−(N,N−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート(SB3−14)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)の群から選択される。
【0026】
本発明はまた、粗細胞培養収穫物からのポリオウイルスの放出を促進するための洗浄剤の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1A−Cは、洗浄剤(臭化ドミフェン)による処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物からのD−抗原の放出。細胞密度が異なり、それぞれが異なるポリオ株(Mahoney、MEF−1、またはSaukett)を含有するいくつかの収穫物が、洗浄剤で処理されてから遠心分離された。上澄み中のD−抗原濃度が、洗浄剤濃度の関数として開示されている。
図2図2A−Cは、洗浄剤(臭化ドミフェン)による処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物における宿主細胞DNAの析出。細胞密度が異なり、それぞれが異なるポリオ株(Mahoney、MEF−1、またはSaukett)を含有するいくつかの収穫物が、洗浄剤で処理されてから遠心分離された。上澄み中の宿主細胞DNA濃度が、洗浄剤濃度の関数として開示されている。
図3】洗浄剤による処理前後の、上澄み中のD−抗原濃度/粗製物中のD−抗原濃度の比率。細胞密度が異なり、異なるポリオ株(Mahoney、MEF−1、またはSaukett)を含有するいくつかの収穫物について比率が測定された。
図4】ポリオウイルス精製フローチャート。
図5】ポリオウイルス株(A)Mahoney、(B)MEF−1、(C)Saukettの、SDS−PAGEによる産物特徴描写。1=マーカー、2=系適合コントロール、3=CEX溶出液、4=SEC溶出液。
図6図6Aは、様々な陽イオン洗浄剤;それぞれCTAB、CPC、およびBTCによる処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物からのD−抗原の放出。図6(B)は、様々な陽イオン洗浄剤;それぞれCTAB、CPC、およびBTCによる処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物における宿主細胞DNAの析出。
図7図7A−Cは、様々なタイプの洗浄剤(陰イオン洗浄剤、双極性イオン洗浄剤、および非イオン洗浄剤)による処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物からのD−抗原の放出。
図8】8A−Cは、様々なタイプの洗浄剤(陰イオン洗浄剤、双極性イオン洗浄剤、および非イオン洗浄剤)による処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物における宿主細胞DNAの析出。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、ポリオウイルスを含有する粗細胞培養収穫物からポリオウイルス粒子を精製する、向上した方法に関する。本発明において定義される粗細胞培養収穫物は、細胞培養の直後に得られる。これは、洗浄剤で処理される前に、いかなる形態であれ処理も浄化もされなかったために、粗製物と呼ばれる。細胞培養収穫物の上澄みとは対照的に、粗細胞培養収穫物は、ポリオウイルス粒子と共に細胞および細胞残渣を含有する。
【0029】
例えばHenderson et al.における、先に開示されるポリオウイルス精製プロセスでは、浄化済み収穫物が、本出願に記載される粗細胞培養収穫物とは全く異なって処理される。この差異として、Henderson et al.における収穫物は、細胞残渣を取り除くために収穫物が遠心分離される浄化工程を既に受けていたということがある。Hendersonにおいて、陽イオン洗浄剤は、粗細胞培養収穫物に加えられるのではなく、その代わりとして、細胞残渣が先に取り除かれた浄化済み収穫物に加えられる。
【0030】
本発明のある実施形態において、ポリオウイルス粒子は、高い細胞密度の粗細胞収穫物から精製されるため、これが精製ポリオウイルスの高収率の原因となる。この高い細胞密度の粗細胞培養収穫物は、細胞を高い細胞密度に培養することによって得られる。このような培養は、例えば、バッチモード、流加モード、または潅流モードで実行されてよい。細胞を高い細胞密度に培養する方法が、当業者に知られている。高い細胞密度の培養体を得る具体的な方法が、例えば国際公開第2004/099396号パンフレット、国際公開第2005/095578号パンフレット、国際公開第2008/006494号パンフレットに開示されている。
【0031】
本発明に従えば、高い細胞密度の粗細胞培養収穫物は、約5×10〜150×10細胞/mL、例えば約8×10〜120×10細胞/mL、例えば約12×10〜100×10細胞/mL、例えば約20×10〜80×10細胞/mL、例えば約10×10〜60×10細胞/mLに相当する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、前記粗細胞培養収穫物中の細胞密度は、約10×10〜50×10細胞/mLに及び、例えば少なくとも約15×10細胞/mL、例えば少なくとも約20×10細胞/mL、例えば少なくとも約25×10/mL、例えば最大約30×10細胞/mL、例えば最大約35×10細胞/mL、例えば最大約40×10細胞/mL、例えば最大約45×10細胞/mLである。
【0033】
しかしながら、本発明に従う方法はまた、細胞密度がより低い、例えば約0.5×10〜10×10細胞/mL、例えば約1×10〜5×10細胞/mLである細胞培養体からの収穫物にも有効である。
【0034】
典型的には、細胞培養体がポリオウイルス粒子で感染されて、前記ポリオウイルスが細胞中で増殖することができる。これにより、高濃度のポリオウイルスを含有する粗細胞培養収穫物が、単一のバイオリアクタにおいて得られる。細胞培養体に感染させる方法が、当業者に知られている。ウイルス濃度が高い高細胞密度培養体を得る具体的な方法が、例えば国際公開第2011/006823号パンフレットに開示されている。この引用文献は、大量の組換えポリオウイルスの生産プロセスを記載している。このプロセスは、高い細胞密度の培養体に、細胞あたりのポリオウイルス生産性が高い保存体(preservation)が感染する能力に依存する。これにより、ポリオウイルス濃度が高い高細胞密度の粗細胞培養収穫物を単一のバイオリアクタにおいて得る方法が与えられる。例えば1250万個/mlの細胞密度で感染し、感染から22〜24時間後に収穫される組換え野生型ポリオウイルスの現在のプロセスの典型的な収率は、5.0×10〜3.2×1010TCID50/mlの範囲である。
【0035】
ポリオウイルスが細胞培養体中で増殖して、殆どの細胞(溶解物)を殺すと、ポリオウイルス粒子は、本発明に従って、粗細胞培養収穫物から精製される。
【0036】
現在記載されるポリオウイルス生産プロセスは、細胞から培地中へのポリオウイルスの自己放出に完全に依存しており、これは、ポリオウイルスについて非常に効率的なプロセスである。驚くべきことに、本発明者らは、細胞培養体(放出されたポリオウイルス、細胞残渣、宿主細胞DNA、および宿主細胞タンパク質を既に含有する)が、陽イオン洗浄剤、陰イオン洗浄剤、非イオン洗浄剤、および双極性イオン洗浄剤の群から好ましくは選択される洗浄剤で処理されると、有意な収率増大が得られ得ることを見出した。また、この工程は、宿主細胞DNAおよびタンパク質が強く引き下げられた、かなり澄明な浄化済み収穫物をもたらした。
【0037】
プロセス中に宿主細胞DNA、宿主細胞タンパク質、およびポリオウイルス粒子を定量化するために用いられるアッセイ
残留宿主細胞DNAは、Taqmanプローブによる定量リアルタイムPCRを用いるリアルタイム定量PCRによって判定されてよい。プライマーおよびプローブは、リボソーム18S DNAについて設計される。サンプルDNAの量は、プロデューサ細胞DNAから作成される既知の量のDNA標準曲線との比較によって判定される。標準曲線のDNAストックが、制限酵素ApaIで消化されて、剪断され、かつ部分的に分解したDNAが模倣される。
【0038】
サンプルのDNAが、デオキシコール酸およびプロテイナーゼKによる処理によって単離される。リアルタイムPCR反応が、Fast Real Time PCRシステム(ABI Prism 7500)を用いて実行される。DNA量は、サンプルの二重反復測定値に由来する。
【0039】
残留宿主細胞タンパク質(HCP)の濃度は、HCPに特異的な、市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(Cygnus Technologies,F530)において判定された。濃度は、キット中に含まれる標準曲線サンプルを参照して判定された。アッセイの範囲は、25〜200ng/mlである。
【0040】
ポリオワクチンは、生ウイルスまたは不活化ウイルスに基づく。これらは、重要な防御抗原であるポリオウイルスD−抗原を含有する。ウイルス収率は、標準的なウイルス滴定技術によって測定されてよいが、Mahoney、MEF−1、およびSaukettポリオウイルス株について、力価としてのD−抗原濃度の判定は、D−抗原酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって実行されてよい。アッセイは、D抗原の、血清型特異的抗体への結合に基づき、これらの混合物にペルオキシダーゼ試薬が加えられる。その後、ペルオキシダーゼ活性が光学密度によって定量される。D−抗原濃度は、European Directorate for the Quality of Medicines&HealthCare(EDQM)の国際IPV基準を参照して判定される。Fuchs et al.を参照されたい。アッセイ範囲は、Mahoneyについて40〜160DU/ml、MEF−1について8〜32DU/ml、およびSaukettについて32〜128DU/mlである。
【0041】
免疫原性は、例えば、動物におけるインビボ試験によって判定されてよい。力価は、D−抗原ELISAを用いて、かつ先に免疫化されたラット由来の血清でのポリオウイルス中和細胞培養アッセイによって判定されてよい。
【0042】
D−抗原の増大した放出および宿主細胞DNAの選択的析出
本発明者らは、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物への洗浄剤の添加が、収穫物の液相中のD−抗原濃度のかなりの増大をもたらすことを見出した。同時にそれは、宿主細胞DNAを析出させる。本明細書中に例示されるように、この析出工程は、液相中への粗細胞収穫物からのD−抗原の放出の約100%の増大をもたらし、浄化の後、およそ少なくとも5log10の宿主細胞DNAの減少をもたらした。
【0043】
そのため、本発明は、粗細胞培養収穫物からポリオウイルス粒子を精製するのに適した方法を提供し、また、細胞密度が高い培養物からの収穫にも適している。本発明を実行するのに有用であり得る洗浄剤として、限定されないが、陽イオン洗浄剤、陰イオン洗浄剤、非イオン洗浄剤、および双極性イオン洗浄剤が挙げられる。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明を実行するのに有用であり得る洗浄剤は、アミンコポリマー、四級アンモニウム化合物、例えば臭化ドミフェン(DB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ヘキサデシルピリジニウムクロリド(CPC)、および塩化ベンゼトニウム(BTC)、ならびにそれらの各々のあらゆる混合物が挙げられるがこれらに限定されない陽イオン洗浄剤である。より詳細には、ポリエチレンイミン(PEI)の多くの形態が、過剰陰イオン電荷(DNA不純物)の中和に非常に有効であることが示された。本発明に用いられる適切な陽イオン洗浄剤として、以下のクラスおよび例の市販の製品が挙げられるが、それらに限定されない:モノアルキルトリメチルアンモニウム塩(市販の製品の例として、セチルトリメチルアンモニウムクロリドまたは(CTABとして)ブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリド(TTA)、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルアリールトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリド、ドデシルジメチル−2−フェノキシエチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルアミン:塩化物塩または臭化物塩、ドデシルアミンまたは塩化物塩、およびセチルジメチルエチルアンモニウムブロミドまたはクロリドが挙げられる)、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(例として、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドおよび(BTCとして)塩化ベンゼトニウムが挙げられる)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(市販の製品として、臭化ドミフェン(DB)、ハロゲン化ジデシルジメチルアンモニウム、およびオクチルドデシルジメチルアンモニウムクロリドまたはブロミドが挙げられる)、複素環式芳香族アンモニウム塩(市販の製品として、ハロゲン化セチルピリジウム(CPCまたは臭化塩およびヘキサデシルピリジニウムブロミドまたはクロリドが挙げられる)、シス異性体1−[3−クロロアリル]−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、アルキル−イソキノリニウムブロミド、およびアルキルジメチルナフチル−メチルアンモニウムクロリド(BTC 1110)、多置換四級アンモニウム塩(市販の製品として、限定されないが、アルキルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネートおよびアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムシクロヘキシルスルファメートが挙げられる)、ビス四級アンモニウム塩(製品例として、1,10−ビス(2−メチル−4−アミノキノリニウムクロリド)−デカン、1,6−ビス{1−メチル−3−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−プロピルジメチルアンモニウムクロリド]ヘキサンまたは塩化トリクロビソニウム、およびBuckman BrochuresによってCDQと呼ばれるbis−quat)、ならびにポリマー四級アンモニウム塩(ポリイオネン、例えばポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)−エチレンジクロリド]、ポリ[N−3−ジメチルアンモニオ)プロピル]N−[3−エチレンオキシエチレンジメチルアンモニオ)プロピル]ウレアジクロリド、およびアルファ−4−[1−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド)。
【0045】
当業者は、これらが陽イオン洗浄剤の例であり、また、本発明の開示に基づいて、本発明において適切であろうことが明らかであることを理解するであろう。
【0046】
さらにより好ましい実施形態において、臭化ドミフェン(DB)等のジアルキルジメチルアンモニウム塩が本発明において用いられる。考えられ得る多数の陽イオン洗浄剤が、本発明を実行するのに用いられてよいが、臭化ドミフェンが、主にそのGMPグレードの原料としての利用可能性、およびヒトが用いることが意図される他の製品での現在の使用によって特に注目される。より詳細には、臭化ドミフェンが、口腔衛生製品および局所用抗生物質クリーム中で活性成分として大量に用いられるため、この分子は、cGMP条件下で大量に生産されて放出される。
【0047】
別の好ましい実施形態において、本発明を実行するのに有用であり得る洗浄剤は、アルキルスルホネート、例えばタウロデオキシコール酸ナトリウム水和物(STH)、1−オクタンスルホン酸ナトリウム塩、1−デカンスルホン酸ナトリウム、1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム、およびヘキサンスルホン酸ナトリウム;ならびにアルキルサルフェート、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム、およびオクチル硫酸ナトリウム;ならびにそれらの各々のあらゆる混合物が挙げられるがこれらに限定されない陰イオン洗浄剤である。
【0048】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明を実行するのに有用であり得る洗浄剤は、3−(N,N−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート(SB3−14)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、3−([3−コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ)−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(CHAPSO)、3−(N,N−ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホネート分子内塩(SB3−8)、3−[N,N−ジメチル(3−パルミトイルアミノプロピル)アンモニオ]−プロパンスルホネート、3−(N,N−ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロパンスルホネート(SB3−18)、アミドスルホベタイン−14;3−[N,N−ジメチル(3−ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホネート(ASB−14)、およびN,N−ジメチルドデシルアミンN−オキシド(DDAO);ならびにそれらの各々のあらゆる混合物が挙げられるがこれらに限定されない双極性イオン洗浄剤である。別の好ましい実施形態において、本発明を実行するのに有用であり得る洗浄剤は、ポリ(オキシエチレン)エーテル、例えば4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール(Triton(登録商標)X−100)、ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル(Brij(登録商標)58)、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール(Triton(登録商標)X−114)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(Thesit(登録商標));グリコシド洗浄剤、例えばデシル−β−D−1−チオマルトピラノシド(DTP)、6−シクロヘキシルヘキシルβ−D−マルトシド(Cymal−6)、デシル−β−D−1−チオグルコピラノシド、n−ドデシルβ−D−マルトシド(DDM)、オクチルβ−D−グルコピラノシド(OGP)、オクチルβ−D−1−チオグルコピラノシド);胆汁酸、例えばN,N−ビス[3−(D−グルコナミド)プロピル]デオキシコラミド(Deoxy−BigCHAP);ならびにそれらの各々のあらゆる混合物が挙げられるがこれらに限定されない非イオン洗浄剤である。
【0049】
細胞密度が10×10〜150×10細胞/mLに及ぶポリオウイルス含有高細胞密度懸濁液を処理する洗浄剤の適切な濃度は、約1mM〜12mMに及ぶ。細胞密度が10×10〜50×10細胞/mLに及ぶポリオウイルス含有高細胞密度懸濁液を処理するDBの適切な濃度は、約1mM〜4mMに及ぶ。細胞密度が10×10〜30×10細胞/mLに及ぶポリオウイルス含有高細胞密度懸濁収穫物を処理するDBの適切な濃度は、約1〜3mMに及ぶ。
【0050】
本明細書中に開示される洗浄剤の考えられ得る代替物を試験して、細胞からのポリオウイルスの放出を効果的に増大させる化合物を同定することは、当業者の範囲内であろう一方で、これはさらに、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ヘキサデシルピリジニウムクロリド(CPC)、塩化ベンゼトニウム(BTC)、および臭化ドミフェン(DB)について本明細書中で例示されるように、ポリオウイルス粒子から核酸分子および他の細胞残渣を析出させ得、同時に、ポリオウイルス粒子から核酸分子および他の細胞残渣を効果的に析出させる。
【0051】
したがって、本発明は部分的に、高い細胞密度の懸濁液からポリオウイルス粒子を精製するのと同時に、ウイルス回収率を高める方法に関する。前記方法は、洗浄剤を粗細胞培養収穫物に加えることによって、ポリオウイルス粒子の放出を促進すると同時に、ポリオウイルス粒子から宿主細胞核酸分子を選択的に析出させる。
【0052】
浄化法
洗浄剤で処理された粗細胞培養収穫物は続いて、全細胞、析出した宿主細胞DNA、細胞残渣、および他の不純物を取り除くように浄化される。前記浄化は、深層濾過によって実行されてよい。遠心分離もまた、仕上げ(polishing)深層濾過の有無に拘らず、実行可能である。したがって、洗浄剤処理済み収穫物の浄化は、遠心分離のみを用いて、または深層濾過等の仕上げ浄化工程と同時に遠心分離を用いて達成され得る。
【0053】
フィルタまたはフィルタスキームを選択する際に、上流で変化または変動が生じる場合にロバストな性能を確実にすることが好ましい。良好な浄化性能と工程の収率とのバランスの維持は、内部媒体が様々である種々のフィルタタイプを試験することによって、調査され得る。適切なフィルタが、セルロースフィルタ、再生セルロース繊維、無機フィルタ助剤(例えば珪藻土、パーライト、ヒュームドシリカ)と組み合わされたセルロース繊維、無機助剤および有機樹脂と組み合わされたセルロース繊維、またはそれらのあらゆる組合せ、ならびにポリマーフィルタ(例として、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホンが挙げられるが、これらに限定されない)を利用して、有効な除去および許容可能なウイルス回収率を達成することができる。一般に、多段階プロセスが好ましいが、必須ではない。例示的な2段階プロセスまたは3段階プロセスは、大きい析出物および細胞破片を取り除くための粗フィルタに続いて、名目上の孔サイズが0.2μmよりも大きいが1μmよりも小さい第2の仕上げステージフィルタからなるであろう。最適な組合せは、析出物のサイズ分布および他の変数に応じることとなる。また、比較的隙間のないフィルタまたは遠心分離を利用する一段階操作もまた、品質の良い産物をもたらし得る。より一般的には、デッドエンド濾過、微量濾過、遠心分離、またはデッドエンドもしくは深層濾過と組み合わされたフィルタ助剤(例えば珪藻土)のボディフィードが挙げられるあらゆる浄化アプローチが、以降の工程において膜および/または樹脂を汚染しないように適切な透明度の濾液を提供し、本発明内で実行するのに許容可能となろう。深層濾過が、本発明にとってロバストな主たる浄化法を示す。
【0054】
本発明に従う別の好ましい実施形態において、一列に並ぶ陰イオン交換膜が、浄化フィルタトレイン中に一体化されてよく、残留DNAまたは負に帯電する不純物、例えば宿主細胞タンパク質のレベルが、生理的条件下で、ポリオウイルスが失われることなく更に取り除かれる。孔が大きい(>3μm)これらの高容量膜は、残留DNA、宿主細胞タンパク質、および/または外来ウイルスのような負に帯電する汚染物質を効果的に取り除くことが、例えばモノクローナル抗体生産分野において周知である。適切な膜は、とりわけ、正に帯電したリガンド、典型的には四級アンモニウムが、例えば架橋セルロースマトリックスにすり砕かれた強陰イオン交換膜である。驚くべきことに、ウイルスは典型的に、生理的条件(pH7〜8、導電率15〜18mS/cm)下でこれらの膜に結合するにも拘らず、ポリオウイルスは、正味の等電点が幾分高いと、これらの膜中を流れ、これにより、負に帯電する不純物の除去に適した選択がなされることが見出された。ある実施形態において、クロマトグラフィビーズベース樹脂が用いられてよいが、対流が大きいという利点のため、膜が好ましい選択である。
【0055】
洗浄剤処理および浄化工程の組合せは、少なくとも4log10の、好ましくは少なくとも5log10の、さらにより好ましくは少なくとも5.5log10の宿主細胞DNAの引下げをもたらす。完全なフィルタセットアップにかかる全圧力ビルドアップは0.8バー未満のままであった。このことは当業者に、フィルタタイプが適切に選択されてサイズ設定されたことを示す。
【0056】
好ましい実施形態において、陰イオン交換膜が、浄化フィルタトレイン中に一体化されてよく、現在知られている全てのポリオウイルス製造プロセスに存在する専用の陰イオン交換工程の必要が除外される。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、収穫されたウイルス粒子は、以下を(以降の順に)含む多段階浄化プロセスフローによって処理される;帯電フィルタユニット(例えばMillipore Millistak DOHCフィルタ)、二重膜フィルタ0.8μm/0.45μm(例えばSartopore 2)、強陰イオン交換吸着膜(例えばSartorius Single Sep Q)、および孔サイズが比較的小さい滅菌膜濾過(例えば0.22μmフィルタユニット)を介した深層濾過。
【0058】
更なる精製工程
浄化の後、浄化済みウイルス粒子懸濁液の濃縮が、本発明に従う方法における更なる工程として考えられてもよいが、決して必須ではない。ウイルス粒子懸濁液の濃縮が、限外濾過によって実行されてよい。懸濁液は、5〜20倍に濃縮されてよい(および場合により、本明細書中で以下に言及されるようにヌクレアーゼで処理されてよい)。選択される特定の限外濾過膜は、ウイルス粒子を保持する程十分に小さいが、不純物を効果的に取り除く程十分に大きいサイズとなるであろう。メーカーおよび膜型に応じて、10〜1000kDaの名目上の分子量カットオフが適切であり得る。分子サイズカットオフの選択は、収率と不純物クリアランスとのトレードオフによって決定される。タンジェンシャルフローモードを用いる限外濾過が好ましい。前記モードにおいて、工程は、固定されたクロスフローを保留物への背圧の有無に拘らずセットすることによって、固定された膜貫通圧をセットすることによって、またはクロスフローおよび透過流束の両方を固定することによって制御され得る。
【0059】
プロセスのこの段階に含まれてよいが、決して必須ではない別のプロセス工程が、透析濾過を介したバッファ交換プロセス工程の以降の導入である。限外濾過ユニットを用いる透析濾過またはバッファ交換が、塩、糖等の除去および交換に用いられる。当業者は、どのような条件下でバッファ交換が起こるはずであるか、およびいずれのバッファが工程に適切であるかを知っている。
【0060】
ヌクレアーゼ処理が、プロセスのこの段階にてプロセスに含められることが考えられてもよいが、決して必須ではない。ヌクレアーゼ処理は、広い範囲のヌクレアーゼ、例えばBENZONASE(商標)、DNase、RNase、またはそのあらゆる組合せの使用を含んでよい。RNaseおよびDNaseの両方の活性を備えるヌクレアーゼまたはカクテルが、多くの場合用いられる。ヌクレアーゼ処理工程が、プロセス中のいかなる点で意図されてもよいが、最終産物中の残留ヌクレアーゼ含有量が用途に対して許容可能である限りにおいてである。ヌクレアーゼ処理は、浄化単独の後に、または浄化濃縮工程の後に、かつ更なる精製工程、例えば捕捉もしくは仕上げ工程の前に起こってよい。
【0061】
不純物の引下げに用いられ得る付加的な単位操作として、例えば、プロセスに決して必須ではないが、クロマトグラフィユニットがあり得る。樹脂、膜吸着体およびモノリス等の様々なフォーマットのクロマトグラフィ媒体からなるクロマトグラフィユニットが用いられてよい。クロマトグラフィ単位操作は、陽性モードで運転されても陰性モードで運転されてもよい(以下で説明される)。本発明のある実施形態において、クロマトグラフィユニットにフィードされるウイルス粒子懸濁液は、あるフィード条件、例えば溶液のpHおよび/またはイオン強度に調整されてよい。前記工程中に、残存する不純物、例えば宿主細胞核酸および宿主細胞タンパク質からウイルス粒子を分離することによって、ウイルス粒子はさらに精製される。前記工程中のウイルス粒子の精製は、例えば、親和性クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィ、混合モードクロマトグラフィ、および/もしくはハイドロキシアパタイトクロマトグラフィを、独立したプロセス工程として、またはいくつかのプロセス工程と組み合わせて用いることによって、達成され得る。
【0062】
本発明のある実施形態において、クロマトグラフィ単位操作が用いられる場合、ウイルス粒子は、ウイルス粒子懸濁液中に残存する不純物から分離されることによって、精製され得る。ウイルス粒子は、ウイルス粒子をある条件でクロマトグラフィ媒体に結合させる一方で、殆どとまではいかないが一部の不純物がクロマトグラフィ媒体に結合しないことによって、分離され得る。別の方法で、ウイルス粒子は、殆どとまではいかないが一部の不純物をクロマトグラフィ媒体に結合させ、殆どのウイルス粒子をクロマトグラフィ媒体に結合させないままにすることによって、分離され得る。先に言及された操作モードは、陽性結合モードおよび陰性結合モードとしてそれぞれ、当該技術分野において知られている。
【0063】
いかなる結合相互作用もないあるクロマトグラフィ単位操作を、用いられるクロマトグラフィ媒体に応じて運転することも可能である。例示的なクロマトグラフィ媒体として、決して限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィ媒体(例えばSepharose(商標)6FF)があり得る。当業者は、不純物からウイルス粒子を分離するのに必要とされる条件をどのように決定すべきかを知っている。先の高度に精製されたポリオウイルス溶液を達成するための異なる単位操作の連続的使用の例が、文献、例えばBakker et al.,2011およびThomassen et al.,2013に記載されている。
【0064】
本発明のある実施形態において、クロマトグラフィ単位操作は、捕捉工程として用いられてよく、これは本質的に、濃縮工程および精製工程の組合せである。これにより、先に記載される独立した濃縮工程(例えば限外濾過工程)の必要が除外される。様々なフォーマットのクロマトグラフィ媒体が捕捉工程に用いられてよい。クロマトグラフィ媒体フォーマットの例として、a.o.樹脂、膜吸着体およびモノリスがある。当業者は、特定のプロセス工程に用いられるべき最適なクロマトグラフィ媒体フォーマットを容易に決定することができる。
【0065】
本発明のある実施形態において、クロマトグラフィ単位操作が捕捉工程として用いられる場合、ウイルス粒子は、ウイルス粒子懸濁液中に残存する不純物から分離されることによって精製され得る。ウイルス粒子は、ウイルス粒子をある条件でクロマトグラフィ媒体に結合させる一方で、殆どとまではいかないが一部の不純物がクロマトグラフィ媒体に結合しないことによって、分離され得る。
【0066】
本発明のある実施形態において、クロマトグラフィ単位操作が捕捉工程として用いられる場合、フィード材料とも呼ばれるウイルス粒子懸濁液が、不純物からの最適な分離のためのある条件に調整される必要がある。調整されるべきフィード材料の例示的な条件が、例えば、ウイルス粒子懸濁液のpHおよびイオン強度である。ウイルス粒子は、以降の溶出工程によってさらに精製されてよく、この工程は、例えばクロマトグラフィ媒体の液相のpHおよび/またはイオン強度を変えることによって達成され得る。
【0067】
本発明の特定の実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィ媒体が、捕捉工程として用いられる。フィード材料の条件は、所望のpHに達するような酸または塩基(例えばクエン酸、NaOH)の添加によって、および所望のイオン強度に達するような塩溶液または脱イオン水(例えば、NaClまたはMilliQ)の添加によって調整されてよい。指針として、および当然ながら限定としてではなく、pHは潜在的に約4.5〜7.0に及んでよく、イオン強度は潜在的に約10mS/cm〜25mS/cmに及んでよい。フィード材料調整後の追加の浄化工程(例えば、0.45μmまたは0.22μmの濾過)が、以下のクロマトグラフィ工程への負荷を引き下げるために、プロセスに含められることが考えられてよいが、決して必須ではない。当業者は、どのような溶液および濾過ユニットを、特定のプロセス工程に用いるべきか、容易に決定することができる。
【0068】
本発明の特定の実施形態において、クロマトグラフィ単位操作が捕捉工程として用いられる場合、およびウイルス粒子が分離用の強陽イオン交換クロマトグラフィ媒体に選択的に結合する場合、更なるウイルス粒子精製が、単位操作内の液相の条件を変えることによるウイルス粒子の以降の選択的溶出によって達成される。指針として、および当然ながら限定としてではなく、ウイルス粒子の溶出は、液相のpHを酸性のpH価から塩基性のpH価(例えば、pH4〜10の範囲)に変えることによって達成され得る。指針として、および当然ながら限定としてではなく、ウイルス粒子の溶出はまた、液相のイオン強度をより低いイオン強度からより高いイオン強度(例えば、10mS/cm〜35mS/cmの範囲)に変えることによって達成され得る。
【0069】
本発明の好ましい実施形態において、フィード材料とも呼ばれるポリオウイルス粒子懸濁液が、4.4〜5.6に及ぶ酸性pHに、14mS/cm〜22mS/cmに及ぶイオン強度に調整される。続いて、調整されたフィード材料は、ウイルスが膜に選択的に結合する陽イオン交換クロマトグラフィ膜吸着体(例えばSartobind S)にロードされる。ウイルス粒子はさらに、溶出バッファのイオン強度を25mS/cm〜40mS/cmの範囲に増大させる一方で、pH範囲を4.4〜5.6で一定に維持することによって、以下の溶出工程において不純物から精製される。溶出されたウイルス粒子懸濁液は続いて、バイオバーデンおよび沈殿剤を引き下げるために、例えば0.22μm濾過ユニットで濾過されてよい。
【0070】
本発明に従えば、ある産物純度を達成するのに必須であれば、「仕上げ」工程と呼ばれる付加的な精製工程が、プロセスに組み込まれてよい。「仕上げ」工程は、精製プロセスフロー全体において決して必須ではないが、精製プロセスフロー全体においてロバスト性を達成する好ましいプロセス工程である。
【0071】
前記工程の間、微量の不純物、例えば、限定されないが、宿主細胞核酸(例えばDNA)および宿主細胞タンパク質をウイルス粒子懸濁液から取り除くことが所望される。「仕上げ」工程は、当然ながら限定されないが、独立したプロセス工程として、またはいくつかのプロセス工程と組み合わされて用いられる、親和性クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィ、混合モードクロマトグラフィ、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィ、および/または限外濾過によって達成され得る。前記工程の間、ウイルス懸濁液のバッファ交換がプロセスフローに含められることが考えられてよいが、決して必須ではない。
【0072】
本発明のある実施形態において、クロマトグラフィ単位操作が仕上げ工程として用いられる場合、様々なフォーマットのクロマトグラフィ媒体、例えば樹脂、膜吸着体、およびモノリスが用いられてよい。クロマトグラフィ単位操作は、陽性モードで運転されても陰性モードで運転されてもよい。本発明のある実施形態において、仕上げ工程にフィードされるウイルス粒子懸濁液は、特定のフィード条件、例えば溶液の特定のpHおよび/またはイオン強度に調整されてよい。ウイルス粒子は、以降の溶出工程によって精製されてよく、この工程は、例えばクロマトグラフィ媒体の液相のpHおよび/またはイオン強度を変えることによって達成され得る。
【0073】
本発明の特定の実施形態において、ウイルス粒子精製はまた、ウイルス粒子と不純物とのサイズ差異を利用して達成され得る。例示的なプロセス工程として、サイズ排除クロマトグラフィおよび/または限外濾過があり得る。
【0074】
本発明の特定の実施形態において、仕上げ工程は、ウイルス粒子の精製に加えて、バッファ交換工程として用いられてよい。例示的なプロセス工程は、決して限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィおよび/または透析濾過であってよい。
【0075】
本発明の特定の実施形態において、限外濾過工程/透析濾過工程が組み込まれる場合、残留不純物(例えば、宿主細胞タンパク質、宿主細胞核酸)の除去、およびバッファの、所望のバッファ(例えば調合バッファ)への交換が達成され得る。タンジェンシャルフロー限外濾過が、残留タンパク質および核酸を取り除くのに、かつウイルス粒子を調合バッファ中に交換するのに有用である。選択された限外濾過膜は、ウイルス粒子を保持するのに十分に小さいが、しかし不純物を効果的に一掃するのに十分に大きいサイズを有することとなる。メーカーおよび膜型に応じて、100〜1000kDaの名目上の分子量カットオフが適切であり得る。
【0076】
本発明の好ましい実施形態において、ウイルス粒子は、サイズ排除クロマトグラフィ(例えばセファロース(商標)6FF)によって残留不純物から分離され得ると同時に、バッファは、調合バッファに交換される。ウイルス粒子純度およびバッファ交換品質の所望のレベルが、サイズ排除クロマトグラフィユニットのいくつかの変数を変更することによって達成され得る。当業者は、必要とされる純度およびプロセス性能仕様を達成するのに最適な操作条件を決定することができる。
【0077】
本発明に従って細胞培養体から精製ポリオウイルスを得る特に好ましい方法が、以下の工程を含む:a)洗浄剤を細胞培養に加える工程;b)前記ポリオウイルス含有細胞培養体を浄化して、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程;c)工程b)において得られた浄化済み収穫物を、陽イオン交換クロマトグラフィ工程にかけて、ポリオウイルス含有懸濁液を得る工程;およびd)サイズ排除クロマトグラフィによってポリオウイルス含有懸濁液からポリオウイルスをさらに精製する工程。
【0078】
滅菌濾過工程が、バイオバーデンを引き下げるために、プロセスの終わりに含まれてよいが、この工程は決して必須ではない。製品は、0.22μm修飾ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(例えばMillipore Millipak)で濾過されてよい。
【0079】
細胞培養系およびダウンストリームプロセシング系のスケール
本発明のプロセスは、スケーラブルである。本発明が用いられ得る細胞培養は、小規模培養(例えば1〜10リットルのラン)から中規模培養(例えば20〜1000Lのラン)、および商業的な大規模調製(例えば1000〜50000Lの生産ラン)に及ぶ。深層濾過等の初期のプロセス工程は、培養容量に比例するが、陽イオン交換クロマトグラフィまたは代わりの捕捉工程および以降の工程は、ポリオウイルス粒子量に比例する。したがって、後者の工程のバッチサイズは、少なくとも5×10TCID50/mlの、かつ最大約1×1011TCID50/mlのバイオリアクタ生産性推定値に基づくこととなる。これらの高いポリオウイルス収率は、例えば、高い細胞密度の培養体を感染させることによって得られ得る(例えば国際公開第2011/006823号パンフレットに記載されている)。高い濃度のポリオウイルス粒子を含有するこの高い密度の細胞懸濁液の更なる精製は、本発明によって可能となる。大量の細胞残渣および宿主細胞不純物を含有するこの懸濁液を処理することができることで、懸濁液の容量あたりで大量のポリオウイルス粒子の精製が可能となる。細胞密度が高く、高濃度のポリオウイルス粒子を含有する細胞培養体バッチを処理することにより、処理済み容量あたりの非常に高いウイルス収率が可能となる方法を提供することが、本発明の利点である。本方法は、大規模細胞培養に適用可能であるが、細胞を小規模で、しかしより高い細胞密度に培養することができ、なおも効率的にさらに処理され得る高いポリオウイルス収率に至らせることとなる。本方法は、高度に濃縮されたポリオウイルスバッチを処理することを可能にし、これは、ポリオウイルス精製産業全体に大きい影響を与えるであろう。
【0080】
ポリオウイルスおよびプロデューサ細胞
ポリオワクチンは、一価(1タイプ(1型、2型、または3型)のポリオウイルスを含有する)であってもよく、二価(2タイプ(例えば1型および2型、1型および3型、または2型および3型)のポリオウイルスを含有する)であってもよく、三価(3タイプのポリオウイルス、すなわち1型、2型および3型を含有する)であってもよい。
【0081】
野生型ポリオウイルスからIPVを生産することができる。これ以外にも、IPVは、非病原性の生ポリオウイルスから、例えばSabin株から生産されてよく、これにより、IPV製造から野生型ポリオウイルスを再導入するリスク(例えば国際公開第2007/007344号パンフレット、およびDoi et al,2001参照)がさらに引き下げられるであろう。本発明は、野生型ポリオウイルス(1型、2型および3型、例えば1型のMahoney株、2型のMEF−1株、または3型のSaukett株)の、および非病原型のポリオウイルス(例えばSabin株)の精製に適している。IPVを生産するために適用される、本発明に従うプロセスは、IPVが後発発展途上国に入手可能となり得る程度にまで、コストを低減するように機能し得る。一般にOPVは、従来の方法に従って調製される場合、IPVよりも安価であるが、本発明の高度に効率的なプロセスは、OPV用のバルク材料のコストをさらに引き下げることができ、そのためにOPVのコストも同様に引き下げることができる。
【0082】
一般に、ポリオウイルス株はそれぞれ、別々のバッチで培養され、例えば3タイプのポリオウイルスを含有する三価ワクチンが調製されるのであれば、(IPVについて不活化された)ウイルスは、個々の投薬量が調製されるように混合かつ調合される。例えばある実施形態において、用量(例えば0.5ml)あたりの最終ワクチンが、例えば、対照調製物との比較によって判定されて、40D−抗原ユニット(DU)の1型ポリオウイルス、8DUの2型ポリオウイルス、および32DUの3型ポリオウイルスで構成されてよい。
【0083】
本発明に従う方法は、様々な細胞型からの細胞培養収穫物に適用され得る。本発明の方法に用いられ得る細胞の一タイプが、PER.C6細胞である。この細胞は、不死化細胞であり、また、当該技術分野において継代細胞系統としても知られているため、寿命が無限であるという潜在性を有する(例えばBarrett et al,2009参照)。PER.C6細胞とは、本出願の目的で、1996年2月29日にECACC no.9602240として寄託された細胞を意味するものとする。この定義は、この寄託された細胞の上流もしくは下流の継代由来の、または上流もしくは下流の継代の後代由来の細胞を含むこととなることが、当業者に明らかであろう。PER.C6細胞は、米国特許第5994128号明細書に、および(Fallaux et al,1998)に記載されている。この細胞は、細胞ベースのポリオウイルスワクチンを生産するためのポリオウイルス生産に非常に適している。なぜなら、例えば国際公開第2011/006823号パンフレットに記載されるように、高い効率で感染され得、かつウイルスを増殖させ得るからである。この細胞はまた、無血清懸濁培養においてポリオウイルスを高いレベルで生産するのに非常に適していることが本明細書中で実証される。
【0084】
他の細胞型がポリオウイルスを増殖させるのに用いられてもよいため、本発明の方法は、他の細胞型を含むポリオウイルス含有粗細胞収穫物を処理するのにも適用可能である。本明細書中で例示されるように、Vero細胞およびMRC−5細胞からの収穫物が、本発明の方法で処理された。
【0085】
不活化ポリオワクチンの大規模製造のために、ポリオウイルスは通常、サル由来の付着性Vero細胞上で増殖させられる。Vero細胞は、マイクロキャリア上で培養され、不活化ポリオワクチンおよび生弱毒化ポリオワクチンが挙げられるワクチンの生産に広く用いられ、これまでのところ、ウイルスワクチンの製造に関する規制当局によって最も広く受け入れられている継代細胞系統であり、ワクチン生産へのこの細胞の使用が、当分野の当業者によって増すと予想される(Barrett et al,2009)。不活化ポリオウイルスワクチン用のVero細胞の大規模マイクロキャリア培養が、Montagnon et al,1982 and 1984によって記載された。Vero細胞を用いたポリオワクチンの大規模生産用プロセス、および結果として生じるワクチンが、米国特許第4525349号明細書にも記載されている。
【0086】
高い力価のポリオウイルス(Sabin1型)産物(ほぼ2×10TCID50/ml)が、無血清培地において生じるウイルス生産相の前に、血清含有培地中のマイクロキャリア上で培養されたVero細胞中で得られた(Merten et al,1997)。血清を用いる不利点を鑑みて、著者らは、完全に無血清のプロセスが所望されることを示唆した。無血清条件下で、著者らは6.3×10TCID50/mlのポリオウイルス生産力価を得ることができた。本発明の方法によって得られる、PER.C6細胞上でのポリオウイルス生産力価は、5.0×10〜3.2×1010TCID50/mlに及んでいた(感染時の細胞密度は1250万個/ml)。
【0087】
一般にワクチン生産、特にIPV生産に通常用いられる従来の代わりの細胞プラットホームが、J.B.Jacobs,1966によって始められたヒト胎児肺線維芽細胞(MRC−5細胞)である。宿主細胞系統の比較研究(Vlecken et al,2013)により、付着性のMRC−5細胞系統およびVERO細胞系統は、広範な宿主細胞パネルの中で最も高いプロデューサであり、ウイルスワクチン生産に適した候補とされることが示された。フラスコ表面付着培養体を用いて、達成されたウイルス力価は、MRC−5細胞培養体およびVero細胞培養体についてそれぞれ(0.7〜2.6)×10TCID50/mlおよび(1.4〜5.8)×10TCID50/mlであった。
【0088】
本発明の精製法は、ポリオウイルス増殖に適用可能なあらゆる細胞型において増殖するポリオウイルスに適している。すなわち、本発明の方法は、ポリオウイルスを増殖させるのに用いられる細胞型から独立している。
【0089】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明される。実施例は、本発明を決して限定せず、単に本発明を明らかにする役割を果たすのみである。
【実施例】
【0090】
実施例1:陽イオン洗浄剤の添加によるポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物からのポリオウイルス精製収率の増大
PER.C6細胞系統由来の細胞を、潅流モードで運転する10Lバイオリアクタ中の無血清培地において増殖させて、およそ50×10個の生存細胞/ml(vc/ml)の細胞密度にした。ポリオウイルス1型(Mahoney)、2型(MEF−1)、または3型(Saukett)による感染の前に、フレッシュな培地で培養体を12.5×10〜50×10vc/mLの範囲の生存細胞密度に希釈した。バッチ感染プロセスを、10Lバイオリアクタにおいて35℃にて、感染多重度1で行なった。感染から20〜24時間後の収穫時に、50mlのサンプルを採ってから、4mLの11アリコートに分配した。
【0091】
ポリオウイルス含有細胞培養収穫物に及ぼす洗浄剤の影響を判定するために、臭化ドミフェン(DB)による滴定実験を実行した。不連続量のDBストック溶液をサンプルアリコートに標的DB濃度(0〜4mM)で加えた。サンプルを混合し、35℃で1時間インキュベートした。続いて、サンプルを3000gにて5分間遠心分離して、析出DNAをスピンダウンさせた。上澄みサンプルを、D−抗原ELISAによってウイルス量について、およびQ−PCRを用いて宿主細胞DNAについて分析した。
【0092】
図1(A、BおよびC)は、洗浄剤(DB)による処理の結果としての、ポリオウイルス含有細胞培養収穫物からのD−抗原の放出を示している。細胞密度が異なり、それぞれが異なるポリオ株(Mahoney、MEF−1、またはSaukett)を含有するいくつかの収穫物を、洗浄剤で処理してから遠心分離した。上澄み中のD−抗原濃度を、洗浄剤の添加による希釈について補正して、洗浄剤濃度の関数として与える。図1は、洗浄剤(DB)の添加後に、ウイルス力価は、洗浄剤(DB)の添加前と比較して、実質的に増大していることを示している。各株について、および各生存細胞密度について、同じパターンを観察することができる。すなわち、洗浄剤(DB)の濃度を増大させるにつれ、液相中への粗細胞収穫物からのウイルスの放出が増大する。
【0093】
図2(A、BおよびC)は、洗浄剤(臭化ドミフェン)による処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物における宿主細胞DNAの析出を示している。y軸上の濃度は、洗浄剤希釈因子について補正したものである。各株について、および各生存細胞密度について、宿主細胞DNAが、粗細胞培養収穫物から析出している。図2は、1.3mMを超える洗浄剤(DB)濃度について、有効なDNAクリアランスがアリコート中で起こったことを明らかに示している。
【0094】
また、最小のDB濃度を、個々の曲線から判定することもできる(図1および図2)。これは、プラトーレベルのD−抗原が得られ、同時に最大DNAクリアランスが得られるものである。この最小量の洗浄剤は、細胞密度と共に増大して、培地中の細胞量の高まりおよび可溶性宿主細胞DNAの増大に対処する。
【0095】
洗浄剤が増大してもポリオウイルスが沈殿しなかったため、当業者であれば、この結果を、細胞密度がはるかに高い、例えば約70×10細胞/mL、例えば約90×10細胞/mL、例えば最大約120×10細胞/mL、例えば最大約150×10細胞/mLのポリオウイルス含有細胞懸濁液に当てはめるであろう。当業者であれば、そのような高い細胞密度の粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを、本発明の方法によって精製することができると結論するであろう。
【0096】
実施例2:VEROおよびMRC5の粗細胞培養収穫物からのポリオウイルスの放出に及ぼす洗浄剤処理の効力
付着性VERO細胞培養体由来の粗ポリオウイルス収穫物の処理
Vero細胞をT−175フラスコ内で前培養して、VEROスピナー培地(MEM+10%FBS+6mMグルタミン+4.6g/Lグルコース)中30×10細胞/cmにて1LスピナーフラスコCytodex3に、および5g/LマイクロキャリアCytodex3に接種するようにスケールアップした。細胞を37℃、5%COでインキュベートして、最初の24時間は60rpmにて、および以降は一日中90rpmにて撹拌した。(マイクロキャリア上への)播種後3日目に、細胞を、予め温めたPBSで洗浄して、培地交換を感染培地(MEM+4mMグルタミン)で実行した。補充した細胞培養体を、1×10細胞/mLにて播種した20ml細胞培養体を含有する50ml tubespin上に分配した。MOIが1である3ウイルス株(Mahoney、MEF−1、Saukett)のそれぞれについて、tubespinを感染させた。感染を35℃、170rpm、5%COで実行し、感染の72時間後にウイルスを収穫した。マイクロキャリア上で増殖したポリオウイルス含有粗VERO細胞収穫物に及ぼす洗浄剤の影響を判定するために、DBストック溶液を、1.6mMの最終濃度になるように収穫物に加えた。この実験のために、DBストック溶液(1.05w/v%、40mM NaCl)を用いた。サンプルを混合し、35℃で1時間インキュベートした。続いて、サンプルを3000gにて5分間遠心分離して、析出DNAをスピンダウンさせた。上澄みサンプルを、D−抗原ELISAによってウイルス量について、およびQ−PCRを用いて宿主細胞DNAについて分析した。
【0097】
付着性MRC5細胞培養体由来の粗ポリオウイルス収穫物の処理
MRC−5細胞を、BME+10%FB(nHI)+4mMグルタミン中で培養し、T75フラスコ内で、37℃および10%COでインキュベートした。3〜4日毎に、培養体がおよそ80〜90%のコンフルエントとなった場合に、MRC−5培養体をT−175フラスコ中に通して広げた。細胞が約80〜90%の密度に達したときに(4日目)、細胞をPBSで洗浄して、培地交換をBME+4mMグルタミンで実行した。MOIが1である3ウイルス株(Mahoney、MEF−1、Saukett)のそれぞれについて、T−175フラスコを感染させた。フラスコあたりの総容量は25mlであった。感染を35℃、10%CO2で実行し、感染の72時間後にウイルスを収穫した。ポリオウイルス含有粗MRC5付着性細胞収穫物に及ぼす洗浄剤の影響を判定するために、DBストック溶液を、0.6mMの最終濃度になるように収穫物に加えた。サンプルを混合し、35℃で1時間インキュベートした。続いて、サンプルを3000gにて5分間遠心分離して、析出DNAをスピンダウンさせた。上澄みサンプルを、D−抗原ELISAによってウイルス量について、およびQ−PCRを用いて宿主細胞DNAについて分析した。
【0098】
【表1】
【0099】
表1は、DB処理直後のD−抗原の濃度を示し、DB濃度は、VERO細胞ポリオウイルス収穫物について1.6mM、およびMRC−5細胞ポリオウイルス収穫物について0.6mMである。表中のD−抗原濃度は、洗浄剤添加によって生じる希釈について補正されている。
【0100】
結果は、洗浄剤(DB)の添加により、付加的なウイルスが、VEROおよびMRC5の細胞培養収穫物の液相中に放出された一方で、DNAがウイルスから離れて析出していることを示す。実際に、1.6mM DBでのDNAクリアランスは、VERO細胞培養体において2log10を超えた。0.6mM DBでのDNAクリアランスは、MRC5細胞培養体において3log10を超えた(データ示さず)。このことは、本発明が、ポリオウイルス生産に用いられる種々の細胞型に適用可能であることを実証している。
【0101】
実施例3:細胞浄化前のバイオリアクタにおけるポリオウイルスの放出およびDNAクリアランスに及ぼす洗浄剤処理の影響
PER.C6細胞を、潅流モードで運転する10Lガラスバイオリアクタ中の無血清培地において増殖させて、およそ50×10vc/mlの細胞密度にした。ポリオウイルス1型(Mahoney)、2型(MEF−1)、または3型(Saukett)による感染の前に、フレッシュな培地で培養体を12.5×10vc/mLの生存細胞密度に希釈した。バッチ感染プロセスを、10Lバイオリアクタにおいて35℃にて、感染多重度1で行なった。感染から20〜24時間後の収穫時に、2.2mM DBの最終DB濃度に達するまで、臭化ドミフェン(DB)ストック溶液を、撹拌しながら30分で加えた。洗浄剤の添加後、バイオリアクタを、常に撹拌しながら、35℃で1時間インキュベートしたままにした。
【0102】
(DB処理なしおよびDB処理後の)粗細胞収穫物のサンプルを遠心分離(3000g、5分)して、細胞を沈殿させた。粗サンプル(DB処理前に遠心分離されなかったため、細胞を含有する)および上澄みサンプルを、ポリオウイルスおよび宿主細胞DNA定量化について、それぞれD−抗原ELISAおよびQ−PCRを用いて分析した。
【0103】
図3中に表される結果は、(全3株についての)全てのランにおいて、洗浄剤処理により、粗ポリオウイルス収穫物からの液相中へのD−抗原の放出が2倍増大したことを示している。また、DNAは、DBによる処理によって効果的に析出した。全てのランにおいて、粗収穫物に関するDNAクリアランスは、洗浄剤処理前の2logに対して、洗浄剤処理後に5logを超えた(データ示さず)。このことは、本発明がバイオリアクタ規模でも用いられ得ることを実証している。
【0104】
洗浄剤の添加は、例えば米国特許第7326555号明細書および国際公開第2011/045378号パンフレットに開示されるように、アデノウイルス精製プロセスの分野において宿主細胞DNAを取り除くために以前に用いられていた。しかしながら、選択的なDNAの析出は、ポリオウイルス精製の分野において、これまで開示されていなかった。ポリオウイルスとアデノウイルスは、非常に異なるウイルスである。実際に、ポリオウイルスは、タンパク質カプシドで封入される単鎖RNAゲノムで構成され、ウイルス粒子は、直径約30ナノメートルである。対照的に、アデノウイルスは、最も大きい非エンベロープウイルスを代表し、直径が約90〜100nmである。アデノウイルスのタンパク質カプシドは、二本鎖DNAらせんを含有し、および宿主細胞への付着の一助となる繊維またはスパイクが独自に存在しており、これらはポリオウイルスに存在しない。アデノウイルスの等電点はおよそpH5.5であり、これは、ウイルスが生理的条件下で負に帯電することを意味する。ポリオウイルスの等電点についての総説は、その値が、アデノウイルスのpH5.8〜7.5よりも高いことを示唆している(Thomassen et al,2013)。サイズおよび電荷が、クロマトグラフィおよび析出プロセスにおける重要な決定因子であるため、洗浄剤による処理が、アデノウイルス含有粗細胞培養収穫物に及ぼす効果と類似した効果を、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物に及ぼすであろうことは予測され得なかった。
【0105】
より重要なことに、粗細胞培養収穫物からの、収穫物の液相中へのポリオウイルス粒子の放出に及ぼす洗浄剤処理の予想外の効果は、アデノウイルスの精製法において観察されなかった。そのため、この驚くべき効果は、以前に用いられていたウイルス精製法に基づいて予見され得なかった。
【0106】
実施例4:洗浄剤処理を伴う、および洗浄剤処理を伴わないポリオウイルス精製プロセス、ならびにD−抗原回収率およびDNAクリアランスに及ぼす影響
PER.C6細胞を、潅流モードで運転する10Lバイオリアクタ中の無血清培地において増殖させて、およそ50×10vc/mlの細胞密度にした。ポリオウイルス血清1型(Mahoney)または3型(Saukett)による感染の前に、フレッシュな培地で培養体をそれぞれ11×10vc/mlおよび9.5×10vc/mlの生存細胞密度に希釈した。バッチ感染プロセスを、10Lバイオリアクタにおいて35℃にて、感染多重度1で行なった。感染から22時間後の収穫時に、2つの1.5Lバルクサンプルをバイオリアクタから採って、2Lボトルに移した。一方のボトルは直接濾過を実行し、他方は洗浄剤(DB)で処理してから濾過にかけた。
【0107】
DB処理を、2Lボトル内で室温にて実行した。DBストック溶液を、2.1mMの最終DB濃度に達するように、ピペットを介して30等分に、撹拌しながら30分で加えた。洗浄剤の添加後、ボトルを、混合しながら2時間インキュベートしたままにした。未処理の粗収穫物またはDB処理済み収穫物を、一連のフィルタ、すなわち正に帯電した、気孔サイズ分布が4〜8/0.6〜1.5μmである深層フィルタ(Millipore Millstak+HC POD D0HC)に続く、0.8/0.45μm(Sartorius,Sartopore 2)および0.22μm(Millipore,Millipak)の縮小サイズの2つの連続ポリエーテルスルホン(PES)膜フィルタに通すことによって、細胞浄化を実行した。濾過の間に、最初に受けた濾液を破棄してから、フィードボトルが空になるまで、濾液を製品ボトル内に収集した。ウイルスの回収は、収集した濾液への、1系容量のPBSの添加によって完了した。浄化済み収穫物を、ウイルス量、宿主細胞DNA、およびHCPについて、それぞれD−抗原ELISA、Q−PCR、および宿主細胞特異的タンパク質ELISAを用いて分析した。収穫プロセスの性能に及ぼすDB処理の影響を、表2に表す。回収率を、収穫時に、粗収穫物からとったブロスサンプル全体について算出する。
【0108】
先の実施例と一致して、洗浄剤(臭化ドミフェン)による処理後のD−抗原回収率は、臭化ドミフェンなしのプロセスと比較して、有意に増大した。結果として、プロセスの容量生産性は、有意に増大した。実際に、浄化済み収穫物中のD−抗原の濃度は、洗浄剤(DB)処理後に2倍になった。
【0109】
さらに、洗浄剤処理工程によるHC−DNAのクリアランスを観察した。これは、先の実施例に記載される結果に従った。表2に従えば、ポリオウイルスを含有する粗細胞収穫物の、洗浄剤(DB)による処理は、DNAを1000倍一掃する一助となった。さらに、洗浄剤を用いて宿主細胞タンパク質(HCP)が部分的に取り除かれたことが示される。
【0110】
【表2】
【0111】
実施例5:薬物製造不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)プロセスの一部としてのDB処理
本実施例は、20L規模での粗細胞培養収穫物からの野生型ポリオウイルス血清型(Mahoney、MEF−1、およびSaukett)の精製を示す。関連するダウンストリームプロセス工程を図3に表す。
【0112】
PER.C6細胞を、潅流モードで運転する10Lバイオリアクタ中の無血清培地において増殖させて、およそ50×10vc/mlの細胞密度にした。ポリオウイルス血清1型(Mahoney)、2型(MEF−1)、または3型(Saukett)による感染の前に、培養体を3つのバイオリアクタに分割して、フレッシュな培地で12×10vc/ml、11×10vc/ml、および13×10vc/mlの生存細胞密度にそれぞれ希釈した。バッチ感染プロセスを、10Lバイオリアクタにおいて35℃にて、感染多重度1で行なった。
【0113】
感染から23時間後の収穫時に、2.2mM DBの最終DB濃度になるまで、DBストック溶液を30分間にわたってバイオリアクタに加えた。洗浄剤の添加後、DB処理する収穫物を60分間混合した。続いて、DB処理済み収穫物を、一連のフィルタ、すなわち、並列する2つの8〜4/1.5〜0.6μm Millistak DOHC PODフィルタに続く、0.8/0.45μm Sartopore 2フィルタ、Single Sep Qフィルタ、最後に0.22μm Millipakフィルタに通すことによって、浄化を実行した。
【0114】
2つの濾過の浄化済み収穫物をプールして、pH5.0に酸性化して、導電率11mS/cmに希釈して、Sartorius Sartopore 0.8/0.45μmフィルタで濾過してから、Sartorius Sartobind S膜にローディングした。PBSを用いる溶出工程によって、ウイルスを膜から回収した。最終工程において、陽イオン交換(CEX)ウイルス画分を、分画範囲が10〜4000kDaであるSepharose 6FFサイズ排除クロマトグラフィ樹脂を充填したカラム上にロードした。無勾配溶出中に、残留HCPをウイルス画分プールから分離し、また、ポリオウイルスのマトリックスを、NaClを含有するリン酸バッファに完全に交換した。
【0115】
精製後、精製済みウイルス溶液を、予めセットした吸光度単位(OD260nm)にSEC溶出バッファでさらに希釈してから、M199およびグリシン(最終濃度5g/L)を加えて、流体を0.22μm細孔サイズフィルタで濾過してから、ホルムアルデヒドで不活化した。
【0116】
世界保健機構(WHO)および欧州薬局方(EP)の要件に従って、0.025%ホルマリンを用いて、37℃で13日間(間に0.22μm濾過があった)不活化を実行した。
【0117】
先に記載のプロセスでは、主な産物中間体、粗収穫物、浄化済み収穫物、SEC溶出液、および不活化ポリオウイルス(IPV)を、ウイルス量、宿主細胞DNA、および総タンパク質(TP)について、それぞれD−抗原ELISA、Q−PCR、およびBradfordアッセイを用いて分析した。
【0118】
結果および考察
表3は、血清型あたりの精製済みポリオウイルスの品質属性および収率を要約している。残留した具体的なタンパク質およびDNAの濃度は、調節要件(WHO/EP)を満たす。また、吸光度比OD260/OD280は、高度に精製されたウイルスを示すものである(Westdijk et al.,2011)。最後に、異なる血清型のSDS−PAGEゲルは、ポリオウイルスの表面タンパク質に相当する4つのタンパク質主要バンドを示している(図5)。そのため、本明細書中に記載される精製プロセスは、血清型の表面特性および収穫時のウイルス力価の差異に拘りなく、3つ全ての血清型の精製について、ロバストである。
【0119】
【表3】
【0120】
宿主細胞不純物、DNA、およびHCPのクリアランス、ならびに様々な生産ステージについての工程収率に基づいて、プロセスの性能を評価する。結果を表4に表す。
【0121】
【表4】
【0122】
3つ全ての血清型について、浄化工程後の残留HC−DNAレベルは、定量化の限界値未満である。表5は、等価用量/細胞培養mlで表したポリオウイルスの全体的な生産性を示している。この計算は、ポリオウイルス1〜3型について、40:8:32の比率のD−抗原ユニット/用量に基づく。不活化後の最終の生産性の比較により、このプロセスは、1〜3型のそれぞれについて、0.64、1.04、および0.34用量/ウイルス培養体mlを与える現在の世界的なIPV製造VERO細胞プロセスプラットホームを上回ることを示す(Kreeftenberg,2007)。そのため、高い細胞密度の収穫物に由来するフィードの高い初期不純物レベルにも拘らず、高い分離度および高い回収率のプロセスが開発されて、IPVワクチン製造の不可欠な部分としての、一価の不活化ポリオウイルスのバルク生産について、非常に優れた高い生産性がもたらされたと結論することができる。
【0123】
【表5】
【0124】
実施例6:様々な陽イオン洗浄剤の添加による粗細胞培養収穫物からのポリオウイルス精製収率の増大
PER.C6(登録商標)細胞を、潅流モードで運転する10Lバイオリアクタ中の無血清培地において増殖させて、およそ50×10vc/mlの細胞密度にした。ポリオウイルス2型(MEF−1)による感染の前に、フレッシュな培地で培養体を約12.5×10vc/mLの生存細胞密度に希釈した。バッチ感染プロセスを、10Lバイオリアクタにおいて35℃にて、感染多重度1で行なった。感染から20〜24時間後の収穫時に、120mlのサンプルを採ってから、5mLの18アリコートに分配した。
【0125】
ポリオウイルス含有粗細胞収穫物に及ぼす洗浄剤の影響を判定するために、いくつかの陽イオン洗浄剤;ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ヘキサデシルピリジニウムクロリド(CPC)、および塩化ベンゼトニウム(BTC)による滴定実験を実行した。固定量のCTAB、CPC、およびBTCストック溶液(それぞれ69、70、56mM、全て40mM NaClを含む)を収穫アリコートに標的洗浄剤濃度(0〜4mM)で加えた。サンプルを徹底的に混合して、35℃で1時間インキュベートした。続いて、サンプルを3000gにて5分間遠心分離して、析出DNAをスピンダウンさせた。上澄みサンプルを、D−抗原ELISAによってウイルス量について、およびQ−PCRを用いて宿主細胞DNAについて分析した。
【0126】
図6(A)は、様々な陽イオン洗浄剤;それぞれCTAB、CPC、およびBTCによる処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物からのD−抗原の放出を示している。上澄み中のD−抗原濃度を、洗浄剤添加の希釈について補正して、洗浄剤濃度の関数として開示する。図6(A)は、洗浄剤(CTAB、CPC、およびBTC)の添加後、ウイルス力価が、洗浄剤(CTAB、CPC、およびBTC)の添加前と比較して、実質的に増大したことを開示している。各陽イオン洗浄剤について、同じパターンを観察することができる。すなわち、洗浄剤(CTAB、CPC、およびBTC)の濃度を増大させるにつれ、液相中への粗細胞収穫物からのウイルスの放出が増大する。
【0127】
図6(B)は、洗浄剤(CTAB、CPC、およびBTC)による処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物における宿主細胞DNAの析出を示している。y軸上の濃度は、洗浄剤希釈因子について補正したものである。各陽イオン洗浄剤について、同じパターンを観察することができる。すなわち、宿主細胞DNAは、粗細胞培養収穫物から析出する。図6(B)は、有効なDNAクリアランスが、0.5mMを上回る洗浄剤(CTAB、CPC、またはBTC)濃度について、アリコート中で起こったことを明らかに示している。
【0128】
洗浄剤を増大させてもポリオウイルスが沈殿しなかったため、当業者であれば、この結果を、さらに高い細胞密度、例えば約70×10細胞/mL、例えば約90×10細胞/mL、例えば最大約120×10細胞/mL、例えば最大約150×10細胞/mLのポリオウイルス含有細胞懸濁液に当てはめるであろう。当業者であれば、そのような高い細胞密度の粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを、本発明の方法によって精製することができると結論するであろう。
【0129】
実施例7:様々なタイプの洗浄剤(陰イオン、双極性イオン、および非イオン)の添加による粗細胞培養収穫物からのポリオウイルス精製収率の増大
PER.C6(登録商標)細胞を、潅流モードで運転する10Lバイオリアクタ中の無血清培地において増殖させて、およそ50×10vc/mlの細胞密度にした。ポリオウイルス2型(MEF−1)による感染の前に、フレッシュな培地で培養体を約12.5×10vc/mLの生存細胞密度に希釈した。バッチ感染プロセスを、10Lバイオリアクタにおいて35℃にて、感染多重度1で行なった。感染から20〜24時間後の収穫時に、240mlのサンプルを採ってから、5mLの42アリコートに分配した。
【0130】
ポリオウイルス含有粗細胞収穫物に及ぼす洗浄剤の影響を判定するために、いくつかの異なるタイプの洗浄剤による滴定実験を実行した。陰イオン洗浄剤(タウロデオキシコール酸ナトリウム水和物(STH)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、双極性イオン洗浄剤(3−(N,N−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート(SB3−14)および3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS))、ならびに非イオン洗浄剤(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール(Triton(登録商標)X−100)およびデシル−β−D−1−チオマルトピラノシド(DTP))を、それらの洗浄剤クラスについての例示的な洗浄剤として用いた。固定量の洗浄剤ストック溶液を収穫アリコートに標的洗浄剤濃度で加えた。陰イオン洗浄剤(STHおよびSDS)、双極性イオン洗浄剤(SB3−14およびCHAPS)、および非イオン洗浄剤(Triton(登録商標)X−100およびDTP)の標的洗浄剤濃度は、0〜4mMであった。全ての洗浄剤のタイプ(陰イオン、双極性イオン、非イオン)のサンプルを徹底的に混合して、35℃で1時間インキュベートした。続いて、サンプルを3000gにて5分間遠心分離して、析出DNAをスピンダウンさせた。上澄みサンプルを、D−抗原ELISAによってウイルス量について、およびQ−PCRを用いて宿主細胞DNAについて分析した。
【0131】
図7(A、B、およびC)は、様々なタイプの洗浄剤;それぞれ陰イオン洗浄剤(STHおよびSDS)、双極性イオン洗浄剤(SB3−14およびCHAPS)、および非イオン洗浄剤(Triton(登録商標)X−100およびDTP)による処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物からのD−抗原の放出を示している。上澄み中のD−抗原濃度を、洗浄剤添加の希釈について補正して、洗浄剤濃度の関数として開示する。図7(A、B、およびC)は、洗浄剤(STH、SDS、SB3−14、CHAPS、Triton(登録商標)X−100、およびDTP)の添加後、ウイルス力価が、洗浄剤(STH、SDS、SB3−14、CHAPS、Triton(登録商標)X−100、およびDTP)の添加前と比較して、実質的に増大したことを開示している。各タイプの洗浄剤(陰イオン、双極性イオン、または非イオン)について、同じパターンを観察することができる。すなわち、洗浄剤(STH、SDS、SB3−14、CHAPS、Triton(登録商標)X−100、およびDTP)の濃度を増大させるにつれ、液相中への粗細胞収穫物からのウイルスの放出が増大する。図8(A、B、およびC)は、洗浄剤(STH、SDS、SB3−14、CHAPS、Triton(登録商標)X−100、およびDTP)による処理の結果としての、ポリオウイルス含有粗細胞培養収穫物からの宿主細胞DNAの放出を示している。y軸上の濃度は、洗浄剤希釈因子について補正したものである。各タイプの洗浄剤(陰イオン、双極性イオン、または非イオン)について、同じパターンを観察することができる。すなわち、洗浄剤(STH、SDS、SB3−14、CHAPS、Triton(登録商標)X−100、およびDTP)の濃度を増大させるにつれ、液相中への粗細胞収穫物からの宿主細胞DNAの放出が増大する。
【0132】
洗浄剤タイプ(陰イオン、双極性イオン、または非イオン)の濃度を増大させてもポリオウイルスが沈殿しなかったため、当業者は、この結果を、さらに高い細胞密度、例えば約70×10細胞/mL、例えば約90×10細胞/mL、例えば最大約120×10細胞/mL、例えば最大約150×10細胞/mLのポリオウイルス含有細胞懸濁液に当てはめることができる。当業者であれば、そのような高い細胞密度の粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを、本発明の方法によって精製することができると結論するであろう。
【0133】
実施例8:Sabin IPV精製トレインの一部としてのDB処理および浄化
本実施例は、粗細胞培養収穫物からの弱毒化ポリオウイルス血清型(Sabin1型、Sabin2型、およびSabin3型)の精製プロセスの一部としての収穫プロセス(DB処理に続く細胞浄化)の適用を記載する。
【0134】
PER.C6細胞系統由来の細胞を、潅流モードで運転する10Lバイオリアクタ中の無血清培地において増殖させて、およそ50×10vc/mlの細胞密度にした。ポリオウイルス血清1型(Sabin1型)、2型(Sabin2型)、または3型(Sabin3型)による感染の前に、フレッシュな培地で培養体を12.5×10vc/mLまたは25×10vc/mLの生存細胞密度に希釈した。感染多重度1および0.1を、12.5×10vc/mlおよび25×10vc/mlの細胞培養体にそれぞれ用いた。両方の場合において、バッチ感染プロセスを、10Lバイオリアクタにおいて32.5℃で行なった。
【0135】
収穫時(Sabin1型またはSabin3型について感染後48時間、およびSabin2型について感染後72時間)に、2.2mM DBの最終DB濃度になるまで、DBストック溶液を30分間にわたってバイオリアクタに加えた。洗浄剤の添加後、DB処理する収穫物(約11L)を60分間混合した。最後に、DB処理済み収穫物を、図4および実施例5においてSalk IPVについて記載したのと同様に、浄化かつ精製した。
【0136】
表6は、DB処理工程に続く連続濾過の全体的なD−抗原回収率およびHC−DNA除去を示している。表7は、精製済みSabinポリオウイルスの品質属性を要約している。
【0137】
【表6】
【0138】
【表7】
【0139】
Sabinポリオウイルスのプロセスの結果は、野生型株について達成される結果と大きい類似性を示す。Sabinポリオウイルス株についても、組み合わせたDB処理および浄化収穫プロセスは、HC−DNAが完全に除去された、高いウイルス回収率を達成する(表6)。表7は、PER.C6(登録商標)ベースのSabinポリオウイルス細胞培養収穫物が、本発明に記載される収穫精製プロセスを用いて、十分に精製され得たことを示している。残留した具体的なタンパク質およびDNAの濃度は、調節要件(WHO/EP)を満たす。また、吸光度比OD260/OD280は、高度に精製されたウイルスを示すものである(Westdijk et al.,2011)。全体的な純度は、野生型ポリオウイルス株について得られた純度(実施例5における表3参照)と同じである。
【0140】
とりわけ、2つのタイプのウイルス、野生型およびSabin株が正味の表面電荷の点で異なることを考えると(Thomassen et al.,2013)、結果は非常に有望である。このことは重ねて、開発された包括的な高い生産性のポリオウイルスワクチン製造プロセスのロバスト性を実証している。
【0141】
参考文献
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以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 粗細胞培養収穫物からポリオウイルスを精製する方法であって:
a)洗浄剤を前記粗細胞培養収穫物に加える工程と;
b)前記ポリオウイルス含有細胞培養収穫物を浄化して、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と
を含む方法。
[2] 粗細胞培養収穫物からのポリオウイルスの放出を促進する方法であって:
a)洗浄剤を前記粗細胞培養収穫物に加える工程と;
b)前記ポリオウイルス含有細胞培養収穫物を浄化して、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と
を含む方法。
[3] 細胞培養体からポリオウイルスを精製する方法であって:
a)洗浄剤を前記細胞培養体に加える工程と;
b)前記ポリオウイルス含有細胞培養体を浄化して、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と;
c)工程b)において得られた前記浄化済み収穫物を捕捉工程にかけて、ポリオウイルス含有懸濁液を得る工程と
を含む方法。
[4] 前記捕捉工程は、陽イオン交換クロマトグラフィ工程である、[3]に記載の細胞培養体からポリオウイルスを精製する方法。
[5] 工程c)において得られた前記ポリオウイルスは、サイズ排除によって前記ポリオウイルス含有懸濁液からさらに分離される、[3]または[4]に記載の細胞培養体からポリオウイルスを精製する方法。
[6] 前記サイズ排除は、サイズ排除クロマトグラフィによって実行される、[5]に記載の細胞培養体からポリオウイルスを精製する方法。
[7] 細胞培養体からポリオウイルスを精製する方法であって:
a)洗浄剤を前記細胞培養体に加える工程と;
b)前記ポリオウイルス含有細胞培養体を浄化して、ポリオウイルス粒子を有する浄化済み収穫物を得る工程と;
c)工程b)において得られた前記浄化済み収穫物を陽イオン交換クロマトグラフィ工程にかけて、ポリオウイルス含有懸濁液を得る工程と;
d)サイズ排除クロマトグラフィによって、前記ポリオウイルス含有懸濁液から前記ポリオウイルスをさらに精製分離する工程と
を含む方法。
[8] 前記洗浄剤は、陽イオン洗浄剤、陰イオン洗浄剤、非イオン洗浄剤、および双極性イオン洗浄剤の群から選択される、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記洗浄剤は、陽イオン洗浄剤である、[8]に記載の方法。
[10] 前記陽イオン洗浄剤は、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ヘキサデシルピリジニウムクロリド(CPC)、塩化ベンゼトニウム(BTC)、および臭化ドミフェン(DB)の群から選択される、[9]に記載の方法。
[11] 前記陽イオン洗浄剤は、臭化ドミフェン(DB)である、[10]に記載の方法。
[12] 前記洗浄剤は、陰イオン洗浄剤である、[8]に記載の方法。
[13] 前記陰イオン洗浄剤は、タウロデオキシコール酸ナトリウム水和物(STH)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の群から選択される、[12]に記載の方法。
[14] 前記洗浄剤は、非イオン洗浄剤である、[8]に記載の方法。
[15] 前記非イオン洗浄剤は、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール(Triton(登録商標)X−100)およびデシル−β−D−1−チオマルトピラノシド(DTP)の群から選択される、[14]に記載の方法。
[16] 前記洗浄剤は、双極性イオン洗浄剤である、[8]に記載の方法。
[17] 前記双極性イオン洗浄剤は、3−(N,N−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート(SB3−14)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)の群から選択される、[16]に記載の方法。
[18] 粗細胞培養収穫物からのポリオウイルスの放出を促進するための洗浄剤の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8