特許第6385607号(P6385607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385607
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】樹状細胞ワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0784 20100101AFI20180827BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20180827BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180827BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20180827BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C12N5/0784ZNA
   A61K35/15 Z
   A61P35/00
   A61P37/04
   A61K39/00 H
   A61K47/02
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-22843(P2018-22843)
(22)【出願日】2018年2月13日
(62)【分割の表示】特願2016-225993(P2016-225993)の分割
【原出願日】2016年11月21日
(65)【公開番号】特開2018-83849(P2018-83849A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2018年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514215480
【氏名又は名称】テラファーマ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514040398
【氏名又は名称】テラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】醍醐 姿宣
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 経義
(72)【発明者】
【氏名】前川 隆司
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−206538(JP,A)
【文献】 特開2006−230396(JP,A)
【文献】 特表2010−535744(JP,A)
【文献】 特開2007−077026(JP,A)
【文献】 特表2013−521329(JP,A)
【文献】 特表2010−508853(JP,A)
【文献】 日本麻酔科学会第55回学術集会要旨集,2008.6.12, #P1-66
【文献】 日本輸血細胞治療学会誌,2016.7.15, Vol.62, No.3, pp.476-482
【文献】 島根医学検査,2012, Vol.40, No.1, pp.19-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹状細胞、及び200ng/mLから400ng/mLの濃度の亜鉛を含み、
前記樹状細胞の細胞生存率が、生理食塩水を用いて洗浄した場合の細胞生存率を100%とした場合と比較して10%以上高く、
前記樹状細胞が、浸透圧比が3以上15以下の洗浄液で洗浄後の樹状細胞であり、
前記洗浄液が、亜鉛、ブドウ糖、アミノ酸、及びチアミンを含み、
前記洗浄液における亜鉛の濃度が、200ng/mLから400ng/mLであり、
前記洗浄液が、グルコースを用いて浸透圧比が調整されたものであることを特徴とする樹状細胞ワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞洗浄液及びこれを用いた細胞の洗浄方法、並びに細胞含有組成物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のがん治療方法である、外科療法(手術)、化学療法(抗がん剤)、放射線療法の3つに加えて、近年、第4のがん治療方法として注目されているのが免疫療法である。
前記免疫療法には、免疫細胞療法、サイトカイン療法、抗体療法などがあるが、これらは、抗がん剤と比較して副作用が少ないと考えられており、その開発が期待されている。
【0003】
前記免疫細胞療法の中でも、樹状細胞ワクチン療法は、多くの樹状細胞を対象者へ投与することが必要とされている(非特許文献1及び2)。前記樹状細胞ワクチン療法に使用される樹状細胞は、対象者の血液から採取されるが、採取できる血液細胞は限られており、限られた数の細胞から治療に有効な細胞を調製する必要がある。治療に有効な細胞は、細胞洗浄された後、凍結保存状態で医療機関へ搬送され、解凍後、対象者へ投与される。
【0004】
細胞を洗浄する溶液として、一般的には生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及びウシ胎仔血清が添加されたPBS等が知られている(特許文献1)。これらの溶液の細胞傷害性は高くないと予想されるが、前記細胞洗浄において、洗浄液として、前記生理食塩水又はPBS等を使用した場合は、洗浄後の細胞生存率を十分に維持することは困難であった。また、ウシ胎仔血清が添加されたPBSについては、対象者へ投与される細胞を洗浄する場合において、血清が含まれた洗浄液を使用することは好ましくなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Harada Y et al. PLoS ONE 4:e6674(2009)
【非特許文献2】Tatsuta K et al. Gene Ther.16:240−251(2009)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−239701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、洗浄後の細胞生存率が改善される、細胞洗浄液、及びこれを用いた細胞の洗浄方法、並びに細胞生存率の高い細胞含有組成物及びその調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、浸透圧比が2以上15以下の洗浄液を用いることで洗浄後の細胞生存率が改善されることを確認し、細胞生存率を高めるための細胞洗浄液及び細胞の洗浄方法、並びに細胞生存率の高い細胞含有組成物及びその調製方法を提供できることを確認した。なお、浸透圧比とは、生理食塩水の浸透圧を1としたときの洗浄液の浸透圧をいう。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 血液から目的細胞を調製する細胞調製工程、及び浸透圧比が2以上15以下の洗浄液を用いて前記目的細胞を洗浄する細胞洗浄工程を含むことを特徴とする細胞含有組成物の調製方法である。
<2> 前記洗浄液が少なくとも亜鉛を含む前記<1>に記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<3> 前記洗浄液における亜鉛の濃度が100ng/mLから400ng/mLである前記<2>に記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<4> 前記洗浄液における亜鉛の濃度が200ng/mLから300ng/mLである前記<2>に記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<5> 前記洗浄液がブドウ糖、アミノ酸、及びチアミンを含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<6> 前記細胞調製工程が、血液から単球を分離する単球分離処理、前記単球から未成熟樹状細胞を誘導する未成熟樹状細胞誘導処理、及び前記未成熟樹状細胞から成熟樹状細胞を誘導する成熟樹状細胞誘導処理を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<7> 前記単球分離処理が、CD14陽性細胞を分離する処理である前記<6>に記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<8> 前記未成熟樹状細胞誘導処理における誘導が、IL−4及びGM−CSFによる誘導である前記<6>から<7>のいずれかに記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<9> 前記成熟樹状細胞誘導工程処理における誘導が、IL−4、GM−CSF、PGE2及びOK−432による誘導である前記<6>から<8>のいずれかに記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<10> 更に前記細胞調製工程が、前記成熟樹状細胞に抗原を感作する抗原感作処理を含み、前記抗原感作処理における感作が、ペプチドによる感作である前記<6>から<9>のいずれかに記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<11> 更に前記目的細胞を凍結する細胞凍結工程を含む前記<1>から<10>のいずれかに記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<12> 前記細胞含有組成物が樹状細胞ワクチンである前記<1>から前記<11>のいずれかに記載の細胞含有組成物の調製方法である。
<13> 浸透圧比が2以上15以下の洗浄液を用いて細胞を洗浄する細胞洗浄工程を含むことを特徴とする細胞の洗浄方法である。
<14> 浸透圧比が2以上15以下の洗浄液であることを特徴とする細胞洗浄液である。
<15> 細胞、及び100ng/mLから400ng/mLの濃度の亜鉛を含むことを特徴とする細胞含有組成物である。
<16> 前記細胞含有組成物が樹状細胞ワクチンである<15>に記載の細胞含有組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、洗浄後の細胞生存率が改善される、細胞洗浄液、及びこれを用いた細胞の洗浄方法、並びに細胞生存率の高い細胞含有組成物及びその調製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の細胞含有組成物の調製方法は、血液から目的細胞を調製する細胞調製工程、及び浸透圧比が2以上15以下の洗浄液を用いて細胞を洗浄する細胞洗浄工程を含み、さらにその他の工程を含むことができる。本発明の細胞の洗浄方法は、前記細胞洗浄工程に相当し、本発明の細胞洗浄液は、前記細胞洗浄工程で使用される浸透圧比が2以上15以下の洗浄液に相当する。また、本発明の細胞含有組成物は、本発明の細胞含有組成物の調製方法により好適に調製することができる。したがって、以下に本発明の細胞含有組成物の調製方法を説明することにより、本発明の細胞の洗浄方法、本発明の細胞洗浄液、及び本発明の細胞含有組成物を説明する。
【0012】
(細胞含有組成物の調製方法)
本発明の細胞含有組成物の調製方法は、血液から目的細胞を調製する細胞調製工程、及び浸透圧比が2以上15以下の洗浄液を用いて前記目的細胞を洗浄する細胞洗浄工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含むことができる。
【0013】
<細胞調製工程>
前記細胞調製工程における血液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、末梢血、骨髄、臍帯血などが挙げられ、これらの中でも、侵襲性が低い点などから末梢血が好ましい。前記末梢血、骨髄、臍帯血などに含まれる細胞としては、末梢血由来の細胞、末梢血単核球(PBMC)、骨髄細胞、臍帯血細胞、及び造血幹細胞などが挙げられる。前記造血幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞及び人工多能性幹(iPS)細胞などから生成される。
【0014】
前記細胞調製工程における目的細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、顆粒球、好中球、好酸球、好塩基球等の白血球などが挙げられる。
【0015】
前記細胞の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞を分離する処理、分化誘導する処理、及びこれらの組合せなどが挙げられる。
【0016】
前記細胞を分離する処理、及び分化誘導する処理の組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、血液から単球を分離する単球分離処理、単球から未成熟樹状細胞を誘導する未成熟樹状細胞誘導処理、及び未成熟樹状細胞から成熟樹状細胞を誘導する成熟樹状細胞誘導処理を含むことがより好ましく、さらに成熟樹状細胞に抗原を感作する抗原感作処理を含むこともできる。
【0017】
<<単球分離処理>>
前記単球分離処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、末梢血から単球を分離する処理が好ましく、成分採血により得られる産物(アフェレーシス産物)から単球を分離する処理がより好ましい。
【0018】
前記分離の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィコール比重遠心法、磁性ビーズ等を用いる方法、フローサイトメトリーを用いる方法、細胞の接着性を利用する方法、又はこれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、分離効率の点からフィコール比重遠心法、及び磁性ビーズ等を用いる方法の組合せが好ましい。
【0019】
前記磁性ビーズ等を用いる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポジティブ選択による分離、ネガティブ選択による分離、又はこれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、分離効率の点からポジティブ選択による分離が好ましい。
【0020】
前記ポジティブ選択としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分離効率の点から抗CD14抗体が固定化された磁性ビーズを用いてCD14陽性細胞を分離する方法が好ましい。
【0021】
前記ネガティブ選択としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分離効率の点から抗CD3抗体が固定化された磁性ビーズを用いてCD3陽性細胞を除去する方法が好ましい。
【0022】
<<未成熟樹状細胞誘導処理>>
前記未成熟樹状細胞誘導処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記単球分離処理により得られた単球の細胞調製培地に、サイトカインを添加して未成熟樹状細胞へ誘導する処理が挙げられる。
【0023】
前記サイトカインとしては、未成熟樹状細胞へ分化誘導できるものであれば特に制限はなく、例えば、インターロイキン4(IL−4)、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、又はこれらの組合せが挙げられる。これらの中でも、IL−4及びGM−CSFの組合せが好ましく、安全性の点から組み換えヒトIL−4(rhIL−4)及び組み換えヒトGM−CSF(rhGM−CSF)の組合せがより好ましい。
【0024】
前記IL−4の終濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1ng/mL以上が好ましく、30ng/mL以上がより好ましく、40ng/mL以上がさらに好ましく、45ng/mL以上が特に好ましい。また、前記IL−4の終濃度の上限値としては、500ng/mL以下が好ましく、100ng/mL以下がより好ましく、60ng/mL以下がさらに好ましく、55ng/mL以下が特に好ましい。
【0025】
前記GM−CSFの終濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1ng/mL以上が好ましく、30ng/mL以上がより好ましく、40ng/mL以上がさらに好ましく、45ng/mL以上が特に好ましい。また、前記GM−CSFの終濃度の上限値としては、500ng/mL以下が好ましく、100ng/mL以下がより好ましく、60ng/mL以下がさらに好ましく、55ng/mL以下が特に好ましい。
【0026】
前記細胞調製培地としては、単球、及び/又は未成熟樹状細胞を調製できるものであれば特に制限はなく、例えば、IMDM培地、MEM培地、DMEM培地、DMEM/F12培地、RPMI−1640培地、X−VIVO15培地、又はAIM V培地、CellGro培地が挙げられる。これらの中でもAIM V培地がより好ましい。
【0027】
前記細胞調製培地には、その他の添加物を添加することができる。
前記その他の添加物としては、例えば、抗生物質、血清などが挙げられる。
前記血清としては、ウシ胎仔血清、ヒトAB型血清、又は献血ヒト血清アルブミンなどの血清が挙げられるが、得られた細胞を対象者へ投与する目的を考慮して、これらの血清は添加されないことが好ましい。
【0028】
前記未成熟樹状細胞誘導処理における調製期間の下限値としては、未成熟樹状細胞へ誘導できる期間であれば特に制限はないが、1日間以上が好ましく、2日間以上がより好ましく、3日間以上がさらに好ましく、5日間以上が特に好ましい。また、前記調製期間の上限値としては、20日間以下が好ましく、10日間以下がより好ましく、7日間以下がさらに好ましく、6日間以下が特に好ましい。
【0029】
前記未成熟樹状細胞誘導処理における調製条件としては、未成熟樹状細胞へ誘導できる条件であれば特に制限はなく、例えば、5%から20%のCO存在下37℃で調製する条件などが挙げられる。
【0030】
前記細胞調製培地に、サイトカインを添加する方法における培地交換頻度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、より簡便な方法を提供する点から前記未成熟樹状細胞誘導処理において、サイトカインを添加した後、培地交換を行わないことが好ましい。
【0031】
<<成熟樹状細胞誘導処理>>
前記成熟樹状細胞誘導処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記未成熟樹状細胞誘導処理により得られた未成熟樹状細胞の細胞調製培地に、サイトカイン、エイコサノイド、溶連菌の菌体、又はこれらの組合せを添加して成熟樹状細胞へ誘導する処理が挙げられる。これらの中でも、エイコサノイド、及び溶連菌の菌体の組合せ、又はサイトカイン、エイコサノイド、及び溶連菌の菌体の組合せを添加して成熟樹状細胞へ誘導する処理が好ましい。
【0032】
前記サイトカインとしては、成熟樹状細胞へ分化誘導できるものであれば特に制限はなく、例えば、インターロイキン4(IL−4)、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン1β(IL−1β)、インターロイキン6(IL−6)又はこれらの組合せが挙げられる。これらの中でも、誘導効率の点からIL−4及びGM−CSFの組合せが好ましく、安全性の点から組み換えヒトIL−4(rhIL−4)及び組み換えヒトGM−CSF(rhGM−CSF)の組合せがより好ましい。
【0033】
前記エイコサノイドとしては、成熟樹状細胞へ分化誘導できるものであれば特に制限はなく、例えば、プロスタグランジンE2(PGE2)、ロイコトリエン、トロンボキサン、又はこれらの組合せが挙げられる。これらの中でも、誘導効率の点からPGE2が好ましい。
【0034】
前記菌体としては、成熟樹状細胞へ分化誘導できるものであれば特に制限はないが、誘導効率の点から溶連菌の菌体が好ましく、溶連菌の乾燥菌体がより好ましく、ピシバニール(OK−432)がさらに好ましい。
【0035】
前記サイトカイン、エイコサノイド、及び溶連菌の菌体の組合せとしては、IL−4、GM−CSF、PGE2及びOK−432の組合せが好ましく、安全性の点から組み換えヒトIL−4(rhIL−4)、組み換えヒトGM−CSF(rhGM−CSF)、PGE2及びOK−432の組合せがより好ましい。
【0036】
前記IL−4は使用しない場合もあるが、使用する場合の前記IL−4の終濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1ng/mL以上が好ましく、3ng/mL以上がより好ましく、4ng/mL以上がさらに好ましく、4.5ng/mL以上が特に好ましい。また、前記IL−4の終濃度の上限値としては、50ng/mL以下が好ましく、10ng/mL以下がより好ましく、6ng/mL以下がさらに好ましく、5.5ng/mL以下が特に好ましい。
【0037】
前記GM−CSFは使用しない場合もあるが、使用する場合の前記GM−CSFの終濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1ng/mL以上が好ましく、3ng/mL以上がより好ましく、4ng/mL以上がさらに好ましく、4.5ng/mL以上が特に好ましい。また、前記GM−CSFの終濃度の上限値としては、50ng/mL以下が好ましく、10ng/mL以下がより好ましく、6ng/mL以下がさらに好ましく、5.5ng/mL以下が特に好ましい。
【0038】
前記PGE2の終濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1ng/mL以上が好ましく、30ng/mL以上がより好ましく、40ng/mL以上がさらに好ましく、45ng/mL以上が特に好ましい。また、前記PGE2の終濃度の上限値としては、500ng/mL以下が好ましく、100ng/mL以下がより好ましく、60ng/mL以下がさらに好ましく、55ng/mL以下が特に好ましい。
【0039】
前記OK−432の終濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01KE/mL以上が好ましく、0.05KE/mL以上がより好ましく、0.08KE/mL以上がさらに好ましく、0.1KE/mL以上が特に好ましい。また、前記OK−432の終濃度の上限値としては、10KE/mL以下が好ましく、1.0KE/mL以下がより好ましく、0.5KE/mL以下がさらに好ましく、0.2KE/mL以下が特に好ましい。
【0040】
前記細胞調製培地としては、未成熟樹状細胞、及び/又は成熟樹状細胞を調製できるものであれば特に制限はなく、例えば、IMDM培地、MEM培地、DMEM培地、RPMI−1640培地、X−VIVO15培地、又はAIM V培地が挙げられる。これらの中でもAIM V培地がより好ましい。
【0041】
前記細胞調製培地には、その他の添加物を添加することができる。
前記その他の添加物としては、例えば、抗生物質、血清などが挙げられる。
前記血清としては、ウシ胎仔血清、ヒトAB型血清、又は献血ヒト血清アルブミンなどの血清が挙げられるが、得られた細胞を対象者へ投与する目的を考慮して、これらの血清は添加されないことが好ましい。
【0042】
前記成熟樹状細胞誘導処理における調製期間の下限値としては、成熟樹状細胞へ誘導できる期間であれば特に制限はないが、6時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましく、1日以上がさらに好ましい。また、前記調製期間の上限値としては、7日以下が好ましく、5日以下がより好ましく、3日以下がさらに好ましく、1日が特に好ましい。
【0043】
前記成熟樹状細胞誘導処理における調製条件としては、成熟樹状細胞へ誘導できる条件であれば特に制限はなく、例えば、5%から20%のCO存在下37℃で調製する条件などが挙げられる。
【0044】
前記成熟樹状細胞誘導処理における培地交換頻度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、より簡便な方法を提供する目的から、前記未成熟樹状細胞誘導処理において、サイトカインを添加した後、培地交換を行わないことが好ましい。
【0045】
<<抗原感作処理>>
前記抗原感作処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記成熟樹状細胞誘導処理により得られた成熟樹状細胞に、抗原を感作する抗原感作処理が挙げられる。
【0046】
前記抗原としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、がん抗原、アレルゲン、自己免疫疾患に関連する自己抗原等、感染症に関連する抗原、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0047】
前記抗原の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タンパク質、ペプチドなどが挙げられるが、これらの中でも、感作効率の点からペプチドであることが好ましい。
前記がん抗原としては、安全性の点から人工がん抗原が好ましく、種々のがん細胞における発現率の高さの点からWT1ペプチドがより好ましい。
前記WT1ペプチドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表1に記載のペプチドが挙げられるが、これらの中でも、配列番号6、配列番号7、配列番号10を用いることが好ましい。前記WT1ペプチドは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合してもよいし、2種以上を連結してもよい。
【0048】
【表1】
【0049】
前記抗原は、細胞調製培地に添加して用いることができる。
前記細胞調製培地としては、成熟樹状細胞を調製できるものであれば特に制限はないが、IMDM培地、MEM培地、DMEM培地、DMEM/F12培地、CellGro培地、RPMI−1640培地、X−VIVO15培地、又はAIM V培地が好ましく、これらの中でもAIM V培地がより好ましい。
【0050】
前記細胞調製培地には、その他の添加物を添加することができる。
前記その他の添加物としては、例えば、抗生物質、血清などが挙げられる。
前記血清としては、例えば、ウシ胎仔血清、ヒトAB型血清、又は献血ヒト血清アルブミンなどの血清が挙げられるが、得られた細胞を対象者へ投与する目的を考慮して、これらの血清は添加されないことが好ましい。
【0051】
前記抗原感作処理における温度条件としては、感作できる条件であれば特に制限はないが、37℃が好ましい。
前記抗原感作処理としては、回転しないで静置で感作させてもよく、手動で混和することにより感作させてもよく、回転装置により回転させてもよい。前記抗原感作処理における回転条件としては、感作できる条件であれば特に制限はないが、1rpm以上50rpm以下が好ましく、5rpm以上20rpm以下がより好ましく、8rpmがさらに好ましい。
【0052】
<細胞洗浄工程>
前記細胞洗浄工程は、浸透圧比が2以上15以下の洗浄液を用いて細胞を洗浄する工程である。本発明の細胞の洗浄方法は、前記細胞洗浄工程に相当する。
【0053】
前記細胞洗浄工程における洗浄としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、遠心による洗浄、及びプレート上での洗浄などが挙げられる。これらの中でも、洗浄効率の点から、遠心による洗浄が好ましい。
【0054】
前記遠心の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、回転速度は100Gから1000Gが好ましく、200Gから800Gがより好ましく、300Gから500Gがさらに好ましく、遠心時間は、30秒間から10分間が好ましく、1分間から5分間がより好ましい。
遠心温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、冷蔵(2℃〜8℃)が好ましい。
前記遠心による細胞の洗浄回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1回から5回が好ましく、3回がより好ましい。
【0055】
前記細胞洗浄工程において洗浄される細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、顆粒球、好中球、好酸球、好塩基球等の白血球などが挙げられる。
前記細胞は、前記細胞調製工程により、好適に調製することができる。
【0056】
前記細胞の洗浄後の細胞生存率としては、特に制限はないが、従来使用している生理食塩水を用いて洗浄した場合の細胞生存率を100%とした場合と比較して0.1%以上高い生存率を示すことが好ましく、10%以上高い生存率を示すことがさらに好ましい。
【0057】
<<浸透圧比が2以上15以下の洗浄液>>
前記浸透圧比が2以上15以下の洗浄液は、浸透圧比が特定されている洗浄液である。本発明の細胞洗浄液は、前記浸透圧比が2以上15以下の洗浄液に相当する。
【0058】
前記洗浄液の浸透圧比としては、2以上15以下であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3以上15以下が好ましく、3以上10以下がより好ましい。
【0059】
前記浸透圧比が2以上15以下の洗浄液に含まれる成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電解質、ブドウ糖、アミノ酸、ビタミン類、又はこれらの組合せが挙げられる。これらの中でも、電解質を含むもの、又は、ブドウ糖、アミノ酸、及びチアミンを含むものが好ましく、電解質、ブドウ糖、アミノ酸、及びチアミンを含むものがさらに好ましい。
【0060】
前記電解質としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、硫酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リン、亜鉛、又はこれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、亜鉛を含むものが好ましく、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、硫酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リン、及び亜鉛を含むものがより好ましい。
【0061】
前記亜鉛の濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100ng/mL以上400ng/mL以下が好ましく、200ng/mL以上300ng/mL以下がより好ましい。
【0062】
前記ブドウ糖の濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1g/L以上が好ましく、4.5g/L以上がより好ましく、10g/L以上がさらに好ましく、70g/L以上が特に好ましい。また、前記ブドウ糖の濃度の上限値としては、200g/L以下が好ましく、150g/L以下がより好ましく、100g/L以下がさらに好ましく、75g/L以下が特に好ましい。
【0063】
前記アミノ酸の濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、総遊離アミノ酸量として、1.0g/L以上が好ましく、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上がさらに好ましく、30g/L以上が特に好ましい。また、前記アミノ酸の濃度の上限値としては、200g/L以下が好ましく、100g/L以下がより好ましく50g/L以下がさらに好ましく、40g/L以下が特に好ましい。
【0064】
前記チアミンの濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mg/L以上が好ましく、1.0mg/L以上がより好ましく、1.5mg/L以上がさらに好ましく、1.9mg/L以上が特に好ましい。また、前記チアミンの濃度の上限値としては、20mg/L以下が好ましく、10mg/L以下がより好ましく、5.0mg/L以下がさらに好ましく、4.0mg/L以下が特に好ましい。
【0065】
前記浸透圧比が2以上15以下の洗浄液は、適宜調製したものを使用してもよいし、市販品、又は市販品に蒸留水を加えて調製したものを使用してもよい。
前記市販品としては、例えば、ビーフリード輸液(株式会社大塚製薬工場製)、及びパレプラス輸液(エイワイファーマ株式会社製)などが挙げられる。
【0066】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞を凍結する細胞凍結工程、細胞の凍結物を解凍する細胞解凍工程、培養上清検査工程、品質検査工程などが挙げられる。
【0067】
<<細胞凍結工程>>
前記細胞凍結工程は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞を保存液に懸濁し、凍結する工程が挙げられる。
【0068】
前記保存液としては、適宜調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、例えば、セルバンカーシリーズ(CELLBANKER 1、CELLBANKER 1plus、CELLBANKER 2、STEM−CELLBANKER GMP grade、STEM−CELLBANKER DMSO Free GMP grade)(タカラバイオ株式会社製)などが挙げられる。
【0069】
前記凍結の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、−80℃での凍結保存、液体窒素(気相及び液相)での凍結保存が挙げられる。これらの中でも、細胞傷害性を低減する点から−80℃で凍結保存した後、液体窒素(気相及び液相)で凍結保存する方法が好ましい。
【0070】
<<細胞解凍工程>>
前記細胞解凍工程は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凍結保存された樹状細胞を30℃から40℃にて解凍する工程が挙げられる。
【0071】
前記凍結解凍後の細胞生存率としては、特に制限はないが、一般的に使用される生理食塩水を用いて洗浄した場合の細胞生存率を100%とした場合と比較して5%以上高い生存率を示すことが好ましい。
【0072】
<<培養上清検査工程>>
前記培養上清検査工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、未成熟樹状細胞が誘導できているか否かを確認する目的で行う、未成熟樹状細胞誘導処理における培養上清検査、成熟樹状細胞が誘導できているか否かを確認する目的で行う、成熟樹状細胞誘導処理における培養上清検査などが挙げられる。
前記培養上清検査の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ELISA、ウェスタンブロット法などが挙げられる。
【0073】
<<品質検査工程>>
前記品質検査工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無菌試験、エンドトキシン試験、マイコプラズマ否定試験、フローサイトメトリー試験などが挙げられる。
【0074】
<細胞含有組成物>
以上の工程により本発明の細胞含有組成物が調製される。
前記細胞含有組成物は、少なくとも細胞及び亜鉛を含み、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
前記細胞含有組成物は細胞凍結物の形態をとってもよい。
【0075】
<<細胞>>
前記細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、顆粒球、好中球、好酸球、好塩基球等の白血球などが挙げられる。
前記細胞含有組成物に含まれる前記細胞の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生細胞数で1×10個/mL以上が好ましく、1×10個/mL以上がより好ましく、5×10個/mL以上がさらに好ましく、1×10個/mL以上が特に好ましい。
【0076】
<<亜鉛>>
前記細胞含有組成物における亜鉛の濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100ng/mL以上400ng/mL以下が好ましく、200ng/mL以上300ng/mL以下がより好ましい。
【0077】
<<その他の成分>>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電解質、ブドウ糖、アミノ酸、ビタミン類、医薬品として許容される担体、免疫原性増強剤などが挙げられる。
前記担体としては、生細胞を懸濁することができるいずれかの溶液であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生理食塩水、PBS、培地、血清等などが挙げられる。
前記免疫原性増強剤としては、免疫原性を増強するために用いることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サイトカイン、細菌毒素、結核菌菌体成分等の免疫促進剤、ミョウバン、フロイントアジュバント、その他のアジュバント剤などが挙げられる。
【0078】
前記細胞含有組成物は樹状細胞ワクチンであってもよい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)細胞含有組成物の調製
−細胞調製工程−
−−単球分離処理−−
健康なボランティア被験者からヒト末梢血が採取された。前記ヒト末梢血採取は、アフェレーシスにより行われ、血液成分分離装置(COM.TEC、フレゼニウス社製)を用いて行われた。
得られたヒト末梢血をフィコール(Ficoll−paque PREMIUM、ThermoFisherScientific社製)を用いて比重遠心処理後、単核球層を回収し、遠心操作により血小板除去後、抗CD14抗体が固定化された磁気ビーズ(cliniMACS CD14マイクロビーズ、ミルテニーバイオテク社製)を添加し、4℃で15分間ゆるやかに攪拌しながら反応させた。その後、磁気分離カラム(LSカラム)を用いて、CD14を表面に発現する細胞(CD14陽性細胞)を回収し、細胞懸濁液1を調製した。
【0081】
−−未成熟樹状細胞誘導処理−−
前記細胞懸濁液1を、AIM V培地(AIM V medium CTS、ThermoFisherScientific社製)に終濃度50ng/mLのrhIL−4(MACS GMP rhIL−4、ミルテニーバイオテク社製)及び終濃度50ng/mLのrhGM−CSF(MACS GMP rhGM−CSF、ミルテニーバイオテク社製)となるよう添加した培地に懸濁し、調製容器(Advanced TCシャーレ、グライナー社製)に播種して、5%のCO存在下37℃で6日間培養し、細胞懸濁液2を調製した。
【0082】
−−成熟樹状細胞誘導処理−−
前記細胞懸濁液2を回収後、遠心処理し、ペレットを終濃度5ng/mLのrhIL−4(MACS GMP rhIL−4、ミルテニーバイオテク社製)、終濃度5ng/mLのrhGM−CSF(MACS GMP rhGM−CSF、ミルテニーバイオテク社製)、終濃度50ng/mLのPGE2、及び終濃度0.1KE/mLのOK−432を添加したAIM V培地(AIM V medium CTS、ThermoFisherScientific社製)に懸濁した後、調製容器(Advanced TCシャーレ、グライナー社製)に播種し、5%のCO存在下37℃で翌日まで培養し、細胞懸濁液3を調製した。
【0083】
−−抗原感作処理−−
前記細胞懸濁液3を回収後、配列番号6、配列番号7、及び配列番号10のペプチドを混合した、WT1ペプチド(Anygen社製)を添加し、感作させた。
【0084】
−細胞洗浄工程−
1×10個の感作後の細胞を遠心処理し、ペレットに、表2に組成を示した洗浄液1(ビーフリード輸液(株式会社大塚製薬工場製)に蒸留水を添加することにより浸透圧比2に調整した洗浄液)を5mL加え、500G、5分で遠心した。上清を4.5mL除去し、洗浄液1を4.5mL加えた。この洗浄を、合計3回行い、細胞含有組成物1を調製した。
−−細胞生存率の測定−−
洗浄前及び洗浄後の細胞の一部をPI/AO蛍光色素(Cat:F23001、Logos biosystems社製)で染色し、細胞カウンター(luna FL(TM)、Logos biosystems社製)を用いて細胞数を計測した。細胞生存率は、前記PI/AO蛍光色素により、染色されなかったものを生細胞とし、染色されたものを死細胞として評価し、それぞれ2回測定を行い、平均値を算出した。洗浄前の全細胞数に対する生細胞の割合(%)、及び洗浄後の全細胞数に対する生細胞の割合(%)を表2に示した。
【0085】
(実施例2)
実施例1に記載の、洗浄液1を、洗浄液2(パレプラス輸液、エイワイファーマ株式会社製:浸透圧比3)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で細胞含有組成物2を調製し、評価した。評価結果を表2に示した。
【0086】
(実施例3)
実施例1に記載の、洗浄液1を、洗浄液3(ビーフリード輸液、株式会社大塚製薬工場製:浸透圧比3)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で細胞含有組成物3を調製し、評価した。評価結果を表2に示した。
【0087】
(実施例4)
実施例1に記載の、洗浄液1を、洗浄液4(ビーフリード輸液(株式会社大塚製薬工場製)にグルコースを添加することにより浸透圧比5に調整した洗浄液)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で細胞含有組成物4を調製し、評価した。評価結果を表2に示した。
【0088】
(実施例5)
実施例1に記載の、洗浄液1を、洗浄液5(ビーフリード輸液(株式会社大塚製薬工場製)にグルコースを添加することにより浸透圧比10に調整した洗浄液)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で細胞含有組成物5を調製し、評価した。評価結果を表2に示した。
【0089】
(実施例6)
実施例1に記載の、洗浄液1を、洗浄液6(ビーフリード輸液(株式会社大塚製薬工場製)にグルコースを添加することにより浸透圧比15に調整した洗浄液)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で細胞含有組成物6を調製し、評価した。評価結果を表2に示した。
【0090】
(比較例)
実施例1に記載の、洗浄液1を、洗浄液7(生理食塩水、株式会社大塚製薬工場製:浸透圧比1)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で細胞含有組成物7を調製し、評価した。評価結果を表2に示した。
【0091】
【表2】
【0092】
表2の最下段には、洗浄液7を用いて洗浄した場合の洗浄後の細胞生存率に対する、各洗浄液を用いて洗浄した場合の洗浄後の細胞生存率の比率を示した。
表2の結果から、本発明の浸透圧比が2以上15以下の洗浄液を用いて調製された細胞含有組成物1〜6は、洗浄後の細胞生存率が非常に高いことが分かる(実施例1〜6参照)。これに対して、浸透圧比が2未満の洗浄液を用いて調製された細胞含有組成物7は、洗浄後の細胞生存率が低いことが分かる(比較例1参照)。したがって、本発明の浸透圧比が2以上15以下の洗浄液は、浸透圧比が2未満の洗浄液に比し、格別顕著な効果を奏するものである。
なお、本発明により得られた細胞含有組成物1〜6は、いずれも270ng/mLの濃度の亜鉛を含むことをICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計、検出限界:1ng/mL〜10ng/mL)により確認した。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]