特許第6385638号(P6385638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385638
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/06 20060101AFI20180827BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20180827BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20180827BHJP
   F25D 21/08 20060101ALI20180827BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F25D21/06 Q
   F25B1/00 361A
   F25B1/00 381D
   F25B1/00 383
   F25D11/00 101B
   F25D21/08 B
   F25D23/00 301N
   F25D23/00 302E
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-177248(P2012-177248)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-35151(P2014-35151A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年8月7日
【審判番号】不服2017-6045(P2017-6045/J1)
【審判請求日】2017年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】中田 萌子
(72)【発明者】
【氏名】真下 拓也
(72)【発明者】
【氏名】金子 尚太
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−88421(JP,A)
【文献】 特開平9−287863(JP,A)
【文献】 特開2007−240027(JP,A)
【文献】 特開2005−156103(JP,A)
【文献】 特開2009−115436(JP,A)
【文献】 特開2002−62025(JP,A)
【文献】 特開平6−300423(JP,A)
【文献】 特開平7−120131(JP,A)
【文献】 特開2013−51326(JP,A)
【文献】 特開2012−229884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D21/06,21/08,11/00,23/00
F25B1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫の制御を行う制御手段と、前記制御手段に指示を行う操作手段と、冷気を発生させる蒸発器と、前記蒸発器を除霜する除霜手段と、前記蒸発器に冷媒を送る圧縮機とを備え、一定の条件が満たされると除霜を行う冷蔵庫であって、前記制御手段は、前記操作手段から除霜開始延期制御を行うべき指示を受けて、前記指示を受けた後の一定時間内に除霜を行うべき条件が満たされても前記一定時間を経過するまで除霜を行わない除霜開始延期制御を行い、前記除霜開始延期制御中は除霜を行うべき条件が満たされたか否かにかかわらず前記除霜開始延期制御前よりも前記圧縮機の駆動周波数を下げることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
記圧縮機を冷却する放熱ファンと、前記蒸発器で発生した冷気を冷蔵庫内に循環させる循環ファンを備える冷蔵庫であって、前記制御手段は、前記操作手段から前記除霜開始延期制御を行うべき指示を受けた後の前記一定時間、前記放熱ファンの回転数及び前記循環ファンの回転数のうち少なくともいずれか1つを下げることを特徴とする請求項1の冷蔵庫。
【請求項3】
外気温を測定する外気温センサを備え、前記制御手段は、前記操作手段から前記除霜開始延期制御を行うべき指示を受けても、前記外気温センサにより測定された外気温が一定温度より高い場合は前記圧縮の駆動周波数を下げないことを特徴とする請求項1又は2の冷蔵庫。
【請求項4】
冷蔵庫内に帯電したミストを発生させるミスト発生装置を備え、前記制御手段は、前記操作手段から前記除霜開始延期制御を行うべき指示を受けると、指示を受けた後前記一定時間前記ミスト発生装置の運転を弱めることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項の冷蔵庫。
【請求項5】
前記制御手段は、前記操作手段からの指示を受けて、消費電力を抑えた節電モードでの運転を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項の冷蔵庫。
【請求項6】
冷蔵庫の制御について表示する表示手段を備え、前記除霜開始延期制御の実施中は前記表示手段にそのことが表示されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項の冷蔵庫。
【請求項7】
前記除霜開始延期制御の実施中に、前記操作手段から前記除霜開始延期制御を終了する指示を受けると、前記除霜開始延期制御を終了することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項の冷蔵庫。
【請求項8】
前記除霜開始延期制御の実施中に、冷蔵庫の扉が開くと、前記除霜開始延期制御を終了することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項の冷蔵庫。
【請求項9】
前記除霜開始延期制御の実施中に、冷蔵庫の扉が一定回数開くと、前記除霜開始延期制御を終了することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項の冷蔵庫。
【請求項10】
外気温を測定する外気温センサを備え、前記除霜開始延期制御の実施中に、前記外気温センサにより測定された外気温が一定温度を超えると、前記除霜開始延期制御を終了することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項の冷蔵庫。
【請求項11】
冷蔵庫内の温度を測定する庫内温度センサと、前記除霜開始延期制御開始後であって圧縮機が稼働を開始してからの時間を計るタイマを備え、前記タイマにより測定した時間が予め定めた時間となった時に、前記庫内温度センサが測定する温度が予め定めた温度まで下がっていない場合は、前記除霜開始延期制御を終了することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項の冷蔵庫。
【請求項12】
冷蔵庫内の温度を測定する庫内温度センサを備え、前記除霜開始延期制御の実施中に、前記庫内温度センサが測定した冷蔵庫内の温度が予め定めた温度以上になると、前記除霜開始延期制御を終了することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項の冷蔵庫。
【請求項13】
前記制御手段は、前回の除霜が完了してから予め定めた時間経過後に前記除霜開始延期制御を行うべき指示を受けると、前記除霜開始延期制御を行わないことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から省エネの必要性が認識されており、例えば冷蔵庫内の照明の照度を落とす等して消費電力を抑える冷蔵庫が開発されていた。このような冷蔵庫の多くは、時間毎に変化する節電の必要性に応じた消費電力の制御は行っておらず、例えば除霜のような消費電力の大きい機能の作動は、時間毎の節電の必要性とは無関係に一定の条件が揃った時、例えば冷却サイクルが積算して一定時間稼働した時に行っていた。
【0003】
一方で、時計を内蔵し、予め設定された時間帯になると除霜運転の起動確率が高くなる冷蔵庫も発明されていた(特許文献1)。
【0004】
ところで近年、夏の午後の時間帯等、季節と時間帯によっては、電力需要が供給能力に到達しかねない状況が生じている。そこで電力会社は、電力需要が一定基準を超えると見込まれる場合に事前に警告を発し、それでも供給能力に対する電力使用率が減らない場合は計画停電を実施する。計画停電を回避するための対策として、警告が発せられた場合に各家庭で節電することが挙げられる。
【0005】
また各電力会社は、特定の時間帯に極端に電力需要が高くなることを回避するため、その特定の時間帯に電気料金が高くなる料金プランを導入している。ここで前記特定の時間帯とは、例えば午後1時〜4時の3時間である。このような料金プランに加入している家庭では、その時間帯に冷蔵庫を使用する予定がない場合は、その時間帯だけ冷蔵庫が消費電力を抑えて運転されることを望む。
【0006】
そこで、前記警報が発せられる等して節電が必要となった時や、使用者が節電を望んだ時に、その時から一定時間消費電力を抑えて運転できる冷蔵庫が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−240027
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、節電が必要となった時や、使用者が節電を望んだ時に、その時から一定時間消費電力を抑えて運転できる冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の冷蔵庫は、冷蔵庫の制御について指示するために用いる操作手段と、冷気を発生させる蒸発器と、前記蒸発器を除霜する除霜手段と、前記蒸発器に冷媒を送る圧縮機とを備え、一定の条件を満たすと除霜を行う冷蔵庫であって、前記操作手段を用いて、指示した後一定時間除霜手段を稼働しない除霜開始延期制御を行うことを指示すると、前記一定時間内に除霜を行うべき条件が満たされても前記一定時間を経過するまで除霜を行わず、前記除霜開始延期制御中は除霜を行うべき条件が満たされたか否かにかかわらず前記除霜開始延期制御前よりも前記圧縮機の駆動周波数を下げることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の冷蔵庫の断面図
図2】実施形態の冷蔵庫の制御ブロック図
図3】変更例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.冷蔵庫の構成及び基本的機能
本実施形態に係る冷蔵庫は、図1に示すように、外郭を形成する外箱と貯蔵空間を形成する内箱との間に発泡断熱材を充填した断熱箱体からなる冷蔵庫本体1を備え、貯蔵空間を断熱仕切壁20によって上方の冷蔵空間21と下方の冷凍空間22とに区画している。冷蔵空間21は、冷蔵温度(例えば、2〜3℃)に冷却される空間であって、内部がさらに仕切板23によって上下に区画され、上部空間に複数段の載置棚を設けた冷蔵室2が設けられ、下部空間に引き出し式の収納容器を配置する野菜室3が設けられている。野菜室3の下方に配置した冷凍空間22は、冷凍温度(例えば、−18〜−25℃)に冷却される空間であって、比較的小容積の自動製氷機を備えた製氷室4と図示しない小型冷凍室とが冷蔵庫正面から見て左右に併設され、その下方に冷凍室5が設けられている。
【0012】
ここで、冷凍空間22及び冷蔵空間21には庫内温度センサ28が備えられており、後述する制御マイコン40が庫内温度センサ28から送られた温度データに基づき冷凍空間22及び冷蔵空間21の温度を適温に保つよう後述する冷却サイクルや各種ファンを制御している。
【0013】
冷蔵室2の開口部は、冷蔵庫本体1の一側部の上下に設けられたヒンジにより回動自在に枢支された冷蔵室扉6により閉塞されている。野菜室3、製氷室4、小型冷凍室、冷凍室5の開口部は、それぞれ引き出し式の野菜室扉7、製氷室扉8、小型冷凍室扉、冷凍室扉9により閉塞されている。これら引き出し式扉の裏面側には収納容器が保持されており、開扉動作とともに庫外に引き出されるように構成されている。冷蔵室扉6、野菜室扉7、製氷室扉8、小型冷凍室扉、冷凍室扉9にはそれぞれ開扉したことを検出する開扉センサ24a、24b、24c、24d、24eが設けられている。
【0014】
冷凍空間22の背面下部にある機械室30には圧縮機31と凝縮器(図示せず)と圧縮機31を冷やす放熱ファン29が収納されている。また冷凍空間22の背面にある冷凍空間用蒸発器室32には冷凍空間用蒸発器33と冷凍空間用蒸発器33で発生した冷気を冷凍空間へ送る冷凍空間用循環ファン34と後述する除霜を行う除霜用ヒータ38が収納されている。また冷蔵空間21の背面にある冷蔵空間用蒸発器室35には冷蔵空間用蒸発器36と冷蔵空間用蒸発器36で発生した冷気を冷蔵空間へ送る冷蔵空間用循環ファン37と後述する除霜を行う除霜用ヒータ39が収納されている。
【0015】
そして、凝縮器は図示しない絞り装置に連結され、絞り装置は冷凍空間用蒸発器33及び冷蔵空間用蒸発器36に連結され、冷凍空間用蒸発器33及び冷蔵空間用蒸発器36は圧縮機31に連結されて、冷気を発生させる冷却サイクルを構成している。圧縮機31で加圧され高温・高圧の気体となった冷媒は、凝縮器で高圧のまま放熱し液化する。その冷媒が絞り装置を通過すると減圧され、沸点が下がり、冷凍空間用蒸発器33及び冷蔵空間用蒸発器36で気化するとともに吸熱し、冷凍空間用蒸発器33及び冷蔵空間用蒸発器36の周辺に冷気を発生させる。
【0016】
また実施形態の冷蔵庫はミスト発生装置42を有する。ミスト発生装置42は、冷蔵空間21の一画に設けられた図示しない給水タンクの水から帯電した微粒子のミストを発生させ、冷蔵空間21内へ放出する。該ミストにより冷蔵空間21内のカビの抑制や脱臭等の効果を得られる。該ミストを発生させる際、水に高電圧をかけるため、電力を消費する。
【0017】
また実施形態の冷蔵庫は、冷蔵庫の外部に外気温を測定する外気温センサ27を備える。また冷蔵庫の内部に除霜が完了した時点からの経過時間を計る除霜タイマ26、圧縮機31が稼働を開始した時点からの経過時間を計る冷却サイクルタイマ25を備える。
【0018】
冷蔵室扉6の前面には、後述する除霜開始延期ボタン43や節電ボタン44等の操作手段11や冷蔵庫の運転状況等を表示する表示手段12を備えた操作パネル10が設けられている。操作パネル10の裏側には操作マイコン41が設けられている。制御マイコン40は、図2に示すように、操作マイコン41、開扉センサ24a〜e、冷却サイクルタイマ25、除霜タイマ26、外気温センサ27、庫内温度センサ28から入力される信号と、図示しないメモリに記憶された制御プログラムに基づいて、圧縮機31、除霜ヒータ38、39、循環ファン34、37、放熱ファン29、ミスト発生装置42の動作を制御する。また、制御マイコン40は、操作マイコン41を介して表示手段12を駆動し、表示手段12に現在の運転状況を表示させる。そして、制御マイコン40は、庫内温度センサ28から送られてきた信号に基づき冷凍空間22及び冷蔵空間21の温度をそれぞれ所定温度に保つように冷凍サイクルを構成する圧縮機31や循環ファン34、37等の各種ファンを制御する。
【0019】
ところで、冷却サイクルを長時間連続して運転すると、冷凍空間用蒸発器33及び冷蔵空間用蒸発器36に着霜するおそれが生じる。そこで、一定の条件を満たした場合、例えば冷却サイクルの積算稼働時間が一定時間となった場合に、冷却サイクルを停止し、除霜手段を稼働して霜を取る除霜を開始する。実施形態の冷蔵庫の除霜は、除霜用ヒータ38、39に通電してこれを加熱し、その熱で冷凍空間用蒸発器33及び冷蔵空間用蒸発器36を加熱して霜を溶かすことにより行う。この時、除霜用ヒータに通電するために、冷蔵庫は除霜を行っていない時と比較して電力を多く消費する。除霜が終了した後は冷却サイクルを再稼働する。ここで、除霜中冷却サイクルを停止していたために、除霜終了時は冷蔵空間21や冷凍空間22内の温度が上昇している。そこで、冷蔵空間21や冷凍空間22内の温度を下げるために、圧縮機31の駆動周波数を除霜前よりも上げて冷却サイクルを稼働する。すると圧縮機31の温度が上昇するため、圧縮機31を冷却するために、放熱ファン29の回転数を除霜前よりも上げて運転する。さらに、冷凍空間用蒸発器33及び冷蔵空間用蒸発器36で発生した冷気を冷蔵空間21や冷凍空間22に循環させるために、冷凍空間用循環ファン34及び冷蔵空間用循環ファン37の回転数も除霜前よりも上げて運転する。これらの運転を行う結果、除霜終了後の一定時間は除霜前と比較して電力を多く消費する。
【0020】
ここで、除霜を開始するための条件となる冷却サイクルの積算稼働時間は、冷蔵庫の製造者又は使用者が予め設定しておく。一般的な家庭用冷蔵庫であれば8時間程度が適当である。なお、冷却サイクルの積算稼働時間が一定時間となった場合の他にも、前回の除霜から一定時間が経過した場合や、着霜量が一定量以上となった場合等に除霜を開始しても良い。いずれにしろ、蒸発器に着霜することによって冷却サイクルの効率が低下する条件又はその可能性が生じる条件が満たされた場合に、除霜を開始すれば良い。
【0021】
なお、実施形態の冷蔵庫は蒸発器を2つ備えるが、1つしか備えない冷蔵庫であっても良い。その場合、1つの蒸発器で発生させた冷気を冷凍空間22及び冷蔵空間21の両方へ送る。
【0022】
実施形態の冷蔵庫は節電モードでの運転を行うことができる。節電モードでの運転とは消費電力を抑えた運転のことで、例えば、冷蔵庫内の一部の照明を切る、照明の照度を落とす、圧縮機31の駆動周波数を下げる、冷凍空間用循環ファン34や冷蔵空間用循環ファン37や放熱ファン29の回転数を下げる、等して運転することである。操作パネル10に設けられた操作手段11の一つである節電ボタン44を押すと、制御マイコン40にその信号が送られ、制御マイコン40により節電モードでの運転が開始される。節電モードでの運転中はその旨が操作パネル10に表示される。
【0023】
2.消費電力を抑えた運転
本実施形態の冷蔵庫では除霜開始延期制御を行うことができる。除霜開始延期制御とは、この制御を指示した後の一定時間除霜を行わない制御のことで、当該一定時間内に除霜を行うべき条件が満たされた場合は、当該一定時間経過後に除霜を開始する制御のことである。操作パネル10に操作手段11の一つとして除霜開始延期ボタン43が設けられており、これを押すと操作マイコン41を介して除霜開始延期制御を開始すべき指示が制御マイコン40に伝達され、除霜開始延期制御が開始される。これにより、節電が必要となった時から一定時間は除霜が行われないため、この時間内の除霜機能の稼働による電力消費を回避することができる。なお、除霜開始延期制御中は、そのことが使用者にわかるように、除霜開始延期制御中である旨を操作パネル10の表示手段12に表示する。
【0024】
ここで前記一定時間は、冷蔵庫の製造者が予め定めた時間でも良いし、使用者が予め操作パネル10で入力する等して定めた時間でも良い。前記一定時間を例えば4時間とすると、除霜開始延期ボタンが押されてから4時間は除霜が行われず、冷蔵庫の消費電力を抑えることができる。そのため、電力需要が一定基準を超えると見込まれるため計画停電実施の可能性がある等の警告が発せられた時に、それを知った使用者が除霜開始延期ボタンを押すと、その家庭での電力の消費を抑えることができ、計画停電の回避に貢献することができる。また午後1時から4時の間の電気料金が高い料金プランに加入している家庭において、昼の調理が済んだ12時過ぎに除霜開始延期ボタンを押すと、電気料金が高い時間帯の電力の消費を抑えることができ、電気料金の節約ができる。このように、使用者がその意思により必要に応じて節電することができる。
【0025】
なお、実施形態の冷蔵庫のように時計を内蔵していない場合、時計を内蔵することによる設計の複雑さを回避できる。
【0026】
ここで、除霜開始延期制御中に除霜を開始すべき条件が満たされた場合は、制御マイコン40による制御により、圧縮機31の駆動周波数が下げられることが望ましい。除霜を開始すべき条件が揃ったにもかかわらず除霜を実施せず、圧縮機31を通常の周波数で駆動し続けた場合、蒸発器への着霜が促進されるおそれがあるためである。また、圧縮機31の駆動周波数を下げることにより節電の効果も得られる。
【0027】
また圧縮機31の駆動周波数が下がると、圧縮機31の発熱量が少なくなる。圧縮機31の発熱量が少ない場合、放熱ファン29を高速で回転させる必要がない。そのため、除霜開始延期制御中に除霜を開始すべき条件が揃ったことにより圧縮機31の駆動周波数を下げた場合は、制御マイコン40の制御により、放熱ファン29の回転数も自動的に下げることが望ましい。このようにすると節電の効果をより得ることができる。制御マイコン40の制御により、放熱ファン29の回転数を下げると共に冷凍空間用循環ファン34や冷蔵空間用循環ファン37の回転数も下げると、さらに節電の効果を得ることができる。
【0028】
ただし、外気温が一定温度以上の場合、圧縮機31の駆動周波数を下げると、冷却サイクルからの冷気による温度下降効果よりも外気からの温度伝達による温度上昇効果の方が大きくなり、冷蔵空間21や冷凍空間22の低温が保てなくなるおそれがある。そこで、除霜回避制御中に除霜を開始すべき条件が揃った場合、圧縮機31の駆動周波数が自動的に下がることを原則としつつ、外気が一定温度以上、例えば35度以上の場合は、圧縮機31の駆動周波数が下がらないように構成されてなることが望ましい。具体的には、外気温センサ27から外気温のデータが制御マイコン40へ伝達される。制御マイコン40は、外気温が一定温度以上である場合は、除霜開始延期制御中に除霜を開始すべき条件が満たされても圧縮機31の駆動周波数を下げない。この機能の基準となる一定温度は、冷蔵庫の製造者や使用者が予め定めれば良い。
【0029】
また、除霜開始延期制御を開始した場合、除霜を開始すべき条件が揃ったか否かにかかわらず、制御マイコン40による制御により、圧縮機31の駆動周波数、冷凍空間用循環ファン34の回転数、冷蔵空間用循環ファン37の回転数、放熱ファン29の回転数のうち少なくともいずれか1つが下がるようにしても良い。これにより節電の効果を得ることができる。ただし、上記と同様、外気温が一定温度以上の場合は、圧縮機31の駆動周波数を落とすと冷蔵空間21や冷凍空間22の低温が保てなくなるおそれがあるため、圧縮機31の駆動周波数は下がらないようにすることが望ましい。
【0030】
また、除霜開始延期制御を開始した場合、制御マイコン40による制御により、ミスト発生装置42の稼働率を低下することが望ましい。具体的には、例えば、ミスト発生装置42を断続的に稼働しかつ断続的稼働のうちの停止時間を長くして、積算稼働時間を減らす。ミスト発生は冷蔵庫の付随的機能であるからミスト発生装置42の稼働率を下げても食品の貯蔵上重大な問題は生じない。こうすることにより除霜開始延期制御中に電力消費量を減らすことができる。
【0031】
また、除霜タイマが測定した時間が長時間である場合、すなわち前回の除霜を行った後長時間が経過している場合は、制御マイコン40の制御により、除霜開始延期ボタンを押しても除霜開始延期制御が開始されないように構成されていても良い。ここで長時間とは、冷蔵庫の製造者又は使用者が予め定めた時間であり、例えば50時間とする。前回の除霜を行った後長時間が経過している場合は、着霜が始まっている可能性があり、また次の除霜を開始すべきタイミングが近い可能性もあるため、除霜開始延期制御を行わないことが望ましいためである。
【0032】
ここで、以上の運転と並行して前記の節電モードでの運転を行っても良い。節電モードでの運転と除霜開始延期制御を並行して行うことにより、除霜開始延期制御中の消費電力を大幅に抑えることができる。なお、節電モード実施により、圧縮機31の駆動周波数や、冷凍空間用循環ファン34、冷蔵空間用循環ファン37、放熱ファン29の回転数が十分に下がっている場合は、除霜開始延期制御のためにさらにこれらを低下させる必要は無い。
【0033】
3.消費電力を抑えた運転の終了
除霜開始延期制御は、操作パネル10で当該制御をすることを指示してから予め定めた時間の経過後、自動的に終了する。除霜開始延期制御中に除霜を実施すべき条件が満たされていた場合は、除霜開始延期制御終了後、除霜を開始する。
【0034】
また除霜開始延期制御開始に伴って、冷凍空間用循環ファン34、冷蔵空間用循環ファン37、放熱ファン29の駆動周波数を落としていた場合やミスト発生装置42の稼働率を落としていた場合は、除霜開始延期制御終了後、これらを除霜開始延期制御前の状態に回復させる。ただし、圧縮機31の駆動周波数を落としていた場合は、除霜終了後にこれを除霜開始延期制御前の状態に回復させる。除霜終了前に圧縮機31の駆動周波数を除霜開始延期制御前の状態に回復させると、蒸発器に着霜するおそれがあるからである。なお節電モードでの運転は、使用者が操作パネル10でこれを解除しない限り、継続されることが望ましい。
【0035】
ところで、除霜開始延期制御中に、状況により除霜開始延期制御をする必要がなくなったり、除霜開始延期制御を中止することが必要になったりすることが考えられる。そこで、本実施形態の冷蔵庫は、次のいずれか1つ又は複数の方法により除霜開始延期制御を終了することができるように構成されてなることが望ましい。そして、除霜開始延期制御中に除霜を実施すべき条件が満たされていた場合は、除霜開始延期制御終了後、除霜を開始する。ここで、除霜開始延期制御中に、圧縮機31の駆動周波数や、冷凍空間用循環ファン34、冷蔵空間用循環ファン37、放熱ファンの回転数、ミスト発生装置42の稼働率を落としていた場合は、次のいずれかの方法で除霜開始延期制御を終了したとき、これらを除霜開始延期制御前の状態に回復させることが望ましい。ただし圧縮機31の駆動周波数の回復は除霜開始延期制御終了後の除霜終了後に行う。また節電モードでの運転は、使用者が操作手段11でこれを解除しない限り、継続されることが望ましい。
【0036】
(1)操作パネル10に操作手段11の一つとして除霜開始延期制御終了ボタン45が設けられている。除霜開始延期制御終了ボタン45を押すと、それを検出した操作マイコン41から制御マイコン40へ除霜開始延期制御終了の指示が伝達され、除霜開始延期制御を終了する。これにより、除霜開始延期制御中に計画停電の可能性がなくなる等して除霜開始延期制御を実施する必要がなくなった場合や、使用者が間違えて除霜開始延期ボタン43を押してしまった場合に、使用者の意思により除霜開始延期制御を終了することができる。
【0037】
(2)冷蔵室扉6、野菜室扉7、製氷室扉8、小型冷凍室扉、冷凍室扉9のいずれかが開くと、開扉センサ24a〜eのうち対応するいずれかのセンサが扉が開いたことを検出する。その信号が制御マイコン40へ伝達され、除霜開始延期制御が終了する。除霜開始延期制御中に冷蔵庫の扉が開いた場合、冷蔵庫内の空気よりも水分を含んだ暖気が冷凍空間22や冷蔵空間21を通って冷凍空間用蒸発器室32や冷蔵空間用蒸発器室35に入り込むため、冷凍空間用蒸発器33や冷蔵空間用蒸発器36が着霜しやすくなる。しかし除霜開始延期制御を終了することにより、着霜を防いだり、着霜してもすぐに除霜したりすることができる。1回扉が開いただけでは着霜の可能性は高くないため、扉が予め定められた回数だけ開いた場合に、自動的に除霜開始延期制御を終了するように構成されていても良い。前記予め定められた回数とは、その回数だけ扉が開くと着霜する可能性が高くなる回数や、着霜が進行するような回数等であり、冷蔵庫の製造者又は使用者が予め設定する。
【0038】
(3)除霜開始延期制御中に外気温センサ27で検出した外気温が予め定めた温度以上となった場合は、その情報が制御マイコン40に伝達され、制御マイコン40が除霜開始延期制御を終了する。外気温が高い場合は、冷蔵庫内の温度も上昇し易いため、冷却サイクルが高い稼働率で稼働する。その結果蒸発器に着霜するおそれが生じる。そこで外気温が予め定めた温度以上となった場合に除霜開始延期制御を終了することにより着霜を防ぐ。
【0039】
(4)庫内温度センサ28及び冷却サイクルタイマ25はそれぞれ制御マイコン40に接続され、情報を制御マイコン40に伝達する。除霜開始延期制御実施中に冷気を発生させるために圧縮機31が稼働を開始すると、冷却サイクルタイマ25が稼働開始からの時間を測定し始める。そして、圧縮機31の稼働開始後一定時間内に冷凍空間22や冷蔵空間21内の温度が予め定められた温度まで下がらない場合は、制御マイコン40は除霜開始延期制御を終了する。例えば、圧縮機31の稼働開始後60分以内に、冷蔵空間の温度が3℃、冷凍空間の温度が−20℃まで下がらない場合は、除霜開始延期制御を終了する。このように冷蔵庫内の温度が下がらない場合、蒸発器に着霜していて冷却サイクルの効率が悪くなっている可能性があり、除霜が実施されることが望ましいからである。
【0040】
(5)除霜開始延期制御実施中に冷凍空間22又は冷蔵空間21の庫内温度センサが検出する温度が高温となった場合、制御マイコンは除霜開始延期制御を終了する。ここで高温とは冷凍空間や冷蔵空間の設定温度に対して比較的高い温度のことで、冷蔵庫の製造者又は使用者が予め定める。このような場合は冷却サイクルを高い稼働率で稼働する必要があり、それに伴い蒸発器が着霜する可能性があるからである。また着霜が冷却不足の原因となっている可能性があり、その場合は除霜が実施されることが望ましいからである。
【0041】
4.変更例
上記の冷蔵庫において、図3のフローチャートに示す実施形態を採っても良い。この実施形態の冷蔵庫の操作パネル10には、除霜開始延期ボタンとして昼ボタンと夜ボタンの2つが設けられている。通常の運転を行っている時(S2)に除霜開始延期制御を行うことを希望した場合、昼の時間帯であれば昼ボタンを、夜の時間帯であれば夜ボタンを押す(S3)。昼ボタンを押すと、除霜開始延長制御が実行され(S4)、除霜開始延長制御開始から12時間経過後に除霜開始延長制御が終了する(S5、6)。これにより、一般に電力需要の高い昼間に除霜開始延長制御が実行され、電力消費を抑えることができる。一方、夜ボタンを押した場合で、前回の除霜を行ってから8時間以上経過していない場合は(S9のNo)、除霜開始延長制御が実行され(S10)、除霜開始延長制御開始から24時間経過後に除霜開始延長制御が終了する(S11、6)。これにより、夜間だけでなく、翌日の昼間も除霜開始延長制御が実行され、電力の消費も抑えることができる。また、夜ボタンを押した場合で、前回の除霜を行ってから8時間以上経過している場合(S9のYes)は、次の除霜のタイミングが近いと考えられるため、除霜開始延期制御を行わない。除霜開始延期制御を行った場合であって、除霜開始延長制御中に除霜を開始すべき条件を満たしていた場合は(S7のYes)、除霜開始延長制御が終了した後、除霜を実施する(S8)。
【0042】
上記の実施形態の操作パネル10において、昼ボタンや夜ボタンの代わりに、12時間延期ボタン、24時間延期ボタン、等と名称を付けたボタンを設けても良い。また除霜開始を延期する時間は12時間や24時間に限られず、冷蔵庫の製造者や使用者が適当な時間を設定すれば良い。また除霜開始を延期する時間は、上記の実施形態のように12時間や24時間の2種類だけでなく、3種類以上定め、それぞれの時間のボタンを設けても良い。夜ボタンを押した場合に除霜開始延期制御を行うか否かの判断基準となる前回の除霜後の経過時間は、上記の実施形態のように8時間に限られず、冷蔵庫の製造者や使用者が適当な時間を設定すれば良い。
【0043】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲はこれに限定されない。以上の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。以上の実施形態やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1・・・冷蔵庫本体、2・・・冷蔵室、3・・・野菜室、4・・・製氷室、5・・・冷凍室、6・・・冷蔵室扉、7・・・野菜室扉、8・・・製氷室扉、9・・・冷凍室扉、10・・・操作パネル、11・・・操作手段、12・・・表示手段、20・・・断熱仕切壁、21・・・冷蔵空間、22・・・冷凍空間、23・・・仕切板、24・・・開扉センサ、25・・・冷却サイクルタイマ、26・・・除霜タイマ、27・・・外気温センサ、28・・・庫内温度センサ、29・・・放熱ファン、30・・・機械室、31・・・圧縮機、32・・・冷凍空間用蒸発器室、33・・・冷凍空間用蒸発器、34・・・冷凍空間用循環ファン、35・・・冷蔵空間用蒸発器室、36・・・冷蔵空間用蒸発器、37・・・冷蔵空間用循環ファン、38・・・除霜用ヒータ、39・・・除霜用ヒータ、40・・・制御マイコン、41・・・操作マイコン、42・・・ミスト発生装置、43・・・除霜開始延期ボタン、44・・・節電ボタン、45・・・除霜開始延期制御終了ボタン
図1
図2
図3